JP3627499B2 - 車両制御装置 - Google Patents

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  • Regulating Braking Force (AREA)
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の周囲の状況に応じて車両制御を行う車両制御装置に関し、特に、カーブ手前で減速制御や警報発生を行いカーブ走行時の運転性、安全性を向上させた車両制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術としては、例えば特開平8−194891号の装置のように、ナビゲーション装置に備えられている地図データを利用して自車前方のカーブを検出し、自車前方にカーブが検出された場合には、カーブ手前の所定距離から警報や減速制御を行うものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとしている問題点】
しかしながら、従来の装置では、予め設定されたダウンシフト制御開始地点に到達すると、運転者の運転操作とは関係なく車両側で自動的にダウンシフトしてしまうため、運転者がダウンシフト制御開始地点よりもカーブ側で減速操作を開始しよう意図していた場合は、運転者が減速操作を行う前にダウンシフトが行われることになり、運転者に違和感を与えてしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、運転者の減速意図をトリガとしてカーブの曲率半径に応じた減速度を演算し、その減速度となるよう減速制御を行うことにより、運転者の意図、感覚に合った減速制御を実現するものである。
【0005】
第1の発明は、自車前方のカーブを検出するカーブ検出手段と、検出されたカーブにおける通過車速を推定する通過車速推定手段と、運転者の減速意図を検出する減速意図検出手段と、自車速を測定する車速測定手段と、自車前方にカーブが検出されかつ運転者の減速意図が検出されたときにカーブ開始地点までの距離を演算する距離演算手段と、通過車速推定手段、車速測定手段及び距離演算手段の出力結果に基づき推定通過車速まで減速するのに必要な減速度を演算する減速度演算手段と、運転者の減速意図を検出した時点から演算された減速度に基づき車両の減速制御を開始する車両制御手段を備え、駆動輪と従動輪の回転速度差に基づいて前記減速制御によって車両姿勢が不安定になる可能性を判断し、前記減速制御によって車両姿勢が不安定になる可能性が高いと判断されるときは前記減速制御を行わないことを特徴とするものである。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、前記減速意図検出手段は運転者のアクセル操作及びブレーキ操作から運転者の減速意図を検出することを特徴とするものである。
【0007】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記減速度演算手段の演算する減速度には上限値が設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
第4の発明は、第1から第3の発明において、路面の摩擦係数を推定する路面μ推定手段を備え、推定された路面摩擦係数が所定値以下なら前記車両制御手段は減速制御を行わないことを特徴とするものである。
【0009】
第5の発明は、第1から第4の発明において、前記通過車速推定手段は検出されたカーブの曲率半径を基に通過車速を推定することを特徴とするものである。
【0010】
第6の発明は、第1から第5の発明において、車両や運転者の運転状況を判定する運転状況判定手段を備え、前記通過車速推定手段は運転状況判定手段の判定結果に応じて推定する通過車速を変化させることを特徴とするものである。
【0011】
第7の発明は、第6の発明において、前記運転状況判定手段は運転者によるアクセルあるいはブレーキの操作回数から運転操作特性を判定し、運転者によるアクセルあるいはブレーキの操作回数が多く不慣れな道を走行していると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とするものである。
【0012】
第8の発明は、第6または第7の発明において、前記運転状況判定手段は天候を推定し、天候が雨天であると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を高くし、現在の車速と推定通過車速との差を小さくすることを特徴とするものである。
【0013】
第9の発明は、第6から第8の発明において、前記運転状況判定手段は勾配を検出し、前記通過車速推定手段は、上り勾配を走行していると判定された場合に推定する通過車速を高くし、逆に、下り勾配を走行していると判定された場合に推定する通過車速を低くすることを特徴とするものである。
【0014】
第10の発明は、第6から第9の発明において、前記運転状況判定手段は道幅を検出し、道幅が狭い道路を走行していると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とするものである。
【0016】
11の発明は、第6から第10の発明において、前記運転状況判定手段は車両周囲の明るさを判定し、車両周囲が暗いと判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とするものである。
【0017】
12の発明は、第6から第11の発明において、前記運転状況判定手段は自車両による現在走行中の道路のうちの所定の地点の通過頻度を演算し、通過頻度が多い道を走行していると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を高くすることを特徴とするものである。
【0018】
13の発明は、第6から第12の発明において、運転者が手動で減速度アシスト量を調節可能なスイッチを備え、大きな減速度アシスト量に調節された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とするものである。
【0019】
14の発明は、第6から第13の発明において、前記運転状況判定手段が複数の運転状況を判定する場合、前記通過車速推定手段は各運転状況に基づき推定された通過車速のうち最も高い値を出力することを特徴とするものである。
【0020】
15の発明は、第6から第14の発明において、前記車両制御手段は無段変速機とブレーキアクチュエータで構成され、変速比制御によるエンジン回転数の上昇量を制限する一方、変速比制御によって得られる減速度と目標とする減速度の差をブレーキアクチュエータを作用させて補うことを特徴とするものである。
【0022】
【作用及び効果】
第1の発明によると、自車前方にカーブを検出しても直ちには減速制御を開始せず、運転者の減速意図を検出した時点から減速制御を開始するので、運転者の意図しないタイミングで減速力が作用し違和感を与えるのを防止できる。また、カーブを安定して通過するのに十分な車速まで減速するのに必要な減速度で減速制御を行うので、必要以上の減速度が発生することもない。また、駆動輪と従動輪の回転速度差から減速制御によって車両姿勢が不安定になる可能性が高いと判断されるときは減速制御を行わないので、車両の安全性を高めることができる。
【0023】
第2の発明によると、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作から減速意図を検出するので、運転者の減速意図を正しく検出することができる。
【0024】
第3の発明によると、減速度アシスト量に上限を設定するので、カーブ直前で減速意図を検出した場合などに車両が急激に減速するのを防止できる。
【0025】
第4の発明によると、路面の摩擦係数μが所定値よりも低い場合は減速制御を行わないので、低μ路で減速制御が行われて車両姿勢が変化するのを防止できる。
【0026】
第5の発明によると、検出されたカーブの曲率半径に応じた通過車速を推定するので、カーブのきつさに応した減速度で減速制御を行うことかできる。
【0027】
第6から第14の発明によると、同一カーブに対しても運転者の運転経歴や嗜好、天候、道路形状などの運転状況に応じて減速度のアシスト量を変化させるので、より一層運転者の感覚に合った減速制御を実現することができる。
【0028】
15の発明によると、変速比制御によるエンジン回転数の上昇量を制限し、変速比制御によって得られる減速度と目標減速度の差はブレーキアクチュエータを作用させることによって補うので、減速制御時にエンジン回転が急激に上昇することによる騒音を低減することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【0032】
これについて説明すると、カーブ検出手段1は、ナビゲーション装置や画像処理装置などで構成され、自車前方にあるカーブを検出する。ナビゲーション装置は自車両位置を測定するためのジャイロコンパス、GPSアンテナと道路地図データで構成され、道路地図データには道路の曲率(曲率半径)、幅員、種類などが記録されている。画像処理装置は図2に示すように、光軸が互いに平行な2台のカメラで撮影した各々の画像における撮像座標xa、xb、焦点距離f、眼間距離Dを用いて、次式によりカメラから前方物体までの距離zを求めることができる。
【0033】
【数1】
Figure 0003627499
【0034】
通過車速推定手段2は、検出されたカーブの曲率半径に応じて通過速度を推定するアルゴリズムを備えた演算処理装置で構成される。減速意図検出手段3は、アクセル開度センサ及びブレーキペダルスイッチで構成され、運転者の減速意図を検出したときに信号を出力する構成となっている。車速測定手段4は、従動輪あるいは変速機の出力軸に装着されたパルス発生器により車両の走行速度を測定する車速センサで構成される。距離演算手段5は、自車両位置から検出されたカーブの開始地点までの距離を算出するアルゴリズムを備えた演算処理装置で構成される。
【0035】
減速度演算手段6は、通過車速推定手段2、車速測定手段4及び距離演算手段5の出力を受けて、カーブを安定して通過可能な車速まで減速するのに必要な減速度を算出するアルゴリズムを備えた演算処理装置で構成される。路面μ推定手段7は、駆動輪と従動輪の回転数の差から路面の摩擦係数μを推定するアルゴリズムを備えた演算処理装置で構成される。車両制御手段8は、減速度演算手段6及び路面μ推定手段7の出力を受けて、自動変速機の変速比やブレーキアシスト量などを制御する。
【0036】
次に、制御内容について説明する。
【0037】
図3は、本車両制御装置において行われる処理を示したフローで、ナビゲーション装置または自動変速機やエンジンの制御ユニットのメインプログラムから一定時間間隔で呼び出される。
【0038】
これについて説明すると、まず、ステップS11では、自車前方にカーブがあるかどうかを判断する。カーブ検出は例えば曲率半径を基にして行い、自車前方に曲率半径が所定値以下(例えば100m以下)の道路を検出したら自車前方にカーブがあると判断してステップS12へ進み、逆に、曲率半径が所定値以下の道路を検出しなかったときは自車前方にカーブはなく減速制御を行う必要はないと判断して処理を終了する。
【0039】
このとき、カーブ検出手段1がナビゲーション装置で構成されていれば、地図データから車両から一定距離(例えば300m)前方の道路の曲率半径を算出し、画像処理装置で構成されていれば、車両前方の撮像画面より道路の境界線を抽出するなどして道路形状を認識し、車両前方の道路の曲率半径を算出する。
【0040】
ステップS12では、運転者のブレーキ操作及びアクセル操作から運転者に減速意図があるかどうかを判断する。カーブ検出時にアクセル開度センサからの出力信号が零でなかった(アクセルON)場合は、アクセル開度センサからの出力信号が零になる(アクセルOFF)と運転者の減速意図を検出したとする。あるいは、カーブ検出時にアクセル開度センサからの出力信号が零で再びアクセルが開かれた場合は、アクセル開度センサからの出力信号が再び零になると運転者の減速意図を検出したとする。また、カーブ検出時から継続してアクセル開度センサからの出力信号が零の場合は、ブレーキペダルスイッチがONになると運転者の減速意図を検出したとする。
【0041】
そして、減速意図が検出されたときは、減速制御を行うべくステップS13へ進み、逆に、減速意図が検出されなかったときは、このようなタイミングで減速制御を行えば運転者に違和感を与えると判断し、減速制御を行わずに処理を終了する。
【0042】
ステップS13では、駆動輪と従動輪の回転数の差から路面の摩擦係数μを推定し、路面摩擦係数μが所定値Ms(例えば0.5)以下ならば、減速制御により車両姿勢を不安定にする可能性が高いと判断し、減速制御を行わずに処理を終了する。逆に、路面摩擦係数μが所定値Ms以上ならば減速制御を行うべくステップS14へ進む。
【0043】
ステップS14では、ステップS11において検出されたカーブの曲率半径よりカーブにおける通過速度Vcを推定する。推定通過速度Vcは、例えば第4図に示すようなマップを参照して推定され、曲率半径が大きくなるほど推定通過車速Vcは高くなる。
【0044】
ステップS15では、自車位置からステップS11において検出したカーブの開始地点までの距離lを算出する。距離lの算出には、例えば、車両がナビゲーション装置を備えているならば、自車位置とカーブ開始地点の座標を用いて算出し、また、車両が距離測定センサを備えているならば、検出したカーブまでの距離測定結果を用いる。
【0045】
ステップS16では、ステップS14で推定した通過車速Vcと、ステップS15で算出した距離lを基に、減速意図を検出したときの車速Vinから推定通過速度Vcまで減速するのに必要な減速度dを次式より算出する。
【0046】
【数2】
Figure 0003627499
【0047】
(Vin、Vcの単位はm/s、lの単位はm)
ステップS17では、ステップS16で算出した減速度dと減速度の上限値Dmaxとを比較する。ここで、減速度dが上限値Dmaxよりも大きい場合はステップS18へ進み、減速度dに上限値Dmaxを代入してからステップS19に進む。一方、減速度dが上限値Dmaxよりも大きくない場合はそのままステップS19に進む。
【0048】
ここで減速度の上限値Dmaxは、有段変速機の場合は、第5図に示すように2速で得られる減速度(エンブレ量)、無段変速機の場合は、図6に示すようにDsレンジで得られる減速度である。
【0049】
ステップS19では、ステップS16で算出された減速度dで車両の減速制御を行う。有段変速機の場合は、各ギア位置で得られる減速度と算出された減速度dを比較し、何速ヘダウンシフトするかを決定する。例えば、図5に示すように運転者の減速意図検出時の車速Vinにおける減速度dが4速と3速の減速度の間にあるとすると、3速までダウンシフトすることになる。無段変速機の場合は目標する減速度となるように変速比を連続的に変化させる。
【0050】
次に作用について説明する。
【0051】
本実施形態では、自車前方に曲率半径が所定値以下のカーブを検出すると減速制御を行うが、運転者の減速意図が検出されたタイミングで減速制御を開始するので、運転者の意図しないタイミングで減速度が発生し、運転者に違和感を与えてしまうのを防止することができる。
【0052】
また、その時点の車速とカーブの推定通過車速の差、及び、運転者の減速意図を検出した地点からカーブ開始地点までの距離から、カーブを安定して通過する車速まで減速するのに必要な減速度を算出し、その減速度が得られるように自動変速機の変速比やブレーキアシスト量などを制御するので、必要以上の減速度が作用して運転者に違和感を与えることもない。減速度が不足することもないのでカーブを安全に通過することができる。
【0053】
また、発生させる減速度の上限が有段変速機の場合は2速で得られる減速度、無段変速機の場合はDsレンジで得られる減速度に設定されているので、カーブの直前でアクセルを全閉にした場合に減速度が非常に大きくなり、車両姿勢が変化したり運転者に違和感を与えてしまうのを防止することができる。
【0054】
また、雪道や濡れた路面など路面摩擦係数μが小さく滑りやすい道路を走行している場合には減速制御を行わないので、急激なトルク変動により車両姿勢が変化するのを防止し、安全性を高めることができる。
【0055】
なお、ここでは路面摩擦係数μが小さい場合に減速制御を行わないようにしたが、路面摩擦係数μに応じて減速度演算手段6が算出する減速度の上限値を設定するようにしても良い。また、路面摩擦係数μの代わりに駆動輪のスリップ率を用いても同様の制御が可能である。
【0056】
続いて、第2の実施形態ついて説明する。
【0057】
装置構成は図1に示したものとほぼ同じであるが、車両制御手段8として無段変速機やブレーキアクチュエータを備え、運転者の減速意図を検出してから減速度を制御する際に、減速度を徐々に増加して変速ショックを和らげるようになっている。
【0058】
制御内容は、図3に示したものとほぼ同じであるが、ステップS19における減速度制御の方法が異なる。
【0059】
共通の処理については説明を省略し、ステップS19において行われる処理について説明すると、そのステップS19では、算出された減速度dをもとに、第7図に示したグラフ1のような減速度制御パターンを作成し、運転者の減速意図検出からの経過時間に従って徐々に減速度を増加させるように無段変速機の変速比を制御するようになっている。
【0060】
ここでグラフ1は、グラフ1と横軸及び時刻=To(運転者の減速意図を検出してからカーブ開始地点に到達するまでに要する時間)で囲まれる面積と、減速度=d、時刻=To、横軸及び縦軸で囲まれる斜線部の面積S(=Vin−Vc)とが等しくなるように定義される。例えば、T=(1/3)Toまで減速度を一定の割合でd’まで増加させ、T=(1/3)ToからT=Toまで減速度一定とした場合のd‘は簡単な計算を経て以下のように求めることができる。
【0061】
【数3】
Figure 0003627499
【0062】
以上、説明したように本実施形態では、運転者の減速意図を検出してから徐々に減速度を増加させるように車両を制御するので、急激に減速度が発生することによる違和感や車両姿勢の変化を防止することができる。
【0063】
なお、減速制御は第8図に示すように目標エンジン回転数を1000rpm毎に設定し、変速比制御によるエンジン回転数の上昇量を1000rpmまでに制限する一方、変速比制御によって得られる減速度dmと目標の減速度dの差Δdをブレーキアクチュエータを作用させて補うようにしてもよい。これにより、減速制御時にエンジン回転が急激に上昇することによる騒音を低減することができる。
【0064】
続いて、第3の実施形態について説明する。
【0065】
装置構成は第9図に示すように、第1の実施形態の構成に対して、車両や運転者の状況を判定する運転状況判定手段9が加わっている。
【0066】
その運転状況判定手段9について説明すると、運転状況判定手段9は、運転者の運転操作特性や天候、道路勾配、道幅、路面μ、周囲の明るさ、現在走行中の道路の通行回数等から運転状況を判定するもので、通過車速推定手段2はその判定結果に応じてカーブの推定通過車速Vcを増減し、減速度のアシスト量を変化させる。
【0067】
制御内容は、第3図に示した第1の実施形態のものとほぼ同じであり、ステップS14において推定されるカーブの通過車速Vcが運転状況判定手段9の判定結果に応じて増減される点が異なる。
【0068】
以下、運転状況判定手段9における運転状況の判定内容と推定通過車速Vcとの関係について説明する。
【0069】
(a)運転者の運転操作特性
ある一定期間(例えば1分間)のアクセルやブレーキの操作回数をカウントすることにより運転者の運転操作特性を推定する。操作回数が多い場合は不慣れな道を走行しているために減速操作を頻繁に行っていると判定し、推定通過車速Vcの値を減少して減速度のアシスト量を増加する。また逆に、操作回数が少ない場合は慣れた道を余分な操作をせずにスムーズに走行していると判定し、推定通過車速Vcの値を増加して減速度のアシスト量を減少する。
【0070】
(b)天候
ワイパースイッチがONならば雨天であると推定する。雨天の場合は路面が濡れて滑りやすくなるので、雨天であると判定された場合は、推定通過車速Vcの値を増加して減速度のアシスト量を減少し、減速制御開始時のトルク変化による車両姿勢の変化を防止する。
【0071】
なお、ここで推定通過車速Vcの値を増加しているのは現在の車速Vinと推定通過車速Vcとの差を小さくして減速度のアシスト量を減少させるためであって、カーブを高い車速で通過すると推定しているわけではない。
【0072】
(c)道路勾配
ナビゲーション装置を備えている場合は地図情報に記録された標高データから道路勾配を算出する。算出された道路勾配から自車両が走行抵抗の大きい上り勾配を走行していると判定された場合は、推定通過車速Vcの値を増加して減速度のアシスト量を減少する。逆に、走行抵抗の小さい下り勾配を走行していると判定された場合は、推定通過車速Vcの値を減少して減速度のアシスト量を増加する。
【0073】
また、勾配抵抗を、駆動力、加速抵抗、転がり抵抗及び空力抵抗から推定し、道路勾配の代わりにこの勾配抵抗に応じて減速度のアシスト量を増減するようにしても良い。なお、勾配抵抗は次式に従って算出される。
【0074】
勾配抵抗=駆動力−(加速抵抗+転がり抵抗+空力抵抗)
ここで、駆動力はアクセル開度とエンジン回転数からエンジン特性マップを参照して求めることができ、加速抵抗は車重と速度、転がり抵抗は車重と転がり抵抗係数、空力抵抗は車速とCd値からそれぞれ求めることができる。
【0075】
(d)道幅
ナビゲーション装置を備えている場合は地図情報に記録された幅員情報を用いて道幅を検出する。画像処理装置を備えている場合は車両前方の撮像画面より検出した道路領域の幅を用いてもよい。道幅が一定値(例えば5m)以下ならば、狭い道を走行していると判定し、推定通過車速Vcの値を減少して減速度のアシスト量を増加する。
【0076】
(e)路面μ
駆動輪と従動輪の回転数の差から路面の摩擦係数μを推定する。路面摩擦係数μが一定値(例えば0.7)以下ならば、濡れた路面や雪道といった滑りやすい路面を走行していると判定し、推定通過車速Vcの値を増加して減速度のアシスト量を減少し、減速制御開始時のトルク変化による車両姿勢の変化を防止する。
【0077】
なお、ここで推定通過車速Vcの値を増加しているのは減速度のアシスト量を減少させるためであり、低μ路を高い車速で通過すると推定しているわけではない。
【0078】
また、ここでは路面摩擦係数μに応じて推定通過車速Vcの値を増減しているが、駆動輪のスリップ率に応じて増減するようにしてもよい。
【0079】
(f)周囲の明るさ
画像処理装置を備えている場合は撮像画面の輝度の平均値が一定値以下の場合は車両周囲が暗いと判定する。撮像画面の輝度から判定する代わりにオートライトに用いられている照度センサを用いて明るさを判定するようにしてもよい。ここで、車両周囲が暗いと判定された場合は前方の見通しが悪いので、推定通過車速Vcの値を減少して減速度のアシスト量を増加する。
【0080】
(g)通行回数
ナビゲーション装置の地図情報に道路毎の通過回数を記録しておき、現在走行中の道路の通過回数が所定値(例えば3回)以下ならば運転者がよく知らない道路を走行していると判定し、推定通過車速Vcの値を減少して減速度のアシスト量を増加する。逆に、走行中の道路の通過回数が所定値以上ならば運転者が頻繁に通るよく知っている道路を走行していると判定し、推定通過車速Vcの値を増加して減速度のアシスト量を減少する。
【0081】
このように、本実施形態では、同一カーブであっても運転者の運転経歴や嗜好、天候、道路形状などの運転状況に応じて減速度のアシスト量を変化させるので、より一層運転者の運転感覚に適応した減速制御を実現することができる。
【0082】
なお、複数の運転状況判定手段を備え、各々の判定結果による推定通過車速Vcが異なる場合は、それらの最大値を選択して減速度のアシスト量を減らすようにすればよい。
【0083】
また、ここでは運転状況判定手段9の判定結果に応じて自動的に減速度のアシスト量を増減させるようにしたが、減速度アシスト量を調節可能なスイッチを備え、減速度アシスト量を運転者がマニュアル操作で任意に調整できるようにしても良い。
【0084】
また、ここでは推定通過車速Vcを増減させて減速度のアシスト量を増減させるようにしたが、減速度演算手段6で演算された減速度を増減させるようにしても同様の効果が得られる。
【0085】
続いて、第4の実施形態について説明する。
【0086】
装置構成は、第10図に示すように第1の実施形態の構成に対して運転者のブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段10が加わり、車両制御手段8に代えて警報発生手段11を備えている。
【0087】
ブレーキ操作検出手段10は、ブレーキペダルが踏まれたことを検出するブレーキペダルスイッチで構成される。警報発生手段11は、ブザーやインパネ内に設置された警報ランプなどで構成され、第10図に示すように現在の車速Vinからカーブにおける推定通過車速Vcまで減速するのに必要な減速度dが変速比制御で実現可能な減速度の上限値Dmaxを上回ったときに、警報を発生して運転者にブレーキ操作を行うよう促す。
【0088】
以下、制御内容について図12に示したフローに従って説明するが、図3に示したフローと共通の処理(ステップS21〜S24)に関しては説明を省略する。
【0089】
図12において、ステップS25では、現在の車速Vin、カーブにおける推定通過車速Vc及びカーブ開始地点までの距離lより演算された目標減速度dと減速度のアシスト量の上限値Dmaxを比較する。上限値Dmaxは、有段変速機の場合は第5図に示すように2速で得られる減速度、無段変速機の場合は第7図に示すようにDsレンジで得られる減速度に設定される。このとき、減速度dが上限値Dmaxを越えていればステップS26へ進み、逆に、減速度dが上限値Dmaxを越えていなければ変速比制御のみで安全にカーブを通過できるのでそのまま処理を終了する。
【0090】
ステップS26では、ブレーキペダルスイッチの出力からブレーキペダルが踏まれているかどうかを判定する。このとき、ブレーキペダルが踏まれていないと判定された場合は運転者に減速意図がないと判断してステップS27へ進み、ブザーやインパネ内に設置された警報ランプなどを作動させる。逆に、ブレーキペダルが踏まれていると判定された場合は運転者に減速意図があり、警報を発生する必要がないので処理を終了する。
【0091】
したがって、本実施形態では、運転者の減速意図を検出したときの車速Vinからカーブにおける推定通過車速Vcまで減速するのに必要な減速度が、変速比制御で与えられる減速度を上回っているにもかかわらず運転者がブレーキペダルを踏まないとき、言い換えれば、運転者がブレーキ操作を行わなければ危険な状況において警報を発生し運転者に注意を促すので、カーブ走行時などにおける安全性をさらに高めることができる。
【0092】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、自動変速機やブレーキアクチュエータの制御に限らずエンジン出力を制御して減速制御を行うようにしても良いし、さらには電気自動車のモータの出力やブレーキの回生量の制御などにも適用できる。また、本発明は以上の実施形態に限定されるものでなく、それらのいずれかを組み合わせて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る車両制御装置の概略構成を示したブロック図。
【図2】画像処理を用いた距離計測方法の説明図。
【図3】車両用制御装置における処理を示したフローチャート。
【図4】曲率半径とカーブ通過速度との関係を示した図。
【図5】有段変速機の場合の車速と減速度との関係を示した図。
【図6】無段変速機の場合の車速と減速度との関係を示した図。
【図7】経過時間と減速度との関係を示した図。
【図8】目標回転数を設定した場合の車速と減速度との関係を示した図。
【図9】第3の実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示したブロック図。
【図10】第4の実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示したブロック図
【図11】Dmaxと減速度dの比較図。
【図12】第4の実施形態に係る車両制御装置において行われる処理を示したフローチャート。
【符号の説明】
1 カーブ検出手段
2 通過車速推定手段
3 減速意図検出手段
4 車速測定手段
5 距離演算手段
6 減速度演算手段
7 路面μ推定手段
8 車両制御手段
9 運転状況判定手段
10 ブレーキ操作検出手段
11 警報発生手段

Claims (15)

  1. 自車前方のカーブを検出するカーブ検出手段と、検出されたカーブにおける通過車速を推定する通過車速推定手段と、運転者の減速意図を検出する減速意図検出手段と、自車速を測定する車速測定手段と、自車前方にカーブが検出されかつ運転者の減速意図が検出されたときにカーブ開始地点までの距離を演算する距離演算手段と、通過車速推定手段、車速測定手段及び距離演算手段の出力結果に基づき推定通過車速まで減速するのに必要な減速度を演算する減速度演算手段と、運転者の減速意図を検出した時点から演算された減速度に基づき車両の減速制御を開始する車両制御手段とを備え、駆動輪と従動輪の回転速度差に基づいて前記減速制御によって車両姿勢が不安定になる可能性を判断し、前記減速制御によって車両姿勢が不安定になる可能性が高いと判断されるときは前記減速制御を行わないことを特徴とする車両制御装置。
  2. 前記減速意図検出手段は、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作から運転者の減速意図を検出することを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
  3. 前記減速度演算手段の演算する減速度には上限値が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
  4. 路面の摩擦係数を推定する路面μ推定手段を備え、推定された路面摩擦係数が所定値以下なら前記車両制御手段は減速制御を行わないことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  5. 前記通過車速推定手段は検出されたカーブの曲率半径を基に通過車速を推定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  6. 車両や運転者の運転状況を判定する運転状況判定手段を備え、前記通過車速推定手段は運転状況判定手段の判定結果に応じて推定する通過車速を変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  7. 前記運転状況判定手段は運転者によるアクセルあるいはブレーキの操作回数から運転操作特性を判定し、運転者によるアクセルあるいはブレーキの操作回数が多く不慣れな道を走行していると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とする請求項6記載の車両制御装置。
  8. 前記運転状況判定手段は天候を推定し、天候が雨天であると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を高くし、現在の車速と推定通過車速との差を小さくすることを特徴とする請求項6または7記載の車両制御装置。
  9. 前記運転状況判定手段は勾配を検出し、前記通過車速推定手段は、上り勾配を走行していると判定された場合に推定する通過車速を高くし、逆に、下り勾配を走行していると判定された場合に推定する通過車速を低くすることを特徴とする請求項6から8のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  10. 前記運転状況判定手段は道幅を検出し、道幅が狭い道路を走行していると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とする請求項6から9のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  11. 前記運転状況判定手段は車両周囲の明るさを判定し、車両周囲が暗いと判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とする請求項6から10のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  12. 前記運転状況判定手段は自車両による現在走行中の道路のうちの所定の地点の通過頻度を演算し、通過頻度が多い道を走行していると判定された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を高くすることを特徴とする請求項6から11のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  13. 運転者が手動で減速度アシスト量を調節可能なスイッチを備え、大きな減速度アシスト量に調節された場合、前記通過車速推定手段は推定する通過車速を低くすることを特徴とする請求項6から12のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  14. 前記運転状況判定手段が複数の運転状況を判定する場合、前記通過車速推定手段は、各運転状況に基づき推定された通過車速のうち最も高い値を出力することを特徴とする請求項6から13のいずれか一つに記載の車両制御装置。
  15. 前記車両制御手段は、無段変速機とブレーキアクチュエータで構成され、変速比制御によるエンジン回転数の上昇量を制限する一方、変速比制御によって得られる減速度と目標とする減速度の差をブレーキアクチュエータを作用させて補うことを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の車両制御装置。
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