JP6112870B2 - タイヤの摩耗予測方法、及びタイヤの摩耗予測プログラム - Google Patents
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例えば、特許文献1に記載のタイヤの摩耗予測方法では、上記前提を基に、タイヤの状態(フリーローリング状態、横力、駆動力、制動力が付与されている状態等)ごとにトレッドの踏面にかかる摩擦エネルギーを求めること等により、タイヤの摩耗予測の正確性を高めている。
本発明のタイヤの摩耗予測方法は、所与の荷重条件Lciにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーである荷重条件摩擦エネルギーEciと、前記所与の荷重条件Lciでのタイヤの使用頻度である荷重条件使用頻度Fciとを、複数の荷重条件について算出して、トレッドの踏面の全摩擦エネルギーEを算出する全摩擦エネルギー算出工程を含み、前記全摩擦エネルギー算出工程は、前記荷重条件摩擦エネルギーEciを取得する、工程A1と、前記荷重条件使用頻度Fciを取得する工程A2と、前記荷重条件摩擦エネルギーEciと、前記荷重条件使用頻度Fciとを乗算して、前記所与の荷重条件Lciにおける全摩擦エネルギーである、荷重条件積算摩擦エネルギーEcを算出する工程A3と、前記荷重条件積算摩擦エネルギーEcを、前記複数の荷重条件について加算して、前記全摩擦エネルギーEを算出する工程A4とを含み、前記工程A4は、前記タイヤのキャンバー角、装着された前記タイヤの内圧からなる群から選択される少なくとも一つの車両のデータに基づいて、前記全摩耗エネルギーEを算出する工程を更に含むことを特徴とする。
なお、各摩擦エネルギーは、踏面の単位面積当たりの摩擦エネルギーであり、その単位は、例えば、N/mやkgf/cmである。
以下、図面を参照して、本発明のタイヤの摩耗予測方法の実施形態について詳細に、例示説明する。
本発明の第一実施形態のタイヤの摩耗予測方法1は、タイヤのトレッドの踏面の摩擦エネルギーの総計(全摩擦エネルギーE)を算出する全摩擦エネルギー算出工程(工程A)からなる。そして、工程Aは、下記の工程A1〜A4を含む。
ここで、車両が走行する間の荷重変化は、例えば、一般的なGセンサーを用いて測定することができる。ここで、Gセンサーとは、圧力センサー、温度センサー、その他三軸加速度センサー等を内蔵するセンサーを指す。
また、上記荷重変化は、車両の重心位置の加速度を測定し、車両の質量と加速度とを乗算することにより、求めることができる。ここで、車両の前後左右方向(水平方向)の重心位置は各タイヤに対する重量分配により推測することができ、車両の上下方向(鉛直方向)の重心位置は車両メーカーが公表する車両諸元から推測することができる。
更に、荷重条件摩擦エネルギーEciは、例えば、特開平7−063658号公報に記載のタイヤのトレッド踏面の接地部測定装置を用いて行うことができる。具体的には、接地部測定装置を用いて、所与の荷重条件における滑り量S(cm)を測定すると共に、試験路面に設けられている三成分力変換器を用いて、剪断力τ(kgf/cm2)を測定する。そして、Eci=∫τdSの式に従って、荷重条件摩擦エネルギーEci(kgf/cm)を算出する。
上記タイヤの使用頻度Fciは、例えば、GPSの測位情報から定めることができる。
本発明の第二実施形態のタイヤの摩耗予測方法10は、上記第一実施形態のタイヤの摩耗予測方法1において、荷重条件摩擦エネルギーEciを算出するに当たり、タイヤの状態x(以下、単に「状態x」ともいう。)ごとの荷重条件摩擦エネルギーであるx荷重条件摩擦エネルギーEcix、並びに、その荷重条件及びそのタイヤの状態xでのタイヤの使用頻度であるx荷重条件使用頻度を取得して、複数のタイヤの状態についてこれを加算して、荷重条件積算摩擦エネルギーEcひいては全摩擦エネルギーEを算出するものである。
すなわち、このタイヤの摩耗予測方法10は、上記タイヤの摩耗予測方法1において、工程A1が下記の工程A11〜A14を、工程A2が下記の工程A21〜A24を、工程A3が下記の工程A31〜A34を含むものである。
すなわち、工程A1は、例えば、状態fにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるf荷重条件摩擦エネルギーEcifを取得する工程A11と、状態sにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるs荷重条件摩擦エネルギーEcisを取得する工程A12と、状態dにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるd荷重条件摩擦エネルギーEcidを取得する工程A13と、状態bにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるb荷重条件摩擦エネルギーEcibを取得する工程A14と、を含む。
すなわち、工程A2は、例えば、状態fでのタイヤの使用頻度であるf荷重条件使用頻度Fcifを取得する工程A21と、状態sでのタイヤの使用頻度であるs荷重条件使用頻度Fcisを取得する工程A22と、状態dでのタイヤの使用頻度であるd荷重条件使用頻度Fcidを取得する工程A23と、状態bでのタイヤの使用頻度であるb荷重条件使用頻度Fcibを取得する工程A24と、を含む。
すなわち、工程A3は、例えば、f荷重条件積算摩擦エネルギーEcfを、Ecf=Ecif×Fcifの式に従って算出する工程A31と、s荷重条件積算摩擦エネルギーEcsを、Ecs=Ecis×Fcisの式に従って算出する工程A32と、d荷重条件積算摩擦エネルギーEcdを、Ecd=Ecid×Fcidの式に従って算出する工程A33と、b荷重条件積算摩擦エネルギーEcbを、Ecb=Ecib×Fcibの式に従って算出する工程A34と、を含む。
すなわち、工程A4では、例えば、Ec=Ecf+Ecs+Ecd+Ecbという式に従って、その荷重条件Lciにおける全摩耗エネルギーEcを算出する。
またなお、「横力」とは、タイヤ転動時のタイヤの進行方向と直交する方向の力を指す。
更になお、「駆動力」とは、タイヤ転動時のタイヤの進行方向の力を指す。
更になお、「制動力」とは、タイヤ転動時のタイヤの進行方向とは逆方向の力を指す。
そのため、車両を、タイヤにかかる荷重負荷が大きく変動する走行条件下で、走行させる場合にも、タイヤの摩耗予測を更に良好な精度で行うことができる。
本発明の第三実施形態のタイヤの摩耗予測方法100は、全摩耗エネルギーEを算出するに際し、タイヤを装着する車両のデータを用いるものである。
車両のデータとしては、車両のスリップ角、装着されたタイヤ一輪当たりの荷重、装着されたタイヤの内圧、車両の重心位置、車両の重心の高さ、キャンバー角(CA)等の各種アライメント等が挙げられる。
なお、タイヤを装着する車両のスリップ角、装着されたタイヤ一輪当たりの荷重、又は装着されたタイヤの内圧が相対的に大きい場合には、トレッドの踏面にかかる摩擦エネルギーが増大するため、EciInを相対的に大きい値に定めることができる。
そのため、車両を、タイヤにかかる荷重負荷が大きく変動する走行条件下で、走行させる場合にも、タイヤの摩耗予測を更に良好な精度で行うことができる。
本発明の第四実施形態のタイヤの摩耗予測方法1000は、上記工程Aに加えて、タイヤの摩耗寿命を予測する摩耗寿命予測工程(工程B)を更に含むものである。
上記摩耗抵抗指数G1は無次元量である。
本発明のタイヤの摩耗予測プログラムは、上記本発明のタイヤの摩耗予測方法を実行するためのプログラムである。
本発明の一例のタイヤの摩耗予測プログラムは、例えば、所与の荷重条件Lciにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーである荷重条件摩擦エネルギーEciを取得する、荷重条件摩擦エネルギー取得ステップと、所与の荷重条件Lciでのタイヤの使用頻度である荷重条件使用頻度Fciを取得する、荷重条件使用頻度取得ステップと、上記荷重条件摩擦エネルギーEciと荷重条件使用頻度Fciとを乗算して、上記所与の荷重条件における摩擦エネルギーである荷重条件積算摩擦エネルギーEcを算出する、荷重条件積算摩擦エネルギー算出ステップと、上記荷重条件積算摩擦エネルギーEcを、複数の荷重条件について加算して、トレッドの踏面の全摩擦エネルギーEを算出する、全摩擦エネルギー算出ステップを含むものである。
上記本発明のタイヤの摩耗予測方法を使用するための他のタイヤの摩耗予測プログラムは、当業者ならば容易に構成することができる。
上記ドラム試験機に装着した重荷重用空気入りタイヤを、荷重条件が大きく変動する条件下(悪路面、非平坦路面、傾斜路面等)で走行させ、タイヤのトレッドに設けられた溝の深さが、タイヤの棄却限界値(1.6mm)に至るまでの時間、すなわち、タイヤの摩耗寿命実測値(以下、「R1」ともいう。)を計測した。
図1、4に示す、本発明のタイヤの摩耗予測方法を用いて、タイヤの摩耗寿命期待値T1を算出した。そして、このタイヤの摩耗寿命予測期待値と、上記タイヤの摩耗寿命実測値との誤差(|T1−R1|/R1)×100(%)を算出した。結果を表1に示す。
図1、4に示す、比較例のタイヤの摩耗予測方法を用いて、タイヤの摩耗寿命の予測値を算出した。そして、実施例1の場合と同様に、誤差を算出した。結果を表1に示す。
本発明のタイヤの摩耗予測方法、及びタイヤの摩耗予測プログラムは、特に、荷重変動が比較的大きい建設車両用タイヤの摩耗予測に、好適に用いられる。
10 本発明の第二実施形態のタイヤの摩耗予測方法
100 本発明の第三実施形態のタイヤの摩耗予測方法
1000 本発明の第四実施形態のタイヤの摩耗予測方法
Claims (5)
- タイヤの摩耗予測方法であって、
所与の荷重条件Lciにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーである荷重条件摩擦エネルギーEciと、前記所与の荷重条件Lciでのタイヤの使用頻度である荷重条件使用頻度Fciとを、複数の荷重条件について算出して、トレッドの踏面の全摩擦エネルギーEを算出する全摩擦エネルギー算出工程
を含み、
前記全摩擦エネルギー算出工程は、
前記荷重条件摩擦エネルギーEciを取得する、工程A1と、
前記荷重条件使用頻度Fciを取得する工程A2と、
前記荷重条件摩擦エネルギーEciと、前記荷重条件使用頻度Fciとを乗算して、前記所与の荷重条件Lciにおける全摩擦エネルギーである、荷重条件積算摩擦エネルギーEcを算出する工程A3と、
前記荷重条件積算摩擦エネルギーEcを、前記複数の荷重条件について加算して、前記全摩擦エネルギーEを算出する工程A4と
を含み、
前記工程A4は、前記タイヤのキャンバー角、装着された前記タイヤの内圧からなる群から選択される少なくとも一つの車両のデータに基づいて、前記全摩耗エネルギーEを算出する工程
を更に含む
ことを特徴とする、タイヤの摩耗予測方法。 - 前記工程A1は、
タイヤがフリーローリングの状態におけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるf荷重条件摩擦エネルギーEcifを取得する工程A11と、
タイヤに横力が付与されている状態におけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるs荷重条件摩擦エネルギーEcisを取得する工程A12と、
タイヤに駆動力が付与されている状態におけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるd荷重条件摩擦エネルギーEcidを取得する工程A13と、
タイヤに制動力が付与されている状態におけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーであるb荷重条件摩擦エネルギーEcibを取得する工程A14と、
を含み、
前記工程A2は、
前記フリーローリングの状態でのタイヤの使用頻度であるf荷重条件使用頻度Fcifを取得する工程A21と、
前記横力が付与されている状態でのタイヤの使用頻度であるs荷重条件使用頻度Fcisを取得する工程A22と、
前記駆動力が付与されている状態でのタイヤの使用頻度であるd荷重条件使用頻度Fcidを取得する工程A23と、
前記制動力が付与されている状態でのタイヤの使用頻度であるb荷重条件使用頻度Fcibを取得する工程A24と、
を含み、
前記工程A3は、
前記f荷重条件摩擦エネルギーEcifと、f荷重条件使用頻度Fcifとを乗算して、前記所与の荷重条件Lci及び前記フリーローリングの状態における摩擦エネルギーである、f荷重条件積算摩擦エネルギーEcfを算出する、工程A31と、
前記s荷重条件摩擦エネルギーEcisと、s荷重条件使用頻度Fcisとを乗算して、前記所与の荷重条件Lci及び前記横力が付与されている状態における摩擦エネルギーである、s荷重条件積算摩擦エネルギーEcsを算出する、工程A32と、
前記d荷重条件摩擦エネルギーEcidと、d荷重条件使用頻度Fcidとを乗算して、前記所与の荷重条件Lci及び前記駆動力が付与されている状態における摩擦エネルギーである、d荷重条件積算摩擦エネルギーEcdを算出する、工程A33と、
前記b荷重条件摩擦エネルギーEcibと、b荷重条件使用頻度Fcibとを乗算して、前記所与の荷重条件Lci及び前記制動力が付与されている状態における摩擦エネルギーである、b荷重条件積算摩擦エネルギーEcbを算出する、工程A34と、
前記f荷重条件積算摩擦エネルギーEcfと、前記s荷重条件積算摩擦エネルギーEcsと、d荷重条件積算摩擦エネルギーEcdと、b荷重条件積算摩擦エネルギーEcbと、を積算して、前記荷重条件積算摩擦エネルギーEcを算出する工程A35と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤの摩耗予測方法。 - タイヤの摩耗寿命を予測する摩耗寿命予測工程Bを更に含み、
前記工程Bは、
タイヤのトレッドのゴムの摩耗抵抗指数G1を取得する工程B1と、
前記摩耗抵抗指数G1と、請求項1又は2に記載のタイヤの摩耗予測方法により算出された前記全摩擦エネルギーEの逆数とを乗算して算出した値である、タイヤの耐摩耗係数mに基づいてタイヤの摩耗寿命を予測する工程B2と、
を含むことを特徴とする、タイヤの摩耗予測方法。 - 前記工程Bは、タイヤの摩耗寿命期待値T1を算出する摩耗寿命期待値算出工程B3を更に含み、
前記工程B3は、前記タイヤの耐摩耗係数mと、前記タイヤの残溝の深さからタイヤ棄却限界の溝の深さを減算した値とを乗算して算出した値である、タイヤの摩耗寿命期待値T1に基づいてタイヤの摩耗寿命を予測する工程
であることを特徴とする、請求項3に記載のタイヤの摩耗予測方法。 - コンピュータによって実行される、タイヤの摩耗予測プログラムであって、
所与の荷重条件Lciにおけるトレッドの踏面の摩擦エネルギーである荷重条件摩擦エネルギーEciと、前記所与の荷重条件Lciでのタイヤの使用頻度である荷重条件使用頻度Fciとを、複数の荷重条件について算出して、トレッドの踏面の全摩擦エネルギーEを算出する全摩擦エネルギー算出ステップ
を含み、
前記全摩擦エネルギー算出ステップは、
前記荷重条件摩擦エネルギーEciを取得するステップと、
前記荷重条件使用頻度Fciを取得するステップと、
前記荷重条件摩擦エネルギーEciと、前記荷重条件使用頻度Fciとを乗算して、前記所与の荷重条件Lciにおける全摩擦エネルギーである、荷重条件積算摩擦エネルギーEcを算出するステップと、
前記荷重条件積算摩擦エネルギーEcを、前記複数の荷重条件について加算して、前記全摩擦エネルギーEを算出するステップと
を含み、
前記全摩擦エネルギーEを算出するステップは、前記タイヤのキャンバー角、装着された前記タイヤの内圧からなる群から選択される少なくとも一つの車両のデータに基づいて、前記全摩耗エネルギーEを算出するステップ
を更に含む
ことを特徴とする、タイヤの摩耗予測プログラム。
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