JP3592397B2 - 熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法 - Google Patents

熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法、特に、両部材の接合面間にろう材を介在させ、加熱工程と、それに次ぐ冷却工程とを用いて両部材を接合する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば永久磁石と鋼製取付台とを接合する場合、合成樹脂接着剤が用いられている(例えば、特公昭61−33339号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、合成樹脂接着剤による接合では、その永久磁石の昇温に伴い接合強度が著しく低下し、また接合強度のばらつきが大きいため品質管理が難しい、といった問題がある。
【0004】
本発明は前記に鑑み、前記二種の部材をろう材を用いて加熱接合するに当り、両部材の接合部に発生する熱応力を緩和すると共に両接合面間から食出したろう材の過剰分が部材外面に付着することを防止して、冷却工程での熱膨脹率が小さい方の部材が脆くてもそれに割れが発生するのを回避することができる前記加熱接合方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱膨脹率を異にする二種の部材の接合面間にろう材を介在させ、加熱工程と、それに次ぐ冷却工程とを用いて両部材を接合するに当り、前記冷却工程での熱膨脹率が大きい前記一方の部材の接合面を複数の小接合面より形成して、それら小接合面をろう材層を介し前記他方の部材の接合面に接合し、また前記一方の部材に、前記小接合面に隣接する凹部を形成して、前記加熱工程において前記ろう材の過剰分を前記凹部に受容させることを特徴とする。
【0006】
【作用】
前記加熱接合方法においては、均一厚さのろう材層を両接合面全域に亘って形成すべく、使用ろう材量は必要最少量よりも多目に見積られる。加熱工程では両部材が膨脹し、例えば長さが加熱前よりも長くなる。一方、ろう材は液相状態または固液共存状態となるが、そのろう材の過剰分、つまり過剰ろう材は凹部に受容されるので、両接合面間から食出した過剰ろう材が部材外面に付着することが防止される。
【0007】
冷却工程では、熱膨脹率が大きい一方の部材においては各小接合面形成部分が収縮すると共に小接合面が他方の部材の接合面にろう材層を介して接合されるので、隣接する両小接合面間の間隔は加熱前よりも大きくなり、その結果、一方の部材は、加熱前の長さよりも長い状態に拘束される。これにより、一方の部材の長さが加熱前の長さに略復元する場合に比べて両部材の接合部に発生する熱応力が緩和される。
【0008】
また両接合面間から食出した過剰ろう材が他方の部材の外面に玉状になって付着すると、その他方の部材が脆い場合には過剰ろう材の付着部を起点として他方の部材に割れが生じるが、この問題は前記凹部により解消される。
【0009】
このようにして、熱膨脹率が小さい他方の部材が脆くても、その部材に割れを生じることなく、両部材を強固に接合することができる。
【0010】
【実施例】
熱膨脹率を異にする二種の部材をろう材を用いて、加熱工程と、それに次ぐ冷却工程を経て接合するに当り、図1に示すように、冷却工程での熱膨脹率が小さい方の部材として希土類元素を含む永久磁石(合金部材)1を選定し、また冷却工程での熱膨脹率が大きい方の部材として、複数の鋼板(板材)2よりなる積層体3を選択した。
【0011】
積層体3を構成する鋼板2は、積層方向に並ぶ一端面(外面)の少なくとも一部、図示例では全部を小接合面4とする複数の接合用鋼板(接合用板材)2aと、隣接する両接合用鋼板2a間の全てに挟着されると共に隣接する両小接合面4間に凹部5を形成すべく、積層方向に並ぶ一端面(外面)6の少なくとも一部、図示例では全部を小接合面4よりも引込ませた複数の凹部用鋼板(凹部用板材)2bとよりなる。この場合、両鋼板2a,2bの他端面は同一平面上に在る。したがって、積層体3の接合面7は複数の接合用鋼板2aによる小接合面4より形成される。積層体3において、複数の接合用鋼板2aおよび凹部用鋼板2bの接合にはかしめ手段8、またはボルトおよびナットによる緊締手段が用いられる。
【0012】
永久磁石1と積層体3の両接合面9,7間に、それらの融点よりも低い温度で液相を生じる箔状、または箔材を重ねた薄板状ろう材10が介在される。この場合、均一厚さのろう材層を両接合面7,9全域に亘って形成すべく、使用ろう材量は必要最少量よりも多目に見積られる。
【0013】
加熱接合に当っては、永久磁石1、ろう材10および積層体3よりなる重ね合せ物を真空加熱炉内に設置する工程と、加熱下でろう材10を液相状態または固液共存状態にする加熱工程と、重ね合せ物を炉冷して、図2に示すように永久磁石1と積層体3とをろう材層11を介し接合して接合体12を得る冷却工程とが採用される。
【0014】
図3は前記加熱接合のメカニズムを示す。図3(a)の加熱前においては、重ね合せ物13を形成する永久磁石1、ろう材10および積層体3の長さLは等しい。図3(b)の加熱中において永久磁石1および積層体3が膨脹し、それらの長さが加熱前よりも長くなり、L>L、L>L(ただし、L>L)となる。一方、ろう材10は液相状態または固液共存状態となるが、そのろう材10の過剰分、つまり過剰ろう材aは各凹部5に受容されるので、両接合面7,9間から食出した過剰ろう材aが永久磁石1外面に付着することが防止される。
【0015】
図3(c)の冷却後においては、冷却工程で、熱膨脹率が大きい方の積層体3の各小接合面形成部分である各接合用鋼板2aが収縮すると共に各小接合面4が永久磁石1の接合面9にろう材層11を介して接合されるので、隣接する両小接合面4間の間隔bは加熱前よりも大きくなり、その結果、積層体3の永久磁石1側は、加熱前の長さLよりも長い状態に拘束され、L>L(例えば、L≒1.01×L)となる。これにより、加熱中における、例えば鋼製ブロック体の長さが、冷却後において加熱前の長さに略復元する場合に比べ、接合部に発生する熱応力が緩和される。
【0016】
また両接合面7,9間から食出した過剰ろう材aが永久磁石1外面に付着すると、その永久磁石1が脆い場合には過剰ろう材aの付着部を起点として永久磁石1に割れが生じるが、この問題は前記凹部5により解消される。
【0017】
このようにして、熱膨脹率が小さい永久磁石1が脆くても、その永久磁石1に割れを生じることなく、それ1と積層体3とを強固に接合することができる。
【0018】
ろう材10としては、前記のような希土類元素を含む永久磁石1の磁気特性を低下させない加熱温度T、つまりT≦650℃で、接合力を発揮するものでなければならない。また、この接合力は、加熱下において、ろう材10が固相状態である場合には、その拡散性により発現し、一方、ろう材10が液相状態または固液共存状態である場合にはその濡れ性により発現することが必要である。
【0019】
このような観点からろう材10としては、希土類元素系合金より構成された高活性なものが用いられる。この希土類元素系合金においては、非晶質相の体積分率Vfが50%≦Vf≦100%であることが望ましい。その理由は、次の通りである。即ち、非晶質相は、酸化の起点となるような粒界層が存在しないので耐酸化性が著しく高く、また酸化物の混在も僅少であり、その上偏析がなく組成が均一である、といった特性を有するので、ろう材層11の強度向上を図る上で有効であるからである。
【0020】
この場合、希土類元素にはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種が該当し、それらは単体、または混合物であるMm(ミッシュメタル)、Di(ジジミウム)の形態で用いられる。また合金元素AEは希土類元素と共晶反応を行うもので、その合金元素AEには、Cu、Al、Ga、Co、Fe、Ag、Ni、Au、Mn、Zn、Pd、Sn、Sb、Pb、Bi、GeおよびInから選択される少なくとも一種が該当する。合金元素AEの含有量は5原子%≦AE≦50原子%に設定される。二種以上の合金元素AEを含有する場合には、それらの合計含有量が5原子%≦AE≦50原子%となる。ただし、合金元素AEの含有量がAE>50原子%では、ろう材10としての希土類元素系合金の活性が損われ、一方、AE<5原子%では、固液共存状態において液相を十分に確保することができなくなる。
【0021】
希土類元素系合金における共晶合金を例示すれば表1の通りである。
【0022】
【表1】
Figure 0003592397
【0023】
また希土類元素系合金における亜、過共晶合金としては以下のものを挙げることができる。各化学式において、数値の単位は原子%である(これは以下同じ)。
(a) Nd60Cu40合金、Nd75Cu25合金、Nd80Cu20合金、Nd50Cu50合金……液相発生温度520℃(図4参照)
(b) Sm75Cu25合金、Sm65Cu35合金……液相発生温度597℃
(c) Nd90Al10合金(液相発生温度634℃)、Nd80Co20合金(液相発生温度599℃)、La85Ga15合金(液相発生温度550℃)
さらに三元系合金としては、Nd65FeCu30合金(液相発生温度501℃)およびNd70Cu25Al合金(液相発生温度474℃)を挙げることができる。
【0024】
加熱時間hは、それが長過ぎる場合には永久磁石1および積層体3の特性変化を招来するので、h≦10時間であることが望ましく、生産性向上の観点からはh≦1時間である。
〔実施例1〕
先ず、以下に述べる方法で、非晶質相の体積分率VfがVf=100%であるろう材用箔材を製造した。
【0025】
純度99.9%のNdと、純度99.9%のCuと、純度99.9%のAlとを、Nd70Cu26Al合金が得られるように秤量し、次いでその秤量物を真空溶解炉を用いて溶解し、その後鋳造を行ってインゴットを得た。
【0026】
このインゴットから約50gの原料を採取し、これを石英ノズル内で高周波溶解して溶湯を調製し、次いで溶湯を石英ノズルのスリットから、その下方で高速回転するCu製冷却ロール外周面にアルゴンガス圧により噴出させて超急冷し、幅30mm、厚さ50μmのNd70Cu26Al合金よりなる薄帯を得た。
【0027】
この場合の製造条件は次の通りである。石英ノズルの内径:40mm;スリットの寸法:幅 0.25mm;長さ 30mm;アルゴンガス圧:1.5kgf/cm、溶湯温度;670℃;スリットと冷却ロールとの距離:1.0mm;冷却ロールの周速:13m/sec ;溶湯の冷却速度 約10K/sec .
図5は薄帯のX線回折結果を示し、この薄帯においては2θ≒32°に幅広のハローパターンが観察され、このことから薄帯の金属組織は非晶質単相組織であることが判明した。また薄帯は高い靱性を有し、180°密着曲げが可能であった。
【0028】
次に、Nd70Cu26Al合金よりなる非晶質薄帯から、縦100mm、横20mm、厚さ50μmの箔材を切出した。
【0029】
永久磁石1として、縦100mm、横20mm、厚さ6mmのNdFeB系永久磁石(住友特殊金属社製、商品名NEOMAX−28UH、キュリー点=310℃)を選定した。また積層体3として、縦40mm、横20mm、厚さ0.4mmの接合用冷間圧延鋼板2aと、縦35mm、横20mm、厚さ0.2mmの凹部用冷間圧延鋼板2bとを図1に示すように積層してなり、且つ縦40mm、横20mm、長さ100mmの直方体状の積層体を選定した。この場合、小接合面4の面積は20mm×0.4mm=8mm、凹部5の深さは40mm−35mm=5mm、幅は0.2mm、長さは20mmである。
【0030】
図1に示すように、積層体3の接合面7上に、1枚の箔材(厚さ50μm)よりなるろう材10または2枚以上の箔材を重ね合せてなるろう材10を、またそのろう材10の上に永久磁石1をその接合面9を下向きにしてそれぞれ重ね合せ、その重ね合せ物を真空加熱炉内に設置して、加熱温度T=530℃、加熱時間h=20分間の加熱工程、それに次ぐ炉冷よりなる冷却工程を行って、図2に示すように永久磁石1と積層体3とをろう材層9を介し接合した接合体12の例1〜5を得た。この加熱接合処理においては、加熱温度TがT=530℃であって液相発生温度474℃を超えているので、ろう材10は液相状態となる。
【0031】
表2は、接合体12の例1〜5に関する、ろう材10の厚さ(箔材の厚さ50μm×使用枚数)、永久磁石1外面への過剰ろう材aの付着の有無および永久磁石の割れの有無を示す。
【0032】
【表2】
Figure 0003592397
【0033】
表2から明らかなように、例1〜5においては、永久磁石1外面への過剰ろう材aの付着および永久磁石1の割れは生じておらず、永久磁石1と積層体3とがろう材層11を介して強固に接合されていた。これは、前記のように、凹部5を持つ積層体3を用いたことにより、過剰ろう材の食出しが防止されると共に加熱工程後の冷却工程で接合部に生じる熱応力が緩和されたからである。
【0034】
比較のため、凹部を持たない積層体として、接合用冷間圧延板2aと同一寸法、したがって縦40mm、横20mm、厚さ0.4mmの冷間圧延鋼板を積層してなり、且つ縦40mm、横20mm、長さ100mmの直方体状の積層体を用い、前記と同様の方法で5種の接合体を得た。これら接合体において、ろう材の厚さが50〜500μmである場合には異常はなかったが、ろう材の厚さを550μmに設定すると、両接合面間から過剰ろう材が食出して永久磁石外面に玉状になって付着し、その結果、永久磁石に割れが発生した。
【0035】
また比較のため、積層体3の代りに、炭素鋼(JIS S35C)よりなり、且つ積層体3と同一寸法のブロック体を用い、前記と同様の方法で5種の接合体を得た。これらの接合体においては、ろう材の厚さ、即ち、50〜550μmに関係なく、全ての永久磁石全体に割れが発生し、特に熱応力が集中する各永久磁石の周辺部は割れが大きかった。これは永久磁石とブロック体との熱膨脹率の差が大きいことに起因する。
【0036】
なお、積層体3もブロック体と略同様の熱膨脹率を有するが、積層構造により前記のような熱応力緩和効果が得られるので、ブロック体を用いた場合の問題は回避される。
〔実施例2〕
実施例1で述べたNd70Cu26Al合金よりなる非晶質薄帯から、縦10mm、横10mm、厚さ50μmの箔材を切出した。
【0037】
永久磁石1として、縦10mm、横10mm、厚さ3mmのNdFeB系永久磁石(住友特殊金属社製、商品名NEOMAX−28UH、キュリー点=310℃)1を選定した。また積層体3として、縦15mm、横10mm、厚さ0.3mmの接合用冷間圧延鋼板2aと、縦13mm、横10mm、厚さ0.1mmの凹部用冷間圧延鋼板2bとを図6に示すように(図1の場合と同様に)積層してなり、且つ縦10.3mm、横10mm、長さ15mmの直方体状の積層体を選定した。この場合、小接合面4の面積は10mm×0.3mm=3mm、凹部5の深さは15mm−13mm=2mm、幅は0.1mm、長さは10mmである。
【0038】
そして、1つの積層体3の接合面7上に1枚の箔材(50μm)よりなるろう材10または2枚以上の箔材を重ね合せてなるろう材10を、またろう材10の上に一方の接合面9を下向きにした永久磁石1を、さらに永久磁石1の他方の接合面9上に、前記同様のろう材10を、さらにまたろう材10の上にもう1つの積層体3をその接合面7を下向きにしてそれぞれ重ね合せて重ね合せ物を作製した。次いで、重ね合せ物を真空加熱炉内に設置し、加熱温度T=530℃、加熱時間h=20分間の加熱工程、それに次ぐ炉冷よりなる冷却工程を行って、図7に示すように2つの積層体3により永久磁石1を挟むようにそれら1,3をろう材層11を介し接合した接合体12の例1〜5を得た。この加熱接合処理においては、前記同様に加熱温度TがT=530℃であるからろう材10は液相状態となる。これらの例1〜5においては、永久磁石1外面への過剰ろう材aの付着および永久磁石1の割れは生じていなかった。なお、両積層体3に存する貫通孔14は引張り試験においてチャックとの連結に用いられる。
【0039】
比較のため、凹部を持たない積層体として、接合用冷間圧延鋼板2aと同一寸法、したがって縦15mm、横10mm、厚さ0.3mmの冷間圧延鋼板を積層してなり、且つ縦9.9mm、横10mm、長さ15mmの直方体状の積層体を用い、前記と同様の寸法で接合体の例1a〜5aを得た。これらの例1a〜5aにおいて、厚さが550μmのろう材を用いた例5aでは、過剰ろう材の永久磁石外面への付着および永久磁石の割れが発生していた。
【0040】
次いで、例1〜5、1a〜5aについて室温下で引張り試験を行ったところ、表3の結果を得た。
【0041】
【表3】
Figure 0003592397
【0042】
表3において、例1〜4および例1a〜4aの引張強さはろう材層の破断による値である。対応する例1と1a、例2と2a、例3と3a、例4と4aを比較すると、例1a〜2aの方が例1〜4よりも僅かではあるが接合強度が高い。これは例1a〜4aの方が例1〜4よりも積層体接合面の面積が大きいことに起因する。
【0043】
例5と5aとを比べると、それらの接合強度には大きな差が生じている。これは、例5が健全であるので、その破断がろう材層11において発生しているのに対し、例5aでは永久磁石に割れが生じているので、その破断が永久磁石において発生していることに起因する。なお、例1〜5の接合強度は、高温下、例えば150℃の加熱下においても、室温下のそれと略同じである。
【0044】
前記接合技術は、図8,9に示すように、回転機としてのモータのロータ15において、その成層鉄心(積層体)3に対する永久磁石1の接合に適用され、回転数が10000rpm 以上である高速回転モータの実現を可能にするものである。
【0045】
成層鉄心3を構成する複数の鋼板(板材)2は、積層方向に並ぶ外周面(外面)の少なくとも一部を小接合面4とする複数の接合用冷間圧延鋼板(接合用板材)2aと、隣接する両接合用冷間圧延鋼板2a間の全てに挟着されると共に凹部5を形成すべく、積層方向に並ぶ外周面(外面)6の少なくとも一部、図示例では全部を小接合面4よりも引込ませた複数の凹部用冷間圧延鋼板(凹部用板材)2bとよりなる。したがって、成層鉄心3の複数の接合面7は複数の接合用冷間圧延鋼板2aによる小接合面4より形成される。
【0046】
図中、16は回転軸であり、その回転軸16は成層鉄心3にスプライン結合され、その成層鉄心3の一端部が回転軸16に溶接17される。この場合、回転軸16を成層鉄心3にスプラインを介し圧入してもよい。
【0047】
図10は成層鉄心3の他例を示す。その成層鉄心3の複数の接合面7は、複数の冷間圧延鋼板(板材)2における積層方向に並ぶ外周面(外面)の少なくとも一部である小接合面4より形成される。接合面7の両側に凹部5が形成され、それら凹部5は各小接合面4に隣接して積層方向に延びている。
【0048】
この成層鉄心3に前記同様の方法で永久磁石1を接合したところ、過剰ろう材aの永久磁石1外面への付着および永久磁石1の割れは発生しなかった。
【0049】
接合条件は次の通りである。成層鉄心:長さ104mm、冷間圧延鋼板の厚さ0.4mm、小接合面の面積19mm×0.4mm=7.6mm、凹部の深さ3mm、幅0.5mm、長さ104mm;永久磁石:縦104mm、横20mm、厚さ5mmのNdFeB系永久磁石(住友特殊金属社製、商品名NEOMAX−28UH、キュリー点=310℃);ろう材:非晶質Nd70Cu26Al合金よりなる、縦104mm、横20mm、厚さ50μmの箔材を用い、ろう材の厚さを、箔材を重ね合わせることにより100,200,500,550μmの4段階に変化させた;永久磁石に対する押圧手段:永久磁石1個当り、押圧力1.5kgのスプリングを2本使用;加熱温度T:530℃;加熱時間h:40分間.
なお、永久磁石1には、前記加熱接合処理後において着磁処理が施される。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、前記のように特定された手段を用いることによって、熱膨脹率を異にする二種の部材を、加熱工程後の冷却工程での熱膨脹率が小さい方の部材が脆い場合にもその部材における割れ発生を回避して、強固に加熱接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】永久磁石、ろう材および積層体の重ね合せ関係の一例を示す斜視図である。
【図2】接合体の一例を示す要部断面図である。
【図3】加熱接合メカニズムを示す説明図である。
【図4】Cu−Nd系状態図の要部を示す。
【図5】Nd70Cu26Al合金のX線回折図である。
【図6】永久磁石、ろう材および積層体の重ね合せ関係の他例を示す斜視図である。
【図7】接合体の他例を示す斜視図である。
【図8】要部を拡大したモータ用ロータの断面図で、その破断位置は図9に8−8線で示す。
【図9】要部を破断した、図8の9−9矢視図である。
【図10】成層鉄心の要部斜視図である。
【符号の説明】
1 永久磁石、合金部材(他方の部材)
2 鋼板(板材)
2a 接合用鋼板(接合用板材)
2b 凹部用鋼板(凹部用板材)
3 積層体、成層鉄心(一方の部材)
4 小接合面
5 凹部
6 端面、外周面(外面)
7,9 接合面
10 ろう材
11 ろう材層
a 過剰分

Claims (8)

  1. 熱膨脹率を異にする二種の部材(1,3)の接合面(9,7)間にろう材(10)を介在させ、加熱工程と、それに次ぐ冷却工程とを用いて両部材(1,3)を接合するに当り、前記冷却工程での熱膨脹率が大きい前記一方の部材(3)の接合面(7)を複数の小接合面(4)より形成して、それら小接合面(4)をろう材層(11)を介し前記他方の部材(1)の接合面(9)に接合し、また前記一方の部材(3)に、前記小接合面(4)に隣接する凹部(5)を形成して、前記加熱工程において前記ろう材(10)の過剰分(a)を前記凹部(5)に受容させることを特徴とする、熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
  2. 前記一方の部材は、複数の板材(2)よりなる積層体(3)であり、それら板材(2)は、積層方向に並ぶ外面の少なくとも一部を前記小接合面(4)とする複数の接合用板材(2a)と、隣接する両接合用板材(2a)間に挟着される共に前記凹部(5)を形成すべく、積層方向に並ぶ外面(6)の少なくとも一部を前記小接合面(4)よりも引込ませた複数の凹部用板材(2b)とよりなる、請求項1記載の熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
  3. 前記一方の部材は複数の板材(2)よりなる積層体(3)であり、その積層体(3)の接合面(7)は、複数の前記板材(2)における積層方向に並ぶ外面の少なくとも一部である小接合面(4)より形成され、前記凹部(5)は各小接合面(4)に隣接して積層方向に延びている、請求項1記載の熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
  4. 前記ろう材(10)は希土類元素系合金よりなる、請求項1,2または3記載の熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
  5. 前記ろう材(10)において、希土類元素はY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種であり、合金元素AEはCu、Al、Ga、Co、Fe、Ag、Ni、Au、Mn、Zn、Pd、Sn、Sb、Pb、Bi、GeおよびInから選択される少なくとも一種であって、その合金元素AEの含有量が5原子%≦AE≦50原子%である、請求項4記載の熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
  6. 前記積層体(3)における板材(2)は鋼板であり、前記冷却工程での熱膨脹率が小さい前記他方の部材(1)は、希土類元素を含む合金部材である、請求項2,3,4または5記載の熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
  7. 前記希土類元素を含む合金部材は永久磁石(1)である、請求項6記載の熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
  8. 前記積層体(3)は、回転機のロータ(15)における成層鉄心である、請求項2,3,4,5,6または7記載の熱膨脹率を異にする二種の部材の加熱接合方法。
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