JP3602898B2 - 電子写真装置用ブレード体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、当接部のエッジ精度と摩擦係数とが長期にわたって制御される電子写真装置用ブレード体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置は、表面に光導電体層を設けた感光体を有しており、作動の際、上記感光体の外周面が一様に帯電され、ついで被模写体の被模写像を介してその外周面を露光することにより、静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、これを紙等に転写し、定着させるものである。
【0003】
この過程において、図3に示すような転写後の感光体や転写ベルト等に残留するトナーを除去するためのクリーニングブレード、現像ロール上にトナーを薄層化して担持させるための現像ブレード、更には感光体を帯電させるための帯電ブレード等の種々のブレード体が使用されている。
このようなブレード体は、通常、金属板よりなる支持部材、弾性体よりなるブレード部材、及び、支持部材にブレード部材を取り付けるための接着剤層より形成されている。
【0004】
従来、上記ブレード部材としては、機械的強度、耐磨耗性等に優れしかも当接する相手材を損傷しない点から、JIS A硬度60〜80のポリウレタンからなる弾性体が使用されている。
上記ブレード部材は、当接する相手部材にトナーが存在する場合には、このトナーの介在により、相手部材との間の摩擦係数はある程度低下するが、トナーが介在しない初期の段階では、相手部材との間の摩擦係数が高く、ブレード部材が反転したり相手部材を傷める等の問題が生じる。また、帯電ブレードの場合には、長期休転すると、ブレード部材が感光体に密着し、次に起動する場合、スムーズに起動しないといった問題を生じる。
【0005】
一方、稼働中の相手部材との間の摩擦係数は、トナーの介在により、起動時に比べてある程度低減されるものの充分ではなく、繰り返し使用されることによりブレード部材の当接部は磨耗し、残留トナーを除去する能力やトナーを薄層化する能力又はトナーをシールする能力の低下が早期に生じる等の問題がある。
【0006】
トナーが介在しない初期の段階での摩擦係数は、フッ化ビニリデン等の微粉末を当接部に塗布することにより制御することができるが、ブレード体の製造工程が煩雑になり、また、塗布量の制御が困難でありばらつきが生じやすい等の問題がある。
【0007】
また、相手部材との間の摩擦係数は、フッ素樹脂等をコーティングすることにより低下させることができるが、使用するフッ素樹脂の粒径が数ミクロンと大きいので、残留トナーを除去する性能に大きな影響を与えるエッジ部に精度を出すことができず、クリーニング性やトナーシール性、帯電特性を低下させる等の問題がある。エッジ部に精度を出すためには、コート被膜が薄い方が良く、寿命との関連から2〜10μmが好ましいとされている。
【0008】
シリコーンをコーティングすることにより相手部材との間の摩擦係数を制御する方法も検討されているが、ブレード部材との密着性が不充分であり、長期に摩擦係数を制御することはできない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、ブレード部材の摩擦係数の低減は、初期の段階でのブレード体の反転防止、ブレード体の耐久性の向上、長期休転時の相手部材との密着防止等にとって重要であり、数多くの提案がなされているが、いずれも効果が不充分であり実用化には至っていない。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、当接部のエッジ精度と摩擦係数とが長期にわたって制御される電子写真装置用ブレード体を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ブレード部材と、支持部材と、接着剤層とからなり、相手材と当接して用いられる電子写真装置用クリーニングブレード体において、前記ブレード部材が、ポリウレタンエラストマーからなるものであり、その少なくとも当接部が、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有する樹脂をコーティングさせたものであるところに存する。以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明で使用されるブレード部材は、ポリウレタンエラストマーからなるものであり、その少なくとも当接部は、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有する樹脂をコーティングさせたものである。上記ブレード部材の当接部とは、例えば、感光ドラム、感光ベルト等の感光体、現像ロール等のロール、中間転写ベルト等のベルトの相手部材に当接する部位のことである。また、当接とは、圧接からクリアランスをもって近傍配置されることをも含む。上記ブレード部材の少なくとも当接部とは、上記ブレード部材の当接部、又は、上記ブレード部材の当接部と上記当接部の周辺部位とから形成される部位のことである。
上記ブレード部材の当接部に上記樹脂をコーティングした例を図1に示す。
【0013】
本発明で使用される樹脂は、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有するものであれば特に限定されず、例えば、アクリルウレタン、ラクトン変性アクリルウレタン、アクリルシリコーン、熱可塑性ウレタン、フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0014】
上記樹脂の被膜硬度は、鉛筆硬度B〜6Hである。被膜硬度が鉛筆硬度B未満であると、表面硬度を充分に上げることができず、摩擦係数を低減するまで改質するためには厚さが必要となってエッジ精度が損なわれるばかりか基材のポリウレタンエラストマーの特性を充分に発揮することができなくなる。また、被覆硬度が鉛筆硬度6Hを超えると、樹脂自体が剛直になり過ぎて基材のポリウレタンエラストマーの弾性に追従することができず、割れや亀裂を生じてエッジ精度を損なうこととなる。
【0015】
本発明は、上記樹脂の被膜硬度のみを限定するものであり上記樹脂の組成を規定するものではない。上記樹脂の被膜硬度の限定により、摩擦係数を低減することができるので、エッジ精度を損なうフッ素粒子やコーティング密着性の低いシリコーン等を用いる必要はなく、基材のポリウレタンエラストマーとの密着性、エッジ精度を重視した樹脂選択をすることができることとなり、低摩擦化が容易となり、かつエッジ精度を良好に保つことができる。
【0016】
本発明の第二の要旨は、ブレード部材と、支持部材と、接着剤層とからなり、相手材と当接して用いられる電子写真装置用ブレード体において、前記ブレード部材が、ポリウレタンエラストマーからなるものであり、その少なくとも当接部が、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有する樹脂を含浸させたものであるところに存する。
【0017】
上記第二の本発明においては、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有する樹脂は、ブレード部材に含浸される。先に記載した本発明においては、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有する樹脂はブレード部材にコーティングされるため一定の厚さを有しているが、第二の本発明においては、当該樹脂がブレード部材中に含浸されるので、ブレード部材の当接部に含浸された例を示した図2で明らかなように、厚さを有することがなく、更に良好に本発明の効果を発揮することができる。
【0018】
本発明の電子写真装置用ブレード体の製造方法としては特に限定されず、例えば、平板を成形し所定の寸法にカットした後接着剤を介在させ支持部材に張り合わせる方法、金型に接着剤を塗布した支持部材を位置決めして据え付けた後液状のポリウレタン形成材料を流し込み硬化させると同時に支持部材と一体化させる方法等を挙げることができる。
【0019】
上記支持部材としては、リン酸塩等で表面処理された鋼板やアルミ合金板等が好ましく用いられる。また、ブレード部材の相手部材への圧接力を支持部材にも分担させる場合には、りん青銅やバネ鋼、ステンレス鋼等からなる薄板(0.2〜0.6mm厚さ)が好ましく用いられる。クリーニング装置や現像装置のフレームを支持部材として用い、直接ブレード部材を固定してもよい。また、上記接着剤としては、通常ポリウレタンと金属の接着に用いられる液状接着剤(フェノール系、エポキシ系等)やホットメルト接着剤が用いられる。
【0020】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
実施例1〜5、比較例1〜3
ブレード部材の作製
ポリオールとしてポリエチレンアジペート(日本ポリウレタン工業社製、ニッポラン4060、水酸基価=56.1KOHmg/g、以下「PEA」という)を用いた。これを70℃で12時間減圧脱水させた。このPEA100重量部に対し、ポリイソシアネートとして4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT)を39.5重量部加え、70℃で3時間、窒素雰囲気下で合成し、プレポリマーを得た。
このプレポリマーを100℃で1時間減圧脱泡後、硬化剤として1,4ブタンジオールとトリメチロールプロパンの混合物(重量比で60/40)をプレポリマー100重量部に対し、6.62重量部加え、2〜3分混合後、140℃に保持した遠心成形機に取り付けた円筒状の金型を250rpmで回転しながら液状を保っている混合物を流し込み1000rpmに回転数を上げて1時間硬化成形した。
【0022】
樹脂のコーティング
下記の樹脂I〜VIを溶剤を用いて希釈し、固形分濃度を10〜15%に調整してスプレー法によりブレード部材表面にコーティングした。
【0023】
樹脂の含浸
下記の樹脂I〜VIの原液中に、ブレード部材のエッジ部を1〜60分間浸漬後、ブレード部材に付着した余分の樹脂液を拭き取り除去後、下記の硬化方法により硬化させた。
【0024】
使用した樹脂、その硬化方法、硬化手段及び鉛筆硬度(JIS K 5400に準じて測定)は、それぞれ下記のようであった。
樹脂I
アクリルウレタン(KRM7039、ダイセル化学工業社製、固形分100%)。
硬化方法:UV架橋、硬化手段:UV照射、被膜硬度:鉛筆硬度6H。
樹脂II
ラクトン変性アクリルウレタン(プラクセル2209/ジュラネート24A、ダイセル化学工業社製、固形分50%)。
硬化方法:イソシアネート架橋、硬化手段:常温×5日、被膜硬度:鉛筆硬度B。
【0025】
樹脂III
アクリルシリコーン(クリヤマーUA90、三洋化成工業社製、固形分50%)。
硬化方法:シリル基の加水分解、硬化手段:100℃×60分、被膜硬度:鉛筆硬度2H。
樹脂IV
熱可塑性ウレタン(ニッポラン5109、日本ポリウレタン社製、固形分30%)。
硬化方法:溶剤の蒸発、硬化手段:110℃×60分、被膜硬度:鉛筆硬度H。
【0026】
樹脂V
熱可塑性ウレタン(ニッポラン5232、日本ポリウレタン社製、固形分40%)。
硬化方法:溶剤の蒸発、硬化手段:110℃×60分、被膜硬度:鉛筆硬度2B。
樹脂VI
フェノール樹脂(ケムロック218、ロード社製、固形分20%)。
硬化方法:アミン架橋、硬化手段:110℃×60分、被膜硬度:鉛筆硬度6H以上。
【0027】
摩擦係数、実機での反転の有無、エッジの磨耗性の測定
摩擦係数は、ヘイドン表面性測定機14D−ANLを用い、図4に示すように100g荷重でポリエチレンテレフタレート(PET:感光体表面)に対する抵抗を測定した(摺擦速度200mm/分)。
実機での反転の有無は、市販のクリーニングユニットに用いられているブレード部材をそれぞれのブレード部材に取りかえ、感光体を手で回転させ確認した。(クリーニングユニット:東芝社製、プロセスキットPK−01S)
エッジの磨耗性は、ミノルタ社製EP870を用いて25℃*60%で50000枚連続通紙後のエッジの磨耗幅を確認した。
また、現像装置におけるトナー薄層化ブレードとして用いた場合のトナー固着の有無は、プリンター(ヒューレット・パッカード社製、Laster jetIIIp)の現像ユニットに用いられているブレード部材をそれぞれのブレード部材に取りかえ、5000枚プリント後に目視確認をした。
結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明の電子写真装置用ブレード体は、上述の構成よりなるので、容易に摩擦磨耗性が低減され、長期にわたり安定したブレード特性、クリーニング性、トナー薄層化特性、摺擦帯電特性を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブレード部材の当接部に樹脂をコーティングさせた例を示す図。
【図2】本発明のブレード部材の当接部に樹脂を含浸させた例を示す図。
【図3】電子写真装置におけるブレード体を示す模式図。
【図4】実施例での摩擦係数の測定を示す図。
【符号の説明】
1 ブレード部材
2 ホルダー
3 樹脂コーティング層
4 樹脂含浸部
9 定着ブレード体
10 クリーニングブレード体
11 帯電ブレード体
12 トナー薄層化ブレード体
13 転写ブレード体
14 支持部材
15 ブレード部材
16 ブレード体
17 ホルダー
18 PETフィルム
19 移動台
20 バランサー支点
21 ロードセル
22 おもり
Claims (2)
- ブレード部材と、支持部材と、接着剤層とからなり、相手材と当接して用いられる電子写真装置用クリーニングブレード体において、前記ブレード部材が、ポリウレタンエラストマーからなるものであり、その少なくとも当接部が、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有する樹脂(シリコーンを除く)をコーティングさせたものであることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード体。
- ブレード部材と、支持部材と、接着剤層とからなり、相手材と当接して用いられる電子写真装置用クリーニングブレード体において、前記ブレード部材が、ポリウレタンエラストマーからなるものであり、その少なくとも当接部が、鉛筆硬度B〜6Hの被膜硬度を有する樹脂(シリコーンを除く)が、前記ブレード部材中に含浸されていることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード体。
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