JP3572877B2 - 熱電材料の製造方法及び熱電変換素子 - Google Patents

熱電材料の製造方法及び熱電変換素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱電発電及び及び熱電冷却等に応用される熱電変換素子及びそれに使用される熱電材料の製造方法に関し、特に、性能指数を向上させることができる熱電材料の製造方法及び熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電材料の製造方法として、液体急冷法を使用して熱電材料の溶湯を薄片化し、これを粉末化した後、ホットプレスにより固化成形する方法及び粉末化された熱電材料を焼結することにより固化成形する方法等がある。これを第1の従来例という。
【0003】
ところで、熱電材料の特性は、そのゼーペック係数をα(μ・V/K)、比抵抗をρ(Ω・m)、熱伝導率をκ(W/m・K)としたとき、下記数式1に示す性能指数Zによって評価することができる。
【0004】
【数1】
Z=α/(ρ×κ)
【0005】
上記数式1に示すように、性能指数Zを大きくするためには、比抵抗ρ及び熱伝導率κを小さくすることが効果的である。一般的に、結晶粒の粒径が小さくなるほど熱伝導率κが小さくなることは公知である。また、熱流及び電流が通過する方向において、通過する結晶数を減少させると比抵抗は小さくなる。即ち、結晶が成長する方向に電流又は熱流方向を規定すると、その熱電材料の性能指数Zは大きくなる。
【0006】
これらのことより、液体急冷法を使用して熱電材料の溶湯を薄膜化し、この薄膜を層状に重ね合わせて焼結することにより得られる熱電材料を利用して、膜厚方向に平行に熱流及び電流の方向が規定された熱電変換素子が開示されている(特開平5−335628号公報)。これは、膜厚方向に熱電材料の結晶が配向するものであって、プレス焼結することによって結晶界面を消失させて、通過する結晶数を減少させており、これにより比抵抗ρを小さくすることを図っている。そして、更に、所望量のTeを添加して、熱電材料の結晶の成長を促進させている。
【0007】
また、熱電材料の他の製造方法として、チョコラルスキー法又はゾーンメルティング法により熱電材料の合金鋳塊を作製し、この鋳塊を押し出し成形する方法があり、この方法によると結晶が配向しているので、特性の向上が期待できる(Brittle thermoelectric semiconductors extrusion under high hydrostatic pressure. Nikolay A.Sidorenko 1995 American Institute of Physics)。これを第2の従来例という。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第1の従来例によって、ホットプレス又は焼結により熱電材料を製造すると、結晶粒が成長することより、熱伝導率κが大きくなり、性能指数Zが低下してしまうという問題点がある。また、ホットプレスにより熱電材料を製造する場合は、薄片化された熱電材料を粉末化する工程において形成された粒界の酸化膜が製造後も残存し、比抵抗ρが上昇する原因となる。特に、特開平5−335628号公報に開示された方法により液体急冷法を使用して、結晶粒を微細化するために十分である冷却速度(例えば、1×10k/秒以上)で熱電材料の溶湯を薄膜化しても、配向性を有する結晶粒は冷却面のみとなる。従って、その他の部分については、ランダムな方位を有する結晶粒群が極めて多いものとなり、比抵抗ρの低下により性能指数Zを大きくすることはできない。
【0009】
また、第2の従来例により押し出し形成された熱電材料は、結晶粒が十分に微細化されず、κの低下により性能指数Zを向上させることができない。更に、この方法によると、機械的強度が低くなるという問題点もある。このように、従来の種々の製造方法によって熱電材料を製造しても、その性能指数には限界があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、性能指数を向上させることができ、好ましくは、2.7×10−3(1/K)を超える高い性能指数を得ることができる熱電材料の製造方法及び熱電変換素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱電材料の製造方法は、Bi及びSbからなる群から選択された少なくとも1種の元素と、Te及びSeからなる群から選択された少なくとも1種の元素とを含有する溶融した母合金を1×10K/秒以上の冷却速度で冷却凝固させて粉末体を得る工程と、この粉末体を押し出し比を2乃至35、押し出し温度を250乃至600℃として押し出し成形する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る他の熱電材料の製造方法は、Bi及びSbからなる群から選択された少なくとも1種の元素と、Te及びSeからなる群から選択された少なくとも1種の元素と、I、Cl、Hg、Br、Ag及びCuからなる群から選択された少なくとも1種の元素とを含有する溶融した母合金を1×10K/秒以上の冷却速度で冷却凝固させて粉末体を得る工程と、この粉末体を押し出し比を2乃至35、押し出し温度を250乃至600℃として押し出し成形する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
前記粉末体を得る工程において、母合金の冷却速度を1×10K/秒以上とすることが好ましい。また、前記押し出し成形する工程においては、押し出し比を10乃至20、押し出し温度を350乃至400℃とすると、より一層望ましい。なお、押し出し比とは、(押し出し前の断面積/押し出し後の断面積)により得られる値のことである。
【0014】
本発明に係る熱電変換素子は、押し出し成形された前記熱電材料の押し出し方向に電流及び熱流の方向が規定されることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明においては、先ず、溶融した母合金を冷却凝固して粉末体を得る。このとき、溶融した母合金を冷却凝固させるための冷却速度が1×10(K/秒)未満であると、性能指数Zが低いものとなる。これは、冷却速度が遅く、結晶粒が十分に微細化されないので、κの値が低下しないためであると考えられる。従って、本発明においては、冷却速度を1×10(K/秒)以上とする。好ましくは冷却速度が1×10(K/秒)以上であることが望ましい。
【0016】
なお、本発明においては、P型の熱電材料を作製するための母合金としては、Bi及びSbのいずれか一方又は両方と、Te及びSeのいずれか一方又は両方とを含有するものを使用する。また、N型の熱電材料を作製するための母合金としては、前記組成に、更に、I、Cl、Hg、Br、Ag及びCuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を添加したものを使用する。
【0017】
次に、得られた粉末体を押し出し成形することにより熱電材料を得る。この押し出し成形をすることによりせん断応力がかかり、粒界に形成された酸化膜が破れるので、比抵抗ρを小さくすることができる。また、押し出しにより熱電材料を成形する場合、加熱の温度を低くしても、焼結することができる。例えば、熱電材料の成形に必要とされる加熱温度と時間について、ホットプレスによる成形と押し出し成形とで比較すると、ホットプレスにより成形する場合は、400乃至450℃で2時間の焼結が必要であるが、押し出し成形の場合は350乃至400℃で1時間の焼結で成形することができる。このように、本発明においては、低い加熱温度及び短い加熱時間で成形することができるので、結晶粒が成長しにくく、微細な粒径のままで保持することができ、熱伝導率κが小さいものとなる。
【0018】
更に、押し出し成形により発生するせん断応力によって、熱電材料の結晶構造のcに沿った滑り面で滑りが発生する。例えば、BiTeには、cに沿ってTe−Teのファンデルワールス力があるため、c面において劈開しやすくなり、この面が滑り面となる。従って、押出し方向にc面方向が配向しやすくなるので、比抵抗ρを低下させることができ、これにより、性能指数Zを向上させることができる。また、Bi−Te系では、c面に平行な方向の方が、c面に直交する方向よりも比抵抗ρが小さくなり、この効果によって、c面に平行な方向に性能指数Zが大きくなる。
【0019】
従って、本発明方法により熱電材料を製造すると、従来の熱電材料と比較して、より一層高い性能指数Zを有する熱電材料を得ることができる。
【0020】
なお、(押し出し前の断面積/押し出し後の断面積)により得られる押し出し比が5未満であるか、又は押し出し温度が300℃未満であると、焼結が不十分となり、性能指数Zが若干低下する。但し、押し出し比が2以上であると共に、押し出し温度が250℃以上であれば、2.7×10−3(1/K)を超える性能指数を得ることができる。この場合、焼結が不十分であるので、切断する際にクラックが発生することがあるが、切断速度を遅くする等の方法によってクラックを発生させることなく切断することが可能となる。また、押し出し比が30を超えてもクラックが発生することがあるが、この場合においても、切断条件等を最適化することによってクラックを発生させることなく切断することができる。
【0021】
押し出し比が35を超えると、クラックは押し出し材全体に広がって、良好に切断することが困難となる。更に、押し出し温度が500℃を超えると、結晶粒が粗大化し始めて熱伝導度κが大きくなり、押し出し温度が600℃を超えると、この熱電材料の融点(Tm=約680〜700℃)に近い温度となるので、粒成長が著しく進行する。従って、600℃を超える押し出し温度で成形された熱電材料の性能指数Zは、従来の熱電材料の性能指数(2.7×10−3(1/K)以下)と比較しても、著しく低いものとなる。
【0022】
従って、押し出し成型時において、押し出し比を2乃至35、押し出し温度は250乃至600℃とすることが望ましく、これにより、2.8×10−3(1/K)以上の性能指数Zを有する熱電材料を得ることができる。更に好ましくは、押し出し比が5乃至30、押し出し温度が300乃至500℃であり、これにより、例えば、3.4×10−3(1/K)以上のより一層高い性能指数Zを有する熱電材料を得ることができる。更にまた、押し出し比を10乃至20、押し出し温度を350乃至400℃とすると、例えば、性能指数Zが3.8×10−3(1/K)以上の熱電材料を製造することができ、更に一層性能指数Zを高めることができる。
【0023】
以下、本発明に係る熱電材料の製造方法について添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
先ず、熱電材料の原料を所定の組成になるように秤量して、これを石英管又はパイレックスガラス等の容器に入れ、真空封入するか、又はHガス若しくはArガスを封入する。
【0025】
次いで、この封入管をロッキング炉等を使用して、原料の融点よりも約50K高い温度になるように加熱して原料を溶融し、溶融体をよく撹拌した後に凝固させて母合金を製造する。次に、単ロール法、双ロール法又はアトマイズ法等の液体急冷法により、母合金を薄片又は粉末とする。
【0026】
図1は単ロール法による粉末体の形成方法を示す模式図である。母合金を溶融させる耐熱性の容器2の周囲には高周波コイル3が配置されており、母合金は容器2に入れられ、高周波コイル3で誘電加熱されることにより溶湯1が形成されている。容器2の下方には銅ロール4が配置されており、この銅ロール4は回転するようになっている。これらは、不活性ガス等が充填された密閉チャンバー(図示せず)内に配置されている。
【0027】
このような単ロール法により薄片を形成するときには、回転している銅ロール4の表面に、ガス圧により溶湯1を吹き付ける。銅ロール4は予め冷却されているので、溶湯1は銅ロール表面において急冷固化されることにより、薄片5を形成することができる。この薄片5は必要に応じてボールミル等により更に粉砕して、粉末体とすることができる。
【0028】
図2はアトマイズ法による粉末体の形成方法を示す模式図である。単ロール法と同様に、母合金を溶融させる耐熱性の容器7の周囲には高周波コイル8が配置されており、母合金は容器7内に入れられ、高周波コイル8で誘電加熱されることにより溶湯6が形成されている。また、容器7の下方には、側方から伸びるガス供給管9が配置されている。
【0029】
このようなアトマイズ法により粉末体を形成するときには、ガス圧等により容器7から溶湯6を噴出させ、これと同時にAr等の不活性ガスをガス供給管9を介して噴出された溶湯に吹き付ける。そうすると、不活性ガスのガス圧により溶湯6が微細な粒になると共に、冷却固化されることにより、微粉末体10を形成することができる。
【0030】
その後、得られた粉末体を押し出し成形することにより、熱電材料を製造する。なお、押出し成形をする前に、粉末体を水素中において還元処理すれば、粉末表面の酸素を除去することができる。
【0031】
図3(a)乃至(e)は押し出し成形による熱電材料の製造方法を工程順に示す模式図である。先ず、図3(a)に示すように、単ロール法又はアトマイズ法等により形成された粉末体18をふるい12を使用して分留して、極めて微細な粉末19を除去することにより、原料11の粒度を揃える。これは、微細な粉末19は比表面積が大きいため、成形後に特性を劣化させることがあるからである。次に、図3(b)に示すように、銅製又はアルミニウム製容器13に粉末体状の熱電材料の原料11を加圧充填する。
【0032】
次いで、図3(c)に示すように、脱気管14aが設けられた蓋14により銅製又はアルミニウム製容器13に蓋をした後に、脱気すると共に、これを油15が満たされたオイルバス16等に入れて予備加熱する。その後、図3(d)に示すように、脱気管14aを封止する。その後、図(e)に示すように、原料11が充填された容器13を所望の押し出し温度まで加熱し、これを容器13ごと押し出しプレス機17に挿入し、直接押し出し法又は間接押し出し法により押し出し成形する。その後、直ちに、機械加工又は酸による溶解により成形体から容器13を除去するか、又は、成形体を切断する際に成形体から容器13を除去することにより、熱電材料を製造することができる。
【0033】
また、このような熱電材料を使用してペルチェモジュール(熱電変換素子)を作製する場合、この素子性能は主として最大温度差(ΔTmax )で表すことができる。例えば、熱電材料の性能指数が3.4×10−3(1/K)であるとき、この熱電材料を使用して得られた熱電変換素子の最大温度差(ΔTmax)は70(K)以上の能力となる。これは、室温から10(K)の温度差を設ける場合に、従来の熱電変換素子と比較して、その消費電力を30%削減することができることを示している。このような熱電変換素子は、各種デバイスの冷却及び温度調節等に応用することができる。
【0034】
なお、本実施例方法により得られた熱電材料を熱電変換素子として使用する場合は、押し出し方向に電流又は熱流の方向を規定することにより、高い性能指数を有する熱電変換素子を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明に係る製造方法により得られた熱電材料の実施例についてその比較例と比較して具体的に説明する。
【0036】
先ず、所定の組成になるように原料を秤量し、これを真空中にて溶解して母合金の溶湯を調製した。次いで、液体急冷法によって、種々の冷却速度で前記溶湯を冷却することにより、熱電材料の薄片を形成した。本実施例においては、単ロール法を使用し、2×10−5Torrで真空引きした後、大気圧になるまでArを充填した密閉チャンバー内で、ロールの表面の移動速度を40m/秒、溶湯の噴射圧を1kg/cmとし、溶湯を噴出させる石英ノズルの内径を8mm、噴出口の径を0.5mmとして薄片を形成した。
【0037】
次に、得られた薄片を、粒径が100μm以下となるように粉砕した。このとき、25μm以下の粉末は表面積比が大きく、多くの酸素を含み、特性を劣化させるので、除去することが望ましい。また、このとき特に薄片を粉砕しなくてもよい。これは、急冷凝固のために薄片内の結晶が十分微細化されているからである。なお、このときに、粉末体を水素中において還元処理すれば、粉末表面の酸素を除去することができる。
【0038】
その後、この粉末体状の原料を銅製容器に充填して封止した後、押し出し成形することにより熱電材料を製造した。この銅製容器は、内径が18乃至45mmのものを使用することができ、粉末体の充填率を70乃至80%とすることができる。本実施例においては、銅製容器内は、2×10−5Torrまで脱気し、300℃の温度で5乃至10分間の予備加熱を実施した後、封止した。押し出し成型時においては、種々の温度になるまで粉末体が充填された銅製容器を加熱し、これを温間押し出しプレス機に挿入し、200トン押し出し機で直接押し出し法により成形した。なお、成型品の直径を8mm前後に固定して、種々の押し出し比(押し出し前の断面積/押し出し後の断面積)になるように押し出しビレットのサイズを選択した。
【0039】
その後、このようにして得られた種々の熱電材料について、押し出し方向の性能指数Zを算出した。薄片形成時の冷却速度、組成、押し出し比及び押し出し温度を変化させて得られた熱電材料の押し出し方向の性能指数Zを下記表1乃至11に示す。なお、表中において−はクラックが発生していることを示している。
【0040】
【表1】
Figure 0003572877
【0041】
【表2】
Figure 0003572877
【0042】
【表3】
Figure 0003572877
【0043】
【表4】
Figure 0003572877
【0044】
【表5】
Figure 0003572877
【0045】
【表6】
Figure 0003572877
【0046】
【表7】
Figure 0003572877
【0047】
【表8】
Figure 0003572877
【0048】
【表9】
Figure 0003572877
【0049】
【表10】
Figure 0003572877
【0050】
【表11】
Figure 0003572877
【0051】
次に、上記表1乃至11において示された性能指数Zをグラフにして評価した。図4乃至6は縦軸にP型熱電材料(Bi0.5Sb1.5Te+2重量%Te)の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【0052】
また、図7乃至14は縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。但し、図4乃至6は、夫々、上記表1乃至3に対応しており、図7乃至14は、夫々、上記表4乃至11に対応している。なお、クラックが発生して切断が不可能となったものについては、図中において性能指数Zを0としている。
【0053】
上記表1乃至11及び図4乃至14に示すように、薄片形成時の冷却速度が1×10(K/秒)未満であると、性能指数Zは2.7×10−3(1/K)以下に低下した。また、押し出し温度が300(℃)未満となるか、又は押し出し比が5未満となると焼結が不十分となって、熱電材料を切断する際に破壊されることがあった。但し、押し出し比が2以上であると共に、押し出し温度が250℃以上であると、切断速度を遅くする等の方法によっては、破壊されることなく切断することが可能となった。そして、この場合の熱電材料の性能指数Zは2.7×10−3(1/K)を超える値となった。
【0054】
また、押し出し比が30を超えてもクラックが発生することがあるが、この場合も同様に、切断条件を最適化することによって、クラックを発生させることなく切断することが可能となった。
【0055】
押し出し比が35を超えると、クラックが押し出し材全体に広がって、切断することが困難となった。また、押し出し温度が500℃を超えると、結晶粒が粗大化し始めるため、熱伝導率κが大きくなって性能指数Zが若干低下した。更に、押し出し温度が600℃を超えると、この熱電材料の融点に近い温度となるので、粒成長が著しく進行した。従って、600℃を超える押し出し温度で成形された熱電材料の性能指数Zは、600℃以下の押し出し温度で成形された熱電材料の性能指数と比較して、大きく低下した。
【0056】
このように、薄片形成時の冷却速度を1×10(K/秒)以上とすることにより、その冷却速度を1×10(K/秒)以下とした場合と比較して、高い性能指数Zを有する熱電材料を得ることができた。また、押し出し成型時において、押し出し比を2乃至35、押し出し温度を250乃至600℃とすると、得られた熱電材料の性能指数Zは2.8×10−3(1/K)以上となり、従来の熱電材料の性能指数よりも高いものとなった。更に、押し出し比を5乃至30、押し出し温度を300乃至500℃とすると、例えば、3.4×10−3(1/K)以上のより一層高い性能指数Zを有する熱電材料を得ることができた。更にまた、押し出し比を10乃至20、押し出し温度を350乃至400℃とすると、例えば、性能指数Zが3.8×10−3(1/K)以上となり、更に一層性能指数Zを高めることができた。
【0057】
更に、薄片形成時の冷却速度を1×10(K/秒)として製造したときのP型の熱電材料(Bi0.5Sb1.5Te+2重量%Te)について、押し出し方向に平行な方向と押し出し方向に直交する方向とで性能指数Zの差異を比較した。
【0058】
図15は縦軸にP型熱電材料(Bi0.5Sb1.5Te+2重量%Te)の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、押し出し方向に平行な方向と直交する方向における性能指数Zと押し出し温度との関係を示すグラフ図である。なお、この熱電材料は、押し出し比を15として製造したものであり、図中において、Zは押し出し方向に平行な方向の性能指数を示し、Zは押し出し方向に直交する方向の性能指数を示す。
【0059】
図15に示すように、押し出し比を一定とした場合、押し出し成型時の押し出し温度を上昇させると、結晶の配向性が向上するので、押し出し方向に平行な方向の性能指数Zは高くなる。しかしながら、押し出し温度を更に上昇させると、結晶粒が粗大化するため熱伝導率κが高くなり、性能指数は低下していく。例えば、押し出し温度を500℃から525℃に上昇させると、結晶粒径は9μmから25μmに成長し、熱伝導率κは1.1(W/m・K)から1.25(W/m・K)と高くなる。更に、押し出し温度を650℃とすると、熱電材料の融点に近くなることにより、結晶粒径は50μm以上となり、熱伝導率κは1.5(W/m・K)以上となった。
【0060】
また、図16は縦軸にP型熱電材料(Bi0.5Sb1.5Te+2重量%Te)の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、押し出し方向に平行な方向と直交する方向における性能指数Zと押し出し比との関係を示すグラフ図である。なお、この熱電材料は押し出し温度を350℃として製造したものである。
【0061】
図16に示すように、押し出し温度を一定とした場合、押し出し比を高くすると、押し出し温度を上昇させたときと同様に、結晶の配向性が向上するので、特に、押し出し方向に平行な方向の性能指数Zは高くなる。しかしながら、押し出し比を更に高くすると、成形された熱電材料に微小クラックが発生するため比抵抗ρが高くなり、性能指数は低下していく。例えば、押し出し比を25から30にすると、比抵抗ρは1.1から1.3に上昇する。
【0062】
次に、上記表1乃至11に示す熱電材料と同様の方法で、種々の組成を有するP型及びN型熱電材料を製造し、それらの押し出し方向の性能指数Zを算出した。但し、薄片形成時の冷却速度を1×10(K/秒)、押し出し比を10とし、押し出し温度を350℃とした。これらの熱電材料の組成及び性能指数Zを下記表12に示す。
【0063】
【表12】
Figure 0003572877
【0064】
上記表12に示すように、P型及びN型の熱電材料の組成に拘わらず、従来の熱電材料よりも高い性能指数を得ることができた。
【0065】
なお、押し出しにより成形された熱電材料を押し出し方向に電流又は熱流の方向を規定すると、優れた特性を有する熱電変換素子を得ることができる。
【0066】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、溶融した母合金を所望の冷却速度で冷却凝固させて粉末体とし、この粉末体を押し出し成形することにより熱電材料を製造するので、性能指数を向上させることができる。また、冷却速度、押し出し比及び押し出し温度を適切に調整すると、より一層性能指数を高めることができる。また、この熱電材料に対して押し出し方向に熱流及び電流の方向を規定することにより、優れた特性を有する熱電変換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単ロール法による粉末体の形成方法を示す模式図である。
【図2】アトマイズ法による粉末体の形成方法を示す模式図である。
【図3】(a)乃至(e)は押し出し成形による熱電材料の製造方法を工程順に示す模式図である。
【図4】縦軸にP型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図5】縦軸にP型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図6】縦軸にP型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図7】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図8】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図9】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図10】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図11】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図12】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図13】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図14】縦軸にN型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、種々の押し出し比における押し出し温度と性能指数Zとの関係を示すグラフ図である。
【図15】縦軸にP型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、押し出し方向に平行な方向と直交する方向における性能指数Zと押し出し温度との関係を示すグラフ図である。
【図16】縦軸にP型熱電材料の性能指数Zをとり、横軸に押し出し温度をとって、押し出し方向に平行な方向と直交する方向における性能指数Zと押し出し比との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1、6;溶湯、 2、7;容器、 3、8;高周波コイル、 4;銅ロール、5;薄片、 9;ガス供給管、 10;微粉末体、 11;原料、 12;ふるい、 13;容器、 14;蓋、 16;オイルバス、 17;押出しプレス機

Claims (7)

  1. Bi及びSbからなる群から選択された少なくとも1種の元素と、Te及びSeからなる群から選択された少なくとも1種の元素とを含有する溶融した母合金を1×10K/秒以上の冷却速度で冷却凝固させて粉末体を得る工程と、この粉末体を押し出し比を2乃至35、押し出し温度を250乃至600℃として押し出し成形する工程とを有することを特徴とする熱電材料の製造方法。
  2. 前記粉末体を得る工程において、母合金の冷却速度を1×10K/秒以上とすることを特徴とする請求項1に記載の熱電材料の製造方法。
  3. 前記押し出し成形する工程において、押し出し比を10乃至20、押し出し温度を350乃至400℃とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電材料の製造方法。
  4. Bi及びSbからなる群から選択された少なくとも1種の元素と、Te及びSeからなる群から選択された少なくとも1種の元素と、I、Cl、Hg、Br、Ag及びCuからなる群から選択された少なくとも1種の元素とを含有する溶融した母合金を1×10K/秒以上の冷却速度で冷却凝固させて粉末体を得る工程と、この粉末体を押し出し比を2乃至35、押し出し温度を250乃至600℃として押し出し成形する工程とを有することを特徴とする熱電材料の製造方法。
  5. 前記粉末体を得る工程において、母合金の冷却速度を1×10K/秒以上とすることを特徴とする請求項4に記載の熱電材料の製造方法。
  6. 前記押し出し成形する工程において、押し出し比を10乃至20、押し出し温度を350乃至400℃とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱電材料の製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱電材料が使用される熱電変換素子において、押し出し成形された熱電材料の押し出し方向に電流及び熱流の方向が規定されることを特徴とする熱電変換素子。
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