JP3586556B2 - ベータアルミナ電解質の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はナトリウムイオンをキャリアとして作動するナトリウム−硫黄電池及びナトリウム−溶融塩電池等の二次電池あるいはアルカリ金属熱電変換電池等の固体電解質として用いるベータアルミナの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
べータアルミナ電解質はナトリウムイオン導電性が高いために、ナトリウムイオンをキャリアとする各種電池の電解質として利用されている。そして、この電解質は電池の内部抵抗のかなりの部分を占めるため、高導電性でかつ高強度を示す緻密焼結体が望ましい。また、焼結を行う高温時、例えば1700℃で揮発しやすいナトリウムを含有するために、なるべく低温で焼結する方が望ましく、さらにコスト面からも焼結温度は低い方が望ましい。
なお、ベータアルミナにはβアルミナ(理論組成Na2 O・11Al2 O3 )及びβ″アルミナ(理論組成Na2 O・5.3Al2 O3 )という2種類の結晶形が存在し、β″アルミナの方が導電性が高く電池として高性能を示すため、実用的にはβ″アルミナあるいはβ″アルミナとβアルミナの混合物が多用されている。
【0003】
β”アルミナは1580℃以上では不安定であるがMgOを添加すると1700℃程度まで安定となる。また、β”アルミナの安定化剤としてはMg2+イオンのほかにLi1+、Ni2+、Co2+イオン等があり、これらの中でもMg2+又はLi1+イオンが一般的に用いられている。Mgを添加したベータアルミナの製造方法としては種々の方法が提案されており、例えば(1)特公平6−37289号公報には、MgOが2.8〜5.4wt%、Na2 Oが8.0〜12.0wt%、残部がAl2 O3 からなる組成を有する粉末を仮焼後粉砕、造粒し、1.5ton/cm2 以上の圧力で成形して1.7g/cm3 以上の密度の成形体とした後、1580〜1650℃で焼成することを特徴とするイオン伝導抵抗率が低く、しかも曲げ強度等も大きいMgO安定化ベータアルミナの製造方法が開示されている。前記公報中にはβ”化率が70〜100%のベータアルミナが得られる実施例が記載されているが、β”化率が高いものは強度が低く、両者共に高い特性を有するベータアルミナを得るのは難しい。
また、(2)特公平6−4505号公報には、MgOが3.3〜4.9wt%、Na2 Oが8.2〜9.8wt%、残部がAl2 O3 からなる組成を有するベータアルミナ有底円筒状成形体を、焼成温度精度が±15℃のガス炉を用いて焼成することを特徴とするMgO安定化ベータアルミナ固体電解質管の製造方法が開示されている。この方法は特定組成範囲とすることにより、厳密な温度制御が可能な電気炉を使用することなく、ガス炉を用いて大規模焼成を可能としたものであるが、この方法によっても広い温度範囲(特に低温側)でβ”化率が高く、強度も高いベータアルミナを得るのは困難である。なお、この公報には焼成温度は1450〜1700℃が好ましい旨が記載されているが、実施例は1650℃のもののみである。
【0004】
(3)特開平8−208320号公報には、マグネシア−アルミナスピネルとアルミナとナトリウム化合物とを特定割合で混合し、仮焼し、得られたベータアルミナ仮焼物を粉砕、造粒成形後、1580〜1650℃で焼成し、急冷することを特徴とする高強度及び低電気抵抗のマグネシア系ベータアルミナ焼結体の製造方法が開示されているが、この方法はスピネルの製造を含めて2回の仮焼工程を含むため製品のコストアップをもたらしている。
さらに、(4)特開平8−259314号公報には、アルミニウム塩とマグネシウム塩を含有する溶液又はアルミニウム塩とマグネシウム塩の融液から、熱分解によって、より高比表面積で高活性なマグネシア−アルミナスピネルを生成し、このマグネシア−アルミナスピネルとαアルミナと炭酸ナトリウムとを混合後、造粒、成形し焼結するという方法が提案されている。
この方法ではマグネシア−アルミナスピネルを得るためにアルミニウム塩及びマグネシウム塩を用いて熱分解するという手法をとっているため、原料コストが高く、この方法もコストが高くなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術の実状に鑑み、マグネシア−アルミナスピネルを使用することなく、しかも原料の純度による影響が少なく、広範囲の温度域において、β″化率が高く、高導電性及び高強度を有するマグネシア添加ベータアルミナを安定して得ることができるベータアルミナの製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は(1)アルミニウム出発原料とナトリウム出発原料を混合し、1200〜1350℃で仮焼してベータアルミナの仮焼粉を調製後、該仮焼粉にマグネシウム出発原料を添加して粉砕・混合し、成形後1540〜1650℃で焼結することを特徴とするベータアルミナ電解質の製造方法、(2)アルミニウム出発原料、ナトリウム出発原料及びマグネシウム出発原料の使用量が、焼結後のベータアルミナ電解質のAl2 O3 /Na2 Oのモル比が5〜7、MgOの含有量が1.5〜4.5重量%となるような量であることを特徴とする前記(1)のベータアルミナ電解質の製造方法、及び(3)アルミニウム出発原料、ナトリウム出発原料及びマグネシウム出発原料の使用量が、焼結後のベータアルミナ電解質のAl2 O3 /Na2 Oのモル比が5.8〜6.4、MgOの含有量が2〜3重量%となるような量であることを特徴とする前記(1)のベータアルミナ電解質の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法においては、先ずアルミニウム出発原料とナトリウム出発原料を混合し、原料粉末を調製する。アルミニウム出発原料としては酸化アルミニウムが好ましい。また、ナトリウム出発原料としては炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩が好適に使用できる。アルミニウム出発原料とナトリウム出発原料との混合比率はAl2 O3 /Na2 Oのモル比に換算して5〜7、好ましくは5.8〜6.4の範囲となるようにする。
アルミニウム出発原料とナトリウム出発原料との混合は粉末状で混合してもよいが、アルミニウム出発原料粉末とナトリウム出発原料を水と混合し、必要により分散剤を添加して湿式混合するのが好ましい。
【0008】
アルミニウム出発原料とナトリウム出発原料を混合後、必要により乾燥、粉砕したのち、1200〜1350℃で仮焼してβ″化率(全結晶相中に占めるβ″アルミナの割合)の高い仮焼粉を得る。仮焼温度が1200℃未満ではβ″化率が低いため焼結体のβ″化率も低く、導電性が下がり、1350℃を超えるとナトリウムの飛散に伴いβ″化率が低くなり、また、仮焼粉の焼結が進み、粉砕が困難又は長時間を要するようになるので好ましくない。
ちなみに、高純度原料を使用した場合、アルミナと炭酸ナトリウムのみを混合後、仮焼した場合、β″化率は80〜90%程度であるが、アルミナ、炭酸ナトリウム及びマグネシアを混合後、仮焼した場合は40〜60%程度となる。工業原料を用いた場合には前者が60〜80%程度、後者が30〜50%程度となる。
【0009】
このようにして得られた仮焼粉は粒成長しているため、焼結性を向上させるために粉砕する必要がある。この仮焼粉の粉砕の際にマグネシウム出発原料を添加し、粉砕と同時に混合を行う。この粉砕・混合はマグネシウム出発原料と水を添加してスラリとし、湿式粉砕・混合とするのが好ましい。
マグネシウム出発原料としては酸化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩が好適に使用できる。マグネシウム出発原料の添加割合は仮焼粉100重量部に対し1.5〜4.5重量部、特に2〜3重量部の範囲とするのが好ましい。マグネシウム出発原料の添加割合が1.5重量部未満では焼結体のβ″化率が90%以下となり、イオン導電性が低下する。また、4.5重量部を超えると焼結体の密度が低くなり、イオン導電性が低下し、強度も低下する。
【0010】
前記により仮焼粉にマグネシウム出発原料を添加して湿式粉砕・混合して得られた混合物を所定の形状に成形し、1540〜1650℃に加熱して焼結し、ベータアルミナ焼結体(ベータアルミナ電解質)を得ることができる。前記混合物がスラリの形で得られた場合には、スプレードライヤにより乾燥、造粒することによってより成形が容易となる。焼結温度が1540℃未満では焼結体の密度が低くなりイオン導電性が低下し、強度も低下する。また、1650℃を超えると過焼結による粗大粒子が生成し、強度が低下するので好ましくない。
なお、1540〜1560℃の低温域で焼成して高品質のベータアルミナを得るためには、アルミニウム出発原料、ナトリウム出発原料及びマグネシウム出発原料の使用量を、焼結後のベータアルミナ電解質のAl2 O3 /Na2 Oのモル比が5.8〜6.4、MgOの含有量が2〜3重量%となるようにしておくのが望ましい。
得られるベータアルミナ焼結体のβ″化率は、高純度原料を使用した場合で93〜99%程度(MgOの含有量が2重量%以上であれば95〜99%程度)、工業原料を使用した場合で92〜97%程度である。
【0011】
本発明の方法では、先ずアルミニウム出発原料とナトリウム出発原料のみを混合して仮焼するため、β″化率の高い仮焼粉を得ることができる。したがって、安定化剤である酸化マグネシウムを加えた後、再び仮焼する必要はなく仮焼工程は1回でよい。また、仮焼粉のβ″化率を高くすることによって焼結体のβ″化率も高くなるので、始めからアルミニウム出発原料、ナトリウム出発原料及びマグネシウム出発原料を混合して仮焼する場合に比較して低温側に広い温度域で焼成しても、β″化率が高く高導電性、高強度のベータアルミナを得ることができる。さらに、マグネシウム出発原料として従来技術における高比表面積で高活性なアルミナ−マグネシアスピネルを用いる必要がなく、市販の酸化マグネシウム等を用いてもβ″化率が高く低抵抗のβ″アルミナ主体のベータアルミナ焼結体を得ることができる。ベータアルミナは組織が粗大(粒成長)なほどその導電率は増加するが、その強度は低下するという一般的な傾向をもつが、本発明の方法によれば、粗大粒子が生成しない焼成条件でもβ″化率が高く高導電性であり、また、微細な組織を持つために高強度のβ″アルミナ主体のベータアルミナ焼結体を得ることができる。
【0012】
さらに、アルミニウム出発原料である酸化アルミニウムとナトリウム出発原料のみを先に混合、仮焼して反応させるため、用いる酸化アルミニウムには、高純度(99.9%以上)のものに限らず、低純度(99.5%以上)の工業原料を使用してもβ″化率が高く高導電性のβ″アルミナ焼結体を得ることができる。すなわち、工業原料酸化アルミニウムは低コストであるため、本発明の方法によれば、ベータアルミナ電解質の製造コストを低減することが可能となる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明の方法をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
純度99.99%の酸化アルミニウムと炭酸ナトリウムをAl2 O3 /Na2 Oモル比が6となるように秤量し、水と分散剤を加え、ボールミルで20時間湿式混合した。得られたスラリをロータリーエバポレータで濃縮後、120℃の乾燥器で1昼夜乾燥させた。この乾燥物を粉砕し、500μmのふるいを通した後、仮焼した。仮焼は200℃/時間で昇温後、1250℃で2時間保持し、200℃/時間で降温することによって行った。
【0014】
得られた仮焼粉(β″化率:88%)に対し、4重量%相当量の酸化マグネシウムを添加し、水と分散剤を加えてボールミルで45時間湿式混合した。このスラリをスプレードライヤにて乾燥、造粒した。
この造粒粉を用いて、導電率測定用及び圧環強度測定用の試料を作製した。導電率測定用の試料は4×4×20mmの金型で一軸成形後、冷間静水圧プレス(CIP)で1.5t/cm2 の圧力で2分間保持して成形した。また、圧環強度測定用の試料は外径20mm、長さ150mm、厚さ1mmのチューブ状に同条件でCIP成形した。得られた成形体を5℃/分の昇温速度で昇温し、1640℃で30分保持後、5℃/分で降温してベータアルミナ焼結体を作製した。
得られたベータアルミナ焼結体のβ″化率は99%であった。
【0015】
(比較例1)
硝酸アルミニウムと硝酸マグネシウムをアルミナとマグネシアに換算して1:1となるように秤量し、加熱しながら攪拌溶融した後、冷却して固化させた。これを1000℃で2時間熱処理し、マグネシア−アルミナスピネルを得た。得られたマグネシア−アルミナスピネルの比表面積は20m2 /gであった。このマグネシア−アルミナスピネルと純度99.99%の酸化アルミニウム、炭酸ナトリウムを実施例1と同じ組成になるように秤量し、水及び分散剤を加えてボールミルで45時間湿式混合した。このスラリをスプレードライヤにて乾燥、造粒し造粒粉を作製した。この造粒粉を使用し、実施例1と同様の方法でベータアルミナ焼結体(導電率測定用及び圧環強度測定用の試料)を作製した。
【0016】
(比較例2)
純度99.99%の酸化アルミニウムと、炭酸ナトリウム及び酸化マグネシウムをAl2 O3 /Na2 Oモル比が6、酸化マグネシウムが4重量%となるように秤量し、水と分散剤を加え、ボールミルで20時間湿式混合した。得られたスラリをロータリーエバポレータで濃縮後、120℃の乾燥器で1昼夜乾燥させた。この乾燥物を粉砕し、500μmのふるいを通した後、仮焼した。仮焼は200℃/時間で昇温後、1250℃で2時間保持し、200℃/時間で降温することによって行った。
【0017】
得られた仮焼粉のβ″化率は76%であった。この仮焼粉に水と分散剤を加えてボールミルで45時間湿式混合した。このスラリをスプレードライヤにて乾燥、造粒した。
この造粒粉を用いて、導電率測定用及び圧環強度測定用の試料を作製した。導電率測定用の試料は4×4×20mmの金型で一軸成形後、冷間静水圧プレス(CIP)で1.5t/cm2 の圧力で2分間保持して成形した。また、圧環強度測定用の試料は外径20mm、長さ150mm、厚さ1mmのチューブ状に同条件でCIP成形した。得られた成形体を5℃/分の昇温速度で昇温し、1640℃で30分保持後、5℃/分で降温してベータアルミナ焼結体を作製した。得られたベータアルミナ焼結体のβ″化率は92%であった。
【0018】
実施例1、比較例1及び2で作製した試料を用いて導電率及び圧環強度を測定した。導電率は3×3×15mmの試験片に白金電極を焼き付けて、交流4端子法で測定した。測定温度は300℃とした。圧環強度は外径20mmのチューブ状の焼結体を、長さ10mmに切り出し、JISのZ2507にしたがって測定した。測定結果を表1に示す。表1から、本発明の方法により作製したベータアルミナ焼結体(ベータアルミナ電解質)は、従来方法のアルミナ−マグネシアスピネルを使用して作製したベータアルミナ焼結体とほぼ同等の性能を有しており、同じく従来方法の最初から酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム及び酸化マグネシウムを混合して作製したベータアルミナ焼結体に比較して導電率及び圧環強度ともに優れていることがわかる。
【0019】
【表1】
【0020】
(実施例2)
純度99.99%の酸化アルミニウムの代わりに純度99.5%の工業用酸化アルミニウムを用いること以外は実施例1と同様の方法でベータアルミナ焼結体(導電率測定用及び圧環強度測定用の試料)を作製した。なお、この場合のβ″化率は仮焼粉が72%、焼結体で96%であった。
【0021】
(比較例3)
比較例1と同様の方法でマグネシウム−アルミニウムスピネルを作製し、純度99.99%の酸化アルミニウムの代わりに純度99.5%の酸化アルミニウムを用いること以外は比較例1と同様の方法でベータアルミナ焼結体(導電率測定用及び圧環強度測定用の試料)を作製した。
【0022】
(比較例4)
純度99.99%の酸化アルミニウムの代わりに純度99.5%の工業用酸化アルミニウムを用いること以外は比較例2と同様の方法でベータアルミナ焼結体を作製した。なお、この場合のβ″化率は仮焼粉が44%、焼結体で86%であった。
【0023】
実施例2、比較例3及び4で作製した試料を用いて導電率及び圧環強度を測定した。測定結果を表2に示す。表2から、本発明方法によれば純度の低い工業原料酸化アルミニウムを用いても、β″化率が高く低抵抗のベータアルミナ焼結体が得られることがわかる。
【0024】
【表2】
【0025】
(実施例3)
実施例1と同様にして得られた仮焼粉(β″化率:88%)に対し、所定量の酸化マグネシウムを添加し、水と分散剤を加えてボールミルで45時間湿式混合した。このスラリをスプレードライヤにて乾燥、造粒した。
この造粒粉を用いて、導電率測定用及び圧環強度測定用の試料を作製した。導電率測定用の試料は4×4×20mmの金型で一軸成形後、冷間静水圧プレス(CIP)で1.5t/cm2 の圧力で2分間保持して成形した。また、圧環強度測定用の試料は外径20mm、長さ150mm、厚さ1mmのチューブ状に同条件でCIP成形した。得られた成形体を5℃/分の昇温速度で昇温し、所定温度で30分保持後、5℃/分で降温してベータアルミナ焼結体を作製した。酸化マグネシウムの添加量は1.5、2、2.5、3及び4重量%の5ポイントとし、焼成温度は1520、1540、1560、1580、1600及び1640℃の6ポイントとした。
【0026】
得られた各試料について相対密度を測定するとともに、前記方法により導電率及び圧環強度の測定を行った。なお、各試料のβ″化率は酸化マグネシウム1.5重量%のもので約93%、他は95%以上であった。
図1に焼成温度と相対密度との関係を示す。これより、酸化マグネシウム添加量が2〜3重量%の範囲では焼成温度を1540℃まで下げても相対密度が97%以上であることがわかる。
図2及び図3に焼成温度1560℃及び1640℃で焼結した試料の導電率及び圧環強度と酸化マグネシウム量との関係を示す。図2及び図3より、酸化マグネシウム添加量が2〜3重量%の範囲では焼成温度を1560℃に下げても導電率、圧環強度とも低下の割合が小さく優れた特性を有していることがわかる。
【0027】
(実施例4)
酸化マグネシウム添加量を2.5重量%に固定して、Al2 O3 /Na2 Oのモル比を5.5〜7の範囲で変化させたほかは実施例3と同様に操作しベータアルミナ焼結体を作製した。得られた各試料ともβ″化率は95%以上であった。焼成温度が1540、1560及び1640℃のときの相対密度とAl2 O3 /Na2 Oモル比との関係を図4に示す。図4よりAl2 O3 /Na2 Oのモル比が6.4以下であれば焼成温度を1540℃まで下げても、相対密度が97%以上の緻密な焼結体得られていることがわかる。
また、焼成温度1560℃及び1640℃での焼結体の導電率とAl2 O3 /Na2 Oモル比との関係を図5に、焼結体の圧環強度とAl2 O3 /Na2 Oモル比との関係を図6にそれぞれ示す。図5及び図6より、Al2 O3 /Na2 Oモル比が5.8〜6.4の範囲であれば、焼成温度を下げても導電率、圧環強度とも低下の割合が小さく優れた特性を有していることがわかる。
なお、図5及び図6には焼成温度1540℃のデータは示していないが、図4に示すように1540℃における相対密度は1560℃の場合と比較して低下は小さいので、導電率及び圧環強度もほぼ同等の値が得られていることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、高コストのアルミニウム塩とマグネシウム塩を用いて作製した高活性、高比表面積のマグネシウム−アルミナスピネルを用いることなく、高導電性、高強度のベータアルミナ焼結体を得ることができる。また、純度の低い(99.5%)工業原料酸化アルミニウムを用いても導電性、圧環強度の特性低下は小さく、高導電性、高強度のベータアルミナ焼結体を得ることができる。
さらに、アルミニウム出発原料、ナトリウム出発原料及びマグネシウム出発原料の使用量を、焼結後のベータアルミナ電解質のAl2 O3 /Na2 Oのモル比が5.8〜6.4、MgOの含有量が2〜3重量%となるような範囲とすることにより、1540〜1560℃の低温焼成でも、高導電性、高強度のベータアルミナ焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3における焼成温度と相対密度との関係を示す図。
【図2】実施例3におけるMgO量と導電率との関係を示す図。
【図3】実施例3におけるMgO量と圧環強度との関係を示す図。
【図4】実施例4におけるAl2 O3 /NaO2 モル比と相対密度との関係を示す図。
【図5】実施例4におけるAl2 O3 /NaO2 モル比と導電率との関係を示す図。
【図6】実施例4におけるAl2 O3 /NaO2 モル比と圧環強度との関係を示す図。
Claims (3)
- アルミニウム出発原料とナトリウム出発原料を混合し、1200〜1350℃で仮焼してベータアルミナの仮焼粉を調製後、該仮焼粉にマグネシウム出発原料を添加して粉砕・混合し、成形後1540〜1650℃で焼結することを特徴とするベータアルミナ電解質の製造方法。
- アルミニウム出発原料、ナトリウム出発原料及びマグネシウム出発原料の使用量が、焼結後のベータアルミナ電解質のAl2 O3 /Na2 Oのモル比が5〜7、MgOの含有量が1.5〜4.5重量%となるような量であることを特徴とする請求項1に記載のベータアルミナ電解質の製造方法。
- アルミニウム出発原料、ナトリウム出発原料及びマグネシウム出発原料の使用量が、焼結後のベータアルミナ電解質のAl2 O3 /Na2 Oのモル比が5.8〜6.4、MgOの含有量が2〜3重量%となるような量であることを特徴とする請求項1に記載のベータアルミナ電解質の製造方法。
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