JP3610778B2 - 車両のエンジン再始動時の制御装置 - Google Patents

車両のエンジン再始動時の制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シフトポジションが非駆動ポジションに選択され、且つ、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止するとともに、シフトポジションが駆動ポジションに変更されたとき該自動停止したエンジンを再始動する車両であって、該再始動の際に、非駆動ポジションでは係合されない自動変速機の所定のクラッチを係合させる車両のエンジン再始動時の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、走行中において車両が停止し、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させ、燃料の節約、排気エミッションの低減、あるいは騒音の低減等を図るように構成した車両が提案され、すでに実用化されている(例えば特開平8−14076号公報)。
【0003】
エンジンを自動停止させる際の停止条件として、具体的には、車速零、アクセルオフ、ブレーキオン、などといった所定の停止条件を満足したことが検出されたときにエンジンを自動停止されるようにしている。
【0004】
この場合、シフトポジションは、前進走行ポジションの「D」または、後進走行ポジションの「R」のように、シフトレバーのポジションが駆動ポジションにある場合でも所定の条件が成立すればエンジンが自動停止を行うものと、駆動ポジションでは自動停止はされず、ドライバの意思によってシフトポジションが「N」や「P」等の非駆動ポジションとされたときにのみ自動停止を行うものが知れられている。
【0005】
このように所定の停止条件が成立し、エンジンの自動停止が実施された場合において、自動変速機が油圧式の自動変速機であったときにはエンジンが停止すると該エンジンと連結されているオイルポンプも停止してしまうため、例えば自動変速機の前進クラッチ(所定のクラッチ)に供給されているオイルも油路から抜け、油圧が低下してしまう。そのため、エンジンが再始動されるときには、当該前進走行時に係合されるべき前進クラッチもその係合状態が解かれてしまった状態となってしまうことになる。
【0006】
この場合、エンジンが再始動された時に、この前進クラッチが速やかに係合されないと、いわばニュートラルの状態のままアクセルペダルが組み込まれることになり、エンジンが吹き上がった状態で前進クラッチが係合して係合ショックが発生する可能性がある。
【0007】
そのため、このような状態が発生しないように、前記特開平8−14076号公報にかかる車両においては、エンジンが自動停止してから再始動されるまでの間、大型のアキュムレータの機能により前進クラッチを係合状態に維持する技術を提案している。
【0008】
また特開平9−39613号公報では、エンジンを完全に停止させてしまうのではなく、該エンジンの燃料の供給のみを停止し、モータジェネレータを駆動させて、該エンジンをほぼアイドリング回転速度に保持し、オイルポンプが停止しないように配慮した技術を提案している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平8−14076号公報にて提案された技術のように、大型のアキュムレータを組み込むことにより、エンジンが停止中においても前進クラッチを係合状態に維持するという技術は、例えばD(ドライブ)ポジションからN(ニュートラル)ポジションへのシフト時のドレン性能の悪化、即ち、前進クラッチの解放スピードが遅くなることや、油圧制御装置の大型化など、アキュムレータを設けることにより新たな弊害が発生するのが避けられなかった。
【0010】
また、前記特開平9−39613号公報にて提案された技術のように、モータジェネレータによってエンジンをアイドリング回転速度に維持するという技術は、燃費の向上は図れるものの、モータジェネレータを駆動する必要があるためバッテリの消耗が著しく、そのためバッテリを大型化(大容量化)する必要があるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであって、ドレーン性能の悪化や油圧制御装置あるいはバッテリの大型化などの新たな不具合を一切生じることなく、エンジン再始動時に係合されるべき自動変速機の所定のクラッチを、係合ショック等を生じることなく速やかに係合させることのできる車両の再始動時の制御装置を提供することをその課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シフトポジションが非駆動ポジションに選択され、且つ、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止するとともに、シフトポジションが駆動ポジションに変更されたとき該自動停止したエンジンを再始動する車両であって、該再始動の際に、非駆動ポジションでは係合されない自動変速機の所定のクラッチを係合させる車両のエンジン再始動時の制御装置において、シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたか否かを検出する手段と、前記エンジンが自動停止を行ったか否かを判定する手段と、前記クラッチを係合させるためのオイルを供給するときに、該オイルの供給初期に一時的に所定時間だけ急速に増圧する急速増圧制御を実行する手段と、を備え、シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたときに、エンジンが前記自動停止を行っていた場合に前記自動停止したエンジンが再始動する際に実行する前記急速増圧制御の仕方と、エンジンが前記自動停止を行っていなかった場合に実行する前記急速増圧制御の仕方とを変更することにより、上記課題を解決したものである。
【0013】
シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたときに、エンジンが前記自動停止を行っていなかった場合は、前記急速増圧制御を中止してもよく(請求項2)、また、同様にエンジンが前記自動停止を行っていなかった場合は、行っていた場合に比べて前記急速増圧制御の実施時間を短く設定するようにしてもよい(請求項3)。
【0014】
また、前記エンジンを再始動させるための所定の再始動条件として、シフトポジションの検出信号が、駆動ポジションに移動されたとき(移動後)ではなく、非駆動ポジションでなくなったとき、という条件が含まれているようにしてもよい(請求項4)。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
この実施形態では、図2に示されるような車両の駆動システムにおいて、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止したエンジンを再始動させるようにしている。エンジンが停止するとオイルポンプも停止して自動変速機の前進クラッチ(所定のクラッチ)の係合状態が解かれるため、エンジン再始動の際に該前進クラッチを係合させるが、このときに本発明が適用される。
【0017】
図2において、1は車両に搭載されるエンジン、2は自動変速機である。このエンジン1には該エンジン1を再始動させるためのモータ及び発電機として機能するモータジェネレータ3が、該エンジン1のクランク軸1aに、電磁クラッチ26、プーリ22、ベルト8、プーリ23及び減速機構Rを介して連結されている。
【0018】
減速機構Rは、遊星歯車式で、サンギア33、キャリア34、リングギア35を含み、ブレーキ31、クラッチ32を介してモータジェネレータ3及びプーリ23の間に組込まれている。なお、クラッチ32はワンウェイクラッチに置き換えることができる。
【0019】
自動変速機用2のオイルポンプ19は、従来通りエンジン1のクランク軸1aに直結されている。なお、想像線Pで囲まれた構成のように、オイルポンプ19′を電磁クラッチ27を介してモニタジェネレータ3と連結して設け、独自の入口配管24、出口配管25によりオイルを自動変速機に供給するような構成としてもよい。自動変速機2内には前進走行時に係合される公知の前進クラッチC1が設けられている。
【0020】
図の符号11、16は補機類で、例えばそれぞれパワーステアリング用のポンプ、エアコン用のコンプレッサー等に相当しており、エンジンのクランク軸1a及びモータジェネレータ3とはプーリ9、14とベルト8によって連結されている。
【0021】
図2には図示していないが、補機類としては前記のほかに、エンジンオイルポンプ、エンジンウォータポンプ等も連結されている。符号4はモータジェネレータ3に電気的に接続されるインバータである。このインバータ4はスイッチングにより電力源であるバッテリ5からモータジェネレータ3への電気エネルギの供給を可変にしてモータジェネレータ3の回転速度を可変にする。また、モータジェネレータ3からバッテリ5への電気エネルギの充電を行うように切り換える。
【0022】
符号7は電磁クラッチ26、27の断続の制御、及びインバータ4のスイッチング制御を行うためのコントローラである。コントローラ7へは入力信号としてエンジン回転速度センサ49からのエンジン回転速度信号(=オイルポンプの回転速度信号)、自動停止走行モード(エコランモード)のスイッチ40の信号、エアコン作動のスイッチ42の信号、シフトレバー44のシフトポジションセンサ45からの信号、油温を推定検出するためのセンサの機能を兼ねたエンジン冷却水温センサ47からの信号等が入力される。図中の矢印線は各信号線を示している。
【0023】
次に、上記自動変速機2において前進クラッチC1を係合させる構成について説明する。図3は自動変速機の油圧制御装置において前進クラッチC1を係合させる構成の要部を示す油圧回路図である。
【0024】
プライマリレギュレータバルブ50は、ライン圧コントロールソレノイド52によって制御され、オイルポンプ19によって発生された元圧をライン圧PLに調圧する。このライン圧PLは、マニュアルバルブ54に導かれる。マニュアルバルブ54は、シフトレバー44と機械的に接続され、ここでは、前進ポジション、例えば、Dポジション、あるいは2ポジションが選択されたときにライン圧PLを前進クラッチC1側に連通させる。
【0025】
マニュアルバルブ54と前進クラッチC1との間には大オリフィス56と切換弁58が介在されている。切換弁58はソレノイド60によって制御され、大オリフィス56を通過してきたオイルを選択的に前進クラッチC1に導いたり遮断したりする。
【0026】
切換弁58をバイパスするようにしてチェックボール62と小オリフィス64が並列に組み込まれており、切換弁58がソレノイド60によって遮断されたときには大オリフィス56を通過してきたオイルは更に小オリフィス64を介して前進クラッチC1に到達するようになっている。なお、チェックボール62は前進クラッチC1の油圧がドレンされるときに該ドレンが円滑に行われるように機能する。
【0027】
切換弁58と前進クラッチC1との間の油路66には、オリフィス68を介して(従来と同様の小型の)アキュムレータ70が配置されている。このアキュムレータ70はピストン72及びスプリング74を備え、前進クラッチC1にオイルが供給されるときに、スプリング74によって決定される所定の油圧にしばらく維持されるように機能し、前進クラッチC1の係合終了付近で発生するショックを低減する。
【0028】
次にこの実施形態の作用を説明する。
【0029】
エンジン始動時には電磁クラッチ26が接続状態とされ、モータジェネレータ3を駆動してエンジンを始動する。このときブレーキ31をオンにし、クラッチ32をオフにすることでモータジェネレータ3の回転は減速機構Rのサンギア33側からキャリア34側に減速して伝達される。これにより、モータジェネレータ3とインバータ4の容量を小さくしてもエンジン1をクランキングするのに必要な駆動力を確保できる。エンジン1の始動後はモータジェネレータ3は発電機として機能し、例えば車両の制動時においてバッテリ5に電気エネルギを蓄える。
【0030】
エンジン始動時にはモータジェネレータ3の回転速度をコントローラ7が検出し、インバータ4に対し、モータジェネレータ3の回転がエンジン1を始動するのに必要なトルクと回転速度となるようにスイッチング信号を出力する。例えばエンジン始動時にエアコンスイッチ42の信号がオンとなっていれば、エアコンオフ時に比べてより大きなトルクが必要であるから、コントローラ7は大きなトルク及び回転速度でモータジェネレータ3が回転できるようにスイッチング信号を出力する。
【0031】
エコランモード信号がオンとなった状態で車両が停止し、且つ所定のエンジン停止条件が成立すると、コントローラ7はエンジン1に燃料の供給をカットする信号を出力し、エンジンを停止させる。なお、燃料の供給カットの出力信号線は図2では省略されている。エコランモード信号は、車室内に設けられたエコランスイッチ42を運転者が押すことによってコントローラ7に入力される。
【0032】
エコランモードでのエンジンの停止条件としては、「車速が零」、「アクセルがオフ」、「ブレーキオン」、且つ「シフトレバーのポジションが非駆動ポジションのNあるいはPポジションである」ことが一例としてあげられる。
【0033】
エンジンの自動停止条件が成立後、実際にエンジンを自動停止させるまで所定時間Tzが経過した後にエンジンを停止するようにする。このように、所定条件成立後すぐにエンジンを自動停止させずに、所定時間Tzが経過してから実施するようにさせているのは、本実施形態ではシフトポジションが非駆動ポジション(N、Pポジション)となったときにエンジンの自動停止をするシステムであるので、例えば、車庫入れなどの「R」ポジションと「D」ポジションを入れ替える際にエンジンの自動停止が頻繁に行われてしまうことを防止するためである。
【0034】
なお、この所定時間Tzは、例えば前述した車庫入れなどを行っていない場合などには、早めにエンジン停止を行っても支障がないのでこれを短めに変更する。
【0035】
所定時間Tz経過後、エンジン1が自動停止した状態では、コントローラ7は電磁クラッチ26に切断の制御信号を出力しており、プーリ22とエンジン1とは動力非伝達状態にある。一方、エンジン1が停止中でもエアコンやパワーステアリングは作動させておきたいため、パワーステアリング用ポンプ、エアコン用コンプレッサの負荷等が考慮されたトルクでモータジェネレータ3が回転するように、コントローラ7はインバータ4に対して相応のスイッチング信号を出力する。
【0036】
なお、このときブレーキ31をオフにし、クラッチ32をオンとし、電磁クラッチ26をオフとしておく。このような状態とすることにより、モータジェネレータ3とプーリ23は直結状態となり、補機類11、16等を駆動するのに必要な回転速度を確保することができる。また、エンジンが運転されている際に、モータジェネレータ3を発電機として使用したり、補機類11、16等を駆動したりするには、ブレーキ31をオフにし、クラッチ32をオンにし、電磁クラッチ26はオン状態としておく。このようにすることにより、モータジェネレータ3とプーリ23とが直結状態となり、エンジンの回転速度が高くなってもモータジェネレータ3や補機類11、16等が許容回転速度を超えるのを防止することができる。なお、クラッチ32をワンウェイクラッチに置き換えても実質的に上記と同様な作用が得られる。
【0037】
次に、エンジン1が自動停止された状態から再始動される際の作用について説明する。
【0038】
図3において、プライマリレギュレータバルブ50で調圧されたライン圧は、マニュアルバルブ54を介して最終的には前進クラッチC1に供給される。
【0039】
ここで、コントローラ7から急速増圧制御の指令を受けてソレノイド60が切換弁58を開に制御しているときは、マニュアルバルブ54を通過したライン圧PLは、大オリフィス56を通過した後、そのまま前進クラッチC1に供給される。なお、この急速増圧制御が実行されている段階では、スプリング74のばね定数の設定によりアキュムレータ70は機能しない。
【0040】
コントローラ7より急速増圧制御の終了指令を受けてソレノイド60が切換弁58を遮断制御すると、大オリフィス56を通過したライン圧PLは小オリフィス64を介して比較的ゆっくりと前進クラッチC1に供給される(従来と略同等のルート)。また、この段階では、前進クラッチC1に供給される油圧はかなり高まっているため、アキュムレータ70につながっている油路66の油圧がスプリング74に抗してピストン72を図の上方に移動させる。その結果、このピストン72が移動している間、前進クラッチC1に供給される油圧の上昇が一時中止され、前進クラッチC1は非常に円滑に係合を完了できる。
【0041】
図4に前進クラッチC1の油圧の供給特性を示す。
【0042】
図4において、細線は急速増圧制御を実行しなかった場合(後述)、太線は実行した場合をそれぞれ示している。また、Tfastと付された部分が急速増圧制御を実行している期間(所定期間)を示している。この期間Tfastは、定性的には前進クラッチC1の図示せぬピストンが、いわゆるクラッチパックを詰める期間に対応し、また、エンジン回転速度が所定のアイドル回転速度に至る若干前までの期間に対応する。なお、Tc、Tc′は前進クラッチC1のクラッチパックが詰められる期間、Tac、Tac′はアキュムレータ70が機能している期間に相当している。
【0043】
なお、図4の表示から明らかなように、急速増圧制御の開始タイミングTsは、エンジン回転速度(=オイルポンプ19の回転速度)NEが所定値NE1となったときに設定されている。このように、急速増圧制御をエンジンの再始動指令Tcom と同時に開始させないようにしたのは、エンジン1が回転速度零の状態から若干立ち上がった状態(NE1程度の値にまで立ち上がった状態)になるまでの時間T1が、走行環境によって大きくばらつく可能性があるためである。
【0044】
もし、急速増圧制御をエンジンの再始動指令Tcom と同時に開始させた場合、このばらつきの影響を受けて、前進クラッチC1は、ときに該急速増圧制御が実行されている間に係合を完了してしまい、非常に大きな係合ショックが発生する虞がある。そこで、ばらつきの大きなエンジンの再始動直後を避け、エンジンが若干上昇し始めた時点Tsを急速増圧制御の開始タイミングとすることにより、走行環境の違いにかかわらず、ばらつきの小さな(安定した)オイルの供給制御を実現することができる。
【0045】
図5に前進クラッチC1の油圧のドレン特性とエンジン回転速度(=オイルポンプの回転速度)NEとの関係を示す。
【0046】
時刻t11でエンジンの停止指令が出されると若干の遅れT12をもって時刻t12からエンジン回転速度NEは徐々に低下する特性となる。
【0047】
一方、前進クラッチC1の方のドレン特性は、エンジン1の停止指令が時刻t11で出された後(たとえオイルポンプ19の回転速度がエンジン回転速度NEと同様に低下したとしても)油圧はより長めの期間T13だけそのまま維持され、時刻t14から急激に低下する特性となる。
【0048】
この特性は、油温が同一であれば、車両毎に比較的高い再現性を有するため、エンジン停止指令が出されてからの経過時間が分かれば、現在どの程度油路66からオイルが抜けた状態であるかが推定できる。
【0049】
なお、図5の特性から明らかなように、エンジン回転速度NE(=オイルポンプの回転速度)はエンジン停止指令が出されると、その若干後の時刻t12から比較的リニアに低下してきている。従って、オイルの抜け量を、エンジン回転速度NEの値そのものによっても間接的に推定することが可能である。
【0050】
ここで、オイルの抜け量を検出した理由は、例えば、エンジンの再始動指令Tcom がエンジン自動停止直後であり、未だオイルが完全に前進クラッチC1の油路66中から抜けていない状態であるときに急速増圧制御を実行してしまうと、大きな係合ショックが発生してしまうため、これを防ぐためである。即ち、このような場合は急速増圧制御を中止するか、もしくは、前進クラッチC1の油路66からのオイルの抜け量に応じて、急速増圧制御の実行時間Tfastを短く変更するようにする。
【0051】
また、エンジン停止指令が出されてからの経過時間により所定量のオイルが抜けた場合やエンジン回転速度NEが所定の値NE1より低下したと検出されたときには、オイルがほぼ抜けていると判断し、急速増圧制御を完全実施する。
【0052】
なお、自動変速機のオイルは、温度に依存してその粘度が変わるという性質を有するため、急速増圧を実行する際にはオイルの温度によって急速増圧の実行時間Tfastを変更すると一層よい。
【0053】
なお、上記実施形態においては、切換弁58を用いて前進クラッチC1への油路の連通度を調整することにより急速増圧制御を実行するようにしていたが、前進クラッチC1にオイルを急速に供給する方法は、この方法には限定されない。
【0054】
例えば、上記実施形態においては、プライマリレギュレータバルブ50によって調圧されるライン圧PLをライン圧コントロールソレノイド52によって制御するようにしていたが、このライン圧コントロールソレノイド52によって調圧されるライン圧PLの調圧値(制御目標圧)を通常よりも高めに設定するようにしてもよい。この場合、ライン圧の調圧値と該調圧値を高めに維持している時間の掛合せで急速増圧制御の態様が決定されることになる。
【0055】
又、上記実施形態においては、切換弁58によってオン−オフ的に前進クラッチC1へのオイルの供給度合を切換えるようにしていたが、該切換弁58を例えばデューティソレノイドによってデューティ制御するようにすれば、該切換弁58による供給度合(急速増圧制御の制御目標圧)をよりきめ細かに設定できるようになる。即ち、この切換弁58によっても急速増圧制御の実行時間との掛合せによる制御を実現することができる。又、当然にライン圧の調圧値変更による制御と切換弁58による制御とを組合せることもできる。
【0056】
次に、シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたときに、エンジン1が自動停止を行っていた場合と、行っていなかった場合における急速増圧制御について説明する。
【0057】
シフトポジションが非駆動ポジションに移動されたときに、エンジンを再始動させる際には前述したように、自動変速機が油圧式の自動変速機であったときにはエンジンが停止すると該エンジンと連結されているオイルポンプも停止してしまうため、自動変速機の前進クラッチ(所定のクラッチ)に供給されているオイルも油路から抜け、ライン圧も発生していない状態となってしまっている。
【0058】
そのため、エンジンが再始動されるときには、当該前進走行時に係合されるべき前進クラッチもその係合状態が解かれてしまった状態となってしまうことになる。
【0059】
つまり、エンジンの自動停止後、発進時に係合すべきクラッチに対し、ライン圧系路を含めてオイルが完全に抜けきってしまっている場合には、該クラッチをできるだけ早く係合させるため、オイルを供給する際の初期に一時的に所定時間だけ急速に増圧する急速増圧を実施する。
【0060】
なお、前述した油路66からオイルが抜けきっていないときには急速増圧制御を中止するようにしてもよく、また、急速増圧制御を開始するTsまでに抜けてしまっているオイルの量(厳密には急速増圧制御の実行直前までに抜けたオイルの量)を検出して急速増圧制御の実行時間を変更してもよく、更には、油圧の目標制御値を変更するなどして実行してもよいものとする。
【0061】
一方、シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに移動されたときに、エンジンが前記自動停止を行っていなかった場合は、自動変速機のC1クラッチに供給するオイルは抜けてはいるものの、自動変速機のオイルポンプは稼働中であり、ライン圧PLは落ちていない(ライン圧PLが零ではない)。
【0062】
この場合に、エンジン再始動時と同様の急速増圧制御を実施してしまうと、オイルの供給過剰となり、クラッチを急係合させてしまう恐れがある。
【0063】
従って、このような場合には、急速増圧制御を中止して通常に行っている非駆動ポジション(N、Pポジション)から駆動ポジション(Dポジション)にシフトレバー44が移動されたときに行う油圧制御を実施するようにするか、又は実行時間Tfastを短めに変更する。あるいは、目標制御値を低めに設定する。請求項1で「急速増圧の仕方を変更する」としたのはそのためである。
【0064】
急速増圧制御が実行されない場合には、図4では切換弁58をバイパスした従来と略同等のルートでオイルが供給されるが、ライン圧PLがすでに立ち上がっている状態からの係合となるので、前進クラッチC1は係合するまでの時間は、ほとんど延びることはない。
【0065】
なお、自動停止していなかったときに急速増圧制御を実行する場合の実行時間Tfastの設定は、クラッチC1に油圧が供給されておらず、且つライン圧PLが出力されている場合において、C1クラッチまでにどれだけのオイルを供給できるかをあらかじめ検出しておけば、急速増圧制御の実行時間Tfastが算出できる。むろん、エンジンが停止し、ライン圧PLが落ちていた場合より、実行時間Tfastは短くなる。
【0066】
また、前進クラッチC1にオイルをなるべく早く供給するための、1つの方法として、エンジン自動停止後、エンジンを再始動させる際の所定の再始動条件として、「シフトポジションが非駆動ポジションの信号がオフになったとき」、という条件を入れると、未だ駆動ポジション信号がオンとなる前に再始動のための制御に入れるため、それだけオイルの供給開始を早くできる。
【0067】
これは、発進時のもたつきに対して、ドライバが不快感を持たないようにするための制御手段として有効である。
【0068】
最後に、上記コントローラ7によって実行される急速増圧制御に関する制御フローについて説明する。
【0069】
図1において、ステップ310では各種センサからの入力信号が処理される。例えば、シフトポジションセンサ45からの信号等である。
【0070】
ステップ320ではシフトポジションが、非駆動ポジションの「N」、「P」ポジションから「D」「R」等の駆動ポジションへの変更があったか否かを判定する。ここで、駆動ポジションへの変更の検出信号がない場合にはリターンされる。なお、シフトポジションの変更の検出は、前述したように、例えば非駆動ポジションの検出信号がオフとなったときとすると、若干でも検出を早めることができる。
【0071】
ステップ320で非駆動→駆動の移動が検出されると、ステップ330では、エンジン1が自動停止中か否かを判定する。エンジン1が自動停止を行っていない場合には、マニュアルバルブ54(図3)までの油路にはライン圧PLが発生している状態であるため、ステップ370に進み、急速増圧制御は実行せず、通常のN→Dシフトの増圧制御を行う。
【0072】
なお、完全不実行とせず、急速増圧制御の実行時間を短く変更したりしてもよいのは前述した通りである。実行する場合は、前進クラッチC1までの油路66の抜け量(供給すべき量)を検出できる手段を備えた場合には、その量に応じて急速増圧制御を行ってもよい。
【0073】
ステップ330にてエンジン1が自動停止制御を行っていた場合にはステップ340へ進みエンジン1の再始動するための条件が成立しているか否かを判断する。再始動するための条件は前述した通りである。なお、バッテリの充電量SOCが不足したときにも、バッテリの充電量を確保するためエンジンを再始動する。
【0074】
成立していないならば、エンジン1の再始動を行わないため、そのままリターンする。
【0075】
成立しているときには、ステップ350へ進みエンジン1を再始動する。エンジン再始動後は、前進クラッチC1に対し急速増圧制御を実施する(ステップ360)。この場合も、オイルの抜け量に応じて実行態様を変更してもよい。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたときに、それまでエンジンが自動停止を行っていたか否かを判断し、エンジンが前記自動停止を行っていた場合と、行っていなかった場合とで、前記急速増圧制御の仕方を変更するようにしたため、エンジン再始動時に係合されるべき自動変速機の所定のクラッチを、オイルの供給過剰による係合ショック等を生じることなく速やかに係合させることができるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両のエンジン再始動時の制御の制御フローの例を示す流れ図
【図2】本発明が適用された車両のエンジン駆動装置のシステム構成図
【図3】急速増圧制御を実行するための油圧制御装置の要部を示す油圧回路図
【図4】前進クラッチのオイルの供給特性等を時間軸に沿って示した線図
【図5】オイルの抜け量とエンジン回転速度(オイルポンプの回転速度)との関係を示した線図
【符号の説明】
1…エンジン
2…自動変速機
3…モータジェネレータ
4…インバータ
5…バッテリ
19…オイルポンプ
42…エコランスイッチ
44…シフトレバー
45…シフトポジションセンサ
47…エンジン冷却水温センサ
49…エンジン回転速度センサ
R…減速機構
Tfast…急速増圧の実行時間
Tz…エンジンが停止するまでの所定時間

Claims (4)

  1. シフトポジションが非駆動ポジションに選択され、且つ、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止するとともに、シフトポジションが駆動ポジションに変更されたとき該自動停止したエンジンを再始動する車両であって、該再始動の際に、非駆動ポジションでは係合されない自動変速機の所定のクラッチを係合させる車両のエンジン再始動時の制御装置において、
    シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたか否かを検出する手段と、
    前記エンジンが自動停止を行ったか否かを判定する手段と、
    記クラッチを係合させるためのオイルを供給するときに、該オイルの供給初期に一時的に所定時間だけ急速に増圧する急速増圧制御を実行する手段と、を備え
    シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたときに、エンジンが前記自動停止を行っていた場合に前記自動停止したエンジンが再始動する際に実行する前記急速増圧制御の仕方と、エンジンが前記自動停止を行っていなかった場合に実行する前記急速増圧制御の仕方とを変更する
    ことを特徴とする車両のエンジン再始動時の制御装置。
  2. 請求項1において、
    シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたときに、エンジンが前記自動停止を行っていなかった場合は、前記急速増圧制御を中止する
    ことを特徴とする車両のエンジン再始動時の制御装置。
  3. 請求項1において、
    シフトポジションが非駆動ポジションから駆動ポジションに変更されたときに、エンジンが自動停止を行っていなかった場合には、行っていた場合に比べて前記急速増圧制御の実施時間を短く設定する
    ことを特徴とする車両のエンジン再始動時の制御装置。
  4. 請求項1において、
    前記エンジンを再始動させるための所定の再始動条件として、シフトポジションの検出信号が、非駆動ポジションでなくなったとき、という条件が含まれている
    ことを特徴とする車両のエンジン再始動時の制御装置。
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