JP3566328B2 - 電子写真感光体、それを有する装置ユニット及び電子写真装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は電子写真感光体及び該電子写真感光体を備えた電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスは、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する感光体上に対する帯電、露光による潜像形成、トナーによる現像像の形成、紙を主とする被転写材への転写、および転写残トナーの除去(クリーニング)によって構成されている。ここで使用される電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた所要の感度、電気特性、光学特性を備えていることが要求されるが、更に繰り返し使用される感光体にあっては、感光体の表面には帯電、トナー現像、紙への転写、残存トナーのクリーニングといった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐性が要求される。具体的には、摺擦による傷や摩耗、コロナ帯電を利用する場合には、特に高湿下で発生するオゾンによる化学的な劣化に対する耐性が要求される。更に繰り返し行われる残存トナーのクリーニング時には、感光体表面へのトナー付着や、ブレードクリーニングを行う際のブレードめくれといった問題があるため、表面の滑り性、離型性、耐汚染性といった特性が要求される。
【0003】
このような要求に応えるために、感光体上に保護層を形成することが広く提案されている。保護層の材料としては、フッ素系樹脂に代表されるような離型性、滑り性に優れた樹脂や、アクリル樹脂などに代表されるような高硬度の樹脂材料が検討されている。
【0004】
しかし、先に述べたような種々の特性を満たすような材料はいまだ見いだされていない。例えば、フッ素系樹脂単独では硬度が低く傷の発生を押さえることは困難であるし、更に一般溶剤に難溶であるために成膜が容易ではない。この場合、フッ素系樹脂を微粉末として適当なバインダー中に分散させる方法が提案されているが、これらの粒子の光散乱による画質の低下が問題になっている。
【0005】
一方、架橋性アクリルのような高硬度な樹脂は滑り性や、高湿下での電気特性、あるいは離型性といった面で十分ではなかった。更にこれらの一般的ラジカル重合系は、空気中の酸素による重合阻害効果による膜表面での硬化不良、光開始剤を用いた場合に光照射による炭素−炭素結合の切断反応などにより、絶縁抵抗などの電気特性の不安定な硬化物しか得られない。そのため表面自由エネルギーの上昇による転写効率の低下や吸湿による画像ボケといった問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は耐摩耗性に優れ、傷等が発生しないだけの硬度を有し、なおかつ、耐汚染性、離型性に優れた保護材料を提供し、更に温度、湿度の変化による電気特性の変化が少なく、感光体本来の電子写真特性を低下させない保護材料を用いた電子写真感光体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
導電性支持体上に少なくとも感光層及び保護層を有する、負に帯電可能な電子写真感光体において、
該保護層中に
下記式
【化3】
Figure 0003566328
で示される構造を有するポリエンと下記式
【化4】
Figure 0003566328
で示される構造を有するポリチオールとの重合体を含有し、かつ、
パーフロロオクチルトリメトキシシランによって表面処理した導電性金属酸化物を分散含有する
ことを特徴とする電子写真感光体から構成される。
【0008】
本発明の電子写真感光体を製造する場合、導電性支持体としてはアルミニウム、ステンレス等の金属や合金、あるいは導電性のコーティングを施したプラスチックなどの円筒形シリンダー、またはフィルムが用いられる。
【0009】
導電性支持体上にはバリアー機能と下引き機能を有する下引き層を形成することができる。下引き層は感光層の密着性、塗布性、支持体の保護や欠陥の被覆、支持体からの注入性改良のために形成される。通常、材料を適当な溶剤に溶解した後、支持体上に塗布、乾燥して、0.2〜2μm厚に形成される。材料としてはポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド等が知られているが、これらに限定するものではない。
【0010】
感光層としては電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造を有する感光層と、電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する単一の層からなる感光層がある。
【0011】
電荷発生物質としてはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料が代表的であるが、特に限定されるものではなく、必要な電子写真特性を達成できる範囲で選択することができる。通常、電荷発生層は電荷発生物質を適当なバインダー樹脂を溶解した溶媒中に分散した分散液とし、これを塗布することによって、2μm以下の厚さに形成される。バインダー樹脂としてはポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール等の樹脂が挙げられる。
【0012】
電荷輸送物質としてはオキサゾール、チアゾール、イミダゾール等の含窒素複素環核を有する化合物、ピラゾリン系化合物、ポリアリールアルカン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリアリールアミン系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物等が挙げられるがこれらに限定するものではない。電荷輸送層は上記電荷輸送物質と適当なバインダー樹脂を溶媒中に溶解し、この液を塗布することによって、5〜50μm厚に形成される。バインダー樹脂としてはポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、シリコーン樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0013】
本発明において用いられるポリエンとポリチオールの重合体は、多官能性チオールから適当なラジカル開始剤による水素引き抜き反応によって生成するチイルラジカルの炭素−炭素不飽和結合への付加によって生成する。
【0014】
リエン化合物例を表1にす。
【表1】
Figure 0003566328
【0015】
次に、ポリチオール化合物例を表に示す。
【表2】
Figure 0003566328
【0016】
ラジカル開始剤としては、熱あるいは光照射によってラジカルを発生しうる化合物であればよく、アリ−ルアルキルケトン類、オキシムケチン類、アシルフォスフィンオキシド類、ベンゾインエ−テル類、チオ安息香酸S−フェニル、チタノセン類、芳香族ケトン類、チオキサントン類、アゾ化合物類、有機酸化化合物類等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0017】
本発明において用いられる導電性金属酸化物としては酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等が挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの金属酸化物は単独でも2種以上を混合して用いることもでき、2種以上混合した場合には固溶体の形をとってもよい。
【0018】
一般に、感光体の最外層に粒子を含有させる場合、粒子による入射光の散乱を防ぐために、入射光の波長よりも粒子の粒径が小さいこと、即ち、0.3μm以下であることが必要である。しかし、実際には粒子分散後の放置による樹脂中で金属酸化物微粒子の凝集による二次粒子の形成を防ぐためには、更に平均粒径を小さくしなくてはならない。粒子の凝集もなく経時的にも安定な分散液にすることができ、均一な、しかも、透明性の高い塗膜を得るためには一次粒子の平均粒径を0.05μm以下にすることが望ましい。
【0019】
導電性金属酸化物の分散方法としては、ホモジナイザー、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、ロールミル、超音波といった方法が挙げられるが、前述した一次粒子の粒径まで分散可能であれば特に限定されるものではない。
【0020】
保護層の塗布液を塗布する方法としてはスプレー法、浸漬法、ロールコート法等が挙げられるが、均一な塗膜が得られればよく、特に限定されるものではない。塗膜の厚さは熱処理あるいは光照射による重合反応後で0.5〜9μm程度が望ましい。
【0021】
また、本発明は、前述の本発明の電子写真感光体を備えた装置ユニット及び電子写真装置から構成される。
【0022】
次に、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置について説明する。図1に本発明のドラム型感光体を用いた一般的な転写式電子写真装置の概略構成を示した。図において、1は像担持体としてのドラム型感光体であり軸1aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。該感光体1はその回転過程で帯電手段2によりその周面に負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部3にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光・レーザービーム走査露光など)を受ける。これにより感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。その静電潜像は、次いで現像手段4でトナー現像され、そのトナー現像像が転写手段5により不図示の給紙部から感光体1と転写手段5との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材Pの面に順次転写されていく。像転写を受けた転写材Pは感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けて複写物(コピー)として機外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面はクリーニング手段6にて転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、前露光手段7により除電処理がされて繰り返して像形成に使用される。感光体1の均一帯電手段2としてはコロナ帯電装置が一般に広く使用されている。また、転写装置5もコロナ転写手段が一般に広く使用されている。電子写真装置として、上述の感光体や現像手段、クリーニング手段等の構成要素のうち、複数のものを装置ユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、感光体1とクリーニング手段6とを一体化して一つの装置ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成にしてもよい。このとき上記の装置ユニットのほうに帯電手段および/または現像手段を伴って構成してもよい。また、光像露光Lは、電子写真装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を用いる、あるいは、原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、発光ダイオードアレイの駆動、または液晶シャッターアレイの駆動等を行うことにより行われる。
【0023】
【実施例】
比較例1
6−ナイロン10重量部をイソプロパノール150重量部に溶解し、アルミニウムシリンダー上に浸漬塗布し、厚さ0.8μmの下引き層を形成した。
【0024】
次に、下記構造のビスアゾ顔料10重量部、
【化
Figure 0003566328
ポリビニルブチラール(分子量25000)5重量部、シクロヘキサノン200重量部をサンドミルにて分散し、この分散液を前記下引き層上に浸漬塗布した後、100℃で20分間乾燥し、厚さ0.08μmの電荷発生層を形成した。
【0025】
次に、下記構造のトリフェニルアミン化合物10重量部、
【化
Figure 0003566328
ポリカーボネートA(分子量25000)10重量部をクロロベンゼン80重量部に溶解し、この溶解液を前記電荷発生層上に浸漬塗布した後、100℃で60分間乾燥し、厚さ20μmの電荷輸送層を形成した。
【0026】
次いで、表1のポリエン化合物例と表のポリチオール化合物例の1:1(モル比)混合物60重量部、平均一次粒子の平均粒径0.035μmの酸化スズ30重量部をイソプロパノールとエタノールの1:1混合溶媒280重量部中に投入し、サンドミルで50時間分散を行い、この分散液に重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル3重量部を加えた。この調製液を前記電荷輸送層まで形成した感光体上に浸漬塗布した後、100℃で80分間乾燥し、厚さ3.5μmの保護層を形成した。この時の調製液の分散性は良好で、保護層表面はむらがなく均一であった。
【0027】
実施例1
比較例1における酸化スズを表面をパーフロロオクチルトリメトキシシランで処理したものとし、他は比較例1と同様にして保護層を有する電子写真感光体を作成した。
【0028】
比較例2
実施例1におけるポリエン化合物例、ポリチオール化合物例に代えて表1のポリエン化合物例と表のポリチオール化合物例を用いた。また、硬化は30℃で30分間の溶剤乾燥の後、高圧水銀ランプを用い、パイレックスフィルターを通し20秒間光照射することによって行った。こうして保護層を有する電子写真感光体を作成した。
【0029】
比較例
比較例1において電荷輸送層まで形成して電子写真感光体を作成し、比較試料とした。
【0030】
比較例
比較例1において保護層中に酸化スズを添加していないもので、かつ、保護層の膜厚を1.0μmとして電子写真感光体を作成した。
【0031】
実施例1で作成した電子写真感光体及び比較例1〜で作成した電子写真感光体を試料として用い、これを市販の負帯電型の複写機(商品名NP3525、キヤノン(株)製)に装着し、画出し試験及び耐久試験を行った。結果を表及びに示す。
【表3】
Figure 0003566328
【表4】
Figure 0003566328
この様に、本発明で特定する樹脂と表面をパーフロロオクチルトリメトキシシランによって処理した導電性金属酸化物の組合わせにおいて最も高い耐摩耗性を有し環境に左右されない高画質を維持していることが分かる。更に離型性の向上により、転写効率も良好であることが分かる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は使用環境にかかわらず、画質の良い安定した画像を継続して得ることができるという顕著な効果を奏する。この効果は、該電子写真感光体を電子写真装置に用いた場合においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な転写式電子写真装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 像担持体としてのドラム型感光体(本発明の電子写真感光体)
2 コロナ帯電装置
3 露光部
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 前露光手段
8 像定着手段
L 光像露光
P 像転写を受けた転写材

Claims (3)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層及び保護層を有する、負に帯電可能な電子写真感光体において、
    該保護層中に
    下記式
    Figure 0003566328
    で示される構造を有するポリエンと下記式
    Figure 0003566328
    で示される構造を有するポリチオールとの重合体を含有し、かつ、
    パーフロロオクチルトリメトキシシランによって表面処理した導電性金属酸化物を分散含有する
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 請求項1に記載の電子写真感光体を備えた電子写真装置。
  3. 請求項1に記載の電子写真感光体、及び、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つを一体に結合して構成し、電子写真装置本体に対して着脱自在であることを特徴とする装置ユニット。
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