JP4697582B2 - 誘電体セラミック及び誘電体セラミックの製造方法、並びに積層セラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体セラミック及び誘電体セラミックの製造方法、並びに積層セラミックコンデンサ Download PDF

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本発明は誘電体セラミック及び誘電体セラミックの製造方法、並びに積層セラミックコンデンサに関し、より詳しくはチタン酸バリウム系セラミック材料を主成分とした誘電体セラミック、及びその製造方法、並びに該誘電体セラミックを使用して製造された積層セラミックコンデンサに関する。
近年におけるエレクトロニクス技術の発展に伴い、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化が急速に進んでいる。
この種の積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層と誘電体セラミック層との間に内部電極を介在させて積層体を形成し、該積層体を焼結させることにより製造されるが、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化を達成するために、前記誘電体セラミック層を薄層化する必要がある。
一方、誘電体セラミック層を薄層化すると、該誘電体セラミック層には高電界強度の電圧が印加されることとなるため、比誘電率εrの低下や温度特性の悪化を招いたり、高温加速寿命が短くなって信頼性の低下を招くおそれがある。
そこで、従来より、組成式BamTiO2+n(ただし、0.995≦m≦1.010、0.995≦n≦1.010、0.995≦Ba/Ti≦1.010)で表される主成分と、Siを含有した第2の副成分(焼結助剤)を除く、他の副成分(第1、第3、及び第4の副成分)を混合して仮焼前粉体を準備し、前記仮焼前粉体を仮焼して仮焼済み粉体を準備し、該仮焼済み粉体に前記第2副成分を少なくとも混合し、前記主成分に対する各副成分の比率が所定モル比となるように配合した技術が提案されている(特許文献1)。
特許文献1では、組成式BamTiO2+nで表される主成分と、第1の副成分(MgO、CaO、BaO、Crから選択される少なくとも1種)、第3の副成分(V、MoO、WOから選択される少なくとも1種)、第4の副成分(Y、Dy,Gd、Hoから選択される少なくとも1種を含む希土類酸化物)とを、主成分100モルに対し第1の副成分:0.1〜3モル、第3の副成分:0.1〜3モル、及び第4の副成分:0.1〜10.0モルとなるように混合した後、仮焼し、その後主成分100モルに対し第2の副成分が0.1〜3モルとなるように仮焼済み粉体と第2の副成分とを混合し、好ましくは還元雰囲気下で焼成処理を施すことにより、各結晶粒子同士の組成のバラツキが抑制されて偏析相の析出を抑制すると共に該偏析相の大きさを制御し、これにより高電界強度下においても誘電特性や温度特性、絶縁性が良好で、加速寿命の優れた高信頼性の誘電体セラミックを得ている。
また、他の従来技術としては、ペロブスカイト構造を有する一般式:ABO(ただし、Aは、Ba(又はBaと、Sr及びCaの少なくとも1種)、Bは、Ti(又はTiと、Zr及びHfの少なくとも1種))で表される主成分と、一般式:a{(1−b)R+bV}+cM(ただし、Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる少なくとも1種の元素からなる化合物、Vは、V元素からなる化合物、Mは、Mn、Ni、Mg、FeおよびZnから選ばれる少なくとも1種の元素からなる化合物、a、b及びcは、各前記化合物中に前記元素が1元素以上含まれる化学式に換算したときのモル値)で表される添加成分とを含有し、前記主成分と前記添加成分とを一般式:100BaTiO+a{(1−b)R+bV}+cMで表したときに、1.25≦a≦8.0、0<b≦0.2、1.0<c≦6.0、a/c>1.1の関係を満足し、かつ、焼結助剤を含有した誘電体セラミックが提案されている(特許文献2)。
この特許文献2では、上記主成分と上記添加成分とを上述した所定モル比率となるように配合することにより、高電界強度下であっても平坦な温度特性を有し、加速寿命も長く、高信頼性を有し、かつ、静電容量の経時劣化の小さい誘電体セラミックを得ている。
特開2000−311828号公報 特開2002−164247号公報
ところで、誘電体セラミック層のより一層の薄層化が求められる今日においては、より高い電界が印加されても耐久性の良好な信頼性の優れた誘電体セラミックが求められている。
しかしながら、特許文献1及び2では、高電界での信頼性に優れた誘電体セラミックを得ようとはしているものの、10kV/mmを遥かに超える高電界強度下では高温加速寿命が短くなり、信頼性低下を招くという問題点があった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、10kV/mmを遥かに超える高電界強度下であっても、加速寿命が良好で高信頼性を有する誘電体セラミック、及び該誘電体セラミックの製造方法、並びにこの誘電体セラミックを使用して製造された積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、チタン酸バリウム系化合物を主相粒子とする誘電体セラミック中に組成式Mg VO で表される結晶性複合酸化物を二次相粒子として介在させ、かつ、これらチタン酸バリウム系化合物や結晶性複合酸化物の各成分の含有モル量、及び両者の配合モル量が所定範囲となるように制御することにより、誘電体セラミックの剛性を高めることができ、これにより高電界で生じる電界誘起歪みを抑制することができ、10kV/mmを遥かに超える高電界(例えば、〜40kV/mm)が印加された場合であっても良好な高温加速寿命を得ることができるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る誘電体セラミックは、組成式Ba m TiO 2+m で表されるチタン酸バリウム系化合物を含有した主相粒子と、組成式Mg VO で表される結晶性複合酸化物からなる二次相粒子とを含み、上記m、n、及びtが、1.001≦m≦1.030、 0.3≦n≦5.0、1.5+n≦t≦2.5+nであり、かつ、前記Ba TiO 2+m 100モルに対する前記Mg VO の配合モル量αが、0.05≦α≦2.0であることを特徴としている。
また、本発明の誘電体セラミックは、前記結晶性複合酸化物が、MgVO、Mg3/2VO、Mg1/3VO17/6、Mg3/4VO13/4、Mg1/2VO、及びMg1/2VOの中から選択された少なくとも1種を含むことを特徴としている。
また、本発明者らの更なる鋭意研究の結果、添加成分として、上述した誘電体セラミックに特定の希土類元素、金属元素、及び焼結助剤を所定量含有させても、比誘電率εrや静電容量の温度特性を損なうこともなく、また誘電損失tanδや絶縁抵抗が低下することもなく、上述した高電界が印加されても良好な高温加速寿命を得ることができることが分かった。そしてこれにより、用途に応じた所望の誘電体セラミックを得ることできる。
すなわち、本発明の誘電体セラミックは、Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択された少なくとも1種の元素からなる第1の添加成分と、Ca、Ba、Sr、及びMgの中から選択された少なくとも1種の元素からなる第2の添加成分と、Mn、Fe、Ni、Co、Mo、W、Zn、Cu、及びVの中から選択された少なくとも1種の元素からなる第3の添加成分と、Siからなる第4の添加成分とを含有し、第1〜第4の添加成分のそれぞれのモル数u、v、w、及びxは、前記チタン酸バリウム系固溶体100モルに対し、0.5≦u≦3.0、0.1≦v≦3.0、0.1≦w≦1.0、0.5≦z≦3.0であることを特徴としている。
また、上記チタン酸バリウム系化合物を主成分とした第1の配合物と、上記Mg VO を主成分とした第2の配合物とを別々に作製した後、両者を所定の配合比率で混合し、その後焼成処理を施すことにより、Mg VO で表わされる結晶性複合酸化物を二次相粒子として誘電体セラミック中に効果的に分散させることができ、これにより上記誘電体セラミックを製造することができる。
すなわち、本発明に係る誘電体セラミックの製造方法は、組成式Ba m TiO 2+m (ただし、mは 1.001≦m≦1.030)で表されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする第1の配合物を作製する第1の配合物作製工程と、 Mgを含有したMg化合物とVを含有したV化合物とを混合した後、熱処理を施し、組成式Mg VO (ただし、nは0.3≦n≦5.0、tは、1.5+n≦t≦2.5+n)で表されるMg及びVを主成分とする第2の配合物を作製する第2の配合物作製工程と、前記第2の配合物を粉砕する粉砕工程と、前記Ba TiO 2+m 100モルに対する前記Mg VO の配合モル量αが、0.05≦α≦2.0となるように、前記粉砕された第2の配合物と前記第1の配合物とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物に焼成処理を施す焼成工程とを含むことを特徴としている。
また、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック素体が上記誘電体セラミックで形成されると共に、卑金属材料で形成された内部電極が前記セラミック素体に埋設されていることを特徴としている。
上記誘電体セラミックによれば、組成式Ba m TiO 2+m で表されるチタン酸バリウム系化合物を含有した主相粒子と、組成式Mg VO で表される結晶性複合酸化物からなる二次相粒子とを含み、上記m、n、及びtが、1.001≦m≦1.030、0.3≦n≦5.0、1.5+n≦t≦2.5+nであり、 かつ、前記Ba TiO 2+m 100モルに対する前記Mg VO の配合モル量αが、0.05≦α≦2.0であるので、高剛性の二次相粒子が誘電体セラミック中に存在することとなり、高電界強度下でも良好な高温加速寿命を得ることができ、誘電体セラミックの信頼性を向上させることができる。
また、本発明の誘電体セラミックは、上述した第1〜第4の添加成分を含有し、その各配合モル量u、v、w、及びzが、前記チタン酸バリウム系固溶体100モルに対し、0.5≦u≦3.0、0.1≦v≦3.0、0.1≦w≦1.0、0.5≦z≦3.0であるので、比誘電率εrや静電容量の温度特性を損なうこともなく、誘電損失が低く、絶縁特性に優れ、かつ高温加速寿命の優れた誘電体セラミックを得ることができる。そしてこれにより用途に応じた所望特性を有する信頼性の優れた誘電体セラミックを得ることが可能となる。
本発明に係る誘電体セラミックの製造方法によれば、組成式Ba m TiO 2+m (ただし、mは 1.001≦m≦1.030)で表されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする第1の配合物を作製する第1の配合物作製工程と、 Mgを含有したMg化合物とVを含有したV化合物とを混合した後、熱処理を施し、組成式Mg VO (ただし、nは0.3≦n≦5.0、tは、1.5+n≦t≦2.5+n)で表されるMg及びVを主成分とする第2の配合物を作製する第2の配合物作製工程と、前記第2の配合物を粉砕する粉砕工程と、前記Ba TiO 2+m 100モルに対する前記Mg VO の配合モル量αが、0.05≦α≦2.0となるように、前記粉砕された第2の配合物と前記第1の配合物とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物に焼成処理を施す焼成工程とを含むので、Mg VO で表わされる結晶性複合酸化物からなる二次相粒子を誘電体セラミック中に効果的に分散させることができ、これによりチタン酸バリウム系固溶体を主相粒子とし、上記結晶性複合酸化物を二次相粒子とした誘電体セラミックを容易に製造することができる。
また、本発明の積層セラミックコンデンサによれば、セラミック素体が上記誘電体セラミックで形成されると共に、卑金属材料で形成された内部電極が前記セラミック素体に埋設されているので、高電界強度下であっても信頼性が高く、静電容量の経時変化の小さい、積層セラミックコンデンサを得ることができる。
すなわち、積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック層が薄層化されても、室温および高温での絶縁抵抗が高く、その信頼性に優れているため、誘電体セラミック層の薄層化による積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化が可能となり、たとえば、誘電体セラミック層の厚みが超薄層化され、電界強度が10kV/mmを遥かに超える場合(例えば、〜40kV/mm)であっても、実用に十分耐えうる積層セラミックコンデンサを実現することができる。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
本発明の一実施の形態としての誘電体セラミックは、チタン酸バリウム系固溶体を含有した主相粒子と、Mg及びVを含有した結晶性複合酸化物からなる二次相粒子とを含んでいる。
Mg及びVを含有した結晶性複合酸化物は、剛性が高く、比誘電率が比較的低いため、高電界で生じる電界誘起歪みを抑制することができ、これにより10kV/mmを遥かに超える高電界強度下であっても、高温負荷時の加速寿命を大幅に向上させることができ、したがって誘電体セラミック層が超薄層化された場合であっても信頼性の優れた誘電体セラミックを得ることができる。
このように誘電体セラミックが、チタン酸バリウム系固溶体を含有した主相粒子と、Mg及びVを含有した結晶性複合酸化物からなる二次相粒子とを含むことにより、10kV/mmを遥かに超える高電界強度下での高温時の加速寿命を向上させることができるが、前記チタン酸バリウム系固溶体と前記結晶性複合酸化物との各成分のモル組成比、及びこれらチタン酸バリウム系固溶体と結晶性複合酸化物との配合モル比を規定することにより、積層セラミックコンデンサの諸特性(誘電特性、静電容量の温度特性、絶縁性等)に優れ、かつ高信頼性を有する誘電体セラミックを得ることができる。
すなわち、本発明のより好ましい誘電体セラミックは、一般式〔A〕で表すことができる。
100BamTiO2+m+αMgVO…〔A〕
ここで、上記m、n、t、及びαは、下記数式(1)〜(4)を満足している。
1.001≦m≦1.030…(1)
0.3≦n≦5.0…(2)
1.5+n≦t≦2.5+n…(3)
0.05≦α≦2.0…(4)
そして、これにより10kV/mmを遥かに超える高電界強度下であっても、比誘電率εrや静電容量の温度特性が良好で、誘電損失tanδが低く、絶縁性に優れ、しかも良好な高温加速寿命を有する信頼性の優れた誘電体セラミックを得ることができる。
次に、m、n、t及びαを上述の範囲に設定した理由を述べる。
(1)m
mはペロブスカイト型構造(一般式ABO)を有するチタン酸バリウムのAサイト成分とBサイト成分の組成モル比を規定するが、m値が1.001未満になると、静電容量の温度特性が平坦性を欠いて悪化し、EIA規格で規定されたX7R特性(−55℃〜+125℃において、25℃の静電容量に対する容量変化率ΔC/C 25 が±15%以内)を満足しなくなる。しかも誘電損失tanδも高くなる。一方、m値が1.030を超えるとBaの含有モル量が過剰となって焼結性が低下し、このため焼成温度が高くなり比誘電率εrの低下を招く。
そこで、本実施の形態では、好ましい範囲として、m値を1.001≦m≦1.030に設定している。
(2)n
nは二次相粒子中のMgとVの組成モル比を規定するが、n値が0.5未満になるとVが過剰となって比誘電率εrが低下し、また絶縁性も低下する。一方、n値が5.0を超えるとMgが過剰となるため、焼結性が低下し、このため焼成温度を高くしなければならず、静電容量の温度特性の悪化を招く。
そこで、本実施の形態では、好ましい範囲として、n値を0.5≦n≦5.0に設定している。
(3)t
tはMg化合物とV化合物との混合比率やMg及びVの価数により化学量論的に一義的に決定されるものであり、t値はn値に応じて1.5+n≦t≦2.5+nとなる。
そして、このようなMgnVOt(0.5≦n≦5.0、1.5+n≦t≦2.5+n)の具体例しては、MgVO、Mg3/2VO、Mg1/3VO17/6、Mg3/4VO13/4、Mg1/2VO、及びMg1/2VOが挙げられる。
(4)α
αは主相粒子であるBamTiO2+m100モルに対するMgVOの配合モル量を示しているが、α値が0.05未満になると静電容量の温度特性が悪化する。一方、α値が2.0を超えると比誘電率εrが低下し、また静電容量の温度特性や絶縁性も悪化する。
そこで、本実施の形態では、好ましい範囲として、α値を0.05≦α≦2.0に設定している。
また、本発明の誘電体セラミックは、表1に示す第1〜第4の添加成分を適宜含有するのも好ましく、これにより、各種特性や信頼性に優れ、しかも用途に応じた特性を有する誘電セラミックを得ることができる。
Figure 0004697582
ただし、第1〜第4の添加成分の配合モル量u、v、w、zは、主成分であるBamTiO2+m100モルに対し数式(5)〜(8)を満足するのが好ましい。
0.5≦u≦3.0…(5)
0.1≦v≦3.0…(6)
0.1≦w≦1.0…(7)
0.5≦z≦3.0…(8)
その理由は以下の通りである。
(5)u
第1の添加成分は、誘電体セラミックの特性向上に寄与する希土類元素グループを列挙したものであるが、これら第1の添加成分の配合モル量uが、BamTiO2+m100モルに対し0.5未満になると、静電容量の温度特性が悪化し、誘電損失tanδも大きくなる、一方、前記配合モル量uがBamTiO2+m100モルに対し3.0を超えると比誘電率εrが低下し、また絶縁性も低下する。
そこで、本実施の形態では、好ましい範囲として、配合モル量uを0.5≦u≦3.0に設定している。
(6)v
第2の添加成分は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物のAサイトに固溶可能な金属元素グループを列挙したものであるが、これら第2の添加成分の配合モル量vが、BamTiO2+m100モルに対し0.1未満になると、静電容量の温度特性が悪化する。一方、前記配合モル量vがBamTiO2+m100モルに対し3.0を超えると焼結性が低下するため焼成温度を高くしなければならず、比誘電率εrが低下する。
そこで、本実施の形態では、好ましい範囲として、配合モル量vを0.1≦v≦3.0に設定している。
(7)w
第3の添加成分は、第2の添加成分の範疇に入らない他の金属元素グループを列挙したものであるが、これら第3の添加成分の配合モル量wが、BamTiO2+m100モルに対し0.1未満になると、静電容量の温度特性が悪化する。しかもこの場合は焼成温度も高くなる。一方、前記配合モル量wがBamTiO2+m100モルに対し1.0を超えると絶縁性が低下する。
そこで、本実施の形態では、好ましい範囲として、配合モル量wを0.1≦w≦1.0に設定している。
(8)z
少なくともSiを含有した第4の添加成分は焼結助剤成分であり、焼結助剤を適量含有させることにより、低温焼成を可能とし、内部電極材料にNiやCu等の安価な低融点卑金属材料を使用することが可能となる。
しかしながら、第4の添加成分の配合モル量zが、BamTiO2+m100モルに対し0.5未満になると、焼結助剤としての作用効果を発揮することができず、したがって焼成温度を高くしなければならず、静電容量の温度特性も悪化する。一方、第4の添加成分の配合モル量zが、BamTiO2+m100モルに対し3.0を超えると、静電容量の温度特性が悪化する。
そこで、本実施の形態では、好ましい範囲として、配合モル量zを0.5≦z≦3.0に設定している。
そして、第4の添加成分の添加形態としては、SiOやSiO−B系のガラス粉末やゾルを好んで使用することができる。
尚、上記第1〜第3の添加成分の誘電体セラミック中の存在形態としては、特に限定されるものではなく、結晶粒界や三重点に存在してもよいし、また主相粒子であるBamTiO2+mに固溶していてもよく、例えばBaの一部をCa、SrやMgで置換する形態で存在していてもよい。また、これら第1〜第3の添加成分のBamTiO2+mへの固溶は、均一に固溶している場合、或いは所謂コアシェル構造のように部分的に固溶している場合のいずれであってもよい。
また、上記第1〜第3の添加成分が結晶粒界や三重点に存在した場合の存在形態としては酸化物形態が一般的であるが、ペロブスカイト型構造のような複合酸化物形態でもよく、結晶性を有している場合やSiと共存した非晶質状態であってもよい。
また、本発明の結晶性複合酸化物であるMgVOとは別途に、第2の添加成分としてのMg、及び/又は第3の添加成分としてのVを誘電体セラミック中に添加させる場合は、MgやVの一部をBamTiO2+mに固溶させるのも好ましい。特にVの一部がBamTiO2+mに固溶することで結晶粒界と結晶粒子内の電気抵抗の差を小さくすることができ、これにより、局所的な電界集中を解消することが可能となって高電界下での信頼性をより一層向上させることができる。
次に、上記誘電体セラミックを使用して製造された積層セラミックコンデンサについて詳述する。
図1は本発明に係る誘電体セラミックを使用して製造された積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
該積層セラミックコンデンサは、本発明の誘電体セラミックからなるセラミック焼結体1に内部電極2(2a〜2f)が埋設されると共に、該セラミック焼結体1の両端部には外部電極3a、3bが形成され、さらに該外部電極3a、3bの表面には第1のめっき皮膜4a、4b及び第2のめっき皮膜5a、5bが形成されている。
具体的には、各内部電極2a〜2fは積層方向に並設されると共に、内部電極2a、2c、2eは外部電極3aと電気的に接続され、内部電極2b、2d、2fは外部電極3bと電気的に接続されている。そして、内部電極2a、2c、2eと内部電極2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を形成している。
以下、上記積層セラミックコンデンサの製造方法について詳述する。
まず、セラミック素原料として、BaCO等のBa化合物、及びTiO等のTi化合物を用意し、上記数式(1)を満足するようにこれらセラミック素原料を秤量する。次いでこの秤量物をPSZ(部分安定化ジルコニア)等の粉砕媒体が内有されたボールミルに投入し、湿式で混合粉砕した後、1000℃以上の温度で仮焼・粉砕を行ない、平均粒径が0.1〜1.0μmの組成式BamTiO2+mで表される主相粒子となるべき第1の配合物を作製する。
次に、MgO等のMg化合物、及びVやV等のV化合物を用意し、上記数式(2)、(3)を満足するようにこれらセラミック素原料を秤量する。次いでこの秤量物をPSZ(部分安定化ジルコニア)等の粉砕媒体が内有されたボールミルに投入し、湿式で混合粉砕した後、約600℃の温度で仮焼・粉砕を行ない、組成式MgVOで表される二次相粒子となるべき第2の配合物を作製する。
次に、第1〜第4の添加成分を含有した酸化物を必要に応じて用意する。そして、BamTiO2+m100モルに対し、第2の配合物、及び第1〜第4の添加成分の配合モル量が、上記(4)〜(8)を満足するように第1及び第2の配合物、及び第1〜第4の添加成分を含有した酸化物を秤量し、ボールミルに投入して混合し、その後蒸発乾燥させ、セラミック混合粉末を得る。
次に、上記セラミック混合粉末をバインダや有機溶剤と共にボールミルに投入して湿式混合し、セラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法等によりセラミックスラリーに成形加工を施し、セラミックグリーンシートを作製する。
次いで、内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施し、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成する。
尚、内部電極用導電性ペーストに含有される導電性材料としては、低コスト化の観点から、Ni、Cuやこれら合金を主成分とした卑金属材料を使用するのが好ましい。
次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製する。そしてこの後、温度200〜500℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、酸素分圧が10-9〜10-12MPaに制御されたH−N−HOガスからなる還元性雰囲気下、温度1150〜1250℃で約2時間焼成処理を行なう。これにより導電膜とセラミック材とが共焼成され、内部電極2が埋設されたセラミック焼結体1(誘電体セラミック)が得られる。
次に、セラミック焼結体1の両端面に外部電極用導電性ペーストを塗布し、焼付処理を行い、これにより外部電極3a、3bが形成される。
尚、外部電極用導電性ペーストに含有される導電性材料についても、低コスト化の観点から、Ni、Cuやこれら合金を主成分とした卑金属材料を使用するのが好ましい。
また、外部電極3a、3bの形成方法として、セラミック積層体の両端面に外部電極用導電性ペーストを塗布した後、セラミック積層体と同時に焼成処理を施すようにしてもよい。
そして、最後に、電解めっきを施して外部電極3a、3bの表面にNi、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜4a、4bを形成し、さらに該第1のめっき皮膜4a、4bの表面にはんだやスズ等からなる第2のめっき皮膜5a、5bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
このように本積層セラミックコンデンサは、本発明の誘電体セラミックを使用して製造されているので、10kV/mmを遥かに超える高電界強度下であっても良好な加速寿命を得ることができ、したがって誘電体セラミック層が超薄層化されても信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
特に、誘電体セラミックが上述した一般式〔A〕で表され、かつ各配合モル量が数式(1)〜(8)を満足する場合は、誘電特性や温度特性、絶縁性が良好であり、10kV/mmを遥かに超える高電界強度下であっても良好な高温加速寿命を得ることができる信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
具体的には、比誘電率εrが1900〜2400の高誘電率を確保することができ、静電容量の容量変化率はX7R特性を満足し、誘電損失tanδは1.5%以下と低く、静電容量Cと絶縁抵抗Rの積であるCR積は1850Ω・F以上となって良好な絶縁性を得ることができ、40kV/mmの高電界強度下であっても155℃の高温で90時間以上の加速寿命を有する信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。セラミック混合粉末の作製過程その他の積層セラミックコンデンサの製造過程で、Zr、Fe、Al、Hf、Na等が不純物として混入し、結晶粒子内や結晶粒界に存在するおそれがあるが、積層セラミックコンデンサの電気特性に影響を及ぼすものではない。
また、積層セラミックコンデンサの焼成処理で内部電極成分が結晶粒子内や結晶粒界に拡散するおそれがあるが、積層セラミックコンデンサの電気特性に何ら影響を及ぼすものではない。
また、上記実施の形態では、第1の配合物を、Ba化合物及びTi化合物を出発原料した固相合成法により作製したが、加水分解法や水熱合成法、シュウ酸法等により作製してもよい。さらに、Ba化合物、Ti化合物についても、炭酸塩や酸化物以外に、硝酸塩、水酸化物、有機酸塩、アルコキシド、キレート化合物等、合成反応の形態に応じて適宜選択することができる。
また、上記実施の形態では、第1〜第3の添加成分の添加形態として酸化物粉末を使用しているが、有機金属やゾルの形態で添加しても、特性に影響を与えることはない。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
セラミック素原料としてBaCO及びTiOを用意し、Ba/Tiが1.020となるようにこれらセラミック素原料を秤量し、該秤量物をPSZの内有されたボールミルに投入して24時間湿式で混合粉砕した。次いで、1100〜1180℃の温度で仮焼処理を施し、組成式BamTiO2+m(m=1.020)で表される平均粒径0.2〜0.3μmの第1の配合物を作製した。
次に、MgO及びVを用意し、組成モル比がMg/V=1/1となるように秤量して混合し、600℃で仮焼した後、粉砕し、組成式MgVO(n=1)で表される第2の配合物を作製した。
次に、第1の添加成分としてのDyを含有したDy、第2の添加成分としてのCa及びMgをそれぞれ含有したCaO及びMgO、第3の成分としてのMn及びNiをそれぞれ含有したMnO及びNiO、及び第4の成分としてのSiを含有したSiOを用意した。
次に、BamTiO2+m100モルに対するMgVO、及び第1〜第4の添加成分の配合モル量α、u、v、w、zが表2の実施例1に示す値となるように秤量し、ボールミルに投入して混合した後、乾燥し、セラミック混合粉末を得た。
次いで、前記セラミック混合粉末をポリビニルブチラール系バインダや有機溶剤としてのエチルアルコールと共にボールミルに投入して湿式混合し、セラミックスラリーを作製し、さらにドクターブレード法等によりセラミックスラリーに成形加工を施し、厚さ6μmの矩形状のセラミックグリーンシートを作製した。
次に、Niを主成分とした導電性ペーストを前記セラミックグリーンシートにスクリーン印刷し、該セラミックグリーンシートの表面に導電膜を形成した。
次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層し、導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製した。そしてこの後、大気雰囲気下、温度250℃で脱バインダ処理を行い、さらに、酸素分圧が10-10MPaに制御されたH−N−HOガスからなる還元性雰囲気中、温度1220℃で2時間焼成処理を施し、内部電極が埋設されたセラミック焼結体を作製した。
その後、Cuを主成分とした導電性ペーストをセラミック焼結体の両端面に塗布し、窒素雰囲気下、温度800〜900℃で焼付処理を施し、外部電極を形成し、実施例1の積層セラミックコンデンサを作製した。
尚、各積層セラミックコンデンサは、外形寸法が、長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mm、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは4μmであった。また、有効誘電体セラミック層の積層枚数は200であり、1層あたりの対向電極面積は2.3×10-62であった。
そして、実施例1の積層セラミックコンデンサの断面をX線マイクロアナライザー(XMA)を使用して分析した結果、Mg及びVを含む結晶性複合酸化物(MgVO)が二次相粒子として存在することが確認された。
次に、MnO及びNiOに加え、第3の添加成分としてのVを含有したVを用意し、第1〜第4の添加成分の配合モル量u、v、w、zが表2の比較例1に示す値となるように第1の配合物、及び第1〜第4の添加成分を含有した酸化物を秤量し、第2の配合物が含まれていないセラミック混合粉末を作製し、その他は実施例1と同様の方法・手順で比較例1の積層セラミックコンデンサを作製した。
次いで、比較例1の積層セラミックコンデンサについても、実施例1と同様、その断面をXMAで分析したところ、Mg及びVを含む結晶性複合酸化物の存在は確認されなかった。
表2は実施例1及び比較例1の組成成分を示している。
Figure 0004697582
次に、実施例1及び比較例1について、比誘電率εr、誘電損失tanδ、静電容量の温度特性、CR積、及び加速寿命を測定した。
すなわち、まず、自動ブリッジ式測定器を使用し、周波数1kHz、実効電圧0.5Vrms、温度25℃の条件で静電容量C、及び誘電損失tanδを測定し、静電容量Cから比誘電率εrを算出した。
静電容量の温度特性については、+25℃での静電容量を基準とし、−55℃から+125℃の範囲における容量変化率(ΔC/C25)を測定して評価した。尚、容量変化率(ΔC/C25)が±15%以内であればEIA規格で規定するX7R特性を満足することとなる。
さらに、絶縁抵抗計を使用し、温度25℃で50Vの直流電圧を2分間印加し、12.5kV/mmの電界強度下での絶縁抵抗Rを測定し、静電容量Cと絶縁抵抗Rとを乗算してCR積を算出した。
また、超加速高温負荷試験を行い、加速寿命を評価した。すなわち、実施例1及び比較例1の試験片各36個について、温度150℃の高温下、40kV/mmの電界強度となるように直流電圧を印加し、絶縁抵抗の経時変化を測定し、絶縁抵抗Rが200kΩに低下するまでの時間を測定し、その平均値を算出して加速寿命を評価した。
表3はこれらの測定結果を示している。
Figure 0004697582
表2及び表3から明らかなように、比較例1は、二次相粒子としてのMgVOが含まれていないため、加速寿命が8時間と短く、高電界強度下での信頼性に劣るのに対し、実施例1は、MgVOが二次相粒子として含まれているので、加速寿命が105時間となって大幅に向上し、高電界強度下での信頼性が向上することが分かった。
実施例1で行った固相合成法により、表4及び表6に示すような組成モル比mを有する平均粒径0.2〜0.3μmのBaTiO2+m、すなわち、第1の配合物を作製した。
次に、MgO、及びV又はVを用意し、表4及び表6に示すような組成モル比nを有するように秤量して混合し、500〜900℃で仮焼した後、粉砕し、MgVOで表される第2の配合物を作製した。
次に、第1の添加成分を含有したY、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYb、第2の添加成分を含有したCaO、BaO、SrO及びMgO、第3の添加成分を含有したMnO、Fe、NiO、CoCO、MoO、WO、ZnO、CuO、及びV、第4の添加成分を含有した焼結助剤としてのSiOを用意した。
次に、各配合モル量α、u、v、w、zが表4及び表6に示すような値となるように第1及び第2の配合物、及び各添加物を秤量し、ボールミルに投入して混合した後、乾燥し、セラミック混合粉末を得た。
そして、この後は、実施例1と同様の方法・手順を使用して試料番号1〜43の積層セラミックコンデンサを作製した。尚、焼成温度は1180〜1320℃の間で焼結に最適な温度を選択して決定した。
次に、試料番号1〜43の積層セラミックコンデンサについて、実施例1と同様、比誘電率εr、誘電損失tanδ、静電容量の温度特性、CR積、及び加速寿命を測定した。
表4は試料番号1〜14の誘電体セラミックの組成成分を示し、表5は試料番号1〜14の積層セラミックコンデンサの上記各特性の測定結果を示している。 また、表6は試料番号15〜43の誘電体セラミックの組成成分を示し、表7は試料番号15〜43の積層セラミックコンデンサの上記各特性の測定結果を示している。
尚、表4及び表5の試料番号1〜14は、実施例1と同様、誘電体セラミック中にMg を含有しているものの、各配合モル量やモル組成が好ましくない範囲を示しており、表6及び表7の試料番号15〜43は、誘電体セラミック中にMg を含有し、かつ各配合モル量やモル組成が好ましい範囲を示している。
しかしながら、試料番号1は、m値が0.998であり、1.001未満と小さく、Tiの含有モル量が過剰であるため、容量変化率ΔC/C25が−25%となってX7R特性を満たさなくなり、また誘電損失tanδも6.0%と高くなる。
試料番号2は、m値が1.035であり、1.030を超えているため、Baの含有モル量が過剰となり、このため焼結性が低下することから焼成温度を1280℃に上げる必要があり、比誘電率εrが1900と低くなる。
試料番号3は、n値が0.1であり、0.5未満であるため、Vの含有モル量過剰となって比誘電率εrが1700に低下し、CR積も1350Ω・Fと低くなる。
試料番号4は、n値が8.0であり、5.0を超えているため、Mgの含有モル量が過剰となって焼結性が低下し、このため焼成温度を1260℃まで上げなければならず、その結果容量変化率ΔC/C25が−16%となってX7R特性を満たさなくなり、温度特性が悪化する。
試料番号5は、α値が0.01であり、0.02未満であるため、二次相粒子であるMgVOの配合モル量が過小となり、容量変化率ΔC/C25が−17%となってX7R特性を満たさなくなる。
試料番号6は、α値が2.5であり、2.0を超えているため、比誘電率εrが1850と低く、CR積も1400Ω・Fと低くなり、また容量変化率ΔC/C25が−22%となってX7R特性を満たさなくなる。
試料番号7は、u値が0.1であり、0.5未満であるため、容量変化率ΔC/C25が−23%となってX7R特性を満たさなくなり、また誘電損失tanδも8.0%と大きくなる。
試料番号8は、u値が3.5であり、3.0を超えているため、比誘電率εrが1500と低く、またCR積も1900Ω・Fと低くなる。
試料番号9は、v値が0.05であり、0.1未満であるため、容量変化率ΔC/C25が−20%となり、X7R特性を満たさなくなる。
試料番号10は、v値が3.5であり、3.0を超えるため、焼結性が低下し、このため焼成温度を1300℃と高くしなければならず、またこの場合は比誘電率εrも1700と低くなった。
試料番号11は、w値が0.05であり、0.1未満であるため焼結性が低下し、このため焼成温度を1280℃まで上げなければならず、その結果容量変化率ΔC/C25が−17%となってX7R特性を満たさなくなる。
試料番号12は、w値が1.5であり、1.0を超えているため、CR積が1300Ω・Fと低くなる。
試料番号13は、z値が0.2であり、0.5未満であるため、焼結性が低下し、このため焼成温度を1320℃まで上げなければならず、その結果容量変化率ΔC/C25が−16%となってX7R特性を満たさなくなる。
試料番号14は、z値が3.5であり、3.0を超えているため、焼結性が過度に促進され、その結果容量変化率ΔC/C25が−18%となってX7R特性を満たさなくなる。
これに対し表6及び表7に示すように、試料番号15〜43は、〔発明を実施するための最良の形態〕に記した一般式〔A〕が数式(1)〜(8)を満足するように組成成分が配合されているので、加速寿命が91〜108時間となって40kV/mmの高電界強度下においても高い信頼性を得ることができると共に、比誘電率εrが良好で容量変化率ΔC/C25が±15%以内に抑制されてX7R特性を満足し、しかも誘電損失tanδも1.5%以下と小さく、電気特性にも優れた積層セラミックコンデンサを得ることができることが分かった。
特に、試料番号21〜25、36、及び43のように第1〜第4の添加成分を複数種含有させても特性悪化を招かないことが分かった。すなわち、これら各添加成分は単独で含有させてもよいことから、各添加元素の含有比率を任意に選択することが可能となり、各添加元素の含有比率の選択の自由度も極めて広いことも確認された。
本発明の誘電体セラミックを使用して製造された積層セラミックコンデンサの一実施の形態を示す断面図である。
符号の説明
1 セラミック焼結体(誘電体セラミック)
2(2a〜2f) 内部電極
3a、3b外部電極

Claims (5)

  1. 組成式Ba m TiO 2+m で表されるチタン酸バリウム系化合物を含有した主相粒子と、組成式Mg VO で表される結晶性複合酸化物からなる二次相粒子とを含み、
    上記m、n、及びtが、
    1.001≦m≦1.030、
    0.3≦n≦5.0、
    1.5+n≦t≦2.5+n
    であり、
    かつ、前記Ba TiO 2+m 100モルに対する前記Mg VO の配合モル量αが、
    0.05≦α≦2.0
    であることを特徴とする誘電体セラミック。
  2. 前記結晶性複合酸化物が、MgVO 、Mg 3/2 VO 、Mg 1/3 VO 17/6 、Mg 3/4 VO 13/4 、Mg 1/2 VO 、及びMg 1/2 VO の中から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の誘電体セラミック。
  3. Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択された少なくとも1種の元素からなる第1の添加成分と、Ca、Ba、Sr、及びMgの中から選択された少なくとも1種の元素からなる第2の添加成分と、Mn、Fe、Ni、Co、Mo、W、Zn、Cu、及びVの中から選択された少なくとも1種の元素からなる第3の添加成分と、Siからなる第4の添加成分とを含有し、
    第1〜第4の添加成分のそれぞれの配合モル量u、v、w、及びzは、前記チタン酸バリウム系固溶体100モルに対し、
    0.5≦u≦3.0、
    0.1≦v≦3.0、
    0.1≦w≦1.0、
    0.5≦z≦3.0
    であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の誘電体セラミック。
  4. 組成式Ba m TiO 2+m (ただし、mは 1.001≦m≦1.030)で表されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする第1の配合物を作製する第1の配合物作製工程と、
    Mgを含有したMg化合物とVを含有したV化合物とを混合した後、熱処理を施し、組成式Mg VO (ただし、nは0.3≦n≦5.0、tは、1.5+n≦t≦2.5+n)で表されるMg及びVを主成分とする第2の配合物を作製する第2の配合物作製工程と、
    前記第2の配合物を粉砕する粉砕工程と、
    前記Ba TiO 2+m 100モルに対する前記Mg VO の配合モル量αが、
    0.05≦α≦2.0となるように、前記粉砕された第2の配合物と前記第1の配合物とを混合して混合物を得る混合工程と、
    前記混合物に焼成処理を施す焼成工程とを含むことを特徴とする誘電体セラミックの製造方法。
  5. セラミック素体が請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の誘電体セラミックで形成されると共に、卑金属材料で形成された内部電極が前記セラミック素体に埋設されていることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
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