JP3558175B2 - 難燃性エラストマー組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は難燃化にハロゲン化合物を使用しない難燃性エラストマー組成物に関し、さらに詳しくは耐熱老化性及び難燃性が共に優れた、押出成形又は射出成形など幅広い用途に使用できる難燃性エラストマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステルエラストマーの難燃性を改良するためにハロゲン系難燃剤を配合することが知られている(特開昭50−107044、特開昭50−109946)。
しかしながら、このようにハロゲン化合物を用いた熱可塑性ポリエステルエラストマーは燃焼時に有毒ガスを発生するため、使用用途が制限されている。
また熱可塑性ポリエステルエラストマーは本来耐熱老化性が優れているが、ハロゲン系難燃剤を配合することによりかかる特性が著しく低下する傾向にある。従って、ハロゲン系難燃剤を使用しないで熱可塑性ポリエステルエラストマーの難燃性を向上させることが望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的とするところはハロゲン系難燃剤を使用しないで難燃性を向上させ、高耐熱老化性を維持した、幅広い用途に使用可能な難燃性エラストマー組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するためにハロゲン化合物を使用しない難燃性エラストマー組成物について鋭意検討した結果、遂に本発明の完成に至った。
【0005】
即ち、本発明は(a)芳香族ジカルボン酸の残基とテトラメチレングリコール残基とからなる融点150℃以上のポリエステルセグメントと融点あるいは軟化点が80℃以下である分子量400〜6000の低融点重合体セグメントからなるブロック共重合体であり、該低融点重合体セグメントの割合が該ブロック共重合体の23〜50重量%である熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して、(b)リン系化合物0.1〜50重量部、及び(c)窒素含有化合物0.1〜50重量部を配合して得られる難燃性エラストマー組成物である。
【0006】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーとは、芳香族ジカルボン酸の残基とテトラメチレングリコール残基とからなる高融点ポリエステルセグメントと分子量400〜6000の低融点重合体セグメントとからなるブロック共重合体であり、芳香族ジカルボン酸の残基とテトラメチレングリコール残基とからなる高融点ポリエステルセグメント構成部分だけで高重合体を形成した場合の融点が150℃以上であり、低融点重合体セグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下であるような構成成分からなる熱可塑性ポリエステルエラストマーであり、その熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点は80℃以上である。
【0008】
分子量400〜6000の低融点重合体セグメント構成成分はポリエステル系ブロック共重合体のなかで実質的に非晶状態を示すものであり、そのセグメント構成成分だけで測定した場合融点あるいは軟化点が前述のように80℃以下のものである。また熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて低融点重合体セグメント構成成分の割合は3〜90%である。
【0009】
低融点重合体セグメント構成成分としてはポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール及びこれらの混合物、これらのエーテル構成成分を共重合した共重合ポリエーテルグリコール等を挙げることができる。さらにエステル基ないしカーボネート基の両側をポリエーテルグリコールで挟んだ化合物でも良い。
【0010】
また炭素数2〜12の脂肪族または脂環族ジカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族または脂環族グリコールからなるポリエステル例えばポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリネオペンチルセバケート、ポリテトラメチレンドデカネート、ポリテトラメチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンアゼレート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−β−メチル−δ−バレロラクトン等の脂肪族ポリエステル及び2種の脂肪族ジカルボン酸あるいは2種のグリコールを用いてできる脂肪族コポリエステル等を挙げることができる。さらに低融点重合体セグメント構成成分として上記脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとを組み合わせたポリエステルポリエーテルブロック共重合体などを挙げることができる。
【0011】
これらの熱可塑性ポリエステルエラストマーは当業者が採用する通常の重合方法によって製造することができる。好適な重合方法としては、芳香族ジカルボン酸またはそのジメチルエステルと低融点セグメント形成性ジオールとを触媒の存在下に約150〜260℃に加熱しエステル化反応またはエステル交換反応を行い、次いで真空下に過剰の低分子ジオールを除去しつつ重縮合反応を行うことにより熱可塑性ポリエステルエラストマーを得る方法、あるいはあらかじめ調整した芳香族ジカルボン酸の残基とテトラメチレングリコール残基とからなる高融点ポリエステルセグメント形成性プレポリマー及び低融点重合体セグメント形成性プレポリマーにそれらのプレポリマーの末端と反応する2官能性の鎖延長剤を混合して反応させた後、系を高真空に保ち揮発分を除去することにより熱可塑性ポリエステルエラストマーを得る方法などがある。
【0012】
本発明に用いるリン系化合物とは無機リン系化合物として赤リン系化合物やポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン等があり、有機リン化合物としてリン酸エステル類がある。赤リン系化合物としては赤リンに樹脂をコートしたもの、アルミニウムとの複合化合物などが挙げられ、リン酸エステル類としてはホスフェート類、ホスホネート類、ホスフィネート類、ホスファイト類、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス・イソプロピルフェニルホスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、ビス(1,3−フェニレンジフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。これらのリン系化合物のうち、特にトリフェニルホスフェート、ビス(1,3−フェニレンジフェニル)ホスフェートが好ましい。リン系化合物の配合量としては熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して0.1〜50重量部、特に1〜20重量部が好ましい。
【0013】
本発明で用いる窒素含有化合物としてはポリリン酸アンモニウム化合物、トリアジン環を有するメラミン及びメラミンシアヌレート、リン酸メラミン等が挙げられる。これらの窒素含有化合物のうち、特にメラミンシアヌレートが好ましい。窒素含有化合物の配合量としては熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して0.1〜50重量部、特に1〜20重量部が好ましい。リン系化合物と窒素含有化合物との重量比は1/9〜9/1、特に1/5〜5/1が好ましい。
【0014】
本発明の組成物の配合は熱可塑性ポリエステルエラストマーとリン系化合物及び窒素含有化合物を150℃〜260℃の温度範囲で混練し、たとえばストランド状に吐出し、0℃〜99℃の水で冷却後、チップ化するのが簡便である。必要によっては水中カッター、ホットカッター、ミストカッターを使用してもよい。
【0015】
本発明の組成物は難燃性、耐熱老化性を始めとして多くの望ましい特性を有するが、さらに熱酸化に対する安定剤、加水分解に対する安定剤などを配合することにより極めて容易に上記性質を著しく安定化させることができる。
【0016】
熱酸化に対する安定剤としては、例えばテトラキス[メチレン−3(3,5−ジタ−シャリブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジタ−シャリブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4′−ブチリデンビス(6−ターシャリブチルメタクレゾール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−ターシャリブチルフェノール)等のようなフェノール誘導体、N,N′−ビス(β−ナフチル)パラフェニレンジアミン、N,N′−ビス(1−メチルヘプチル)−パラフェニレンジアミン等のような芳香族アミン類、ジラウリルジチオプロピオネート、ジステアリルジプロピオネート等のようなチオプロピオン酸エステル類がある。またリン系安定剤としては例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレンジフォスフォナイト等がある。またこれらの安定剤の組合せも有効である。加水分解に対する安定剤としてはカルボジイミド類、モノあるいはポリエポキシ類がある。これらの配合は溶融混練時または別に任意の段階で行うことができる。
【0017】
さらに必要に応じてガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー等のガラスフィラー、タルク、ワラストナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム等の無機フィラー、ボロン繊維、炭素繊維などの無機繊維酸化チタン等の着色剤、及び滑剤、離型剤を本発明の組成物に用いることができる。
【0018】
【実施例】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
実施例 1〜10、比較例 1〜10
ジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオール及び数平均分子量が約1000であるポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)を用い、PTMGの単位がそれぞれ25重量%、50重量%を占めるようなポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体(ポリマーA,B)を製造した。溶液粘度ηsp/cはポリマーAが1.45、ポリマーBが1.71であった。
また、ジメチルテレフタレートとジメチルイソフタレートとの比を3:1にし、PTMGが25重量%を占めるポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体(ポリマーC)を製造した。ポリマーCの溶融粘度ηsp/cは1.53であった。
さらに、ポリブチレンテレフタレート(PBT)(溶液粘度=1.13)100重量部とε−カプロラクトン50重量部とを250℃で加熱混合し、60分間反応缶内でラクトンを開環重合させつつエステル交換反応させることによって、ポリエステル・ポリエステルブロック共重合体(ポリマーD)を製造した。同様にしてPBTとε−カプロラクトンの比が100重量部と30重量部のポリエステル・ポリエステルブロック共重合体(ポリマーE)を製造した。
【0020】
上記ポリマーA〜Eを第1表記載のように配合して、実施例1〜10及び比較例1〜10の組成物を得た。
なお、リン系化合物としてはトリフェニルホスフェート、窒素含有化合物としてはメラミンシアヌレートを使用した。また臭素系難燃剤としてデカブロモジフェニルエーテルを使用した。臭素系難燃剤の場合は難燃助剤として三酸化アンチモンを使用した。
【0021】
次に第1表の各実施例、比較例で得られた組成物のチップを棚式乾燥機で乾燥(100℃×2時間)させた後、射出成形にて試験用テストピース(厚さ1/32インチ)を作成した。そして、それらのテストピースについて表面硬度、引張強さ、伸び及び燃焼性について評価した。試験法は表面硬度、引張強さ、伸びはJISK6301に従い、燃焼性はUL−94に従った。耐熱老化性はテストピースをギア式オーブンに入れ140℃×168時間後の引張強さ及び伸びにより評価した。測定結果を第1表に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
第1表の測定結果から明らかなように、本発明の難燃性エラストマー組成物は熱可塑性ポリエステルエラストマーにリン系化合物及び窒素含有化合物を配合することにより高耐熱老化性を維持したまま難燃性を向上することができる。
Claims (1)
- (a)芳香族ジカルボン酸の残基とテトラメチレングリコール残基とからなる融点150℃以上のポリエステルセグメントと融点あるいは軟化点が80℃以下である分子量400〜6000の低融点重合体セグメントからなるブロック共重合体であり、該低融点重合体セグメントの割合が該ブロック共重合体の23〜50重量%である熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して、(b)リン系化合物0.1〜50重量部、及び(c)窒素含有化合物0.1〜50重量部を配合して得られる難燃性エラストマー組成物。
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