JP3591602B2 - インジウム・スズ酸化物膜用ターゲット - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶表示装置、薄膜エレクトロルミネッサンス表示装置等に使用され、透明電極となるインジウム・スズ酸化物膜を形成するのに用いられるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットに関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化インジウムIn2O3中に酸化スズSnO2をドープした膜であるインジウ ム・スズ酸化物膜(以下ITO膜と称する)は高い透光性と高い導電性を備えており、液晶表示素子やエレクトロルミネッサンスなどの表示装置、あるいは航空機などの窓ガラスの氷結防止用ヒータなどへの導電経路として広く使用されている。このようなITO膜は通常スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、CVD法等により形成されるものである。
【0003】
ITO膜の作製に用いられるターゲットは、In2O3粉末とSnO2粉末の混合粉末を、或いはInとSnと酸素からなる複合酸化物粉末を、あるいは前記混合粉末と前記複合酸化物粉末との混合粉をプレス成形及び/またはCIPし、この成形体を酸化性雰囲気中にて1250℃〜1700℃で焼結し、更にスパッタされる面の機械加工を施したものである。
【0004】
ところが、ITO膜用ターゲットはスパッタリングにより、ターゲット表面に突起物が形成し、スパッタリング時間が長くなるに従い増加する。その際、突起物の形成を放置してスパッタリングを継続すると成膜速度が低下したり、スパッタ電圧が上昇したりして安定した膜特性が得られない。そして、最終的にはアーキングと呼ばれる異常放電が発生し、膜抵抗が増大したり、成膜後のパターン形成のためのエッチング処理の時にエッチング残りが生じる等の問題があった。そこで、成膜速度の変化やスパッタ電圧の変化から突起の発生を検知し、ターゲットの寿命を突起が発生するまでの時間として管理することにより膜特性の安定化を図ってはいるが、使用するターゲットにより寿命が異なり、その都度成膜条件の変更を行う必要があるなどの問題を有していた。
【0005】
特開平4−154654号では、相対密度を80%以上にしたITO焼結体とすることによりターゲット表面の突起の発生を抑制する方法を提案している。特開平4−28163号では、密度とバルク抵抗値を規定することにより成膜操作の安定化をはかる方法が提案されている。特開平4−317455号では、Snを均一に分散させたITO焼結体とすることによりスパッタリング時の異常放電を回避する方法が提案されている。
特開平5−148638号では、成膜速度の低下やアーキング発生等による成膜操作の不安定化を懸念することのないITO膜用ターゲットとして使用原料粉末の粒径と焼結雰囲気を規定した製造方法を提案している。また、特開平5−311428号では、焼結密度、焼結粒径を規定することによりターゲット表面の突起の発生を防止するターゲットを提案している。
【0006】
また、ターゲットの組織に関しては、特開平3−295114号、特開平6−64959号等が提案されている。特開平3−295114号には、ターゲットの寿命向上の観点からインジウム酸化物中のスズ量がIn:Sn=23:1〜98:1のターゲットが記載されている。特開平6−64959号には、In:Sn=1.5:1の第2相の含有量を10%以下としている。
しかし、いまだ突起の形成メカニズムが解明されていないため、ターゲット表面への突起の形成は避けられず、成膜速度やスパッタ電圧の変化からターゲットの寿命を検知する必要に迫られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから本発明は、突起の形成メカニズムを詳細に検討することにより、安定した寿命を有し、かつ長寿命のインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットを提供することを目的とする。また、本発明は、前記目的に加えてスパッタリング中の成膜速度やスパッタ電圧の変化等の成膜条件の不安定化が発生することなく品質の高いITO膜を安定して得ることのできるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一般的に、ITO膜用ターゲットの消耗の仕方は、入射イオンが平坦な面に衝突し、その後、内部へ侵入し、試料原子との弾性散乱の結果、その運動エネルギーの一部を試料原子に与える繰り返しによって生ずる衝突カスケードが試料表面に達した時、表面近傍の結合エネルギーよりも充分大きい運動エネルギーを有している表面近傍の原子が真空中へ放出されることで削られ消耗していくと考えられている。
【0008】
本発明者らが、突起の形成メカニズムを詳細に検討したところ、次のような新規の事実が明らかとなった。すなわち、上記のような一般的に考えられているスパッタリング機構よりは、むしろ気孔、粒界および加工キズ等のターゲット表面の段差の部分が入射イオンの衝突により選択的に削りとられ消耗していく方が主であり、適正な段差を設けた方が安定して大きい成膜速度が得られることが明らかとなった。この経過を示すスパッタリング前後のターゲット面の組織を図1のA,Bにそれぞれ示す。A,Bを対比すると、ターゲット表面の気孔、粒界から選択的に削り取られて消耗しているのがわかる。
【0009】
さらに、本発明者らは、ある程度までの大きさの段差はスパッタリングにより消失するが、段差が大きくなりすぎるとイオンは段差部分の面をかすめて入射することになり、段差のところでは衝突カスケードが十分に広がらず、かつ反射されるイオンが多くなり、成膜速度の低下、スパッタリング収量の低下が起こり、一方段差の部分はスパッタ残りが生じ、突起となるという過程が突起の形成機構であることを知見した。このような現象は、入射角が増加するとスパッタリング率は単調に増加し、入射角が60〜70°でスパッタリング率は最大となり、そこから90°までは急激に減少するというスパッタリング収量の入射角依存性(東京大学出版会「スパッタリング現象」1984年3月15日発行、第25〜27頁)と良く対応する。つまり段差の部分での入射角というのは70°〜90°であり、スパッタリング収量が急激に減少しスパッタ残りが生じるという現象と良く対応するのである。
ターゲット表面の段差の部分で突起が形成される様子を現す組織を図2に示す。図2は、ターゲット内に形成された段差aの部分から突起bが形成した様子を示している。また、ターゲット表面の突起の消失の過程を図5に示す。▲1▼の一度形成した約15μm前後の突起は▲2▼▲3▼▲4▼のスパッタ時間の増加に伴い削られ▲5▼ではほとんど消失しているのがわかる。図3、4に突起が形成していないターゲット表面の組織と突起が形成しているターゲット表面の組織を示す。図4に示されるターゲット表面の突起は、直径100μm程度と大きく、スパッタリングにより消失は困難である。
【0010】
本発明は、以上のような知見に基づき、ターゲット表面に適正な段差を有するインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットを見いだしたものである。すなわち、本発明は、実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が2500個/mm2〜20000個/mm2であるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットである。ターゲットの結晶粒径は80μm以下であることが望ましい。また、ターゲットの表面粗さRmaxは5μm〜50μmであることが望ましい。さらに焼結体の密度は6.6g/cm3以上であることが望ましい。
さらにITO焼結体の組織を制御することにより、スパッタリング中の成膜速度やスパッタ電圧の変化等の成膜条件の不安定化が発生することなく品質の高いITO膜を安定して得ることのできるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットが得られる。
したがって、本発明は、実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、In:Sn=10:1〜22:1である主相を有し、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が20000個/mm2以下であるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットである。
また、本発明は、実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、主相とIn:Sn=1.6:1〜3.0:1からなる第2相とを有し、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が20000個/mm2以下であるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットである。
【0011】
【作用】
本発明において、ITO膜用ターゲットの単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数を20000個/mm2以下としたのは、20000個/mm2を越えると突起が形成される段差の数が多くなり、ターゲット面から反射されるイオンが多く、成膜速度の低下の度合いが大きく、安定した膜特性が得られず、突起が形成しやすくターゲットの寿命も短くなるためである。気孔数が2500個/mm2未満になると入射イオンの衝突により選択的に削り取られる段差の部分が少なく成膜速度が小さくなり、膜特性が安定しにくい。ただし、焼結体の組織によっては2500個/mm2未満であっても突起は形成しにくく、安定した成膜速度かつ長寿命を有するターゲットが得られる場合があり、それについては後述する。さらに、より好ましい気孔数としては15000個/mm2以下である。
なお、気孔径が3μm未満の場合は問題となる突起が形成される段差にはならないが、その段差が小さいため充分な成膜速度が得られないので、気孔径を3μm以上とした。また、焼結体内に存在する気孔径を3μm〜25μmとするとにより、さらに安定した成膜速度が得られ望ましい。
【0012】
また、本発明において、ITO膜用のターゲット焼結体の最大結晶粒径を80μm以下としたのは、以下の理由による。すなわち、成膜条件、膜特性等に影響を及ぼすのは通常80μmを越える大きさの突起であり、最大結晶粒径が80μmを越えると結晶粒径間の粒界に形成される段差によりスパッタ残りが生じターゲットの寿命を左右する突起が形成しやすくなるからである。最大結晶粒径が80μm以下の場合は、スパッタ残りによる小さな突起が一旦形成してもその後のスパッタにより消失し、ターゲット寿命に影響を及ぼさず、安定した成膜条件となり膜特性も安定する。より安定した膜特性を得るためには、最大結晶粒径を50μm以下とするのが好ましく、結晶粒径を最大結晶粒径の10分の1〜最大結晶粒径の範囲に制御することが望ましい。
【0013】
前述の気孔数、結晶粒径に加え、さらに表面粗さをRmaxが5μm〜50μmとしたのは、Rmaxが5μm未満であると面が平坦すぎるために小さい成膜速度しか得られず、大きい成膜速度を安定して得るのは難しい。またRmaxが50μmを越えると段差が大きくなりすぎて、イオンは表面をかすめて入射することになり成膜速度が低下し、さらには段差のところでスパッタ残りが生じ突起が形成されるためターゲットの寿命は短くなり、安定した寿命を有しでかつ長寿命のターゲットにはならない。突起の形成はターゲット内の最大の段差が影響を及ぼすため、表面粗さとしてはRmaxにて規定する必要がある。
【0014】
さらに焼結体密度が90%未満であると気孔数を20000個/mm2以下に制御するのが困難となり、かつサイズの大きい気孔が多くなることにより、突起が形成しやすくなりターゲットの寿命が短くなる。より好ましい焼結体密度は95%以上である。本発明において、焼結体密度とは、酸化インジウムの理論密度7.18g/cm3と酸化スズ6.95g/cm3を用い、配合組成から計算により求めた値をその組成の理論密度とした時の相対密度のことである。
【0015】
本発明は、ターゲットの気孔径および気孔数を制御することにより長寿命かつ寿命の安定したターゲットが得られるが、さらにターゲットの組織を制御することによりスパッタリング中の成膜速度やスパッタ電圧の変化等の成膜条件の不安定化が発生することなく品質の高いITO膜を安定して得ることのできるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットが得られる。
ITO焼結体は、酸化インジウム中に酸化スズが固溶した焼結体であり、本発明においては、ITO焼結体の主相をIn:Sn=10:1〜22:1とすることが望ましい。ITO焼結体の主相がIn/Sn<10であるとSn量が多く粒内でのスズの分布が不均一となり、インジウム酸化物とスズ酸化物とのスパッタレイトの違いにより段差が生じ、またIn/Sn>22となるとSn量が少ないことによる粒内でのスズの分布の不均一さがスパッタレイトの差により段差となり突起が形成される。また、ITO焼結体の第2相をIn:Sn=1.6:1〜3.0:1に制御することにより、スパッタされるSn量が一定となり、安定した膜特性が得られる。
ITO焼結体の主相をIn:Sn=10:1〜22:1とした場合、または第2相をIn:Sn=1.6:1〜3.0:1とした場合、さらには主相および第2相を前記範囲に制御した場合、ターゲットの3μm以上の気孔数が2500個/mm2未満であっても成膜速度は小さいが、安定した膜特性が得られる。
ただし、主相、第2相以外の相、例えば第3相としてIn:Sn=1.6:1よりもSnの多い相が焼結体中に存在したとしても、面積比にて第2相より少なければ膜特性に与える影響は少なく、許容される。
【0016】
したがって、本発明は、実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、In:Sn=10:1〜22:1である主相を有し、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が20000個/mm2以下であるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットである。
また、本発明は、実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、主相とIn:Sn=1.6:1〜3.0:1からなる第2相とを有し、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が20000個/mm2以下であるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットである。
なお、酸化スズの固溶量は各結晶粒子中のスズ量をSEM−EDXにて分析することによりわかる。
【0017】
本発明のインジウム、スズおよび酸化物からなる焼結体とするためには、例えば平均粒径が20nmの酸化インジウム粉末と平均粒径が50nmの酸化スズ粉末を重量比で99:1〜90:10となる混合粉末を成形し成形密度 3.6g/cm3程度の成形体を得る。その成形体を、非還元性の雰囲気中で焼結する。例えば大気中、酸素雰囲気中、Ar等の不活性ガス雰囲気中でよい。焼結温度は1200℃〜1700℃がよい。1200℃より低いと緻密化が充分でなく気孔数が多くなる。また、1700℃を越えると酸化物の分解により気孔数が多くなると同時に結晶粒径も大きくなる。さらに、気孔数、主相と第2相の組織を制御するためには、1000℃以上での昇温速度を30℃/h以上、冷却時の降温速度を30℃/h以上とするのが好ましい。昇温速度を30℃/h未満であると酸化物の分解が進行し気孔数が多くなり、また冷却時の降温速度を30℃/h未満とすると第2相がIn/Sn<1.6に、主相がIn/Sn>23になり易くなる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
平均粒径が20nmの酸化インジウム粉末と平均粒径が50nmの酸化スズ粉末を重量比で95:5または90:10となるように成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を得た。次にその混合粉末を金型に充填し、一軸加圧にて成形圧力0.5ton/cm2で予備成形した後CIPにて成形圧力2ton/cm2で加圧し成形体を得た。次いで酸素濃度70%の酸素雰囲気中で焼結した。焼結条件を変えて異なる単位面積当たりの気孔数を有するターゲットを得た。得られたターゲットの3μm以上の気孔数およびそのターゲットを用いてスパッタリングを行った結果を表1に示す。なお、表1に示すターゲトの最大結晶粒径は40〜60μm、密度は90%以上、Rmaxは5〜20μmであり、焼結体の組織は、主相がIn:Sn=9:1、第2相がIn:Sn=1.5:1であった。なお、No.3〜8が本発明例であり、No.1、2および9は比較例である。
スパッタリング条件は、次の通りである。バッチ式スパッタリング装置により下記条件でITO膜を形成する実験を行った。
スパッタ電力 1.0W/cm2
スパッタガス組成 99%アルゴン+1%酸素の混合ガス
スパッタガス圧 1Pa
基板温度 25℃
スパッタリング開始から2時間後と30時間後の成膜速度と抵抗率とさらにスパッタリングを行ったときの突起の形成より判断したターゲットの寿命を評価した。
【0020】
表1に示すように、本発明ターゲットはスパッタリング30時間後においても成膜速度及び抵抗率がほとんど変化せず極めて安定して低抵抗のITO薄膜が得られ、さらに継続して行ったスパッタリングによりターゲットの寿命は長くかつ安定していることが明らかであった。
これに対して、比較例であるNo.1,2のターゲットは初期(2時間後)の成膜速度が遅く、膜の抵抗率が変化していることがわかる。また、No.9のターゲットは、長期のスパッタリングには耐えられず、寿命の短いターゲットであった。
【0021】
【表1】
【0022】
(実施例2)
平均粒径が20nmの酸化インジウム粉末と平均粒径が50nmの酸化スズ粉末を重量比で95:5または90:10となるように成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を得た。次にその混合粉末を金型に充填し、一軸加圧にて成形圧力0.5ton/cm2で予備成形した後CIPにて成形圧力2ton/cm2で加圧し成形体を得た。次いで酸素濃度70%の酸素雰囲気中で焼結した。焼結条件を変えて、最大結晶粒径および異なる単位面積当たりの気孔数を有するターゲットを得た。得られたターゲットを用いてスパッタリングを行った結果を表2に示す。なお、表2に示す試料の密度は90%以上、Rmaxは5〜30μmであり、焼結体の組織は、主相がIn:Sn=9:1、第2相がIn:Sn=1.5:1であった。また、表2中の気孔数は、直径3μm以上の気孔数である。
表2より、最大結晶粒径を6〜35μmに制御することにより、ターゲットの寿命が長くなることがわかる。
【0023】
【表2】
【0024】
(実施例3)
平均粒径が20nmの酸化インジウム粉末と平均粒径が50nmの酸化スズ粉末を重量比で95:5または90:10となるように成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を得た。次にその混合粉末を金型に充填し、一軸加圧にて成形圧力0.5ton/cm2で予備成形した後CIPにて成形圧力2ton/cm2で加圧し成形体を得た。次いで酸素濃度70%の酸素雰囲気中で焼結した。焼結条件を変えて、最大結晶粒径および異なる単位面積当たりの気孔数を有するターゲットを得た。得られたターゲットを用いてスパッタリングを行った結果を表3に示す。なお、表3に示す試料の密度は90%以上であり、焼結体の組織は、主相がIn:Sn=9:1、第2相がIn:Sn=1.5:1であった。また、表3中の気孔数は、直径3μm以上の気孔数である。
表3より、Rmaxが70μmと大きくなるとターゲットの寿命が少し短くなることがわかる。
【0025】
【表3】
【0026】
(実施例4)
平均粒径が20nmの酸化インジウム粉末と平均粒径が50nmの酸化スズ粉末を重量比で95:5または90:10となるように成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を得た。次にその混合粉末を金型に充填し、一軸加圧にて成形圧力0.5ton/cm2で予備成形した後CIPにて成形圧力2ton/cm2で加圧し成形体を得た。次いで酸素濃度70%の酸素雰囲気中で焼結した。焼結条件を変えて、最大結晶粒径および異なる単位面積当たりの気孔数を有するターゲットを得た。得られたターゲットを用いてスパッタリングを行った結果を表4に示す。なお、表4に示す試料の最大結晶粒径は40〜60μm、Rmaxは5〜40μmであり、焼結体の組織は、主相がIn:Sn=9:1、第2相がIn:Sn=1.5:1であった。また、表4中の気孔数は直径3μm以上の気孔数である。
表4より、密度が90%未満であると3μm以下の気孔数を20000個/mm2以下に制御するのが困難となり、ターゲットの寿命が短くなることがわかる。
【0027】
【表4】
【0028】
(実施例5)
平均粒径が20nmの酸化インジウム粉末と平均粒径が50nmの酸化スズ粉末を成型用バインダーとともに均一に混合し混合粉末を得た。次にその混合粉末を金型に充填し、一軸加圧にて成形圧力0.5ton/cm2で予備成形した後CIPにて成形圧力2ton/cm2で加圧し成形体を得た。次いで1400〜1600℃、1気圧、酸素濃度80%の雰囲気中で焼結した。試料33、34、36〜43については、1000℃以上での昇温速度2℃/min、冷却時の降温速度2℃/minの焼結条件で焼結を行った。焼結温度を変えて、最大結晶粒径および異なる単位面積当たりの気孔数を有するターゲットを得た。得られたターゲットを用いてスパッタリングを行った結果を表5に示す。なお、表5に示す試料の最大結晶粒径は10〜30μm、Rmaxは5〜30μm、密度は90%以上であった。また、表5中の気孔数は直径3μm以上の気孔数である。
表5より、主相、第2相を制御することにより、ターゲットの寿命が長くなることがわかる。これは、ターゲットの組成と組織が均一なことに起因して突起の形成が遅れためと考えられる。また、主相、第2相を制御することにより、3μm以上の気孔数が2500個/mm2以下であっても成膜速度は遅いが安定した成膜速度および膜の抵抗率が得られることがわかる。
表5の試料No.41、43のターゲットの組織写真を図6、図7に示す。図6において、結晶粒は大部分が主相であり、黒色部および白色部が気孔である。図7において、ライトグレーの相が主相、ダークグレーの相が第2相、黒色部および白色部が気孔である。
【0029】
【表5】
【0030】
【発明の効果】
本発明によると、安定した寿命を有し、かつ長寿命のインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットが得られる。また、スパッタリング中の成膜速度やスパッタ電圧の変化等の成膜条件の不安定化が発生することなく品質の高いITO膜を安定して得ることのできるインジウム・スズ酸化物膜用ターゲットが得られる。これにより、ターゲットをとりだしてターゲットのスパッタリング表面を再研磨してターゲットの表面粗さを整えるという作業を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)スパッタリング前のターゲット表面を示す金属組織写真である。
(B)スパッタリング後のターゲット表面を示す金属組織写真である。
【図2】ターゲット表面の段差での突起形成過程を示す金属組織写真である。
【図3】本発明ターゲットである試料No.4の30時間後のスパッタリング面の金属組織写真である。
【図4】比較例ターゲットである試料No.9の30時間後のスパッタリング面の金属組織写真である。
【図5】突起の消失過程を示す金属組織写真である。
【図6】本発明ターゲットである試料No.41の金属組織写真である。
【図7】本発明ターゲットである試料No.43の金属組織写真である。
Claims (6)
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が2500個/mm2〜20000個/mm2であることを特徴とするインジウム・スズ酸化物膜用ターゲット。
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、最大結晶粒径が80μm以下である請求項1に記載のインジウム・スズ酸化物用ターゲット。
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、表面粗さRmaxが5μm〜50μmである請求項1または2に記載のインジウム・スズ酸化物膜用ターゲット。
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、焼結体密度が90%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいづれかに記載のインジウム・スズ酸化物膜用ターゲット。
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、In:Sn=10:1〜22:1である主相を有し、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が20000個/mm2以下であることを特徴とするインジウム・スズ酸化物膜用ターゲット。
- 実質的にインジウム、スズおよび酸素からなる焼結体であり、主相とIn:Sn=1.6:1〜3.0:1からなる第2相とを有し、単位面積当たりに存在する直径3μm以上の気孔数が20000個/mm2以下であることを特徴とするインジウム・スズ酸化物膜用ターゲット。
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