JP3559405B2 - サーミスタ用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はサーミスタ用組成物に係り、特に高温使用下での抵抗変化率が小さいのみならず、低温側(25/−40)でのB定数を広範囲に調整できるサーミスタ用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、酸化マンガンを主成分とする酸化物半導体から成るサーミスタ用組成物として、マンガン、コバルト、銅を含有するものが知られている。ところがマンガン−コバルト−銅の3種の金属元素の酸化物から成るサーミスタ用組成物においては、銅の混合比が多い組成物は高温使用下における抵抗変化率が大きいという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この高温使用下における抵抗化率を小さくするために、添加物としてFe−Crを添加すること(特開平3−271153号公報)、Zrを単独で添加すること(特開平3−271154号公報)、Ni−Crを添加すること(特開平6−231905号公報)がこれらの各公報に記載されている。
【0004】
しかし、これらのものは、高温使用下における抵抗変化率はたしかに小さくできるものの、0〜−40℃の低温側におけるB定数値を広範囲に調整することができなかった。
【0005】
従って本発明の目的は、Mn−Co−Cu系のサーミスタ組成物において、高温使用下での抵抗変化率が小さく、更に0〜−40℃の低温側におけるB定数値を広範囲に調整でき、種々の要求に、低コストで対応できるサーミスタ用組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明では、金属元素だけの比率が、マンガン10〜70モル%、コバルト20〜90モル%、銅0.01〜40モル%でその合計が100モル%からなる酸化物に、添加物として鉄及びジルコニウムを、2酸化鉄に換算して0.01〜50重量%及び酸化ジルコニウムに換算して0.01〜10重量%添加したサーミスタ組成物を提供する。
【0007】
また請求項2に記載した本発明では、金属元素だけの比率が、マンガン10〜70モル%、コバルト20〜90モル%、銅0.01〜40モル%でその合計が100モル%からなる酸化物に、添加物としてクロム及びジルコニウムを、酸化クロムに換算して0.01〜10.0重量%及び酸化ジルコニウムに換算して0.01〜10.0重量%添加したサーミスタ組成物を提供する。
【0008】
これらのサーミスタ組成物により高温使用下での抵抗変化率が小さく、25/−40の低温側におけるB定数の値を広範囲に調整できるサーミスタ用組成物を提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
本発明の実施例1を説明する。
【0010】
出発材料として市販の四三酸化マンガン、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄及び酸化ジルコニウムを、焼結後の組成が表1の試料番号1〜21に示す組成比になるように秤量配合し、ボールミルで16時間湿式混合する。
【0011】
その後、脱水乾燥し、乳鉢、乳棒を用いて粉体にする。次にアルミナこう鉢にこの粉体を入れ、800〜1200℃で2時間仮焼成する。
この仮焼成体をボールミルにより微粉砕したのち脱水乾燥し、バインダーとしてポリビニールアルコール(PVA)を加え、乳鉢、乳棒で顆粒に造粒したのち、直径16mm、厚さ2.5mmの円板状に加圧成形する。
【0012】
次に大気中で600℃で2時間加熱し、バインダーを除脱したのちに、大気中で900〜1300℃で2時間本焼成して試料を得る。得られた試料の両面に銀ペーストをスクリーン印刷し、800℃で焼き付けを行い電極を形成する。
【0013】
完成した各試料を直流4端子法を用いて、25℃の抵抗値(R25)、−40℃の抵抗値(R−40)及び85℃の抵抗値(R85)を測定し、(1)式を用いてB定数(B25/−40)を算出し、(2)式を用いてB定数(B25/85)を算出した。
【0014】
更に各試料を、125℃で1000時間の高温保管後に25℃の室温に戻したときの抵抗値を測定し、125℃で高温保管する前に25℃の室温で測定した抵抗値と比較して抵抗変化率(δR25)を算出し、表1の試料番号1〜21に示す如き結果を得た。
【0015】
【数1】
【0016】
【数2】
【0017】
【表1】
【0018】
表1において、試料番号1〜21は実施例1の場合を示し、そのうち試料番号1、2、3、5、7、8、10、11、13、15、16、18、20、21は本発明の範囲外のものであり、×印でこれを表している。
【0019】
この表1から明らかな如く、マンガン10〜70モル%、コバルト20〜90モル%、銅0.01〜40モル%でその合計が100モル%からなる酸化物に、添加物として鉄及びジルコニウムを2酸化鉄に換算して0.01〜50重量%及び酸化ジルコニウムに換算して0.01〜10重量%添加することにより125℃において1000時間保持後の抵抗変化率が5%以下と小さい非常に安定したサーミスタ用組成物が得られるのみならず、低温側(25/−40)でのB定数の温度特性を任意に変化することができる組成物を提供することができ、回路設計の容易性及び低コスト化等の種々の要求に対応することができる。
【0020】
次に本発明の請求項1における組成の数値限定理由を説明する。
マンガンの比率が10モル%未満のものは高温保持後の抵抗変化率が大きく、実用性に乏しい(例えば表1の試料番号2参照)。またマンガンの比率が70モル%を越えるものはこれまた高温保持後の抵抗変化率が大きく実用的でない(例えば表1の試料番号21参照)。
【0021】
コバルトの比率が20モル%未満のものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用性に乏しい(例えば表1の試料番号11参照)。コバルトの比率が90モル%を越えるものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実施的でない(例えば表1の試料番号2参照)。
【0022】
銅の比率が0.01モル%未満のものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用性に乏しい(例えば表1の試料番号7参照)。銅の比率が40モル%を越えるものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用的でない(例えば表1の試料番号3、8参照)。
【0023】
また2酸化鉄の添加量が0.01wt%未満のもの、及び酸化ジルコニウムの添加量が0.01wt%未満のものは、高温保持試験後の抵抗変化率が大きく実用性に乏しい(例えば表1の試料番号1参照)。
【0024】
そして2酸化鉄の添加量が50.0wt%を越えるもの、及び酸化ジルコニウムの添加量が10.0wt%を越えるものは、これまた高温保持後の抵抗変化率が大きく実用的ではない(例えば表1の試料番号15参照)。
【0025】
表1より明らかな如く、前記の如く、添加物の含有されないものはB定数(25/85)とB定数(25/−40)の差が70と小さいが(表1の試料番号1参照)、前記の割合の添加物の含有されたものはその差が150以上あり(表1の試料番号12等参照)、低温側(25〜−40℃)でのB定数の温度特性を適宜に変化選択できることになり、幅広い要求の回路設計に対応可能となる。
【0026】
(実施例2)
本発明の実施例2を説明する。
出発材料として市販の四三酸化マンガン、酸化コバルト、酸化銅、酸化クロム及び酸化ジルコニウムを、焼結後の組成が表1の試料番号22〜41に示す組成比になるように秤量配合し、ボールミルで16時間湿式混合する。
【0027】
その後、脱水乾燥し、乳鉢、乳棒を用いて粉体にする。次にアルミナこう鉢にこの粉体を入れ、800〜1200℃で2時間仮焼成する。
この仮焼成体をボールミルにより微粉砕したのち脱水乾燥し、バインダーとしてポリビニールアルコール(PVA)を加え、乳鉢、乳棒で顆粒に造粒したのち、直径16mm、厚さ2.5mmの円板状に加圧成形する。
【0028】
次に大気中で600℃で2時間加熱し、バインダーを除脱したのちに、大気中で900〜1300℃で2時間本焼成して試料を得る。得られた試料の両側に銀ペーストをスクリーン印刷し、800℃で焼き付けを行い電極を形成する。
【0029】
完成した各試料を直流4端子法を用いて25℃の抵抗値(R25)、−40℃の抵抗値(R−40)及び85℃の抵抗値(R85)を測定し、前記(1)式を用いてB定数(B25/−40)を算出し、(2)式を用いてB定数(B25/85)を算出した。
【0030】
更に各試料を、125℃で1000時間の高温保管後に25℃の室温に戻したときの抵抗値を測定し、125℃で高温保管する前に、25℃の室温で測定した抵抗値と比較して抵抗変化率(δR25)を算出し、表1の試料番号22〜41に示す如き結果を得た。
【0031】
表1において試料番号22〜41は実施例2の場合を示し、そのうち試料番号22、23、25、27、28、30、31、33、35、36、38、40、41は本発明の範囲外のものであり、×印で区別している。
【0032】
この表1から明らかな如く、マンガン10〜70モル%、コバルト20〜90モル%、銅0.01〜40モル%でその合計が100モル%からなる酸化物に、添加物としてクロム及びジルコニウムを酸化クロムに換算して0.01〜10.0重量%及び酸化ジルコニウムに換算して0.01〜10.0重量%添加することにより125℃において1000時間保持後の抵抗変化率が5%以下と小さい非常に安定したサーミスタ用組成物が得られるのみならず、低温側(25/−40)でのB定数の温度特性を任意に変化することができる組成物を得ることができ、これまた回路設計の容易性及び低コスト化等の種々の要求に対応することができる。
【0033】
次に本発明の請求項2における組成の数値限定理由を説明する。
マンガンの比率が10モル%未満のものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用性に乏しい(例えば表1の試料番号22参照)。マンガンの比率が70モル%を越えるものはこれまた高温保持後の抵抗変化率が大きく実用的ではない(例えば表1の試料番号41参照)。
【0034】
コバルトの比率が20モル%未満のものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用性に乏しい(例えば表1の試料番号31参照)。コバルトの比率が90モル%を越えるものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用的ではない(例えば表1の試料番号22参照)。
【0035】
銅の比率が0.01モル%未満のものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用性に乏しい(例えば表1の試料番号27参照)。銅の比率が40モル%を越えるものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用的ではない(例えば表1の試料番号23、28参照)。
【0036】
また酸化クロムの添加量が0.01wt%未満のもの、及び酸化ジルコニウムの添加量が0.01wt%未満のものは高温保持後の抵抗変化率が大きく実用性に乏しい(例えば表1の試料番号1参照)。
【0037】
そして酸化クロムの添加量が10.0wt%を越えるもの、及び酸化ジルコニウムの添加量が10.0wt%を越えるものは高温保持後の抵抗変化率が大きくこれまた実用的ではない(例えば表1の試料番号25、27、30、35、36、38、40参照)。
【0038】
表1より明らかな如く、添加物の含有されないものはB定数(25/85)とB定数(25/−40)の差が70と小さいが(表1の試料番号1参照)、前記の割合の添加物の含有されたものはその差が150以上あり(表1の試料番号32等参照)、低温側(25〜−40℃)でのB定数の温度特性を適宜に変化選択できることになり、幅広い要求の回路設計に対応可能となる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、125℃の高温下で長時間使用しても、その抵抗変化率が非常に小さい安定した特性を有するのみならず、低温側(25〜−40℃)でのB定数の温度特性を任意に変化することのできるサーミスタ用組成物を得ることができる。
【0040】
従って幅広い要求の回路設計に対応可能となる。
Claims (2)
- 金属元素だけの比率が、マンガン10〜70モル%、コバルト20〜90モル%、銅0.01〜40モル%でその合計が100モル%からなる酸化物に、
2酸化鉄に換算して0.01〜50重量%及び酸化ジルコニウムに換算して0.01〜10重量%添加したことを特徴とするサーミスタ用組成物。 - 金属元素だけの比率が、マンガン10〜70モル%、コバルト20〜90モル%、銅0.01〜40モル%でその合計が100モル%からなる酸化物に、
酸化クロムに換算して0.01〜10.0重量%及び酸化ジルコニウムに換算して0.01〜10.0重量%添加したことを特徴とするサーミスタ用組成物。
Priority Applications (1)
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JP29606496A JP3559405B2 (ja) | 1996-11-08 | 1996-11-08 | サーミスタ用組成物 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP29606496A JP3559405B2 (ja) | 1996-11-08 | 1996-11-08 | サーミスタ用組成物 |
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JPH10139542A JPH10139542A (ja) | 1998-05-26 |
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JP29606496A Expired - Lifetime JP3559405B2 (ja) | 1996-11-08 | 1996-11-08 | サーミスタ用組成物 |
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JP2009249264A (ja) * | 2008-04-10 | 2009-10-29 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 焼結体および熱電変換材料 |
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1996
- 1996-11-08 JP JP29606496A patent/JP3559405B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH10139542A (ja) | 1998-05-26 |
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