JP6184706B2 - アルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物 - Google Patents

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本発明は、アルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物及びこの製造方法に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することもある)は、数少ない結晶性の水溶性高分子であり、優れた造膜性、界面特性及び強度特性を有する。このため、PVAは増粘剤、紙用塗工剤、接着剤、繊維加工剤、バインダー、エマルジョン安定剤、フィルム及び繊維等の原料等として広く利用されている。またPVAの特定の性能を向上させるために、結晶性の制御、官能基の導入等による変性PVAの開発が行われている。
このような変性PVAの一つであるアルキル変性PVAは、水系溶媒中ではアルキル基相互作用が発現し、高粘度溶液を与えることが知られている。このため、アルキル変性PVAは、塗料や接着剤の増粘剤として有用であり、各種単量体単位を含有するアルキル変性PVAが開発されている(特開2008−291120号公報及び特開平10−338714号公報参照)。しかしながら、このようなアルキル変性PVAは、水への溶解性が低いため、水溶液(組成物)の調製には時間を要するなど製造作業が煩雑であり、それに加えて、透明性の高い水溶液(組成物)を得難いという不都合がある。これに対し、溶媒として水に加えて有機溶媒を共に用いることにより、アルキル変性PVAの溶解性を高めることはできるものの(国際公開第2012/124746号パンフレット参照)、作業環境やVOCの低減のためには望ましくない。さらに、このようなアルキル変性PVA組成物は、用途によっては、取扱性等の向上のために、より低い粘度のものが求められる場合もある。
特開2008−291120号公報 特開平10−338714号公報 国際公開第2012/124746号パンフレット
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、調製が容易で、透明性が高く、かつ粘度の低減化により取扱性に優れるアルキル変性PVA組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明は、
アルキル変性ビニルアルコール系重合体、シクロデキストリン化合物及び水を含有し、
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下であるアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物である。
当該アルキル変性PVA組成物は、シクロデキストリン化合物を含有している。このシクロデキストリン化合物は、その環状構造の内側が疎水性かつ外側が親水性であるという特性を有しているので、上記特定のアルキル変性PVA及び水との相溶性に優れ、上記アルキル基を有するアルキル変性PVAの水への溶解を促進することができ、当該アルキル変性PVA組成物の調製が容易になり、またアルキル変性PVA組成物として透明性の高いものを得ることができる。また、シクロデキストリン化合物は、その環状構造の内側に上記アルキル基を包接等することにより、上記アルキル変性PVAが有するアルキル基同士の疎水性相互作用を阻害すると考えられる。その結果、当該アルキル変性PVA組成物は、アルキル変性PVAを含有するものではあるが、粘度が低減され、取扱性に優れるものとなる。
上記シクロデキストリン化合物としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにこれらのメチル化体、エチル化体及びプロピル化体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記シクロデキストリン化合物として上記特定構造を有するものを用いることで、当該アルキル変性PVA組成物は、透明性をより高く、粘度をより低減させることができる。
上記単量体単位は、下記式(I)で表されることが好ましい。
Figure 0006184706
(式(I)中、Rは、炭素数5〜29のアルキル基である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
上記単量体単位が上記特定構造を有することで、当該アルキル変性PVA組成物は、上記効果をより効果的に発揮させることができる。
上記式(I)で表される単量体単位を含有する上記アルキル変性PVAは、下記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られるものであることが好ましい。
Figure 0006184706
(式(II)中、R及びRの定義は、上記式(I)と同様である。)
当該アルキル変性PVA組成物が含有するアルキル変性PVAが上記特定の単量体の共重合体をけん化することにより得られるものであることで、上記アルキル変性PVAのけん化度等の調整が容易となり、その結果、当該アルキル変性PVA組成物の粘度を調整することができる。
上記アルキル変性PVAの粘度平均重合度は、100以上5,000以下が好ましい。上記アルキル変性PVAの粘度平均重合度を上記範囲とすることで、当該アルキル変性PVA組成物は、透明性をさらに高く、粘度をさらに低減させることができる。
上記シクロデキストリン化合物と上記アルキル変性PVAとの質量比としては、0.1/99.9以上80/20以下が好ましい。シクロデキストリン化合物とアルキル変性PVAとの質量比を上記範囲とすることにより、当該アルキル変性PVA組成物は、透明性をより高く、粘度をより低減できると共に、より容易に調製することができる。
上記アルキル変性PVAの濃度としては、0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。上記アルキル変性PVAの濃度を上記範囲とすることで、当該アルキル変性PVA組成物は、上記効果をさらに効果的に発揮することができる。
本発明のアルキル変性PVA組成物の製造方法は、
アルキル変性ビニルアルコール系重合体、シクロデキストリン化合物及び水を混合する工程を有し、
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99
モル%以下である製造方法である。
当該アルキル変性PVA組成物の製造方法によれば、透明性が高く、粘度の低減化により取扱性に優れるアルキル変性PVA組成物を、容易に製造することができる。
なお、当該アルキル変性PVA組成物がゲルの状態のものも、当該アルキル変性PVA組成物の範囲に含まれる。
本発明のアルキル変性PVA組成物は、調製が容易で、透明性が高く、粘度の低減化により取扱性に優れる。従って、当該アルキル変性PVA組成物は、接着剤や塗料等の増粘剤等として好適に用いることができる。また、当該アルキル変性PVA組成物の製造方法によれば、このように透明性が高く、粘度の低減化により取扱性に優れる組成物を容易に得ることができる。
以下、本発明のアルキル変性PVA組成物の実施形態について詳説する。
<アルキル変性PVA組成物>
本発明のアルキル変性PVA組成物は、アルキル変性PVA、シクロデキストリン化合物及び水を含有する。また、当該アルキル変性PVA組成物は、本発明の趣旨を損なわない限り、任意成分を含有していてもよい。当該アルキル変性PVA組成物は、通常、水溶液であるが、上記シクロデキストリン、任意成分等が一部溶解していないものでもよい。以下、これらの成分について詳述する。
(アルキル変性PVA)
本発明のアルキル変性PVA組成物が含有するアルキル変性PVAは、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有する。すなわち、上記アルキル変性PVAは、上記炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位と、ビニルアルコール系単量体単位とを含有する共重合体であり、さらに他の単量体単位を含有していてもよい。このアルキル基の炭素数が5未満の場合、このアルキル基のシクロデキストリン化合物への包接等による相互作用が十分に発現しないため、アルキル変性PVAとシクロデキストリン化合物と水との相溶性が低下する。一方、このアルキル基の炭素数が29を超える場合、上記アルキル変性PVAの水溶性が低下し、アルキル変性PVA組成物の透明性が低下する。上記アルキル基の炭素数としては、透明性を高め、粘度をより低減する観点から、5〜24が好ましく、5〜20がより好ましく、7〜20がさらに好ましく、9〜20が特に好ましい。
上記炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位としては、
1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン類に由来する単量体単位;
ペンチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類に由来する単量体単位;
下記式(I)で表される単量体単位が好ましく、下記Rが炭素数5〜24のアルキル基である単量体単位がより好ましい。
Figure 0006184706
上記式(I)中、Rは、炭素数5〜29のアルキル基である。Rは、水素原子又はメチル基である。
上記Rで表される炭素数5〜29のアルキル基としては、例えばペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、ヘキサコシル基等が挙げられる。これらのうち、当該アルキル変性PVA組成物の透明性及び粘度の低減がより一層向上する観点から、炭素数5〜24のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数7〜20のアルキル基がさらに好ましく、炭素数9〜20のアルキル基が特に好ましい。
なお、上記Rで表されるアルキル基は、本発明の趣旨が損なわれない範囲であれば、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよいが、これらの置換基を有していないことが好ましい。
上記アルキル変性PVAにおける炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率は、0.05モル%以上5モル%以下であることが重要であり、0.05モル%以上2モル%以下が好ましく、0.1モル%以上2モル%以下がより好ましく、0.2モル%以上1モル%以下がさらに好ましい。なお、本明細書における炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率とは、アルキル変性PVAを構成する全構造単位のモル数に占める炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位のモル数の割合である。
炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率が5モル%を超えると、上記アルキル変性PVA一分子あたりに含まれる疎水基の割合が高くなり、このアルキル変性PVAの水溶性が低下する。一方、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有量が0.05モル%未満の場合、上記アルキル変性PVAの水溶性は優れているものの、このアルキル変性PVA中に含まれるアルキル基の数が少なく、アルキル変性に基づく高粘性等の物性が発現しない。
炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率は、上記アルキル変性PVAの前駆体であるアルキル変性ビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求めることができる。具体的には、n−ヘキサン/アセトンでアルキル変性ビニルエステル系重合体の再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のサンプルを作製する。このサンプルをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定する。
この際、例えば、上記アルキル変性ビニルエステル系重合体が、上記式(I)で表される単量体単位以外のアルキル変性単量体単位を含まず、かつ、Rが直鎖状であり、さらにRが水素原子である場合、以下の方法にて算出できる。すなわち、アルキル変性ビニルエステル系重合体の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)と、アルキル基Rの末端メチル基に由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)とから、下記式を用いて、上記式(I)で表される単量体単位の含有率Sを算出する。
S(モル%)
={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
当該アルキル変性PVA組成物が含有するアルキル変性PVAのけん化度としては、20モル%以上99.99モル%以下であることが重要であり、40モル%以上99.95モル%以下が好ましく、70モル%以上99.9モル%以下がより好ましい。このけん化度が20モル%未満の場合には、アルキル変性PVAの水溶性が低下し、その結果、当該アルキル変性PVA組成物の調製が困難になり、またその透明性が低下する。逆に、このけん化度が99.99モル%を超えると、アルキル変性PVAの生産が困難になるので実用的でない。なお、上記アルキル変性PVAのけん化度は、JIS−K6726:1994年に準じて測定される。
当該アルキル変性PVA組成物が含有するアルキル変性PVAの粘度平均重合度としては、100以上5,000以下が好ましく、500以上2,700以下がより好ましく、1,000以上2,300以下がさらに好ましい。なお、粘度平均重合度を単に重合度と呼ぶことがある。この重合度が5,000を超えると、上記アルキル変性PVAの生産性が低下するおそれがある。逆に、この重合度が100未満の場合、当該アルキル変性PVA組成物の高粘性等の物性が発現しないおそれがある。
この粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726:1994年に準じて測定される。すなわち、アルキル変性PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
当該アルキル変性PVA組成物におけるアルキル変性PVAの濃度としては、特に限定されないが、0.5質量%以上50質量%以下が好ましく、0.8質量%以上30質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
(アルキル変性PVAの製造方法)
上記アルキル変性PVAを製造する方法は特に制限されないが、下記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行い、得られるアルキル変性ビニルエステル系重合体(共重合体)をけん化する方法が好ましい。当該アルキル変性PVA組成物が含有するアルキル変性PVAが上記特定の単量体の共重合体をけん化することにより得られるものであることで、上記アルキル変性PVAのけん化度等の調整が容易となり、当該アルキル変性PVA組成物の粘度を調整することができる。ここで、上記共重合はアルコール系溶媒中又は無溶媒で行うことが好ましい。
Figure 0006184706
上記式(II)中、R及びRの定義は、上記式(I)と同様である。
上記式(II)で表される不飽和単量体としては、例えばN−ペンチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−デシルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ヘキサコシルアクリルアミド、N−ペンチルメタクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、N−ヘキサコシルメタクリルアミド等が挙げられる。これらのうち、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ペンチルメタクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、N−ヘキサコシルメタクリルアミドが好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミドがより好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミドがさらに好ましい。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらのうち、酢酸ビニルが好ましい。
上記式(II)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合してもよい。使用し得る他の単量体としては、例えば
エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;
酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物類;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物類;
酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
また、上記式(II)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られる共重合体の重合度を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤を添加してもよい。この連鎖移動剤としては、例えば
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;
トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;
ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類等が挙げられる。これらのうち、アルデヒド類、ケトン類が好ましい。
上記連鎖移動剤の添加量としては、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするアルキル変性ビニルエステル系重合体の重合度、ひいてはアルキル変性PVAの重合度に応じて決定することができるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
上記式(II)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合を行う際に採用される温度としては、0℃〜200℃が好ましく、30℃〜140℃がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られにくい。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、本発明で規定するアルキル基を有する単量体単位の含有率を満足するアルキル変性PVAを得られにくい。共重合を行う際に採用される温度を0℃〜200℃に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合反応による発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、安全性の面からは適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法が好ましい。
上記式(II)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合を行うのに用いられる重合方式としては、例えば回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合等が挙げられる。重合方法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の方法を用いることができる。これらのうち、無溶媒又はアルコール系溶媒中で重合を行う塊状重合法、溶液重合法が好適に採用され、高重合度の共重合物の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。
上記アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は2種類以上を混合して用いることができる。
上記式(II)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等を用いることができる。
上記アゾ系開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
上記過酸化物系開始剤としては、例えば
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;
t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネート等のパーエステル化合物;
アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤とすることもできる。
上記レドックス系開始剤としては、例えば上記過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたもの等が挙げられる。
なお、上記式(II)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVAの着色等が見られることがある。この場合には、着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤を、ビニルエステル系単量体に対して1〜100ppm程度添加するのがよい。
上記共重合により得られたアルキル変性ビニルエステル系共重合体のけん化反応には、公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒又はp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた加アルコール分解反応又は加水分解反応を適用することができる。
上記けん化反応に使用し得る溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。なお、これらの溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記けん化反応としては、メタノール、又はメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒として用いて行う方法が簡便であり好ましい。
(シクロデキストリン化合物)
当該アルキル変性PVA組成物は、シクロデキストリン化合物を含有する。シクロデキストリン化合物は、D−グルコースがα−1−4結合で環状構造を形成したシクロデキストリン、又はその誘導体である。このシクロデキストリン化合物は、環状構造の内側は疎水性かつ外側は親水性であるという特性を有する。この疎水性である内側には、上記特定のアルキル変性PVAが有するアルキル基が包接されうる。このようなシクロデキストリン化合物は、上記特定のアルキル変性PVA及び水との相溶性に優れるので、アルキル変性PVAの溶解が促進され、当該アルキル変性PVA組成物の調製が容易になり、また、アルキル変性PVA組成物として透明性が高いものを得ることができる。また、上記シクロデキストリン化合物は、上述のアルキル基の包接等により、上記アルキル変性PVAが有するアルキル基同士の疎水性相互作用を阻害すると考えられる。その結果、当該アルキル変性PVA組成物は、アルキル変性PVAを含有するものではあるが、粘度が低減され、取扱性に優れるものとなる。
上記シクロデキストリン化合物としては、例えば、
α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、ε−シクロデキストリン等のシクロデキストリン;
上記シクロデキストリンのメチル化体、エチル化体、プロピル化体、ブチル化体、ペンチル化体等のアルキル化体;
上記シクロデキストリンのヒドロキシエチル化体、ヒドロキシプロピル化体、ヒドロキシブチル化体等のヒドロキシアルキル化体;
上記シクロデキストリンのホルミル化体、アセチル化体、プロピオニル化体等のアシル化体;
上記シクロデキストリンのグリコシル化体、マルトシル化体等の糖化体などが挙げられる。
これらの中で、当該アルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物が、透明性がより高くなり、かつ粘度をより低減できる観点から、シクロデキストリン、シクロデキストリンのアルキル化体が好ましく、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル化α−シクロデキストリン、メチル化β−シクロデキストリン、メチル化γ−シクロデキストリン、エチル化α−シクロデキストリン、エチル化β−シクロデキストリン、エチル化γ−シクロデキストリン、プロピル化α−シクロデキストリン、プロピル化β−シクロデキストリン、プロピル化γ−シクロデキストリンがより好ましく、入手容易性の観点から、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル化β−シクロデキストリンがさらに好ましい。
当該アルキル変性PVA組成物が含有する上記シクロデキストリン化合物と上記アルキル変性PVAとの質量比(シクロデキストリン化合物の質量/アルキル変性PVAの質量)としては、0.1/99.9以上80/20以下が好ましく、3/97以上60/40以下がより好ましく、7/93以上50/50以下がさらに好ましく、10/90以上40/60以下が特に好ましい。シクロデキストリン化合物とアルキル変性PVAとの質量比を上記範囲とすることで、当該アルキル変性PVA組成物は、調製容易性、透明性及び粘度の低減性を向上させることができる。上記質量比が0.1/99.9未満の場合は、当該アルキル変性PVA組成物の調製容易性及び透明性が低下し、また粘度の低減化が不十分になるおそれがある。逆に、上記質量比が80/20を超える場合は、アルキル変性PVAの溶解性が低下するおそれがある。
(任意成分)
[添加剤]
当該アルキル変性PVA組成物は、アルキル変性PVA、上記シクロデキストリン化合物及び水以外に、各種可塑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、充填材、pH調整剤、耐水化剤等の添加剤を本発明の趣旨を損なわない範囲で含有していてもよい。
[他の水溶性高分子]
当該アルキル変性PVA組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当該アルキル変性PVA組成物が含有する上述のアルキル変性PVA以外の公知の各種PVA、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の他の水溶性高分子を含有していてもよい。これらの他の水溶性高分子の配合量は、当該アルキル変性PVA組成物が含有する上記アルキル変性PVA100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
(用途等)
当該アルキル変性PVA組成物は、アルキル変性PVAを溶解したものであるが、透明性が高く、粘度が低く、取扱性に優れる。従って、当該アルキル変性PVA組成物は、感温性バインダー、ゲル化剤、感温性接着剤、増粘剤等として好適に用いることができる。具体的には、例えば、紙用コーティング剤;内添サイズ剤;繊維加工剤;染料;グラスファイバーのコーティング剤;金属やガラスの表面コート剤;防曇剤等の被覆剤;木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤;不織布バインダー;繊維状バインダー;石膏ボード及び繊維板等の建材用バインダー;各種エマルジョン系接着剤の増粘剤;尿素樹脂系接着剤の添加剤;セメント及びモルタル用添加剤;ホットメルト型接着剤;感圧接着剤等の各種接着剤;エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等の各種エチレン系不飽和単量体の乳化重合用分散剤;塗料、接着剤等の顔料分散用安定剤;塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル等の各種エチレン性不飽和単量体の懸濁重合用分散安定剤;繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、水溶性繊維、暫定皮膜等の成形物;疎水性樹脂への親水性付与剤;土質改良剤;土質安定剤等を構成する成分として用いることができる。
<アルキル変性PVA組成物の製造方法>
本発明のアルキル変性PVA組成物の製造方法は、
アルキル変性ビニルアルコール系重合体、シクロデキストリン化合物及び水を混合する工程を有し、
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下である製造方法である。
当該アルキル変性PVA組成物の製造方法によれば、透明性が高く、粘度の低減化により取扱性に優れるアルキル変性PVA組成物を容易に得ることができる。このアルキル変性PVA、シクロデキストリン化合物等の詳細は上述した通りである。
このアルキル変性PVA、シクロデキストリン化合物及び水を混合する方法としては、特に限定されず、シクロデキストリン化合物と水とを混合した混合物にアルキル変性PVAを加えてもよいし、アルキル変性PVA水溶液にシクロデキストリン化合物を加えてもよい。なお、溶解性を高めるために、加熱しながら撹拌してもよい。上記加熱の際の温度としては、例えば80℃以上95℃以下が採用される。
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量を基準とする。
下記製造例により得られたPVA(アルキル変性PVA及び無変性PVA)について、以下の方法に従って評価を行った。
[変性率]
各PVAの変性率(PVAにおけるアルキル基を有する単量体単位の含有率)は、上述のプロトンNMRを用いた方法により求めた。
[重合度]
各PVAの粘度平均重合度は、JIS−K6726:1994年に記載の方法により求めた。
[けん化度]
各PVAのけん化度は、JIS−K6726:1994年に記載の方法により求めた。
<PVAの製造>
[製造例1](PVA1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g及びN−オクタデシルメタクリルアミド1.1gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてN−オクタデシルメタクリルアミドをメタノールに溶解して濃度5%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下により添加し、重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとN−オクタデシルメタクリルアミドとの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。用いたコモノマー(N−オクタデシルメタクリルアミド)の総量(仕込み+添加)は4.8gであった。酢酸ビニルの重合率は40%であった。また重合停止時の固形分濃度は29.9%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性ビニルエステル系重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液771.4g(溶液中のアルキル変性PVAc200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液におけるアルキル変性PVAc濃度は25%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.0075であった。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してアルキル変性PVA(PVA1)を得た。
[製造例2〜18](PVA2〜18の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するアルキル基を有する不飽和単量体の種類や添加量等の重合条件、酢酸ビニルの重合率、けん化時におけるアルキル変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種のアルキル変性PVA(PVA2〜18)を製造した。
[製造例19](PVA19の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g、及びオクタデシルビニルエーテル57.3gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0gを添加し重合を開始した。60℃で2時間重合した後、冷却して重合を停止した。酢酸ビニルの重合率は40%であった。重合停止時の固形分濃度は30.4%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性ビニルエステル系重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液792.9g(溶液中のアルキル変性PVAc200.0g)に、7.0gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液のアルキル変性PVAc濃度は25%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.0075であった。アルカリ溶液を添加後約12分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してアルキル変性PVA(PVA19)を得た。
[製造例20](PVA20の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル900g及びメタノール100gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。酢酸ビニルの重合率は35%であった。重合停止時の固形分濃度は31.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液971.1g(溶液中のPVAc200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液のPVAc濃度は20%、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03であった。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して無変性PVA(PVA20)を得た。
Figure 0006184706
<アルキル変性PVA組成物の調製>
[実施例1]
攪拌機付きの300mLのセパラブルフラスコに、水98.3g及びα−シクロデキストリン0.17gを加え、溶解させた。次に、1.50gのPVA1を室温で加え、攪拌しながら90℃まで昇温し、溶解させた。その後、室温まで冷却し、PVA1を1.5質量%の濃度で含有するアルキル変性PVA組成物を得た。
[実施例2〜22及び比較例1〜4]
用いたPVA及びシクロデキストリン化合物の種類、並びにシクロデキストリン化合物とPVAとの質量比を表3に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、各PVAを1.5質量%の濃度で含有するPVA組成物を調製した。使用したシクロデキストリン化合物の種類を表2に示す。
Figure 0006184706
<評価>
上記実施例及び比較例で得られたPVA組成物に関し、下記方法によりPVAの溶解性評価及び組成物の評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、表3中の「(*1)」は、シクロデキストリン化合物を添加しなかったことを示す。また、表3中の「(*2)」は、完全には溶解せず、評価不能であったことを示す。
[溶解性評価]
上記実施例において、PVAを加え昇温を開始してから完全に溶解するまでの時間を測定し、以下の基準に従って判定した。なお、下記評価がA又はBの場合、実用性に優れるといえる。
A:1時間未満
B:1時間以上3時間未満
C:3時間以上
D:完全に溶解せず、溶け残った。
[組成物評価]
(粘度低減化度)
上記実施例で調製したアルキル変性PVA組成物の粘度(a)(mPa・s)をBH型粘度計を用い、ロータ回転数2rpm、20℃の条件下で測定した。また、シクロデキストリン化合物を含有しない同濃度のアルキル変性PVA組成物の粘度(b)を同様の条件で測定した。これらの測定値から粘度比(a/b)を算出し、粘度低減化度とした。
(60℃における透明性)
上記実施例で得られたPVA組成物の60℃における透明性を目視で評価した。なお、下記評価がA又はBの場合、実用性に優れると言える。
A:透明である
B:青白い
C:白濁
D:測定できず
Figure 0006184706
表3に示されるように、実施例1〜22の組成物は、アルキル変性PVAを含有するものであるにもかかわらず、PVAが速やかに溶解して調製が容易であり、粘度が低減され、かつ60℃の高温における透明性に優れることが分かる。さらに、PVAの重合度、変性率、単量体単位の構造、及びシクロデキストリン化合物とPVAとの質量比を特定した、実施例1、4、9、12及び22の組成物は、溶解性及び透明性に優れると共に、粘度が特に低減されている。なお、例えば実施例3、8及び14では、溶解性及び透明性が低下しているが、これはPVAの重合度が高いこと、けん化度が低いこと又はPVAのアルキル基の長さが炭素数26と長いことにそれぞれ起因していると考えられる。また、実施例20は、溶解性、粘度低減化度及び透明性が低下しているが、これは、シクロデキストリン化合物の添加量が少ないためであると考えられる。
一方、PVAが規定の要件(アルキル基の炭素数、変性率及びけん化度)を満たさない場合(比較例1〜3)はPVAが完全には溶解せず、PVAが規定の要件を満たしても、シクロデキストリン化合物を使用しない場合(比較例4)は、溶解性及び透明性が低いこと等が観察された。
本発明のアルキル変性PVA組成物は、調製が容易で、透明性が高く、粘度の低減化により取扱性に優れる。そのため、当該アルキル変性PVA組成物は、接着剤、塗料等の増粘剤等として好適に用いることができる。また、本発明のアルキル変性PVA組成物の製造方法によれば、このような透明性が高く、粘度の低減化により取扱性に優れるアルキル変性PVA組成物を容易に得ることができる。

Claims (7)

  1. アルキル変性ビニルアルコール系重合体、シクロデキストリン化合物及び水を含有し、
    上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.4モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、
    上記単量体単位が、α−オレフィン類に由来する単量体単位、ビニルエーテル類に由来する単量体単位又は下記式(I)で表される単量体単位であり、
    上記シクロデキストリン化合物と上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体との質量比が、5/95以上80/20以下であるアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物。
    Figure 0006184706
    (式(I)中、Rは、炭素数5〜29のアルキル基である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
  2. 上記シクロデキストリン化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにこれらのメチル化体、エチル化体及びプロピル化体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物。
  3. 上記単量体単位が、上記式(I)で表される請求項1又は請求項2に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物。
  4. 上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が、下記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られる請求項1、請求項2又は請求項3に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物。
    Figure 0006184706
    (式(II)中、R及びRの定義は、上記式(I)と同様である。)
  5. 上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が、100以上5,000以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物。
  6. 上記シクロデキストリン化合物と上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体との質量比が、7/93以上80/20以下であり、
    上記シクロデキストリン化合物が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物。
  7. 上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体の濃度が、0.5質量%以上50質量%以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体組成物。
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