JP3816633B2 - 重合体組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は重合体組成物に関する。さらに詳しくは、非常に相溶性の良好な重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコールをPVAと略記することがある)と澱粉との組成物は、紙加工剤、経糸糊剤およびフィルムなどに使用されている。しかしながら、PVAと澱粉との組成物は相溶性に劣ることから、水溶液の安定性が悪く、相分離する傾向がある。この組成物水溶液より得られた皮膜は透明性が悪く、皮膜物性も良くない。PVAとの相溶性を向上させるために、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉誘導体や、酸化澱粉、デキストリンなどの澱粉分解物が検討されているが、PVAとの相溶性は充分ではない。炭素数4〜20の長鎖アルキル基を共重合した変性PVAと生澱粉との組成物(特開昭56−14544号)や、末端に炭素数4〜50の長鎖アルキルを有するビニルアルコール系重合体と澱粉との組成物(特公平5−75013号)が知られている。しかしながら、これらの組成物は、水溶液の安定性や皮膜物性は充分ではない。ポリビニルアルコールと澱粉との組成物は、水溶性であり皮膜形成能を有することから、紙加工剤、経糸糊剤およびフィルムなどに使用されている。しかしながら、ポリビニルアルコールと澱粉は相溶性に劣るため、組成物水溶液の安定性が悪く、得られた皮膜は透明性が悪く、皮膜物性も良くない。ポリビニルアルコールとの相溶性を向上させるために、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉誘導体や酸化澱粉、デキストリンなどの澱粉分解物を用いることが試みられているが、ポリビニルアルコールとの相溶性が充分ではない。
【0003】
これに対して、炭素数4〜20の長鎖アルキル基を共重合した変性ポリビニルアルコールを用いると生澱粉との相溶性が向上することが知られている(特開昭56−14544)が、これも確かに混合水溶液の安定性は通常のポリビニルアルコールと比較して向上するが、それでもまだ充分ではなく、またその混合水溶液から製造した皮膜の物性も満足するものとは言えない。また上記の加工澱粉には効果が見られない。末端に炭素数が4〜50の長鎖アルキルを有するビニルアルコール系重合体を用いると澱粉との相溶性が向上することが知られており(特公平5−75013)、混合水溶液の安定性は通常のポリビニルアルコールと比較して確かに向上するが、その混合水溶液から製造した皮膜の物性は充分満足するものとは言えない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、組成物水溶液の経時的安定性に優れ、組成物水溶液から製造した皮膜物性に優れる重合体組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ビニルアルコール系重合体(A)(但し、ポリビニルアルコールハイドロゲルを除く)100重量部、澱粉(B)0.1〜10000重量部および糖類(C)0.1〜1000重量部からなる重合体組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるPVA系重合体は、水溶性もしくは水分散性であれば特に制限はなく、ノニオン変性PVA、アニオン変性PVAおよびカチオン変性PVAなどが使用可能である。特に、PVA系重合体が低温から高温において水溶液の放置粘度安定性に劣る場合、例えば結晶性の高い無変性PVAあるいは疎水基変性PVAの場合には、本発明の効果が顕著に現れる。疎水基変性PVAとしては、例えば炭素数20以下のα−オレフィン単位を0.1〜20モル%含有するPVA系重合体、炭素数20以下の長鎖アルキル基を有するビニルエーテル単位を0.1〜20モル%含有するPVA系重合体、ヒドロキシ基含有の炭素数20以下のα−オレフィン単位を0.1〜20モル%含有するPVA系重合体、炭素数が4〜50の長鎖アルキル基を末端に有するPVA系重合体があげられるが、生産性の点からは炭素数20以下のα−オレフィン(好ましくはエチレン)単位を0.1〜20モル%含有する疎水基変性PVAが好ましい。炭素数20以下のα−オレフィン単位の含有量としては、0.1〜20モル%が適当であり、0.2〜18モル%が好ましく、0.3〜15モル%がさらに好ましい。α−オレフィン単位の含有量が0.1モル%未満の場合には、α−オレフィンを変性した効果が現れず、α−オレフィン単位の含有量が20モル%より大の場合には、疎水性が強すぎてPVA重合体自身の水溶性が乏しくなりPVAとしての特長が損なわれる。
【0007】
PVA系重合体の粘度平均重合度(以下、重合度と略記する)は50〜30000が好ましく、70〜20000がより好ましく、100〜15000が特に好ましい。PVA系重合体の重合度は、JIS−K6726に準じ、再けん化後精製した該重合体について、水中、30℃で測定した極限粘度[η]から次式により求めた粘度平均重合度(P)で表したものである。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
重合度が50未満の場合には、組成物から得られる皮膜物性にPVAの性質が発現しにくい。重合度が30000より大の場合には、水性分散液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる。
PVA系重合体のけん化度は、PVA系重合体が水溶性もしくは水分散性であれば特に制限はないが、60〜99.99モル%が適当であり、80〜99.9モル%が好ましく、90〜99.8モル%がより好ましい。一般的には、けん化度が60モル%未満の場合には、水溶性が低下する。けん化度が99.99モル%より大の場合には、性能上は特に問題はないが、PVA系重合体の製造が難しい。組成物水溶液から作製した皮膜に耐水性が要求される場合には、変性の有無、変性種および変性量にもよるが、けん化度は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
【0008】
本発明において用いられるPVA系重合体は、ビニルエステルの重合体をけん化することによって得ることができる。
ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニルステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられるが、PVAを得る点から酢酸ビニルが好ましい。
本発明のPVA系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。エチレン性不飽和単量としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシル基含有オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸などの不飽和酸類あるいはその塩あるいはその炭素数1〜18のモノもしくはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。これらの特性基を有する単量体の含有量は通常20モル%以下であり、好ましくは18モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
また、本発明のビニルアルコール系重合体は、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸、炭素数50以下のアルキルメルカプタンなどのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合し、それをけん化することによって得られる末端変性物でもよい。
【0009】
澱粉(B)としては、生澱粉、生澱粉分解物、澱粉誘導体およびアミロースが用いられる。生澱粉としては、小麦、コーン、米、馬鈴薯、甘しょ、タピオカ、サゴ椰子などより採った澱粉が挙げられ、一般的には小麦澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉が適当である。生澱粉分解物としては、酸化澱粉やデキストリンが挙げられ、酸化澱粉が適当である。澱粉誘導体としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉などが挙げられる。
本発明における(B)の含有量は、(A)100重量部に対して0.1〜10000重量部、1〜8000重量部が好ましく、2〜5000重量部がさらに好ましい。PVA系重合体(A)100重量部に対して澱粉(B)の含有量が0.1重量部未満ではPVA系重合体の物性と変わらず澱粉の効果がでない。また(B)の含有量が10000重量部を越えると澱粉の物性と変わらずPVA系重合体の効果がでない。
【0010】
糖類(C)としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類が挙げられるが、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(10量体以下のものが好ましい)が好ましい。単糖類としては、グルコース、フルクトース、異性化糖、キシロースなどが挙げられる。二糖類としては、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、パラチノース、還元麦芽糖、還元パラチノース、還元乳糖などが挙げられる。オリゴ糖類としては、水あめ、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳糖オリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、カップリングシュガー、シクロデキストリン化合物などが挙げられ、シクロデキストリン化合物が好ましい。多糖類としては、プルラン、ペクチン、寒天、コンニャクマンナン、ポリデキストロース、キサンタンガムなどが挙げられる。
本発明における(C)の含有量は、(A)100重量部に対して0.1〜1000重量部、0.2〜200重量部が好ましく、0.3〜100重量部がさらに好ましい。PVA系重合体(A)100重量部に対して糖類(C)の含有量が0.1重量部未満ではPVA系重合体と澱粉の混合物の物性と変わらず糖類の添加効果がでない。また(C)の含有量が1000重量部を越えると糖類の物性が主体となるためにPVA系重合体と澱粉との混合物の効果がでない。
【0011】
PVA系重合体(A)、澱粉(B)および糖類(C)との配合割合は、上述の使用量であれば特に制限はないが、(A)と[(B)+(C)]との重量混合比は(A)100重量部に対して[(B)+(C)]は0.1〜10000重量部が適当で、1〜1000重量部が好ましく、(B)と(C)との重量混合比は(B)100重量部に対して(C)が0.1〜10000重量部が適当で、1〜1000重量部が好ましい。
【0012】
PVA系重合体(A)、澱粉(B)および糖類(C)の組成物からなる本発明の高分子組成物は次のような特長を有する。
本発明の組成物の水溶液は、PVA系重合体(A)と澱粉(B)との組成物の水溶液と比較して、水溶液の透明性が高く、放置安定性も良好で分離しにくく、粘度の経時変化が小さく、取り扱いが容易である。これは糖類(C)がPVA系重合体(A)と澱粉(B)との相溶化剤的な役割を演じるものと想定され、澱粉(B)が水溶液中であまり凝集しないで均一に分散しているためと思われる。本発明の高分子組成物は通常の無変性PVA、ノニオン変性PVA、アニオン変性PVA、カチオン変性PVAなど公知のPVA系重合体が使用可能であるが、疎水基変性PVAの場合に上記の効果が顕著に現れ、さらにアニオン基を同時に合わせ持つ疎水基変性PVAの場合に上記の効果が特に顕著に現れる。
【0013】
本発明の組成物の水溶液から製膜した皮膜は、PVA系重合体(A)と澱粉(B)との混合物の水溶液から製膜した皮膜と比較して、均質で透明性も良好であり、皮膜の強度、伸度、弾性率およびタフネスが高く、皮膜の機械的物性に優れている。
また、本発明の組成物の水溶液から製膜した皮膜は、用いたPVA系重合体単独と同程度の優れた耐水性を有する場合があり、本発明の組成物はPVA系重合体の特長を損なわない。
【0014】
本発明の組成物は、主として水溶液の形態で使用するのが好ましく、水溶液の濃度としては1〜50重量%が好ましい。濃度の下限としては1.5重量%が好ましく、2重量%がより好ましく、3重量%が特に好ましい。濃度の上限としては45重量%が好ましく、40重量%がより好ましく、30重量%が特に好ましい。
PVA系重合体(A)、澱粉(B)および糖類(C)との配合は、3成分を粉体で混合した後、水を加えるか水中に投入して水溶液化する方法、成分(A)と成分(B)を粉体で混合して水を加えるか水中に投入して水溶液化した後、成分(C)を粉体のまま該水溶液に投入後溶解する方法、2成分を粉体で混合して水を加えるか水中に投入して水溶液化した後、残り1成分の水溶液を混合する方法、3成分をそれぞれ別個に水溶液化した後、混合するなど任意の方法が採用される。
本発明の組成物には可塑剤、着色剤、フィラー、塩類、硼酸または硼砂、他の水溶性高分子、界面活性剤、消泡剤およびその他の添加剤を加えても良い。
【0015】
本発明の組成物は紙加工剤、フィルム形成用、繊維用糊剤特に経糸用糊剤、接着剤および成形物形成用などに用いることができる。
【0016】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下において「部」および「%」は特に断らない限り「重量部」及び「重量%」をそれぞれ意味する。また、以下において粘度は、東京計器製のB型粘度計を用いて、30℃,ローター回転数12rpmで測定した値である。
なお使用したPVA系重合体の詳細を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 0003816633
【0018】
実施例1
重合度1750、けん化度98.4モル%のPVA(P−1)、酸化澱粉(日本食品化工(株)製、商品名:MS−3800)およびトレハロース((株)林原製、商品名:トレハロース)との混合物を、95℃の熱水中で2時間加熱溶解し固形分濃度5%の水溶液を調製した。この水溶液の20℃での透過率を測定した。その結果を表2に示す。
(水溶液の透過率測定方法)
日立分光光度計(日立製作所(株)製)使用
波長: 650nm
セル幅: 10mm
【0019】
実施例2〜3および比較例1〜3
エチレンを5モル%有する変性PVA(P−2)、酸化澱粉(日本食品化工(株)製、商品名:MS−3800)およびβ−シクロデキストリン(日本食品化工(株)製、商品名:セルデックスB−100)との混合物(実施例2)について、実施例1と同様にして水溶液の透過率を測定した。
エチレンを16モル%、無水マレイン酸を3モル%共重合した変性PVA(P−3)、酸化澱粉(日本食品化工(株)製、商品名:MS−3800)およびグルコースとの混合物(実施例3)について、実施例1と同様にして水溶液の透過率を測定した。
実施例1〜3の混合組成物から糖類を除いた混合物(比較例1〜3)について、実施例1と同様にして水溶液の透過率を測定した。
それらの結果を表2に示す。
【0020】
PVA系重合体、澱粉および糖類からなる混合物から調した溶液は、PVA系重合体と澱粉の混合物から調した溶液に比べて、水溶液の透過率が高いことがわかる。このことから糖類はPVA系重合体および澱粉と特異な相互作用を有し、相溶性を向上していることが推定される。
【0021】
【表2】
Figure 0003816633
【0022】
実施例4
エチレンを10モル%有する変性PVA(P−4)、酸化澱粉(日本食品化工(株)製、商品名:MS−3800)およびβ−シクロデキストリンとを50:50:10(重量基準)の割合で混合したものを、95℃の熱水中で3時間加熱溶解し固形分濃度7%の水溶液を調製した。この水溶液の20℃での粘度を水溶液の調製直後と1週間後に測定した。また1週間後の水溶液の状態も観察した。その結果を表3に示す。
【0023】
実施例5〜6および比較例4〜6
実施例4における変性PVAおよび糖類を、表に示す変性PVA(P−5〜P−6)および糖類に変更した混合物(実施例5〜6)ついて、実施例4と同様にして調べた。
実施例4〜6の混合組成物から糖類を除いた混合物(比較例4〜6)について、実施例4と同様にして水溶液の粘度変化を測定した。
それらの結果を表3に示す。
【0024】
PVA系重合体と澱粉の混合物から調した水溶液は粘度の経時変化が大きく、分離しやすく取り扱い上問題がある。これに対してPVA系重合体、澱粉および糖類からなる混合物から調した水溶液は粘度の経時変化も小さく、放置安定性も良好であることがわかる。
【0025】
【表3】
Figure 0003816633
【0026】
実施例7
重合度1750、けん化度98.4モル%のPVA(P−1)、酸化澱粉(日本食品化工(株)製、商品名:MS−3800)およびβ−シクロデキストリンを種々の割合で混合したものを、95℃の熱水中で3時間加熱溶解し固形分濃度5%の水溶液を調製した。ガラス板の上にポリエチレンテレフタレートを貼ったものの上にこの水溶液を流し、20℃で水分を蒸発させて皮膜を作製した。該皮膜を20℃,84%RHで一週間調湿した皮膜の強伸度を測定した。その結果を表4に示す。
(皮膜物性の測定方法)
島津オートグラフDSC−100型(島津製作所製)使用
試料: 幅10mm、厚さ45±5μm、測定長50mm
引張速度: 500mm/分
【0027】
実施例8および比較例7〜8
実施例7と同様にしてエチレン変性PVA(P−2)、酸化澱粉MS−3800およびトレハロースの混合組成物(実施例8)について調べた。
実施例7〜8の混合組成物から糖類を除いた組成物(比較例7〜8)から作成した皮膜について、実施例と同様にして20℃,84%RHで一週間調湿した皮膜の強伸度を測定した。
それらの結果を表4に示す。
【0028】
PVA系重合体と澱粉の組成物から調した皮膜に比べ、PVA系重合体、澱粉および糖類からなる組成物から調した皮膜は、均一性、透明性に優れ、強度、伸度、弾性率およびタフネスが大きく優れた皮膜物性を有すことがわかる。また、粘度の経時変化も小さく、また放置安定性も良好であることがわかる。
【0029】
【表4】
Figure 0003816633
【0030】
1)フィルムの透明性の判定:目視観察により5段階で判定
5:透明
4:ほぼ透明
3:半透明
2:スリガラス状態
1:全く透明性なし
【0031】
実施例9
エチレンを5モル%有する変性PVA(P−2)、酸化澱粉(日本食品化工(株)製、商品名:MS−3800)およびラクトースを種々の割合で混合したものから、実施例7と同様にして水溶液を調製し皮膜を作製した。該皮膜を20℃の水に24時間浸漬した後に取り出して、該皮膜の膨潤度および溶出率を測定した。その結果を表5に示す。
(皮膜の膨潤度および溶出率の測定方法)
試料: 50mm×30mm、厚さ45±5μm
水: 100ml、20℃,24時間
Figure 0003816633
【0032】
実施例10および対照例1〜3
エチレン変性量および重合度が異なるエチレン変性PVA(P−7)について、実施例7と同様にして調べた(実施例10)。
実施例9および実施例10と同一のエチレン変性PVAの単独皮膜を作製し、皮膜の膨潤度および溶出率を調べた(対照例1〜2)。
重合度1750、けん化度98.4モル%のPVA(P−1)の単独皮膜を作製し、皮膜の膨潤度および溶出率を調べた(対照例3)。
それらの結果を表5に示す。
【0033】
本発明のPVA系重合体、澱粉および糖類からなる皮膜は、PVA系重合体単独からなる皮膜とほぼ同一の膨潤度であることから、本発明のPVA系重合体組成物はPVA系重合体本来の特長を保持することがわかる。また本発明からなる皮膜は、耐水性PVAとして通常用いられる完全けん化PVA(P−1)の単独皮膜に比べて、優れた耐水性を有すことがわかる。
【0034】
【表5】
Figure 0003816633
【0035】
【発明の効果】
本発明の重合体組成物は、各成分の相溶性が良好で、組成物水溶液の分離がなく、粘度の経時的な増大がなく、作業性に優れている。また、組成物水溶液を製膜して得られた皮膜は、透明性、皮膜物性および耐水性に優れていることから、紙加工剤、フィルム形成用、繊維用糊剤(特に経糸用糊剤)、接着剤および成形物形成用などの分野において好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. ビニルアルコール系重合体(A)(但し、ポリビニルアルコールハイドロゲルを除く)100重量部、澱粉(B)0.1〜10000重量部および糖類(C)0.1〜1000重量部からなる重合体組成物。
  2. 糖類()が単糖類、二糖類およびオリゴ糖類から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の重合体組成物。
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