JP3584428B2 - 複合構造建築物の施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、梁が鉄骨造であり柱が充填鋼管コンクリート造である複合構造の建築物の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、鋼管の内部にコンクリートを充填した形態の充填鋼管コンクリート構造は、鋼管が内部のコンクリートを外側から締め付けて変形を拘束することで優れた耐力が得られるものであり、これを柱に採用するとともに梁には通常の鉄骨造を採用した複合構造の建築物が近年実用化されつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の複合構造の建築物を施工するに当たってはその有効な施工法の開発が必要であり、特に、異種の構造部材である充填鋼管コンクリート造の柱と鉄骨造の梁とを構造的に充分に一体化させかつ施工性良く接合し得る有効な手段が模索されていた。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明はこの種の複合構造建築物を施工するための有効な施工方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の施工方法が適用される複合構造建築物は、鉄骨造の梁と、鋼管の内部にコンクリートを充填した充填鋼管コンクリート造の柱からなるもので、
各階の梁と柱との接合部には、前記柱の鋼管と略同径の鋼管部と該鋼管部に固定された梁接合用のブラケットからなる仕口部材を配置して、該仕口部材の鋼管部の上下にそれぞれ前記柱の鋼管を突き合わせ、かつ該鋼管部の内部に上下の柱のコンクリートと一体をなすコンクリートを充填するとともに該コンクリート中に前記鋼管部の内部を上下に挿通して上下の柱に跨がる鉄筋を埋設した構成のものである。そして、本発明の施工方法は上記複合構造の建築物をそれぞれ以下の各工程により施工するものである。
【0010】
請求項1記載の施工方法は、
(1)前記柱の鋼管内にその上部に空間部を残した状態で予めコンクリートを充填するとともに、該コンクリート中に前記鉄筋の上部を予め埋設しておいて該鉄筋の下部を前記鋼管の下部に突出せしめた形態のプレキャスト部材を予め製作しておく工程。
(2)前記プレキャスト部材が床面上に立設されている状態から、該プレキャスト部材の上部に前記仕口部材を配置するとともに、該仕口部材のブラケットに前記梁を接合し、その上部に床型枠を設置する工程。
(3)前記仕口部材の上方に上階の柱となる他のプレキャスト部材を立設して仮支持することにより、該上階のプレキャスト部材の下部に突出している前記鉄筋の下部を前記仕口部材を挿通せしめて下階のプレキャスト部材の空間部に挿入する工程。
(4)下階のプレキャスト部材の空間部、前記仕口部材の鋼管部の内部、および前記床型枠上にコンクリートを打設する工程。
【0011】
請求項2記載の施工方法は、
(1)前記柱の鋼管内にその全長にわたって予めコンクリートを充填するとともに、該コンクリートの上部および下部にそれぞれ前記鉄筋の下部および上部を予め埋設しておいてそれら鉄筋の上部および下部をそれぞれ前記鋼管の上部および下部に突出せしめた形態のプレキャスト部材を予め製作しておく工程。
(2)前記プレキャスト部材が床面上に立設されている状態から、該プレキャスト部材の上部に前記仕口部材を配置して該プレキャスト部材の上部に突出している前記鉄筋の上部を該仕口部材に挿通せしめる工程。
(3)該仕口部材のブラケットに前記梁を接合するとともに、その上部に床型枠を設置する工程。
(4)該仕口部材の鋼管部の内部および前記床型枠上にコンクリートを打設することにより床を形成する工程。
(5)形成された床面上に突出している鉄筋に被せるようにして上階の柱となる鋼管を立設して仮支持する工程。
(6)前記鋼管の上部に仕口部材を設置するとともに該仕口部材のブラケットに梁を接合しかつその上部に床型枠を設置する工程。
(7)仕口部材の上方にさらに上階の柱となるプレキャスト部材を立設してその下部に突出している鉄筋を仕口部材を挿通せしめてその下部を前記鋼管内に挿入する工程。
(8)前記鋼管内、前記仕口部材の鋼管部の内部、前記床型枠の上部にコンクリートを打設する工程。
【0012】
また、請求項3記載の施工方法は、上記各施工方法において、前記仕口部材の上部に上階の柱の鋼管を立設して仮支持するに際し、前記仕口部材の鋼管部を前記ブラケットの上面よりも上部に突出せしめておき、該鋼管部の上端と前記柱の鋼管の下端とを突き合わせてそれらの双方に跨がるように連結具を装着して締結することで前記鋼管の仮支持を行うことを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項4記載の施工方法は、上記各施工方法において、前記仕口部材として、前記鋼管部を短管状の鋼管により形成するとともに前記ブラケットを該鋼管の外周に固定した形態のものを用いることを特徴とし、請求項5記載の施工方法は、前記仕口部材として、前記ブラケットを互いに交差させ、かつその交差部の周囲を円弧状に湾曲している鋼板により取り囲むことで鋼管部を形成した形態のものを用いることを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、請求項6記載の施工方法は、上記各施工方法において、前記仕口部材を挿通する鉄筋の上部および下部をそれぞれ上階および下階の柱の略中央部まで達するものとし、各階の柱の略中央部において上下の仕口部材を挿通している双方の鉄筋の先端部どうしを直接的にもしくは添え筋を介してラップさせるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の施工方法が適用される複合構造建築物の構造を示す図であり、(a)は立断面図、(b)は立面図、(c)は各構成要素を示す分解斜視図である。この建築物は、柱1が鋼管2の内部にコンクリート3を充填した構成の充填鋼管コンクリート造とされ、梁4が通常の鉄骨造とされ、各階の柱1と梁4とは仕口部材5を介して相互に接合されるものとなっている。
【0016】
上記の仕口部材5は、(c)に示すように、柱1の鋼管2と略同径の短管状の鋼管からなる鋼管部6と、その外周に固定された梁接合用のブラケット7からなり、その仕口部材5の鋼管部6の上下にそれぞれ上下の柱1の鋼管2が突き合わせられて接合され、各ブラケット7にそれぞれ梁4が接合され、それら梁4の上部に床8が形成されるようになっている。そして、仕口部材5の鋼管部6の内部には上下の柱1のコンクリート3と一体をなすようにコンクリート9が充填されるとともに、そのコンクリート9中には、予め環状に組まれた複数の鉄筋10が鋼管部6の内部を上下に挿通して上下の柱1に跨がるように埋設され、したがって仕口部材5の鋼管部6と柱1の鋼管2とを直接的に接合せずとも、鉄筋10およびコンクリート3,9を介して上下の柱1が構造的に一体に接合されるようになっている。勿論、上記の仕口部材5は柱1と梁4との接合部すなわち仕口部に要求される強度を有するものとして形成されるものである。
【0017】
なお、柱1を形成する鋼管2はこの柱1の主に曲げ耐力を負担するとともに剪断補強機能を有する主要構造部材であると同時に、コンクリート3を打設する際の型枠を兼ねるものであり、したがって通常の鉄筋コンクリート造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造の柱のように主筋をその全長にわたって配筋したり、剪断補強筋を設ける必要はない。しかし、場合によっては鋼管2に負担させる引張り耐力や曲げ耐力を軽減し、あるいは鋼管2を単に型枠としてのみ機能せしめることとして、上記の鉄筋10を鉄筋コンクリート造の柱における主筋のように柱1の全長にわたって配筋することとしても良い(この点に関しては後述する)。また、柱1の横断面形状は円形に限らず、角形鋼管を用いて角形断面とすることも可能である。
【0018】
以下、本発明の施工方法の実施形態を説明する。なお、本発明は柱の鋼管内に予めコンクリートを打設して鉄筋を予め埋設したプレキャスト部材を用いることを必須の構成要件とするが、以下に第1〜第4実施形態およびその変形例として説明するものはそのような要件を欠いているので本来は実施形態ではなく単なる参考例であるが、便宜上、以下ではそれらも一括して実施形態と称している(本来の実施形態は第5〜第6実施形態のみである)。
図2(a)〜(h)は本発明の施工方法の第1実施形態を示すもので、図1に示した上記構造の建築物の施工手順を工程順に示すものである。
【0019】
▲1▼まず、図2(a)に示すように、既に形成されている床8上に上記の鉄筋10の上部が突出している状態から、(b)に示すように柱1の鋼管2をその鉄筋10の外側に被せるようにして床8上に立設し、(c)に示すように適宜のサポート11により仮支持して転倒を防止する。
【0020】
▲2▼同じく(c)に示すように鋼管2の内部に鉄筋10を埋設する位置までコンクリート3を打設して、そのコンクリート3が硬化して鋼管2が自立したらサポート11を撤去する。
【0021】
▲3▼(d)に示すように鋼管2の上部に仕口部材5を設置した後、(e)に示すように仕口部材5のブラケット7に梁4を接合することで隣接する柱1,1間に梁4を架設し、(f)に示すように梁4の上部に床型枠12(本例ではデッキプレート)を設置する。また、上記の梁4の架設や床型枠12の設置と相前後して、あるいは同時に、同じく(f)に示すように仕口部材5の鋼管部6に鉄筋10を挿通せしめてその下部を鋼管2内の上部に挿入する。
【0022】
▲4▼(g)に示すように、鋼管2の内部、仕口部材5の鋼管部6の内部、および床型枠12上にコンクリートを打設すれば、(h)に示すように柱1、仕口部材5、床8が構造的に一体化した状態で形成されてこの階の施工が完了する。引続いて上階において以上の手順を繰り返す。
【0023】
本第1実施形態では、特に柱脚部にコンクリートを先行打設することで鋼管2を自立せしめるので、鋼管2の仮支持のためのサポート11を簡略化できるとともにそれを早期に撤去でき、その点で施工性に優れる利点がある。
【0024】
図3は本発明の第2実施形態を示す。上記第1実施形態では仕口部材5と鉄筋10とを個別に設置するものとしたが、本第2実施形態ではそれらを予めユニット化しておいて一括して設置するものとしている。
【0025】
▲1▼まず、図3(d)に示すように仕口部材5の鋼管部6に予め鉄筋10を挿通せしめて、それら仕口部材5と鉄筋10とをユニット化したユニットU1を形成しておく。
【0026】
▲2▼第1実施形態の場合と同様に、(a)に示すように鉄筋10の上部が床8上に突出している状態から、(b)に示すように柱1の鋼管2をその鉄筋10の外側に被せるようにして床8上に立設し、(c)に示すようにサポート11により仮支持する。
【0027】
▲3▼(d)に示すように上記のユニットU1の仕口部材5を鋼管2の上部に設置してそれと同時に鉄筋10の下部を鋼管2の上部に挿入する。そして、(e)に示すように仕口部材5のブラケット7に対して梁4を接合するとともにその上部に床型枠12を設置する。
【0028】
▲4▼同じく(e)に示すように鋼管2の内部、仕口部材5の鋼管部6の内部、および床型枠12上にコンクリートを打設すれば、(f)に示すように柱1および仕口部材5並びに床8が一体に形成されてこの階の施工が完了する。
【0029】
本第2実施形態においては、仕口部材5と鉄筋10とをユニットU1として用いるので、それらを個別に用いる場合に比較して施工性をより改善することができる。そして、本第2実施形態においても、上記第1実施形態の場合と同様に、柱脚部に対してコンクリートを先行打設することによりサポート11を早期に撤去することが可能である(これは以下で説明する他の実施形態においても同様である)。
【0030】
図4は本発明の第3実施形態を示す。本第3実施形態では、柱1の鋼管2の上部に仕口部材5を予め取付けてそれらをユニット化するものである。
【0031】
▲1▼まず、図4(b)に示すように、柱1の鋼管2の上部に仕口部材5を予め取付けてそれら鋼管2と仕口部材5とをユニットU2として予め製作しておく。
【0032】
▲2▼(a)に示すように鉄筋10の上部が床8上に突出している状態から、(b)に示すように上記のユニットU2の鋼管2をその鉄筋10の外側に被せるようにして床8上に立設し、(c)に示すようにサポート11により仮支持する。
【0033】
▲3▼(d)に示すように仕口部材5の鋼管部6の内部に鉄筋10を挿通せしめてその下部を鋼管2内の上部に挿入するとともに、それに相前後して、仕口部材5のブラケット7に対して梁4を接合するとともに、その上部に床型枠12を設置する。
【0034】
▲4▼それ以降は上記第2実施形態の場合と同様(図3(e)、(f)参照)に、柱1の鋼管2の内部、仕口部材5の鋼管部6の内部、床型枠12上にコンクリートを打設する。
【0035】
本第3実施形態においては、仕口部材5と鋼管2とをユニットU2として用いるので、それらを個別に用いる場合に比較して施工性をより改善することができる。
【0036】
図5は第4実施形態の要部のみを示す。本第4実施形態では、柱1の鋼管2の上部に予め仕口部材5を取付けておくとともに、その仕口部材5の鋼管部6の内部に予め鉄筋10を挿通せしめた状態で取付けておいて、それら鋼管2、仕口部材5、鉄筋10をユニットU3として用いるものである。この場合、鋼管2を立設するのみで仕口部材5の設置と鉄筋10の配筋が同時に行われることになり、施工性をより一層改善することができる。
【0037】
以上で本発明の第1〜第4実施形態を説明したが、図6〜図10にその変形例を示す。図6は2階層分の柱1の鋼管2と仕口部材5を予めユニット化したもの、図7は仕口部材5のブラケット7の一部に予め梁4を接合した形態としたもの(ブラケット7を省略して梁4を直接的に鋼管部6に接合したもの)、図8は2つの仕口部材5を1スパン分の梁4により予め連結した形態のもの、図9は図8のものにさらに2本の柱1の鋼管2を取付けておくもの、図10は4本の梁4と4つの仕口部材5を井桁状に連結しておくものである。なお、図6〜図10に示すものに鉄筋10を予め組み込んでも勿論良いし、図6〜図10に示すものを任意に組み合わせて用いることも考えられる。
【0038】
次に、図11(a)〜(e)は本発明の第5実施形態を示す。本第5実施形態は、柱1の鋼管2内に予めコンクリート9を打設して鉄筋10を予め埋設したプレキャスト部材P1を形成しておき、それを用いるようにしたものである。
【0039】
▲1▼すなわち、本第5実施形態では、図11(a)に示すように、柱1の鋼管2内にその上部に空間部13を残した状態で予めコンクリート9を充填するとともに、該コンクリート9中に前記鉄筋10の上部を予め埋設しておいて該鉄筋10の下部を前記鋼管2の下部に突出せしめた形態のプレキャスト部材P1を予め製作しておく。
【0040】
▲2▼(b)に示すようにそのプレキャスト部材P1が床8上に立設されている状態から、(c)に示すようにその上部に仕口部材5を配置するとともに、ブラケット7に梁4を接合し、その上部に床型枠12を設置する。
【0041】
▲3▼(d)に示すように、仕口部材5の上方に上階の柱1となる他のプレキャスト部材P1を立設して仮支持することにより、その上階のプレキャスト部材P1の下部に突出している鉄筋10の下部を仕口部材5を挿通せしめて下階のプレキャスト部材P1の空間部13に挿入する。
【0042】
▲4▼(e)に示すように、下階のプレキャスト部材P1の空間部13、仕口部材5の鋼管部6の内部、および床型枠12上にコンクリートを打設すれば、柱1、仕口部材5、床8が形成される。
【0043】
本第5実施形態では、柱1をプレキャスト化したので、コンクリートの現場打ち作業が軽減されて施工性を改善することができる。
【0044】
さらに、図12(a)〜(e)と図13(f)〜(g)は第6実施形態を示す。本第6実施形態においては上記第5実施形態のものとは異なるプレキャスト部材P2を用いるものである。
【0045】
▲1▼すなわち、図12(a)に示すように、柱1の鋼管2内にその全長にわたって予めコンクリート9を充填するとともに、そのコンクリート9の上部および下部にそれぞれ鉄筋10の下部および上部を予め埋設しておいて、それら鉄筋10の上部および下部をそれぞれ鋼管2の上部および下部に突出せしめた形態のプレキャスト部材P2を予め製作しておく。
【0046】
▲2▼(b)に示すようにプレキャスト部材P2が床8上に立設されている状態から、(c)に示すようにその上部に仕口部材5を設置して、プレキャスト部材P2の上部に突出している鉄筋10の上部を仕口部材5に挿通せしめる。
【0047】
▲3▼同じく(c)に示すように、仕口部材5のブラケット7に梁4を接合するとともに、その上部に床型枠12を設置する。
【0048】
▲4▼(d)に示すように、仕口部材5の鋼管部6の内部および床型枠12上にコンクリートを打設することにより床8を形成する。
【0049】
▲5▼(e)に示すように、上記で形成された床8上に突出している鉄筋10に被せるようにして上階の柱1となる鋼管2を立設して仮支持する。
【0050】
▲6▼同じく(e)に示すように上記で立設した鋼管2の上部に仕口部材5を設置するとともに、その仕口部材5のブラケット7に梁4を接合し、かつその上部に床型枠12を設置する。
【0051】
▲7▼図13(f)に示すように、仕口部材5の上方にさらに上階の柱1となるプレキャスト部材P2を立設し、その下部に突出している鉄筋10を仕口部材5を挿通せしめてその下部を鋼管2内に挿入する。
【0052】
▲8▼(g)に示すように鋼管2内、仕口部材5の鋼管部6の内部、床型枠12の上部にコンクリートを打設した、柱1、仕口部材5、床8を形成する。
【0053】
本第6実施形態においても、柱1をプレキャスト化して用いるので、第5実施形態と同様に施工性を改善することができる。
【0054】
ところで、上記各実施形態において柱1の鋼管2を仮支持するためには、たとえば図2(c)に例示したような適宜のサポート11等を用いれば良いが、それに代えて図14に示すような仮支持の形態も採用可能である。これは、仕口部材5の上部に上階の柱1の鋼管2を立設して仮支持するに際し、仕口部材5の上部にブラケット7の上面よりも上部に突出するような他の鋼管部16を設けておき、その鋼管部16の上端と柱1の鋼管2の下端とを突き合わせてそれらの双方に跨がるように連結具20を装着することにより、その連結具20により仕口部材5の鋼管部16と柱1の鋼管2とを連結して鋼管2を自立せしめるものである。
【0055】
上記の連結具20としては、フランジ部21を有する一対の半割環状のバンド22どうしをボルト締結するとともに、各バンド22の内側にゴム等の弾性部材23を取付けておいて、双方のバンド22をボルト締結することにより鋼管部16と鋼管2とを外側から強固に締め付ける構成とされている。そのような連結具20を用いることにより簡便かつ容易に鋼管2の仮支持を行うことができるとともに、コンクリート打設の際に鋼管部16と鋼管2との隙間からのコンクリートの漏れ出しを防止でき、しかもこの連結具20は繰り返し転用可能であるからコストの点でも有利となる。
【0056】
また、上記各実施形態で用いた仕口部材5は短管状の鋼管からなる鋼管部6の外周にブラケット7を固定した形態のものを用いたが、それに代えてたとえば図15(a),(b)に示す形態の仕口部材50を採用することもできる。その仕口部材50は双方のブラケット7,7を互いに交差させた状態で設け、その交差部の周囲を取り囲むように円弧状に湾曲している鋼板51に溶接することで鋼管部52を形成したものであり、このような仕口部材50を用いることによりいわゆる梁貫通型の仕口部が構成される。なお、この場合には図15(b)に示すように鉄筋10をブラケット7,7と干渉しない位置に通せば良い。
【0057】
さらに、先に述べたように、仕口部に設ける鉄筋10を各階の柱1の全長にわたるように配筋することも好ましいが、その場合には、図16に示すように鉄筋10の上部および下部をそれぞれ上階および下階の柱1の略中央部まで達するものとしておき、各階の柱1の略中央部において双方の鉄筋10の先端部どうしを(a)に示すように直接的にラップさせるか、もしくは(b)に示すように添え筋60を介してラップさせれば良い。勿論、可能であれば双方の鉄筋10どうしを直接的に連結することも妨げるものではないが、上記のように所定のラップ長を確保してラップジョイントとすることが最も簡便かつ合理的である。このように鉄筋10を柱1の全長にわたって配筋すれば、それら鉄筋10が鉄筋コンクリート造の柱における主筋と同様に機能し、したがって外周柱のように大きな引張り軸力を受ける柱に適用して特に好適である。
【0058】
【発明の効果】
以上で説明したように、本発明によれば、梁が鉄骨造であり柱が充填鋼管コンクリート造の複合構造建築物を施工するに当たり、各階の柱と梁を仕口部材およびその内部に設けたコンクリート並びに鉄筋を介して接合するので、柱と梁とを構造的に一体に接合し得て強度を確保し得ることはもとより、特に、柱をプレキャスト化して柱の鋼管内に予めコンクリートを打設して鉄筋を予め埋設したプレキャスト部材を用いることにより、施工性を充分に改善することができ、この種の複合構造建築物の施工に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の施工方法が適用される複合構造建築物の概要を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態である施工手順を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態である施工手順を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態である施工手順の要部を示す図である。
【図5】本発明の第4実施形態である施工手順の要部を示す図である。
【図6】上記各実施形態の変形例を示す図である。
【図7】上記各実施形態の他の変形例を示す図である。
【図8】上記各実施形態のさらに他の変形例を示す図である。
【図9】上記各実施形態のさらに他の変形例を示す図である。
【図10】上記各実施形態のさらに他の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態である施工手順を示す図である。
【図12】本発明の第6実施形態である施工手順の前半部を示す図である。
【図13】上記第6実施形態である施工手順の後半部を示す図である。
【図14】上記各実施形態において適用可能な鋼管の仮支持の形態を示す図である。
【図15】上記各実施形態において適用可能な仕口部材の他の例を示す図である。
【図16】上記各実施形態において適用可能な柱の構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 柱
2 鋼管
3 コンクリート
4 梁
5 仕口部材
6 鋼管部
7 ブラケット
8 床
9 コンクリート
10 鉄筋
11 サポート
12 床型枠
13 空間部
16 鋼管部
20 連結具
50 仕口部材
51 鋼板
52 鋼管部
60 添え筋
U1,U2,U3 ユニット
P1,P2 プレキャスト部材

Claims (6)

  1. 鉄骨造の梁と、鋼管の内部にコンクリートを充填した充填鋼管コンクリート造の柱からなり、各階の梁と柱との接合部には前記柱の鋼管と略同径の鋼管部と該鋼管部に固定された梁接合用のブラケットからなる仕口部材を配置して該仕口部材の鋼管部の上下にそれぞれ前記柱の鋼管を突き合わせ、かつ該鋼管部の内部に上下の柱のコンクリートと一体をなすコンクリートを充填するとともに該コンクリート中に前記鋼管部の内部を上下に挿通して上下の柱に跨がる鉄筋を埋設した構成の複合構造建築物を、以下の各工程により施工することを特徴とする複合構造建築物の施工方法。
    (1)前記柱の鋼管内にその上部に空間部を残した状態で予めコンクリートを充填するとともに、該コンクリート中に前記鉄筋の上部を予め埋設しておいて該鉄筋の下部を前記鋼管の下部に突出せしめた形態のプレキャスト部材を予め製作しておく工程。
    (2)前記プレキャスト部材が床面上に立設されている状態から、該プレキャスト部材の上部に前記仕口部材を配置するとともに、該仕口部材のブラケットに前記梁を接合し、その上部に床型枠を設置する工程。
    (3)前記仕口部材の上方に上階の柱となる他のプレキャスト部材を立設して仮支持することにより、該上階のプレキャスト部材の下部に突出している前記鉄筋の下部を前記仕口部材を挿通せしめて下階のプレキャスト部材の空間部に挿入する工程。
    (4)下階のプレキャスト部材の空間部、前記仕口部材の鋼管部の内部、および前記床型枠上にコンクリートを打設する工程。
  2. 鉄骨造の梁と、鋼管の内部にコンクリートを充填した充填鋼管コンクリート造の柱からなり、各階の梁と柱との接合部には前記柱の鋼管と略同径の鋼管部と該鋼管部に固定された梁接合用のブラケットからなる仕口部材を配置して該仕口部材の鋼管部の上下にそれぞれ前記柱の鋼管を突き合わせ、かつ該鋼管部の内部に上下の柱のコンクリートと一体をなすコンクリートを充填するとともに該コンクリート中に前記鋼管部の内部を上下に挿通して上下の柱に跨がる鉄筋を埋設した構成の複合構造建築物を、以下の各工程により施工することを特徴とする複合構造建築物の施工方法。
    (1)前記柱の鋼管内にその全長にわたって予めコンクリートを充填するとともに、該コンクリートの上部および下部にそれぞれ前記鉄筋の下部および上部を予め埋設しておいてそれら鉄筋の上部および下部をそれぞれ前記鋼管の上部および下部に突出せしめた形態のプレキャスト部材を予め製作しておく工程。
    (2)前記プレキャスト部材が床面上に立設されている状態から、該プレキャスト部材の上部に前記仕口部材を配置して該プレキャスト部材の上部に突出している前記鉄筋の上部を該仕口部材に挿通せしめる工程。
    (3)該仕口部材のブラケットに前記梁を接合するとともに、その上部に床型枠を設置する工程。
    (4)該仕口部材の鋼管部の内部および前記床型枠上にコンクリートを打設することにより床を形成する工程。
    (5)形成された床面上に突出している鉄筋に被せるようにして上階の柱となる鋼管を立設して仮支持する工程。
    (6)前記鋼管の上部に仕口部材を設置するとともに該仕口部材のブラケットに梁を接合しかつその上部に床型枠を設置する工程。
    (7)仕口部材の上方にさらに上階の柱となるプレキャスト部材を立設してその下部に突出している鉄筋を仕口部材を挿通せしめてその下部を前記鋼管内に挿入する工程。
    (8)前記鋼管内、前記仕口部材の鋼管部の内部、前記床型枠の上部にコンクリートを打設する工程。
  3. 請求項1または2に記載の施工方法において、前記仕口部材の上部に上階の柱の鋼管を立設して仮支持するに際し、前記仕口部材の鋼管部を前記ブラケットの上面よりも上部に突出せしめておき、該鋼管部の上端と前記柱の鋼管の下端とを突き合わせてそれらの双方に跨がるように連結具を装着して締結することで前記鋼管の仮支持を行うことを特徴とする複合構造建築物の施工方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の施工方法において、前記仕口部材として、前記鋼管部を短管状の鋼管により形成するとともに前記ブラケットを該鋼管の外周に固定した形態のものを用いることを特徴とする複合構造建築物の施工方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の施工方法において、前記仕口部材として、前記ブラケットを互いに交差させ、かつその交差部の周囲を円弧状に湾曲している鋼板により取り囲むことで鋼管部を形成した形態のものを用いることを特徴とする複合構造建築物の施工方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の施工方法において、前記仕口部材を挿通する鉄筋の上部および下部をそれぞれ上階および下階の柱の略中央部まで達するものとし、各階の柱の略中央部において上下の仕口部材を挿通している双方の鉄筋の先端部どうしを直接的にもしくは添え筋を介してラップさせることを特徴とする複合構造建築物の施工方法。
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