JP3579133B2 - 画像形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像カラー感光要素を用いた画像形成方法に関するものであり、特に環境温度変動に対する安定性が良好な画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱現像感光材料はこの技術分野では公知であり、熱現像感光材料とそのプロセスについては、例えば「写真工学の基礎」非銀塩写真編(1982年コロナ社発行)の242頁〜255頁に記載されている。
【0003】
熱現像でカラー画像を得る方法についても、多くの方法が提案されている。例えば、米国特許第3531286号、同3761270号、同4021240号、ベルギー特許第802519号、リサーチディスクロージャー誌(以下RDと略称する。)1975年9月31〜32頁等には現像薬の酸化体とカプラーとの結合により色画像を形成する方法が提案されている。
【0004】
しかし、上記のカラー画像を得る熱現像感光材料は非定着型であるため画像形成後もハロゲン化銀が残っており、強い光にさらされたり、長期保存をすると徐々に白地が着色しているという重大な問題を引き起こされる。さらに、以上の諸方法では一般に現像に比較的長時間を要し、得られた画像も高いカブリと低い画像濃度しか得られないという欠点を有していた。
【0005】
これらの欠点を改善するため、加熱により画像状に拡散性の色素を形成または放出させ、この拡散性の色素を、水などの溶媒によって媒染剤を有する受像材料に転写する方法が提案されている(米国特許第4500626号、同4483914号、同4503137号、同4559920号;特開昭59−165054号等)。
【0006】
上記の方法では、まだ現像温度が高く、感光材料の経時安定性も充分とは言えない。そこで塩基あるいは塩基プレカーサーと微量の水の存在下で加熱現像し、色素の転写を行なわせることにより現像促進、現像温度の低下、処理の簡易化をする方法が特開昭59−218443号、同61−238056号、欧州特許210660A2号等に開示されている。
【0007】
熱現像でポジのカラー画像を得る方法についても多くの方法が提案されている。その中でも、米国特許第4559290号にはいわゆるDRR化合物を色像放出能力のない酸化型にした化合物と還元剤もしくはその前駆体を存在させ、熱現像によりハロゲン化銀の露光量に応じて還元剤を酸化させ、酸化されずに残った還元剤により還元して拡散性色素を放出させる方法が提案されている。また、米国特許4783396号、特開昭64−13546号には、同様の機構で拡散性色素を放出する耐拡散性化合物として、N−X結合(Xは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表わす。)の還元的な開裂によって拡散性色素を放出する耐拡散性化合物を用いる熱現像カラー感光材料が記載されている。この方法は、支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、バインダー、電子供与体および/またはその前駆体(耐拡散性を持つことが好ましい)、および還元されて拡散性色素を放出するそれ自身は耐拡散性の化合物を有する多層構成の熱現像カラー感光材料を、露光後加熱してハロゲン化銀の量に応じて電子供与体を酸化し、前記の被還元性色素供与性化合物を酸化されずに残った電子供与体により還元して拡散性の色素を放出させ、これを媒染剤を有する色素固定材料に転写してポジのカラー画像を形成する方法である。
【0008】
上記に引用した特許明細書には、感光材料中に難溶性金属化合物を含ませ、また色素固定材料に前記難溶性金属化合物と水を媒体として醋形成反応し塩基を放出する化合物(以下醋形成化合物という)を含有させておき、感光材料に露光を与えた後、水を付与してから色素固定材料と重ね合わせて加熱し画像を形成する態様が記載されている。
【0009】
また、上記方法で水を供給するときの環境湿度や水温などの条件が変わるときの吸水量が変動を少なくして画像濃度を安定化する方法として、水を供給する要素を予め,40℃以上に加熱する方法が特願平6−272261号に提案されている。
【0010】
しかしながら、上記方法では画像出力時の環境温度の変化によって濃度変動し画像濃度の安定性はまだ不十分であり、また、画像濃度むらが発生する問題もあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、環境温度変動に対する写真性能の安定性が良好な画像形成方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を解決すべく研究を行った結果、下記の画像形成方法によって目的が達成されることを見出した。
【0013】
少なくとも感光性ハロゲン化銀、バインダーおよび露光量に対応または逆対応して拡散性の色素を形成または放出する色素供与化合物を含有する感光要素を画像露光し、塩基および/または塩基プレカーサーの存在下で熱現像することによって生成または放出した拡散性色素を転写する画像形成方法において、画像露光ののち該感光要素に水を供給し、熱現像する工程を有し、かつ露光時の感光要素温度を40〜90℃にすることを特徴とする画像形成方法。
【0014】
本発明者は、画像出力時の環境温度変化による濃度変動の原因は露光時の環境温度変化による濃度変動であることを見いだした。また、画像濃度むらの原因は感材要素の吸水時に均一に水が付与されないことに原因があることを見いだした。
【0015】
更に、本発明者は露光時の環境温度変化による濃度変動は露光時に感光要素を40℃以上90℃以下の範囲の一定温度に加熱することによって解消されること、感光要素に水供給する前に感光要素を40℃以上90℃以下に加熱することにより、吸水むらが改善されることを見いだした。
吸水むら改良は加熱後直ぐに水供給することによって改善される。加熱後5分以内好ましくは1分以内に水供給することが良い。吸水むらは感材要素膜面の水の濡れ性に関係すると推定されるがメカニズムは明らかになっていない。
【0016】
以上のように本発明者は露光時に感光要素を40〜90℃の範囲の一定温度に加熱することによって、濃度変動および画像むらを同時に改善できることを見いだした。この加熱は、露光の間、好ましくは感光要素温度が50〜90℃の範囲の一定温度となるように行なわれる。ここで一定温度とは設定温度の±5℃、特に±3℃の範囲をいう。加熱手段としては、特に問わないが、例えば熱板の間を通したり、熱板に接触させる加熱、熱ドラムや熱ローラーを回転させながら接触させる加熱、熱気中を通すことによる加熱、その他ローラーやベルトあるいはガイド部材によって熱源に沿わせて移動させることによる加熱などを用いることができる。また、加熱は熱現像と同一温度で同一加熱装置で行うことが、装置の小型化や小電力の点で好ましい方法である。
【0017】
本発明の水供給方法は特に限定されるものではないが、具体的な例としては、熱現像工程より感光材料の搬送方向上流側に水供給部が設けられており、所定温度に温められた水を感材表面に供給する。この水供給部の構成としては、例えば皿状の容器内に貯留している水に感光材料を所定時間浸漬させたのち、余分な表面の水をスクイズロールなどを用いて除去する方法、または、上述の容器内からフェルトを突出させてその先端部を感光材料の表面に押しつけることにより水を塗布したのち、余分な表面の水をスクイズロールなどを用いて除去する方法、更に、スリットが形成された筒体を感光材料と対向配置し、そのスリット部と感光材料表面を接する様に搬送し、スリット部から所定温度に温められた水を押し出しことにより水を塗布する方法がある。また、これらの方法で水塗布した後、余分な表面の水をスクイズロールなどを用いて除去する方法など種々の形態が可能である(特開昭62−212653、同62−929558、特開平4−275551、同4−275550、同4−43350、同3−294855、同3−110559等)。
【0018】
本発明に用いる熱現像感光要素(以下感光材料ということもある)は、上記の成分の他に必要に応じて有機金属塩酸化剤などを含有させることができる。
これらの成分は同一の層に添加することが多いが、反応可能な状態であれば別層に分割して添加することもできる。例えば着色している被還元性色素供与性化合物はハロゲン化銀乳剤の下層に存在させると感度の低下を妨げる。電子伝達剤は熱現像感光材料に内蔵するのが好ましいが、例えば後述する色素固定要素から拡散させるなどの方法で、外部から供給するようにしてもよい。
【0019】
本発明の水供給量は、水の存在下で熱現像して拡散性の色素像を色素固定要素に転写するために必要とする水量であり、熱現像カラー感光材料のゼラチン塗布量、色素固定要素のゼラチン塗布量などによって決定され、1〜40g/mの範囲内にあり、好ましくは 3〜30g/m、特に好ましくは6〜25g/mの範囲内にある。
【0020】
本発明の青感性乳剤層、緑感性乳剤層、赤感性乳剤層の配列順序は任意であり通常型のカラー感光材料で知られている種々の配列順序を採ることができる。また、これらの各感光層は特開平1−252954号等に記載されているように、必要に応じて2層以上に分割してもよい。
熱現像感光材料には、保護層、下塗り層、中間層、黄色フィルター層、アンチハレーション層、バック層等の種々の補助層を設けることができる。
支持体が、酸化チタンなどの白色顔料を含有したポリエチレンラミネート紙である場合にはバック層は、帯電防止機能を持ち表面抵抗率が1012Ω・cm以下になる様設計することが好ましい。
【0021】
本発明の各感光層に使用し得る感光性ハロゲン化銀は、塩化銀、臭化銀、沃臭化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、塩沃臭化銀のいずれでもよい。ハロゲン化銀乳剤は、表面潜像型乳剤であっても、内部潜像型乳剤であってもよい。内部潜像型乳剤は造核剤や光カブラセとを組合わせて直接反転乳剤として使用される。また、粒子内部と粒子表層が異なる相を持ったいわゆるコアシェル乳剤であってもよい。ハロゲン化銀乳剤は単分散でも多分散でもよく、単分散乳剤を混合して用いてもよい。特に階調の調節のため感度の異なる乳剤を混合する方法(例えば特開平1−167744号等)は好ましく用いられる。粒子サイズは0.1〜2μm、特に0.2〜1.5μmが好ましい。ハロゲン化銀粒子の晶癖は立方体、8面体、14面体、高アスペクト比の平板状その他のいずれでもよい。
本発明で使用する感光性ハロゲン化銀乳剤は、コアシェル乳剤が好ましい。また特開平3−110555号に記載されている変動係数20%以下の単分散乳剤が好ましい。
具体的には、米国特許第4,500,626号第50欄、同4,628,021号、リサーチ・ディスクロージャー誌(以下RDと略記する)17029(1978年)、特開昭62−253159号、特開平3−110555号、同2−236546号、同1−167743号等に記載されているハロゲン化銀乳剤のいずれもが使用できる。
【0022】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤を調整する過程で、過剰の塩を除去するいわゆる脱塩を行うことが好ましい。このための手段として、ゼラチンをゲル化させて行うヌーデル水洗法を用いても良く、また多価アニオンより成る無機塩類(例えば硫酸ナトリウム)、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウム)、あるいはゼラチン誘導体(例えば脂肪族アシル化ゼラチン、芳香族アシル化ゼラチン、芳香族カルバモイル化ゼラチンなど)を利用した沈降法を用いても良い。沈降法が好ましく用いられる。
【0023】
本発明で使用する感光性ハロゲン化銀乳剤は、種々の目的でイリジウム、ロジウム、白金、カドミウム、亜鉛、タリウム、鉛、鉄、オスミウムなどの重金属を含有させても良い。これらの化合物は、単独で用いても良いしまた2種以上組み合わせた用いてもよい。添加量は、使用する目的によるが一般的には、ハロゲン化銀1モルあたり10−9〜10−3モル程度である。また含有させる時には、粒子に均一に入れてもよいし、また粒子の内部や表面に局在させてもよい。具体的には、特開平2−236542号、同1−116637号、特願平4−126629号等に記載の乳剤が好ましく用いられる。
【0024】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成段階において、ハロゲン化銀溶剤としてロダン塩、アンモニア、4置換チオエーテル化合物や特公昭47−11386号記載の有機チオエーテル誘導体または特開昭53−144319号に記載されている含硫黄化合物等を用いることができる。
【0025】
その他の条件については、ピー グラフキデ著、「シミ− エ フィジック
フォトグラフィック」〔ポールモンテル社刊、1967年〕、ジー エフ デュフィン著、「フォトグラフィク エマルジョン ケミストリー」〔ザ フォーカル プレス社刊、1966年〕、ビィ エル ツェリクマン他著、「メーキングアンド コーティング フォトグラフィク エマルジョン 」〔ザ フォーカル プレス社刊、1964年〕などの記載を参照すれば良い。すなわち酸性法、中性法、アンモニア法のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせのいずれを用いてもよい。単分散乳剤を得るためには、同時混合法がこのましく用いられる。
粒子を銀イオン過剰の下において形成させる逆混合法も用いることができる。同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ、いわゆるコントロール ダブルジェット法も用いることができる。
【0026】
また、粒子成長を早めるために、添加する銀塩およびハロゲン塩の添加濃度、添加量、添加速度を上昇させてもよい(特開昭55−142329号、同55−158124号、米国特許3650757号等)。
さらに反応液の攪拌方法は、公知のいずれの攪拌方法でもよい。またハロゲン化銀粒子形成中の反応液の温度、pHは目的におうじてどのように設定してもよい。好ましいpH範囲は2.2〜7.0、よりこのましくは2.5〜6.0である。
【0027】
感光性ハロゲン化銀乳剤は通常は化学増感されたハロゲン化銀乳剤である。本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤の化学増感には、通常型感光材料用乳剤で公知の硫黄増感法、還元増感法、貴金属増感法およびセレン増感法などを単独または組合わせて用いることができる(例えば特開平3−110555号、特願平4−75798号など)。これらの化学増感を含窒素複素環化合物の存在下で行うこともできる(特開昭62−253159号)。
化学増感時のpHは好ましくは5.3〜10.5、より好ましくは5.5〜8.5であり、pAgは好ましくは6.0〜10.5、より好ましくは6.8〜9.0である。
本発明において使用される感光性ハロゲン化銀の塗設量は、銀換算1mgないし10g/mの範囲である。
【0028】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀に緑感性、赤感性の感色性を持たせるためには、感光性ハロゲン化銀乳剤をメチン色素類その他によって分光増感する。また、必要に応じて青感性乳剤に青色領域の分光増感を施してもよい。
用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。
具体的には、米国特許第4,617,257号、特開昭59−180550号、同60−140335号、RD17029(1978年)12〜13頁等に記載の増感色素が挙げられる。
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合わせを用いてもよく、増感色素の組合わせは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、強色増感を示す化合物を乳剤中に含んでもよい(例えば米国特許第3,615,641号、特開昭63−23145号等に記載のもの)。
これらの増感色素を乳剤中に添加する時期は化学熟成時もしくはその前後でもよいし、米国特許第4,183,756号、同4,225,666号に従ってハロゲン化銀粒子の核形成前後でもよい。添加量は一般にハロゲン化銀1モル当り10−8ないし10−2モル程度である。
【0029】
本発明に用いられる未化学増感ハロゲン化銀乳剤は、前記の青感光性ハロゲン化銀乳剤、緑感光性ハロゲン化銀乳剤、赤感性ハロゲン化銀乳剤の少なくとも1つに加えて用いられる。本発明では特に、緑感性ハロゲン化銀乳剤層に未化学増罐ハロゲン化銀乳剤を加えることが色再現性、白地および経時での安定性を良化させる効果が大きく好ましい。色再現性および経時での安定性を良化させる機構は良く分かっていないが、感光性に寄与しない未化学増感ハロゲン化銀乳剤を加える事により、上記効果が得られた事は予想できない事であった。
用いられる未化学増感ハロゲン化銀乳剤は、平均粒子サイズが0.3μ以下でかつ塩化銀含有率50%以上の塩臭化銀、塩沃臭化銀が用いられる。粒子サイズが、0.2μ以下のものが好ましい。また塩化銀含有率60%以上の塩臭化銀が好ましい。
本発明に用いられる未化学増感ハロゲン化銀乳剤の調製法は化学増感を施さない他は前述の感光性ハロゲン化銀乳剤の調製法と同様の方法が用いられる。
本発明で用いる平均粒子サイズが0.3μ以下でかつ塩化銀含有率50%以上の未化学増感の塩臭化銀、塩沃臭化銀ハロゲン化銀乳剤は、実質的に感光性を持たない。
これらの未化学増感ハロゲン化銀乳剤の添加量は、緑感光性ハロゲン化銀乳剤に対して銀量で30%以下が好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0030】
本発明の乳剤の調製時に用いられる保護コロイドとしておよびその他の感光材料や色素固定要素の構成層のバインダーにはゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性のバインダーも用いることができる。その例としては特開昭62−253159号の(26)頁〜(28)頁に記載されたものが挙げられる。具体的には、透明か半透明の親水性バインダーが好ましく、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体等のタンパク質またはセルロース誘導体、デンプン、アラビアゴム、デキストラン、プルラン等の多糖類のような天然化合物と、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体、その他の合成高分子化合物が挙げられる。また、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマーとの共重合体(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、住友化学(株)製のスミカゲルL−5H)も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0031】
微量の水を供給して熱現像を行うシステムを採用する場合、上記の高吸水性ポリマーを用いることにより、水の吸収を迅速に行うことが可能となる。また、高吸水性ポリマーを色素固定層やその保護層に使用すると、転写後に色素が色素固定要素から他のものに再転写するのを防止することができる。
本発明において、バインダーの塗布量は1m当たり20g以下が好ましく、特に10g以下、更には7g以下にするのが適当である。
【0032】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀と共に、有機金属塩を酸化剤として併用することもできる。このような有機金属塩の中、有機銀塩は、特に好ましく用いられる。
上記の有機銀塩酸化剤を形成するのに使用し得る有機化合物としては、米国特許第4,500,626号第52〜53欄等に記載のベンゾトリアゾール類、脂肪酸その他の化合物がある。また特開昭60−113235号記載のフェニルプロピオール酸銀などのアルキニル基を有するカルボン酸の銀塩や、特開昭61−249044号記載のアセチレン銀も有用である。有機銀塩は2種以上を併用してもよい。
以上の有機銀塩は、感光性ハロゲン化銀1モルあたり、0.01ないし10モル、好ましくは0.01ないし1モルを併用することができる。感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の塗布量合計は銀換算で50mgないし10g/mが適当である。
【0033】
本発明においては種々のカブリ防止剤または写真安定剤を使用することができる。その例としては、RD17643(1978年)24〜25頁に記載のアゾール類やアザインデン類、特開昭59−168442号記載の窒素を含むカルボン酸類およびリン酸類、あるいは特開昭59−111636号、特開平4−73649号記載のメルカプト化合物およびその金属塩、特開昭62−87957号、特開平4−255845号に記載されているアセチレン化合物類などが用いられる。
【0034】
感光材料または色素固定要素の構成層(バック層を含む)には、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のヒビ割れ防止、圧力増減感防止等の膜物性改良の目的で種々のポリマーラテックスを含有させることができる。具体的には、特開昭62−245258号、同62−136648号、同62−110066号等に記載のポリマーラテックスのいずれも使用できる。特に、ガラス転移点の低い(40℃以下)ポリマーラテックスを媒染層に用いると媒染層のヒビ割れを防止することができ、またガラス転移点が高いポリマーラテックスをバック層に用いるとカール防止効果が得られる。
【0035】
本発明に用いる電子供与体としては、熱現像感光材料の分野で知られているものを用いることができる。また、それ自身は還元性を持たないが現像過程で求核試薬や熱の作用により還元性を発現する還元剤プレカーサーも用いることができる。
本発明に用いられる電子供与体の例としては、米国特許第4,500,626号の第49〜50欄、同4,483,914号の第30〜31欄、同4,330,617号、同4,590,152号、特開昭60−140335号の第(17)〜(18)頁、同57−40245号、同56−138736号、同59−178458号、同59−53831号、同59−182449号、同59−182450号、同60−119555号、同60−128436号から同60−128439号まで、同60−198540号、同60−181742号、同61−259253号、同62−244044号、同62−131253号から同62−131256号まで、欧州特許第220,746A2号の第78〜96頁等に記載の電子供与体や電子供与体プレカーサーがある。
米国特許第3,039,869号に開示されているもののような種々の電子供与体の組合せも用いることができる。
【0036】
電子伝達剤またはそのプレカーサーは、前記した電子供与体またはそのプレカーサーの中から選ぶことができる。電子伝達剤またはそのプレカーサーはその移動性が耐拡散性の電子供与体より大きいことが望ましい。特に有用な電子伝達剤は1−フェニル−3−ピラゾリドン類又はアミノフェノール類である。
電子伝達剤と組合せて用いる耐拡散性の電子供与体としては、前記した還元剤の中で感光材料の層中で実質的に移動しないものであればよく、好ましくはハイドロキノン類、スルホンアミドフェノール類、スルホンアミドナフトール類、特開昭53−110827号に電子供与体として記載されている化合物が挙げられる。
本発明に於いては電子供与体と電子伝達剤の総添加量は銀1モルに対して0.01〜20モル、特に好ましくは0.1〜10モルである。
【0037】
本発明で用いられる色素供与物質は、高温状態下で銀イオンが銀に還元される際、この反応に逆対応して可動性色素を生成するか、あるいは放出する化合物である。
色素供与性化合物の例として、画像状に拡散性色素を放出乃至拡散する機能を持つ化合物を挙げることができる。この型の化合物は次の一般式〔LI〕で表わすことができる。
(Dye−Y)n−Z 〔LI〕
Dyeは色素基、一時的に短波化された色素基または色素前駆体基を表わし、Yは単なる結合又は連結基を表わし、Zは画像状に潜像を有する感光性銀塩に対応又は逆対応して(Dye−Y)n−Zで表わされる化合物の拡散性に差を生じさせるか、または、Dyeを放出し、放出されたDyeと(Dye−Y)n−Zとの間に拡散性において差を生じさせるような性質を有する基を表わし、nは1または2を表わし、nが2の時、2つのDye−Yは同一でも異なっていてもよい。
一般式〔LI〕で表わされる色素供与性化合物の具体例としては下記の▲1▼〜▲3▼の化合物を挙げることができる。尚、下記の▲1▼〜▲3▼はハロゲン化銀の現像に逆対応して拡散性の色素像(ポジ色素像)を形成するものである。
【0038】
▲1▼米国特許第3,134,764号、同3,362,819号、同3,597,200号、同3,544,545号、同3,482,972号等に記載されている、ハイドロキノン系現像薬と色素成分を連結した色素現像薬。この色素現像薬はアルカリ性の環境下で拡散性であるが、ハロゲン化銀と反応すると非拡散性になるものである。
▲2▼米国特許第4,503,137号等に記されている通り、アルカリ性の環境下で拡散性色素を放出するがハロゲン化銀と反応するとその能力を失う非拡散性の化合物も使用できる。その例としては、米国特許第3,980,479号等に記載された分子内求核置換反応により拡散性色素を放出する化合物、米国特許第4,199,354号等に記載されたイソオキサゾロン環の分子内巻き換え反応により拡散性色素を放出する化合物が挙げられる。
【0039】
▲3▼米国特許第4,559,290号、欧州特許第220,746A2号、米国特許第4,783,396号、公開技報87−6199等に記されている通り、現像によって酸化されずに残った還元剤と反応して拡散性色素を放出する非拡散性の化合物も使用できる。
その例としては、米国特許第4,139,389号、同4,139,379号、特開昭59−185333号、同57−84453号等に記載されている還元された後に分子内の求核置換反応により拡散性の色素を放出する化合物、米国特許第4,232,107号、特開昭59−101649号、同61−88257号、RD24025(1984年)等に記載された還元された後に分子内の電子移動反応により拡散性の色素を放出する化合物、西独特許第3,008,588A号、特開昭56−142530号、米国特許第4,343,893号、同4,619,884号等に記載されている還元後に一重結合が開裂して拡散性の色素を放出する化合物、米国特許第4,450,223号等に記載されている電子受容後に拡散性色素を放出するニトロ化合物、米国特許第4,609,610号等に記載されている電子受容後に拡散性色素を放出する化合物等が挙げられる。
【0040】
また、より好ましいものとして、欧州特許第220,746A2号、公開技報87−6199、米国特許第4,783,396号、特開昭63−201653号、同63−201654号等に記載された一分子内にN−X結合(Xは酸素、硫黄または窒素原子を表す)と電子吸引性基を有する化合物、特開平1−26842号に記載された一分子内にSO−X(Xは上記と同義)と電子吸引性基を有する化合物、特開昭63−271344号に記載された一分子内にPO−X結合(Xは上記と同義)と電子吸引性基を有する化合物、特開昭63−271341号に記載された一分子内にC−X′結合(X′はXと同義か又は−SO−を表す)と電子吸引性基を有する化合物が挙げられる。また、特開平1−161237号、同1−161342号に記載されている電子受容性基と共役するπ結合により還元後に一重結合が開裂し拡散性色素を放出する化合物も利用できる。
この中でも特に一分子内にN−X結合と電子吸引性基を有する化合物が好ましい。その具体例は欧州特許第220,746A2号または米国特許第4,783,396号に記載された化合物(1)〜(3)、(7)〜(10)、(12)、(13)、(15)、(23)〜(26)、(31)、(32)、(35)、(36)、(40)、(41)、(44)、(53)〜(59)、(64)、(70)、公開技報87−6199に記載された化合物(11)〜(23)などである。
【0041】
本発明では、前述の如く現像抑制剤放出レドックス化合物を用いる事が出来る。例えば、特開昭61−213,847号、同62−260,153号、特開平2−68,547号、同2−110,557号、同2−253,253号、同1−150,135号に記載されたものを用いることができる。
本発明に用いられる現像抑制剤放出レドックス化合物の合成法は例えば特開昭61−213,847号、同62−260,153号、米国特許第4,684,604号、特開平1−269936号、米国特許第3,379,529号、同3,620,746号、同4,377,634号、同4,332,878号、特開昭49−129,536号、同56−153,336号、同56−153,342号などに記載されている。
【0042】
本発明の現像抑制剤放出レドックス化合物は、ハロゲン化銀1モルあたり1×10−6〜5×10−2モル、より好ましくは1×10−5〜1×10−2モルの範囲内で用いられる。本発明に用いられる現像抑制剤放出レドックス化合物は、適当な水混和性有機溶媒、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既に良く知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作成して用いることもできる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、現像抑制剤放出レドックス化合物の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散して用いることもできる。
【0043】
本発明の熱現像カラー感光材料は、デキストラン、プルランおよびこれらの誘導体の1種以上を含有しても良い。
デキストラン、プルランは多糖類の一種で、D−グルコースの重合体である。本発明に用いるデキストランは分子量2万〜200万のものが好ましく、特に10万〜80万のものが好ましい。またプルランは2万〜200万のものが好ましい。
デキストラン、プルランおよびこれらの誘導体を含有させる層は熱現像感光材料のいずれの層でもよいが、中間層、保護層に含有させる事が好ましい。
デキストラン、プルランおよび/またはこれらの誘導体の使用量は0.01〜10g/m、好ましくは0.05〜5g/mの範囲である。このような使用範囲とするのは、0.01g/m未満では本発明の実効がなく、10g/mをこえると膜質が逆に悪化するからである。
【0044】
色素供与性化合物、耐拡散性還元剤、電子供与体などの疎水性添加剤は米国特許第2,322,027号記載の方法などの公知の方法により感光材料の層中に導入することができる。この場合には、特開昭59−83154号、同59−178451号、同59−178452号、同59−178453号、同59−178454号、同59−178455号、同59−178457号などに記載のような高沸点有機溶媒を、必要に応じて沸点50℃〜160℃の低沸点有機溶媒と併用して、用いることができる。
高沸点有機溶媒の量は用いられる色素供与性化合物1gに対して10g以下、好ましくは5g以下である。また、バインダー1gに対して1cc以下、更には0.5cc以下、特に0.3cc以下が適当である。
特公昭51−39853号、特開昭51−59943号に記載されている重合物による分散法も使用できる。
水に実質的に不溶な化合物の場合には、前記方法以外にバインダー中に微粒子にして分散含有させることができる。
疎水性化合物を親水性コロイドに分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。例えば特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁に界面活性剤として挙げたものを使うことができる。
本発明においては感光材料に現像の活性化と同時に画像の安定化を図る化合物を用いることができる。好ましく用いられる具体的化合物については米国特許第4,500,626号の第51〜52欄に記載されている。
【0045】
色素の拡散転写により画像を形成するシステムにおいては感光材料と共に色素固定要素が用いられる。色素固定要素は感光材料とは別々の支持体上に別個に塗設される形態であっても、感光材料と同一の支持体上に塗設される形態であってもよい。感光材料と色素固定要素相互の関係、支持体との関係、白色反射層との関係は米国特許第4,500,626号の第57欄に記載の関係が本願にも適用できる。
本発明に好ましく用いられる色素固定要素は媒染剤とバインダーを含む層を少なくとも1層有する。媒染剤は写真分野で公知のものを用いることができ、その具体例としては米国特許第4,500,626号第58〜59欄や特開昭61−88256号第(32)〜(41)頁に記載の媒染剤、特開昭62−244043号、同62−244036号等に記載のものを挙げることができる。また、米国特許第4,463,079号に記載されているような色素受容性の高分子化合物を用いてもよい。
色素固定要素には必要に応じて保護層、剥離層、カール防止層などの補助層を設けることができる。特に保護層を設けるのは有用である。
【0046】
感光材料および色素固定要素の構成層には、可塑剤、スベリ剤、あるいは感光材料と色素固定要素の剥離性改良剤として高沸点有機溶媒を用いることができる。具体例には特開昭62−253159号の(25)頁、同62−245253号などに記載されたものがある。
更に、上記の目的のために、各種のシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイルからジメチルシロキサンに各種の有機基を導入した変性シリコーンオイルまでの総てのシリコーンオイル)を使用できる。その例としては、信越シリコーン(株)発行の「変性シリコーンオイル」技術資料P6−18Bに記載の各種変性シリコーンオイル、特にカルボキシ変性シリコーン(商品名X−22−3710)などが有効である。
また特開昭62−215953号、同63−46449号に記載のシリコーンオイルも有効である。
【0047】
感光材料や色素固定要素には退色防止剤を用いてもよい。退色防止剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、あるいはある種の金属錯体がある。
酸化防止剤としては、例えばクロマン系化合物、クマラン系化合物、フェノール系化合物(例えばヒンダードフェノール類)、ハイドロキノン誘導体、ヒンダードアミン誘導体、スピロインダン系化合物がある。また、特開昭61−159644号記載の化合物も有効である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物(米国特許第3,533,794号など)、4−チアゾリドン系化合物(米国特許第3,352,681号など)、ベンゾフェノン系化合物(特開昭46−2784号など)、その他特開昭54−48535号、同62−136641号、同61−88256号等に記載の化合物がある。また、特開昭62−260152号記載の紫外線吸収性ポリマーも有効である。
金属錯体としては、米国特許第4,241,155号、同4,245,018号第3〜36欄、同第4,254,195号第3〜8欄、特開昭62−174741号、同61−88256号(27)〜(29)頁、同63−199248号、特開平1−75568号、同1−74272号等に記載されている化合物がある。
【0048】
有用な退色防止剤の例は特開昭62−215272号(125)〜(137)頁に記載されている。
色素固定要素に転写された色素の退色を防止するための退色防止剤は予め色素固定要素に含有させておいてもよいし、感光材料などの外部から色素固定要素に供給するようにしてもよい。
上記の酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属錯体はこれら同士を組み合わせて使用してもよい。
感光材料や色素固定要素には蛍光増白剤を用いてもよい。特に色素固定要素に蛍光増白剤を内蔵させるか、感光材料などの外部から供給させるのが好ましい。その例としては、K.Veenkataraman 編「The Chemistry of Synthetic Dyes 」第V巻第8章、特開昭61−143752号などに記載されている化合物を挙げることができる。より具体的には、スチルベン系化合物、クマリン系化合物、ビフェニル系化合物、ベンゾオキサゾリル系化合物、ナフタルイミド系化合物、ピラゾリン系化合物、カルボスチリル系化合物などが挙げられる。
蛍光増白剤は退色防止剤と組み合わせて用いることができる。
【0049】
感光材料や色素固定要素の構成層に用いる硬膜剤としては、米国特許第4,678,739号第41欄、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号などに記載の化合物)が挙げられる。特に好ましくは特開平3−114,043記載のビニルスルホン系硬膜剤が用いられる。
【0050】
感光材料や色素固定要素の構成層には、塗布助剤、剥離性改良、スベリ性改良、帯電防止、現像促進等の目的で種々の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤の具体例は特開昭62−173463号、同62−183457号等に記載されている。
感光材料や色素固定要素の構成層には、スベリ性改良、帯電防止、剥離性改良等の目的で有機フルオロ化合物を含ませてもよい。有機フルオロ化合物の代表例としては、特公昭57−9053号第8〜17欄、特開昭61−20944号、同62−135826号等に記載されているフッ素系界面活性剤、またはフッ素油などのオイル状フッ素系化合物もしくは四フッ化エチレン樹脂などの固体状フッ素化合物樹脂などの疎水性フッ素化合物が挙げられる。
【0051】
感光材料や色素固定要素にはマット剤を用いることができる。マット剤としては二酸化ケイ素、ポリオレフィンまたはポリメタクリレートなどの特開昭61−88256号(29)頁記載の化合物の他に、ベンゾグアナミン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ、AS樹脂ビーズなどの特開昭63−274944号、同63−274952号記載の化合物がある。
その他、感光材料および色素固定要素の構成層には、熱溶剤、消泡剤、防菌防バイ剤、コロイダルシリカ等を含ませてもよい。これらの添加剤の具体例は特開昭61−88256号第(26)〜(32)頁に記載されている。また好ましい防菌防バイ剤として特開平3−11338号のものがもちいられる。
【0052】
本発明において感光材料及び/又は色素固定要素には画像形成促進剤を用いることができる。画像形成促進剤には銀塩酸化剤と還元剤との酸化還元反応の促進、色素供与性物質からの色素の生成または色素の分解あるいは拡散性色素の放出等の反応の促進および、感光材料層から色素固定層への色素の移動の促進等の機能があり、物理化学的な機能からは塩基または塩基プレカーサー、求核性化合物、高沸点有機溶媒(オイル)、熱溶剤、界面活性剤、銀または銀イオンと相互作用を持つ化合物等に分類される。ただし、これらの物質群は一般に複合機能を有しており、上記の促進効果のいくつかを合せ持つのが常である。これらの詳細については米国特許4,678,739号第38〜40欄に記載されている。
塩基プレカーサーとしては、熱により脱炭酸する有機酸と塩基の塩、分子内求核置換反応、ロッセン転位またはベックマン転位によりアミン類を放出する化合物などがある。その具体例は米国特許第4,511,493号、特開昭62−65038号等に記載されている。
【0053】
少量の水の存在下に熱現像と色素の転写を同時に行うシステムにおいては、塩基及び/又は塩基プレカーサーは色素固定要素に含有させるのが感光材料の保存性を高める意味で好ましい。
本発明においては欧州特許公開210,660号、米国特許第4,740,445号に記載されている難溶性金属化合物およびこの難溶性金属化合物を構成する金属イオンと錯形成反応しうる化合物(錯形成化合物という)の組合せを用いる。具体的には、特開平2−269,338号第(2)〜(6)頁に記載されている。難溶性金属化合物として特に好ましい化合物は、水酸化亜鉛,酸化亜鉛および両者の混合物である。
【0054】
本発明において感光材料及び/又は色素固定要素には、現像時の処理温度および処理時間の変動に対し、常に一定の画像を得る目的で種々の現像停止剤を用いることができる。
ここでいう現像停止剤とは、適性現像後、速やかに塩基を中和または塩基と反応して膜中の塩基濃度を下げ現像を停止する化合物または銀および銀塩と相互作用して現像を抑制する化合物である。具体的には、加熱により酸を放出する酸プレカーサー、加熱により共存する塩基と置換反応を起す親電子化合物、または含窒素ヘテロ環化合物、メルカプト化合物及びその前駆体等が挙げられる。更に詳しくは特開昭62−253159号(31)〜(32)頁に記載されている。
【0055】
本発明において感光材料や色素固定要素の支持体としては、処理温度に耐えることのできるものが用いられる。一般的には、紙、合成高分子(フィルム)が挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、セルロース類(例えばトリアセチルセルロース)またはこれらのフィルム中へ酸化チタンなどの顔料を含有させたもの、更にポリプロピレンなどから作られるフィルム法合成紙、ポリエチレン等の合成樹脂パルプと天然パルプとから作られる混抄紙、ヤンキー紙、バライタ紙、コーティッドペーパー(特にキャストコート紙)、金属、布類、ガラス類等が用いられる。
これらは、単独で用いることもできるし、ポリエチレン等の合成高分子で片面または両面をラミネートされた支持体として用いることもできる。
この他に、特開昭62−253159号(29)〜(31)頁に記載の支持体、特開平2−272543号、同2−22651号記載の支持体が好ましく用いることができる。
これらの支持体の表面に親水性バインダーとアルミナゾルや酸化スズのような半導性金属酸化物、カーボンブラックその他の帯電防止剤を塗布してもよい。
【0056】
感光材料に画像を露光し記録する方法としては、例えばカメラなどを用いて風景や人物などを直接撮影する方法、プリンターや引伸機などを用いてリバーサルフィルムやネガフィルムを通して露光する方法、複写機の露光装置などを用いて、原画をスリットなどを通して走査露光する方法、画像情報を電気信号を経由して発光ダイオード、各種レーザーなどを発光させ露光する方法、画像情報をCRT、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイなどの画像表示装置に出力し、直接または光学系を介して露光する方法などがある。
【0057】
感光材料へ画像を記録する光源としては、上記のように、自然光、タングステンランプ、発光ダイオード、レーザー光源、CRT光源などの米国特許第4,500,626号第56欄記載の光源を用いることができる。
また、非線形光学材料とレーザー光等のコヒーレントな光源を組み合わせた波長変換素子を用いて画像露光することもできる。ここで非線形光学材料とは、レーザー光のような強い光電界をあたえたときに現れる分極と電界との間の非線形性を発現可能な材料であり、ニオブ酸リチウム、リン酸二水素カリウム(KDP)、沃素酸リチウム、BaBなどに代表される無機化合物や、尿素誘導体、ニトロアニリン誘導体、例えば3−メチル−4−ニトロピリジン−N−オキシド(POM)のようなニトロピリジン−N−オキシド誘導体、特開昭61−53462号、同62−210432号に記載の化合物が好ましく用いられる。波長変換素子の形態としては、単結晶光導波路型、ファイバー型等が知られておりそのいずれもが有用である。
また、前記の画像情報は、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等から得られる画像信号、日本テレビジョン信号規格(NTSC)に代表されるテレビ信号、原画をスキャナーなど多数の画素に分割して得た画像信号、CG、CADで代表されるコンピューターを用いて作成された画像信号を利用できる。
【0058】
感光材料及び/又は色素固定要素は、加熱現像もしくは色素の拡散転写のための加熱手段としての導電性の発熱体層を有する形態であってもよい。この場合の透明または不透明の発熱要素には、特開昭61−145544号等に記載のものを利用できる。なおこれらの導電層は帯電防止層としても機能する。
熱現像工程での加熱温度は、約50℃〜約250℃で現像可能であるが、特に約80℃〜約180℃が有用である。色素の拡散転写工程は熱現像と同時に行ってもよいし、熱現像工程終了後に行ってもよい。後者の場合、転写工程での加熱温度は、熱現像工程における温度から室温の範囲で転写可能であるが、特に50℃以上で熱現像工程における温度よりも約10℃低い温度までがより好ましい。
【0059】
色素の移動は熱のみによっても生じるが、色素移動を促進するために溶媒を用いてもよい。また、特開昭59−218443号、同61−238056号等に詳述されるように、少量の溶媒(特に水)の存在下で加熱して現像と転写を同時または連続して行う方法も有用である。この方式においては、加熱温度は50℃以上で溶媒の沸点以下が好ましい。例えば溶媒が水の場合は50℃以上100℃以下が望ましい。
現像の促進および/または拡散性色素の色素固定層への移動のために用いる溶媒の例としては、水または無機のアルカリ金属塩や有機の塩基を含む塩基性の水溶液(これらの塩基としては画像形成促進剤の項で記載したものが用いられる)を挙げることができる。また、低沸点溶媒、または低沸点溶媒と水もしくは塩基性の水溶液との混合溶液なども使用することができる。また界面活性剤、カブリ防止剤、難溶性金属塩と錯形成化合物を溶媒中に含ませてもよい。
【0060】
これらの溶媒は、色素固定要素、感光材料またはその両者に付与する方法で用いることができる。その使用量は全塗布膜の最大膨潤体積に相当する溶媒の重量以下(特に全塗布膜の最大膨潤体積に相当する溶媒の重量から全塗布膜の重量を差引いた量以下)という少量でよい。
感光層または色素固定層に溶媒を付与する方法としては、例えば、特開昭61−147244号(26)頁に記載の方法がある。また、溶媒をマイクロカプセルに閉じ込めるなどの形で予め感光材料もしくは色素固定要素またはその両者に内蔵させて用いることもできる。
【0061】
また色素移動を促進するために、常温では固体であり高温では溶解する親水性熱溶剤を感光材料または色素固定要素に内蔵させる方式も採用できる。親水性熱溶剤は感光材料、色素固定要素のいずれに内蔵させてもよく、両方に内蔵させてもよい。また内蔵させる層も乳剤層、中間層、保護層、色素固定層いずれでもよいが、色素固定層および/またはその隣接層に内蔵させるのが好ましい。
親水性熱溶剤の例としては、尿素類、ピリジン類、アミド類、スルホンアミド類、イミド類、アルコール類、オキシム類その他の複素環類がある。
また、色素移動を促進するために、高沸点有機溶剤を感光材料及び/又は色素固定要素に含有させておいてもよい。
【0062】
現像および/または転写工程における加熱方法としては、加熱されたブロックやプレートに接触させたり、熱板、ホットプレッサー、熱ローラー、ハロゲンランプヒーター、赤外および遠赤外ランプヒーターなどに接触させたり、高温の雰囲気中を通過させるなどがある。
感光要素と色素固定要素とを重ね合わせ、密着させる時の圧力条件や圧力を加える方法は特開昭61−147244号27頁に記載の方法が適用できる。
【0063】
以下実施例をもって本発明の説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
【実施例】
実施例1
特願平6−286122号の実施例1の感光材料101を作成し、9つに分割した。各感光材料の温度を10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃となるよう冷却ないし加熱し、それぞれに連続的に濃度が変化しているY・M・Cy・グレーのウェッジが記録されているテストチャート〕をスリットを通して走査露光し、5秒後露光済の感光材料を40℃に保温した水に2.5秒間浸したのち、ローラーで絞り直ちに受像材料(特願平6−286122号の実施例1の受像材料R101)と膜面が接するように重ね合わせた。次いで吸水した膜面の温度が80℃となるように温度調節したヒートドラムを用い、17秒間加熱し受像材料から感光材料をひきはがすと、受像材料上に原画に対応した鮮明なカラー画像が得られた。
表1に同一露光量における画像濃度をそれぞれの露光温度に対して示した。また、濃度むらの有無を示した。
【0065】
【表1】
Figure 0003579133
【0066】
表1の結果から明らかなように、露光温度40℃から90℃では濃度変動が少なく、かつ画像むらもない。
【0067】
実施例2
特願平6−219563号の実施例の感光材料101を作成し、9つに分割した。各感光材料の温度が10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃となるよう冷却ないし加熱し、それぞれに連続的に濃度が変化しているY・M・Cy・グレーのウェッジが記録されているテストチャート〕をスリットを通して走査露光し、5秒後露光済の感光材料を40℃に保温した水に2.5秒間浸したのち、ローラーで絞り直ちに受像材料(特願平6−219563号の実施例の受像材料R201)と膜面が接するように重ね合わせた。次いで吸水した膜面の温度が80℃となるように温度調節したヒートドラムを用い、30秒間加熱し受像材料から感光材料をひきはがすと、受像材料上に原画に対応した鮮明なカラー画像が得られた。
表1に同一露光量における画像濃度をそれぞれの露光温度に対して示した。また、濃度むらの有無を示した。
【0068】
【表2】
Figure 0003579133
【0069】
実施例1の結果と同様に、表2の結果から露光温度40℃から90℃では濃度変動が少なく、かつ画像むらもないことは明らかである。
なお、90℃以上の露光では感光要素のカールが大きくなり、搬送不良のため処理ができなかった。

Claims (2)

  1. 少なくとも感光性ハロゲン化銀、バインダーおよび露光量に対応または逆対応して拡散性の色素を形成または放出する色素供与化合物を含有する感光要素を画像露光し、塩基および/または塩基プレカーサーの存在下で熱現像することによって生成または放出した拡散性色素を転写する画像形成方法において、画像露光ののち該感光要素に水を供給し、熱現像する工程を有し、かつ露光時の感光要素温度を40〜90℃にすることを特徴とする画像形成方法。
  2. 前記露光時の感光要素温度を50〜90℃にすることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
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