JP5650412B2 - 薪ストーブと蓄熱性基礎構造体による住宅用冷暖房 - Google Patents
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Description
寒候期を快適にする住宅の考え方は、従来の住戸内の各部屋を個別に暖房する個別暖房よりも、各部屋の仕切を少なくし住宅全体を均一に暖める全館暖房へと移行している。
また従来より石油ストーブなどの放射熱を温風に置き換えるため、様々な考案がされている。温風ファンヒーターのように直接温風を吹きだすものと、空気ダクトに温風を送風するものとがある。
特開2007ー309587号公報は、ストーブ側壁部を、水冷又は空冷により積極的に冷却して、ストーブ側壁部において温水及び温風を生成させて暖房用に利用でき、ストーブガードの取付を必要としない、暖房用兼調理用ストーブが提案されている。主にストーブでやけどをしないためストーブを温水や温風で冷すことを目的としている。
薪ストーブの煙突を2重にし、間の空気を流通させ温風を生成する試みがあるが、煙突内面の温度低下により排気ガスの温度低下による煤やタールの付着問題がある。高温の煙突は一見無駄のようであるがスムーズに排気するため必要であるため薪ストーブの煙突の熱利用は難しいのが実情である。
つまり、一台の薪ストーブだけを1階に設置して住宅全体を暖め、効率良く利用し、快適に過ごせるようにするためには解決の必要な課題がいくつかある。
また特開2006ー105470号公報は、暖炉の燃焼室2に設けた側面の金属製中空支柱より取入れファンによって床下のオンドル式床暖房坑道へ送風させる提案がある。薪ストーブは実用上、1戸の住宅に1台で運用させるため、住戸内の薪ストーブの輻射熱の届きにくいところを暖房し、気温の変化に効率よく対応し、薪ストーブの不安定な火力の変化を安定させることで薪ストーブの実用性が高められるが、前記の提案はテーブル状の暖炉で調理し、放熱される熱の一部を床下に送り床暖房として活用させる提案であり、温風を送出するだけで蓄熱効果がないため、本提案が解決しようとしている薪ストーブの運用についての課題を解決することは出来ない。
温風床暖房の主な欠点としては、床下に配設する空気ダクトの断面積が大きいため、従来の木造床組みに対応することが難しいこと。温風の欠点のひとつに熱容量が小さいことで温度の上昇が早いということがある。温度の上昇が早いことは、危険な高温状態になりやすいということでもある。また温水は100度Cを越えることはないが、温風は上限温度がないため、危険な温度になることが想定される。特に床下暖房では、可燃物が多い空間に温風を吹き込むため低温炭化火災の恐れがある。また蟻害の観点からも不安があるなど、解決の必要な課題が多い。
空気ダクト部材や送風機は安価であるため、温水方式よりも安く提供することは可能である。
我が国の住宅は、元来、木材を湿気による腐朽から守るためと、シロアリの防御のため、低温で風通しの良い床下空間を確保することが必要とされてきた。そのため冬は寒さを耐えることが必要であった。
蟻害の特徴は、わずかな隙間やひび割れからでもシロアリの侵入が認められること。木材が乾燥していても食害すること。木材を保護する薬剤の効力が10年程度であるため、 住宅の耐用年数に対して薬剤の保護は一定範囲での効果に限定されることなどがある。
シロアリは他の動物が活動しない冬も活動すると言われている。シロアリは低温の環境では活動出来ないが、床暖房により保温された住宅の床下は、シロアリが活動可能な空間を提供してしまうことになるのである。
またコンクリートで閉鎖された床下空間は、天敵のいない空間となりシロアリにとって安全な空間である。充分に換気され冬期も冷たく保つことができていても、暖かい季節であれば天敵のいない空間を通ってシロアリは建物に到達可能である。天敵のいない空間を作ることは、住宅に重大な蟻害を起こす可能性がある。
蟻害を防ぐには、床下空間と構造体を冬期の間冷たく保つことで冬期の蟻害を防止することが良い。また目視点検のしやすい床下構造とするか、その他の生き物と共生する床下空間とすることで暖かい季節の蟻害を防止することが良い。
従来の基礎形式においては、床下をコンクリートで密閉するなどしてもコンクリートの打ち継ぎ部分などの施工を確実にすることは難しいことである。
床暖房装置は建物の主要な部分である木材を含む床を暖める。薪ストーブやファンヒーターなどの直接暖房装置は室内の空気を暖めるが建物を直接暖めない。床暖房は地盤に近い部分の建物を暖めるため、建物の構成部材である木材が温かく蟻害を受けやすいという特徴が認められる。
さらにアメリカカンザイシロアリという外来種による被害も顕在化している。有効な予防策は提案されていないが、木材を暖めない構造とすることが現在採りうる最良の方法と言える。
つまり、温かい木製の床を構築してしまう床暖房装置を従来通りの床構造に設ける方法は蟻害対策が不十分である。蟻害は住まいの主要構造部分が消失することであり、充分に安全性が考慮された構造方法でなければならない。
該ユニットで薪ストーブの燃焼炉の廻りに空気を循環させても、空気は熱容量が低いため燃焼炉の熱を多く奪うことがない。そのため燃焼炉内面の温度を適温に維持しつつ、燃焼炉外面より放熱される熱のみを取りだすことに適している。燃焼炉の内面側の温度が急に下がったり、部分的に温度が低くなったりすることがないため安定した燃焼が可能となる。
ベタ基礎の蓄熱効果は主に暖房に使われるが、冷房に活用すると言うことでは結露の心配がある。また暖房時のように輻射放熱で活用すると言うことでは得られるメリットが少ないので一般的ではない。本提案では、冷房時は構造体からの輻射放熱ではなく一定時間保冷して冷風として取り出して冷房に活用することで、冷房効率を高めるメリットがある。また熱交換器を用いて熱を取り出すことで結露の発生を抑えることが出来る。
木造住宅の基礎構造体を居室の床面は暖房に活用し、居室以外の床面は冷房に活用することで、それぞれの場所で効果を得られる。木造住宅の基礎構造体をに活用することが可能となる。
無いため目視点検の必要な範囲を基礎の外周部の範囲に限定できる。基礎コンクリートは、打ち継ぎのない一体のコンクリートとすることが可能であるため、施工不良を起こしにくく防蟻安全性が高い。
調理ソケットを配設することで巡回温風の風量が減少するため、調理を行わないときは調理ソケットを外しておくか、調理ソケットを可動式とすることで温風の流通量の減少を防止する。調理を行うときは、調理ソケットをセットすることで、燃焼炉上面と薪ストーブ温風生成ユニットの上面とが熱伝導体により接続されて、調理ソケット上面にて効率良く調理が可能となる。
木造住宅の基礎構造体を冷暖房蓄熱性基礎構造体とし、薪ストーブや冷房機で該冷暖房蓄熱性基礎構造体を加熱または冷却することで、1軒の木造住宅を効率良く冷暖房できる。
薪ストーブに薪ストーブ温風生成ユニットを取り付けることで、壁面への離隔距離を少なくすることが可能となる。
温風を用いる床暖房装置は、温水式と比較すると設置スペースやダクトの取回しなどで費用が多く掛かったり、設備上必要となる場所が多くなったりするが、L字断熱基礎コンクリートとし空気ダクトを該蓄熱性基礎構造体に埋設したときには、費用や場所の課題がない。
温水管をコンクリートに埋設する方法ではコンクリートの亀裂などにより、温水管が亀裂を生じさせる恐れがあるため、温水管をコンクリートに埋設することはあまりよくない。しかし空気ダクトはコンクリートの亀裂などによる空気漏れは支障とならないため基礎コンクリートに埋込む暖房装置としては、空気ダクトが適しているのである。つまり温風は、基礎コンクリートを直接加熱すること適した熱媒体である。冷暖房蓄熱性基礎構造体を放熱体に利用することで温水式よりも安く設置可能となる。
また冷暖房蓄熱性基礎構造体を暖める暖房であるため、木材を暖めることがない。そのためシロアリ対策として有効である。
図1に、薪ストーブ2の燃焼炉の周囲に空気が流通可能な、薪ストーブ温風生成ユニット1を背面図、側面図、上面図の各図により示す。薪ストーブは燃焼炉の全周面より放熱する構造となっている。
薪ストーブ温風生成ユニット1は空気が流通する空間の高さは2から3センチメートル程度の箱体で良い。薪ストーブ温風生成ユニット1には、空気ダクト3を接続するための空気ダクト接続口4が2ヶ所あり、吸気口と排気口とに別けられる。薪ストーブ温風生成ユニット1の内部の空気が該薪ストーブの燃焼炉外周面を巡回するように隔て板20で仕切られており、吸気口と排気口に至る空気巡回経路21が燃焼炉の表面の外周面を巡回するものである。
薪ストーブ温風生成ユニットの箱体は燃焼炉の各面を覆って配設される。特に燃焼炉の上面と背面は有効である。上面については放熱量が多いため、多くの熱が得られる。背面は壁面に放熱されるため、壁面からの離隔距離を少なくできる。側面については、室内を暖める能力との兼ね合いで、必要かどうか検討すれば良い。そのため側面の薪ストーブ温風生成ユニットはオプションとして設定すれば良い。
薪ストーブの背面と上面とに覆い被せ、薪ストーブの側面については、必要に応じて追加で取り付け可能なものとする。また背面と側面との接続はアジャスト可能な接続部を設けると良い。
薪ストーブ温風生成ユニット1は、重箱状で内部に巡回経路を構成する仕切を配設し、該経路の両端に空気ダクト接続口4を配設する。薪ストーブと薪ストーブ温風生成ユニットの間には、一定の隙間が生じる。該隙間はガスケット材で塞ぐことも可能であるが、隙間を空気が流通しても支障を引き起すことは少ない。
送風機8は建物の間取りに合わせて都合の良い場所に設置する。騒音が生じやすいため、居室以外の場所に設置することが良い。そのため送風機8はスチール製空気ダクト3の経路の途中に設けることが多い。また送風機8は薪ストーブ2より離れた位置に配設することで送風機8が高温にさらされないようにする。空気ダクトに多く用いられるスチールスパイラルダクトは、不燃で熱伝導性が高く温風ダクトに適している。
送風機8により循環せしめられる空気ダクト3内の空気は薪ストーブ2の燃焼炉の周囲を巡回する薪ストーブ温風生成ユニット1を経由することで、温風となり熱移送される。温風で基礎コンクリート6を暖め、基礎コンクリート6の輻射放熱により室内を暖房する。また図3では、基礎コンクリート6内の空気ダクトは閉鎖した循環回路となっているが、空気ダクト3の一方を開放しても良い。そうすることで、経路を単純化できる。
冷房用の冷房機24を屋外に設置し、冷房ラジエーター23と送風機8を空気ダクト3の経路の途中に配設する。空気ダクト3内の空気を循環させて基礎コンクリート6を冷却する。基礎コンクリート6は、主に夜間に冷却し、昼間から夕方以降に室内を冷房するため保冷する。そのため基礎コンクリート6は断熱材で覆う。室内を冷房するためには天井裏に配設した空気ダクト3に風量ダンパー9の開閉で空気を流通させ熱交換器26により室内に冷風を供給する。
L字断熱基礎コンクリートは、スラブオングレード型の基礎コンクリート6の外周面の立上がり部分の内側に断熱材7を配設する。また基礎コンクリート6外周面の立ち上げ部底面の面にも断熱材7を外気温の伝達量の大きい範囲に埋設する。外気温の影響を受けない地盤と床が接することで地熱を活用でき、床面を安定した温度に維持できる。また、夏期の冷気供給効果を得る。
薪ストーブ2には薪ストーブ温風生成ユニット1を取り付けて温風を生成する。
基礎コンクリート6内に埋設した空気ダクト3と薪ストーブ2に配設した薪ストーブ温風生成ユニット1とを空気ダクト3で接続する。基礎コンクリート6内の空気ダクト3には送風機8を接続し空気ダクト3と薪ストーブ温風生成ユニット1内の空気を循環させる。
居室は、薪ストーブ2と基礎コンクリート6より放熱される熱により暖められる。
冷房機24は屋外に設置し、冷房ラジエータ23を冷却し、冷房ラジエーター23は空気ダクト3に接続されており、空気ダクト3内の空気を送風機8で循環させることで蓄熱体27を冷却する。基礎コンクリート6は断熱材7で覆われており、一定時間の保冷を可能にする。冷房機24は主に気温の低い夜間に作動させることで冷房効率が高められる。また深夜電力を利用することで、電気代を節約できる。
冷却した基礎コンクリート6は、室内を冷房するときには、風量ダンパー9の開閉で室内側の空気ダクト3に送風し空気ダクト3内の空気を循環させ熱交換器26より、室内に冷風を供給し室内を冷房する。
図3と図4に示すように、住宅の基礎構造体の居室部分は基礎構造体が直接輻射放熱する床暖房となっており、居室以外の部分は、冷熱蓄熱用の保温された基礎構造体としている。ベタ基礎の防蟻性や防湿性などの効果に加えて蓄熱作用を夏と冬に活用するため冷房用の保温部分と暖房用の輻射放熱部分とに分けて活用する蓄熱性基礎構造体である。
下図は調理ソケット11を取り付ける前の状態を示し、上図は調理ソケット11を取り付けた図である。
薪ストーブ2の天板に調理ソケット11を固定できるソケット口22が開けられており、該ソケット口22は薪ストーブ温風生成ユニット1の経路の途中にある。調理ソケット11は、薪ストーブ2の上面と薪ストーブ温風生成ユニット1の上面を一体化する熱伝導体である。調理ソケット11により調理器具18に薪ストーブ の熱が効率良く伝えられ、調理に都合の良いものとできる。
下図はソケット口カバー12を取り付ける前の状態を示し、上図はソケット口カバー12を取り付けた図である。
調理ソケット11は温風の経路にあり、取外し可能なものとするため、ソケット口カバー12と交換できるようにする。温風の流通量の減少を防ぐためである。
薪ストーブは火力が一定でないことが多く、設置場所によっては暖房の効果が得にくいなどの特徴があるが、温風を取り出し蓄熱構造体を加熱して暖房することで、さまざまな欠点を補うことができる。
一般的な住宅では各部屋ごとに間仕切られ、各部屋を個別に暖房する形式となっていることが多いため、暖房能力の大きい薪ストーブを導入しても効果が限定されることが多い。冷暖房蓄熱性基礎構造体の輻射放熱で暖房することで、1台の薪ストーブで住宅全体を暖房し、開放的な生活を実現できる。
暖候期には、蓄熱構造体に冷熱を蓄熱して活用する。冷熱は、気温の低い夜間に蓄熱構造体を冷却できるため、冷房の効率が良く、安価な深夜電力を利用して室内冷房に利用できる。また電力消費のピーク時に電力消費が少ないためピーク電力を下げる効果がある。つまり経済性の高い冷房装置とすることが出来る。また太陽光発電で昼間に発電した電力で蓄熱構造体に冷熱を蓄熱し、日没後に室内冷房のために利用することで、太陽光発電の利用価値を高めることが出来る。また太陽光発電では、寒冷期には蓄熱構造体を加熱し、日没後に利用しても良い。昼間に家を留守にする家庭でも太陽光発電を自家消費することが出来る。
2 薪ストーブ
3 空気ダクト
4 空気ダクト接続口
5 鉄筋
6 基礎コンクリート
7 断熱材
8 送風機
9 風量ダンパー
10 露出空気ダクト
11 調理ソケット
12 ソケット口カバー
13 住宅
14 地盤
15 埋戻し土
16 土
17 煙突
18 調理器具
19 開閉窓
20 隔て板
21 空気巡回経路
22 ソケット口
23 冷房ラジエータ
24 冷房機
25 送風口
26 熱交換機
27 蓄熱体
28 排水ドレーン
Claims (2)
- 木造住宅の密実な床下を形成するスラブオングレード型の基礎構造体であって、
該基礎構造体の立ち上げ部に断熱材を配設し、さらに該基礎構造体の底面に断熱材を敷設することで該基礎構造体にL字形状の断熱材を添設し、
既存の薪ストーブの上面、側面、背面のうちいずれか一面以上にフックで固定可能な箱体(温風生成ユニット)を前記既存の薪ストーブに固定することによって、薪ストーブの外周面と箱体の内部との間に空気巡回経路を形成した温風生成ユニット付きの薪ストーブを暖房対象室内に設置し、
空気ダクトを埋設した基礎構造体が該暖房対象室内に面し、巡回する空気ダクトの経路の途中に送風機を接続し、空気ダクトと送風機とダクト送風用薪ストーブ温風生成ユニット付きの薪ストーブを接続し、
該送風機で該空気ダクト内に温風を循環させることで該基礎構造体を加熱し、
該基礎構造体より放熱して暖房対象室を暖房する、木造住宅の低温の輻射放熱床暖房用基礎構造体。
- 既存の薪ストーブの上面、側面、背面のうちいずれか一面以上にフックで固定可能な箱体(温風生成ユニット)を前記既存の薪ストーブに固定することによって、薪ストーブの外周面と箱体の内部との間に空気巡回経路を形成した温風生成ユニット付きの薪ストーブを暖房対象室内に設置し、
空気ダクトを埋設した基礎構造体が該暖房対象室内に面し、巡回する空気ダクトの経路の途中に送風機を接続し、空気ダクトと送風機とダクト送風用薪ストーブ温風生成ユニットを接続し、
該温風生成ユニット付きの薪ストーブより該基礎構造体に埋設した空気ダクトに送風することで該基礎構造体より放熱する薪ストーブを熱源とする低温の輻射放熱床暖房と、高温の該薪ストーブの輻射放熱暖房とで暖房対象室内を暖める、薪ストーブ複合暖房システム。
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