JP4691977B2 - 誘電体組成物の製造方法 - Google Patents
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チタン酸バリウムを含む主成分と、
Rの酸化物(ただし、RはY,Dy,Tb,GdおよびHoから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分とを有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記主成分の原料と、前記第4副成分の原料の少なくとも一部とを予め反応させ、反応済み原料を得る工程を有し、
前記主成分の原料と予め反応させる前記第4副成分の原料が、無機酸塩を含有する原料であることを特徴とする。
前記反応済み原料に、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる残りの前記第4副成分の原料を添加する工程とを有する。
前記反応済み原料に、後添加する前記第4副成分の原料についても、主成分と予め反応させる第4副成分の原料と同様に、無機酸塩を含有する原料を使用することが好ましく、このようにすることにより、誘電体磁器組成物の電気特性(特に、比誘電率および絶縁抵抗の加速寿命)を向上させることができる。
MgO、CaO、BaOおよびSrOから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
SiO2 を主として含有し、MO(ただし、MはMg、Ca、BaおよびSrから選択される少なくとも1種)、Li2 OおよびB2 O3 から選択される少なくとも1種を含む第2副成分と、
V2 O5 、MoO3 およびWO3 から選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、をさらに含有し、
前記主成分100モルに対する各副成分の比率を、
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:0.1〜12モル、
第3副成分:0〜0.3モル(ただし、0は含まない)、
とする。
前記主成分100モルに対する第5副成分の比率を、0.05〜1.0モルとする。
前記第1〜第3、第5副成分の原料のうち少なくとも一部として、無機酸塩を含有する原料を使用することにより、誘電体磁器組成物の電気特性(特に、比誘電率および絶縁抵抗の加速寿命)を向上させることができる。
特に、本発明においては、前記主成分の原料と予め反応させる前記第4副成分の原料として、無機酸塩を含有する原料を使用するため、前記主成分に対して前記第4副成分を、均一に分散、固溶させることができる。そのため、焼成後の誘電体磁器組成物において、前記第4副成分の偏析、および特性のバラツキを小さくすることができる。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物粉末の製造方法を示すフロー図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
誘電体層2は、誘電体磁器組成物を含有する。
本実施形態においては、上記誘電体磁器組成物は、組成式Bam TiO2+m で表され、前記組成式中のmが0.995≦m≦1.010であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.010であるチタン酸バリウムを含む主成分と、Rの酸化物(ただし、RはY,Dy,Tb,GdおよびHoから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分と、その他の副成分とを含有する。
すなわち、MgO、CaO、BaOおよびSrOから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
SiO2 を主として含有し、MO(ただし、MはMg、Ca、BaおよびSrから選択される少なくとも1種)、Li2 OおよびB2 O3 から選択される少なくとも1種を含む第2副成分と、
V2 O5 、MoO3 およびWO3 から選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
MnOおよびCr2 O3 から選択される少なくとも1種を含む第5副成分と、をさらに含有することが好ましい。
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:0.1〜12モル、
第3副成分:0〜0.3モル(ただし、0は含まない)、
第5副成分:0.05〜1.0モル
であり、好ましくは、
第1副成分:0.2〜4モル、
第2副成分:1〜6モル、
第3副成分:0〜0.25モル(ただし、0は含まない)、
第5副成分:0.05〜0.4モル
である。
第1副成分(MgO、CaO、BaOおよびSrO)の含有量が少なすぎると、容量温度変化率が大きくなってしまう。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化すると共に、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。なお、第1副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本実施形態では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
本実施形態の積層セラミックコンデンサは、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
本実施形態においては、上記誘電体磁器組成物粉末の調製は、次のように行う。すなわち、図2に示すように、まず、上記主成分の原料と上記第4副成分の原料の一部(誘電体磁器組成物に含有されることとなる第4副成分のうち一部に相当する原料)とを、予め反応(固溶)させ、反応済み原料を得る。次いで、この反応済み原料に、残りの第4副成分の原料(誘電体磁器組成物を構成することとなる第4副成分のうち残りの原料)と、上記第1〜第3、第5副成分の原料とを添加して、その後、仮焼きすることにより、誘電体磁器組成物粉末は調製される。
まず、主成分の原料と第4副成分の原料とを、別々に、水、あるいは水溶性の有機溶媒に分散させた主成分原料スラリーと第4副成分原料スラリーを得る。次いで、この主成分原料スラリーと第4副成分原料スラリーとを混合して、混合スラリーを得る。そして、得られた混合スラリーを乾燥して、乾燥原料を得て、その後、この乾燥原料を500〜700℃程度の温度で仮焼きすることにより反応済み原料を得ることができる。なお、反応済み原料を得る方法としては、上記以外の方法として、たとえば、混合スラリーに沈殿剤などを加え、第4副成分を主成分上に析出させ、仮焼きする方法などを採用しても良い。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
まず、平均粒径0.35μmの主成分原料(BaTiO3 )を準備し、このBaTiO3 15モルを9Lのエタノール中に加え、撹拌・分散させて、主成分原料スラリーを調製した。
MgCO3 (第1副成分):0.18モル
(Ba,Ca)SiO3
(第2副成分):0.1125モル
V2 O5 (第3副成分):0.0045モル
Y2 O3 (第4副成分):0.0525モル
MnCO3 (第5副成分):0.03モル
なお、第4副成分であるY2 O3 の添加量は、Y原子換算でのモル数とした。すなわち、Y2 O3 換算での添加量は、0.02625モルである。また、第4副成分以外の各副成分の添加量は、各化合物換算の添加量とした。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:32.5℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1250℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 +H2 混合ガス(酸素分圧:10−7Pa)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 ガス(酸素分圧:1.01Pa)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を20℃としたウエッターを用いた。
コンデンサの試料に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(横河電機(株)製 YHP4274A)にて、周波数120Hz,入力信号レベル(測定電圧)0.625Vrms/μmの条件下で、静電容量Cを測定した。そして、得られた静電容量、積層セラミックコンデンサの誘電体厚みおよび内部電極同士の重なり面積から、比誘電率(単位なし)を算出した。比誘電率は、高いほど好ましい。結果を表1に示す。
コンデンサの試料に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(横河電機(株)製 YHP4274A)にて、周波数120Hz,入力信号レベル(測定電圧)0.625Vrms/μmの条件下で、誘電損失tanδを測定した。誘電損失は、小さいほど好ましい。結果を表1に示す。
コンデンサ試料に対し、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、20℃において4V/μmの直流電圧を、コンデンササンプルに1分間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。結果を表1に示す。
コンデンサ試料に対し、−55〜125℃における静電容量を測定し、静電容量の変化率ΔCを算出し、EIA規格のX7R特性を満足するか否かについて評価した。すなわち、−55〜125℃において、変化率ΔCが、±15%以内であるか否かを評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、X7R特性を満足した試料は「○」とし、満足しなかった試料は「×」とした。
コンデンサ試料に対し、180℃にて20V/μmの電界下で加速試験を行い、絶縁抵抗IRが108Ω以下になるまでの時間(単位は時間)を算出した。IR加速寿命は、長いほうが好ましい。結果を表1に示す。
BaTiO3 粉末とY2 O3 粉末とを予め反応させることにより得られた反応済み原料について、XPS測定により、表面深さ方向のBa、Ti、Yの各元素の分布状態を測定した。XPS測定の結果、Ba、Ti、Yの各元素は、反応済み原料の表面近傍付近から内部に至るまで、ほぼ同じ濃度で分布しており、固溶反応が均一に進行していることが確認できた。
誘電体磁器組成物粉末を作製する際に、以下のようにした以外は、実施例1−1と同様にして、誘電体磁器組成物粉末を得て、比較例1のコンデンサ試料を得た。
すなわち、比較例1では、主成分原料(BaTiO3 )と予め反応させる第4副成分として、YCl3 ・6H2Oの代わりに、Y2 O3 を使用して、BaTiO3 粉末とY2 O3 粉末とをボールミルにより湿式混合粉砕してスラリー化し、このスラリーを乾燥後、仮焼・粉砕して、反応済み原料を得た以外は、実施例1−1と同様にして誘電体磁器組成物粉末を作製した。
表1に、実施例1−1および比較例1の比誘電率ε、誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、静電容量の温度特性およびIR加速寿命を示す。なお、表1中、絶縁抵抗IRの「mE+n」は「m×10+n」を意味する。
主成分と予め反応させる第4副成分の原料として、YCl3 ・6H2Oの代わりにTbCl3 を使用した以外は、実施例1−1と同様にして、誘電体磁器組成物粉末を製造し、実施例1−1と同様にして、実施例2−1のコンデンサ試料を得た。得られたコンデンサ試料について、実施例1−1と同様にして、比誘電率ε、誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、静電容量の温度特性およびIR加速寿命の評価を行った。結果を表2に示す。
主成分と予め反応させる第4副成分の原料として、Y2 O3 の代わりにTb2 O3 を使用した以外は、比較例1と同様にして、誘電体磁器組成物粉末を製造し、比較例1と同様にして、比較例2のコンデンサ試料を得た。得られたコンデンサ試料について、実施例1−1と同様にして、比誘電率ε、誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、静電容量の温度特性およびIR加速寿命の評価を行った。結果を表2に示す。
表2に、実施例2−1および比較例2の比誘電率ε、誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、静電容量の温度特性およびIR加速寿命を示す。
表2より、主成分と予め反応させる第4副成分の原料として、無機酸塩であるTb2 O3 を使用した場合においても、YCl3 ・6H2Oを使用した場合と同様の結果が得られることが確認できた。
反応済み原料に第1〜第5副成分を添加する際に、第1、第2、第4、第5副成分の原料として、以下に示す無機酸塩を使用した以外は、実施例1−1と同様にして、誘電体磁器組成物粉末を製造し、実施例1−1と同様にして、実施例1−2のコンデンサ試料を得た。
第1副成分:MgCl2・6H2 O
第2副成分:BaCl2 ・2H2 O、CaCl2 ・6H2 O、SiO2
第4副成分:YCl3 ・6H2 O
第5副成分:MnCl2 ・4H2 O
なお、第3副成分の原料は、実施例1−1と同様に、V2 O5 を使用した。また、各副成分の添加量についても実施例1−1と同様とした。
反応済み原料に第1〜第5副成分を添加する際に、第1、第2、第4、第5副成分の原料として、上述した各無機酸塩を使用した以外は、実施例2−1と同様にして、誘電体磁器組成物粉末を製造し、実施例2−1と同様にして、実施例2−2のコンデンサ試料を得た。得られたコンデンサ試料について、実施例1−1と同様にして、比誘電率ε、誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、静電容量の温度特性およびIR加速寿命の評価を行った。結果を表4に示す。
表3に、実施例1−1,1−2,2−1および2−2を製造する際に使用した各副成分の原料を、表4に、実施例1−1,1−2,2−1および2−2の比誘電率ε、誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、静電容量の温度特性およびIR加速寿命を示す。
また、主成分と予め反応させる第4副成分の原料として、YCl3 ・6H2Oの代わりに、Tb2 O3 を使用した場合においても、同様の結果が得られることが確認できた。
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
Claims (7)
- チタン酸バリウムを含む主成分と、
MgO、CaO、BaOおよびSrOから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、
SiO 2 を主として含有し、MO(ただし、MはMg、Ca、BaおよびSrから選択される少なくとも1種)、Li 2 OおよびB 2 O 3 から選択される少なくとも1種を含む第2副成分と、
V 2 O 5 、MoO 3 およびWO 3 から選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、
Rの酸化物(ただし、RはY,Dy,Tb,GdおよびHoから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分とを有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記主成分の原料と、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる前記第4副成分の原料の一部とを予め反応させ、反応済み原料を得る工程と、
前記反応済み原料に、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる残りの前記第4副成分と第1〜第3副成分の原料を添加する工程とを有し、
前記主成分の原料と予め反応させる前記第4副成分の原料が、無機酸塩を含有する原料であり、
前記無機酸塩が、塩化物、硝酸塩、リン酸塩および硫酸塩から選択される1種以上であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。 - 前記反応済み原料に添加する前記第4副成分の原料が、前記無機酸塩を含有する原料である請求項1に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
- 前記誘電体磁器組成物は、
前記主成分100モルに対する各副成分の比率を、
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:0.1〜12モル、
第3副成分:0〜0.3モル(ただし、0は含まない)、
第4副成分:0.1〜10モル(ただし、第4副成分のモル数はR単独での比率)、
とする請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。 - 前記誘電体磁器組成物は、MnOおよびCr2 O3 から選択される少なくとも1種を含む第5副成分を、さらに含有し、
前記主成分100モルに対する第5副成分の比率を、0.05〜1.0モルとする請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。 - 前記第1〜第3副成分の原料のうち少なくとも一部として、前記無機酸塩を含有する原料を使用する請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
- 前記第5副成分の原料として、前記無機酸塩を含有する原料を使用する請求項4または5に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
- 前記主成分の原料として、平均粒径が0.05〜0.5μmである原料を使用する請求項1〜6のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
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