JP5436846B2 - 電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材及びクリーニングブレード - Google Patents

電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材及びクリーニングブレード Download PDF

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Description

この発明は、電子写真装置に用いるポリウレタン製のクリーニングブレードに関する。電子写真装置としては、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等がある。特に、エッジ層とバックアップ層を備えたポリウレタン製ゴム弾性部材を用いたクリーニングブレードに関する。
本出願人は、バックアップ層とエッジ部が異なるポリウレタンの組成からなる電子写真装置用のポリウレタン製のクリーニングブレードに関する発明を継続して提案してきた。 近年、高速化、高画質化、省エネ等のニーズでトナーは低融点化してきており、トナーの流動性等をコントロールする外添剤(シリカなど)の量が増えてきているが、ブレードクリーニングではトナー粒径より小径である外添剤をクリーニングすることが困難な状況が現れてきている。外添剤がすり抜けると感光体表面に強く押し付けられてフィルミングを起こしたり、帯電ローラー表面に付着して画像不具合を生じる。
従来使われる硬度65〜80°のブレードではブレードの摩擦係数が高く(高μ)、エッジが巻き込まれては復元するスティック&スリップ挙動をとり、1ミクロン未満の外添剤はすり抜けてしまう。摩擦係数を低くした(低μ)クリーニングブレードを開発して、摩擦を小さくしてスティック&スリップ挙動を防止しようとする試みがなされている。
本出願人は、摩擦係数を低下させたクリーニングブレードとして特許文献1(特許第4156335号公報)を提案した。主剤となるポリオール化合物に加えてN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリンを第2のポリオール化合物として配合し、イソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを配合してなるポリウレタン製ゴム弾性部材を用いたクリーニングブレードである。このゴム弾性部材は高硬度のウレタンで低μ、非汚染性のブレードであり、外添剤クリーニングに対して効果があるが、さらに、耐久性の改善性が求められている。
本出願人は、低温低湿下及び常温常湿下でも球形(真球状、異形状)、かつ、小粒径の重合法トナーに対してトナーのすり抜け防止効果があるクリーニングブレードとして、特許文献2(特開2008−268495号公報)を提案した。このクリーニングブレードに用いるポリウレタン製弾性部材は、JIS A 硬さが64〜81°であるエッジ層とJIS A 硬さが68〜100°であるバックアップ層を設けた2層のポリウレタン製ゴム弾性部材である。このポリウレタン製ゴム弾性部材は、クリーニング挙動において、支持部材と接合するバックアップ層(ベース層)が高硬度・高反発弾性であることにより、エッジのニップ位置を安定化させることができるとともに、弾性ゴム部材全体としてのゴム弾性を維持できることにより、低温低湿下のクリーニング性を向上させることが可能になるとの考え方に基づくものである。バックアップ層(ベース層)が高硬度であることにより、ブレードの使用時において、弾性ゴム部材の座屈を防止し、エッジの位置の移動を抑制できるため、常温常湿下でのクリーニング性を向上させることが可能になると考えられる。
一方、本出願人は、JIS A 硬さが91°〜99°のエッジ層(クリーニング層)ポリウレタンと、JIS A 硬さが60°〜80°のバックアップ層(ベース層)ポリウレタンであって、エッジ層の厚み(a)とエッジ層の厚み(a)及びバックアップ層の厚み(b)の和(a+b)との比(a/(a+b))を1/3以下としたポリウレタン製ゴム弾性部材を用いたクリーニングブレードを特許文献3(特開2008−70634号公報)として提案した。この提案は、薄い高硬度のエッジ層のエッジ部を像担持体に当接させることにより、弾性ゴム部材と像担持体の表面との摩擦係数を低下させることができ、像担持体表面のトナー及び外添剤等を良好に掻き取り、比較的低硬度のバックアップ層を有する弾性ゴム部材を用いることで、エッジ部と像担持体との当接圧力を調整することが可能となるとの、基本的な考え方に基づいて提案している。この提案で使用したポリウレタン層構成では、遠心成型法により得られたポリウレタンシートから弾性ゴム部材のサイズにカットする際に、エッジ層が欠け易いなどの加工性が難しく、歩留まりが悪い問題があった。本発明者等は、原因を検討した結果カット等の切断応力に対して脆いことが原因と推定した。
特許第4156335号公報 特開2008−268495号公報 特開2008−70634号公報
本発明は、トナーのすり抜けを防止することができるクリーニングブレードを提供することを課題とし、高硬度のエッジ層と低硬度のバックアップ層を設けたポリウレタン製ゴム弾性部材において、新たなポリウレタン組成を探求することを目的とする。
本願発明者は、エッジ層ポリウレタンのイソシアネート成分として、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用した高硬度のポリウレタンを用いることができることを見出して、エッジ層とバックアップ層の組み合わせを探求して本発明を完成したものである。
本発明の主な解決手段は次のとおりである。
(1)エッジ層とバックアップ層からなる電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材であって、
エッジ層ポリウレタンのイソシアネート成分として、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用した硬度が80°(JIS−A)以上のポリウレタンにて長手方向に連続して形成されており、200%モジュラスが69〜114Mpa、反発弾性が53〜61%であり、
バックアップ層は、NDI系以外のイソシアネート成分を用い硬度が80°未満のポリウレタンであり、200%モジュラスが33〜99Mpa、反発弾性が8〜72%であることを特徴とする電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(2)バックアップ層ポリウレタンのイソシアネート成分が、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であることを特徴とする(1)記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(3)エッジ層のポリオール成分がポリカプロラクトンポリオールであることを特徴とする(1)に記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(4)エッジ層は、ヘイドン表面性測定機による動摩擦係数を0.10〜0.35とすることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(5)ポリウレタン製弾性ゴム部材は、遠心成形によって得られたものであって、エッジ層をエア面とすることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(6)エッジ層表面が0.5〜1.5μmの凹凸を有していることを特徴とする(5)記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(7)ポリウレタン製弾性ゴム部材のクリーニング作用をするエッジ部分にのみエッジ層を形成したことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(8)ポリウレタン製弾性ゴム部材が、外周に溝を形成した回転成型ドラムを利用して連続成型する成型手段によって得られたことを特徴とする(7)記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のポリウレタン製弾性ゴム部材を支持部材に接着したことを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。

本発明のポリウレタン組成を用いたポリウレタン製ゴム弾性部材を用いることにより、耐久性が高く、クリーニング性能が優れたクリーニングブレードを提供できる。
1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用したポリウレタンをエッジ層に用いることにより、NDIの硬直な構造と結晶性の高さにより、高硬度と低μ化(低摩擦化)、且つ 欠けにくい耐久性の高い電子写真装置用のクリーニングブレード用のポリウレタン製ゴム弾性部材を実現できた。特に、本発明では高硬度のポリウレタンをエッジ層に用いても欠けが発生せず、耐久性を改善することが可能となった。
また、遠心成形によるエア面をエッジ層側とすることにより表面に微細な凹凸が出来、ブレードが感光体に接触する面積を減らすことができ、エッジ層の硬度の作用に加えて、低μ化(低摩擦化)を実現することができた。
外周に溝を形成した回転成型ドラムを利用して連続成型する成型手段を用いた場合は、エッジ部のみにエッジ層を設けることができるので、エッジ層の比率を小さくすることにより2種類のポリウレタン物性の相違に基づく、歪みの原因を減少させることができ、安定したクリーニング作用を発揮できる。バックアップ層として用いるポリウレタンに比べてエッジ層として用いる1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用したポリウレタンは永久歪みが大きいので、エッジ層を小さくすることが好ましい。
本発明によって得られるクリーニングブレードは、外添剤も良好に除去でき、フィルミングが防止でき、欠けも発生しない耐久性を向上させることができる。
<ブレードの形状・構成>
本願発明のクリーニングブレードに用いるポリウレタン製弾性部材は、エッジ層を表面全体に設けてバックアップ層と積層された全体に2層構成にする例(例えば、図1の例)、エッジ層をエッジ部分のみに形成する例(例えば。図2の例)がある。クリーニングブレードは、エッジ層のエッジ部分が相手材に当接摺擦して残留トナーや外添剤を掻き取りクリーニング作用を発揮する。 本発明のポリウレタン製ゴム弾性部材は、エッジ層の硬度をバックアップ層よりも硬くしたものであって、JIS−A硬度80°以上のポリウレタンをエッジ層として用い、JIS−A硬度80°未満のポリウレタンをバックアップ層として用いるものであって、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)をエッジ層のポリウレタン原料として使用したものである。
クリーニングブレードの全体形状、構成は従来例と同様であり、ポリウレタン製ゴム弾性部材を支持部材に接着して形成される。
クリーニングブレードは、トナーを掻き取るためにロールなどの表面にエッジを当接するものである。厚さは1〜3mm、幅5〜20mm、長さ200〜500mm程度のポリウレタン製ゴム弾性部材を曲げ加工して剛性を付与した金属製の支持部材に貼り付けて形成されることが多い。
エッジ層とバックアップ層の物性が異なるので、歪みなどの発生を抑える観点からエッジ層を薄く、小さくすることが好ましい。
エッジ層の厚みは、バックアップ層よりも薄く形成し、全体1/3以下であって、更に薄い方が望ましい。現実的には、成形手段による制限や均一性などの製品精度上の規制があるので、0.8mm以下とすることができる。製法的には、遠心成型法では、0.1〜0.8mm程度の厚みが製造可能である。連続成型法によって得られた図2に示すエッジ部分のみをエッジ層に形成する方法では、エッジ部を中心に、エッジ部分の大きさは、厚み×幅が0.03〜0.4mm×0.03〜4mmとすることが可能である。
<ポリウレタンの種類>
本発明に用いられるゴム弾性部材は、熱硬化性ポリウレタン樹脂を用いる。
ウレタンの形成材料としては、ポリイソシアネートおよびポリオールを含有するポリウレタン組成物が用いられる。
<ポリオール>
ポリオールとしてはポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールを用いる。本発明のエッジ層のポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオールが適している。ポリオールは、数平均分子量が1000〜3000であることが好ましい。
(1)エステル系ポリオール
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得ることができるものを挙げることができる。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、それらのエステル形成性誘導体等を挙げることができる。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p−キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。
これらによるポリエステルポリオールは、線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いて分枝状ポリエステルであってもよい。
ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオールも挙げることができる。ポリカプロラクトンポリオールとしては、触媒の存在下に低分子量グリコールを開始剤としてε−カプロラクトンを開環付加させることにより得られるものを使用することが好ましい。低分子量グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価のアルコール、トリメチレングリコール、グリセリン等の3価のアルコールを使用することが好ましい。
触媒は、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン系化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、塩化第1スズ、臭化第1スズ等のスズ系化合物等を使用することが好ましい。なお、ε−カプロラクトン以外にもトリメチルカプロラクトンやバレロラクトンのような他の環状ラクトンを一部混合してもかまわない。
これらによるポリエステルポリオールは、線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いて分枝状ポリエステルであってもよい。
(2)エーテル系ポリオール
ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールが挙げられ、バックアップ層として用いることが可能であり、エッジ層としては適していない。
ポリエーテルポリオールとして、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−メチルトリメチレンオキサイド、3,3′−ジメチルトリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキサミン等の環状エーテルがあげられる。
(3)エッジ層ポリイソシアネート
エッジ層には、ポリイソシアネートとして、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)を用いる。1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)に対して用いるポリオールはポリカプロラクトンポリオールが適している。NDI自体はポリウレタン原料としては公知であるものの、クリーニングブレード用ポリウレタン用としてはMDIが用いられており、NDIを用いた実用例は存在しないのが実状である。1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)は、剛直な構造と結晶性の高さを備えており、この構造をポリウレタンの成形に活用することにより、高硬度のポリウレタンを得ることができ、且つ、耐久性の向上をはかることができる。一方、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)を用いたポリウレタンは、永久伸び(200%伸長×10分)が33.4と大きく、単層で用いるには塑性変形が大きく、長時間使用が求められるクリーニングブレード用としては適切ではない。また、2層など部分的に使用する場合には、この塑性変形性の大きさが他の層との物性との差異が大きく、使い難い材料とされていた。
なお、硬度が高いポリウレタンの組成は1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)以外の原料組成によっても実現可能であるが、欠けやすく耐久性に問題がある場合がある。
そして、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)を用いたポリウレタン自体は、公知であるが、クリーニングブレード用弾性ゴム部材の材料として実用化されていない理由は前述のとおりであるが、硬度の高いポリウレタン組成を探求する中で、再検討した。
即ち、一般に使用されているイソシアネートは図3(石沢輝男著 ゴム工業便覧339頁参照)に示されるように多数存在する。ベンゼン環が単独のもの、2つのベンゼン環が1本の連結肢によりエチル基等を介して結合しているものが多いことに着目した。例えば、クリーニングブレード用ポリウレタンに汎用されているMDIは、2つのベンゼン環が1つのエチル基を介して連結されている構造である。これに対して、NDIは、2つのベンゼン環が2箇所で直接結合しているという特異な構造をしていることに、本発明では着目した。
上記のとおり、クリーニングブレード用としては不向きであると一般には思われていたが、薄層のエッジ層として用いると、欠点は目立たなくなり、加工性も向上することを見出して、本発明に至ったものである。この骨格構造の相違が特異な挙動に現れていると考えられる。
さらに、2重結合を有するNDIは、骨格が強固になっていると考えられ、その骨格の構造が、さらにNDIと架橋剤の反応で構成されるハードセグメントは高い結晶性を持つため、ポリオール主体で構成されるソフトセグメントと相分離構造をとりやすく、硬化の過程での収縮率の差によりエッジ層の表面の粗面形となって現れていると考えられ、摩擦抵抗を減少させて、一層クリーニング性能の向上に寄与している。
(4)バックアップ層ポリイソシアネート
バックアップ層に用いるポリイソシアネートとしては、従来から用いられている、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を主に用いる。その他、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、カルボジイミド変性MDI、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、3,3′−ビトリレン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル等のジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート等のトリイソシアネート、ポリメリックMDI等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
(5)その他の素材
ポリウレタン組成物には、上記ポリイソシアネートおよびポリオール以外に、架橋剤、(鎖延長剤)、界面活性剤、難燃剤、着色剤、充填剤、可塑剤、安定剤、離型剤、触媒等通常用いられている剤を配合することができる。
架橋剤としては、従来公知のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール等の、分子量300以下のポリオールがあげられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
触媒としては、三級アミン等のアミン系化合物、有機錫化合物等の有機金属化合物等があげられる。なかでも、アミン系化合物が好ましい。
三級アミンとしては、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンや、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミンや、ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコールや、エトキシル化アミンや、エトキシル化ジアミンや、ビス(ジエチルエタノールアミン)アジペート等のエステルアミンや、トリエチレンジアミンや、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体や、N−メチルモルホリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−ジメチルモルホリン等のモルホリン誘導体や、N,N′−ジエチル−2−メチルピペラジン、N,N′−ビス−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルピペラジン等のピペラジン誘導体等があげられる。
有機錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)等のジアルキル錫化合物があげられる。また、2−エチルカプロン酸第1錫、オレイン酸第1錫等があげられる。
外周に溝を形成した回転成型ドラムを利用して連続成型する成型手段では、反応促進剤として、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−有機酸塩(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5−有機酸塩(DBN)またはこれらの混合物等が挙げられる。 かかる、反応促進剤は有効量としてプレポリマー100重量部に対して、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で用いられる。
(6)樹脂例
本発明で用いられる合成樹脂は、熱硬化性のポリウレタン樹脂である。ポリウレタンは、原料を使用し公知の方法で製造することができ、非溶剤型、有機溶剤型が使用できる。例えば、適当な有機溶剤中で必要に応じて触媒を使用し、OH基/NCO基の当量比が0.80〜1.10に調整して反応させること、無溶剤で溶融反応させること等により製造することができる。また、全原料を同時に反応させる方法、プレポリマー方法等により製造することができる。
特に、非溶剤型の2液性の熱硬化性ポリウレタンが適している。外周成型溝回転ドラムによる連続成型法では、非溶剤型の2液性の熱硬化性ポリウレタンが用いられる。注型から取り出しまでの時間が成形ドラムの一回転以内であり、30〜60秒程度で取り出し可能な程度に重合固化している必要がある。このような条件を満たすイソシアネートとポリオール、架橋剤、触媒を選定し設計する。取り出した後の工程において、2次架橋、熟成工程を施すことができる。割型を用いる場合も、エッジ層となるポリウレタンの初期硬化時間を短くすることが望ましい。
エッジ層を形成するプレポリマーとバックアップ層を形成するプレポリマーを別々に製造し、2回に分けて注型することとなる。
<ポリウレタン製ゴム弾性部材の製法>
エッジ層のポリウレタン層とバックアップ層のポリウレタン層の2層に形成する方法は、(a)遠心成形する方法、(b)外周に溝を形成した回転成型ドラムを利用して連続成型する方法、(c)割型による個別に成型する方法を利用することができる。
(1)遠心成形方法
遠心成型法では、先にバックアップ層を形成するプレポリマーを注型し、その後エッジ層を形成するプレポリマーを注型して、エッジ層表面が空気に触れているエア面として成形する。
エア層とすることにより、エッジ層表面には、表面粗さ(Rz)0.5〜1.5μmの凹凸を有する粗面を形成することができる。1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)は、硬直な構造と結晶性の高さを備えており、エア面にNDIの結晶性の高さに由来する0.5〜1.5μmの凹凸が発生すると想定され、クリーニング時に接触面積を減らすことができ、摩擦係数を0.1〜0.35と小さくすることに寄与するものと考えられる。
(2)外周に溝を形成した回転成型ドラムを利用して連続成型する方法
この成型手段は、本願発明者が先に提案した特開2007−30385号公報に開示した手段を利用することができる。ブレードに使用されているポリウレタン製弾性ゴム部材の幅と同一かそれよりやや大きい幅を有する帯状の弾性ゴム部材を連続して製造し、その帯状の弾性ゴム部材を定寸にカットし、金属製の支持体の一側縁に接合して現像ブレード、クリーニングブレード等に仕上げる技術を基本製法とする。
この連続成型法は、複数の注型機を備えたものである。それぞれの注型機から組成の異なる合成樹脂を成形ドラムの成形溝に連続供給することにより、部分2層の合成樹脂層を備えた合成樹脂製のブレード素材を製造する方法である。連続回転する成形ドラムの成形溝に対して、注型口を前後に配置した場合は、先に注型された合成樹脂の上に後から注型された合成樹脂が被覆された状態で硬化して層が形成される。先に注型する合成樹脂の位置、供給量、合成樹脂の組成や種類、成形ドラムの回転スピードなどによって、エッジ層とある樹脂層の位置と幅、厚さをコントロールすることができる。後から注型する合成樹脂は、全体を充填するのに必要な量を供給することとなり、バックアップ層(ベース層)を形成する。
エッジ層を形成するプレポリマーを先に注型し、その後バックアップ層を形成するプレポリマーを注型して、ポリウレタン製の帯状弾性ゴム部材を得て、エッジ部に必要な大きさのエッジ層を形成できるように幅と長さをカットして、クリーニングブレード用ポリウレタン製ゴム弾性部材を形成する。 この製法によって、イソシアネート成分として、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用した硬度が80°(JIS−A)以上のポリウレタンからなるエッジ層をエッジ部のみに形成した電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材を得ることができる。
このエッジ部のみに形成することにより、弾性ゴム部材全体へのエッジ層のポリウレタンの物性の影響を小さくすることができ、異なる物性のポリウレタン素材からなることによる歪みなどの発生を小さくすることができる。特に、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用した硬度が80°(JIS−A)以上のポリウレタンの物性の影響を小さくすることに適している。
(3)割型による個別に成型する方法(割型成型法)
割型成型法は、1枚のポリウレタン製の弾性ブレードの大きさに相当するキャビティーを成型する2枚の型部材をあわせて、キャビティー内へ液状のポリウレタン原料を注型し、重合硬化後脱型して製造するものである。型組みする前に一方の割型の壁面に筋状にエッジ部を形成する液状の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用したポリウレタン原料を塗布し、半硬化させた後に型組みして、バックアップ層(ベース層)ポリウレタン原料を注入して、硬化させて脱型して部分2層を形成したブレード素材を得る。
この割型による部分2層の成型方法は、本出願人が出願した特開2007−163676号公報に開示した手段を用いることができる。
即ち、次のとおりである。エッジ層に相当する位置に熱硬化性樹脂である液状合成樹脂を吐出するヘッドを移動させるか、あるいは金型を移動させることにより熱硬化性樹脂をビード状に塗布するように注型した後、割り金型を組み、ベースとなる熱硬化性樹脂を注型して加熱炉で一体成形する。一体成形されたブレード素材は、割り金型を解体して取り出して所定のサイズに裁断されてブレードとして用いられる。金型を組むときに支持体の一部をキャビティー内部にセットして、ベース形成用樹脂を注型すると支持体とブレードゴム体を一体的に接合できる。
<クリーニングブレード>
表1に示すポリウレタン構成を組み合わせて、表2に示す試験例のクリーニング用ゴム弾性部材を形成した。実施例1〜8及び比較例1〜4を表2に示す。
ポリウレタン製弾性ゴム部材:厚さ2.0mm、幅12.5mm、長さ232mm
層構成:表2参照、(全面2層の例、エッジ部のみエッジ層の例、単層比較例)
エッジ層の大きさ:表2参照
遠心成型:実施例1〜4、比較例1〜5
連続成型法:実施例6〜8
金属製支持体:厚さ1.2mmの鋼板
接着処理:ダイマー酸ベースのホットメルト接着剤使用
<熱硬化型ポリウレタン>
エッジ層あるいはベース層に用いたエステル系ウレタン、エーテル系ウレタンの配合は、表1に示したとおりである。
<評価試験>
評価機:DELL(cn3110)機を使用
トナーの種類:重合法、平均φ5.8μm
・ 摩擦係数: ヘイドンによる
・ 外添剤のすり抜け
市販のカラーレーザープリンター(非磁性2成分現像方式、有機感光体使用、プリン ト速度17枚/分)に装着し、10℃×15%RHの環境下で1000枚の印字テスト を行った。帯電ローラーの表面状態について、外添剤の汚れの付着状態をランク分け し判定した。
・耐久評価(23℃×53%)で通紙2万枚
(1)クリーニング性能評価:トナーのすり抜けによる画像不具合の有無
(2)エッジ欠け評価:エッジの状態を顕微鏡で観察
[ヘイドン法による摩擦係数の測定試験]
ヘイドン表面性測定機(HEIDON−14型、新東科学(株)製)を用い、その平板9上に設置したPET板8に試験用電子写真装置用ブレード7を角度25度で当接させ、支持部材2に対する荷重Wが50g/cmとなるように設定した。次に、PET板8を移動速度25mm/秒で矢印Aの方向に移動させた際の抵抗値Fを測定し、電子写真装置用ブレード1のPET板8に対する25℃での動摩擦係数μ=F/W(単位なし)を測定した(図4参照)。結果を表2に示す。
[表面粗さの測定]
機器:ミツトヨ(製) サーフテスト SV−3000CNC
測定条件
評価曲線種別:R−J01
基準長さ:0.8mm
区間数:10
入c:0.8mm
入s :0.0025mm
フィルタ種別:ガウシアン
評価長さ:8.0mm
[考察]
(1)実施例1〜8は、外添剤のすり抜けが発生せず、クリーニング不良、エッジの欠けも発生せず、良好なクリーニングが長期間保たれることが確認できた。
(2)比較例3,4は、バックアップ層のポリウレタン構成は、実施例2、5と共通するが、エッジ層のポリウレタン構成が異なる。エッジ層のポリウレタンの組成及び硬さによって、良好な結果が得られたものと推察される。
(3)比較例1、2は従来例のポリウレタンを用いた単層構成の弾性ゴム部材であって、耐久性はクリアできるが、外添剤のすり抜けが認められ、微細な外添剤を用いるトナーには不向きであることが示されている。
(4)バックアップ層を共通する実施例1、3、比較例5において、比較例5は実施例1、3と硬いエッジ層を備え同程度の低摩擦を示しているが、耐久性が不良となっている。これは、エッジ層を構成するポリウレタンの組成に起因すると考えられる。即ち、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を用いたポリウレタンを用いたエッジ層は良好であり、ポリメリック(polymeric)MDIをイソシアネートに用いたポリウレタン(比較例5)は、エッジに欠けが発生し不良となっている。
(5)実施例6、7、8は、エッジ部分のみをエッジ層を構成するポリウレタンとしたものであって、良好な結果が得られた。
(6)この結果、高硬度のエッジ層を備えた2層ブレードは、外添剤のスリ抜け防止に有効であるが、エッジに欠けが生じ耐久性に問題がある(比較例5参照)が、エッジ層を1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)とポリカプロラクトンポリオールを用いたポリウレタンとすることにより、高硬度のエッジ層であっても耐久性が良好で、外添剤すり抜けが発生せずに良好なクリーニング性能を発揮できるクリーニングブレードとなっている。
バックアップ層のポリウレタンの硬度は80°未満であって、エッジ層のポリウレタンの硬度は80以上、クリーンニングブレードの動摩擦係数を0.10〜0.35、特に0.2〜0.3が適していることがわかる。
(7)表面粗さ(Rz)は、表2に示された各実施例では、0.6〜1.0μmが適していることが分かる。比較例は、実施例よりも小さな凹凸となっており、この凹凸の差は、イソシアネートとして用いたNDIとMDIの影響が現れていると考えられる。また、別途の計測では0.5〜1.5μmが適していることが確認された。
[表面状態の確認]
実施例1に用いたポリウレタン製ゴム弾性部材のエッジ層側表面を写した顕微鏡写真を図5に示す。規則正しく凹凸が現れている様子が看取できる。これは、エッジ層を構成するポリウレタンの構造に起因する状態が示されているものと考えられる。この凹凸が、表面粗さを形成していると考えられる。また、この表面凹凸は、先に述べた本発明がイソシアネートとしてNDIを採用したことによる特徴を示していると考えられる。即ち、2重結合を有するNDIは、骨格が強固になっていると考えられ、その骨格の構造が、さらにNDIと架橋剤の反応で構成されるハードセグメントは高い結晶性を持つため、ポリオール主体で構成されるソフトセグメントと相分離構造をとりやすく、硬化の過程での収縮率の差によりエッジ層の表面の粗面形となって現れていると考えられるのである。そしてそれが、摩擦抵抗を減少させて、一層クリーニング性能の向上に寄与すると考えられる。
[欠け状態の観察]
環境負荷試験を行って、耐久性試験を行った結果、本発明は欠けの発生は認められず良好であった。
環境負荷試験は、(1)室温通常湿度(NN)(23℃、50%rh)→(2)低温低湿度(LL)(10℃、15%rh)→(3)高温高湿度(HH)(28℃、80%rh)→(4)室温通常湿度(NN)(23℃、50%rh)の4つの環境変更を行い、各課程において、2000枚の複写試験を行った。
エッジの欠けの状態を観察した拡大写真を図6に示す。図6(a)は実施例1の欠けの無い状態を示す。図6(b)は、比較例5の欠けの状態を示す。
2層構成のクリーニングブレードの断面を模式的に示す図。 エッジ部をエッジ層としたクリーニングブレードの断面を模式的に示す図。 イソシアネートの例を示す図。 ヘイドン法による摩擦係数の測定試験を示す図。 実施例1に用いたポリウレタン製ゴム弾性部材のエッジ層がわ表面を写した顕微鏡写真を示す図。 エッジの欠けの状態を観察した拡大写真を示す図。
符号の説明
1 弾性ゴム部材
2 支持部材
3 接着剤層
4 エッジ層
5 バックアップ層
6 エッジ部
7 試験用クリーニングブレード
8 PET板(像担持体)

Claims (9)

  1. エッジ層とバックアップ層からなる電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材であって、
    エッジ層ポリウレタンのイソシアネート成分として、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用した硬度が80°(JIS−A)以上のポリウレタンにて長手方向に連続して形成されており、200%モジュラスが69〜114Mpa、反発弾性が53〜61%であり、
    バックアップ層は、NDI系以外のイソシアネート成分を用い硬度が80°未満のポリウレタンであり、200%モジュラスが33〜99Mpa、反発弾性が8〜72%であることを特徴とする電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  2. バックアップ層ポリウレタンのイソシアネート成分が、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  3. エッジ層のポリオール成分がポリカプロラクトンポリオールであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  4. エッジ層は、ヘイドン表面性測定機による動摩擦係数を0.10〜0.35とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  5. ポリウレタン製弾性ゴム部材は、遠心成形によって得られたものであって、エッジ層をエア面とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  6. エッジ層表面が0.5〜1.5μmの凹凸を有していることを特徴とする請求項5記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  7. ポリウレタン製弾性ゴム部材のクリーニング作用をするエッジ部分にのみエッジ層を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  8. ポリウレタン製弾性ゴム部材が、外周に溝を形成した回転成型ドラムを利用して連続成型する成型手段によって得られたことを特徴とする請求項7記載の電子写真用クリーニングブレード用のポリウレタン製弾性ゴム部材。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタン製弾性ゴム部材を支持部材に接着したことを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
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