JP3618005B2 - 回転カソード用スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

回転カソード用スパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はスパッタリングターゲット、特に大型の被スパッタリング材への成膜を長期間にわたって行い得る回転カソード用スパッタリングターゲットの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】
近年、新しいタイプのマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置が用いられ、その高い成膜速度と、従来の平板型マグネトロンスパッタリング装置に比べて格段に高いターゲット使用効率から、特に注目を集めている。このような回転カソード型の装置に用いられるターゲットは円筒形状を有しており、このような円筒形のターゲットを製造するためには、従来の平板形のターゲットとは全く違った製造技術が求められる。例えば、特開平5−86462号公報には、円筒状基体の外周面に溶射法によってターゲット層を形成する方法が記載されている。また、特開平5−230645号公報には、円筒状基体の外周に粉末を充填し熱間等方圧プレス(HIP)によりターゲットを形成する方法が記載されている。さらに、特開昭58−93871号公報には、基体上にターゲットを接合する方法として接合材溶液中に浸漬ボンディングする方法が記載されている。
【0003】
しかしながら、円筒形基体の外周面に溶射法でターゲット層を形成する方法はターゲット材と基体との膨張率の差により、スパッタリング中の膨張、収縮を繰返すうちに基体とターゲット材とが剥離する恐れがある。また、ターゲット層を厚くすると割れ易く、すべての材料が溶射出来るわけではなく、さらには化学組成が溶射により変動する恐れがあるとともに溶射によりターゲット材の酸化が起こり易いという問題点を有するものであった。また、円筒状基体の外周に粉末を充填してHIPによりターゲットを形成する方法は、上記したと同様の膨張率の差に起因する剥離の問題を有するとともにHIPは多大なコストがかかり経済的ではないという問題を有する。さらに、浸漬ボンデイング法はその方法自体は従来の平板状ターゲットを浴中にバッキングプレートとともに浸漬して浴中で両者を重ねあわせて引き上げるという比較的単純な作業で接合が行えるが、この浸漬ボンデイング法を円筒形ターゲットに適用する場合、円筒形ターゲットと円筒形基体とを不透明な半田浴中で位置合わせを行わなければならず、特別な設備や工夫が必要となり、この位置合わせが不正確であると、ターゲットと基体とが浴中で接触してターゲットあるいは基体に破損、変形が生じる恐れがあるものであった。また近時の回転カソード形のスパッタリング装置は特に建材用等の大きな被スパッタリング材への成膜の分野で期待されており、従ってそのターゲットも大型化しており、現実に2〜3mの長さの円筒形ターゲットも実用化されている。このような大型のターゲットとその基体とを浸漬法で接合しようとすると、ハンダ槽の容量は巨大なものが必要となり、それを満たすためのハンダ量も多量となる。特にIn系ハンダ等の高価な接合材を用いる場合、そのコストは無視出来ないほど大きくなるものであった。
【0004】
本発明の目的は、ターゲットの材質を選ばずいかなる材質のものにも適用でき、簡便で低コストの円筒形の回転カソード用スパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
【0005】
【問題点を解決するための手段】
このような本発明の課題は、円筒形ターゲット材と円筒形基体とを接合して回転カソード用スパッタリングターゲットを製造するに際し、ターゲットと基体との接合面を接合材で濡らす処理を施した後、円筒形ターゲット材の一方の開口端を封止し、封止端を下側として円柱状容器となし、この円柱状容器内に接合材を入れ、次に円筒形基体の一方の開口端を封止し、封止端を下側として前記接合材を入れた円筒形ターゲット材内に円筒形ターゲット材と基体の中心とを一致するようにして挿入し、接合材を溶融状態となし、基体の封止端が円筒形ターゲット材の封止端に接触するまで降下させることにより、液状の接合材を円筒形ターゲットと円筒形基体との間隙に這い上がらせてその間隙を充満させた後、接合材を固化させて接合を行うことを特徴とする方法により達成される。なお、円筒形ターゲット材と基体の中心とを一致させる方法として前記基体の上下両端部に基体と円筒形ターゲットとの間隙よりもその肉薄が若干薄いスペーサーを取り付けることにより円筒形ターゲット材と基体の中心とを一致するようにすることができ、また本発明における円筒形ターゲット材は複数の円筒形ターゲット材を軸方向につなぎあわせ、接合部が気密性を保つようにして封止して一体化したものとしてもよい。
【0006】
以下、本発明を図面を参照して説明する。図1(a)において、1は本発明に使用する円筒形ターゲットを示し、図1(b)に示した2は円筒形基体をそれぞれ示すものである。これら円筒形ターゲット1および円筒形基体2はそれらの接合面があらかじめ接合材で濡らす処理を施してある。この円筒形ターゲット1の一方の開口端を封止し、封止端を下側として円柱状容器1’となし、この円筒形容器1’内に接合材3を入れ、次に円筒形基体2の一方の開口端を封止し、封止端を下側として前記の接合材を入れた円筒形ターゲット1材の中にそれら中心軸を一致するようにして基体2の下部を円柱状容器1’内に挿入する。次いで該容器1’内に入れた接合材3を溶融させ、その溶融状態とした接合材3が入れられた容器1’内に基体2をその自重で基体2の下端部がターゲット1の下端部に接触するまで降下させる。基体2の降下に伴い、液状の接合材3は基体2とターゲット1との間隙を満たし、余剰の接合材3は前記間隙の上部から外部へと溢れ出る。この時、溢れ出た接合材3が基体2の内部へ入らないように基体2の上端の開口端も封止することが好ましい。
【0007】
図1(c)は基体2をターゲット1内に挿入した後、液状の接合材3を固化させた状態を示すものであり、この状態から円筒形ターゲット1の下側の封止していた適宜の部材を取り除くことにより所望の回転カソード用スパッタリングターゲットが得られる。
【0008】
図2は特に大型で長尺の円筒形ターゲットを得る場合に、複数の円筒形ターゲットをその軸方向に繋ぎ合わせ、それらの接合部が気密性を保つように耐熱テープ等を用いて封止し一体となしたものである。これにより、長尺の円筒形ターゲット材が入手困難な場合、あるいは円筒形ターゲット材が入手困難が場合でも複数のターゲット材を組み合わせることで所望のサイズの円筒形ターゲット材を形成でき、そのまま円筒形基体への接合することが出きるため、作業が容易でコストがかからない。
【0009】
本発明において使用できる接合材3としては、通常の半田等適宜の接合材が使用できるが、特にIn系低融点半田あるいはAgペースト等が好ましい。この場合、円筒形ターゲット1と円筒形基体2との接合面に予め塗布する接合材と、円筒形ターゲットの下側端部を封止した後の容器1’内に入れる接合材とは、共にIn系低融点半田でも、あるいはAgペーストでもよく、あるいは接合面に予め塗布する接合材としてIn系低融点半田を用い、他方容器1’内に入れる接合材としてAgペーストを用いてもよい。なお、接合材としてIn系低融点半田を用いる場合には、接合層が展延性に富むため膨張収縮の繰返しに対して剥離が生じにくく、スパッタリング終了後にターゲットを剥ぎ取り円筒形基体を再利用するのが容易となる。他方、接合材としてAgペーストを用いた場合には、室温〜数十℃程度の温度での接合が可能となり、ターゲット材と基体の熱膨張率差に起因する接合時のターゲット材破壊の危険性を著しく低減することができ、作業も容易である。また、接合面に予め塗布する接合材としてIn系低融点半田を用い、他方容器1’内に入れる接合材としてAgペーストを用い場合には、上記したAgペーストの作業の容易性等の利点とともにIn系低融点半田を用いることによる基体の再利用が容易となる。
【0010】
本発明において、円筒形ターゲットと円筒形基体とをそれらの中心を一致させるように挿入するには、例えば図3に示されるような支持台70を用い、円筒形ターゲット1の一方の端部を封止した容器1’をその封止端を下側として水平とした支持台70の架台72等に戴置する際に、この容器1’を垂直に戴置し、かつこの容器1’内に挿入する基体2も前記架台72に垂直になるようにして降下させるようにする。また、円筒形ターゲット1と円筒形基体2との間隙の影響をより少なくするために、基体2の上下端部に前記間隙よりも若干肉厚の薄いスペーサーを取り付けるようにすることができる。
【0011】
以下、本発明の実施例を図4、図5、図6を参照してより詳細に説明する。
【実施例1】
円筒形ITOターゲット(外径75mmφ、内径62mmφ、長さ100mm)を4個(11、12、13、14)を用意し、各々のターゲットについて円筒形基体との接合面以外の面に接合材が付着するのを防止するため、耐熱テープ41でマスキングし、接合面にIn系低融点半田を下塗した。次に、これらのターゲットを耐熱テープ42、43を用いて軸方向に繋ぎ合わせて一本の円筒形ターゲットとなし、さらにその一方の開口端に銅製円板30(75mmφ×10mmt)を耐熱テープ44を用いて取り付けた。こうして出来たターゲット材の円柱状容器を以下、組立品Aと呼ぶ。
【0012】
一方、外径60mmφ、内径50mmφ、長さ400mmのTi製円筒形基体20にIn系低融点半田を下塗し、次に外径60mmφ、内径50mmφ、長さ400mmのTi製円筒形基体20にIn系低融点半田を下塗し、次いで基体の両端にネジ込み式のTi製円板31をセットし、さらに厚さ0.8mmの銅製スペーサー51を取り付けた。これを組立品Bと呼ぶ。
【0013】
エアー循環式オーブンの中に銅製円板の方を下にして組立品Aを垂直に立て、内部にIn系低融点半田1.5kgを入れた。組立品Bを組立品Aに途中まで挿入し、支持台70でそのまま保持する。オーブンの温度を170℃まで上昇させ、組立品A内部に入れたIn系低融点半田と組立品Aおよび組立品Bの下塗したIn系低融点半田が溶解したのを確認後、支持台ストッパー71を外すことにより組立品Bは自重により加工を開始する。溶けたIn系低融点半田は組立品Aと組立品Bの間隙を這い上がり、組立品Aの最上部の円周方向全面からこぼれ出るとともに組立品Bが組立品Aに完全に挿入される。組立品Aと組立品Bの位置が適正なことを確認後、オーブンから取り出し、冷却する。このときIn系低融点半田が完全に固化する前に銅製円板30を取り出す。さらに冷却後、接合部からはみ出した銅製スペーサー51をカットして取り除くとともに、Ti製円板31を取り出し、耐熱テープ41、43を取り除いて回転カソード用ITOターゲットを製造した。接合の状態を超音波探傷法により検査したところ、接合不良箇所は発見されなかった。
【0014】
【実施例2】
円筒形ITOターゲット(外径75mmφ、内径62mmφ、長さ100mm)を4個(11、12、13、14)を用意し、実施例1と同様にして耐熱テープ41でマスキングし、同じく接合面にIn系低融点半田を下塗し、さらにそのIn系低融点半田の固化後、常温硬化型Agペーストを下塗した。これらを実施例1と同様に繋ぎ合わせて一本の円筒形ターゲットとなし、組立品Aを構成した。一方、外径60mmφ、内径50mmφ、長さ400mmのSUS製円筒形基体20にIn系低融点半田を下塗して固化させた後、さらに常温硬化型Agペーストを下塗した。次に円筒形基体の両端にネジ込み式のSUS製円板31をセットし、さらに厚さ0.8mmの銅製スペーサー51を取り付けた。これを組立品Bとした。
【0015】
大気中にて、銅製円板の側を下にして組立品Aを垂直に立て、内部に脱気した常温硬化型Agペーストを200cc程度入れる。次に組立品Bを組立品Aに挿入するとAgペーストが組立品Aと組立品Bとの間隙を埋めながら競り上がり、組立品Aの最上部から円周方向全面にこぼれでる。組立品Bが組立品Aに完全に挿入され、双方の位置関係が適正であることを確認後、50℃としたオーブンに入れ、Agペーストの硬化を開始した。このとき、Agペーストが完全に硬化する前に銅製円板30を取り出す。さらに硬化完了後、接合部からはみ出した。銅製スペーサー51をカットして除去するとともにSUS製円板31を取外し耐熱テープ41,43を取り除いて回転カソード用ITOターゲットを製造した。接合の状態を超音波探傷法により検査したところ、接合不良箇所は発見されなかった。
【0016】
【発明の効果】
以上のような本発明によれば、溶射法とは異なりあらゆる材質のターゲット材に適用可能で、組成変動や酸化の恐れがなく、HIP法に比べ格段にコストが易い回転カソード用スパッタリングターゲットが得られる。このターゲットは接合材層がバッファとなり、膨張、収縮の繰返しに対しても剥離が起こりにくく、しかも大きな半田溶融槽や大量の半田が不要で低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の工程の概略を示す説明図である。
【図2】円筒形ターゲットが複数のターゲット材を繋ぎ合わせたものである場合の説明図である。
【図3】円筒形ターゲット内に円筒形基体を挿入して接合材を固化する場合に使用する基体の支持台を示す説明図である。
【図4】本発明実施例における組立品Aの断面説明図である。
【図5】本発明実施例における組立品Bの断面説明図である。
【図6】本発明実施例により得られる回転カソード用スパッタリングターゲットの断面説明図である。
【符号の説明】
1 円筒形ターゲット
1’円柱状容器
2 円筒形基体
3 接合材
11,12,13,14 円筒形ITOターゲット
20 円筒形基体
30 銅製円板
31 円板
41,42,43,44 耐熱テープ
51 銅製スペーサー
70 支持台
71 支持台ストッパー
72 架台

Claims (3)

  1. 円筒形ターゲット材と円筒形基体とを接合して回転カソード用スパッタリングターゲットを製造する方法において、ターゲットと基体との接合面を接合材で濡らす処理を施した後、円筒形ターゲット材の一方の開口端を封止し、封止端を下側として円柱状容器となし、この円柱状容器内に接合材を入れ、次に円筒形基体の一方の開口端を封止し、封止端を下側として前記接合材を入れた円筒形ターゲット材内に円筒形ターゲット材と基体の中心とを一致するようにして挿入し、接合材を溶融状態となし、基体の封止端が円筒形ターゲット材の封止端に接触するまで降下させることにより、液状の接合材を円筒形ターゲットと円筒形基体との間隙に這い上がらせてその間隙を充満させた後、接合材を固化させて接合を行うことを特徴する回転カソード用スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 前記基体の上下両端部に基体と円筒形ターゲットとの間隙よりも若干肉薄のスペーサーを取り付けることにより円筒形ターゲット材と基体の中心とを一致するようにする請求項1記載の回転カソード用スパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 円筒形ターゲット材が複数の円筒形ターゲット材を軸方向につなぎあわせ、接合部が気密性を保つように封止して一体化したものである請求項1又は2記載の回転カソード用スパッタリングターゲットの製造方法。
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