JP2002275624A - 透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲット、その製造方法、及びそれより得られる透明導電性薄膜 - Google Patents

透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲット、その製造方法、及びそれより得られる透明導電性薄膜

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JP2002275624A
JP2002275624A JP2001077587A JP2001077587A JP2002275624A JP 2002275624 A JP2002275624 A JP 2002275624A JP 2001077587 A JP2001077587 A JP 2001077587A JP 2001077587 A JP2001077587 A JP 2001077587A JP 2002275624 A JP2002275624 A JP 2002275624A
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conductive thin
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Takayuki Abe
能之 阿部
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スパッタリング法を適用できる基板の範囲
を広げ、安価なガラス基板やプラスチック樹脂フィルム
等にも比抵抗が1.5×10−4Ω・cm以下の透明導
電性薄膜を形成することができる新規な組成の透明導電
性薄膜形成用ターゲット、その製造方法、及び該ターゲ
ットより得られる透明導電性薄膜の提供。 【解決手段】 酸化インジウム、酸化スズ、及び酸化モ
リブデンを含有し、酸化スズと酸化モリブデンの割合
が、各々、スズ/インジウム原子数比で0.030〜
0.140、モリブデン/インジウム原子数比で0.0
40〜0.240であり、かつスズとモリブデンとが酸
化インジウム中に実質的に均一に分散していることを特
徴とする透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲット、その
製造方法、及びそれより得られる透明導電性薄膜により
提供。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明導電性薄膜形
成用焼結体ターゲット、その製造方法、及びそれより得
られる透明導電性薄膜に関し、さらに詳しくは、酸化イ
ンジウム、酸化スズ、及び酸化モリブデンを含有する透
明導電性薄膜形成用焼結体ターゲット、その製造方法、
及び、該焼結体ターゲットより得られ、電極、熱線反射
膜、帯電防止膜等として有用な低抵抗の透明導電性薄膜
に関する。
【0002】
【従来の技術】透明導電性薄膜は、高い導電性と可視光
領域での高い透過率とを有するため、太陽電池、液晶表
示素子、その他各種受光素子等の電極として利用されて
いるばかりでなく、自動車や建築物の窓ガラス等の熱線
反射膜、各種の帯電防止膜、冷凍ショーケース等の防曇
用の透明発熱体としても利用されている。
【0003】透明導電性薄膜には、アンチモンやフッ素
がドーピングされた酸化スズ(SnO)膜や、アルミ
ニウムやガリウムがドーピングされた酸化亜鉛(Zn
O)膜や、スズがドーピングされた酸化インジウム(I
)膜等が広範に利用されている。特に、スズが
ドーピングされた酸化インジウム膜、即ちIn
Sn系膜は、ITO(Indium tin oxid
e)膜と称され、低抵抗の膜が容易に得られることから
汎用されている。
【0004】透明導電性薄膜の形成方法としては、真空
蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等
が挙げられるが、スパッタリング法が、蒸気圧の低い材
料を用いて被成膜物質(以下、「基板」と称す。)上に
膜を形成する場合や精密な膜厚制御が必要とされる場合
に有効な手法であること、操作が非常に簡便であること
から広範に利用されている。
【0005】スパッタリング法は、一般に、約10Pa
以下のアルゴンガス圧下で、基板を陽極、ターゲットを
陰極とし、これらの間にグロー放電を起こしてアルゴン
プラズマを発生させる。このプラズマ中のアルゴン陽イ
オンを陰極のターゲットに衝突させてターゲット成分の
粒子を弾き飛ばし、この粒子を基板上に堆積させて成膜
するというものである。スパッタリング法は、アルゴン
プラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用い
るものは高周波スパッタリング法、直流プラズマを用い
るものは直流スパッタリング法という。また、ターゲッ
トの裏側にマグネットを配置してアルゴンプラズマをタ
ーゲット直上に集中させ、アルゴンイオンの衝突効率を
上げて低ガス圧下でも成膜可能としたものをマグネトロ
ンスパッタ法という。通常、上記の透明導電性薄膜の形
成法には直流マグネトロンスパッタ法が採用されてい
る。
【0006】ところで、スパッタリング法には、上記の
ように、膜の均一性が高い、膜質の制御が容易である、
生産性が高い等の多くの利点があるものの、従来のIn
−Sn系のITO膜形成用焼結ターゲットは、焼
結性に劣るために高密度のものが得られず、強度不足で
成膜中に割れが発生しやすい、また、成膜速度が遅く、
かつスパッタ状態が不安定になるという問題があった。
さらに、従来のIn−Sn系のITO膜形成用タ
ーゲットを用いて基板表面に膜を形成する場合、低抵抗
のITO膜を得るには、成膜時の基板温度を上げて、具
体的には150℃を越える温度にして膜の結晶性を向上
させる必要があるため、耐熱性の低いガラス基板、プラ
スチック樹脂フィルム等に低抵抗のITO膜(例えば、
1.5×10−4Ω・cm以下)を形成することは困難
であり、スパッタリング法を適用できる基板の範囲が制
限されるという問題があった。これらを解決するため、
例えば、特開平5−70943号公報では、In
−Sn系の焼結ターゲット材に第3成分としてZnOを
含有させることにより、また特開平7−316803号
公報では、In、Sn及びアミノ酸を含む硝酸系溶液を
加熱して得られた粉末を原料として用いることにより、
焼結性を向上させてターゲットを高密度化させ、低抵抗
値の透明導電性薄膜を得ることが検討されているが、ス
パッタリング法を適用できる基板の範囲を広げるために
成膜時の基板温度を低下させることについては何ら検討
されていない。
【0007】このため、例えば液晶表示装置の製造コス
トの低減を図るべく、スパッタリング法を適用できる基
板の範囲を広げ、安価なガラス基板、プラスチック樹脂
フィルム等にも低抵抗のITO膜(例えば、1.5×1
−4Ω・cm以下)を形成することができるITO膜
形成用ターゲットの開発が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の従来技術の問題点に鑑み、スパッタリング法を適用で
きる基板の範囲を広げ、安価なガラス基板やプラスチッ
ク樹脂フィルム等にも比抵抗が1.5×10−4Ω・c
m以下の透明導電性薄膜を形成することができる新規な
組成の透明導電性薄膜形成用ターゲット、その製造方
法、及び該ターゲットより得られる透明導電性薄膜を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成するために鋭意研究を重ねた結果、従来の酸化イン
ジウムと酸化スズとから構成される透明導電性薄膜形成
用焼結体ターゲットに酸化モリブデンを添加すると、基
板温度を150゜C以下としても、比抵抗が1.5×1
−4Ω・cm以下の透明導電性薄膜が得られることを
見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明の第1の発明によれば、酸化
インジウム、酸化スズ、及び酸化モリブデンを含有し、
酸化スズと酸化モリブデンの割合が、各々、スズ/イン
ジウム原子数比で0.030〜0.140、モリブデン
/インジウム原子数比で0.040〜0.240であ
り、かつスズとモリブデンとが酸化インジウム中に実質
的に均一に分散していることを特徴とする透明導電性薄
膜形成用焼結体ターゲットが提供される。
【0011】また、本発明の第2の発明によれば、第1
の発明において、焼結体ターゲットの相対密度が90%
以上であることを特徴とする透明導電性薄膜形成用焼結
体ターゲットが提供される。
【0012】また、本発明の第3の発明によれば、第1
の発明において、スズとモリブデンとが酸化インジウム
のインジウムサイトに置換固溶していることを特徴とす
る透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲットが提供され
る。
【0013】一方、本発明の第4の発明によれば、酸化
インジウム、酸化スズ、及び酸化モリブデンとを混合
し、成形、焼結した後、焼結体を成形することを特徴と
する第1〜第3のいずれかの発明の透明導電性薄膜形成
用焼結体ターゲットの製造方法が提供される。
【0014】さらに、本発明の第5の発明によれば、第
1〜第3のいずれかの発明の焼結体ターゲットより得ら
れる薄膜であって、酸化インジウム、酸化スズ、及び酸
化タングステンを含有し、酸化スズと酸化モリブデンの
割合が、各々、スズ/インジウム原子数比で0.030
〜0.140、モリブデン/インジウム原子数比で0.
040〜0.240であり、かつスズとモリブデンとが
酸化インジウム中に実質的に均一に分散していることを
特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0015】また、本発明の第6の発明によれば、第5
の発明において、比抵抗が1.5×10−4Ω・cm以
下であることを特徴とする透明導電性薄膜が提供され
る。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】1.透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲッ
ト 本発明の焼結体ターゲットは、酸化インジウム、酸化ス
ズ、及び酸化モリブデンを含有し、かつスズとモリブデ
ンとが酸化インジウム中に実質的に均一に分散している
ことを特徴とする。尚、「実質的に均一に分散してい
る」とは、該ターゲットを用いてスパッタリング法で透
明導電膜を得た場合に、均一な組成の、即ちスズとモリ
ブデンとが酸化インジウム中に実質的に均一に分散して
いる透明導電膜が得られる程度に分散しているというこ
とを意味する。
【0018】焼結体ターゲットの組成としては、酸化イ
ンジウムを主成分とし、酸化スズをスズ/インジウム原
子数比で0.030〜0.140の割合で、酸化モリブ
デンをモリブデン/インジウム原子数比で0.040〜
0.240の割合で含有させることが好ましい。酸化ス
ズ及び酸化モリブデンの含有される割合が上記範囲を逸
脱すると、膜の比抵抗が1.5×10−4Ω・cmを超
え、目的とする低抵抗の透明導電性薄膜が得られない。
【0019】また、焼結体ターゲットは、成膜速度、得
られる膜質等の点から、焼結性を向上させて可能な限り
高密度化し、相対密度を90%以上とすることが好まし
い。相対密度が90%未満になると、成膜速度が遅くな
り、また、長時間スパッタリングした場合に、エロージ
ョン近傍にノジュールと呼ばれる突起物が発生し、成膜
中にアーキングが起こりやすくなる。成膜中にアーキン
グが起こると、膜質が悪化し、得られる透明導電性薄膜
の抵抗値が高くなる。
【0020】さらに、スズやモリブデンがターゲット内
に組み込まれる形態は、酸化スズ(SnO、SnO
Sn)や酸化モリブデン(MoO、MoO
Mo )として分散してもよく、酸化インジウム−
酸化スズや酸化インジウム−酸化モリブデン間の複合酸
化物として分散してもよいが、スズやモリブデン原子が
酸化インジウムのインジウムサイトに置換固溶し、酸化
インジウム焼結体中に原子レベルで分散している形態
が、スパッタリングにおいて放電も安定であり、均質な
低抵抗の膜が得られるので好ましい。
【0021】一方、本発明の焼結体ターゲットの製造方
法としては、所定量の酸化インジウム、酸化スズ、及び
酸化モリブデンを混合した混合物を用いる以外は特に制
限されず、公知の方法を用いて、上記3成分を混合、成
形、焼結した後、焼結体を成形することにより焼結体タ
ーゲットを製造することができる。尚、焼結体ターゲッ
トには、本発明の目的を損なわない範囲で、上記3成分
以外の成分が添加されてもよい。
【0022】2.透明導電性薄膜 本発明の透明導電性薄膜は、酸化インジウム、酸化ス
ズ、及び酸化モリブデンを含有し、酸化スズと酸化モリ
ブデンの割合が、各々、スズ/インジウム原子数比で
0.030〜0.140、モリブデン/インジウム原子
数比で0.040〜0.240であり、かつスズとモリ
ブデンとが酸化インジウム中に実質的に均一に分散して
いることを特徴とする。
【0023】透明導電性薄膜の形成方法としては、上記
の本発明の焼結体ターゲットを用いる以外は特に制限さ
れず、透明導電膜の形成法として広範に利用されている
スパッタリング法を用い、対象とする基板の許容温度に
合わせて基板温度を例えば150゜C以下に設定して、
透明導電性薄膜を形成することができる。また、本発明
の焼結体ターゲットを用いることにより、以下に述べる
相乗効果が発現し、比抵抗が1.5×10−4Ω・cm
以下の透明導電性薄膜を得ることができる。
【0024】一般に酸化インジウム系透明導電薄膜はn
型半導体であり、その比抵抗は、一般にキャリア電子の
密度と移動度で決定され、密度と移動度が大きいほど比
抵抗は下がる。ここで、酸化インジウムにスズが固溶さ
れると、キャリア電子の発生量は増加するが移動度が低
下するため、低抵抗値を与えるスズ固溶量の適量値が存
在することとなるが、本発明者の研究の結果、酸化イン
ジウムに適量のモリブデンを固溶させると移動度の低下
を抑制できることが見出され、さらに低い抵抗値を与え
るスズ固溶量を求めることが可能となった。即ち、スズ
とモリブデンとを酸化インジウムに適量ドープすること
により、酸化インジウムにスズとモリブデンとが固溶さ
れ、その相乗効果により、従来のIn−Sn系
(ITO)薄膜に比べて低い、1.5×10−4Ω・c
m以下という抵抗値を有する透明導電性薄膜を実現する
ことが可能となった。
【0025】
【実施例】以下に、本発明の実施例及び比較例を示す
が、本発明は、これらの実施例によって何ら限定される
ものではない。
【0026】(実施例1〜20)Sn/InとMo/I
nとを表1に示す値とし、スズとモリブデンを含有する
透明導電性薄膜用焼結体ターゲットを以下の手順で作製
した。尚、原料粉末としては、何れも平均粒径が1μm
以下のIn粉末、SnO粉末、MoO粉末を
使用した。先ず、所定量のIn粉末、SnO
末、MoO粉末を秤量、混合した後、樹脂製ポットに
入れて水を媒体として湿式ボールミル混合した。その
際、硬質ZrOボールを用い、混合時間を20時間と
した。その後、混合スラリーを取り出し、濾過、乾燥・
造粒した。得られた造粒物を成形型に入れ、冷間静水圧
プレスで3ton/cmの圧力をかけて所定形状に成
形して成形体を得た。次に、得られた成形体をそれぞれ
次の手順で焼結した。炉内容積0.1m当たり5リッ
トル/分の割合で焼結炉内に酸素を流入させ、1500
℃で5時間保持した。この際、1000℃までは1℃/
分、1000〜1500℃の間は3℃/分で昇温した。
その後、酸素の流入を停止し、1500℃から1300
℃までを10℃/分で降温した。その後、炉内容積0.
1m当たり10リットル/分の割合でArを流入さ
せ、1300℃で3時間保持した後、放冷した。得られ
た焼結体の密度は、水を用いたアルキメデス法に従って
測定し、理論密度から相対密度を算出した。尚、この際
の理論密度は酸素欠陥のないIn結晶(ビックス
バイト型構造)のInサイトに分析値で示された量のS
nとMoが全て置換固溶した場合の単位格子の重量と、
X線回折測定から求まる格子定数から算出した。また、
焼結体中のSnとMo含有量をICP発光分析法で定量
分析したところ、原料粉末を混合する際の仕込み組成が
維持されていることが確認できた。次に、得られたそれ
ぞれの焼結体を、スパッタ面をカップ砥石で磨き、直径
152mm、厚み5mmに加工して透明導電性薄膜用焼
結体ターゲットを得た。これを、In系合金を用いてバ
ッキングプレートに貼り合わせてスパッタリング用ター
ゲットとした。次いで、直流マグネトロンスパッタ装置
の非磁性体ターゲット用カソードに上記スパッタリング
用ターゲットを取り付け、ターゲットの対向面にガラス
基板を取り付けた。ターゲットと基板との距離を70m
mとし、チャンバ内の真空度が1×10−4Pa以下に
達した時点で、純度99.9999重量%のArガスを
チャンバ内に導入してガス圧0.5Paとし、直流電力
300Wをターゲット−基板間に投入して、直流プラズ
マを発生させてスパッタリングを実施し、150℃にヒ
ーター加熱した厚み1.1mmの#7059ガラス基板
上に約500nmの膜厚の透明導電性薄膜を形成した。
得られた透明導電性薄膜用焼結体ターゲットと透明導電
性薄膜の組成はICP発光分析で定量分析した。また、
透明導電性薄膜の比抵抗は四探針法で測定し、基板を含
めた光透過率は分光光度計で測定した。尚、使用した#
7059ガラス基板自体の可視光波長領域での平均光透
過率は92%である。また、各実施例で用いた透明導電
性薄膜用焼結体ターゲットの加工時に発生した端材を粉
砕して粉末を得、これを用いて粉末X線回折測定を実施
し、Moの存在形態を調べた。ターゲットと膜の組成、
比抵抗値の測定結果を表1に示す。
【0027】(比較例1〜22)Sn/InとMo/I
nとを表1に示す値とした以外は実施例1〜20と同様
にして透明導電性薄膜用焼結体ターゲット、透明導電性
薄膜を作製し、Moの存在形態、ターゲットと膜の組
成、比抵抗値等を測定した。ターゲットと膜の組成、比
抵抗値の測定結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】表1から明らかなように、比較例とは異な
り、本発明の焼結体ターゲットからは、1.5×10
−4Ω・cm以下の低抵抗の透明導電性薄膜が得られ
た。得られた膜を含めた基板の平均可視光透過率は89
〜91%であり透過率も良好であった。尚、比較例での
平均可視光透過率は87〜91%であった。
【0030】(実施例21、22)ターゲット中のモリ
ブデン原子の存在形態による膜の比抵抗の違いについて
調べた。密度が約95%、Sn/In原子比が0.07
3、Mo/In原子比が0.105である焼結体で、M
oがInのInサイトに完全に置換固溶して原子
レベルで分散している焼結体と、Moが一部In
焼結体中にMoO粒子の形態で分散している焼結体と
を用意し、これらを用いてスパッタリング用ターゲット
を作製した。尚、MoO粒子が分散している焼結体
は、原料の混合工程において、In粉末とSnO
粉末を十分に混合してからMoO粉末を混合し、M
oO混合時間を短くすることによって作製することが
できる。上記の成膜条件を用いて試験した結果を表2に
示す。
【0031】
【表2】
【0032】表2から明らかなように、同一の成膜条件
で作成した膜の比抵抗は、InサイトにMoが置換固溶
したターゲットの方が低い。また、MoO粒子が含ま
れているターゲットでは、成膜の際に投入パワーを上げ
ていくとアーキングが発生し始めたことから、安定に成
膜できる条件の範囲が狭い。即ち、InサイトにMoが
置換固溶したターゲットの方が、膜特性、成膜安定性の
面で好ましい。
【0033】(実施例23〜27、比較例23〜26)
焼結温度と時間を変えた以外は実施例1〜20と同様に
して、種々の密度を有する厚み5mmのターゲットを作
製し、直流プラズマを発生させて連続スパッタリングを
実施して、アーキングが多発(10回/分以上)し始め
る時のエロージョン最大深さを調べた。ターゲットとし
ては、Sn/In原子比が0.075、Mo/In原子
比が0.105の焼結体で、MoがInのInサ
イトに完全に置換固溶して原子レベルで分散しているも
のを使用した。得られた結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】表3から明らかなように、焼結体ターゲッ
トの相対密度が90%以上であると長時間のスパッタリ
ングでもアーキングが発生しない。尚、アーキングが多
発し始めた際には、ターゲットエロージョン近傍にはノ
ジュールが大量に発生しており、ノジュールの発生がな
い場合の膜に比べて、得られた膜の比抵抗は大幅に悪化
していた。
【0036】(実施例28)ガラス基板の代わりにポリ
エチレンテレフタレートフィルムを用い、この表面にス
パッタ成膜した。その際、基板はヒーター加熱せず、ま
たスパッタ時の自然加熱による影響を極力抑えるよう基
板ホルダーを工夫して、成膜時の最高温度が50℃以下
になるようにした。基板の温度以外は全て実施例1〜2
0と同様にして成膜を行った。密度が約95%、Sn/
In原子比が0.070、Mo/In原子比が0.10
3031である焼結体ターゲットを用いたところ、膜の
比抵抗は1.2×10−4Ωcmと非常に低かった。
【0037】(従来例)比較のために従来広範に用いら
れているSnを10wt%添加したInターゲッ
ト(Mo無添加せ)を用いて同一の条件で膜を形成した
ところ、比抵抗は2.5×10−4Ωcmとなった。
【0038】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の透明導電
性薄膜形成用ターゲットによれば、スパッタリング法を
適用できる基板の範囲が広がり、安価なガラス基板やプ
ラスチック樹脂フィルム等にも、従来のIn−S
n 系(ITO)薄膜に比べて低い、比抵抗が1.5×
10−4Ω・cm以下のITO膜を安定に形成すること
ができる。本発明の低抵抗の透明導電性薄膜は、電極、
熱線反射膜、帯電防止膜等として有用であり、その工業
的価値は極めて高い。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化インジウム、酸化スズ、及び酸化モ
    リブデンを含有し、酸化スズと酸化モリブデンの割合
    が、各々、スズ/インジウム原子数比で0.030〜
    0.140、モリブデン/インジウム原子数比で0.0
    40〜0.240であり、かつスズとモリブデンとが酸
    化インジウム中に実質的に均一に分散していることを特
    徴とする透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲット。
  2. 【請求項2】 焼結体ターゲットの相対密度が90%以
    上であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性
    薄膜形成用焼結体ターゲット。
  3. 【請求項3】 スズとモリブデンとが酸化インジウムの
    インジウムサイトに置換固溶していることを特徴とする
    請求項1に記載の透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲッ
    ト。
  4. 【請求項4】 酸化インジウム、酸化スズ、及び酸化モ
    リブデンを混合し、成形、焼結した後、焼結体を成形す
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載
    の透明導電性薄膜形成用焼結体ターゲットの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼
    結体ターゲットより得られる薄膜であって、酸化インジ
    ウム、酸化スズ、及び酸化モリブデンを含有し、酸化ス
    ズと酸化モリブデンの割合が、各々、スズ/インジウム
    原子数比で0.030〜0.140、モリブデン/イン
    ジウム原子数比で0.040〜0.240であり、かつ
    スズとモリブデンとが酸化インジウム中に実質的に均一
    に分散していることを特徴とする透明導電性薄膜。
  6. 【請求項6】 比抵抗が1.5×10−4Ω・cm以下
    であることを特徴とする請求項5に記載の透明導電性薄
    膜。
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