JP3552217B2 - 高断熱・高気密住宅における深夜電力利用蓄熱式床下暖房システム - Google Patents
高断熱・高気密住宅における深夜電力利用蓄熱式床下暖房システム Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、高断熱・高気密住宅における深夜電力を利用した床下暖房装置及び建物構造・床構造を含めた深夜電力利用の蓄熱式床暖房システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の蓄熱式の床暖房は、床材直下にコンクリート等の蓄熱層を形成し、該蓄熱体の表面若しくは内部に埋設された温水循環用の配管や電熱線の発熱により蓄熱層に熱が蓄熱され、その熱の放射により暖房を行っている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし温水式の場合はボイラー等の燃焼装置が必要であり、ボイラー設置後もメンテナンスをしなければならないので維持費がかかるとともに、酸欠やガス中毒になる危険や、騒音がするなどの問題があった。また、床下直下に暖房装置を設置した場合には施工に手間がかかり設置費が高くなってしまい、特に線状発熱体や温水用配管を蛇行状に設置した場合は床面の温度にむらがでてしまい、また床面の温度が高く、室内上部の温度が低くなるという現象が発生してしまうため、床面温度また室内温度を均一にするには発熱温度を高く設置しなければならないので、電気代等のランニングコストもかかってしまうという問題があった。
【0004】
さらに、高床式家屋の床下空間を利用して蓄熱層を含めた暖房装置と床面の間に密閉された空間を設けたものもあるが、空気層があるために蓄熱層の温度上昇と床面の温度上昇に時間差が生じてしまい、この時間差を丁度いい時間差にするためには蓄熱層と床面の間の空間の距離を調整しなければならず、施工に手間がかかるとともに床下空間の有効利用ができていない。また、床下と室内の一体化がなく床下空間が密閉空間であるために、空間内に熱が篭ってしまい、床面の温度が高く上部が寒いというような温度差が生じる現象が発生したり、床面が高温になってしまい床面に歪みが生じてしまうという従来技術と同様の問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ヒーターをユニット化しているために施工が簡単でかつヒータのメンテナンスが必要なく、例え埋設したヒータにトラブルが生じたとしてもヒータをユニット化しているため、トラブルが生じたヒータの特定が可能で、床下空間を利用してトラブルヒータの上部に砂・砂利等で形成された蓄熱層内に同じ型式のヒータユニットを埋設することで補修が容易にできる。また深夜電力を使用しているのでイニシャルコスト・ランニングコストがともに安くて省エネを図ることのできる安全でクリーンなものであって、床面を均一に加温する低温輻射暖房だけでなく、暖められた床面からの二次的輻射熱と通気孔を介して床下空間と室内空間を一体化することにより家屋全体を自然又は強制による対流暖房により室内空間に温度差のない人にストレスを与えない快適な暖房を提供することのできる深夜電力利用蓄熱式床暖房システムを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、熱源にはユニット化されたシーズヒータを使することで施工を容易にするとともにヒータの寿命が長く、施工後のメンテナンスが容易であり、また床下空間を利用して蓄熱層と床面の間に空間を設け、床面に床下空間と室内とを貫通する通気口を形成して床面による輻射熱による暖房と、床下空間で蓄熱層の放射熱により暖められた空気が通気孔を介して床下と室内を対流して家屋全体を暖める対流暖房の2方式の暖房方法によることを特徴とする深夜電力利用蓄熱式床下暖房システム。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0008】
【実施例】
図1〜4は本発明の一実施例を示したものである。
図1及び図2は本発明の床暖房システムの一実施形態の断面図及び暖房装置部の断面斜視図である。図1の床下空間は外壁8及び布基礎9の外側・内側は断熱材1bで覆われ、さらに土台21と布基礎9は気密パッキン22を介して固定されているため、建物内部と床下空間は断熱密封空間となっている。このように床下も含めた高断熱・高気密とした建物1階の地表部に防湿シート2、断熱材1a、蓄熱層としてコンクリート層3が積層され、該コンクリート層には発熱体であるユニット化されたシーズヒータ4が埋設され暖房装置部を構成している。この時、防湿シート2は0.1mm以上、断熱材1は30mm以上、コンクリート層は約150〜200mmの厚さとするのが好ましい。
【0009】
また、コンクリート層3上面と床面の間には床下空間を形成するとともに、床材6には、所定位置に床面を貫通してなる通気孔7が形成されている。該通気孔7には床面上部に開閉自在な蓋体を設けることも可能であり、該蓋体が室内と床下の通気を遮断することで建物内の温度を調整できるようにする。
【0010】
図3はコンクリート内に埋設するシーズヒータ4を示した図であり、図4はシーズヒータ4のヒータ部とリード線の断面図であって、直径7.5mmのステンレスパイプ10に鉄クロム線13を入れ、ステンレスパイプと鉄クロム線の間を酸化マグネシア12で充填し、ステンレスパイプの外側をポリプロピレンチューブ11で被覆してなるヒータ部14を銅線19を耐熱ビニール20で被覆してなるリード線15で複数本並列若しくは直列に接続してユニット化している。蓄熱層には複数のユニットを配置して、各ユニット又は複数のユニットからなるブロックごとに温度センサーを設置し、室内にはセンサーの温度感知により電源をON/OFFにする温度調整器を設置することで温度調整を行う構成とする。
【0011】
上記シーズヒータ4は蓄熱層であるコンクリート層3内に所定数埋込設定されており、この時、5時間通電の場合は、ヒータ部それぞれの間隔は140〜160mmとし、厚さ200mmのコンクリート層に対し底面から100〜130mm、上面から70〜100mmの位置に並列配置する。該シーズヒータ4を設置する場合には、配筋時に金属メッシュ若しくは複数本並列配置した金属棒上にシーズヒータ4を戴架固定後、コンクリートを 1 回打設により埋設する。
【0012】
本実施例おいてはシーズヒータ4は5時間通電対応のものを使用しているが、8時間通電や10時間通電対応のもの可能であり、施行場所に応じてそれぞれヒータ部の長さ、ヒータ部の本数、ヒータ部の間隔等をかえたシーズヒータユニットを使用することができる。以下の表はそれぞれ5時間通電、8時間通電のシーズヒータユニットの構成を示したものである。
【表1】
【0013】
本実施例においては蓄熱層としてコンクリート層を使用しているが、そのほかにも砂利層を蓄熱層とすることも可能であり、砂利層・コンクリート層の2層による構成も可能である。いずれの場合もコンクリート層上面から100〜120mmの位置にシーズヒータを埋設するのが好ましい。
【0014】
深夜電力の通電時間帯にシーズヒータ4に通電すると、該シーズヒータが発熱してコンクリート層を加熱して生じた熱がコンクリート層に蓄熱される。明け方には蓄熱量が所定の値に達するので通電を停止して、日中にこの蓄熱された熱の放射により暖房を行うことができる。コンクリート層から放射された熱は床面を暖めるとともに、床下空間の空気も暖め、暖められた床面の輻射熱と床下空間で暖められた空気が通気孔7を通って室内へ移動することにより室内空気の対流暖房をおこなうので、温度差のない安定した暖房が可能となる。
【0015】
グラフ1は2階建て住宅における本発明の蓄熱式床下暖房システムの床土間表面、1階室内、2階室内、外気の温度を時経的に測定した結果をグラフに表したものであって、通電時間は深夜1〜6時までである。グラフからも分るように、本発明の蓄熱式床暖房システムは、外気温に関係なく室内温度を一定保つことができる。
【グラフ1】
【0016】
表2は本発明のヒータ利用による深夜電力の料金の目安を示したものでり、表3は山形県酒田市にて実際に本発明の蓄熱式床下暖房システムを使用した場合の電気料金を調べた結果を示したものである。以下の表より、本発明の蓄熱式床下暖房システムは比較的低いランニングコストで実施できることがわかる。
【表2】
【表3】
【0017】
建物の構造によっては1階と2階の室温に温度差が生じる場合もあるが、そのような場合には、床下から2階まで直接通じる通気孔を設けて1階と床下、2階と床下の2通りの対流による暖房を行って建物全体を暖房することも可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の床暖房システムには、以下の効果がある。
a.電気式の為、燃焼をともなうシステムのように酸欠やガス中毒の心配がなく、安全かつ環境にもクリーンで、騒音もない。
b.安価な深夜電力を使用して夜間に蓄熱層に熱を蓄え、日中に蓄熱層の放射熱により床暖房を行うので、室内温度を24時間ほぼ一定に保つ全館暖房が可能となる。
c.床材に上下貫通した通気孔があるために床下と室内が一体化した空間となり、床面からの低温による輻射熱暖房だけでなく、室内の空気を自然ないし強制対流によって暖めるので、低温でかつ均一な効率の良い全館暖房が可能である。
d.熱源としてユニット式のシーズヒータを使用するので施工が容易で、しかも発熱体の寿命が長く、メンテナンスの必要がない。もし万一ヒータにトラブルが生じた場合でもメンテナンスが容易にできる。
e.低温による効率的な暖房が可能であり全館の温度差がない為に、人にストレスを与えない快適な暖房が可能である。
f.温度コントロールと床材に上下貫通した通気孔を設けることにより、床面と家屋全体の空間の温度をコントロールすることが可能である。
g.床下空間が暖かいために、床下に埋設配管された水道管等の凍結を防止する。
h.床下空間が常に乾燥しているのでシロアリ防除の薬品を使用する必要がないので人への防蟻薬品による影響がなく健康的である。
i.床下空間をそのまま利用している為、暖房機器を部屋に設置する必要がなく、有効に部屋空間を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の床下に空間を有する床暖房システムの断面図である。
【図2】熱源である床下暖房装置の断面斜視図である。
【図3】本発明のシーズヒータを示す斜視図である。
【図4】図3のシーズヒータを構成するヒータ及びリード線の断面図である。
【符号の説明】
1a 断熱材
1b 断熱材
2 防湿シート
3 コンクリート層
4 シーズヒータ
5 地表
6 床材
7 通気孔
8 外壁
9 布基礎
10 ステンレスパイプ
11 ポリプロピレン
12 酸化マグネシア
13 鉄クロム線
14 ヒータ
15 リード線
16 温度コントローラ
17 金属棒
18 温度センサー
19 銅線
20 耐熱ビニール
21 土台
22 気密パッキン
Claims (2)
- 熱損失係数が1.0〜2.5kcal/m 2 ・h・℃の高断熱・高気密住宅における布基礎部を、断熱材によって外気温の影響を遮断し十分な気密を確保しした上で、該布基礎部内の地表面上に防湿シート、断熱材、蓄熱であるコンクリート層を積層し、蓄熱層には深夜電力を通電して該蓄熱層に蓄熱する発熱体が埋設された暖房装置を形成し、蓄熱層からの放熱によって住宅内を暖める蓄熱式床下暖房システムにおいて、布基礎部と土台とを気密パッキンを介して固定してより気密を高め、ステンレスパイプに鉄クロム線を入れ、ステンレスパイプと鉄クロム線の間を酸化マグネシアで充填し、ステンレスパイプの外側をポリプロピレンチューブで被覆してなるヒータ部を、銅線を耐熱ビニールで被覆してなるリード線で複数本並列若しくは直列に接続してユニット化されたコンクリート埋設用シーズヒータユニットが、配筋時に配筋される金属棒上に戴架固定後、1回のコンクリート打設によりコンクリート層内に埋設され、該シーズヒータはユニット又は複数のユニットからなるブロックごとに温度センサーの検知により制御され、さらに床面の所定位置には室内と床下空間とを貫通する通気孔である開閉可能なスリットを形成し、蓄熱された熱の放射により床面を加温するとともに、加温された床面からの二次的輻射熱と、床下空間の加温された空気がスリットを介して室内へ自然対流する構成とすることで、家屋空間全体を24時間低温暖房可能で過乾燥がなく、気流を感じさせない快適な暖房を行うことを特徴とする蓄熱式床下暖房システム。
- 室内温度設定を18〜23℃、床面の温度設定を20〜25℃、コンクリート層の表面温度設定を23〜38℃とするために、施行する住宅の構造等に応じて、コンクリート層の厚さを150〜200mm、各ヒータの配置間隔を130〜200mm、深夜電力を通電するヒータを5時間通電用か8時間通電用からそれぞれ選択して構成される請求項1記載の蓄熱式床下暖房システム。
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