JP3630925B2 - 水性エマルジョン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、水性エマルジョンに関し、さらに詳しくは、耐水性、粘度安定性、高速塗工性に優れる水性エマルジョンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)はエチレン性不飽和単量体、特に酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体の乳化重合用保護コロイドとして広く用いられており、これを保護コロイドとして用いて乳化重合して得られる水性エマルジョンは紙用、木工用およびプラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用および不織製品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で広く用いられている。このような水性エマルジョンは、PVA系重合体のけん化度を調整することにより、一般的に粘度が低く、ニュートニアン流動に近い粘性を有し、比較的耐水性の良好なものから、一般的に粘度が高く、比較的エマルジョン粘度の温度依存性が小さいものが得られることから、種々の用途に賞用されてきた。しかしながら、該水性エマルジョンのあるものは、流動性(高速塗工性)が不足している、また耐水性が悪い、エマルジョン粘度の温度依存性が大きい、放置時のエマルジョン粘度の変化が大きい(特に低温下)などの欠点を有しており、これらの性質は乳化重合に用いたPVA系重合体に依るところが大であることが知られている。
【0003】
すなわち、乳化重合用分散剤としてのPVA系重合体は、一般的には鹸化度98モル%程度のいわゆる”完全鹸化PVA”と鹸化度88モル%程度の”部分鹸化PVA”があり、前者を使用した場合、比較的耐水性および流動性(高速塗工性)は良好なものの、低温時のエマルジョン粘度の上昇が著しく、ゲル化し易いという欠点がある。他方、後者のPVA系重合体を使用した場合、エマルジョンの低温時の粘度上昇やゲル化性向は改善されるものの耐水性が低く、塗工速度に因る複雑な条件設定の必要性さらには高速塗工時の飛び散りによる塗工速度の抑制などの問題があるという欠点を有している。このような欠点を改良するために、両者のPVA系重合体の併用、両者の中間的な鹸化度のPVA系重合体の使用等が行われているが、耐水性、高速塗工性、エマルジョン粘度の小さな温度依存性、エマルジョンの保存安定性を同時に充分満足するに至っていない。また、皮膜の耐水性を向上させるために部分鹸化PVA系重合体を用いたエマルジョンに尿素樹脂や、各種架橋剤添加も行われているが、ある程度耐水性は改良されるものの粘度上昇等により、使用時の作業性が低下し、これらの方法も充分満足すべき結果が得られていない。また、耐水性、エマルジョン粘度の大きな温度依存性、エマルジョンの保存安定性を同時に改良するため方法として、特開平6ー80709号報等に炭素数4以下のαーオレフィン単位含有するPVA系重合体の使用があり、上記問題点に関して実質的にかなりの効果が認められているが、昨今、厳しい品質管理が要求される中においては、まだ満足するに至らないケースがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとでPVA保護コロイド系水性エマルジョンの特長(作業性、初期接着力など)を損なうことなく、耐水性、粘度安定性、高速塗工性に優れる水性エマルジョンを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する接着剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、分散質がエチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体からなる(共)重合体であり、分散剤が炭素数4以下のα−オレフィン単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコール(A)、澱粉(B)、単糖類、二糖類およびオリゴ糖類の少なくとも一種の糖類(以下これらの糖類を単に糖類と記す)(C)からなり、成分(A)100重量部に対する成分(B)の割合が1〜10000重量部、成分(C)の割合が1000重量部以下である水性エマルジョンがその目的に適合しうることを見いだした。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、分散質がエチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体からなる(共)重合体であり、分散剤が炭素数4以下のα−オレフィン単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコール(A)、澱粉(B)、糖類(C)からなり、成分(A)100重量部に対する成分(B)の割合が1〜10000重量部、成分(C)の割合が1000重量部以下である水性エマルジョンを提供するものである。
【0006】
本発明の水性エマルジョンにおける分散質であるエチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体からなる(共)重合体は、各種のものがあるが、この(共)重合体の原料であるエチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体の好ましい例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリドなどのハロゲン化オレフィン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物、さらには、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩などのアクリルアミド系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸およびナトリウム、カリウム塩などのスチレン系単量体、その他N−ビニルピロリドンなど、また、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体が挙げられ、これらは単独あるいは二種以上混合して用いられる。上記エチレン性不飽和単量体の中でも、ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンおよびジエン系単量体が好ましく、特にビニルエステル、エチレンとビニルエステルとの併用およびビニルエステルと(メタ)アクリル酸エステルの併用が好適である。
【0007】
本発明の水性エマルジョンにおける分散剤を構成する変性PVA(A)のα−オレフィンは、炭素数4以下のもので、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等が挙げられるが、水性エマルジョン皮膜の耐水性等の観点からエチレンが好ましい。該変性PVA中のα−オレフィン単位の含有量は1〜20モル%であり、2〜18モル%が好ましく、2.5〜15モル%がより好ましく、3〜12モル%が特に好ましい。α−オレフィン単位の含有量が1モル%未満の場合には、水性エマルジョン皮膜の耐水性や水性エマルジョンの低温時粘度安定性が低下する。α−オレフィン単位の含有量が20モル%より大の場合には、該変性PVAの水溶性が低下したり、水性エマルジョンの保存安定性が低下する。
【0008】
本発明の水性エマルジョンの分散剤であるα−オレフィン変性PVAの粘度平均重合度(以下、重合度と略記する)は50〜8000が好ましく、100〜6000がより好ましく、200〜4000が特に好ましい。変性PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、変性PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中でで測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
重合度が50未満の場合には、水性エマルジョンに対する保護コロイド性が低く、水性エマルジョンが各種安定性(機械的安定性、化学的安定性等)に劣る。一方、重合度が8000より大の場合には、水性エマルジョンの粘度が過度に高くなったり、水性エマルジョンの分散安定性が低下する問題がある。
【0009】
また、本発明の水性エマルジョンにおける分散剤のα−オレフィン変性PVAの鹸化度は80〜99.99モル%が好ましく、85〜99.9モル%がより好ましく、88〜99.8モル%が特に好ましい。けん化度が80モル%未満の場合には、該変性PVAの水溶性が低下したり、水性エマルジョン皮膜の耐水性が低下する。鹸化度が99.99モル%より大の場合には、水性エマルジョンの分散安定性が低下したり、その放置粘度安定性が低下する問題がある。
【0010】
本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成する変性PVAは、ビニルエステルとα−オレフィンとの共重合体をけん化することにより得られる。ビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを得る点から酢酸ビニルが好ましい。本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成する変性PVAは、さらに、アニオン基もしくはカチオン基を含有していてもよい。これらアニオン基もしくはカチオン基を有する単量体としては、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の中でも、入手のし易さおよび共重合性の観点から、無水マレイン酸、無水マレイン酸から誘導されるハーフエステル、イタコン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライドに由来する単量体が好ましい。これらの単量体単位の含有量は、通常10モル%以下であり、0.1〜8モル%がより好ましい。
【0011】
本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成する変性PVAは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位以外の単量体単位を含有していても良い。このような単位としては、アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フツ化ビニル、フツ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、その塩またはそのエステル;イタコン酸、その塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。これらの単量体単位の含有量としては、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、3モル%以下がさらにより好ましい。
【0012】
本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成する澱粉(B)の割合は、変性PVA(A)100重量部に対して1〜10000重量部であり、5〜8000重量部がより好ましく、10〜5000重量部がさらに好ましく、20〜3000重量部が特に好ましい。澱粉(B)としては、生澱粉、生澱粉分解産物、澱粉誘導体およびアミロースが用いられる。生澱粉としては、小麦、コーン、米、馬鈴薯、甘しょ、タピオカ、サゴ椰子などより採った澱粉が挙げられ、一般的には小麦澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉が適当である。生澱粉分解産物としては、酸化澱粉やデキストリンが挙げられ、酸化澱粉が適当である。澱粉誘導体としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉などが挙げられる。本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成する澱粉の割合が変性PVA(A)100重量部あたり1重量部未満の場合には、水性エマルジョンの放置安定性が十分ではない。また、澱粉含有量が10000重量部を越える場合には、水性エマルジョン皮膜の強度低下や水性エマルジョンの分散安定性低下が起こる。
【0013】
本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成する糖類(C)としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類が挙げられる。単糖類としては、グルコース、フルクトース、異性化糖、キシロースなどが挙げられる。二糖類としては、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、パラチノース、還元麦芽糖、還元パラチノース、還元乳糖などが挙げられる。オリゴ糖類としては、水あめ、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳糖オリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、カップリングシュガー、シクロデキストリン化合物などが挙げられ、このうちシクロデキストリン化合物が好ましい。オリゴ糖類としては、10量体以下のものが好適に用いられる。これらの糖類(C)としては水溶性または水分散性であることが好ましい。
本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成する糖類(C)の割合は、変性PVA(A)100重量部に対して1000重量部以下であり、200重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましく、70重量部以下が特に好ましい。変性PVA(A)100重量部に対して1000重量部以下の範囲で含有した場合には変性PVA(A)と澱粉(B)の相溶性が増し、水性エマルジョンの取り扱い性が容易になる場合がある。糖類含有量が変性PVA(A)100重量部に対して1000重量部を越える場合には、水性エマルジョン皮膜の強度低下や水性エマルジョンの分散安定性低下が起こる。
【0014】
本発明の水性エマルジョンの分散剤を構成するPVA系重合体(A)と澱粉(B)および糖類(C)との割合は、上述の割合であれば特に制限はないが、(A)と[(B)+(C)]との重量混合比は(A)100重量部に対して[(B)+(C)]は0.1〜10000重量部が適当で、1〜1000重量部が好ましく、(B)と(C)との重量混合比は(B)100重量部に対して(C)が10000重量部以下が適当で、1000重量部以下が好ましい。
【0015】
本発明の水性エマルジョンは、分散質がエチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体からなる(共)重合体であり、分散剤が炭素数4以下のα−オレフィン単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコール(A)、澱粉(B)、糖類(C)からなり、成分(A)100重量部に対する成分(B)の割合が1〜10000重量部、成分(C)の割合が1000重量部以下であれば何ら制限を受けるものではない。すなわち、本発明の水性エマルジョンを製造するにあたっては、前述した炭素数4以下のα−オレフィン変性PVA(A)と澱粉(B)および糖類(C)からなる分散剤水溶液中で、従来公知の重合開始剤の存在下に、上記エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体を一時叉は連続的に添加して、該単量体を乳化重合することにより得る方法や、上記単量体を、予め上記分散剤水溶液を用いて乳化したものを、連続的に重合反応系に添加する方法等の従来公知の乳化重合方法が使用できる。また、変性PVA(A)存在下で上記単量体を乳化重合した水性エマルジョンに澱粉(B)および糖類(C)を後添加して調製した水性エマルジョンでも何ら差し支えない。さらには、従来公知のPVAや界面活性剤の存在下に上記単量体を乳化重合して得た水性エマルジョンに上記の変性PVA(A)、澱粉(B)、糖類(C)の水溶液を後添加したものでも良い。
【0016】
本発明の水性エマルジョン中の分散剤(A)+(B)+(C)の分散質100重量部に対する割合は特に制限はないが、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部の範囲が好ましい。該使用量が1重量部未満および30重量部を越える場合には、分散安定性が低下する等の問題がある。また、該使用量が30重量部を越える場合には水性エマルジョンの過度の粘度上昇や水性エマルジョン皮膜の耐水性低下等が起こる。
【0017】
本発明の水性エマルジョンは、上記の方法で得られる水性エマルジョンをそのまま用いても良いが、必要があれば、従来公知の各種エマルジョンを本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。なお、本発明の水性エマルジョンには、必要に応じて、従来公知のアニオン性、ノニオン性あるいはカチオン性の界面活性剤や、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、無水マレイン酸/イソブテン共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体などの水溶性高分子や、乾燥性、セット性、粘度、造膜性などを調整するために、トルエン、パークレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどの各種有機溶剤、尿素/ホルマリン樹脂、尿素/メラミン/ホルマリン樹脂、フェノール/ホルマリン樹脂などの熱硬化性樹脂を添加することができる。さらに、本発明の水性エマルジョンは、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、木粉などの充填剤、小麦粉などの増量剤、ホウ酸、硫酸アルミニウムなどの反応促進剤、酸化チタンなどの顔料あるいはその他、消泡剤、分散剤、凍結防止剤、防腐剤、防錆剤などの各種添加剤をも適宜添加することができる。
【0018】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。また、得られた水性エマルジョンの放置安定性、高速塗工性(粘度の剪断速度依存性)、皮膜耐水性を、下記の要領で評価した。
【0019】
(1)放置安定性試験
エマルジョンを100mlのガラス製サンプル管にいれ、5℃、30℃、50℃で30日間放置し、放置前後の粘度比を求めた。測定は、B型粘度計(回転数60rpm)を用い30℃で行った。
【0020】
(2)高速塗工性
B型粘度計で30℃での粘度を回転数を変えて測定し次式により粘度の剪断速度依存性を求めた。
粘度の剪断速度依存性=−(Logηr1−Logηr2)/(Logr1−Logr2)
r1,r2:回転数
【0021】
(3)水性エマルジョン皮膜の耐水性
テフロンシート上に水性エマルジョンを乾燥後500μmの厚さになるように流延し、20℃65%RH下で10日間乾燥させ水性エマルジョン皮膜を得た。該皮膜を直径2.5cmの円形に打ち抜き、それを20℃の水中に24時間浸漬した場合の吸水率、溶出率を求めた。
吸水率(%)=100×((W1−W0)/W0)
溶出率(%)=100×((W0ーW2)/W0)
W0:浸漬前皮膜の乾燥重量
W1:浸漬後皮膜の重量
W2:浸漬後皮膜を乾燥させた後の重量
【0022】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水400g、変性PVA(PVA−1:重合度1750、鹸化度98.9mol%、エチレン5mol%変性)30g、酸化澱粉(MSー3800:日本食品加工製)10g、トレハロース(トレハオース:(株)林原製)0.5gを仕込み95℃で完全に溶解した。次に、この水溶液を冷却、窒素置換後、140rpmで撹拌しながら酢酸ビニル40gを仕込み、60℃に昇温した後、過酸化水素/酒石酸のレドックス開始剤系の存在下で重合を開始した。重合開始15分後から酢酸ビニル360gを3時間にわたって連続的に添加し、重合を完結させた。固形分濃度50.4%、粘度6500mPa.sの安定なポリ酢酸ビニルエマルジョンが得られた。このエマルジョンの固形分100重量部に対してジブチルフタレート10部を添加混合し、放置安定性、高速塗工性、水性エマルジョン皮膜の耐水性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0023】
比較例1
実施例1において、酸化澱粉(MS−3800:日本食品加工製)を用いない以外は実施例1と同様にポリ酢酸ビニルエマルジョンを得て、それを評価した。結果を表1〜2に示す。
【0024】
実施例
実施例1の水性エマルジョン100重量部に酸化澱粉(MS−3800:日本食品加工製)の10%水溶液100重量部を後添加したもの評価した。結果を表1〜2に示す。
【0025】
比較例2
実施例1において、PVA−1のかわりに無変性PVA(PVA−2:重合度1750、鹸化度98.5mol%)を用いる以外は実施例1と同様にし、水性エマルジョンを得て、それを評価した。結果を表1〜2に示す。
【0026】
比較例3
実施例1において、PVA−1を用いない以外は実施例1と同様にしたが安定な水性エマルジョンは得られなかった。
【0027】
実施例
変性PVA(PVA−3:重合度1000、鹸化度96.7mol%、エチレン7.0mol%変性)20g、酸化澱粉(MS−3800:日本食品加工製)2g、β−シクロデキストリン0.2gをイオン交換水290gに加熱溶解し、それを窒素吹込口および温度計を備えた耐圧オートクレーブ中に仕込んだ。希硫酸でpH=4に調製後、酢酸ビニル300gを仕込み、次いでエチレンを45kg/cmGまで昇圧した(エチレン共重合量は60gに相当)。温度を60℃まで昇温後、過酸化水素/ロンガリット系レドックス開始剤で重合を開始した。2時間後、残存酢酸ビニル濃度が0.6%となったところで重合を終了した。固形分濃度52.5%、粘度3000mPa.sの安定なポリ(エチレンー酢酸ビニル)共重合体エマルジョンが得られた。このエマルジョンを用いて、放置安定性、高速塗工性、水性エマルジョン皮膜の耐水性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0028】
比較例4
実施例で酸化澱粉とβ−シクロデキストリンを用いない以外は実施例と同様にして水性エマルジョンを得て、それを評価した。結果を表1〜2に示す。
【0029】
実施例
末端にチオール基を有する変性PVA(PVA−5:重合度300,けん化度98.0モル%,エチレン13mol%変性)15g、酸化澱粉(MS−3800:日本食品加工製)15g、グルコース3gをイオン交換水320g中で加熱溶解し、それを窒素吹込口および温度計を備えた耐圧オートクレーブ中に仕込んだ。希硫酸でpH4.0に調整した後、スチレン165gを仕込み、次いで耐圧計量器よりブタジエン135gを仕込み、70℃に昇温後、2%過硫酸カリウム水溶液10gを圧入して重合を開始した。15時間後に固形分濃度49.7%、粘度3500mPa・sのポリ(スチレン−ブタジエン)共重合体エマルジョンを得た。このエマルジョンを用いて、放置安定性、高速塗工性、水性エマルジョン皮膜の耐水性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0030】
比較例
実施例で酸化澱粉とグルコースを用いない以外は実施例と同様にして水性エマルジョンを得て、それを評価した。結果を表1〜2に示す。
【0031】
実施例
実施例1において、PVA−1、酸化澱粉、トレハロースのかわりに、PVA−2を30g用いて水性エマルジョンを得た(固形分濃度49.0%)。この水性エマルジョンに100重量部に対してPVA−1 30g、酸化澱粉(MS−3800:日本食品加工製)10g、トレハロース(トレハオース:(株)林原製)0.5gを水170gに溶解したものを20部添加した。これに、固形分100重量部に対してジブチルフタレート10部を添加混合し、放置安定性、高速塗工性、水性エマルジョン皮膜の耐水性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0032】
比較例
実施例でPVA−1、酸化澱粉、トレハロースの水溶液を添加しない以外は実施例と同様にして水性エマルジョンを得て、それを評価した。結果を表1〜2に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003630925
【0034】
【表2】
Figure 0003630925
【0035】
【発明の効果】
PVA保護コロイド系水性エマルジョンの特長(作業性、初期接着力など)を損なうことなく、耐水性、粘度安定性、高速塗工性に優れる水性エマルジョンを提供することできる。

Claims (2)

  1. 分散質がエチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体からなる(共)重合体であり、分散剤が炭素数4以下のα−オレフィン単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコール(A)、澱粉(B)、単糖類、二糖類およびオリゴ糖類の少なくとも一種の糖類(C)からなり、成分(A)100重量部に対する成分(B)の配合量が1〜10000重量部、成分(C)の配合量が1000重量部以下である水性エマルジョン。
  2. 請求項1記載の炭素数4以下のα−オレフィン変性ポリビニルアルコール(A)がエチレン変性ポリビニルアルコールである請求項1記載の水性エマルジョン。
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