JP3568030B2 - 誘電体磁器組成物の製造方法と誘電体層含有電子部品の製造方法 - Google Patents

誘電体磁器組成物の製造方法と誘電体層含有電子部品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体磁器組成物の製造方法と、積層型セラミックコンデンサなどの誘電体層含有電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層型セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されており、電気機器および電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型且つ高性能化に伴い、積層型セラミックコンデンサに対する更なる小型化、大容量化、低価格化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
【0003】
積層型セラミックコンデンサは、通常、内部電極のペーストと誘電体のスラリー(ペースト)とを、シート法や印刷法等により積層し、焼成して製造される。かかる内部電極には、一般に、PdやPd合金が用いられてきたが、Pdは高価であるため、比較的安価なNiやNi合金が使用されつつある。ところで、内部電極をNiやNi合金で形成する場合は、大気中で焼成を行うと電極が酸化してしまうという問題がある。このため、一般に、脱バインダ後は、NiとNiOの平衡酸素分圧よりも低い酸素分圧で焼成し、その後熱処理により誘電体層を再酸化させている(特開平03−133116号公報、特許第2787746号)。
【0004】
しかしながら、還元性雰囲気中で焼成すると、誘電体層が還元され、比抵抗が小さくなってしまう。そこで、還元性雰囲気中で焼成しても還元されない耐還元性の誘電体材料が提案されている(I. Burn, et al., ”High Resistivity BaTiO Ceramics Sintered in CO−CO Atmospheres” J. Mater. Sci., 10, 633 (1975); Y. Sakabe, et al., ”High−Dielectric Constant Ceramics for Base Metal Monolithic Capacitors” pn. J. Appl. Phys., 20 Suppl. 20−4, 147 (1981))。
【0005】
しかしながら、これらの耐還元性の誘電体材料を用いた積層型セラミックコンデンサは、絶縁抵抗(IR)の高温加速寿命が短く、信頼性が低いという問題がある。また、誘電体の比誘電率が経時的に低下するという問題があり、直流電界下で特に顕著である。積層型セラミックコンデンサを、小型且つ大容量化するために誘電体層の厚みを薄くすると、直流電圧を印加したときの誘電体層にかかる電界強度が大きくなる。このために、比誘電率の経時変化が著しく大きくなってしまう。
【0006】
ところで、EIA規格に定められたX7R特性と呼ばれる規格では、容量の変化率が−55℃から125℃の間で±15%以内(基準温度25℃)と定められている。X7R特性を満足する誘電体材料としては、例えば特開昭61−36170号公報に示されるBaTiO+SrTiO+MnO系の組成が知られている。しかしながら、この組成は、直流電界下における容量の経時変化が大きく、例えば40℃で50Vの直流電界を1000時間印加すると、容量の変化率が−10〜−30%程度となってしまい、X7R特性を満足することができなくなる。
【0007】
また、容量の温度特性であるB特性(EIAJ規格)と呼ばれる規格では、−25〜85℃の間で±10%以内(基準温度20℃)と定められている。
【0008】
また、この他、耐還元性の誘電体磁器組成物としては、特開昭57−71866号公報に開示されているBaTiO+MnO+MgO、特開昭61−250905号公報に開示されている(Ba1−x SrO)Ti1−y Zr+α((1−z)MnO+zCoO)+β((1−t)A+tL)+wSiO(ただし、A=Nb,Ta,V;L=Yまたは希土類元素)、特開平2−83256号公報に開示されているBaCa1−a SiOを添加したチタン酸バリウム等が挙げられる。
【0009】
しかしながら、これらのいずれの誘電体磁器組成物も、誘電体層厚みが、たとえば4μm以下という超薄層の場合には、容量の温度特性、直流電界下での容量の経時変化、絶縁抵抗の加速寿命、直流バイアス下の容量低下等の特性のすべてを満足することは非常に難しい。例えば、特開昭61−250905号公報および特開平2−832号公報にそれぞれ開示されているものでは、絶縁抵抗の加速寿命が短いとか直流バイアス下の容量低下が大きいという問題を生じる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情からなされたものであり、本発明の目的は、誘電体層厚みが超薄層の場合においても、容量の温度特性であるX7R特性(EIA規格)およびB特性(EIAJ規格)をいずれも満足することができ、かつ、直流電界下での容量の経時変化が小さく、絶縁抵抗の加速寿命が長く、また、直流バイアス下の容量低下が小さい積層型セラミックコンデンサなどの誘電体層含有電子部品を得るための製造方法を提供することである。また、本発明は、このように優れた特性を持つ積層型セラミックコンデンサなどの誘電体層含有電子部品の誘電体層として好適に用いられる誘電体磁器組成物を製造するための方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法は、
組成式BaTiO2+n で表され、前記組成式中のmが0.995≦m≦1.010であり、nが0.995≦n≦1.010であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.010である主成分と、
酸化シリコンを主成分として含む焼結助剤である第2副成分と、
その他の副成分とを少なくとも有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記第2副成分を除いて、前記主成分と、その他の副成分のうちの少なくとも一部とを混合し、仮焼前粉体を準備する工程と、
前記仮焼前粉体を仮焼きして仮焼済粉体を準備する工程と、
前記仮焼済粉体に、前記第2副成分を少なくとも混合し、前記主成分に対する各副成分の比率が所定モル比である誘電体磁器組成物を得る工程と、を有する。
【0012】
本発明の第1の観点では、
前記第2副成分が(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.8〜1.2)で表される組成を有し、
前記その他の副成分が、
MgO,CaO,BaO,SrOおよびCrから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
Rの酸化物(ただし、RはY、Dy、Tb、GdおよびHoから選択される少なくとも一種)を含む第4副成分と、を少なくとも有し、
前記仮焼済粉体に、前記第2副成分を少なくとも混合し、前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、
第1副成分:0.1〜3モル、
第2副成分:2〜12モル、
第3副成分:0.1〜3モル、
第4副成分:0.1〜10.0モル(ただし、第4副成分のモル数は、R単独での比率である)である誘電体磁器組成物を得ることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の観点では、
前記第2副成分が(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.8〜1.2)で表される組成を有し、
前記その他の副成分が、
MgO,CaO,BaO,SrOおよびCrから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
Rの酸化物(ただし、RはY、Dy、Tb、GdおよびHoから選択される少なくとも一種)を含む第4副成分と、
MnOを含む第5副成分とを少なくとも有し、
前記仮焼済粉体に、前記第2副成分を少なくとも混合し、前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、
第1副成分:0.1〜3モル、
第2副成分:2〜12モル、
第3副成分:0.1〜3モル、
第4副成分:0.1〜10.0モル(ただし、第4副成分のモル数は、R単独での比率である)、
第5副成分:0.05〜1.0モルである誘電体磁器組成物を得ることが好ましい。
【0014】
なお、本明細書では、主成分および各副成分を構成する各酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであってもよい。ただし、各副成分の上記比率は、各副成分を構成する酸化物に含有される金属量から上記化学量論組成の酸化物に換算して求める。また、誘電体磁器組成物の原料粉末としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
また、前記第2副成分中のBaとCaとの比率は任意であり、一方のみを含有するものでも良い。
【0015】
本発明では、前記主成分の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜0.7μm、さらに好ましくは0.2〜0.7μmである。
【0016】
本発明では、前記仮焼前粉体中に含まれる成分のモル比:(Ba+第1副成分の金属元素)/(Ti+第4副成分の金属元素)が1未満、または(Ba+第4副成分の金属元素)/(Ti+第1副成分の金属元素)が1を超えるように、前記仮焼前粉体を準備し、仮焼を行うことが好ましい。
【0017】
本発明では、前記仮焼前粉体を準備する際には、仮焼前粉体には、第1副成分を必ず含ませることが好ましい。
【0018】
本発明では、仮焼前粉体中に、第4副成分の原料が含まれている場合には、仮焼温度は、好ましくは500℃以上1200℃未満であり、さらに好ましくは600〜900℃である。また、仮焼前粉体中に、第4副成分の原料が含まれていない場合には、仮焼温度は、好ましくは600〜1300℃、さらに好ましくは900〜1300℃、特に好ましくは1000〜1200℃である。
なお、仮焼きは、複数回行っても良い。
【0019】
前記仮焼済粉体には、前記第2副成分を少なくとも混合させれば良く、必要に応じて、主成分、第1副成分、第3副成分、第4副成分および第5副成分のうちの一つ以上をさらに混合し、最終的に得られる誘電体磁器組成物の組成が上記範囲となればよい。
【0020】
また、本発明の第3の観点では、
NiまたはNi合金からなる内部電極と誘電体層とを交互に積層してなる積層型セラミックコンデンサであって、誘電体層が、BaTiO:100モル、MgOまたはCaOの少なくとも1種:0.1〜3モル、MnO:0.05〜1.0モル、Y:0.1〜5モル、V:0.1〜3モル、BaCa1−a SiO(aは0〜1の数である):2〜12モルをこのモル比で含む積層型セラミックコンデンサの製造方法において、
BaTiOと、MgOまたはCaOまたは熱処理によってMgOまたはCaOになる化合物の少なくとも1種を予め混合し、900℃〜1300℃で仮焼きした材料を、誘電体材料全体に対して70重量%以上用いることを特徴とする積層型セラミックコンデンサが提供される。
【0021】
また、本発明の第4の観点では、
NiまたはNi合金からなる内部電極と誘電体層とを交互に積層してなる積層型セラミックコンデンサであって、誘電体層が、BaTiO:100モル、MgOまたはCaOの少なくとも1種:0.1〜3モル、MnO:0.05〜1.0モル、Y:0.1〜5モル、V:0.1〜3モル、BaCa1−a SiO(aは0〜1の数である):2〜12モルをこのモル比で含む積層型セラミックコンデンサの製造方法において、
BaTiOと、MgOまたはCaOまたは熱処理によってMgOまたはCaOになる化合物の少なくとも1種と、MnOまたは熱処理によってMnOになる化合物、Yまたは熱処理によってYになる化合物、およびVまたは熱処理によってVになる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とを予め混合し、900℃〜1300℃で仮焼きした材料を、誘電体材料全体に対して70重量%以上用いることを特徴とする積層型セラミックコンデンサが提供される。
本発明の第3および第4の観点において、BaTiOの平均粒径が0.2〜0.7μmであることが好ましい。なお、本発明の第3および第4の観点では、Yのモル数は、Y単独でのモル数ではなく、Yのモル数である。
【0022】
【作用】
従来の誘電体磁器組成物の製造方法では、BaTiO2+n と添加物とを一度に混合し、誘電体磁器組成物の混合粉末、または誘電体ペーストを作製している。しかしながら、従来の方法では、焼成後の誘電体磁器組成物中に、添加物(第1〜第5副成分)などの偏析が生じ、各結晶間の組成のバラツキが生じてしまう。このような偏析により、誘電体の誘電率および絶縁抵抗が悪化する。
【0023】
本発明によれば、第2副成分を除いて、主成分と、第1副成分、第3副成分、第4副成分および第5副成分のうちの少なくとも一つとを混合して仮焼することで、各結晶粒子同士の組成バラツキを抑制することができ、その結果、偏析相の析出を抑制すると共に、偏析相の大きさを制御することができる。したがって、本発明によれば、X7R特性およびB特性の双方を満足しつつ、直流電界下での容量の経時変化が小さく、絶縁抵抗の加速寿命が長く、直流電界下での容量低下が小さい、信頼性に優れた積層型セラミックコンデンサなどの誘電体層含有電子部品に好適に用いられる誘電体磁器組成物を製造することができる。このことは、本発明者等により初めて見出された。
【0024】
また、本発明に係る製造方法で得られた誘電体磁器組成物は、蒸発飛散するようなPb,Bi,Znのような元素を含有しないため、還元雰囲気でも焼成可能である。このため、内部電極としてNiおよびNi合金などの卑金属を使用することが可能となり、低コスト化が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る製造方法で得られた誘電体磁器組成物は、還元雰囲気下での焼成においても、X7R特性およびB特性を満足し、直流電界印加による容量エージング特性、絶縁抵抗の劣化が小さく、信頼性にも優れている。このため、本発明の方法は、積層コンデンサの薄層化に伴う高温領域の温度変化率の悪化を抑制する手法としても効果が期待できる。
【0026】
また、本発明に係る製造方法で得られた誘電体磁器組成物は、Pb,Biなどの物質を含有しないため、使用後の廃棄、処分などによる環境への悪影響が小さい製品を提供できる。
【0027】
また、本発明に係る製造方法では、添加物が析出して形成された異相が少ない均一な組織の誘電体磁器組成物を実現することができ、誘電体磁器組成物の誘電率、絶縁抵抗を改善できる。また、本発明に係る製造方法では、偶発的に生じてしまう構造的な欠陥を防止できるために、高い信頼性を有する積層型セラミックコンデンサを提供できる。
【0028】
また、添加物組成を変更することなく異相析出を抑制できるために、容量温度特性がX7R特性およびB特性を満足する積層型セラミックコンデンサなどの誘電体層含有電子部品を容易に製造することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の1実施形態に係る積層型セラミックコンデンサの断面図である。
【0030】
積層型セラミックコンデンサ
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法について説明する前に、まず、積層型セラミックコンデンサについて説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層型セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×(0.3〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
【0031】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0032】
誘電体層2
誘電体層2は、本発明の製造方法により得られる誘電体磁器組成物を含有する。 本発明の製造方法により得られる誘電体磁器組成物は、
組成式BaTiO2+n で表され、前記組成式中のmが0.995≦m≦1.010であり、nが0.995≦n≦1.010であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.010である主成分と、
MgO,CaO,BaO,SrOおよびCrから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.8〜1.2)で表される第2副成分と、
,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
Rの酸化物(ただし、RはY、Dy、Tb、GdおよびHoから選択される少なくとも一種)を含む第4副成分ととを少なくとも有する誘電体磁器組成物で構成してある。
【0033】
前記主成分に対する上記各副成分の比率は、前記主成分100モルに対し、
第1副成分:0.1〜3モル、
第2副成分:2〜12モル、
第3副成分:0.1〜3モル、
第4副成分:0.1〜10.0モルである。
なお、第4副成分の上記比率は、R酸化物のモル比ではなく、R単独のモル比である。すなわち、例えば第4副成分としてYの酸化物を用いた場合、第4副成分の比率が1モルであることは、Yの比率が1モルなのではなく、Yの比率が1モルであることを意味する。
【0034】
本明細書では、主成分および各副成分を構成する各酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであってもよい。ただし、各副成分の上記比率は、各副成分を構成する酸化物に含有される金属量から上記化学量論組成の酸化物に換算して求める。また、誘電体磁器組成物の原料粉末としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
【0035】
上記各副成分の含有量の限定理由は以下のとおりである。
第1副成分(MgO,CaO,BaO,SrOおよびCr)の含有量が少なすぎると、直流バイアス下の容量低下に対する抑制効果が不十分になる傾向にある。一方、含有量が多すぎると、誘電率の低下が著しくなる傾向にあり、且つ絶縁抵抗の加速寿命が短くなる傾向にある。なお、第1副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
【0036】
第2副成分[(Ba,Ca)SiO2+x ]中のBaOおよびCaOは第1副成分にも含まれるが、複合酸化物である(Ba,Ca)SiO2+x は融点が低いため主成分に対する反応性が良好なので、本発明ではBaOおよび/またはCaOを上記複合酸化物としても添加する。第2副成分の含有量が少なすぎると、焼結性が悪く、絶縁抵抗の加速寿命が短く、容量の温度特性がX7R特性の規格を満足しにくくなる傾向にある。一方、含有量が多すぎると、誘電率が低く、容量が低下すると共に、絶縁抵抗の加速寿命も短くなる。
【0037】
(Ba,Ca)SiO2+x におけるxは、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。xが小さすぎると、すなわちSiOが多すぎると、主成分のBaTiO2+n と反応して誘電体特性を悪化させてしまう。一方、xが大きすぎると、融点が高くなって焼結性を悪化させるため、好ましくない。なお、第2副成分においてBaとCaとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであってもよい。
【0038】
第3副成分(V,MoOおよびWO)の含有量が少なすぎると、破壊電圧が低下し、容量の温度特性がX7R特性の規格を満足しにくくなる傾向にある。一方、含有量が多すぎると、初期の絶縁抵抗が低くなる傾向にある。なお、第3副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
【0039】
第4副成分(R酸化物)の含有量が少なすぎると、絶縁抵抗の加速寿命が短くなる傾向にある。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化する傾向にある。これらの中でも、X7R特性を満足させる観点からは、第4副成分の中でも、Y酸化物、Dy酸化物、およびHo酸化物が好ましい。特に、特性改善効果が高く、しかも安価であることから、Y酸化物が好ましい。
【0040】
本発明の誘電体磁器組成物には、必要に応じ、第5副成分として、MnOが含有されていてもよい。この第5副成分は、焼結を促進する効果と、誘電損失(tanδ)を小さくする効果とを示す。このような効果を十分に得るためには、前記主成分100モルに対する第5副成分の比率が0.05モル以上であることが好ましい。ただし、第5副成分の含有量が多すぎると容量温度特性に悪影響を与えるので、好ましくは1.0モル以下とする。
【0041】
また、本発明の誘電体磁器組成物中には、上記各酸化物のほか、Alが含まれていてもよい。Alは容量温度特性にあまり影響を与えず、焼結性、絶縁抵抗および絶縁抵抗の加速寿命(IR寿命)を改善する効果を示す。ただし、Alの含有量が多すぎると焼結性が悪化してIRが低くなるため、Alは、好ましくは、主成分100モルに対して1モル以下、さらに好ましくは、誘電体磁器組成物全体の1モル以下である。
【0042】
なお、Sr,ZrおよびSnの少なくとも1種が、ペロブスカイト構造を構成する主成分中のBaまたはTiを置換している場合、キュリー温度が低温側にシフトするため、125℃以上での容量温度特性が悪くなる。このため、これらの元素を含むBaTiO2+n [例えば(Ba,Sr)TiO]を主成分として用いないことが好ましい。ただし、不純物として含有されるレベル(誘電体磁器組成物全体の0.1モル%程度以下)であれば、特に問題はない。
【0043】
本発明の誘電体磁器組成物の平均結晶粒径は、特に限定されず、誘電体層の厚さなどに応じて例えば0.1〜3.0μm、好ましくは0.1〜0.7μmの範囲から適宜決定すればよい。容量温度特性は、誘電体層が薄いほど悪化し、また、平均結晶粒径を小さくするほど悪化する傾向にある。このため、本発明の誘電体磁器組成物は、平均結晶粒径を小さくする必要がある場合に、具体的には、平均結晶粒径が0.1〜0.5μmである場合に特に有効である。また、平均結晶粒径を小さくすれば、IR寿命が長くなり、また、直流電界下での容量の経時変化が少なくなるため、この点からも平均結晶粒径は上記のように小さいことが好ましい。
【0044】
本発明の誘電体層2は、グレインと粒界と粒界相とで構成されている。また、いわゆるコア−シェル構造を有する組成物で構成されていても良い。
【0045】
本発明の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層の厚さや層数などの諸条件は、目的や用途に応じて適宜決定すれば良い。たとえば誘電体層の厚さは、一層あたり、通常、50μm以下、特に10μm以下である。厚さの下限は、通常、1μm程度である。本発明の誘電体磁器組成物は、このような薄層化した誘電体層を有する積層型セラミックコンデンサの容量温度特性の改善に有効である。なお、誘電体層の積層数は、通常、2〜400、好ましくは10〜400程度とする。
【0046】
本発明の誘電体磁器組成物を用いた積層型セラミックコンデンサは、特に−55℃〜+125℃の環境下で使用される機器用電子部品として用いて好適である。そして、このような温度範囲において、容量の温度特性がEIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC=±15%以内)を満足し、同時に、EIAJ規格のB特性[−25〜85℃で容量変化率±10%以内(基準温度20℃)]も満足することが可能である。
【0047】
積層型セラミックコンデンサでは、誘電体層に、通常、0.02V/μm以上、特に0.2V/μm以上、さらには0.5V/μm以上、一般に5V/μm程度以下の交流電界と、これに重畳して5V/μm以下の直流電界とが加えられるが、このような電界が加わっても、容量の温度特性は極めて安定である。
【0048】
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。
なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
内部電極層の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.5〜5μm、好ましくは0.5〜2.5μm、さらに好ましくは1〜2μm程度である。
【0049】
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。
外部電極の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜100μm程度であることが好ましい。
【0050】
積層型セラミックコンデンサの製造方法
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法を用いて製造される積層型セラミックコンデンサは、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0051】
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物粉末を準備する。誘電体磁器組成物粉末中のBaTiOの粉末としては、通常、原料を混合、仮焼き、粉砕した、いわゆる固相法により得られる粉体だけでなく、蓚酸塩法や水熱合成法などのいわゆる液相法により得られる粉体であってもよい。
【0052】
本発明では、前述した組成の誘電体磁器組成物粉末を得る前に、仮焼きを行う。すなわち、第2副成分である(Ba,Ca)SiO2+x を除いて、主成分(BaTiO2+n )と、第1副成分(たとえばMgOまたはCaOまたは熱処理によってMgOまたはCaOとなる化合物)、第3副成分(たとえばVまたは熱処理によってVとなる化合物)、第4副成分(たとえばYまたは熱処理によってYとなる化合物)および第5副成分(たとえばMnOまたは熱処理によってMnOとなる化合物)のうちの少なくとも一つとを混合し、乾燥することにより、仮焼前粉体を準備する。
【0053】
なお、熱処理によってMgOまたはCaOになる化合物としては、MgCO,MgCl,MgSO,Mg(NO,Mg(OH),(MgCOMg(OH),CaCO,CaCl,CaSO,Ca(NO、Mgアルコキシド、Caアルコキシドなど、またはこれらの含水物が例示される。また、熱処理によってMnOになる化合物としては、MnCO,MnCl,MnSO,Mn(NOなど、またはこれらの含水物が例示される。また、熱処理によってYになる化合物としては、YCl,Y(SO,Y(NO、Y(CHCOO)、Yアルコキシドなど、またはこれらの含水物が例示される。さらに、熱処理によってVになる化合物としては、VCl,V(SO,V(NOなど、またはこれらの含水物が例示される。
【0054】
仮焼前粉体は、次に仮焼される。仮焼条件は、特に限定されないが、次に示す条件で行うことが好ましい。
昇温速度:50〜400℃/時間、特に100〜300℃/時間、
保持温度:500℃〜1300℃、好ましくは500℃〜1200℃未満、
温度保持時間:0.5時間〜6時間、特に1〜3時間、
雰囲気:空気中および窒素中である。
【0055】
仮焼きされた仮焼済粉末は、アルミナロールなどにより粗粉砕された後、少なくとも第2副成分である(Ba,Ca)SiO2+x を少なくとも添加し、さらに必要に応じて、残りの添加物を添加して、前述した最終組成の混合粉末にする。その後、この混合粉末を、必要に応じて、ボールミルなどによって混合し、乾燥することによって、本発明の組成を持つ誘電体磁器組成物粉末を得る。
【0056】
仮焼きされた仮焼済粉末における各成分のモル比は、特に限定されないが、好ましくは、次の関係式を満足する。すなわち、(Ba+第1副成分の金属元素)/(Ti+第4副成分の金属元素)が1未満、または(Ba+第4副成分の金属元素)/(Ti+第1副成分の金属元素)が1を超えることが好ましい。このような範囲である場合に、特に絶縁抵抗の加速寿命が向上する。
【0057】
また、仮焼済粉末中には、第1副成分が必ず含まれていることが好ましい。最終組成物粉末中における第1副成分の全重量を100重量%とした場合には、仮焼済粉末中には、好ましくは30重量%、さらに好ましくは50重量%の第1副成分が含まれていることが好ましい。
【0058】
仮焼済粉末は、最終的に得られる誘電体磁器組成物粉末を100質量%として、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上の量で、後添加成分に混合される。仮焼済粉末の割合が小さすぎると、絶縁抵抗の加速寿命が短く、直流バイアス下での容量低下が著しくなる傾向にある。
【0059】
次に、この最終的に得られた誘電体磁器組成物粉末を塗料化して、誘電体層用ペーストを調整する。誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物粉末と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0060】
塗料化する前の状態で、誘電体磁器組成物粉末の粒径は、通常、平均粒径0.1〜3μm、好ましくは0.1〜0.7μm程度である。
【0061】
有機ビヒクルとは、バインダ(結合剤)を有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0062】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0063】
内部電極層用ペーストは、上記した各種誘電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等(導電材など)と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。ペースト中の導電材などは、その形状に特に制限はなく、球状、鱗片状などが例示され、また、これらの形状のものが混合したものでも良い。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0064】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される補助添加物が含有されていてもよい。これらの補助添加物の総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0065】
なお、可塑剤としては、たとえばポリエチレングリコール、フタール酸エステル(たとえばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート)などが用いられる。また、分散剤としては、たとえばオイレン酸、ロジン、グリセリン、オクタデシルアミン、オイレン酸エチル、メンセーデン油などが用いられる。
【0066】
特に、誘電体層用ペースト(スラリー)を調製する際には、ペースト中における誘電体磁器組成物粉末の含有量は、ペースト全体に対し、50〜80重量%程度とし、その他、バインダは2〜5重量%、可塑剤は0.1〜5重量%、分散剤は0.1〜5重量%、溶剤は20〜50重量%程度とすることが好ましい。
【0067】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0068】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
【0069】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよいが、内部電極層の導電材にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、特に下記の条件で行うことが好ましい。
昇温速度:5〜300℃/時間、特に10〜100℃/時間、
保持温度:180〜400℃、特に200〜300℃、
温度保持時間:0.5〜24時間、特に5〜20時間、
雰囲気:空気中。
【0070】
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、好ましくは10−7〜10−13 atm、さらに好ましくは10−10〜10−12 atmである。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0071】
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1100〜1400℃、より好ましくは1150〜1400℃、さらに好ましくは1200〜1300℃である。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
【0072】
好ましくは上記条件以外の焼成時の各種条件は、下記範囲から選択される。
昇温速度:100〜900℃/時間、特に200〜900℃/時間、
温度保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間。
なお、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしては、例えば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
【0073】
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0074】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−4〜10−7atmとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
【0075】
アニールの際の保持温度は、1200℃以下、特に500〜1200℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
【0076】
上記条件以外のアニール時の各種条件は、下記範囲から選択することが好ましい。
温度保持時間:0.5〜12時間、特に6〜10時間、
冷却速度:50〜600℃/時間、特に100〜300℃/時間
なお、雰囲気用ガスには、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
【0077】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
【0078】
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、アニールの保持温度に達したときに雰囲気を変更してアニールを行なうことが好ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処理時の保持温度までNガスあるいは加湿したNガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、アニール時の保持温度まで冷却した後は、再びNガスあるいは加湿したNガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。また、アニールに際しては、Nガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、アニールの全過程を加湿したNガス雰囲気としてもよい。
【0079】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0080】
このようにして製造された本発明の積層型セラミックコンデンサは、誘電体層の厚みが4μm以下という超薄層の場合でも、容量温度変化率がEIA規格のX7R特性を満足すると共に、EIAJ規格のB特性を満足する。また、本発明の積層型セラミックコンデンサは、直流電界下での容量の経時変化が小さく、絶縁抵抗の加速寿命が長く、また、直流バイアス下の容量低下が小さいものである。
【0081】
また、このようにして製造された本発明の積層型セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明に係る製造方法により得られる誘電体磁器組成物は、積層型セラミックコンデンサのみに使用されるものではなく、誘電体層が形成されるその他の電子部品に使用されても良い。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0084】
試料番号A1〜A10(参考例)
以下に示す手順で、積層型セラミックコンデンサの試料A1〜A10を作製した。
まず、下記の各ペーストを調製した。
【0085】
誘電体層用ペースト
まず、主成分原料および副成分原料を用意した。主成分原料としては、水熱合成法により得られた粒径0.2〜0.7μmのBaTiOを用いた。MgOおよびMnOの原料には炭酸塩を用い、他の副成分原料には酸化物を用いた。MgOの原料としてのマグネシウム炭酸塩としては、(MgCOMg(OH)・5HOを用いた。また、MnOの原料としての炭酸塩としては、MnCOを用いた。
【0086】
また、第2副成分の原料には、(Ba0.6 Ca0.4 )SiOを用いた。なお、(Ba0.6 Ca0.4 )SiOは、BaCO,CaCOおよびSiOをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃で空気中で焼成し、さらに、ボールミルにより100時間湿式粉砕することにより製造した。
【0087】
まず、主成分であるBaTiOと、第1副成分の原料であるマグネシウム炭酸塩とを混合し、乾燥することにより、仮焼前粉体を準備した。表1に示すように、仮焼前粉体は、100モルのBaTiOに対して、MgOに換算して2.1モルのマグネシウム炭酸塩が含有してあった。また、この仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+第1副成分中の金属元素Mg)/(Ti+第4副成分中の金属元素Y)を調べたところ、表1に示すように、1.021であった。また、モル比:(Ba+第4副成分中の金属元素Y)/(Ti+第1副成分中の金属元素Mg)を調べたところ、表1に示すように、0.9794であった。
【0088】
次に、この仮焼前粉体を仮焼した。仮焼き条件は、以下の通りであった。
昇温速度:300℃/時間、
保持温度(表1ではT1):500〜1350℃、
温度保持時間:3時間、
雰囲気:空気中。
【0089】
この仮焼きによって得られた材料を、ライカイ機で1時間粉砕して仮焼済粉体とし、その後、この仮焼済粉体に対して、表2に示すように、3.0モルの(Ba0.6 Ca0.4 )SiO、0.375モルのMnCO、0.1モルのV、および2.1モルのY(Yのモル数は4.2モル、以下同様)を添加し、ジルコニア製ボールミルにより16時湿式混合した後に乾燥し、最終組成の誘電体磁器組成物粉体を得た。
【0090】
このようにして得られた誘電体磁器組成物粉体100重量部と、アクリル樹脂4.8重量部と、塩化メチレン40重量部と、酢酸エチル20重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、アセトン4重量部とをボールミルで16時間混合し、ペースト化した。
【0091】
内部電極層用ペースト
平均粒径0.4μmのNi粒子44.6重量部と、テルビネオール:52.0重量部と、エチルセルロース:3.0重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化した。
【0092】
外部電極用ペースト
平均粒径2μmのCu粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)35重量部およびブチルカルビトール7重量部とを混練し、ペースト化した。
【0093】
グリーンチップの作製
上記誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上に、厚さ5μmのグリーンシートを形成した。このグリーンシートの表面に内部電極用ペーストを印刷した後、PETフィルムからシートを剥離した。次いで、内部電極層用ペーストを印刷後のグリーンシート4層を、保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)複数枚で挟んで積層し、その後、120℃および15Paの条件で圧着してグリーンチップを得た。
【0094】
焼成
まず、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行った後、外部電極を形成して、図1に示す構成の積層型セラミックコンデンサのサンプルA1〜A10を得た。
【0095】
脱バインダ処理条件
昇温速度:15℃/時間、
保持温度:280℃、
温度保持時間:8時間、
雰囲気:空気中。
【0096】
焼成条件
昇温速度:200℃/時間、
保持温度:1270℃、
温度保持時間:2時間、
冷却速度:300℃/時間、
雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス、
酸素分圧:10−12 atm。
【0097】
アニール条件
保持温度:1000℃、
温度保持時間:3時間、
冷却速度:300℃/時間、
雰囲気ガス:加湿したNガス、
酸素分圧:10−6atm。
なお、上記脱バインダ処理、焼成およびアニールの際におけるそれぞれの雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃としたウエッターを用いた。
【0098】
外部電極
外部電極は、焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、上記外部電極用ペーストを前記端面に転写し、加湿したN+H雰囲気で800℃にて10分間焼成することにより形成した。
【0099】
このようにして得られた各サンプルのサイズは、3.2mm×1.6mm×1.4mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4、その厚さは3μmであり、内部電極層の厚さは1.3μmであった。
【0100】
また、コンデンサのサンプルのほかに、円板状サンプルも作製した。この円板状サンプルは、上記コンデンサのサンプルの誘電体層と同組成で、かつ焼成条件が同じであり、直径5mmのIn−Ga電極をサンプルの両面に塗布したものである。
【0101】
各サンプルについて下記特性の評価を行った。
比誘電率(εr)
円板状サンプルに対し、25℃において、LCRメータにより1kHz,1Vrmsの条件下で容量を測定した。そして、容量、電極寸法およびサンプルの厚さから、比誘電率を算出した。結果を表2に示す。比誘電率は高いほど良い。
【0102】
破壊電圧(VB)
破壊電圧は、積層チップコンデンサのサンプルに対し、100V/秒の昇圧スピードで直流電圧を印加し、100mAの漏洩電流が観察されたときの電圧を測定することにより求めた。結果を表2に示す。破壊電圧は、高い程良い。
【0103】
直流電界下でのIR寿命(高温加速寿命:表ではHALT)
積層チップコンデンサのサンプルに対し、180℃にて10V/μmの電界下で加速試験を行い、絶縁抵抗(IR)が2×10Ω以下になるまでの時間を寿命時間とした。結果を表2に示す。この寿命が長いほど、コンデンサの耐久性が向上する。
【0104】
容量の温度特性(表では、TCC)
積層チップコンデンサのサンプルに対し、−55〜+125℃の温度範囲で容量を測定し、X7R特性を満足するかどうかを調べた。なお、測定には、LCRメータを用い、測定電圧は1Vとした。容量変化率が±15%以内(基準温度25℃)を満足するかどうかを調べた。満足する場合を○、満足しない場合を×とした。
【0105】
また、B特性については、LCRメーターにより、−25〜85℃について測定電圧1Vで容量を測定し、容量変化率が±10%以内(基準温度20℃)を満足するかどうかを調べた。満足する場合を○、満足しない場合を×とした。
【0106】
直流電界下での容量の経時変化
積層チップコンデンサのサンプルに対し、誘電体層の厚さ1μmあたり2.5Vの直流電界(サンプルへの印加電圧7.5V)を40℃にて100時間印加し、次いで、無負荷状態で室温にて24時間放置した後、容量を測定し、直流電界印加前の容量C(初期容量)からの変化量ΔCを求めて、変化率ΔC/Cを算出した。なお、容量は上記条件にて測定した。
【0107】
直流バイアス下の容量低下
LCRメーターにより、0〜13V/μmの直流電界をかけながら静電容量を室温で測定し、直流電界下の容量が−50%になる電界を求めた。少なくとも6.3V/μm以上、できれば6.5V/μm以上であることが好ましい。
【0108】
【表1】
Figure 0003568030
【0109】
【表2】
Figure 0003568030
試料番号A11(比較例)
表1および表2に示すように、仮焼きせず、主成分であるBaTiO:100モルに対し、MgO換算で2.1モルの(MgCOMg(OH)・5HO、0.375モルのMnCO、3.0モルの(Ba0.6 Ca0.4 )SiO、0.1モルのV、および2.1モルのYを添加した混合粉体を用いて焼成を行った以外は、前記試料番号A1〜A10のサンプルと同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルA11を準備し、試料番号A1〜A10と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0110】
試料番号B1,B2(参考例)
表1に示すように、第1副成分としてCaOを用い、仮焼温度を1000℃および1100℃で行った以外は、試料番号A1〜A10と同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルB1およびB2を準備し、試料番号A1〜A10と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0111】
なお、仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+Ca)/(Ti+Y)を調べたところ、表1に示すように、1.021であった。また、モル比:(Ba+Y)/(Ti+Ca)を調べたところ、表1に示すように、0.9794であった。
【0112】
試料番号C1〜C10(実施例)
表1に示すように、仮焼前粉体中に、第4成分として、2.1モルのY、または2.1モルのYと0.375モルのMnCOとを、さらに添加し、仮焼温度を700〜1100℃とした以外は、試料番号A1〜A10と同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルC1〜C10を準備し、試料番号A1〜A10と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0113】
なお、仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+Mg)/(Ti+Y)を調べたところ、表1に示すように、0.9798であった。また、モル比:(Ba+Y)/(Ti+Mg)を調べたところ、表1に示すように、1.0206であった。
【0114】
試料番号D1〜D9(実施例)
表1に示すように、仮焼前粉体中に、第3成分として0.1モルのV、第4成分として、第4成分として2.1モルのY、第5成分として0.375モルのMnCOとを、さらに添加し、仮焼温度を500〜1300℃とした以外は、試料番号A1〜A10と同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルD1〜D9を準備し、試料番号A1〜A10と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0115】
なお、仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+Mg)/(Ti+Y)を調べたところ、表1に示すように、0.9798であった。また、モル比:(Ba+Y)/(Ti+Mg)を調べたところ、表1に示すように、1.0206であった。
【0116】
試料番号E1,E2(実施例)
表1に示すように、第4成分としてのYに代えて、DyまたはHoを、2.1モルの含有量で仮焼前粉体中に含有させ、仮焼温度を800℃にした以外は、前記試料番号D1〜D9と同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルE1およびE2を準備し、試料番号A1〜A10と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0117】
なお、仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+Mg)/(Ti+DyまたはHo)を調べたところ、表1に示すように、0.9798であった。また、モル比:(Ba+DyまたはHo)/(Ti+Mg)を調べたところ、表1に示すように、1.0206であった。
【0118】
試料番号E3(実施例)
表1に示すように、第4成分としてのYに代えて、Gdを、1.5モル(Gdのモル数は3.0モル、以下同様)の含有量で仮焼前粉体中に含有させ、仮焼温度を800℃にした以外は、前記試料番号D1〜D9と同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルE3を準備し、試料番号D1〜D9と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0119】
なお、仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+Mg)/(Ti+Gd)を調べたところ、表1に示すように、0.9951であった。また、モル比:(Ba+Gd)/(Ti+Mg)を調べたところ、表1に示すように、1.0049であった。
【0120】
試料番号E4(比較例)
表1および表2に示すように、仮焼きせず、主成分であるBaTiO:100モルに対し、MgO換算で2.5モルの(MgCOMg(OH)・5HO、0.375モルのMnCO、3.0モルの(Ba0.6 Ca0.4 )SiO、0.1モルのV、および1.5モルのGdを添加した混合粉体を用いて焼成を行った以外は、前記試料番号E3のサンプルと同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルE4を準備し、試料番号E3と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0121】
試料番号E5(実施例)
表1に示すように、第4成分としてのYに代えて、Tbを、0.7モル(Tbのモル数は2.8モル、以下同様)の含有量で仮焼前粉体中に含有させ、仮焼温度を800℃にした以外は、前記試料番号D1〜D9と同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルE5を準備し、試料番号D1〜D9と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0122】
なお、仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+Mg)/(Ti+Tb)を調べたところ、表1に示すように、0.9971であった。また、モル比:(Ba+Tb)/(Ti+Mg)を調べたところ、表1に示すように、1.0029であった。
【0123】
試料番号E6(比較例)
表1および表2に示すように、仮焼きせず、主成分であるBaTiO:100モルに対し、MgO換算で2.5モルの(MgCOMg(OH)・5HO、0.375モルのMnCO、3.0モルの(Ba0.6 Ca0.4 )SiO、0.1モルのV、および0.7モルのTbを添加した混合粉体を用いて焼成を行った以外は、前記試料番号E5のサンプルと同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルE6を準備し、試料番号E5と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0124】
試料番号F1〜F3(参考例)
仮焼前粉体には、60〜80モルのBaTiOに対して、MgOに換算して表3に示すモルのマグネシウム炭酸塩を含有させ、仮焼済粉体には、表4に示すように、仮焼済成分の重量%が60〜80重量%となるように、仮焼しない主成分および副成分を追加添加した以外は、試料番号A1〜A10と同様にして、円柱状サンプルおよびコンデンサのサンプルF1〜F3を準備し、試料番号A1〜A10と同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0125】
なお、仮焼前粉体中の特定成分のモル比:(Ba+Mg)/(Ti+Y)を調べたところ、表1に示すように、1.021であった。また、モル比:(Ba+Y)/(Ti+Mg)を調べたところ、表1に示すように、0.9794であった。
【0126】
【表3】
Figure 0003568030
【0127】
【表4】
Figure 0003568030
評価
表1〜4に示すように、本発明の実施例では、全てX7R特性およびB特性を満足できることが確認できた。また、比較例であるサンプル番号A11と、実施例であるサンプル番号C1〜C10、D1〜D9、E1、E2とを比較することで、実施例の方が、IRの加速寿命が長く、直流電界下での静電容量の経時変化が少なく、直流電界下での静電容量半減電界が高いことが確認できた。
【0128】
また、たとえば比較例であるサンプル番号A11と、実施例であるサンプル番号D2〜D5とを比較することで、仮焼前粉体の組成と仮焼温度を適切に選択することで、破壊電圧も向上できることが確認できた。
【0129】
また、サンプル番号C1〜C10およびD1〜D9の結果を観察することで、仮焼前粉体に第4副成分が含まれる場合には、仮焼温度は、500℃以上1200℃未満、好ましくは600〜900℃が好ましいことが確認できた。また、サンプル番号A1〜A10の結果を観察することで、仮焼前粉体中に、第4副成分の原料が含まれていない場合には、仮焼温度は、好ましくは600〜1300℃、さらに好ましくは900〜1300℃、特に好ましくは1000〜1200℃であることが確認できた。
【0130】
さらに、サンプル番号A1〜A10とD1〜D9とを比較することで、仮焼前粉体中に含まれる成分のモル比:(Ba+第1成分の金属元素)/(Ti+第4成分の金属元素)が、1未満、またはモル比:(Ti+第4成分の金属元素)/(Ba+第1成分の金属元素)が1を超える場合に、IR寿命および破壊電圧特性が特に向上することが確認できた。
【0131】
さらにまた、サンプル番号F1〜F3を比較することで、仮焼済粉体を、誘電体材料の全体を100重量%として、70重量%以上、できれば80重量%以上用いることが好ましいことが確認できた。また、70重量%未満では、DC−Bias特性を満が低下することが確認された。
【0132】
また、サンプル番号E3〜E6の結果を観察することで、第4副成分としてTb酸化物またはGd酸化物を用いた場合でも、本発明に係る仮焼方法により、X7R特性は満足しないものの、他の諸特性(特にIR寿命)が向上することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は積層型セラミックコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
1…積層型セラミックコンデンサ
2…誘電体層
3…内部電極層
4…外部電極
10…コンデンサ素子本体

Claims (9)

  1. 組成式BaTiO2+n で表され、前記組成式中のmが0.995≦m≦1.010であり、nが0.995≦n≦1.010であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.010である主成分と、
    酸化シリコンを主成分として含む焼結助剤である第2副成分と、
    その他の副成分とを少なくとも有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
    前記第2副成分を除いて、前記主成分と、その他の副成分のうちの少なくとも一部とを混合し、仮焼前粉体を準備する工程と、
    前記仮焼前粉体を仮焼きして仮焼済粉体を準備する工程と、
    前記仮焼済粉体に、前記第2副成分を少なくとも混合し、前記主成分に対する各副成分の比率が所定モル比である誘電体磁器組成物を得る工程と、
    を有し、
    前記その他の副成分が、
    MgO,CaO,BaO,SrOおよびCrから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
    ,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
    Rの酸化物(ただし、RはY、Dy、Tb、GdおよびHoから選択される少なくとも一種)を含む第4副成分と、を少なくとも有し、
    前記仮焼済粉体に、前記第2副成分を少なくとも混合し、前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、
    第1副成分:0.1〜3モル、
    第2副成分:2〜12モル、
    第3副成分:0.1〜3モル、
    第4副成分:0.1〜10.0モル(ただし、第4副成分のモル数は、R単独での比率である)であり、
    前記仮焼前粉体中に含まれる成分のモル比:(Ba+第1副成分の金属元素)/(Ti+第4副成分の金属元素)が1未満、または(Ba+第4副成分の金属元素)/(Ti+第1副成分の金属元素)が1を超えるように、前記仮焼前粉体を準備し、仮焼を行うことを特徴とする
    誘電体磁器組成物の製造方法。
  2. 前記第2副成分が(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.8〜1.2)で表される組成を有することを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  3. 前記その他の副成分が、
    MnOを含む第5副成分をさらに有し、
    前記仮焼済粉体に、前記第2副成分を少なくとも混合し、前記主成分100モルに対する各副成分の比率が、
    第1副成分:0.1〜3モル、
    第2副成分:2〜12モル、
    第3副成分:0.1〜3モル、
    第4副成分:0.1〜10.0モル(ただし、第4副成分のモル数は、R単独での比率である)、
    第5副成分:0.05〜1.0モルである誘電体磁器組成物を得ることを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  4. 前記仮焼前粉体を準備する際には、仮焼前粉体には、第1副成分を必ず含ませることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  5. 前記仮焼前粉体を、600℃〜900℃の温度で仮焼きすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  6. 前記仮焼きを複数回行うことを特徴とする請求項5に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  7. 前記主成分の平均粒径が0.1〜0.7μmである請求項1〜6のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  8. 前記仮焼済粉体を、誘電体材料の全体を100重量%として、70重量%以上用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかの方法により得られた誘電体磁器組成物を用いて、誘電体層を形成することを特徴とする誘電体層含有電子部品の製造方法。
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