JP3612156B2 - トルクコンバータのロックアップダンパー及びダンパー機構 - Google Patents
トルクコンバータのロックアップダンパー及びダンパー機構 Download PDFInfo
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- F16H45/02—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches with mechanical clutches for bridging a fluid gearing of the hydrokinetic type
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダンパー機構、特に、入力側回転体から出力側回転体にトルクを機械的に伝達するトルクコンバータのロックアップ機構に含まれるロックアップダンパーに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にダンパー機構は、入力側回転体から出力側回転体にトルクを伝達しつつ、入力側回転体から出力側回転体に伝わる振動を吸収・減衰する。このダンパー機構の一例として、トルクコンバータ内部に配置されるロックアップ機構に含まれるダンパー(以下、ロックアップダンパーと称す)がある。
【0003】
トルクコンバータは、3種の羽根車(インペラ,タービン,ステータ)を内部に有し、内部の作動油によりトルクを伝達する装置である。インペラは入力側回転体に連結されたフロントカバーに固定されており、インペラからステータを介してタービンに流れる作動油によりインペラからタービンに伝達されるトルクがタービンに連結される出力側回転体に伝えられる。
【0004】
ロックアップ機構は、タービンとフロントカバーとの間に配置されており、フロントカバーとタービンとを機械的に連結して入力側回転体から出力側回転体にトルクを直接伝達するためのものである。
通常、このロックアップ機構は、フロントカバーに圧接可能なピストン部材と、ピストン部材に固定されるリティニングプレートと、リティニングプレートに支持されるコイルスプリングと、コイルスプリングにより回転方向にピストン部材と弾性的に連結されるドリブン部材とを有している。ドリブン部材は、出力側回転体に連結しているタービンに固定されている。これらのロックアップ機構を構成する部材はまた、入力された振動を吸収・減衰するロックアップダンパーを構成する。
【0005】
ロックアップ機構が作動すると、ピストン部材がフロントカバーと摺動あるいは圧接し、トルクはフロントカバーからピストン部材に伝達され、コイルスプリングを介してタービンに伝わる。またロックアップ機構では、トルクを伝達するとともにロックアップダンパーによって捩り振動を吸収・減衰する。コイルスプリングがピストン部材に固定されるリティニングプレートとドリブン部材との間で圧縮を繰り返しながらリティニングプレートと摺動することによって、振動が減衰される。また、微少捩り振動については、コイルスプリングの弾性変形の繰り返し(伸縮)により振動が吸収される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来のロックアップダンパーでは、コイルスプリングは、その外周側がリティニングプレートの曲げ加工された外周部(以下、外周曲がり部と称する)によって覆われている。
ロックアップ機構が作動し各部材が回転すると、コイルスプリング等に遠心力が働くため、コイルスプリング及びコイルスプリングの両端を支持するスプリングシートがリティニングプレートの外周曲がり部に押し付けられる。このような状態でコイルスプリングが伸縮すると、コイルスプリングの端部あるいはこの端部に装着されたスプリングシートと外周曲がり部との摩擦抵抗により、ダンパー特性が変化してしまう。特に、この摩擦抵抗の存在により、微少捩り振動を十分に吸収できなくなる。
【0007】
一方、ロックアップ機構によるクラッチの連結時や連結解除時には大きな捩り振動が発生することが多く、このような場合、摩擦抵抗が存在する方が振動を効果的に減衰できる。車両の種類によっては、このようなダンパー特性を持たせることが有効となる場合もある。
本発明の課題は、コイルスプリング(弾性部材)の端部あるいはこの端部に装着されるスプリングシート(シート部材)とリティニングプレートの外周曲がり部(入力側部材の保持部)との摩擦抵抗を抑えて、微少捩り振動の吸収性を向上させることにある。
【0008】
本発明の別の課題は、上記の課題を達成させるとともに、クラッチの連結時や連結解除時に発生する比較的大きな振動を効率よく減衰させることのできるロックアップダンパーあるいはダンパー機構を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、入力側回転体から出力側回転体にトルクを機械的に伝達するトルクコンバータのロックアップ機構に含まれるもので、入力側回転体から出力側回転体に伝わる振動を吸収・減衰する。このトルクコンバータのロックアップダンパーは、入力側部材と、出力側部材と、コイル状弾性部材と、シート部材とを備えている。入力側部材には入力側回転体からトルクが入力される。出力側部材は出力側回転体にトルクを出力する。弾性部材は入力側部材と出力側部材との間に、円周方向に複数並んで配置されている。シート部材は、入力側部材あるいは出力側部材に装着されている部材であり、円周方向に隣接する弾性部材の端部間に複数配置されている。このシート部材は、円周方向両側の弾性部材の端部を円周方向に支持する一対の支持部を有しており、弾性部材の端部の少なくとも一方が遊嵌部にはまった状態で、弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制する。
【0010】
このロックアップダンパーは、ロックアップ機構が作動して入力側回転体から出力側回転体にトルクが伝達されている時、及び両回転体の連結時や連結解除時に、入力側回転体から出力側回転体に伝わる振動を吸収・減衰する。
入力側回転体から入力側部材に捩り振動が伝達されると、入力側部材と出力側部材との間に配置される弾性部材が両部材間で圧縮すること等により振動が吸収・減衰される。このとき、弾性部材は径方向外側に遠心力を受けている。本請求項のロックアップダンパーでは、入力側部材あるいは出力側部材に装着されるシート部材を設けており、このシート部材の遊嵌部が弾性部材の端部にはまった状態において、弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制することができる。これにより、弾性部材に遠心力が作用しても弾性部材の端部の径方向外側への移動が抑えられるため、弾性部材の端部と弾性部材の外周側に設けられた他の部材との間の摩擦摺動の発生を抑えられる。このため、捩り振動、特に微少捩り振動に関して、入力側部材に入力された振動を十分に吸収することができる。
【0011】
また、従来のロックアップダンパーのうち、特にコイル状弾性部材がアーク形状でなく直線形状のロックアップダンパーの場合、弾性部材の端部と弾性部材の外周側に設けられた他の部材との摩擦抵抗は、微少振動の吸収性に悪影響を及ぼすことが多い。したがって、弾性部材が直線形状のロックアップダンパーの場合に、本請求項の構造は特に有効である。
【0012】
請求項2に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、請求項1に記載のものにおいて、入力側部材及び出力側部材の一方は、複数の弾性部材の外周側に配置される保持部を有しており、シート部材は入力側部材及び出力側部材の他方に装着されている。
【0013】
ここでは、弾性部材は、円周方向に対し入力側部材及び出力側部材と係合しており、両部材を弾性的に連結している。シート部材が出力側部材に装着されている場合、弾性部材の端部がシート部材の遊嵌部にはまった状態で、この弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制するとともに、弾性部材を円周方向に支持する。ロックアップダンパーが作動しているとき、入力側部材と出力側部材とが相対回転する。従来のような弾性部材の端部の径方向外側への移動の規制手段を有しないロックアップダンパーの場合、入力側部材と出力側部材との相対回転により、遠心力によって外周側に力を受ける弾性部材と弾性部材の外周側に配置される入力側部材の保持部とが摩擦摺動する。弾性部材が直線形状の場合には、特に弾性部材の端部が保持部と摺動し、微少捩り振動の吸収性に悪影響を与える。
【0014】
本請求項のロックアップダンパーでは、入力側部材が保持部を有している場合、保持部に対し相対回転する弾性部材の端部の径方向外側への移動を抑えて、この端部と入力側部材の保持部との当接・摺動を防ぐ、あるいは抑えている。これにより、微少捩り振動の吸収性が向上する。なお、クラッチ連結時等の比較的大きな振動が発生したとき、入力側部材と出力側部材との相対回転の方向によっては、弾性部材の端部がシート部材の遊嵌部からはずれて入力側部材の保持部と当接する時もある。しかし、このような時には、この弾性部材は入力側部材と出力側部材との間のトルク伝達を行っておらず振動も伝達していない状態となっているか、あるいは、この弾性部材の端部は入力側部材とともに回転している。したがって、弾性部材が遊嵌部にはまっていない状態においては、弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制する必要性は小さい。なお、入力側部材に保持部を有し、出力側部材にシート部材が装着されている場合について記載したが、出力側部材に保持部を有し、入力側部材にシート部材が装着されている場合も同様の効果が得られる。
【0015】
請求項3に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、請求項2に記載のものにおいて、シート部材の遊嵌部は、一対の支持部の一方にのみ設けられている。
【0016】
入力側部材は、通常トルクコンバータの回転方向に回転する。そして、入力側部材が弾性部材のトルクコンバータ回転方向後方側の端部を回転方向に押し、その力は弾性部材のトルクコンバータ回転方向前方側の端部から出力側部材に伝達され、出力側部材がトルクコンバータの回転方向に回転する。このとき微少捩り振動を弾性部材により効率よく吸収するためには、入力側部材の保持部から弾性部材の端部を介して振動が出力側部材に伝わらないように、弾性部材と入力側部材の保持部との摩擦摺動が小さいことが望ましい。ここでは、弾性部材のトルクコンバータ回転方向前方側の端部に対向する出力側部材の部分にシート部材が装着され、弾性部材の端部の径方向外側への移動が規制される。これにより、弾性部材のトルクコンバータ回転方向前方側の端部と保持部との摺動が防止され又は抑えられ、余分な摩擦抵抗がなくなる又は従来に較べて小さくなる。これにより、微少捩り振動を十分に吸収することができる。なお、弾性部材のトルクコンバータ回転方向後方側の端部に対向する出力側部材の部分にはシート部材は装着されていない。このトルクコンバータ回転方向後方側の端部が出力側部材に対向している弾性部材は、上記のようなロックアップダンパーの挙動時には、トルク伝達を行っていないか、あるいは、トルクコンバータ回転方向後方側の端部が入力側部材とともに回転している。したがって、この弾性部材が径方向外側に押し付けられて保持部と当接しても、ダンパー特性(微少捩り振動の吸収性)には殆ど影響を与えない。
【0017】
一方、ロックアップ機構のクラッチの連結時や連結解除時にはショック等により比較的大きな捩り振動が発生する。このときには、入力側部材と出力側部材とが両回転方向に大きく相対回転を繰り返して振動を減衰する。ここでは、入力側部材に対して出力側部材がトルクコンバータの回転方向と逆の方向に相対回転する時には、出力側部材に対向している弾性部材のトルクコンバータ回転方向前方側の端部は径方向外側への移動が規制されていて保持部との摩擦抵抗がない又は小さい。これに対し、入力側部材に対して出力側部材がトルクコンバータの回転方向と同じ方向に相対回転するときには、一対の支持部の一方のみに遊嵌部を設けているため、出力側部材に対向している弾性部材のトルクコンバータ回転方向後方側の端部は径方向外側への移動が規制されておらず保持部との間に大きな摩擦抵抗が発生する。この弾性部材のトルクコンバータ回転方向後方側の端部と保持部との摩擦抵抗によって、クラッチの連結時や連結解除時に発生する捩り振動を効率よく減衰することができる。なお、入力側部材に係合している弾性部材の端部は、入力側部材の保持部とともに回転するため、摩擦抵抗を殆ど発生させない。
【0018】
請求項4に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、請求項1又は2に記載のものにおいて、シート部材は入力側部材及び出力側部材の一方によって軸方向及び半径方向に移動不能に支持されており、入力側部材及び出力側部材の他方はシート部材に対して軸方向に脱着可能となっている。
【0019】
このロックアップダンパーでは、例えばシート部材が出力側部材に対して着脱可能となっている場合、入力側部材によって軸方向及び半径方向に移動不能に支持されるため、シート部材が円周方向に移動する際に姿勢が安定し、弾性部材の端部の支持を確実に行える。また、シート部材が軸方向に着脱可能となっているため、組立が容易に行える。また、シート部材は、入力側部材によって軸方向へ移動不能に支持されているため、軸方向に着脱可能としていてもトルクコンバータ回転時にシート部材が脱落するようなことはない。なお、シート部材が出力側部材に対して着脱可能となっている場合について記載したが、入力側部材に対して着脱可能となる場合にも同様の効果が得られる。
【0020】
請求項5に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、請求項1から4のいずれかに記載のものにおいて、シート部材の遊嵌部は先端が先細形状である。ここでは、入力側部材と出力側部材の相対回転によって一旦遊嵌部から弾性部材がはずれた場合にも、入力側部材と出力側部材とが逆の相対回転をしたときに確実にコイル状弾性部材の端部が遊嵌部にはまるように、遊嵌部の先端を先細形状としている。
【0022】
請求項6に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、入力側回転体から出力側回転体にトルクを機械的に伝達するトルクコンバータのロックアップ機構に含まれるもので、入力側回転体から出力側回転体に伝わる振動を吸収・減衰する。このトルクコンバータのロックアップダンパーは、入力側部材と、出力側部材と、弾性部材と、シート部材とを備えている。入力側部材には入力側回転体からトルクが入力される。出力側部材は出力側回転体にトルクを出力する。弾性部材は入力側部材と出力側部材との間に配置されている。シート部材は、第1係止部と、第2係止部と、支持部とを有している。第1係止部は入力側部材に係止し得る部分である。第2係止部は出力側部材に係止し得る部分である。支持部は弾性部材を円周方向に支持する。また、シート部材は、第1係止部と第2係止部とのうち少なくとも一方の係止部が入力側部材あるいは出力側部材に係止した状態で、弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制する。
【0023】
ここでは、弾性部材は、円周方向に対し入力側部材及び出力側部材と係合し、両部材を弾性的に連結する。
このロックアップダンパーが作動しているとき、入力側部材と出力側部材とは相対回転をする。従来のような弾性部材の端部の径方向外側への移動の規制手段を有しないロックアップダンパーの場合、入力側部材と出力側部材との相対回転により、遠心力によって外周側に力を受ける弾性部材と弾性部材の外周側に配置される入力側部材の保持部とが摩擦摺動する。弾性部材が直線形状の場合には、特に弾性部材の端部が保持部と摺動し、微少捩り振動の吸収性に悪影響を与える。
【0024】
本請求項のロックアップダンパーでは、弾性部材の端部に装着されたシート部材が入力側部材あるいは出力側部材に係止しており、シート部材が装着されている弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制している。入力側部材と出力側部材との相対回転によってシート部材の第1係止部が入力側部材に係止しなくなったときには第2係止部と出力側部材とが係止することによって、シート部材の第2係止部が出力側部材に係止しなくなったときには第1係止部と入力側部材とが係止することによって、弾性部材の端部の径方向外側への移動が規制される。このため、弾性部材の端部と入力側部材の保持部との摺動による摩擦抵抗が抑えられ、微少捩り振動の吸収性が向上する。
【0025】
請求項7に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、請求項6に記載のものにおいて、第1係止部及び第2係止部は、シート部材に入力側部材及び出力側部材が遊びを持った状態ではまり得る2つの溝部が形成されるように設けられた3つの爪である。そして、これらの爪は先端部が先細形状となるような傾斜を有している。
【0026】
ここでは、入力側部材と出力側部材の相対回転により3つの爪の間に形成される溝部から入力側部材あるいは出力側部材がはずれた場合にも、入力側部材と出力側部材とが逆の相対回転をしたときに確実に入力側部材あるいは出力側部材が溝部にはまり込むように、爪の先端部が先細形状となるような傾斜を爪に持たせている。
【0027】
請求項8に記載のトルクコンバータのロックアップダンパーは、請求項5又は6に記載のものにおいて、シート部材が弾性部材の一対の端部の一方にのみ装着されている。
【0031】
入力側部材は、通常トルクコンバータの回転方向に回転する。そして、入力側部材が弾性部材のトルクコンバータ回転方向後方側の端部を回転方向に押し、その力は弾性部材のトルクコンバータ回転方向前方側の端部から出力側部材に伝達され、出力側部材がトルクコンバータの回転方向に回転する。このとき微少捩り振動を弾性部材により効率よく吸収するためには、弾性部材と弾性部材の外周側に設けられた保持部材との摩擦摺動が小さいことが望ましい。ここでは、弾性部材の一方の端部の径方向外側への移動が規制されているので、保持部材に対して相対回転する弾性部材の一方の端部と保持部材との摺動がなくなり又は抑えられ、従来に較べて余分な摩擦抵抗が小さくなる。これにより、微少捩り振動が十分に吸収できる。
【0032】
一方、ロックアップ機構のクラッチの連結時や連結解除時にはショック等により比較的大きな捩り振動が発生する。このときには、入力側部材と出力側部材とが両回転方向に大きく相対回転を繰り返して振動を減衰する。ここでは、入力側部材に対して出力側部材が一方の方向に相対回転している時には、弾性部材の一方の端部は、径方向外側への移動が規制され、弾性部材の外周側に設けられた保持部材との摩擦抵抗がない又は小さい。これに対し、入力側部材に対して出力側部材が他方の方向に相対回転している時には、弾性部材の他方の端部は、径方向外側への移動が規制されていないため、保持部材との間に大きな摩擦抵抗を発生させる。この弾性部材の他方の端部と保持部材との摩擦抵抗によって、クラッチの連結時や連結解除時に発生する振動を効率よく減衰することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1に示すトルクコンバータ1は、フロントカバー3と、インペラ4とタービン5及びステータ(図示せず)からなるトルクコンバータ本体部と、ロックアップ機構8とから構成されている。
【0041】
フロントカバー3とインペラ4のシェルが内部に作動油が充填された作動油室を形成している。インペラ4、タービン5及びステータ(図示せず)は従来と同様の構造であるので詳細な説明は省略する。タービン5のシェルは内周部がリベット24によりタービンハブ6に固定されている。タービンハブ6は、トランスミッション側から延びるシャフト(図示せず)にスプライン係合している。
【0042】
ロックアップ機構8は、フロントカバー3からのトルクを機械的にタービン5及びタービンハブ6に伝達するとともに入力された振動を吸収・減衰するための装置である。ロックアップ機構8は、主として、入力側のピストン部材9と、出力側のドリブン部材10と、弾性部材である4個のコイルスプリング13と、保持部材であるリティニングプレート14と、連結部材30とから構成されている。
【0043】
ピストン部材9は、トルクコンバータ本体内の油圧を制御することで、フロントカバー3側に接近あるいはフロントカバー3から離反する部材である。ピストン部材9は円板状の部材であり、外周筒部9aと内周筒部9bとを有している。外周筒部9aと内周筒部9bはトランスミッション側(図1の右側)に延びている。内周筒部9bはタービンハブ6の外周面に相対回転自在にかつ軸方向に移動可能に支持されている。クラッチ遮断状態では、内周筒部9bはタービンハブ6に当接し、軸方向にはフロントカバー3側にのみ移動可能となる。さらに、ピストン部材9の外周側の側面には、フロントカバー3の摩擦面に対向する位置に円板状の摩擦フェーシング20が固定されている。
【0044】
リティニングプレート14は、4個のコイルスプリング13をピストン部材9側に保持するための部材である。リティニングプレート14は、ピストン部材9の外周筒部9aよりも内側に配置されている。リティニングプレート14は、断面弧状の外周曲がり部16を有している。外周曲がり部16の外周面は外周筒部9aの内周面に当接している。図1及び図2に示すように、外周曲がり部16を円周方向に等間隔で2分割する位置(半径方向に対向する位置)には、それぞれ内周側及びトランスミッション側に屈曲して突出する円周方向支持部17a,17bが形成されている。さらに、円周方向支持部17a,17b部分からは固定部18が内周側に延びている。固定部18は、所定角度円周方向に延び、各々が3本のリベット21によりピストン部材9に固定されている。
【0045】
ドリブン部材10は環状のプレート部材であり、溶接によりタービン5のシェル外周部分に固定されている。ドリブン部材10からは、エンジン側に2本の支持部10aが突出している。2本の支持部10aは、リティニングプレート14の円周方向支持部17a,17bの間に配置されている。また、支持部10aには、図3に示すように、シート部材40が装着されている。
【0046】
シート部材40は、図4に示すように、円周方向支持部17a,17bの形状に対応する外周面及び内周面を有し、図3に示すように、円周方向支持部17a,17bの間に配置され、これらの円周方向支持部17a,17bと円周方向に相対移動自在に係合している。このシート部材40は、ドリブン部材10の支持部10aが嵌合する開口40aを有する装着部40bと、装着部40bの円周方向両側に形成されコイルスプリング13の端部が遊びを持った状態ではまり得る遊嵌部40cと、コイルスプリング13の円周方向の端面が当接し得る支持面40dとから構成され、合成樹脂により形成されている。遊嵌部40cの先端はコイルスプリング13にはまりやすいように先細形状となっている。そして、遊嵌部40cにコイルスプリング13の端部がはまった状態において、このコイルスプリング13の端部の径方向外側への移動が規制される。また、シート部材40は、円周方向に沿う各部材に対応して、全体に湾曲した形状となっている(図3参照)。
【0047】
コイルスプリング13は、ロックアップ機構8においてトルク伝達を行うともに、エンジンの回転変動により生じる微少捩じり振動やクラッチ連結時のショックによる振動などを吸収・減衰するための部材である。コイルスプリング13は、リティニングプレート14を介して、ピストン部材9とドリブン部材10とを回転方向に弾性的に連結している。一方の円周方向支持部17a,17b及び支持面40dと他方との間の片側には、図2に示すように、第1及び第2コイルスプリング13A,13Bが配置されている。また、一方の円周方向支持部17a,17b及び支持面40dと他方との間のもう一方の片側には、第3コイルスプリング13Cと第4コイルスプリング13Dが配置されている。なお、第3コイルスプリング13Cと第4コイルスプリング13Dは第1及び第2コイルスプリング13A,13Bと同様であるので以下では説明を省略する。
【0048】
第1コイルスプリング13Aと第2コイルスプリング13Bは、図2に示すように、後述する連結部材30のスプリング中間シート部32を間に介して直列に配置されている。すなわち、全体では第1コイルスプリング13Aと第2コイルスプリング13Bを合わせた広い捩じり角度及び低剛性が得られる。
連結部材30は、コイルスプリング13同士を半径方向に連結することで、コイルスプリング13が外周側に移動するのを制限するための部材である。連結部材30は、環状プレート31と、環状プレート31に設けられたスプリング中間シート部32とから構成されている。
【0049】
環状プレート31は、コイルスプリング13の内周側でリティニングプレート14とタービン5との軸方向間に相対回転自在に配置されている。環状プレート31には、半径方向に対向する2か所に半径方向外方に突出する突出部31a(図1参照)が形成されている。突出部31aの一方は第1コイルスプリング13Aと第2コイルスプリング13Bとの間に配置され、他方は第3コイルスプリング13Cと第4コイルスプリング13Dとの間に配置されている。
【0050】
スプリング中間シート部32は突出部31aに固定され、第1コイルスプリング13Aと第2コイルスプリング13Bを直列に連結するとともに、両コイルスプリング13A,13Bのスプリング中間シート部32側の端部が径方向外側に移動するのを規制するための部材である。このようにして、第1及び第2コイルスプリング13A,13Bのスプリング中間シート部32側の端部と、第3及び第4コイルスプリング13C,13Dのスプリング中間シート部32側の端部とは、連結部材30により半径方向に連結されている。すなわち、コイルスプリング13同士の連結部分は径方向外側に移動するのが制限される。
【0051】
次に動作について説明する。
ロックアップ機構8の遮断状態からフロントカバー3とピストン部材9との間の作動油がドレンされると、ピストン部材9がフロントカバー3側に移動し、その結果摩擦フェーシング20がフロントカバー3の摩擦面に密着する。これにより、フロントカバー3のトルクはピストン部材9に伝達され、さらにリティニングプレート14、コイルスプリング13及びドリブン部材10を介してタービン5に伝達される。さらにトルクは、タービンハブ6からトランスミッション側から延びるシャフト(図示せず)に出力される。なお、入力されるトルクの方向、すなわち、トルクコンバータ1の回転方向は図2におけるR2の向きである。
【0052】
ロックアップ連結中にフロントカバー3に微少捩じり振動が入力されると、ピストン部材9とドリブン部材10とが周期的に相対回転し、コイルスプリング13が円周方向に伸縮される。ここでは、コイルスプリング13の低剛性・広い捩じり角度の特性によって微小捩じり振動を効果的に吸収する。また、圧縮されるとコイルスプリング13は径方向外方に迫り出そうとし、かつ遠心力により径方向外側に移動しようとする。しかし、連結されたコイルスプリング13(第1コイルスプリング13Aと第2コイルスプリング13B、及び第3コイルスプリング13Cと第4コイルスプリング13D)は、連結部分がスプリング中間シート部32に、端部がシート部材40に支持されるため、径方向外側に移動しにくい。その結果、コイルスプリング13と外周曲がり部16との間で摩擦摺動が発生しにくい。すなわち、コイルスプリング13と外周曲がり部16との間に発生する摩擦抵抗が小さくなり、コイルスプリング13によって微小捩り振動を効果的に吸収できる。なお、コイルスプリング13が圧縮された状態においては、スプリング中間シート部32により連結されたコイルスプリング13の一端はドリブン部材10側の遊嵌部40c,支持面40dに、他端はピストン部材9側の円周方向支持部17a,17bに支持され、この他端は径方向外側への移動を規制する手段がなく外周曲がり部16と当接する。しかし、この他端を支持する円周方向支持部17a,17bと外周曲がり部16とは一体であり、コイルスプリング13の他端と外周曲がり部16との摺動は殆ど発生しない。
[第2実施形態]
ここでは、第1実施形態で採用したシート部材40の代わりに、図6に示すようなシート部材42を採用している。これ以外のトルクコンバータ1の構成については、第1実施形態と同様である。
【0053】
シート部材42は、図6に示すように、円周方向支持部17a,17bの形状に対応する外周面及び内周面を有し、図5に示すように、円周方向支持部17a,17bの間に配置され、これら17a,17bと円周方向に相対移動自在に係合している。このシート部材42は、ドリブン部材10の支持部10aが嵌合する開口42aを有する装着部42bと、装着部42bの円周方向片側に形成されコイルスプリング13の端部が遊びを持った状態ではまり得る遊嵌部42cと、コイルスプリング13の円周方向の端面が当接し得る支持面42dとから構成され、合成樹脂により形成されている。遊嵌部42cは、トルクコンバータ1の回転方向(図2のR2の向き)に対して装着部42bの後方に配置される。遊嵌部42cの先端は、コイルスプリング13にはまりやすいように先細形状となっている。そして、シート部材42は、遊嵌部42cにスプリング中間シート部32により連結されたコイルスプリング13のトルクコンバータ1の回転方向前方側の端部がはまった状態において、このコイルスプリング13の端部の径方向外側への移動を規制する。また、シート部材42は、円周方向に沿う各部材に対応して、全体に湾曲した形状となっている(図5参照)。
【0054】
次に動作について説明する。
フロントカバー3からトランスミッション側に延びるシャフト(図示せず)へのトルクの伝達については、第1実施形態と同様である。
ロックアップ連結中には、トルクコンバータ1の回転方向が図2におけるR2の向きであるので、スプリング中間シート部32により連結されたコイルスプリング13は、トルクコンバータ1の回転方向前方側の端部がドリブン部材10側の支持面42dに、後方側の端部がピストン部材9側の円周方向支持部17a,17bに支持された状態で圧縮されている。そして、この状態においてフロントカバー3に微少捩じり振動が入力されると、ピストン部材9とドリブン部材10とが周期的に相対回転し、コイルスプリング13が円周方向に伸縮される。このとき、圧縮されているコイルスプリング13は径方向外方に迫り出そうとし、かつ遠心力により径方向外側に移動しようとする。しかし、連結されたコイルスプリング13は、連結部分がスプリング中間シート部32に、一端がドリブン部材10側の遊嵌部42cに支持されるため、径方向外側に移動しにくい。その結果、コイルスプリング13と外周曲がり部16との間で摩擦摺動が発生しにくい。すなわち、コイルスプリング13と外周曲がり部16との間に発生する摩擦抵抗が小さくなり、コイルスプリング13によって微小捩り振動を効果的に吸収できる。なお、スプリング中間シート部32により連結されたコイルスプリング13の他端はピストン部材9側の円周方向支持部17a,17bに支持され、この他端は径方向外側への移動を規制する手段がないため外周曲がり部16と当接する。しかし、この他端を支持する円周方向支持部17a,17bと外周曲がり部16とは一体であり、コイルスプリング13の他端と外周曲がり部16との摺動は殆ど発生しない。
【0055】
ロックアップ連結時あるいは連結解除時には、ショック等により比較的大きな捩り振動が発生する。このときには、ピストン部材9とドリブン部材10とが両回転方向に大きく相対回転を繰り返して振動を減衰する。ピストン部材9に対してドリブン部材10がトルクコンバータ1の回転方向と逆の方向(図2のR1)に相対回転している時には、連結されたコイルスプリング13のトルクコンバータ1の回転方向(R2)前方側の端部は、遊嵌部42cにより径方向外側への移動が規制されており外周曲がり部16との摩擦摺動が発生しにくい。これに対し、ピストン部材9に対してドリブン部材10がトルクコンバータ1の回転方向と同じ方向(図2のR2)に相対回転しているときには、連結されたコイルスプリング13のトルクコンバータ1の回転方向(R2)後方側の端部は径方向外側への移動が規制されておらず外周曲がり部16との摩擦摺動が発生する。この連結されたコイルスプリング13のトルクコンバータ1の回転方向(R2)後方側の端部と外周曲がり部16との摩擦摺動による抵抗によって、ロックアップ連結時や連結解除時に発生する捩り振動が効率よく減衰される。
【0056】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態である図7〜図12に示すトルクコンバータのロックアップ機構50は、フロントカバー3からのトルクを機械的にタービン5に伝達するとともに、入力された振動を吸収・減衰するための装置である。ロックアップ機構50は、主として、入力側のピストン部材51と、出力側のドリブン部材52と、大コイルスプリング53a及び小コイルスプリング53bとから成る弾性部材である4組のコイルスプリング53と、保持部材であるリティニングプレート54と、連結部材55と、シート部材56とから構成されている。図7にドリブン部材52を除くロックアップ機構50の平面図を、図8及び図9にその部分断面図を示す。
【0057】
ピストン部材51は、トルクコンバータ本体内の油圧を制御することで、フロントカバー3側に接近あるいはフロントカバー3から離反する部材である。ピストン部材51は円板状の部材であり、外周筒部51aと内周筒部51bとを有している。外周筒部51aと内周筒部51bはトランスミッション側(図8,9の右側)に延びている。内周筒部51bはタービンハブ(図示せず)の外周面に相対回転自在にかつ軸方向に移動可能に支持されている。ピストン部材51の外周側の側面には、フロントカバー3の摩擦面に対向する位置に円板状の摩擦フェーシング20が固定されている。
【0058】
リティニングプレート54は、4組のコイルスプリング53をピストン部材51側に保持するための部材である。リティニングプレート54は、ピストン部材51の外周筒部51aより内側に配置されている。リティニングプレート54は、主に断面弧状の外周曲がり部54aからなる。外周曲がり部54aの外周面は外周筒部51aの内周面に当接している。外周曲がり部54aを円周方向に等間隔で4分割する位置には、それぞれ内周側及びトランスミッション側に突出する円周方向支持部54b,54cが形成されている。さらに、円周方向支持部54b,54c部分からは固定部54dが内周側に延びている。固定部54dは、リベット59によりピストン部材51に固定されている。
【0059】
ドリブン部材52は環状のプレート部材であり、溶接によりタービン5のシェル外周部分に固定されている。ドリブン部材52からは、図8及び図10に示す4本の支持部52aがエンジン側に突出している。支持部52aはリティニングプレート54の円周方向支持部54b,54cの間に配置されている。
シート部材56は、図11及び図12に示すように、3つの爪(外周側爪56a,中間爪56b,内周側爪56c)と、大コイルスプリング53aに嵌合する装着部56dと、大コイルスプリング53aの端面と当接して大コイルスプリング53aを支持する支持面56eとを有している。このシート部材56は、図10に示すように、ドリブン部材52の支持部52a及びリティニングプレート54の円周方向支持部54b,54cと係止し得る部材であり、大コイルスプリング53aに装着される。すなわち、外周側爪56aと中間爪56bとの間の溝部に支持部52aが、中間爪56bと内周側爪56cとの間の溝部に円周方向支持部54cがはまる。このように、外周側爪56aと中間爪56bとの間の溝部に支持部52aがはまっているときには支持部52aによって、中間爪56bと内周側爪56cとの間の溝部に円周方向支持部54cがはまっているときには円周方向支持部54b,54cによって、シート部材56及びシート部材56が装着されている大コイルスプリング53aの端部の径方向外側への移動が規制される。また、円周方向に沿う各部材に対応して、装着部56d及び支持面56eは一定の傾きを有している。3つの爪56a,56b,56cの支持部52aあるいは円周方向支持部54b,54cと接し得る面の先端は、爪56a,56b,56cにより形成される各溝部に支持部52aや円周方向支持部54b,54cがはまりやすいように、傾斜面を有している。なお、シート部材56は、図11に示すように比較的製作の容易な形状であり、樹脂成型品ではなく金属加工品である。
【0060】
コイルスプリング53は、ロックアップ機構8においてトルク伝達を行うともに、エンジンの回転変動により生じる微少捩じり振動やクラッチ連結時のショックによる振動などを吸収・減衰するための部材である。ここでは、大小2種類のコイルスプリング53a,53bによりコイルスプリング53を形成しているため、2段階のダンパー特性が得られている。このコイルスプリング53は、リティニングプレート54を介して、ピストン部材51とドリブン部材52とを回転方向に弾性的に連結している。大コイルスプリング53aと小コイルスプリング53bは、後述する連結部材55の中間シート部55aを間に介して直列に配置されている。シート部材56は、図7に示すように、大コイルスプリング53aのトルクコンバータ回転方向(図7のR2の向き)前方の端部に装着されている。
【0061】
連結部材55は、4組のコイルスプリング53の連結部分を径方向に連結することで、この連結部分が外周側に移動するのを制限するための部材である。連結部材55は、環状プレート55bと、円周方向4カ所で環状プレート55bから外周側に突出する中間シート部55aとから構成されている。環状プレート55bは、コイルスプリング53の内周側でリティニングプレート54とタービン5との軸方向間に相対回転自在に配置されている。この環状プレート55bは、図7,8に示すように、円弧状の押さえプレート57に回転自在に押さえられ、軸方向の移動を規制されている。押さえプレート57は、4枚使用され、内周側がリベット60及び前述のリベット59によってピストン部材51に装着されている。中間シート部55aは、大コイルスプリング53aと小コイルスプリング53bとを直列に連結するとともに、両コイルスプリング53a,53bの連結部分が径方向外側に移動するのを規制する。
【0062】
次に動作について説明する。
ロックアップ連結中には、トルクコンバータの回転方向が図7におけるR2の向きであるので、コイルスプリング53は、トルクコンバータの回転方向前方側の大コイルスプリング53aの端部がドリブン部材52の支持部52aにはまっているシート部材56の支持面56eに、後方側の小コイルスプリング53bの端部がピストン部材51に固定されているリティニングプレート54の円周方向支持部54b,54cに支持された状態で圧縮されている。そして、この状態においてフロントカバー3に微少捩じり振動が入力されると、ピストン部材51とドリブン部材52とが周期的に相対回転し、コイルスプリング53が円周方向に伸縮される。このとき、圧縮されているコイルスプリング53は径方向外方に迫り出そうとし、かつ遠心力により径方向外側に移動しようとする。しかし、コイルスプリング53は、連結部分が連結部材55の中間シート部55aに、トルクコンバータの回転方向前方側の大コイルスプリング53aの端部がシート部材56の中間爪56bによってドリブン部材52の支持部52aに支持されるため、径方向外側に移動しにくい。その結果、コイルスプリング53と外周曲がり部54aとの間で摩擦摺動が発生しにくい。すなわち、コイルスプリング53と外周曲がり部54aとの間に発生する摩擦抵抗が小さくなり、コイルスプリング53により微小捩り振動を効果的に吸収できる。
【0063】
ロックアップ連結時あるいは連結解除時には、ショック等により比較的大きな捩り振動が発生する。このときには、ピストン部材51とドリブン部材52とが両回転方向に大きく相対回転を繰り返して振動を減衰する。ピストン部材51に対してドリブン部材52がトルクコンバータ回転方向と逆の方向(図7のR1)に相対回転している時には、コイルスプリング53のトルクコンバータ回転方向(R2)前方側の大コイルスプリング53aの端部は、シート部材56の中間爪56bによってドリブン部材52の支持部52aに支持されるため径方向外側に移動しにくい。すなわち、外周曲がり部54aとの摩擦摺動が発生しにくい。これに対し、ピストン部材51に対してドリブン部材52がトルクコンバータ回転方向と同じ方向(図7のR2)に相対回転しているときには、コイルスプリング53のトルクコンバータ回転方向(R2)後方側の小コイルスプリング53bの端部は径方向外側への移動が規制されていないため、外周曲がり部54aとの摩擦摺動が発生する。このコイルスプリング53のトルクコンバータ回転方向(R2)後方側の端部と外周曲がり部54aとの摩擦摺動による抵抗によって、ロックアップ連結時や連結解除時に発生する捩り振動が効率よく減衰される。
【0064】
なお、第3実施形態においては大コイルスプリング53aのトルクコンバータ回転方向(図7のR2の向き)前方の端部にのみシート部材56を装着しているが、ダンパー特性を変えるためにピストン部材51とドリブン部材52とがどちらの向きに相対回転をする場合にも摩擦抵抗を抑えたいときには、小コイルスプリング53bのトルクコンバータ回転方向(図7のR2の向き)後方の端部にもシート部材56を装着すればよい。
【0065】
【発明の効果】
本発明では、弾性部材の径方向外側への移動を規制するシート部材を設けることにより、弾性部材の端部と弾性部材の外周側に配置される他の部材との摩擦抵抗が抑えられて、微少捩り振動の吸収性が向上する。
また、別の本発明では、入力側部材と出力側部材との一方の方向の相対回転時には上記摩擦抵抗を抑え、他方の方向の相対回転時には上記摩擦抵抗を発生させる構造とすることにより、上記効果に加えて、クラッチの連結時や連結解除時に発生する比較的大きな振動を効率よく減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのトルクコンバータの鋭角縦断面概略図。
【図2】ピストン部材,リティニングプレート,コイルスプリング,及び連結部材の平面図。
【図3】シート部材付近拡大図。
【図4】シート部材斜視図。
【図5】第2実施形態のシート部材付近拡大図。
【図6】第2実施形態のシート部材斜視図。
【図7】第3実施形態のピストン部材,リティニングプレート,コイルスプリング,及び連結部材の平面図。
【図8】図7のVIII−VIII断面図。
【図9】図7のIX−IX断面図。
【図10】第3実施形態のシート部材付近拡大図。
【図11】第3実施形態のシート部材側面図。
【図12】第3実施形態のシート部材正面図(図11のXII −XII 矢視図)。
【符号の説明】
1 トルクコンバータ
3 フロントカバー(入力側回転体)
5 タービン(出力側回転体)
8,50 ロックアップ機構
9 ピストン部材(入力側部材)
10 ドリブン部材(出力側部材)
13,53 コイルスプリング
14,54 リティニングプレート
16,54a 外周曲がり部(保持部)
40,42,56 シート部材
40c,42c 遊嵌部
40d,42d,56e 支持面(支持部)
56a 外周側爪(第1係止部)
56b 中間爪 (第2係止部)
56c 内周側爪(第1係止部)
Claims (8)
- 入力側回転体から出力側回転体にトルクを機械的に伝達するトルクコンバータのロックアップ機構に含まれる、前記入力側回転体から前記出力側回転体に伝わる振動を吸収・減衰するロックアップダンパーであって、
前記入力側回転体からトルクが入力される入力側部材と、
前記出力側回転体にトルクを出力する出力側部材と、
前記入力側部材と前記出力側部材との間に配置され、円周方向に並んで配置された複数のコイル状弾性部材と、
前記入力側部材あるいは前記出力側部材に装着され、円周方向に隣接する弾性部材の端部間に配置された複数のシート部材とを備え、
前記シート部材は、円周方向両側の前記弾性部材の端部を円周方向に支持する一対の支持部と、前記弾性部材の端部の少なくとも一方に遊びを持った状態ではまり得る遊嵌部とを有し、前記弾性部材が前記遊嵌部にはまった状態で前記弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制する、
トルクコンバータのロックアップダンパー。 - 前記入力側部材及び前記出力側部材の一方は、前記複数の弾性部材の外周側に配置された保持部を有し、
前記シート部材は、前記入力側部材及び前記出力側部材の他方に装着されている、請求項1に記載のトルクコンバータのロックアップダンパー。 - 前記シート部材の前記遊嵌部は、前記一対の支持部の一方にのみ設けられている、請求項1又は2に記載のトルクコンバータのロックアップダンパー。
- 前記シート部材は前記入力側部材及び前記出力側部材の一方によって軸方向及び半径方向に移動不能に支持されており、
前記入力側部材及び前記出力側部材の他方は前記シート部材に対して軸方向に着脱可能となっている、請求項1又は2に記載のトルクコンバータのロックアップダンパー。 - 前記シート部材の遊嵌部は先端が先細形状である、請求項1から4のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップダンパー。
- 入力側回転体から出力側回転体にトルクを機械的に伝達するトルクコンバータのロックアップ機構に含まれる、前記入力側回転体から前記出力側回転体に伝わる振動を吸収・減衰するロックアップダンパーであって、
前記入力側回転体からトルクが入力される入力側部材と、
前記出力側回転体にトルクを出力する出力側部材と、
前記入力側部材と前記出力側部材との間に配置される弾性部材と、
前記入力側部材と前記出力側部材とのうち少なくとも一方の部材に係止し得る係止部を有し、前記弾性部材の端部に装着され、前記係止部が前記入力側部材と前記出力側部材とのうち少なくとも一方の部材に係止した状態で前記弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制するシート部材とを備え、
前記弾性部材はコイル形状であり、
前記シート部材は、前記入力側部材に係止し得る第1係止部と、前記出力側部材に係止し得る第2係止部と、前記弾性部材を円周方向に支持する支持部とを有し、前記第1係止部と前記第2係止部とのうち少なくとも一方の係止部が前記入力側部材あるいは前記出力側部材に係止した状態で前記弾性部材の端部の径方向外側への移動を規制する、トルクコンバータのロックアップダンパー。 - 前記第1係止部及び前記第2係止部は、前記シート部材に前記入力側部材及び前記出力側部材が遊びを持った状態ではまり得る2つの溝部が形成されるように設けられた3つの爪であり、前記爪は、先端部が先細形状となるような傾斜を有している、請求項6に記載のトルクコンバータのロックアップダンパー。
- 前記シート部材は前記弾性部材の一対の端部の一方にのみ装着されている、請求項5又は6に記載のトルクコンバータのロックアップダンパー。
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