JP3560376B2 - 車輪速センサ用信号ケーブル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車輪速センサ用信号ケーブルに関するものであり、特に、機械的特性と耐油性に優れるとともに、細径化を可能にしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の車両には、電子制御により安全を確保するようなシステムが搭載されたものが増加しており、その一例としてアンチスキッドブレーキシステムが良く知られている。このアンチスキッドブレーキシステムでは、車輪部に取り付けられたセンサが車輪の回転数やトルクを検知し、ケーブルを介してコントロールユニットに情報が送られて、車輪が空回りなどを起こさないように制御している。
【0003】
上記のケーブルは、車輪部に取り付けられたセンサに直接配線されるものであるため、振動、屈曲、しごきなど外部からの影響を非常に受け易い。そのため、このような環境下で使用されるケーブルとしては、機械的特性に優れた構成のものがものが望まれている。従来、この種の車輪速センサ用信号ケーブルとして実用されているものの一例として、硬質スズ入り銅合金の0.05mm外径の導体素線を多数本撚り合わせてなる導体の周上に架橋ポリエチレンやエチレン−テトラフロロエチレン共重合体などの絶縁体を被覆して構成された絶縁心線を必要本数撚り合わせ、更に熱可塑性ポリウレタン樹脂などのシース材を被覆した構成のものがある。この構成のものは一般的に、耐屈曲電線と称されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて、近年、省エネルギー規制の強化に伴って、車両においても軽量化志向が強まっている。そのため、このようなケーブルにも細径化による軽量化が要求されており、実際、様々な検討がなされている。しかしながら、従来のケーブルは細径化すると耐屈曲性などの機械的特性が著しく低下してしまい、最悪の場合には断線してしまう、という欠点があった。また、従来のケーブルにおいては、例えば車輌のメンテナンス時に、ブレーキオイル等の油分が表面に付着するようなことがあると、シース材である熱可塑性ポリウレタン樹脂が常温で溶解してしまい、保護材としての機能を全く失ってしまう、という欠点もあった。
【0005】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、機械的特性と耐油性に優れるとともに、細径化を可能にした車輪速センサ用信号ケーブルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明による車輪速センサ用信号ケーブルは、抗張力100N以上の繊維芯上に、スズを0.1重量%以上含有する断面積0.02mm2以下の銅合金線からなる導体素線を抵抗値が10Ω/m以下となるように複数本引き揃えて横巻きすることにより導体を構成し、この導体上に絶縁体を被覆してなる絶縁心線を複数本撚り合わせた後、これらの周上に塩化ビニル樹脂または塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタン樹脂の混合物からなるシース材を被覆したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明において使用される繊維芯としては、抗張力が大きいものが好ましく、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維などが挙げられる。これらの中でも、芳香族ポリアミド繊または全芳香族ポリエステル繊維は、細径であっても、十分な引張強度を有することから好ましい。これらの繊維は、抗張力が100N以上になるように太さが決められる。抗張力が100N未満では、十分な引張強度が得られない。
【0008】
導体素線としては、スズを0.1重量%以上含有する断面積0.02mm2以下の銅合金線を用いる。スズを含有させることによって、引張強度と屈曲性が向上する。スズの含有量が0.1重量%未満では、銅に比べて屈曲性の向上が不十分である。また断面積が0.02mm2を超える太さの合金線では屈曲性が低下してしまう。この銅合金線からなる導体素線を複数本引き揃え、これを上記の繊維芯上に横巻きして導体とする。このとき、導体の抵抗値が10Ω/m以下となるように導体素線の本数、横巻きピッチを調整する必要がある。導体の抵抗値が10Ω/mを超えると、実使用時に信号処理回路に影響が出るため好ましくない。
【0009】
導体上に被覆される絶縁体の構成材料は、特に限定されず、従来公知の様々な絶縁被覆材料を用いることができる。好ましくは、耐熱塩化ビニル樹脂、架橋ポリエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、シリコーンゴムなどが挙げられる。
【0010】
シース材としては、車輪速センサ用信号ケーブルに求められる摩耗性等の機械的特性、柔軟性、耐油性などに優れているとともに、安価であることから、塩化ビニル樹脂または塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタン樹脂の混合物を使用することが好ましい。塩化ビニル樹脂を単独で使用するよりも、熱可塑性ポリウレタン樹脂と混合したものを使用する方が摩耗性に優れるため、更に好ましい。
【0011】
【作用】
上記構成によれば、導体を構成する繊維芯と導体素線の特性値及び材質を特定するとともに、これに特定のシース材を組み合わせることによって、機械的特性と耐油性に優れるとともに、細径のケーブルを実現できる。
【0012】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と併せて説明する。
【0013】
実施例1
外径0.3mm、抗張力260Nの全芳香族ポリエステル繊維〔商品名:ベクトラン、(株)クラレ製〕からなる繊維芯上に、導体素線としてスズを0.3重量%含有する断面積0.002mm2の銅合金線(H−SNCC−3)を10本引き揃え、ピッチ約0.9mmで横巻きして抵抗値1.9Ω/m、外径0.5mmの導体を構成した。次に、この導体上に125℃耐熱の架橋ポリエチレンからなる絶縁体を0.4mmの肉厚で押出被覆して絶縁心線とした。絶縁心線は黒色、白色それぞれ1本づつ作製した。更に、これら2色の絶縁心線をピッチ25mmで撚り合わせた後、その周上にJIS A 硬度90の耐熱塩化ビニル樹脂からなるシース材を押出被覆した。実施例1ではこのようにして、仕上がり外径5.0mmのケーブルを得た。
【0014】
実施例2
シース材として、JIS A 硬度90の耐熱塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタン樹脂を重量比2:1で混合したものを使用した他は、実施列1と同様の材料、同様の工法により仕上がり外径5.0mmのケーブルを作製した。
【0015】
比較例1
この例では繊維芯を使用せずに、従来の耐屈曲電線と同様構造のケーブルを作製した。まず、スズを0.3重量%含有する断面積0.002mm2の銅合金線(H−SNCC−3)からなる導体素線を252本撚り合わせて導体を構成した。次に、この導体上に125℃耐熱の架橋ポリエチレンからなる絶縁体を0.4mmの肉厚で押出被覆して絶縁心線とした。絶縁心線は黒色、白色それぞれ1本づつ作製した。更に、これら2色の絶縁心線をピッチ25mmで撚り合わせた後、その周上にJIS A 硬度90の熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるシース材を押出被覆した。このようにして、仕上がり外径6.0mmのケーブルを作製した。尚、この例で使用した導体の抵抗値は0.05Ω/m、外径は0.9mmであった。
【0016】
比較例2
この例では上記比較例1で作製したケーブルの細径化を図った。導体を構成する導体素線の本数を252本から161本に削減した他は、比較例1と同様の材料、同様の工法により仕上がり外径5.5mmのケーブルを作製した。尚、この例で使用した導体の抵抗値は0.07Ω/m、外径は0.7mmであった。
【0017】
比較例3
シース材として、JIS A 硬度90の熱可塑性ポリウレタン樹脂をを使用した他は、実施列1と同様の材料、同様の工法により仕上がり外径5.0mmのケーブルを作製した。
【0018】
ここで、上記5種類のケーブルを試料として、引張強度、耐屈曲性、耐油性及び耐摩耗性についての評価を行った。試験方法としては、まず、引張強度は試料を毎分200mmの速さで引っ張り、最大強度を測定した。耐屈曲性については、一端に質量1kgのおもりを吊るした試料を、外径5.0mmの二つの円筒間に配置し、円筒の円弧に沿って左右に90度屈曲させる操作を1回とし、毎分30回の速さで屈曲させ導通が無くなった時の回数を測定した。耐油性については、試料を自動車用ブレーキオイル(DOT4オイル)中に常温で6時間浸漬した後取り出し、表面状態を目視にて確認した。耐摩耗性については、JASO D608の摩耗テープ法に従って測定した。これらの結果は表1に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
まず引張強度については、本実施例によるケーブル(実施例1及び実施例2)、比較例のケーブル(比較例1乃至比較例3)ともに500N以上と十分な強度を示しており問題は無い。耐屈曲性については、比較例2を除くすべてのケーブルが50万回以上と十分な値を示している。比較例2のケーブルは比較例1のケーブル(従来の耐屈曲電線)における導体素線数を減少させて仕上がり外径を0.5mm細径化したものであるが、その細径化により耐屈曲性が著しく劣っていることがわかる。本実施例によるケーブル(実施例1及び実施例2)は比較例1のケーブル(従来の耐屈曲電線)と比べて仕上がり外径が1.0mmも細径化されているにもかかわらず、耐屈曲性が全く低下していない。耐油性については、シース材として熱可塑性ポリウレタン樹脂を単独で使用した比較例1乃至比較例3のケーブルはどれもシースが溶解してしまっているのに対して、耐熱塩化ビニル樹脂を使用した実施例1のケーブルと、耐熱塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタン樹脂の混合物を使用した実施例2のケーブルはともに多少膨潤するにとどまっており、実用上問題がないことがわかる。耐摩耗性については、すべてのケーブルが10000mm以上と十分な値を示している。尚、表1には示していないが、最終的に実施例1のケーブルは約15000mm、実施例2のケーブルは約21000mmという値を示した。よって、シース材としては、塩化ビニル樹脂単独よりも、塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタン樹脂を混合させたものを使用する方が、より耐摩耗性に優れたケーブルが得られるということがわかる。
【0021】
このように、本実施例によるものは、細径でありながら、引張強度、耐屈曲性、耐摩耗性などの機械的特性に優れるともに、耐油性にも優れたケーブルであることを確認できた。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、細径化しても機械的特性が低下せず、耐油性にも優れた車輪速センサ用信号ケーブルを得ることができた。
Claims (1)
- 抗張力100N以上の繊維芯上に、スズを0.1重量%以上含有する断面積0.02mm2以下の銅合金線からなる導体素線を抵抗値が10Ω/mとなるように複数本引き揃えて横巻きすることにより導体を構成し、この導体上に絶縁体を被覆してなる絶縁心線を複数本撚り合わた後、これらの周上に塩化ビニル樹脂または塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタン樹脂の混合物からなるシース材を被覆したことを特徴とする車輪速センサ用信号ケーブル。
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