JP3592425B2 - 希土類合金ろう材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は希土類合金ろう材、例えば永久磁石素材、超磁歪合金部材等の接合材として好適な、希土類合金よりなるろう材に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、希土類元素を含む永久磁石素材は、非常に脆いため機械加工性が悪く、また高温下に曝されると、金属組織が変化するためそれに伴い磁石特性が影響を受ける、といった性質を有する。
【0003】
そのため、例えば永久磁石素材をモータのロータ用鉄心に取付ける場合、あり差し構造、ねじ止め、溶接等の取付手段を採用することができないので、従来は接着剤が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、接着剤を用いると、永久磁石素材の濡れ性が悪いため接合強度が低く、また温度上昇に伴いその接合強度が著しく低下する、といった問題を生ずる。このような状況下ではモータの高速回転化の要請に到底対応することはできない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記に鑑み、比較的液相発生温度が低く、永久磁石素材等の各種被接合部材の接合材として好適な前記希土類合金ろう材を提供することを目的とする。
【0006】
前記目的を達成するため本発明によれば、希土類元素REの含有量がRE≧50原子%、Cuの含有量が18原子%≦Cu<40原子%および他の合金元素AEの含有量がAE≦20原子%であり、前記合金元素AEはFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、Au、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、SbおよびBiから選択される少なくとも一種である希土類合金ろう材が提供される。
【0007】
希土類元素RE、Cuおよび合金元素AEの含有量を前記のように特定すると、加熱下において希土類元素REと、Cuおよび合金元素AEとが共晶反応を行うため、希土類合金ろう材の液相発生温度Tmは比較的低くなる、つまり易融化が達成される。そして、希土類合金ろう材より生じた液相は高活性であることから、液相状態または固液共存状態の希土類合金ろう材は種々の材質の被接合部材に対し良好な濡れ性を発揮して拡散現象を現出する。また希土類合金ろう材は、加熱下において固相状態でも種々の材質の被接合部材に対して良好な拡散性を発揮する。このような希土類合金ろう材を用いることによって、比較的低温下で両被接合部材を強固にろう接することが可能であり、したがって、このろう材は永久磁石用素材等の各種被接合部材の接合材として好適である。
【0008】
Cuを含有する希土類合金は、例えば液体急冷法の適用下で非晶質化する。この希土類合金に前記合金元素AEを特定量含有させると、その非晶質化が促進されると共に薄帯状に成形する場合の連続性が改善されるので、単ロール法の適用下で、肉厚が約10〜約100μmで、且つ均質化を達成された、非晶質合金よりなる薄帯を容易に得ることができる。
【0009】
このような薄帯より希土類合金ろう材を得ることが可能である。この場合、前記薄帯は高靱性であるから、それに打抜き加工等の切り出し加工を施してろう材を所望形状に形成することができる。またろう材は、それに酸化の起点となる粒界層がないので優れた耐酸化性を有する。その上、ろう接に当っては、ろう材としての必要厚さの調節を、単に薄片を積層することによって行うことが可能であり、またろう接中に、不純物となる酸化物が、ろう材より形成された接合層内に混在することもない。
【0010】
薄帯の厚さは、冷却ロールの周速、溶湯の噴射圧、その溶湯温度等によって調節され、その厚さは、インゴットから切出す場合の1/2〜1/10である。
【0011】
ただし、希土類合金ろう材において、希土類元素REの含有量がRE<50原子%では液相発生温度Tmが上昇傾向となり、また接合強度が低下する。Cuの含有量がCu<18原子%では非晶質化を達成することが困難となり、一方、Cu≧40原子%では液相発生温度Tmが上昇する。合金元素AEの含有量がAE>20原子%では、非晶質合金よりなる薄帯の連続性および均質性が悪化する。
【0012】
【発明の実施の形態】
希土類合金ろう材は希土類元素RE、Cuおよび他の合金元素AEより構成される。希土類元素REの含有量はRE≧50原子%に、Cuの含有量は18原子%≦Cu<40原子%に、合金元素AEの含有量はAE≦20原子%にそれぞれ設定される。
【0013】
希土類元素REはSc、Yおよびランタノイド、つまり17種の元素から選択される少なくとも一種であり、それらは単体、または混合物であるMm(ミッシュメタル)若しくはDi(ジジミウム)の形態で用いられる。また合金元素AEはFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、Au、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、SbおよびBiから選択される少なくとも一種である。
〔実施例1〕
この実施例ではNd−Cu−AE系希土類合金ろう材について述べる。
【0014】
純度99.9%のNdと、純度99.9%のCuと、純度99.9%のCとを、Nd70Cu2010合金(数値の単位は原子%、以下の例において同じ)が得られるように秤量し、次いでその秤量物を真空溶解炉を用いて溶解し、その後鋳造を行ってインゴットを得た。
【0015】
このインゴットから約50gの原料を採取し、これを石英ノズルで高周波溶解して溶湯を調製し、次いで溶湯を石英ノズルのスリットから、その下方で高速回転するCu製冷却ロール外周面にアルゴンガス圧により噴出させて超急冷し、幅30mm、厚さ20μmのNd70Cu2010合金よりなる薄帯を得た。この薄帯は均質であると共に連続性も良く、したがって前記組成の合金は薄帯形成性が良好である。
【0016】
この場合の製造条件は次の通りである。即ち、石英ノズルの内径 40mm、スリットの寸法 幅 0.25mm、長さ 30mm、アルゴンガス圧 1.0kgf/cm、溶湯温度 800℃、スリットと冷却ロールとの距離 1.0mm、冷却ロールの周速 33m/sec 、溶湯の冷却速度 約10K/sec である。
【0017】
図1は薄帯のX線回折結果を示し、この薄帯においては2θ≒31°に幅広のハローパターンが観察され、このことから薄帯の金属組織は非晶質単相組織であることが判明した。このNd70Cu2010合金の結晶化温度Txは190.7℃であった。また薄帯の液相発生温度Tmは540.3℃であって易融化が図られていた。さらに薄帯は、高い靱性を有するので、180°密着曲げが可能であり、また変色もなく優れた耐酸化性を備えていた。さらにまた前記製造条件において、冷却ロールの周速のみを変えて薄帯の厚さを20μmから400μmまで変化させ、非晶質単相組織が得られる薄帯の臨界厚さを求めたところ、その臨界厚さは270μmであることが判明した。
【0018】
次に、厚さ100μmの薄帯に打抜き加工を施して、図2に示すように縦10mm、横10mmで非晶質の薄片状ろう材1を作製し、このろう材1を用いて次のような方法でろう接を行った。
【0019】
一方の被接合部材として、縦10mm、横10mm、厚さ3mmのNdFeB系永久磁石素材(住友特殊金属社製、商品名NEOMAX−28UH、キュリー点310℃)2を選定し、また他方の被接合部材として、厚さ0.3mmの冷間圧延鋼板4を積層してなり、且つ縦10mm、横10mm、長さ15mmの直方体状の積層体3を選定した。この場合、各鋼板4の接合にはかしめ手段5が用いられている。
【0020】
図2に示すように、1つの積層体3の鋼板端面よりなる接合面6上に1つのろう材1を、またろう材1の上に永久磁石素材2を、さらに永久磁石素材2の上にもう1つのろう材1を、さらにまたろう材1の上にもう1つの積層体3をその接合面6を下向きにしてそれぞれ重ね合わせて重ね合せ物を作製した。次いで、その重ね合せ物を真空加熱炉内に設置し、加熱温度T=550℃、加熱時間15分間の加熱工程、それに次ぐ炉冷よりなる冷却工程を行って、図3に示すように2つの積層体3により永久磁石素材2を挟むようにそれら2,3をろう材1より形成された結晶質の接合層7を介しろう接した接合体8を得た。このろう接においては、加熱温度TがT=550℃であって、ろう材1の液相発生温度Tm=540.3℃を超えているので、ろう材1は固液共存状態となる。なお、両積層体3に存する貫通孔9は引張り試験においてチャックとの連結に用いられる。
【0021】
比較のため、前記同様の永久磁石素材2と前記同様の2つの積層体3とをエポキシ樹脂系接着剤(日本チバガイギ社製、商品名アラルダイト)を介し重ね合せて前記同様の重ね合せ物を作製した。次いで、その重ね合せ物を乾燥炉内に設置して、加熱温度200℃、加熱時間60分間の加熱工程、それに次ぐ炉冷よりなる接合処理を行って、2つの積層体3と永久磁石素材2とをエポキシ樹脂系接着剤を介して接合した前記同様の接合体を得た。
【0022】
ろう材1を用いた接合体8、およびエポキシ樹脂系接着剤を用いた接合体について室温下で引張り試験を行ったところ、表1の結果を得た。
【0023】
【表1】
Figure 0003592425
【0024】
表1から明らかなように、ろう材1を用いた接合体8は、エポキシ樹脂系接着剤を用いた接合体に比べて接合強度が高く、またそのばらつきも小さかった。この接合強度の向上には、非晶質のろう材1が優れた耐酸化性を有すると共に均質であること、接合層内に酸化物が混在しないこと等も寄与している。
【0025】
NdFeB系永久磁石素材、SmCo系永久磁石素材等の希土類元素を含む永久磁石素材2は、ろう接時の加熱温度TがT>650℃になると、その磁石特性、特に保磁力(磁化の強さI=0)が低下傾向となる。ただし、残留磁束密度Brおよび保磁力(磁束密度B=0)は殆ど変わらず、したがって最大磁気エネルギ積(BH)maxは略一定である。前記ろう接においては、その加熱温度TがT=550℃であってT≦650℃であるから、永久磁石素材2の磁石特性を変化させるようなことはない。
【0026】
また前記永久磁石素材2の濡れ性の悪さは、その結晶粒界に希土類元素濃度、この実施例ではNd濃度の高い相が存在していることに起因する。前記ろう接において、そのろう材1は液相状態となっており、そのNdを主成分とするNd70Cu2010合金より生じた液相は、高活性であると共に前記結晶粒界に存するNd濃度の高い相と主成分を共通にすることから永久磁石素材2に対して優れた濡れ性を発揮し、また前記高活性化に伴い鋼板4よりなる積層体3に対する濡れ性も極めて良好である。
【0027】
したがって、前記のようなろう材1を用いることによって、永久磁石素材2の磁石特性に影響を与えることなく、その永久磁石素材2と積層体3とを強固に接合することができる。
【0028】
前記接合技術は、回転電機としてのモータにおいて、ロータ用成層鉄心に対する永久磁石素材2のろう接に適用され、回転数が10000rpm 以上である高速回転モータの実現を可能にするものである。
【0029】
次に、前記同様の単ロール法を採用して各種組成を持つ非晶質の薄帯を製造し、また各薄帯についてX線回折等を行い、さらに前記同様のろう接および接合体に関する引張り試験を行った。表2は、その結果を示す。この場合、ろう接時の加熱温度Tは前記同様に550℃に設定され、したがってろう材1は液相状態または固液共存状態となる。表2には、前記Nd70Cu2010合金よりなる薄帯およびろう材1に関するデータも例(20)として記載されている。
【0030】
【表2】
Figure 0003592425
【0031】
表2において、ろう材1の液相発生温度Tmは422.4℃≦Tm≦540.3℃であり、このことから各例において易融化が図られていることが判る。
【0032】
また結晶化温度Txは非晶質相が結晶質相に変化する温度であるから、この結晶化温度Txが高い程非晶質相が安定して存在する、と言える。
【0033】
さらに臨界厚さは希土類合金の非晶質相形成能の程度を示し、この臨界厚さが大きい程非晶質相形成能が高く、したがって非晶質薄帯を安定して製造することが可能である。
〔実施例2〕
この実施例ではNd−Cu−Al系希土類合金ろう材について述べる。
【0034】
純度99.9%のNdと、純度99.9%のCuと、純度99.9%のAlとを、Nd70Cu25Al合金が得られるように秤量し、次いでその秤量物を真空溶解炉を用いて溶解し、その後鋳造を行ってインゴットを得た。
【0035】
このインゴットから約50gの原料を採取し、これを石英ノズル内で高周波溶解して溶湯を調製し、次いで溶湯を石英ノズルのスリットから、その下方で高速回転するCu製冷却ロール外周面にアルゴンガス圧により噴出させて超急冷し、幅30mm、厚さ100μmのNd70Cu25Al合金よりなる薄帯を得た。
【0036】
この場合の製造条件は次の通りである。即ち、石英ノズルの内径 40mm、スリットの寸法 幅 0.25mm、長さ 30mm、アルゴンガス圧 1.0kgf/cm、溶湯温度 670℃、スリットと冷却ロールとの距離 1.0mm、冷却ロールの周速 13m/sec 、溶湯の冷却速度 約10K/sec である。
【0037】
図4は薄帯のX線回折結果を示し、この薄帯においては2θ≒32°に幅広のハローパターンが観察され、このことから薄帯の金属組織は非晶質単相組織であることが判明した。また薄帯は高い靱性を有し、180°密着曲げが可能であった。
【0038】
Nd、CuおよびAlの配合量を種々変更し、前記と同様の方法で各種組成の薄帯を製造した。
【0039】
各薄帯について、その80%以上が液相となる溶融温度、金属組織、薄帯形成性および耐酸化性の有無を調べたところ、表3の結果を得た。表3には前記Nd70Cu25Al合金よりなる薄帯に関するデータも例(11)として記載されている。金属組織の欄において、「A」は非晶質単相組織であることを示し、これは以下同じである。また「A+C」は非晶質相Aと結晶質相Cとの混相組織であることを示す。
【0040】
【表3】
Figure 0003592425
【0041】
表3から明らかなように、Nd−Cu−Al系希土類合金薄帯において、易融化を図り、また非晶質化を達成し、さらに薄帯形成性および耐酸化性を良好にするためには、図5にも示すごとく例(4)〜(13)のように、Ndの含有量を68原子%≦Nd≦70原子%に、Cuの含有量を22原子%≦Cu≦30原子%に、Alの含有量を2原子%≦Al≦8原子%にそれぞれ設定すれば良い。
【0042】
次に、Nd70Cu25Al合金よりなる非晶質の薄帯の例(11)に打抜き加工を施して、図2に示すように縦10mm、横10mm、厚さ100μmで非晶質の薄片状ろう材1を作製し、このろう材1を用いて次のような方法でろう接を行った。
【0043】
一方の被接合部材として、実施例1と同様に、縦10mm、横10mm、厚さ3mmのNdFeB系永久磁石素材(住友特殊金属社製、商品名NEOMAX−28UH、キュリー点310℃)2を選定し、また他方の被接合部材として、実施例1と同様に、厚さ0.3mmの冷間圧延鋼板4を積層してなり、且つ縦10mm、横10mm、長さ15mmの直方体状の積層体3を選定した。
【0044】
図2に示すように、1つの積層体3の鋼板端面よりなる接合面6上に1つのろう材1を、またろう材1の上に永久磁石素材2を、さらに永久磁石素材2の上にもう1つのろう材1を、さらにまたろう材1の上にもう1つの積層体3をその接合面6を下向きにしてそれぞれ重ね合わせて重ね合せ物を作製した。次いで、その重ね合せ物を真空加熱炉内に設置し、加熱温度T=510℃、加熱時間30分間の加熱工程、それに次ぐ炉冷よりなる冷却工程を行って、図3に示すように2つの積層体3により永久磁石素材2を挟むようにそれら2,3をろう材1より形成された結晶質の接合層7を介しろう接した接合体8を得た。このろう接においては、加熱温度Tが510℃であって、ろう材1の前記溶融温度506.7℃を超えているので、ろう材1は液相状態となる。
【0045】
比較のため、Nd70Cu30合金よりなる厚さ100μmの非晶質の薄帯に打抜き加工を施して縦10mm、横10mmのろう材を作製し、このろう材を用いて前記と同様の方法で図3に示す接合体8と同一構造の接合体を得た。この場合、Nd70Cu30合金は共晶合金であり、その共晶点は520℃であることから、加熱温度Tは530℃に設定された。
【0046】
Nd70Cu25Al合金ろう材1を用いた接合体8およびNd70Cu30合金ろう材を用いた接合体について室温下および150℃の加熱下で引張り試験を行ったところ、表4の結果を得た。
【0047】
【表4】
Figure 0003592425
【0048】
表4から明らかなように、Nd70Cu25Al合金ろう材1を用いた接合体8は、ろう接時の加熱温度Tが510℃であって、Nd70Cu30合金ろう材を用いた場合の530℃に比べて20℃も低く設定されているにも拘らず、室温下および150℃の加熱下において、Nd70Cu30合金ろう材を用いた場合と略同等の接合強度を有する。これはNd70Cu25Al合金において易融化が図られていることに因る。
〔実施例3〕
この実施例ではRE−Cu−Al系希土類合金について述べる。
(1) 純度99.9%のPrと、純度99.9%のCuと、純度99.9%のAlとを、Pr68Cu27Al合金が得られるように秤量し、次いでその秤量物を真空溶解炉を用いて溶解し、その後鋳造を行ってインゴットを得た。
【0049】
このインゴットから約50gの原料を採取し、これを石英ノズル内で高周波溶解して溶湯を調製し、次いで溶湯を石英ノズルのスリットから、その下方で高速回転するCu製冷却ロール外周面にアルゴンガス圧により噴出させて超急冷し、幅30mm、厚さ100μmのPr68Cu27Al合金よりなる薄帯を得た。
【0050】
この場合の製造条件は次の通りである。即ち、石英ノズルの内径 40mm、スリットの寸法 幅 0.25mm、長さ 30mm、アルゴンガス圧 1.0kgf/cm、溶湯温度 580℃、スリットと冷却ロールとの距離 1.0mm、冷却ロールの周速 13m/sec 、溶湯の冷却速度 約10K/sec である。
【0051】
図6は薄帯のX線回折結果を示し、この薄帯においては2θ≒32°に幅広のハローパターンが観察され、このことから薄帯の金属組織は非晶質単相組織であることが判明した。また薄帯は高い靱性を有し、180°密着曲げが可能であった。
【0052】
Pr、CuおよびAlの配合量を変更して、前記と同様の方法で各種組成を有し、且つ前記と同一寸法の非晶質薄帯を製造した。
【0053】
各薄帯について、その80%以上が液相となる溶融温度、金属組織、薄帯形成性および耐酸化性の有無を調べたところ、表5の結果を得た。表5には前記Pr68Cu27Al合金よりなる薄帯に関するデータも例(4)として記載されている。
【0054】
【表5】
Figure 0003592425
【0055】
またMm(58原子%Ce、24原子%La、13原子%Nd、5原子%Pr)、CuおよびAlの配合量を変更して、前記と同様の方法で各種組成を有し、且つ前記と同一寸法の非晶質薄帯を製造した。
【0056】
各薄帯について、その80%以上が液相となる溶融温度、金属組織、薄帯形成性および耐酸化性の有無を調べたところ、表6の結果を得た。
【0057】
【表6】
Figure 0003592425
【0058】
さらにAlの配合量を5原子%(一定)とし、また希土類元素REの種類およびその配合量ならびにCuの配合量を変更して、前記と同様の方法で各種組成を有し、且つ前記と同一寸法の非晶質薄帯を製造した。
【0059】
各薄帯について、その液相発生温度Tm、金属組織、薄帯形成性および耐酸化性の有無を調べたところ、表7の結果を得た。
【0060】
【表7】
Figure 0003592425
【0061】
表5〜7から明らかなように、各薄帯、したがってRE−Cu−Al合金において液相発生温度Tmは380℃≦Tm≦600℃の範囲にあって易融化が図られている。この易融化達成のためには、希土類元素REの含有量を57原子%≦RE<80原子%に、Cuの含有量を18原子%≦Cu<40原子%に、Alの含有量をAl≦20原子%にそれぞれ設定し、希土類元素REとしてLa、Ce、Pr、NdおよびSmから選択される少なくとも一種を用いればよい。なお、Ndを含む薄帯は表3の例(11)に示されている。
【0062】
特に、Pr−Cu−Al系希土類合金薄帯において、易融化を図り、また非晶質化を達成し、さらに薄帯形成性および耐酸化性を良好にするためには、表5に示すように、Prの含有量を60原子%≦Pr≦70原子%に、Cuの含有量を20原子%≦Cu≦30原子%に、Alの含有量を5原子%≦Al≦20原子%にそれぞれ設定すれば良い。
(2)−1.表5に示した、Pr68Cu27Al合金よりなる非晶質の薄帯の例(4)に打抜き加工を施して、図2に示すように縦10mm、横10mm、厚さ100μmで非晶質の薄片状ろう材1を作製し、このろう材1を用いて次のような方法でろう接を行った。
【0063】
一方の被接合部材として、実施例1と同様に、縦10mm、横10mm、厚さ3mmのNdFeB系永久磁石素材(住友特殊金属社製、商品名NEOMAX−28UH、キュリー点310℃)2を選定し、また他方の被接合部材として、実施例1と同様に、厚さ0.3mmの冷間圧延鋼板4を積層してなり、且つ縦10mm、横10mm、長さ15mmの直方体状の積層体3を選定した。
【0064】
図2に示すように、1つの積層体3の鋼板端面よりなる接合面6上に1つのろう材1を、またろう材1の上に永久磁石素材2を、さらに永久磁石素材2の上にもう1つのろう材1を、さらにまたろう材1の上にもう1つの積層体3をその接合面6を下向きにしてそれぞれ重ね合わせて重ね合せ物を作製した。次いで、その重ね合せ物を真空加熱炉内に設置し、加熱温度T=440℃、加熱時間15分間の加熱工程、それに次ぐ炉冷よりなる冷却工程を行って、図3に示すように2つの積層体3により永久磁石素材2を挟むようにそれら2,3をろう材1より形成された結晶質の接合層7を介しろう接した接合体8の例(1)を得た。このろう接においては、加熱温度Tが440℃であって、ろう材1の前記溶融温度427.3℃を超えているので、ろう材1は液相状態となる。
【0065】
比較のため、永久磁石素材2に代えて、それと同一寸法の各種被接合部材を用い前記同様のろう接を行って接合体8の例(2)〜(6)を得た。さらに永久磁石素材2に代えて、縦10mm、横10mm、厚さ25μmのFeSiB系非晶質薄片(アライド社製、商品名 260SS−2)を用いると共に前記ろう材1として厚さ20μmのもの(Pr68Cu27Al合金)を用い前記同様のろう接を行って接合体8の例(7)を得た。
【0066】
各接合体8の例(1)〜(7)について室温下にて引張り試験を行ったところ、表8の結果を得た。
【0067】
【表8】
Figure 0003592425
【0068】
表8において、例(2)〜(5),(7)の場合は接合層7にて破断を生じていたが、例(1)の場合は永久磁石素材2が破断し、また例(6)の場合は超磁歪合金部材が破断していた。表8より、加熱温度Tが440℃といったように低いにも拘らず、大きな接合強度が得られることが判る。
【0069】
炭素鋼、合金鋼およびステンレス鋼より構成された部材は焼入処理により硬化されるが、750℃〜900℃に加熱されると焼なまされて軟化し、また希土類系超磁歪合金部材の場合、900℃以上に加熱されると金属組織が変化するため磁気特性が影響を受ける、といった不具合を生じるが、前記ろう材1によるろう接では加熱温度Tが低いので、前記不具合の発生を回避することができる。
(2)−2.表6に示したMm72Cu23Al合金よりなる非晶質の薄帯の例(5)より前記同様の方法でろう材1を作製し、このろう材1を用い前記同様のろう接を行って、前記同様の接合体8の例(1)〜(6)を得た。また前記同様の方法で前記同様の接合体8の例(7)を得た。ただし、加熱温度Tは420℃に設定された。
【0070】
表9は各接合体8の例(1)〜(7)に関する引張り試験結果を示す。
【0071】
【表9】
Figure 0003592425
【0072】
表9において、前記同様に例(2)〜(5),(7)の場合は接合層7にて破断を生じていたが、例(1)の場合は永久磁石素材2が破断し、また例(6)の場合は超磁歪合金部材が破断していた。表9より、加熱温度Tが420℃といったように低いにも拘らず、大きな接合強度が得られることが判る。
(2)−3.表5に示した、Pr68Cu27Al合金よりなる非晶質の薄帯の例(4)に打抜き加工を施して、図7に示すように直径6mm、厚さ100μmで非晶質の薄片状ろう材1を作製し、このろう材1を用いて次のような方法でろう接を行った。
【0073】
一方の被接合部材として、直径6mm、長さ20mmの超磁歪合金(Fe66Sm33Yb合金)部材10を選定し、また他方の被接合部材として、直径6mm、長さ20mmのステンレス鋼(JIS SUS410)部材11を選定した。
【0074】
超磁歪合金部材10とステンレス鋼部材11との間にろう材1を介在させて、それら1,10,11を所定の治具により固定した。次いで、このように固定された20個の組合せ物を真空加熱炉内に設置し、加熱温度T=445℃、加熱時間5分間の加熱工程、それに次ぐ炉冷よりなる冷却工程を行って、図8に示すように超磁歪合金部材10とステンレス鋼部材11とをろう材1より形成された結晶質の接合層7を介しろう接した20個の接合体8を得た。このろう接においては、加熱温度Tが445℃であって、ろう材1の前記溶融温度427.3℃を超えているので、ろう材1は液相状態となる。
【0075】
次いで、各接合体8についてJIS R1601に則って4点曲げ試験を行った。即ち、接合体8の両端部をそれぞれ支点で支え、また接合層7の両側にそれぞれ荷重点を設け、クロスヘッド速度0.5mm/min にて荷重を付与した。その結果、各接合体8はその超磁歪合金部材10において破断し、平均曲げ強さは6.5kgf/mmであった。これにより加熱温度Tが445℃といったように低いにも拘らず、大きな接合強度が得られることが判る。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の希土類元素RE、Cuおよび特定の合金元素AEを特定量含有させることにより、易融化を達成され、各種被接合部材の接合材として好適な希土類合金ろう材を提供することができる。
【0077】
また市販の軟ろうは融点が390℃以下であり、一方、硬ろうは融点が570℃以上である。本発明によれば、このような軟ろうおよび硬ろうでは達成し得ない温度範囲、つまり390〜570℃においてろう接を行うことが可能な希土類合金ろう材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Nd70Cu2010合金のX線回折図である。
【図2】ろう材、永久磁石素材および積層体の重ね合せ関係を示す斜視図である。
【図3】接合体の一例を示す斜視図である。
【図4】Nd70Cu25Al合金のX線回折図である。
【図5】Nd−Cu−Al系合金の組成図である。
【図6】Pr68Cu27Al合金のX線回折図である。
【図7】ろう材、超磁歪合金部材およびステンレス鋼部材の重ね合せ関係を示す斜視図である。
【図8】接合体の他例を示す正面図である。
【符号の説明】
1 ろう材
2 永久磁石
3 積層体
8 接合体

Claims (8)

  1. 希土類元素REの含有量がRE≧50原子%、Cuの含有量が18原子%≦Cu<40原子%および他の合金元素AEの含有量がAE≦20原子%であり、前記合金元素AEはFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、Au、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、SbおよびBiから選択される少なくとも一種であることを特徴とする希土類合金ろう材。
  2. 前記希土類元素REの含有量が57原子%≦RE<80原子%であり、また前記合金元素AEがAlである、請求項1記載の希土類合金ろう材。
  3. 前記希土類元素REはNdであって、Ndの含有量が68原子%≦Nd≦70原子%、Cuの含有量が22原子%≦Cu≦30原子%およびAlの含有量が2原子%≦Al≦8原子%である、請求項2記載の希土類合金ろう材。
  4. 前記希土類元素REはPrであって、Prの含有量が60原子%≦Pr≦70原子%、Cuの含有量が20原子%≦Cu≦30原子%およびAlの含有量が5原子%≦Al≦20原子%である、請求項2記載の希土類合金ろう材。
  5. 液相発生温度Tmが380℃≦Tm≦600℃である、請求項1,2,3または4記載の希土類合金ろう材。
  6. 非晶質合金である、請求項1,2,3,4または5記載の希土類合金ろう材。
  7. 永久磁石素材の接合に用いられる、請求項1,2,3,4,5または6記載の希土類合金ろう材。
  8. 超磁歪合金部材の接合に用いられる、請求項1,2,3,4,5または6記載の希土類合金ろう材。
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