JP4120804B2 - 緩衝装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライブ側と出力側との間でドライブ側の回転を出力側に伝達しつつ振動を減衰する緩衝装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5に示す特許文献1に記載の緩衝装置30は、ハブ31に固着されたドライブ側の同軸部32と、ハブ31にベアリング33を介して取り付けられた出力側の同軸部34とを備え、これら同軸部32、34の間に回転方向の振動を吸収するためのスプリング35を設けて構成されている。そして、この緩衝装置30は、双方の同軸部32、34間に摩擦ライナー36と、摩擦ライナー36をドライブ側の同軸部32に押し付けるための弾性リング37とを有し、摩擦力により回転方向の振動を効果的に減衰するように構成されている。しかし軸方向振動の吸収量は、ベアリング等により規制され寸法誤差程度の量しか吸収できない。
【0003】
また、図6に示すように、「3次元クラッチダンパ」と称される緩衝装置40は、駆動系から伝わるトルク変動(回転方向の振動)と、軸方向の振動とを減衰可能に構成されている。
【0004】
具体的には、緩衝装置40は、ドライブ側の軸41に設けられたやま歯歯車42と、やま歯歯車42にスプライン状に噛み合わされ軸方向に並べて配置された一対のリング板状の板バネ43と、それぞれの板バネ43の外周に一体に設けられ出力側の軸44に連結されたケーシング部45とを備えて構成されている。そして、緩衝装置40は、ドライブ側の軸41から回転トルクを受けたとき、板バネ43をやま歯歯車42の歯46に沿って移動させることで回転方向の振動を吸収するようになっている。また、緩衝装置40は、出力側のクラッチ(図示せず)等から軸方向の振動を受けたとき、それぞれの板バネ43を軸方向に変形させることで軸方向の振動を吸収するようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特表平8−508562号公報
【特許文献2】
特開平9−21445号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、緩衝装置40は、大トルクを瞬時に受けると、板バネ43がやま歯歯車42に食い付き、カジリが発生し、その結果、板バネ43の動きが不完全になり、減衰効果がなくなってしまうという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、軸方向の振動と回転方向の振動を安定して減衰でき軸方向振動の吸収量の大きい緩衝装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、ドライブ側と出力側との間に設けられ、ドライブ側の回転を出力側に伝達しつつ振動を減衰するための緩衝装置において、ドライブ側部材に出力側部材を軸方向スライド可能に設け、上記ドライブ側部材と上記出力側部材との間に、軸方向の振動を吸収するための軸振動吸収用弾性部材を介設し、上記ドライブ側部材と出力側部材間に、かつその円周方向に沿って、回転方向のトルク変動を吸収しつつトルクを伝達するためのトルク変動吸収用弾性部材を設けて構成され、上記ドライブ側部材が、軸方向出力側に延長されるボス部と、該ボス部に径方向外方に延びて設けられた外輪部とを備え、上記出力側部材が、出力側に連結され上記外輪部と軸方向に対向して配置される出力部と、該出力部に軸受けを介して同軸上に回転自在に設けられ上記ボス部の外周に遊嵌されて軸方向スライド自在に支持されるスライド部とを備え、上記軸振動吸収用弾性部材が上記外輪部と上記スライド部との間に径方向スライド可能に設けられる皿バネからなるものである。
【0009】
また、ドライブ側と出力側との間に設けられ、ドライブ側の回転を出力側に伝達しつつ振動を減衰するための緩衝装置において、ドライブ側部材に出力側部材を軸方向スライド可能に設け、上記ドライブ側部材と上記出力側部材との間に、軸方向の振動を吸収するための軸振動吸収用弾性部材を介設し、上記ドライブ側部材と出力側部材間に、かつその円周方向に沿って、回転方向のトルク変動を吸収しつつトルクを伝達するためのトルク変動吸収用弾性部材を設けて構成され、上記出力側部材が、軸方向ドライブ側に延長されるボス部と、該ボス部に径方向外方に延びて設けられた外輪部とを備え、上記ドライブ側部材が、ドライブ側に連結され上記外輪部と軸方向に対向して配置される入力部と、該入力部に軸受けを介して同軸上に回転自在に設けられ上記ボス部の外周に遊嵌されて軸方向スライド自在に支持されるスライド部とを備え、上記軸振動吸収用弾性部材が上記外輪部と上記スライド部との間に径方向スライド可能に設けられる皿バネからなるものである
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の好適実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
図1に示すように、緩衝装置1は、フライホイールを構成しており、ドライブ側の回転軸2に設けられたドライブ側部材3と、ドライブ側部材3に軸方向スライド可能に設けられ出力側の系(図示せず)に連結された出力側部材4と、ドライブ側部材3と出力側部材4との間に介設され軸方向の振動を吸収するための軸振動吸収用弾性部材5と、ドライブ側部材3と出力側部材4の間に円周方向に沿って設けられ回転方向のトルク変動を吸収しつつドライブ側からのトルクを出力側へ伝達するためのトルク変動吸収用弾性部材6とを備えて構成されている。
【0015】
ドライブ側部材3は、回転軸2に取り付けられたボス部7と、ボス部7に径方向に延びて設けられた外輪部8とを備えて構成されている。ボス部7は軸方向出力側へ延長して形成されており、後述する出力側部材4の軸方向のスライドを案内するようになっている。
【0016】
出力側部材4は、ドライブ側部材3のボス部7に軸方向スライド可能に支持されたスライド部9と、スライド部9にボス部7と同じ軸回り回転自在に設けられ出力側の系に連結された出力部10とを備えて構成されている。スライド部9は、ボス部7の外周を囲むリング状に形成されており、ボス部7に1mm程度の隙間をもって遊嵌されている。出力部10は、リング板状に形成されており、ドライブ側部材3の外輪部8と軸方向に向かい合わせるように配置されている。また、出力部10とスライド部9との間には軸受13が設けられている。具体的には、軸受13は、クロスローラ軸受からなり、出力部10の内周側の端面11と、スライド部9の外周側の端面12との間に設けられている。
【0017】
軸振動吸収用弾性部材5は、軸方向に伸縮自在なバネからなり、ドライブ側部材3の外輪部8と、出力側部材4のスライド部9との間に軸方向に若干縮んだ状態で介設されている。図3に示すように、具体的には軸振動吸収用弾性部材5は、皿バネ14からなる。皿バネ14は、特に振動吸収性に優れるバネ定数の低いものであり、バネの硬さを弱めるための切欠15、16を有する。切欠15、16は、皿バネ14の外周端から径方向に沿って内方へ延びる外周側切欠15と、内周端から径方向に沿って外方へ延びる内周側切欠16とからなる。外周側切欠15と内周側切欠16とは周方向に交互に、かつ、略等間隔に形成されている。
【0018】
また、皿バネ14は、外輪部8に径方向スライド可能に設けられており、軸方向に伸縮するときに径方向にも自由に変形できるようになっている。皿バネ14は、縁部に径方向に長い長穴(図示せず)を有し、この長穴に摩擦抵抗の小さいワッシャ等を介してビスやボルト等の締結部材(図示せず)を挿通させて外輪部8に摺動可能に止められている。
【0019】
トルク変動吸収用弾性部材6は、周方向に伸縮自在なバネからなり、ドライブ側部材3の外輪部8と、出力側部材4の出力部10との間に設けられている。図2に示すように、トルク変動吸収用弾性部材6は、特定の方向からの力に対して弾発力を発揮し、かつ、他の方向からの力に対してはほとんど抗することなく自在に変形する指向性の強いバネ、例えばコイルバネ17からなる。コイルバネ17は、両端を周方向に向けて配置されており、一端を外輪部8に固定されると共に、他端を出力部10に固定されている。そして、コイルバネ17は、伸縮することでトルク変動を吸収しつつ、外輪部8側から伝達される駆動力を出力部10側へ伝達するように構成されている。
【0020】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0021】
図1に示すドライブ側の回転軸2を回転駆動すると、この回転トルクは回転軸2に固定されたドライブ側部材3に伝達される。この回転トルクは、トルク変動吸収用弾性部材6を介して出力側部材4の出力部10に伝達され、出力部10に連結された出力側の系に伝達される。
【0022】
そして、回転軸2からドライブ側部材3に伝達される回転トルクに変動がある場合、トルク変動吸収用弾性部材6は出力部10に回転トルクを伝達しながらトルク変動に応じて周方向に伸縮するように変形し、トルク変動を吸収する。このとき、軸振動吸収用弾性部材5に当接されるスライド部9は、出力部10に軸受13を介して設けられており、回転方向の振動を出力部10に伝えないようになっているため、回転方向の振動が軸振動吸収用弾性部材5を経由して出力部10に伝わることはなく、さらに軸振動吸収用弾性部材5が捩れることもない。また、トルク変動吸収用弾性部材6は周方向に沿って伸縮するのみであるため、伸縮の度に異なる形に変形するようなことはなく、トルク変動を常に安定して吸収できる。そして、出力部10が出力側の系から回転方向の振動を受けた場合も同様にトルク変動吸収用弾性部材6が変形して振動を吸収する。
【0023】
クラッチやミッションなどから発生する軸方向の振動が出力側の系を介して緩衝装置1に伝わった場合、出力側部材4は出力側の系と一体に振動する。このとき、トルク変動吸収用弾性部材6は周方向以外の方向から受ける力に対しては抗することなく変形するため、振動を外輪部8に伝えることはない。また、軸振動吸収用弾性部材5は、軸方向に弾性的に変形して振動を吸収し、振動を減衰させる。そして、ドライブ側部材3と出力側部材4とは、スライド部9とボス部7とをスライド自在に係合させているのみであるため、出力側部材4は軸方向に振動するときボス部7に沿ってスライドし、ドライブ側部材3に振動を伝えることはない。
【0024】
また、ドライブ側で軸方向の振動が発生した場合も同様に、軸振動吸収用弾性部材5が振動を吸収して減衰し、出力側に振動を伝えることはない。
【0025】
このように、ドライブ側部材3に出力側部材4を軸方向スライド可能に設け、ドライブ側部材3と出力側部材4との間に、軸方向の振動を吸収するための軸振動吸収用弾性部材5を介設し、ドライブ側部材3と出力側部材4間に、かつその円周方向に沿って、回転方向のトルク変動を吸収しつつトルクを伝達するためのトルク変動吸収用弾性部材6を設けて緩衝装置1を構成したため、軸方向の振動は軸振動吸収用弾性部材5で吸収し、回転方向の振動はトルク変動吸収用弾性部材6で吸収するというように振動をその方向毎に分担して吸収でき、単純な伸縮動でそれぞれの方向の振動を安定して吸収し、減衰できる。また、上述した従来技術のようにやま歯歯車42や、やま歯歯車42に正確にスプライン状に係合する板バネ43等、特に精度を求められる部品を必要としないため、簡易な構造にできる。
【0026】
軸振動吸収用弾性部材5は、バネの硬さを弱めるための切欠15、16を有する皿バネ14からなるものとしたため、簡単な構造で容易に軸方向の振動を吸収できる。
【0027】
そして、軸振動吸収用弾性部材5を、ドライブ側部材3に径方向スライド可能に取り付けるものとしたため、軸方向に伸縮するとき径方向に自由に変形させることができるので10mm以上であっても円滑に振動を吸収できる。
【0028】
また、出力側部材4は、ドライブ側部材3に軸方向スライド自在に係合するスライド部9を有するものとしたため、振動が発生した側の部材3又は4を他の側の部材4又は3に対して自由に軸方向にスライドさせることができ、軸方向の振動を逃がすことができる。そして、両部材3、4間で軸方向の振動が伝わるのを防ぐことができる。
【0029】
出力側部材4は、スライド部9を軸回り回転自在に支持するためのクロスローラ軸受を有し、軸振動吸収用弾性部材5は、スライド部9に係合されるものとしたため、回転方向の振動が軸振動吸収用弾性部材5を介してドライブ側から出力側へ、又は出力側からドライブ側へ伝わるのを防ぐことができ、軸振動吸収用弾性部材5が回転方向の振動を受けて捩れるのを防ぐことができる。
【0030】
なお、ドライブ側部材3をボス部7と外輪部8とで構成し、出力側部材4をスライド部9と出力部10とで構成するものとしたが、逆に出力側部材をボス部7と外輪部8とで構成し、ドライブ側部材をスライド部9と出力部10に相当する入力部(図示せず)とで構成してもよい。この場合、入力部はドライブ側の系に連結されるものとし、スライド部9にクロスローラ軸受等の軸受13を介して回転自在に設けられるとよい。
【0031】
また、軸振動吸収用弾性部材5は、皿バネ14からなるものとしたが、板バネであってもよい。この場合、切欠を有する板バネであってもよい。
【0032】
そして、皿バネ14は、切欠15、16を有するものとしたが、切欠の数や形状、大きさ等は必要に応じて適宜変更するとよい。また、図4に示すように形状の異なる複数種類の切欠20、21を有する皿バネ22であってもよい。
【0033】
軸振動吸収用弾性部材5は、ドライブ側部材3に径方向スライド自在に設けられるものとしたが、出力側部材4に径方向スライド自在に設けられるものとしてもよく、両側の部材3、4に径方向スライド自在に設けられるものとしてもよい。
【0034】
また、皿バネ14にビス等を通すための長穴を形成するものとしたが、外周側切欠15又は内周側切欠16を長穴として用いてもよい。
【0035】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
(1)軸方向の振動と回転方向の振動を安定して減衰できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す緩衝装置の側断面図である。
【図2】トルク変動吸収用弾性部材の配置を示す緩衝装置の正面説明図である。
【図3】軸振動吸収用弾性部材の正面図である。
【図4】他の実施の形態を示す軸振動吸収用弾性部材の正面図である。
【図5】従来の緩衝装置の側断面図である。
【図6】従来の緩衝装置の側断面図である。
【符号の説明】
1 緩衝装置
3 ドライブ側部材
4 出力側部材
5 軸振動吸収用弾性部材
6 トルク変動吸収用弾性部材
9 スライド部
13 軸受(クロスローラ軸受)
14 皿バネ

Claims (2)

  1. ドライブ側と出力側との間に設けられ、ドライブ側の回転を出力側に伝達しつつ振動を減衰するための緩衝装置において、ドライブ側部材に出力側部材を軸方向スライド可能に設け、上記ドライブ側部材と上記出力側部材との間に、軸方向の振動を吸収するための軸振動吸収用弾性部材を介設し、上記ドライブ側部材と出力側部材間に、かつその円周方向に沿って、回転方向のトルク変動を吸収しつつトルクを伝達するためのトルク変動吸収用弾性部材を設けて構成され、上記ドライブ側部材が、軸方向出力側に延長されるボス部と、該ボス部に径方向外方に延びて設けられた外輪部とを備え、上記出力側部材が、出力側に連結され上記外輪部と軸方向に対向して配置される出力部と、該出力部に軸受けを介して同軸上に回転自在に設けられ上記ボス部の外周に遊嵌されて軸方向スライド自在に支持されるスライド部とを備え、上記軸振動吸収用弾性部材が上記外輪部と上記スライド部との間に径方向スライド可能に設けられる皿バネからなることを特徴とする緩衝装置。
  2. ドライブ側と出力側との間に設けられ、ドライブ側の回転を出力側に伝達しつつ振動を減衰するための緩衝装置において、ドライブ側部材に出力側部材を軸方向スライド可能に設け、上記ドライブ側部材と上記出力側部材との間に、軸方向の振動を吸収するための軸振動吸収用弾性部材を介設し、上記ドライブ側部材と出力側部材間に、かつその円周方向に沿って、回転方向のトルク変動を吸収しつつトルクを伝達するためのトルク変動吸収用弾性部材を設けて構成され、上記出力側部材が、軸方向ドライブ側に延長されるボス部と、該ボス部に径方向外方に延びて設けられた外輪部とを備え、上記ドライブ側部材が、ドライブ側に連結され上記外輪部と軸方向に対向して配置される入力部と、該入力部に軸受けを介して同軸上に回転自在に設けられ上記ボス部の外周に遊嵌されて軸方向スライド自在に支持されるスライド部とを備え、上記軸振動吸収用弾性部材が上記外輪部と上記スライド部との間に径方向スライド可能に設けられる皿バネからなることを特徴とする緩衝装置。
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