JP3575151B2 - 電源装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電源装置に関し、特に燃料電池を用いた電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型等の燃料電池は、供給されるガスの化学エネルギーを、直接電気エネルギーに変換することができるので、高い発電効率が得られる。しかもこれらの燃料電池は、数100kWの大型のものから数100W程度の小規模のものまで実用化されつつある。その中で、特に小型の燃料電池は、例えば、ゴルフカート等の移動用、通信用、建築・土木工事用等の電源として使用されている。
【0003】
ところで、上記小型の燃料電池を用いた従来の電源装置は、燃料電池本体が収納されているケースの複数面に空気吸入口や反応ガス排出口が設けられ、電源非使用時にそれらの吸排口から外気等がケース内に侵入する可能性がある。その結果、燃料電池の電解質(例えば、リン酸等)が外気中の水分を吸収するため、電解質濃度が低下して電池特性が劣化するという課題があった。
【0004】
そこで、このような事態を回避するための従来例として、特開平5−190196号公報に示すようなものがある。以下、その構成について図6を参照にしながら説明する。図6に示す電源装置は、水素を燃料として発電動作をする燃料電池本体1と、この燃料電池本体1へ水素を供給する水素吸蔵合金から成る水素貯蔵装置2と、これら燃料電池本体1と水素貯蔵装置2とを収納するケース本体3と、このケース本体3を覆蓋する蓋体4とから成り、上記ケース本体3の一つの面に燃料電池発電動作に必要な空気を取り入れる空気吸入口5と、燃料電池発電動作に伴って生じる反応ガスを排気する反応ガス排出口6とを設けると共に、電源非使用時にはこれら吸排口5・6が上記蓋体4によって密閉されるように構成されている。電源非使用時には、吸排口5・6が蓋体4によって密閉されるので、これら吸排口5・6からケース本体3内に外気等が侵入し、白金触媒を有する一対の電極とともに燃料電池を構成するリン酸電解質の濃度が、外気中の水分によって低下することなく、電池特性の劣化を防止することができるようになっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のような電源装置では、外気との遮断を上記蓋体4によって行っているので、吸排口5・6それぞれの部分で遮断を行うよりもシール範囲が大きくなる。シール範囲が大きいとシール部に微小な隙間が生じやすくなり、気体の水分子は非常に小さくわずかな隙間でも通過しやすいため、ケース本体3内と外気との間の水分の出入りが生じ、外気中の水分による電解質濃度の低下が生じやすくなる。
【0006】
また、炭化水素系またはアルコール系の原燃料を改質した水素と一酸化炭素を含む改質ガスを燃料ガスとして用いた場合、電源使用後に蓋体4でケース本体3の上面を覆蓋し密閉すると、ケース本体3内に一酸化炭素が残留ガス内に含まれたまま放置されることになり、同様に硫黄分を含む原燃料を脱硫ののち改質して用いる場合には、ケース本体3内に硫黄が残留ガス内に含まれたまま放置されることになる。
【0007】
一酸化炭素及び硫黄分は燃料電池内の電極中の白金触媒やその他の貴金属系触媒を被毒し電池特性を劣化させる触媒毒の原因となるので、一般に運転中の改質ガスの一酸化炭素濃度はリン酸型では1%程度以下、固体高分子型では10ppm以下に低減され、硫黄分も除去されているが、ケース本体3内に一酸化炭素や極微量の硫黄分が含まれたまま密閉放置されると、長時間のうちに一酸化炭素や硫黄分により被毒される貴金属系触媒である白金触媒が被毒されてしまうという課題があった。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、電源非使用時には燃料電池本体を確実に密閉し、一酸化炭素により被毒される貴金属系触媒が一酸化炭素に被毒されることなく燃料電池本体内への外気や水分、異物等の侵入を防止し、また、電源非使用時には固体高分子型の燃料電池本体を密閉し、一酸化炭素により被毒される貴金属系触媒が被毒されることなく燃料電池本体内から外気への水分の散逸を防止すること等を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電源装置においては、燃料電池本体内に燃料ガスと酸化剤ガスの反応により発電する燃料電池部と、一酸化炭素除去手段と、燃料電池本体を密閉する密閉手段を備えている。この本発明によれば、外気中の水分吸収によって起こる電解濃度の低下を防ぎ、また、電池特性の劣化を防ぐことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は上記目的を達成するために、燃料電池本体内に、一酸化炭素により被毒される貴金属系触媒を有し燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部と、一酸化炭素除去手段とを備え、前記燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉する密閉手段を設けたものである。
【0011】
また、燃料電池部は、イオン伝導性を有する固体高分子膜と、前記固体高分子膜の両面に配された一対の電極とからなる固体高分子型燃料電池を、単独または複数個積層して構成したものである。
【0012】
また、密閉手段は、気密・液密性を有し、ガス入口および出口を覆蓋するフィルム状またはシート状の遮断膜からなるものである。
【0013】
また、密閉手段として、ガス入口に燃料電池本体上流側の圧力が燃料電池本体内の圧力より所定圧力だけ高くなったときに開成する逆止弁と、ガス出口に燃料電池本体内の圧力が燃料電池本体下流側の圧力より所定圧力だけ高くなったときに開成する逆止弁の少なくともどちらか一方を備えたものである。
【0014】
また、一酸化炭素除去手段として一酸化炭素の吸着剤を用いたものである。
また、一酸化炭素除去手段として一酸化炭素の選択的酸化装置を備えたものである。
【0015】
また、燃料電池本体側に水保持材を配した密閉手段を備えたものである。
また、燃料電池本体内に、一酸化炭素により被毒される貴金属系触媒を有し燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部を備え、前記燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉し、前記燃料電池本体側に一酸化炭素の吸着剤が設けられた密閉手段を備えたものである。
【0016】
また、燃料電池本体内に、硫黄分により被毒される貴金属系触媒を有し燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部と、硫黄除去手段とを備え、前記燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉する密閉手段を設けたものである。
【0017】
また、燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部を有する燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉する密閉手段を備え、前記燃料電池本体の温度を検知し表示する温度表示手段を備えたものである。
【0018】
本発明は上記構成により以下の作用を有する。
すなわち、燃料電池本体内に貴金属系触媒を有する燃料電池部と一酸化炭素除去手段を備え、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に密閉手段を備えた構成により、電源非使用時には個々の吸排口の小さなシール範囲で燃料電池本体を確実に密閉するので、燃料電池本体内への外気や水分、異物等の侵入を防止でき、外気中の水分吸収による電解質濃度の低下、電池特性の劣化を防ぐことができるとともに、電源使用後の密閉状態でも残留ガス中の一酸化炭素を一酸化炭素除去手段により除去するので、一酸化炭素による燃料電池電極中の貴金属系触媒の被毒を防止し、電池特性の劣化を防ぐことができる。
【0019】
また、燃料電池部は、イオン伝導性を有する固体高分子膜と、固体高分子膜の両面に配された一対の電極とからなる固体高分子型燃料電池を、単独または複数個積層した構成により、固体高分子型燃料電池は100℃程度以下の低温で作動するので、電極中の貴金属系触媒が被毒されやすくなるが、燃料電池本体内に一酸化炭素除去手段を備えているので、貴金属系触媒の被毒、電池特性の劣化を防ぐことができ、また確実な密閉により、電源非使用時に水分が吸排口から外気へ散逸するのを防止でき、固体高分子膜の含水量低下による発電効率低下と膜の乾燥収縮による燃料電池部の破損を防ぐことができる。
【0020】
また、密閉手段は、気密・液密性を有し、ガス入口および出口を覆蓋するフィルム状またはシート状の遮断膜で構成したことにより、密閉手段の構成部品は遮断膜のみになり得るので、密閉方法も簡単でコストもかからず、電源の軽量化を図ることもできる。
【0021】
また、密閉手段としてガス入口とガス出口に、それぞれ所定の条件のときのみ開成する逆止弁を設けた構成により、燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給され、ガスが上流から下流に流れるときのみ圧力差で逆止弁が開成し、電源使用終了時にガスの供給を停止すると圧力差がなくなり逆止弁が閉成するので、簡単な構成で電源使用時および電源非使用時に密閉手段の開閉操作を必要とせずに運転・停止することができる。
【0022】
また、一酸化炭素除去手段として一酸化炭素の吸着剤を用いた構成により、簡単でコストがかからず、外部からエネルギーを供給しなくても一酸化炭素を除去できるので、電源非使用時の運転停止中でも簡便に使用でき、蓄電池などの補助エネルギー装置を要せず、電源の軽量化とコンパクト化、さらに高効率化も図ることができる。
【0023】
また、一酸化炭素除去手段として一酸化炭素の選択的酸化装置を備えた構成により、保守作業を要せずに燃料電池本体内の一酸化炭素を除去することができる。
【0024】
また、密閉手段の燃料電池本体側に水保持材を配した構成により、電源使用後の密閉した燃料電池本体内の温度が下がった場合は、ガス中に飽和まで含まれていた水分がガスの温度低下により凝縮し、その凝縮水が水保持材に吸収される。逆に燃料電池内の温度が上昇した場合は、水保持材に吸収されていた水が蒸発するので、燃料電池本体内の温度条件が変化しても、密閉した燃料電池本体内を飽和蒸気圧の状態に維持し、電解質である固体高分子膜を飽和含水状態に保つことができる。
【0025】
また、燃料電池本体内に貴金属系触媒を有する燃料電池部を備え、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、燃料電池本体内を密閉し、燃料電池本体側に一酸化炭素の吸着剤が設けられた密閉手段を備えた構成により、電源使用後の密閉状態でも残留ガス中の一酸化炭素を吸着剤により除去するので、一酸化炭素による電池特性の劣化を防ぐことができ、さらに一酸化炭素を吸着した後の吸着剤は、電源の再使用時に、密閉手段と同時に廃棄交換されることとなり、利用者が意識せずに吸着剤の交換などの保守作業を行うことができ信頼性の向上を図ることができる。
【0026】
また、燃料電池本体内に貴金属系触媒を有する燃料電池部と硫黄除去手段を備え、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に密閉手段を備えた構成により、電源非使用時には個々の吸排口の小さなシール範囲で燃料電池本体を確実に密閉するので、燃料電池本体内への外気や水分、異物等の侵入を防止でき、外気中の水分吸収による電解質濃度の低下、電池特性の劣化を防ぐことができるとともに、電源使用後の密閉状態でも残留ガス中の硫黄分を硫黄除去手段により除去するので、硫黄分による燃料電池電極中の貴金属系触媒の被毒を防止し、電池特性の劣化を防ぐことができる。
【0027】
また、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に密閉手段を備え、燃料電池本体の温度を検知し表示する温度表示手段を備えた構成により、利用者は発電運転停止後の燃料電池本体の温度低下を確認した後に燃料電池本体を密閉できるので、燃料電池本体内が温度低下によって外気圧よりも負圧状態になることを防止し、圧力差による破損を防止することができる。
【0028】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例による電源装置の要部切断斜視図であり、図2は図1の要部断面図である。図1、図2において、電源装置本体1の内部には燃料ガス入口2、酸化剤ガス入口3、燃料ガス出口4、酸化剤ガス出口5の4つの給排口が設けられ燃料電池本体6と改質装置7とファン8が収納されており、電源装置本体1の1つの面に設けられた原燃料供給口9と改質装置7は導管10により接続され、改質装置7と燃料電池本体6とは燃料ガス入口2に着脱自在に構成された燃料ガス供給路11により接続されている。ファン8に接続された酸化剤ガス供給路12も同様に酸化剤ガス入口3に着脱自在に構成されている。
【0029】
燃料電池本体6の内部には、燃料ガス入口2と酸化剤ガス入口3に接続された燃料電池部13と、それぞれ燃料ガス出口4と酸化剤ガス出口5に接続された2つの一酸化炭素除去手段である一酸化炭素燃焼バーナー14が収納され、燃料電池部13と一酸化炭素燃焼バーナー14は燃料排ガス流路15と酸化剤排ガス流路16により接続された構成になっている。
【0030】
また、燃料電池部13は、イオン伝導性を有する固体高分子膜17と、その両面に配された一対の電極であって、内部に貴金属系の触媒である白金触媒18を有し燃料電池反応ガスを拡散することが可能な導電性多孔体の燃料電極19および酸化剤電極20とで構成された固体高分子型燃料電池21を複数個積層した構成になっている。
【0031】
上記構成により、電源使用時には原燃料供給口9からボンベ等(図示せず)により供給された炭化水素系またはアルコール系の原燃料は、導管10を通り、改質装置7により燃料電池で発電するための燃料ガスとして水素リッチなガスに改質され、燃料ガス供給路11を経て燃料ガス入口2から燃料電池本体6内の燃料電池部13に供給される。一方、酸化剤ガスである空気は、ファン8により酸化剤ガス供給路12を経て酸化剤ガス入口3から燃料電池部13に供給され、燃料電池部13内で燃料ガスと電気化学反応を生じて発電を行う。
【0032】
燃料電池部13の固体高分子型燃料電池21の電解質である固体高分子膜17には、スルホン酸基をもつポリスチレン系の陽イオン交換膜や、パーフロロカーボンスルホン酸膜(米国,デュポン社,商品名ナフィオン)などの分子中にプロトン交換基をもつ膜が使用されており、反応ガスである燃料ガスや酸化剤ガスをあらかじめ加湿しておくなどして固体高分子膜17を飽和含水させることにより、プロトン伝導性電解質膜として機能する。そして、一方の多孔体の燃料電極19に燃料ガスとして供給されてきた水素は、電極内または電極と固体高分子膜17との間に配された白金触媒18の作用によりプロトンHになり、飽和含水した固体高分子膜17を通って、他方の酸化剤電極20に酸化剤ガスとして供給され電極内を拡散してきた酸素と電池反応を生じて発電するのである。
【0033】
したがって、固体高分子膜17をイオン伝導性電解質膜として機能させ、固体高分子型燃料電池の発電効率を高く維持するためには、固体高分子膜17の比抵抗を小さく保つために固体高分子型燃料電池21の運転温度を50〜100℃程度に保持するとともに、固体高分子膜17を飽和含水状態に維持している。
【0034】
そして、燃料電池部13を出た燃料ガス側排ガスおよび酸化剤ガス側排ガスは、それぞれ流路15、16を通り、一酸化炭素燃焼バーナー14で排ガス中のわずかな一酸化炭素が残留水素などとともに完全に燃焼し尽くされ、二酸化炭素などに変化した排ガスとして燃料ガス出口4および酸化剤ガス出口5より外気へ排出される。
【0035】
次に電源使用終了後には図2に示すように、反応ガスの供給を停止し、燃料ガス入口2に接続された燃料ガス供給路11および酸化剤ガス入口3に接続された酸化剤ガス供給路12をそれぞれはずし、密閉手段である気密・液密性を有する遮断膜22を4つの給排口2、3、4、5に口を覆蓋するように貼付する。遮断膜22の片面には給排口から燃料電池本体6内に挿入できるような大きさの水保持材23が設けられているとともに、給排口に貼付するための粘着材(図示せず)が塗布されているので、簡単でコストもかからず密閉することができる。
【0036】
したがって電源非使用時には、個々の4つの給排口に貼付された遮断膜22により吸排口周囲の小さなシール範囲で燃料電池本体6内は確実に完全密閉状態になるので、燃料電池本体6内への外気や水分、異物等の侵入を防止できるとともに、電源非使用時に水分が吸排口から外気へ散逸するのを防止でき、電源使用中に、反応ガスやその排ガスに含まれていた微量の一酸化炭素(例えば固体高分子型燃料電池では10ppm程度以下)は、一酸化炭素燃焼バーナー14で完全に燃焼し尽くされているので、電源使用後の密閉状態でも一酸化炭素による燃料電池電極中の白金触媒18の被毒を防止し、電池特性の劣化を防ぐことができる。また、電源使用後の密閉した燃料電池本体6内の温度が下がった場合は、ガス中に飽和まで含まれていた水分がガスの温度低下により凝縮し、その凝縮水が水保持材23に吸収される。逆に燃料電池内の温度が上昇した場合は、水保持材23に吸収されていた水が蒸発するので、燃料電池本体6内の温度条件が変化しても、密閉した燃料電池本体6内を飽和蒸気圧の状態に維持し、電解質である固体高分子膜17を飽和含水状態に保つことができるので、膜の乾燥収縮による燃料電池部の破損と、電源再使用開始時の固体高分子膜の含水量低下による発電効率低下を防止することができ、長期保管後の運転に際しての信頼性も向上できる。さらに、密閉手段の構成部品は遮断膜22と水保持材23のみになり得るので、簡単構成でコストもかからず、電源の軽量化を図ることもできる。
【0037】
図3は本発明の第2の実施例による電源装置の要部断面図であり、図1、図2と同符号のものは相当する構成要素であり、詳細な説明は省略する。図において、24は4つの給排口2、3、4、5それぞれに設けられた逆止弁であり、反応ガスの供給側である燃料ガス入口2および酸化剤ガス入口3においては、入口の燃料電池本体6内側に弁座25が形成され、同じく燃料電池本体6内に設けられたバネ支持部26に支持されたバネ27により弁体28の開成圧力が決まるように構成されて、弁体28が燃料電池本体6の内側に開成するようになっている。また、反応ガスの排出側である燃料ガス出口4および酸化剤ガス出口5においては、出口の燃料電池本体6外側に弁座25が形成され、燃料電池本体6の外側にバネ支持部26、バネ27、弁体28が設けられ、逆止弁24の前後に所定の開成圧力がかかったときのみ弁体28が燃料電池本体6の外側に開成するようになっている。
【0038】
そして、燃料電池部13と反応ガスの出口4、5の間にはそれぞれに一酸化炭素の選択的酸化装置29が流路15、16により接続された構成になっている。
【0039】
上記構成において、電源使用時には燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給されて供給圧がかかっているので、燃料電池本体6の上流側から逆止弁24の所定開成圧力以上の圧力差が逆止弁24の前後にかかり、逆止弁が開成して反応ガスが入口側から出口側へ流れる。そして、電源使用終了後には図3に示すように、反応ガスの供給を停止し、燃料ガス入口2に接続された燃料ガス供給路11および酸化剤ガス入口3に接続された酸化剤ガス供給路12をそれぞれはずすと、圧力差がなくなり逆止弁が閉成するので、燃料電池本体6内は密閉状態になり、外気や水分、異物等の侵入を防止できるとともに、電源非使用時に水分が吸排口から外気へ散逸するのを防止できるとともに、簡単な構成で電源使用時および電源非使用時に密閉手段の開閉操作を必要とせずに運転・停止することができる。
【0040】
逆止弁24により燃料電池本体6が密閉されると、微量の一酸化炭素が燃料電池本体内に残留するが、一酸化炭素の選択的酸化装置29において、一酸化炭素が選択的に酸化、除去されるので、電源使用後の密閉状態でも一酸化炭素による燃料電池電極19、20中の白金触媒18の被毒を防止し、電池特性の劣化を防ぐことができるとともに、一酸化炭素を選択的に酸化するので残留水素等が酸化されず、残留水素等の酸化・消費されて水になることに伴う圧力低下が生じず、負圧による漏れの発生、外気や異物等の混入、電源使用開始時の圧力差による破損を防止することができる。
【0041】
図4は本発明の第3の実施例による電源装置の要部断面図であり、図1、図2および図3と同符号のものは相当する構成要素であり、詳細な説明は省略する。図において、30は一酸化炭素吸着剤であり、一方がそれぞれ燃料電池部13の下流に流路15、16を介して接続され、他方がそれぞれ燃料ガス出口4または酸化剤ガス出口5に開口した吸着剤保持筒31内に一酸化炭素吸着剤30が収納された構成になっている。
【0042】
上記構成において、電源使用終了後には図4に示すように、反応ガスの供給を停止し、燃料ガス入口2に接続された燃料ガス供給路11および酸化剤ガス入口3に接続された酸化剤ガス供給路12をそれぞれはずし、反応ガス出口側の2つの吸着剤保持筒31内に一酸化炭素吸着剤30を充填して、密閉手段である気密・液密性を有する遮断膜22を4つの給排口2、3、4、5に口を覆蓋するように貼付する。
【0043】
これにより電源非使用時には、個々の4つの給排口に貼付された遮断膜22により吸排口周囲の小さなシール範囲で燃料電池本体6内は確実に完全密閉状態になるので、燃料電池本体6内への外気や水分、異物等の侵入を防止できるとともに、電源非使用時に水分が吸排口から外気へ散逸するのを防止でき、燃料電池本体6密閉時の残留ガス中に含まれていた微量の一酸化炭素(例えば固体高分子型燃料電池では10ppm程度以下)は、一酸化炭素吸着剤30により完全に吸着除去されるので、電源使用後の密閉状態でも一酸化炭素による燃料電池電極19、20中の白金触媒18の被毒を防止し、電池特性の劣化を防ぐことができ、長期保管後の運転に際しての信頼性も向上できる。
【0044】
また、一酸化炭素除去手段として一酸化炭素吸着剤30を用いているので、簡単でコストがかからず、外部からエネルギーを供給しなくても一酸化炭素を除去できるので、電源非使用時の運転停止中でも簡便に使用でき、蓄電池などの補助エネルギー装置を要せず、電源の軽量化とコンパクト化、さらに高効率化も図ることができる。
【0045】
なお、ここでの説明では電源の運転中は一酸化炭素吸着剤30をはずしておき、吸着剤の交換回数を低減できるようにしているが、より完全に残留ガス中の一酸化炭素を除去するため、運転中でも一酸化炭素吸着剤30を充填しておいてもよい。
【0046】
図5は本発明の第4の実施例による電源装置の要部断面図であり、図1、図2、図3および図4と同符号のものは相当する構成要素であり、詳細な説明は省略する。図において、32、33はそれぞれ燃料電池部13から反応ガス排出口につながり、その出口部分に雌ねじを切った燃料排ガス流路、酸化剤排ガス流路である。また、34は先端に一酸化炭素吸着剤部35を有するボルト状の密閉手段である密閉ネジであり、燃料ガス出口4および酸化剤ガス出口5の周囲に設けられたOリング36を介して密閉ネジ34を排ガス流路32、33にそれぞれねじ込むことにより燃料電池本体6を密閉できるように構成されている。
【0047】
また、37は遮断膜22の片面に設けられた硫黄除去手段である活性炭であり、燃料電池本体6内に挿入できる大きさになっている。38は燃料電池本体6内に設けられた温度検知手段であり、信号線39を介して温度表示部40に接続されている。
【0048】
上記構成において、電源使用終了後には図5に示すように、反応ガスの供給を停止し、燃料ガス入口2に接続された燃料ガス供給路11および酸化剤ガス入口3に接続された酸化剤ガス供給路12をそれぞれはずす。その後、温度表示部40に表示される燃料電池本体6内の温度が外気温とほぼ等しくなるまで低下したのを確認し、活性炭37を設けた密閉手段である気密・液密性を有する遮断膜22を活性炭37が燃料電池本体6内に入るように燃料ガス入口2と酸化剤ガス出口3に口を覆蓋するように貼付する。また、電源使用時にははずしてあった密閉ネジ34を燃料ガス出口4および酸化剤ガス出口5にねじ込み燃料電池本体6を密閉する。
【0049】
これにより電源非使用時には、2つの反応ガス入口に貼付された遮断膜22および2つの反応ガス出口にねじ込まれた密閉ネジ34により、吸排口周囲の小さなシール範囲で燃料電池本体6内は確実に完全密閉状態になるので、燃料電池本体6内への外気や水分、異物等の侵入を防止できるとともに、電源非使用時に水分が吸排口から外気へ散逸するのを防止できる。また、燃料電池本体6密閉時の残留ガス中に含まれていた微量の一酸化炭素(例えば固体高分子型燃料電池では10ppm程度以下)は、一酸化炭素吸着剤部35により完全に吸着除去され、残留ガス中に硫黄分が極微量含まれていても活性炭37により吸着除去されるので、電源使用後の密閉状態でも一酸化炭素および硫黄分による燃料電池電極19、20中の白金触媒18の被毒を防止し、電池特性の劣化を防ぐことができ、長期保管後の運転に際しての信頼性も向上できる。ここで、一酸化炭素除去手段である一酸化炭素吸着剤部35は密閉ネジ34に一体形成されているので、電源の再使用時に、密閉手段と同時に廃棄交換されることとなり、利用者が意識せずに吸着剤の交換などの保守作業を行うことができ信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
さらに、電源使用終了時には使用者が、温度検知部38で検知され温度表示部40に表示される燃料電池本体6内の温度が低下したのを確認した後に燃料電池本体6を密閉できるので、燃料電池本体6内が温度低下によって外気圧よりも負圧状態になることを防止し、圧力差による破損を防止することができる。
【0051】
なお、ここでの説明では硫黄分の吸着剤として活性炭を使用したが、他の吸着剤を用いてもよい。
【0052】
また、本発明の実施例では一酸化炭素除去手段を燃料電池部13の下流に設け、硫黄除去手段を燃料電池部13の上流に設けた構成にして説明しているが、一酸化炭素除去手段を上流に設けてもよく、また硫黄除去手段を下流に設けてもよい。
【0053】
さらに、本発明の実施例では燃料電池部13に固体高分子型燃料電池21を用い、一酸化炭素または硫黄分に被毒される貴金属系触媒として白金触媒18を用いたもので説明しているが、その他の燃料電池(例えばリン酸型)でも、一酸化炭素または硫黄分に被毒されるその他の触媒でも同様の効果が得られ、密閉手段を設けたことにより外気中の水分吸収による電解質濃度の低下、電池特性の劣化を防ぐこともできる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の電源装置は、以下に述べる効果を有するものである。
【0055】
すなわち、燃料電池本体内に貴金属系触媒を有する燃料電池部と一酸化炭素除去手段を備え、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に密閉手段を備えた構成としているので、電源非使用時には個々の吸排口の小さなシール範囲で燃料電池本体を確実に密閉するので、燃料電池本体内への外気や水分、異物等の侵入を防止でき、外気中の水分吸収による電解質濃度の低下、電池特性の劣化を防ぐことができるとともに、電源使用後の密閉状態でも残留ガス中の一酸化炭素を一酸化炭素除去手段により除去するので、一酸化炭素による燃料電池電極中の貴金属系触媒の被毒を防止し電池特性の劣化を防ぐことができ、長期保管後の運転に際しての信頼性も向上できる。
【0056】
また固体高分子型燃料電池は100℃程度以下の低温で作動するので、電極中の貴金属系触媒が被毒されやすくなるが、燃料電池本体内に一酸化炭素除去手段を備えているので、貴金属系触媒の被毒、電池特性の劣化を防ぐことができ、また確実な密閉により、電源非使用時に水分が吸排口から外気へ散逸するのを防止でき、固体高分子膜の含水量低下による発電効率低下と膜の乾燥収縮による燃料電池部の破損を防ぐことができる。
【0057】
また密閉手段は、気密・液密性を有し、ガス入口および出口を覆蓋するフィルム状またはシート状の遮断膜で構成しているので、密閉手段の構成部品は遮断膜のみになり得るので、密閉方法も簡単でコストもかからず、電源の軽量化を図ることができる。
【0058】
また密閉手段としてガス入口とガス出口に、それぞれ所定の条件のときのみ開成する逆止弁を設けた構成としているので、燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給され、ガスが上流から下流に流れるときのみ圧力差で逆止弁が開成し、電源使用終了時にガスの供給を停止すると圧力差がなくなり逆止弁が閉成するので、簡単な構成で電源使用時および電源非使用時に密閉手段の開閉操作を必要とせずに運転・停止することができる。
【0059】
また、一酸化炭素除去手段として一酸化炭素の吸着剤を用いた構成としているので、簡単でコストがかからず、外部からエネルギーを供給しなくても一酸化炭素を除去できるので、電源非使用時の運転停止中でも簡便に使用でき、蓄電池などの補助エネルギー装置を要せず、電源の軽量化とコンパクト化、さらに高効率化も図ることができる。
【0060】
また、一酸化炭素除去手段として一酸化炭素の選択的酸化装置を備えた構成としているので、保守作業を要せずに燃料電池本体内の一酸化炭素を除去することができる。
【0061】
また、密閉手段の燃料電池本体側に水保持材を配した構成としているので、電源使用後の密閉した燃料電池本体内の温度が下がった場合は、ガス中に飽和まで含まれていた水分がガスの温度低下により凝縮し、その凝縮水が水保持材に吸収される。逆に燃料電池内の温度が上昇した場合は、水保持材に吸収されていた水が蒸発するので、燃料電池本体内の温度条件が変化しても、密閉した燃料電池本体内を飽和蒸気圧の状態に維持し、電解質である固体高分子膜を飽和含水状態に保つことができる。
【0062】
また、燃料電池本体内に貴金属系触媒を有する燃料電池部を備え、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、燃料電池本体内を密閉し、燃料電池本体側に一酸化炭素の吸着剤が設けられた密閉手段を備えた構成としているので、電源使用後の密閉状態でも残留ガス中の一酸化炭素を吸着剤により除去するので、一酸化炭素による電池特性の劣化を防ぐことができ、さらに一酸化炭素を吸着した後の吸着剤は、電源の再使用時に密閉手段と同時に廃棄交換されることとなり、利用者が意識せずに吸着剤の交換などの保守作業を行うことができ信頼性の向上を図ることができる。
【0063】
また、燃料電池本体内に貴金属系触媒を有する燃料電池部と硫黄除去手段を備え、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に密閉手段を備えた構成としているので、電源非使用時には個々の吸排口の小さなシール範囲で燃料電池本体を確実に密閉するので、燃料電池本体内への外気や水分、異物等の侵入を防止でき、外気中の水分吸収による電解質濃度の低下、電池特性の劣化を防ぐことができるとともに、電源使用後の密閉状態でも残留ガス中の硫黄分を硫黄除去手段により除去するので、硫黄分による燃料電池電極中の貴金属系触媒の被毒を防止できるので、着臭剤を含む原燃料を改質ガスとして使用する場合にも信頼性が向上できる。
【0064】
また、燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に密閉手段を備え、燃料電池本体の温度を検知し表示する温度表示手段を備えた構成としているので、利用者は発電運転停止後の燃料電池本体の温度低下を確認した後に燃料電池本体を密閉できるので、燃料電池本体内が温度低下によって外気圧よりも負圧状態になることを防止し、圧力差による破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における電源装置の要部切断斜視図
【図2】同電源装置の要部断面図
【図3】本発明の第2の実施例における電源装置の要部断面図
【図4】本発明の第3の実施例における電源装置の要部断面図
【図5】本発明の第4の実施例における電源装置の要部断面図
【図6】従来の電源装置の斜視図
【符号の説明】
2 燃料ガス入口
3 酸化剤ガス入口
4 燃料ガス出口
5 酸化剤ガス出口
6 燃料電池本体
13 燃料電池部
14 一酸化炭素燃焼バーナー
18 白金触媒
22 遮断膜

Claims (10)

  1. 燃料電池本体内に、一酸化炭素により被毒される貴金属系触媒を有し燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部と、一酸化炭素除去手段とを備え、前記燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉する密閉手段を設けた電源装置。
  2. 燃料電池部は、イオン伝導性を有する固体高分子膜と、前記固体高分子膜の両面に配された一対の電極とからなる固体高分子型燃料電池を、単独または複数個積層して構成した請求項1記載の電源装置。
  3. 密閉手段は、気密・液密性を有し、ガス入口および出口を覆蓋するフィルム状またはシート状の遮断膜からなる請求項1または2記載の電源装置。
  4. 密閉手段として、ガス入口に燃料電池本体上流側の圧力が燃料電池本体内の圧力より所定圧力だけ高くなったときに開成する逆止弁と、ガス出口に燃料電池本体内の圧力が燃料電池本体下流側の圧力より所定圧力だけ高くなったときに開成する逆止弁の少なくともどちらか一方を備えた請求項1、2または3記載の電源装置。
  5. 一酸化炭素除去手段として、一酸化炭素の吸着剤を用いた請求項1〜4のいずれか1項記載の電源装置。
  6. 一酸化炭素除去手段として、一酸化炭素の選択的酸化装置を備えた請求項1〜4のいずれか1項記載の電源装置。
  7. 燃料電池本体側に水保持材を配した密閉手段を備えた請求項1〜6のいずれか1項記載の電源装置。
  8. 燃料電池本体内に、一酸化炭素により被毒される貴金属系触媒を有し燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部を備え、前記燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉し、前記燃料電池本体側に一酸化炭素の吸着剤が設けられた密閉手段を備えた電源装置。
  9. 燃料電池本体内に、硫黄分により被毒される貴金属系触媒を有し燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部と、硫黄除去手段を備え、前記燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉する密閉手段を備えた電源装置。
  10. 燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池部を有する燃料電池本体の燃料ガス入口と酸化剤ガス入口と燃料ガス出口と酸化剤ガス出口に、前記燃料電池本体内を密閉する密閉手段を備え、前記燃料電池本体の温度を検知し表示する温度表示手段を備えた電源装置。
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