JP3631394B2 - タイヤの摩耗予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤの摩耗を精度良く予測しうるタイヤの摩耗予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイヤの摩耗を評価する際には、車両を長距離走行させることによりタイヤを実際に摩耗させる実車摩耗評価が行われていた。しかし、このような評価方法では、多く時間、労力、コストを必要とする不具合がある。そこで近年では、台上摩耗エネルギー測定装置などを用いてタイヤの摩耗エネルギーを測定し、この値を評価することが行われている。
【0003】
タイヤの摩耗エネルギーは、トレッド面の接地圧とすべり量との積で表され、この値が大きいほどタイヤは早期に摩耗することが知られている。また、近年では、定常走行、旋回走行、加速走行などを台上で疑似的に再現しうるよう測定装置の改良が進み、各走行状態での摩耗エネルギーが夫々測定しうるようになっている。これらの摩耗エネルギーを調べることにより、実車摩耗評価を行うことなくタイヤの摩耗寿命などを予測することが可能となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実車走行に際しては、タイヤは上述のように定常走行(自由転動)、旋回走行、加速走行、減速走行などの走行状態が含まれるほか、これらの2種以上が同時に発生することもある。つまり、実車走行時の前記各走行状態はその走行パターン中での発生頻度が種々異なる。従って、単に台上摩耗測定装置を用いて摩耗エネルギーを測定しただけでは、現実の実車走行によるタイヤの摩耗を精度良く予測することは困難である。
【0005】
本発明は以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、台上摩耗エネルギー測定装置を用いて得られ定常、旋回、加速、減速の各摩耗エネルギーに、実車走行時の各走行状態の発生頻度に基づいた重み付けを行なうことを基本として、タイヤの実車走行時の摩耗を精度良く予測することが可能なタイヤの摩耗予測方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、台上摩耗エネルギー測定装置によりタイヤの定常走行時の摩耗エネルギーe1、旋回走行時の摩耗エネルギーe3、加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4を測定する台上摩耗エネルギー測定処理と、実車走行パターン中の前記定常走行、旋回走行、加速走行及び減速走行が占める各発生頻度に基づいて定常走行の重み付け係数a、旋回走行の重み付け係数b、加速走行の重み付け係数c及び減速走行の重み付け係数dを決定する重み付け係数決定処理と、前記各摩耗エネルギーe1〜e4にそれぞれの前記重み付け係数a〜dを乗じて合算し実車走行により生じるタイヤの全摩耗エネルギーEtを推定する全摩耗エネルギー推定処理と、このタイヤの全摩耗エネルギーEtを用いてタイヤの摩耗を予測する摩耗予測処理とを含むことを特徴とするタイヤの摩耗量予測方法である。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記台上摩耗エネルギー測定処理により測定された定常走行時の摩耗エネルギーe1、加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4に、実車のタイヤのトー角αにより定まる摩耗エネルギー変化量ΔXを加える第1の補正処理を含むことを特徴とする請求項1記載のタイヤの摩耗量予測方法である。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記台上摩耗エネルギー測定処理により測定された加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4に、実車の制動中に生じるタイヤの荷重変動に応じて各摩耗エネルギーを増減する第2の補正処理を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤの摩耗量予測方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
本実施形態では、先ず台上摩耗エネルギー測定装置によりタイヤの定常走行時の摩耗エネルギーe1、旋回走行時の摩耗エネルギーe2、加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4を測定する台上摩耗エネルギー測定処理を行なう。
【0010】
前記台上摩耗エネルギー測定装置としては、例えば特許第2829249号公報に示されるものを用いうる。この測定装置1は、例えば図1、図2に略示する如く、リム組みされたタイヤtを着脱自在に取付けできかつタイヤ回転軸に軸心を揃えた駆動ないし遊転自在なタイヤ支持軸2と、基部F上に支持されかつ水平方向に往復動可能に配された平板状のタイヤ接地台3と、タイヤの摩耗エネルギーを測定する測定器4と、前記タイヤ接地台3を往復駆動させる接地台駆動手段5と、前記タイヤ支持軸2を回転駆動させるタイヤ支持軸駆動手段6とを含んでいる。
【0011】
前記タイヤ接地台3は、例えば上、下各面が平滑面で形成され、前記基部F上に配された複数の受けローラ7に受持されて往復動自在となっている。また本例では前記基部Fの両側にナット部材9が突設され、このナット部材9により一対のスクリューシャフト10,10が螺進退自在に保持されている。またスクリューシャフト10は、一点鎖線で省略して示す連結具12により、前記タイヤ接地台3と分離可能に連結されている。
【0012】
前記連結具12は、前記タイヤ接地台3とスクリューシャフト10に着脱自在であって、スクリューシャフト10に対しては、該スクリューシャフト10の回転を許容しつつ軸方向に移動不能に軸受などを介して取付けられる。また、前記接地台駆動手段5は、例えば第1のモータM1と、この第1のモータM1の回転力がベルト、チエーン等の伝導具13を介して伝達されしかも前記スクリューシャフト10に噛合する歯車14とを含む。またタイヤ支持軸駆動手段6は、第2のモータM2と、この第2のモータM2の回転力を前記タイヤ支持軸2に係脱自在に伝達しうるクラッチ等の係脱手段15とを含んでいる。
【0013】
なお詳細は図示していないが、タイヤ支持軸2は、タイヤtへの負荷を調整できるように、上下の位置調節を自在とする他、タイヤの回転を不能とする制動具などが付設される。また、本例の台上摩耗エネルギー測定装置1は、タイヤtを前記タイヤの接地台3の往復動方向に対して所定角度でスリップ角及びキャンバー角を与えることができる装置(図示せず)を有し、台上で旋回状態もシミュレーションしうるように構成されている。
【0014】
前記測定器4は、本例では図3に例示する如く、複数の歪ゲージ17を具えた第1のセンサ部4Aと、複数の歪ゲージ19を具えた第2のセンサ部4Bとを含んでいる。前記第1のセンサ部4A及び第2のセンサ部4Bは、前記タイヤ接地台3に設けられるとともに、その同一の往復動方向線上で位置をずらせて配されている。また各センサ部4A、4Bの夫々の先端部(上端部)は、タイヤ接地台3に設けた孔部20、21から該タイヤ接地台3のほぼ表面の高さまで臨ませてあり、タイヤtのトレッド面が接触可能となっている。また前記第1のセンサ部4Aは、本例ではタイヤtとタイヤ接地台3との接地面内での接地圧力(応力)を測定し、また第2のセンサ部4Bは、タイヤtとタイヤ接地台3とのすべり量を測定しうる。
【0015】
前記定常走行時の摩耗エネルギーe1とは、タイヤが定常走行状態、つまりタイヤが路面との摩擦力により自由転動している時の摩耗エネルギーである。このような定常走行状態は、例えば前記係脱手段15を切り、タイヤ支持軸2を回転自在の状態としかつタイヤtを接地台3に実車装着時の負荷荷重にほぼ等しい負荷(以下同じ)を与えて接地させるとともに、タイヤ接地台3を水平方向に移動してタイヤtを転動させることにより再現できる。
【0016】
またこのときの摩耗エネルギーを測定することにより定常走行時の摩耗エネルギーe1が得られる。なお摩耗エネルギーは、〔接地圧×すべり量〕、あるいは、〔前後力・横力(応力)×すべり量〕、として計算され、上述のように接地圧は第1のセンサ部4Aで測定され、またすべり量は第2のセンサ部4Bにて測定されうる。なお、これらの第1、第2のセンサ部4A、4Bを同軸上に配することもできる。
【0017】
また旋回走行時の摩耗エネルギーe2とは、タイヤが旋回走行状態、つまり車両の進行方向に対してタイヤにスリップ角が与えられて走行している時に生じるタイヤの摩耗エネルギーである。このような旋回走行状態は、例えばタイヤ支持軸2を回転自在の状態としかつタイヤtを所定のスリップ角(例えば1゜)を与えて接地台3に負荷を与えて接地させるとともに、タイヤ接地台3を水平方向に移動させタイヤtを転動させることにより再現できる。このときの摩耗エネルギーを測定することにより旋回走行時の摩耗エネルギーe2が得られる。
【0018】
同様に、加速走行時の摩耗エネルギーe3とは、タイヤの速度が路面の移動速度よりも大で走行している時にタイヤに生じる摩耗エネルギーである。このような加速走行状態は、例えばタイヤ接地台3を移動不能の状態としかつタイヤtを接地台3に負荷を与えて接地させて所定のトルクで回転させることにより再現できる。また減速走行時の摩耗エネルギーe4とは、タイヤの速度が路面の移動速度よりも小で走行している時にタイヤに生じる摩耗エネルギーである。このような減速走行状態は、例えばタイヤ支持軸2を回転不能の状態としかつタイヤtを接地台3に負荷を与えて接地させ、該タイヤ接地台3を所定の向きに移動させることにより再現できる。これらの各状態で摩耗エネルギーを測定することにより、加速走行時の摩耗エネルギーe3、減速走行時の摩耗エネルギーe4を得ることができる。ただし、各摩耗エネルギーの測定方法は上記の例に限定されるものではない。
【0019】
また各摩耗エネルギーは、タイヤ1の摩耗を測定する位置(例えばトレッドのクラウン部又はショルダ部など)が、第1のセンサー部4Aと第2のセンサ部4Bの両方を通過するようにして測定し、これをタイヤ巾方向に複数位置で行ない、その平均値を採用することが望ましい。このようにして測定されたタイヤ摩耗エネルギーe1〜e4の一例を示すグラフを図4(A)〜(D)に例示している。なおグラフ中、縦軸は各摩耗エネルギーを示し、横軸はトレッド面の巾方向位置を示す(符号1と10がトレッド部の巾方向の各端部となる)。
【0020】
次に、本実施形態では、実車で所定の経路を走行し、その走行パターンから実車走行中に定常走行、旋回走行、加速走行及び減速走行がどのような頻度で発生しているのかを調べた。本例では評価対象のタイヤを4輪に装着した四輪自動車を用い、高速道路を約50%、山岳路を約25%、一般道を約25%の割合で合計約330kmを走行した。そして、全走行距離において、先ず左右の加速度、前後の加速度の発生頻度(距離頻度)の分布を調べたところ、図5、図6に示すような結果が得られた。
【0021】
本例では図5において、左右の加速度(左右G)が0.1G以上を実質的な旋回状態とし、また図6において、前後の加速度(前後G)が0.1G以上を実質的な加速乃至減速状態として定め各加速度の分布を表1のように決定した。
【0022】
【表1】
【0023】
ここで、単純比率では、
定常(直線+旋回):旋回:加速:減速
=0.74:0.14:0.06:0.06
となるが、直進走行と推定されるもの(左右の加速度が0.1G未満)の中には、定常走行、加速走行又は減速走行が同時に含まれている。なお旋回走行時には、加速及び減速が同時に生じないことを前提とすると、表1から、定常走行、旋回走行、加速走行及び減速走行が占める各発生頻度に基づいて定常走行の重み付け係数a、旋回走行の重み付け係数b、加速走行の重み付け係数c及び減速走行の重み付け係数dを決定すると表2に示すようになる(a+b+c+d=1とする)。
【0024】
【表2】
【0025】
次に、前記台上摩耗エネルギー測定装置1により得られた各摩耗エネルギーe1〜e4と前記重み付け係数a〜dを用いて実車走行により生じるタイヤの全摩耗エネルギーEtを推定する全摩耗エネルギー推定処理を行う。全摩耗エネルギーEtは、本例では前記各摩耗エネルギーe1〜e4にそれぞれの前記重み付け係数a〜dを少なくとも乗じるが、より具体的には下記式▲1▼により求めるものが例示される。
Et=a×e12 +b×e22 +c×e32 +d×e42 … ▲1▼
【0026】
式(1) では、台上摩耗エネルギー測定装置により得られた摩耗エネルギーe1ないしe4がそれぞれ2乗されて、それぞれの前記重み付け係数a〜dが乗じられている。この理由は、タイヤの摩耗量は、接地力(外力)の2乗に比例するという Schallamachの理論式(摩耗量A=k・F2 /c、k:定数、F:接地力(外力)、c:剛性)に基づくためである(例えば、Rubber Chem.Technol.,41,209(1968))。即ち、摩耗エネルギーe1ないしe4がそれぞれ2乗されて Schallamach の理論式のように摩耗量についてのエネルギー指数をうるのであり、本明細書においては、このタイヤの摩耗量に関与するエネルギー全体についてその指数を「全摩耗エネルギーEt(単位:(J/m 2 ) 2 )」と称して、タイヤの摩耗量の算出のために用いるのである。
【0027】
次に、タイヤの全摩耗エネルギーEtを用いてタイヤの摩耗量を予測する摩耗予測処理を行う。この全摩耗エネルギーEtは、一般的な実車走行パターンを考慮したときの単位走行距離当たりのタイヤの摩耗エネルギーにほぼ等しい。したがって、この全摩耗エネルギーEtが大きいほど実車での摩耗が早いことを示す。そして、この値を種々比較することにより、耐摩耗性の善し悪しなどを比較検討でき、より実車摩耗評価テストに近い摩耗解析が可能になる。
【0028】
図7には、前記全摩耗エネルギーEtとタイヤ接地面のゴム強度に比例するゴム強度指数Hdとの比(Hd/Et)と、実車の耐摩耗性評価テストの結果との関係を示す。図において、縦軸は、タイヤを実車に装着して前記実車走行経路を走行しそのときのタイヤの単位摩耗量当たりの走行距離、横軸は、本実施形態の摩耗予測方法によって得られた前記比(Hd/Et)を示している。図から明らかなように、前記比(Hd/Et)が大きくなると、単位摩耗量当たりの走行距離が増大している。これはゴム強度が大である程摩耗し難い知見とも一致し、実車テストと本実施形態の摩耗予測方法とは非常に良い相関を示していることが分かる。
【0029】
上記の実施形態においては、実車走行パターンを高速道路、山岳路、一般道を所定の割合で走行したものを例示したが、これに限定することなく評価を行おうとするタイヤに応じた種々の走行パターンを設定することができるのは言うまでもない。また、評価対象車をFF又はFRとする場合には、従動輪については加速走行時の摩耗エネルギーを省略することもできる。さらに、先に重み付け係数を決定した後、台上摩耗エネルギー測定処理を行っても良い。また、上記の例では、平均の摩耗エネルギーを用いたが、トレッド面の各位置毎に調べることもできる。
【0030】
次に本発明の他の実施形態について説明する
本例では、実車の走行状態には、台上摩耗エネルギー測定装置では再現し得ない種々の状況を考慮に入れて前記台上摩耗エネルギー測定装置により測定された摩耗エネルギーを補正するものである。例えば、現実の車両で生じる加速度、減速度は、種々の値をとりうるが、台上摩耗エネルギ−測定装置では、これらは一定値で測定される。また実車では、タイヤにトー角を与えることがある。さらに、実車の加速、減速時には前、後輪の荷重の変化が生じる。このような状況は、台上摩耗エネルギー測定装置では再現が実質的に困難であり、前記摩耗エネルギーにはこれらに基づく誤差が含まれると考えられる。本例では、これらの誤差を補正することを特徴としている。
【0031】
先ず、加速度の変動については、加速走行時の摩耗エネルギーe3に、測定装置上で再現された台上加速度α1と前記実車走行パターンの加速走行時における平均加速度αvとの比(αv/α1)を乗じることにより補正を行う。同様に、減速走行時の減速度の変動については、摩耗エネルギーe4に、測定装置上で再現された台上減速度β1と前記実車走行パターンの減速走行時における平均減速度βvとの比(βv/β1)を乗じることにより補正を行う。なお平均加速度(減速度)は、前後加速度(減速度)が0.1G〜0.5Gについて、各加速度(減速度)とその発生頻度を乗じて合算し、これを全頻度で除すことにより得られる。このような補正処理を行うことにより、より精度の高い摩耗予測評価を行うことができる。
【0032】
次に、実車にトー角が与えられている場合の補正処理について説明する。
前記トー角とは、図8に示す如く、車両Mを上から見た場合において、タイヤtの中心線と、車両の中心線と平行な直線とのなす角度θである。とりわけ乗用車などでは、直進性を高めるために、前輪側のタイヤを「ハ」の字状の如くトー角を与えることが多い。この場合、実車の直進定常走行時において、タイヤには微小なスリップ角が与えられ、その分だけ台上での摩耗エネルギーよりも大きな摩耗エネルギーが働くことになる。
【0033】
そこで本実施形態では、台上摩耗エネルギー測定処理により測定された定常走行時の摩耗エネルギーe1、加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4に、実車のタイヤのトー角θに応じた摩耗エネルギー変化量ΔXを加える第1の補正処理を含むものが例示される。つまり、各摩耗エネルギーは、次のようにしてe1’、e3’、e4’に補正される。
e1’=e1+ΔX1
e3’=e3+ΔX3
e4’=e4+ΔX4
【0034】
図9は、前記トー角θと摩耗エネルギー増分δとの関係を示している。図から明らかなように、トー角θと摩耗エネルギー増分δとは比例関係にある。そして、この前記摩耗エネルギー変化量ΔXは、摩耗評価しようとする対象車両のトー角により図9のグラフから摩耗エネルギー増分δを読みとり、前記重み付け係数を乗じて下記の如く求めることができる。この摩耗エネルギー変化量ΔXを前記定常走行時の摩耗エネルギーe1、加速走行時の摩耗エネルギーe2及び減速走行時の摩耗エネルギーe4にそれぞれ加えておくことにより、より実車走行に近い摩耗エネルギーへ補正でき、より一層精度の良い摩耗評価を行うことが可能になる。
【0035】
ΔX1=a×(δ)2
ΔX2=b×(δ)2
ΔX3=c×(δ)2
【0036】
また図10(A)に示す車両Mの定常走行から同図(B)の加速走行に移行した場合、車体が重心G回りに回転し、いわゆるノーズアップ(車体前方の浮き上がり)が生じ、前輪側のタイヤtfの負荷荷重は減少しかつ後輪側のタイヤtrの負荷荷重は増大する。逆に、定常走行から減速走行に移行した場合、同図(C)に示すように、車体が重心G回りに回転し、いわゆるノーズダイブ(車体前方の沈み込み)が生じる。この場合、前輪側のタイヤtfの負荷荷重は増大しかつ後輪側のタイヤtrの負荷荷重は減少する。
【0037】
そこで本例では、前記台上摩耗エネルギー測定処理により測定された加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4に、実車の駆動中に生じるタイヤの荷重変動に応じて各摩耗エネルギーを増減する第2の補正処理を含むものを例示している。加速ないし減速時のタイヤの負荷荷重W’は、次式により補正することができる。
W’=W×(1±β)
β=(h×A)/L
【0038】
【0039】
そして、前記加速走行時の摩耗エネルギーe3、減速走行時の摩耗エネルギーe4に、この荷重W’と台上摩耗エネルギー測定装置時の負荷荷重wとの比(W’/w)を乗じることにより荷重変動分を補正することができる。
e3’=e3×(W’/w)
e4’=e4×(W’/w)
【0040】
【実施例】
タイヤサイズが195/65R15の乗用車用タイヤについて本発明方法を適用し摩耗予測を行った。各走行状態の摩耗エネルギーの測定結果は、表3に示すとおりであり、また対象となる車両は国産乗用車であって、仕様は表4の通りである。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
次に、前輪タイヤについて、重み付け係数、実車走行データの結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
これらから計算したところ、前輪のタイヤの全摩耗エネルギーは513.8(J/m2 )であった。そしてゴム強度指数を234として、また経験式より、単位摩耗量当たりの走行可能距離は前輪のタイヤで約8872km/mm、摩耗ライフは、有効溝深さ6.0mmとすると約53232kmと予測される。そして、このタイヤを実車摩耗テストに供して摩耗ライフを調べたところ、8261km/mmとなり、本発明の予測方法誤差は93%となり精度の良いことが確認できた。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のタイヤの摩耗予測方法によれば、実車の走行パターンから定常、旋回、加速及び減速の各走行状態にその発生頻度に基づいた重み付けを行い、台上摩耗試験により得られた摩耗エネルギーにこれらの重み付けを考慮してタイヤの全摩耗エネルギーを求めているため、実車に近い状態で摩耗予測が可能となり、精度の良い摩耗予測を行うことができる。
【0047】
また請求項2記載の発明では、現実の車両で採用されるトー角に応じて摩耗エネルギーを補正するため、より実車イメージに近づけて精度の高い摩耗予測を行うことができる。
【0048】
また請求項3記載の発明では、現実の車両で生じる加減速時の前、後輪の荷重の変化などに応じて摩耗エネルギーを補正するため、より実車イメージに近づけて精度の高い摩耗予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】台上摩耗エネルギー測定装置の外観側面図である。
【図2】その正面図である。
【図3】測定器を例示する断面図である。
【図4】(A)〜(D)は、定常、旋回、加速及び減速時の各摩耗エネルギーe1〜e4の一例を示すグラフである。
【図5】実車走行パターン中の左右の加速度の発生頻度を示すグラフである。
【図6】実車走行パターン中の前後の加速度の発生頻度を示すグラフである。
【図7】単位摩耗量当たりの走行距離と、比(ゴム強度指数/全摩耗エネルギー)との関係を示すグラフである。
【図8】トー角を説明する車両の概略平面図である。
【図9】摩耗エネルギー変化量ΔXと、トー角θとの関係を示すグラフである。
【図10】(A)は定常走行、(B)は加速走行、(C)は減速走行の各条対を示す側面図である。
【符号の説明】
1 台上摩耗エネルギー測定装置
t タイヤ
Claims (3)
- 台上摩耗エネルギー測定装置によりタイヤの定常走行時の摩耗エネルギーe1、旋回走行時の摩耗エネルギーe2、加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4を測定する台上摩耗エネルギー測定処理と、
実車走行パターン中の前記定常走行、旋回走行、加速走行及び減速走行が占める各発生頻度に基づいて定常走行の重み付け係数a、旋回走行の重み付け係数b、加速走行の重み付け係数c及び減速走行の重み付け係数dを決定する重み付け係数決定処理と、
前記各摩耗エネルギーe1〜e4にそれぞれの前記重み付け係数a〜dを乗じて合算し実車走行により生じるタイヤの全摩耗エネルギーEtを推定する全摩耗エネルギー推定処理と、
このタイヤの全摩耗エネルギーEtを用いてタイヤの摩耗を予測する摩耗予測処理とを含むことを特徴とするタイヤの摩耗予測方法。 - 前記台上摩耗エネルギー測定処理により測定された定常走行時の摩耗エネルギーe1、加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4に、実車のタイヤのトー角αにより定まる摩耗エネルギー変化量ΔXを加える第1の補正処理を含むことを特徴とする請求項1記載のタイヤの摩耗予測方法。
- 前記台上摩耗エネルギー測定処理により測定された加速走行時の摩耗エネルギーe3及び減速走行時の摩耗エネルギーe4に、実車の制動中に生じるタイヤの荷重変動に応じて各摩耗エネルギーを増減する第2の補正処理を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤの摩耗予測方法。
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