JP3582708B2 - ラップ式タイルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式施工用のラップ式のタイルの製造方法に係り、特にプレスによって良好に形成できるようにしたラップ式タイルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の壁外装材として、ラップ式のリブを一体に形成した押出し成形による乾式施工用のタイルが従来から多用されている。このラップ式のタイルは、壁面に縦方向に配列していく施工の際に、上段配置のタイルの下端が下段配置のタイルの上端の前面に被さるような配列として横方向の目地が露出しないようにし、裏面側には壁面に設けた突起状物に係合するたとえばアリ足状の係合部を形成したものである。
【0003】
乾式施工に用いるラップ式のタイルでは、その縦方向の断面の肉厚が一様でないことから、上下一対の型どうしによるプレス成形では、肉厚の相違に由来して各断面における成形時の圧縮比が様々に変化してしまう。このため、プレス成形後には、反りやバチ等の変形を発生してしまい、特にラップ部分のように大きく曲がった断面形状のものでは、プレス成形後の脱型時にクラックや欠けの発生が多くみられるほか、焼成後においても変形を発生することがある。
【0004】
このようなラップ式のタイル及びそのプレス製造の方法の分野での問題を解消しようとしたものとして、たとえば特開平6−122112号公報及び特開平4−260650号公報に記載されたものがある。
【0005】
前者のものは、成形しようとするタイルの断面形状に合わせて下型を複数に分割してそれぞれを上型に対して移動可能とし、プレスの際には全断面に亘って一様な圧縮比が得られるようにしたものである。
【0006】
また、後者のものは、タイルの裏面に形成するアリ足状の突起が良好に得られるようにすることを目的としたものであって、従来ではゴム製の型を利用していたのに代えて、型をタイルの幅方向に引き抜ける型構造としたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、下型を複数に分割した型構造によるプレス成形では、一対の上型と下型との組合せのプレスに比べると、1回のプレス成形に要する時間がかなり長くなる。このため、乾式成形のタイルとしての利点であったプレスによる短時間での多量生産への対応ができなくなり、コスト面での障害が大きい。
【0008】
また、型をタイルの幅方向にスライドさせて抜き取る成形方法では、タイルの裏面に設けるアリ足状の突起を形成するのには都合がよい。しかしながら、このような幅方向への型の抜き取りのためには、それぞれに傾斜した稜線を形成することが必要となり、型の構造がかなり複雑になる。また、幅方向に型を抜くための設備が要求されるので、既存のタイル成形用の設備がそのまま使えない場合もあり、設備面での障害も伴うことになる。
【0009】
このように、従来のラップ式のタイルの製造方法においては、その生産性や設備面で改善すべき問題が残っている。
【0010】
本発明において解決すべき課題は、ラップ式のタイルをプレス成形によって効率的にしかも焼成後の変形を伴うことなく良好な製品が得られるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、面板部の上端から背部側に屈曲させたリブを備えると共に、このリブの下方に連ねて係合部を形成し、更に前記面板部の背部の下端は下段配置のタイルのリブを覆うことを可能とするための突起状の尾部を備えたラップ式タイルの成形方法であって、前記ラップ式タイルのプレス成形に際して、タイルの表面側の前記面板部及びリブを創成する一体の第1の型と、タイルの裏面側の前記面板部、リブ及び尾部を創成する一体の第2の型を用い、前記リブの上端縁部分と、前記尾部の下端縁部分とのみを、略同じ圧縮比で成形することを特徴とするラップ式タイルの製造方法である。
【0012】
この構成において、タイルの幅方向の側縁部も含めてリブの上端縁と尾部の下端縁部分のそれぞれの圧縮比が同じとなる形状肉厚として成形したものとしてもよく、また尾部は、その周囲を表面側から裏面側へ向けて断面を縮小させる向きの傾斜面としたり、その縦断面を背部側に突き出る三角形状としてもよい。
【0013】
更に、リブ及び尾部を形成したラップ式タイルにおいて、リブ及び尾部の幅方向の両端を部分的に切除した側縁部を形成したものとすることができる。
【0014】
また、リブから尾部までの形状パターンを上下方向に間隔をおいて少なくとも2組以上配列し、これらの形状パターンどうしの間の間隔部分を幕板部とすると共に、この幕板部の肉厚を面板部の肉厚にほぼ一致させ且つ間口方向の端縁には背面側の肉を削った側縁部を形成した縦長のラップ式タイルとすることもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
タイルのリブの上端縁と尾部の下端縁の形状肉厚をそれぞれの圧縮比が同じとなるように設定することによって、タイルの全体の変形が抑えられる。
【0016】
また、係合部にアリ足状の傾斜面を形成したものでは、下地ボード等への固定が安定し、更に尾部の周囲に傾斜面を持たせるものでは、プレス成形の際の脱型が速やかに行われる。
【0017】
面板部の背部であってその両端部を薄肉の側縁部としたものでは、側縁部の高さ方向を一様な肉厚とすることができ、この側縁部と同じ肉厚で幅方向の全体を形成することもできる。そして、側縁部の肉厚をリブの肉厚と等しくすることによって、タイルの幅方向の両端部には肉厚の差が全くないものとすることができる。また、側縁部であって係合部及び尾部との間の領域に含まれる部分の背面の肉を削って面板部の肉厚よりも薄くした部分を、尾部下端縁の圧縮比と略等しくなる肉厚とすることもできる。したがって、プレス成形によるとき、タイルの周縁部の圧縮比を一様化することができ、プレス後及び焼成後の変形が抑えられる。
【0018】
このようなリブから尾部までの形状パターンであってその肉厚や側縁部を設けるパターンを上下に間隔をおいて配列すると共にこの間隔部分を幕板部としたものでは、縦長のタイルを得ることができる。
【0019】
製造用型装置においては、弾性変形可能な膨出層の傾斜した面がプレス力を受けて垂直に突き出した部分が係合部の傾斜面を創成する向きに変形するのを促し、プレス時には膨出層の一端側の角部が鋭角状に弾性変形し、これによってアリ足状の傾斜面を持つ係合部をタイルの裏面に形成することが可能となる。
【0020】
(実施例)
図1は本発明のラップ式のタイルを正面側から見た斜視図、図2は背面側から見た斜視図、図3は下地ボードに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【0021】
図において、長方形の正面外郭形状を持つタイル1は、一様な平坦面として形成される面板部2とその上端縁3eに沿って形成され奥側に曲げたラップ用のリブ3とを表出した形状を持つ。これらの面板部2からリブ3にかけての側面は、図3に示すようにほぼ一様な肉厚を持つものとする。
【0022】
リブ3の裏面側には、図2に示すように、その幅方向の両端部を除いて下地ボードに掛けるための係合部4を設ける。この係合部4は、図3に示すように、奥側に向けて斜め下向きとした傾斜面4aをアリ足状に形成したものであり、左右方向の両端であって下方に臨む角部分も肉を削った傾斜面4bとしている。
【0023】
また、面板部2の下端側の裏面には左右の両端部を除いて尾部5を突き出して設ける。この尾部5は係合部4が幅方向に占める領域と対応した位置に形成され、図3に示すようにその突き出し端までの長さも係合部4のそれと同じとしたものである。また、尾部5の下端は面板部2の下端縁5eから連なる斜め上向きの傾斜面5aとすると共に、左右方向の両端及び上端の周りもそれぞれ突き出し端側に向けて断面が次第に縮小していく傾斜面5b,5c,5dとしている。
【0024】
このようにタイル1の裏面には、リブ3から係合部4が突き出ると共に下端側では尾部5が面板部裏面7から突き出して形成され、これらの係合部4及び尾部5の左右の両端よりも外側に位置する縦長の領域も面板部2の裏面側に含まれて同じ一様の肉厚の側縁部6として形成されている。
【0025】
図4はタイル1をプレス成形するための型装置の概略を示す斜視図、図5は概略縦断面図である。
【0026】
型装置は固定された枠11に収納した下型13と、この枠11に対して上下動作する上型12とを備え、上型12を枠11の中に差し込むことによって下型13と共にタイル1をプレス成形する。
【0027】
上型12の下端面には均一な肉厚のゴムを素材としたラバー層12aを膨出層として設け、このラバー層12aによってタイル1の面板部2の全面及びリブ3の上面を創成する。
【0028】
一方、下型13にもラバー層14を設ける。すなわち、図4に示すように、下型13の内部であって長手方向の両端に位置し底面から上に膨出している側縁部創成面13aも金型の上に貼着されたラバー層14(同図において小さな点を分布させて表示している領域)とする。このラバー層14は、タイル1の係合部4及び尾部5のそれぞれの一部を含めて創成する部分を一様な肉厚として下型13の表面に接着している。また、係合部4をアリ足状断面に形成させるために、膨出部14aを下型13の底面から側縁部創成面13aと切り離して上に突き出した断面形状としている。この膨出部14aは、タイル1の係合部4の傾斜面5dを形成するための傾斜創成面14bをその一端側に形成し、他端側は底面からほぼ垂直に立ち上げたアリ足創成部14cとしたものであり、図5に示すように側縁部創成面13aよりも少し上側に突き出た形状を持つ。
【0029】
なお、ラバー層14はタイル1の裏面の全体を創成できるように下型13に取り付けるものとし、尾部5の周りの全ての傾斜面5a〜5dも含めて全てこのラバー層14によって創成可能とする。
【0030】
図6及び図7はアリ足創成部14cの形状の相違による係合部4の傾斜面4aのアリ足形状がどのように変化するかを比較した図である。
【0031】
図6の例は、従来の型装置のラバー層14の膨出部14aに相当する部分を横長のほぼ長方形の縦断面形状としたものである。このような膨出部14aの形状であれば、プレスによる加圧を受けたときには、同図の(b)に示すように膨出部14aの全体が圧縮されて扁平に変形し、左右の両端の面と底面部との間の角度Aが傾斜状となった創成面を形成し、これによって製品に対してはアリ足状の溝を作り出すことができる。
【0032】
一方、図7は本発明の型装置におけるラバー層14の場合であり、無負荷のときには同図(a)に示す断面形状に維持されている。そして、プレスによる加圧時には、同図(b)に示すようにアリ足創成部14cと底面との間の角度Bの傾斜が更に傾いた鋭角状となるように変形する。
【0033】
この場合、膨出部14aの一端側の傾斜創成面14bは底面側とのなす角度が鈍角なので、プレス時にはこの傾斜創成面14bは受圧面となる。したがって、膨出部14aはそれ自身が扁平になることによるアリ足創成部14cが傾斜していく変形に加えて、傾斜創成面14bが受ける圧力が膨出部14aの中を図において左方向に伝播される。したがって、アリ足創成部14cは無負荷のときには底面部から垂直に立ち上がっているのに対し、同図(b)に示すように速やかに鋭角状に倒れるように変形する。
【0034】
このように、傾斜創成面14bへの加圧力をアリ足創成部14cの弾性変形を促すように利用することができ、図6で示した例に比べるとアリ足創成部14cが底面部と作る角度が小さくなる。したがって、このアリ足創成部14cによって創成される係合部4の傾斜面4aを鋭角状のアリ足溝状に形成することが可能となり、プレス成形によっても係合力が十分に発揮できる係合部4を得ることができる。
【0035】
なお、図示の例では、タイル1の側縁部6を創成する部分は金型としているが、これに代えてラバー層14を膨出させて側縁部6部分も創成するようにしてもよい。この場合、ラバー層14は下型13の創成面の全面に張り付けられるものとなる。
【0036】
このようにラバー層14によって全面を創成する場合でも、膨出部14aの弾性変形は図7で示したものと同様に可能であり、傾斜面4aをタイル1の裏面に対して鋭角状に創成することができる。ところが、膨出部14aの撓み変形に対しては、その長手方向の両端部が側縁部6を創成する部分のラバー層14の一部に繋がっているので、この部分によって弾性変形が拘束される。このため、膨出部14aの図7で示したような変形量が保てなくなる恐れがあり、アリ足創成部14cと側縁部6を創成する部分を切り離して成形し、変形させることが好ましい。
【0037】
ここで、タイル1を上型12及び下型13によってプレス成形するときには、タイル1の周縁部とくに長辺方向の周縁部の圧縮比が一様であるという条件を満たせば、変形等を生じない安定した製品を得ることができる。
【0038】
そこで、本発明では、リブ3の上端縁3e及び尾部5の下端縁5e2ヵ所の部分、すなわちタイル1の上端縁及び下端縁の成形時の圧縮比が同じとなるように形状を決める。この形状の決定については、プレスされる材料の嵩及び量が圧縮比についての因子であることから、符号3e,5eの部分に充填される圧縮比が同じとなるような断面形状の関係とする。
【0039】
本発明では、タイル1のプレス成形に際しては、断面形状が異なるリブ3の部分3e及び尾部5の部分5eそれぞれの圧縮比が同じになるような断面形状とすることによって、タイル1の反りの発生を防ぐことができるため、上型12及び下型13とによるプレス成形では、従来のたとえば扁平なタイルの製造の場合と同様に1回の上型12によるプレス操作だけで成形できる。このため、従来技術で挙げたようなプレス方法に比べると、タイル1の成形が短時間で可能となり、生産効率の向上が図られる。
【0040】
また、下型13のラバー層14に設けた膨出部14aは図7の(b)で示したようにプレス時にはアリ足創成部14cが鋭角状に弾性変形するので、タイル1の裏面の係合部4の傾斜面4aをアリ足状に鋭角に形成することができる。したがって、プレスによる成形ではあっても、係合部4を下地ボードに確実に掛ける形状を持たせることができ、安定した固定が可能となる。
【0041】
また、係合部4の左右両端であって傾斜面4aの下端の角部分は傾斜面4bとしているので、尖ったままの形状とした場合ではバリが付着しやすいのに比べて、このようなバリの付着が防止され、壁面に設けた突起に安定して係合する。また、傾斜面4b状に肉を盗むので、脱型の際に角部分に欠けが発生することも抑えられる。一方、尾部5についても、その全周に傾斜面5a〜5dを持たせたことによって、脱型の操作がしやすくなる。
【0042】
更に、係合部4及び尾部5のそれぞれは幅方向の全長に形成しないで、その外側を面板部2と同じ肉厚の側縁部6とし、更にこの肉厚をリブ3とほぼ等しくすることによって、これらの係合部4及び尾部5を除いて幅方向の全体の肉厚が一様化される。このため、タイル1の大半の領域を占める面板部2及びリブ3はその幅方向への圧縮比をほぼ一様に設定できることから、プレス成形後には幅方向の圧縮充填率も一様に保たれる。したがって、タイル1の側面が凹凸状に変形を生じることがなく、従来例で示した型を幅方向に抜くことによって幅方向の充填率が相違するようなタイルに比べると、高い保形性が得られ、焼成時変形も阻止される。
【0043】
図9から図11は別の例であって、先の例と同じ部材については共通の符号で指示して示す例である。
【0044】
図10の背面図に示すように、タイル1の裏面には図2で示したものと同様に面板部2の裏面の上下両端にそれぞれリブ3及び尾部5を形成し、これらの上端部及び下端部の圧縮比が同じとなるような断面形状も持たせている。側縁部6は先の例とは異なって、リブ3と尾部5とによって挟まれた面板部2の背面に連なる部分の肉を落として薄肉状に形成されており、薄肉部の圧縮比はリブ3の上端縁3e及び尾部5の下端縁5eと略等しくする。タイル全体の圧力バランスが悪くて圧力微調整が必要な場合、このように側縁部6のこの部分を薄肉状とすることによって、簡単な型形状変更で微調整を可能とし、変形を抑えた製品が得られる。
【0045】
図12は図9〜図11に示したタイルの裏面形状のパターンを上下に3組配列して縦長形状とした例であって、同図の(a)は左側面図、同図の(b)は背面図である。
【0046】
図において、タイル21は上から順にA,B,Cとして示す範囲を先のパターンによって形成すると共に、その前面を各範囲A,B,Cに跨がる共通の面板部22としている。
【0047】
タイル21の上端側を占めている範囲Aの形状は、図9〜図11に示したものとほぼ同様であり、上端のリブ23に連ねて係合部24を形成してその裏面を傾斜面24aとすると共に下端にはその尾部25を形成している。そして、これらの係合部24及び尾部25は、図10の例と同様にそれぞれの所定の位置に傾斜面24b,25b,25c,25dをそれぞれ形成し、更に間口方向の両端縁には肉厚を薄くした側縁部26を設けている。
【0048】
範囲Bを占める部分の形状は以上に述べた範囲Aの上端のリブ23がないものをそのまま充当したもので、同じ部位については共通の符号で指示している。
【0049】
一方、範囲Cを占める部分も範囲Bのものと同様にリブ23がない形状としたものであり、他の部位の形状は範囲A及びBの形状と同じである。
【0050】
また、範囲Aと範囲B及びこの範囲Bと範囲Cのそれぞれの間は係合部等を備えない幕板部28とする。この幕板部28にも各範囲A〜Cの側縁部26と同じ幅で同じ厚さとなるように裏面側から肉を盗んだ側縁部28aを形成し、これらの側縁部28aどうしの間の領域を範囲A〜Cの部分の肉厚と全く同じとした形状を持たせている。
【0051】
図13は図12に示したタイル21をプレス成形するための型装置の概略縦断面図であり、図4及び図5に示したものと同様に枠31と上型32と下型33との組合せとして構成され、上型32の下面にラバー32aを取り付けると共に、下型13の創成面にはタイル21の裏面を型成形するためのラバー層34を設けている。このラバー層34は係合部24の傾斜面24aを創成するための3連の膨出部34aを設けたもので、先の例と同様にこれらの膨出部34aにはアリ足状に形成しやくするために傾斜創成面34bとアリ足創成部34cとを形成している。
【0052】
このような型装置を用いる場合でも、図7で説明した先の例における膨出部14aの速やかな変形によってタイル21の裏面と鋭角をなす傾斜の傾斜面24aを確実に精度よく成形することができる。
【0053】
なお、図13には示されていないが、図4に示したものと同様に下型33にはタイル21の側縁部26を形成するための側縁部創成面を設けることは無論である。そして、これらの側縁部創成面は範囲A〜Cの側縁部26だけでなく幕板部28の側縁部28aについても同時に成形できるようにその創成面を備えるようにする。
【0054】
このような型装置によってプレス成形されたタイル21についても、図9〜図11に示したものをその要素として含むものであることから、リブ23の上端縁23eと尾部25の下端縁25eとの圧縮比が等しくなるような断面形状とすることができる。したがって、焼成後におけるタイル21の上端側及び下端側の寸法差の発生が抑えられ、寸法精度を高くした良好な製品を得ることができる。
【0055】
また、側縁部26,28aを設けてタイル21の上端及び下端のそれぞれの圧縮比に近くなるようにすることで、タイル21の間口方向の両端部縁とその上下両端との間の寸法差の発生を抑えることができる。このため、タイル21の間口方向の端縁を良好な直線状に成形することができ、タイル21が縦長であってその寸法が大きくても形状不良による障害が避けられる。
【0056】
更に、幕板部28部分の肉厚も範囲A〜Cのものと等しくしているので、タイル21の縦方向の全体の圧縮比のバランスを図ることができ、これによってもより寸法精度の高い製品を得ることができる。
【0057】
そして更に、尾部25の間口方向の端面の下端側は断面を縮小させる向きの傾斜面形状とすることによって、垂れ防止のための支えとなることが可能なので、焼成時の尾部25の垂れの発生を防ぐことができ、タイル21の全体形状を良質なものとした製品の提供が可能となる。
【0058】
図14及び図15は更に別の例であって、図9及び図10に示した例と比較して、尾部5の縦断面形状及び側縁部6の下端側の幅方向の端面の形状のみが相違する。すなわち、側縁部6の下側に至るまで尾部5を下り勾配の傾斜面5fとするとともに、この傾斜面5fの下端稜線5gを1辺とする三角形状の垂れ防止端面5hとしている。そして、尾部5は垂れ防止端面5hの下端縁と同じ傾斜面を持つようにし、背面側に向けて三角形状に突き出る縦断面形状となっている。
【0059】
このような尾部5の三角形状の断面及び端部の垂れ防止端面5hを備えることによって、垂れ防止のための支えを形成することができ、焼成時での尾部5全体の垂れの発生を防ぐことができ、良好な形状の製品が得られる。
【0060】
図16は図14及び図15に示したタイルの裏面形状のパターンを上下に3組配列した例であって、同図の(a)は正面側から見た斜視図、同図の(b)は背面側から見た斜視図である。
【0061】
図12の例と同様に上から順にA,B,Cとして示す範囲をこれらのパターンによって形成すると共に、その前面を各範囲A,B,Cに跨がる共通の面板部22としている。そして、先の例とは異なって、側縁部26の下端側の幅方向の端面は裏面側向けて角を突き出した三角形状の垂れ防止端面27であって、下端に位置している尾部25は三角形状の縦断面形状となっている。
【0062】
このようなタイル21の成形についても、図13に示したものと同様の構成の型装置を利用することができ、この型装置においてタイル21の下端側の尾部25及びその周囲の創成部を変更したものとすればよい。
【0063】
【発明の効果】
本発明では、1回のプレスによって係合部をアリ足状に鋭角状に形成したタイルの成形が可能なので、従来のように下型を分割したプレスや幅方向に型を抜く製法に比べると複雑な形状のタイルを効率的に生産することができ、多量生産に十分に対応できる。
【0064】
また、タイルのリブ上端縁と尾部下端縁及び/又は側縁部とがほぼ同圧縮比となる肉厚であり且つプレス成形において変形を防止するタイル形状に形成するので、圧縮比を一様化したプレスが可能となり、成形後の表面の凹凸変形や垂れ等が防止でき、焼成後においても良好な保形性を維持できる製品を得ることができる。また、軽量化も図られると共に、接着剤等のはみ出しを側縁部に溜めて、表側から見えないようにするため、美観を保てる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイルの一実施例であって正面側から見た斜視図である。
【図2】タイルを背部側から見た斜視図である。
【図3】下地ボードに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【図4】タイルのプレス成形のための型装置の概要を示す斜視図である。
【図5】型装置の要部を示す概略縦断面図である。
【図6】長方形状断面のラバー層の変形を示す概略図であって、同図の(a)は負荷がないとき及び同図の(b)はプレスによる変形を示す。
【図7】本発明におけるラバー層の変形を示す概略図であって、同図の(a)は負荷がないとき及び同図の(b)はプレスによる変形を示す。
【図8】タイルの側面図であってリブ側と尾部側との圧縮比を同じにするための形状を示す図である。
【図9】側縁部を更に薄肉とした例を示す正面から見た斜視図である。
【図10】図9のタイルを背面から見た斜視図である。
【図11】肉薄とした側縁部の詳細を示す斜視図である。
【図12】縦長のタイルの例であって、同図の(a)は正面側から見た斜視図、同図の(b)は背面側から見た斜視図である。
【図13】図12に示したタイルをプレス成形するための型装置の概略縦断面図である。
【図14】尾部の縦断面を三角形状としたタイルの斜視図である。
【図15】図14のタイルを背面側から見た斜視図である。
【図16】図14及び図15タイルの裏面パターンを備える縦長タイルを示す図である。
【符号の説明】
1、21…タイル、 2、22…面板部、 3、23…リブ、 3e、23e…上端縁、 4、24…係合部、 4a、4b、5a、5b、5c、5d…傾斜面、 5、25…尾部、 5e、25e…下端縁、 6、26、28a…側縁部、 11、31…枠、 12、32…上型、 12a、14、34…ラバー層、13、33…下型、13a…側縁部創成面、 14a、34a…膨出部、 14b、34b…傾斜創成面、 14c、34c…アリ足創成部、 27…垂れ防止端面、 28…幕板部。
Claims (1)
- 面板部の上端から背部側に屈曲させたリブを備えると共に、このリブの下方に連ねて係合部を形成し、更に前記面板部の背部の下端は下段配置のタイルのリブを覆うことを可能とするための突起状の尾部を備えたラップ式タイルの成形方法であって、前記ラップ式タイルのプレス成形に際して、タイルの表面側の前記面板部及びリブを創成する一体の第1の型と、タイルの裏面側の前記面板部、リブ及び尾部を創成する一体の第2の型を用い、前記リブの上端縁部分と、前記尾部の下端縁部分とのみを、略同じ圧縮比で成形することを特徴とするラップ式タイルの製造方法。
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