JP2007100419A - 建築物の保温装置および保温方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】蓄熱技術を利用して建築物の暖房を補助する前記従来技術の問題点を解消し、設備が簡単で稼動コストも安くつき、保守管理の手間もかからないようにする。
【解決手段】建築物10が過剰な低温状態にならないように保温しておく方法であって、建築物10で利用する熱媒体を供給する熱媒体発生設備40で生成された熱媒体を、建築物10の床下地盤eに埋設された放熱部50に導入して、床下地盤eに蓄熱させる段階(A)と、前段階(A)で床下地盤eに蓄熱された熱を、床下地盤eから床下空間Uを経て建築物10へ放熱させて建築物10を保温する段階(B)と、熱媒体発生設備40で生成される熱媒体の放熱部50への導入を停止する段階(C)とを含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建築物の保温装置および保温方法に関し、詳しくは、寒冷期、特に酷寒期などにおいて建築物が過剰な低温状態になって、十分な暖房が行い難くなったり、暖房コストが増大したりしないように、予め建築物を保温しておく方法と、このような保温方法に用いる保温装置とを対象にしている。
我が国のように、夏の暑熱期から秋の温暖期、冬の寒冷期、酷寒期を経て、春の温暖期へと季節を繰り返し、四季の温度変化が大きな気候環境では、建築物における冷房および暖房を、それぞれの季節に合わせて適切に切り換える必要がある。
建築物の建築地域の緯度や高度、地形条件によっても異なるが、我が国の平均的な気温条件では、春および秋の温暖期は、気温が生活にとって適切な温度範囲、例えば15〜25℃程度である。暖房および冷房の何れも必要とされない生活快適温度と言える。晩秋から冬に近づくと、室内温度が10℃あるいはそれを下回るようになり、暖房が必要になる。厳冬期の夜間などは、外気温が0℃近くから−10℃にもなることもある。
建築物の暖房設備は、上記のような超低温時にも対応できるだけの暖房容量、能力を必要とされる。しかし、大容量の暖房設備を設置しておいても、短い期間の超低温状態を除く大部分の期間では、暖房設備の最大能力を発揮させることはない。過剰な暖房能力は不経済である。
そこで、ストーブや空調暖房などの基本的な暖房設備とは別に、補助的な暖房手段を組み合わせることで、暖房設備の設備コストや稼動コストを低減する技術が提案されている。
例えば、蓄熱技術がある。建築物の内部あるいは外部に蓄熱体を設け、コストの安い夜間電力などを利用して蓄熱しておく。蓄熱体に蓄熱された熱を、建築物で居住者が活動する昼間などに取り出して居住空間へ送り込む。気温がそれほど低くなければ、蓄熱体からの放熱だけで居住空間を保温して生活快適温度に維持できる。気温が超低温になっても、通常のストーブや空調暖房などと蓄熱体からの放熱とを併用して対応すれば、暖房設備の容量や能力だけで超低温時に対応できるような大容量の暖房設備は不要であり、暖房設備の容量を低く設定しておけるとされている。
特許文献1には、基礎構造で囲まれた床下区画に空胴コンクリートブロックを積み上げた蓄熱体を収容し、温冷風供給装置で供給された温冷風の温冷熱を蓄熱体に蓄熱させ、
蓄熱体に蓄熱された温冷熱を、床下区画から床部材を介して建築物の上部構造へと伝熱させる技術が示されている。
特許文献2には、建造物の地盤を掘削した空間部に、上下を断熱層で挟まれた蓄熱材の層を形成し、その上に基礎スラブを施工して構成された蓄熱槽に、太陽熱集熱器などから供給される熱を蓄熱しておき、蓄熱槽に流通させる空気に熱を取り出して暖房などに利用する技術が示されている。
特開2005−163443号公報 特開2004−183304号公報
従来における蓄熱技術では、蓄熱体に蓄熱させる熱の供給手段を、建築物の外や床下、基礎部分などに設置しておかなければならない。通常のストーブなどの暖房設備に加えて、蓄熱体用の熱供給設備を設置するのは、設備コストが増大するとともに、稼動コストも増大する。
しかも、蓄熱体に熱を供給するのは、年間のうち、冬を中心にした短い期間だけであり、それ以外の春、夏および秋の期間は、蓄熱体への熱供給設備は停止したままである。次の冬が近づいたときには、熱供給設備を再稼動させるための保守点検や管理の手間が必要とされ、非常に面倒である。
本発明の課題は、蓄熱技術を利用して建築物の暖房を補助する前記従来技術の問題点を解消し、設備が簡単で稼動コストも安くつき、保守管理の手間もかからないようにすることである。
本発明にかかる建築物の保温方法は、建築物が過剰な低温状態にならないように保温しておく方法であって、前記建築物で利用する熱媒体を供給する熱媒体発生設備で生成された熱媒体を、建築物の床下地盤に埋設された放熱部に導入して、床下地盤に蓄熱させる段階(A)と、前段階(A)で床下地盤に蓄熱された熱を、床下地盤から床下空間を経て建築物へ放熱させて建築物を保温する段階(B)と、前記熱媒体発生設備で生成される前記熱媒体の前記放熱部への導入を停止する段階(C)とを含む。
〔建築物〕
一般的な戸建て住宅や、比較的に小規模な集合住宅などに好適に採用される。大型の集合住宅や商店兼用の住宅などにも適用することができる。工場やビル、公共施設などの建築物にも利用できる。
基本的な建築物の構造は、地盤に立設される基礎構造と基礎構造の上に構築される上部構造とで構成される。
基礎構造は、下部が地盤に埋め込まれ、上部が地盤から上方に延びて、その上に上部構造を支持する。基礎構造は、通常、コンクリートを打設して構築する。鉄筋コンクリートも使用される。形鋼材や鋼管などを埋め込んで補強することもある。基礎構造の具体例として、布基礎と呼ばれる構造が知られている。通常、基礎構造は、建築物の外周形状および間取り形状に合わせて、枠状あるいは格子状に配置される。基礎構造は、少なくとも建築物の外周壁に沿って枠状に配置される。それに加えて、外周枠の内側を複数の区画に区切る格子状にも配置される。
上部構造は、基礎構造の上に、土台や根太などを介して、床部材、外壁、間仕切り壁、天井、屋根などの居住空間を構成する各部材が施工される。
基礎構造と上部構造との間に床下空間が構成される。床下空間は、周囲を基礎構造で囲まれ、上面は床構造で覆われ、底面は床下地盤で構成される。
建築物は、外壁構造や屋根構造など屋外と面する構造、基礎構造など地盤と接触する構造に、断熱層を設けておくことで、高断熱建築物を構成できる。特に、建築物の基本的な剛性や強度を負担する構造体よりも屋外側に断熱層を有する外断熱構造を採用することで、高い断熱性能を発揮できる。本発明による保温機能も有効に発揮できる。
〔熱媒体利用部〕
建築物で居住あるいは生活するときに用いる設備機器であって、熱エネルギーを利用する。熱エネルギーを供給したり移送したりする媒体が熱媒体である。
熱媒体には、温水や熱水の液体のほか、熱蒸気や加熱空気などの気体も使用できる。
基本的には、通常の建築物において、熱媒体を利用する各種の設備機器が該当する。具体例として、ストーブや空調機器がある。台所や洗面所、浴室の温水蛇口を備えた調理台や洗面器、浴槽、シャワーなどがある。熱媒体を用いる暖房設備、例えば温水床暖房設備などもある。
建築物には、上記したような熱媒体利用部が、通常は複数種類および複数個所に設置されている。
これらの熱媒体利用部で使う熱媒体は、熱媒体利用部の内部で生成させる場合もあるが、通常は、熱媒体利用部とは別に熱媒体発生設備が用いられる。
〔熱媒体発生設備〕
熱媒体利用部で必要とされる種類の熱媒体を発生させる。所定の温度および量で熱媒体を効率的に発生させることができれば、通常の建築物に設置される熱媒体発生設備が利用できる。具体的には、ガスや石炭を燃焼させるボイラー、電気ヒータ、ヒートポンプ、地熱採集装置、ソーラーパネルなど、熱エネルギーを保有する熱媒体を生成させることができる各種の装置設備が挙げられる。
熱媒体発生設備で生成された熱媒体は、熱媒体発生設備と熱媒体利用部とをつなぐ配管やホースなどの熱媒体流路を経て熱媒体利用部に送られる。熱媒体発生設備や熱媒体流路には、ポンプやコンプレッサーなどの熱媒体を圧送する装置も設けられる。
熱媒体発生設備には、熱媒体を貯留しておく熱媒体タンクを備えておくことができる。大量の熱媒体を効率的に生産して熱媒体タンクに蓄えておけば、熱媒体利用部で必要とされるときに必要な量の熱媒体を供給することができる。深夜電力などのコストの安いエネルギーを利用して熱媒体発生設備を稼動させ、生成された熱媒体をタンクに蓄えておけば、経済的である。
これらの熱媒体発生設備は、建築物に設置された熱媒体利用部に必要とされる熱媒体の温度および量に合わせて、装置容量や熱媒体の生産能力が設定されている。本発明では、熱媒体発生設備の容量や能力を、特別に増強しておく必要はない。
〔床下地盤〕
床下空間の底面を構成し、基礎構造で周囲を囲まれている。放熱部が埋設され、蓄熱機能を果たす。
放熱部が埋設される個所の床下地盤は、基本的には、建築物の周辺地盤と同じ土壌あるいは地盤構造がそのまま利用できる。基礎構造の施工時に掘り下げられた地盤の凹部に土砂を埋め戻した状態であってもよい。床下地盤を構成する地盤に蓄熱機能に優れた物質を加えておくこともできる。岩石やレンガ、コンクリートブロックなどを埋設しておくこともできる。
〔放熱部〕
床下地盤に埋設され、熱媒体発生設備で生成された熱媒体が導入される。
基本的には、熱媒体が流通する管路状をなす。放熱部を構成する材料は、内部を流通する熱媒体と、外部に存在する床下地盤との間における伝熱が効率的に果たされる伝熱性の良い材料が使用される。床下地盤に埋設された状態で長期間維持できる機械的強度や耐腐食性などに優れたものが好ましい。具体的には、通常の配管材料の中から、上記したような条件を満足できる材料を選択して使用することができる。例えば、鋼管などの金属材料が使用できる。セラミック材料や合成樹脂材料、繊維強化樹脂材料なども使用できる。複数の材料を組み合わせた複合材料も使用できる。放熱部には、伝熱性を向上させるための放熱フィンや凹凸構造を設けておくことができる。
放熱部の配置は、床下地盤との伝熱性や蓄熱機能を十分にさせるのに適していればよい。例えば、管状の放熱部を、床下地盤の一定深さのところに水平方向に延ばして設置しておけばよい。直線状のほか、折り返し線状、ジグザグ線状、蛇行線状、渦巻き線状など、基礎構造で囲まれた床下地盤のスペースを有効に利用して蓄熱機能を向上できる配置構造が採用できる。放熱部は、垂直方向に間隔をあけて複数段に配置することもできる。1本の連続管状をなしていてもよいし、分岐したり集合していたりしてもよく、並列管状であったりしてもよい。
床下地盤における放熱部の埋設深さは、放熱部から床下地盤への蓄熱機能が良好に発揮できるように設定しておく。通常、床下地盤の表面から放熱部の上端までの深さを100cm以下に設定できる。放熱部は、基礎構造の下端よりも上方に配置されているほうが、蓄熱機能が効率的に発揮でき、蓄熱の散逸が少なくなる。
放熱部と熱媒体発生設備とは、配管やホースなどの連結用流路で連結される。このような連結用の配管やホースの材料は、管状をなす放熱部と同じ材料を使用することもできるし、別の材料からなる連結用流路と放熱部とを接続しておいてもよい。連結用流路は、放熱を防止する断熱材で覆っておくことが有効である。連結用流路の材料や構造は、熱媒体発生設備と熱媒体利用部とを連結する熱媒体流路の技術が適用できる。
放熱部と熱媒体発生設備とは、熱媒体発生設備から放熱部へと熱媒体を供給する流路と、放熱部から熱媒体発生設備へと戻る流路とで、放熱部と熱媒体発生設備との間に熱媒体が循環するように連結しておくことができる。熱媒体の消費がなく、熱媒体の熱を有効に利用できる。
放熱部と熱媒体利用部とを熱媒体流路で連結しておくこともできる。この場合、放熱部から熱媒体利用部へと熱媒体が流れるようになっていてもよいし、熱媒体利用部から放熱部へと熱媒体が流れるようになっていてもよい。熱媒体利用部が、それほど高熱の熱媒体を必要としないのであれば、放熱部で放熱したあとの熱媒体でも十分に有効である。また、熱媒体利用部で熱が奪われて温度が下がった熱媒体であっても、放熱部における床下地盤への蓄熱には十分に利用できる。
〔断熱材層〕
放熱部の周囲に放熱部との間に間隔をあけて配置され、放熱部と周囲の地盤とを断熱遮蔽する。放熱部によって蓄熱された地下地盤の熱が散逸し難くなる。
断熱材層としては、通常の建築土木技術において利用されている断熱材と同様の材料や構造、施工技術が適用できる。
断熱材層の材料として、ポリスチレンやポリウレタンなどの発泡樹脂シートが使用できる。グラスウールなどの繊維材料を集積したものも使用できる。断熱材層の厚みは、十分な断熱機能が発揮できるように設定される。材質や要求性能によっても異なるが、通常、20〜100mmに設定できる。
断熱材層は、放熱部の上方すなわち床下空間側を除いて、側方および下方に設け、床下地盤の蓄熱が、周囲の地盤に逃げることを防ぐ。したがって、放熱部と断熱材層との間には、蓄熱機能を果たすために必要な量あるいは幅、厚みの床下地盤が存在している必要がある。この床下地盤の厚みを10〜100cmに設定できる。
放熱部の下方に配置される断熱材層を、床下地盤の外周を構成する基礎構造の内周端面よりも内側の全体に配置しておくことができる。放熱部の側方を囲む断熱材層を、基礎構造の内周側面あるいは外周側面に貼り付けておくことができる。断熱材層を、床下空間に露出する基礎構造の内周側面あるいは外周側面まで配置することもできる。
〔切換部〕
放熱部に導入された熱媒体を、熱媒体発生設備に戻すか、熱媒体利用部へ供給するかを切り換える。
通常の配管技術における流路の切換技術が適用できる。2方向切換弁が使用される。切り換え操作は、手動で行うものであってもよいし、電気的な指令信号に基づいて自動制御されるものであってもよい。
切換部は、放熱部から熱媒体が流出する流路に配置される。切換部から熱媒体発生設備および熱媒体利用部へと熱媒体が送られる流路も設けられる。
さらに、熱媒体発生設備あるいは熱媒体利用部から放熱部に至る熱媒体の流路を備えている場合、放熱部への熱媒体導入と導入停止とを選択的に切り換える切換弁を設けておくこともできる。
〔保温方法〕
建築物が過剰な低温状態にならないように保温しておく。本発明の方法のみで、建築物の居住空間を所望の温度まで加温して暖房できる必要はない。基本的な暖房機能は、建築物に設置される通常の暖房装置で果たし、暖房装置による暖房に付け加える補助的な暖房、あるいは、暖房装置を稼動させるときに建築物が過剰に冷却された状態になってしまわないように保温しておくものである。
<蓄熱段階(A)>
熱媒体発生設備で生成された熱媒体を、建築物の床下地盤に埋設された放熱部に導入して、床下地盤に蓄熱させる。
放熱部に導入する熱媒体は、熱媒体利用部で利用する前の熱媒体であってもよいし、熱媒体利用部で利用されたあとに残った熱媒体であってもよい。熱媒体発生設備に有する熱媒体タンクに貯留された熱媒体の一部を放熱部に送ることもできる。
放熱部への熱媒体の導入は、季節および昼夜の何れの時期でも行える。但し、目的とする建築物の保温を効率的に行える時期に設定し、それ以外の時期は、停止段階(C)に設定しておく。
蓄熱段階で蓄熱された床下地盤の温度は、建築物の周囲に存在する地盤の温度よりも高くなる。通常、床下地盤の温度が5〜20℃高くなる程度に蓄熱させる。但し、床下地盤の温度が高くなり過ぎると、建築物の居住空間が過剰に昇温されてしまうことになる。居住空間が適温よりも高い温度になるまで、床下地盤に蓄熱させる必要はない。季節によっても異なるが、通常、床下地盤の温度が10〜25℃になる程度まで蓄熱させる。好ましくは、15〜20℃である。
<放熱段階(B)>
段階(A)で床下地盤に蓄熱された熱を、床下地盤から床下空間を経て建築物へ放熱させて建築物を保温する。
床下地盤に蓄熱された熱は、床下地盤に隣接する床下空間に伝わり、床下空間から床構造を介して居住空間へと伝わる。最終的には、建築物の居住空間が保温されることになる。建築物の周囲の気温が下がって、建築物の各構造部分が冷えてきても、床下地盤から渠給される熱によって建築物が保温され、建築物が過剰に冷却されることが防止される。
放熱段階(B)では、特別な処理や操作は行わなくてもよい。段階(A)の開始と同時に段階(B)も始まることになる。但し、建築物の居住空間あるいは気温が十分に高い温度であるときには、床下地盤から居住空間への熱の伝達は実質的に無くなる。気温が高い時期は、放熱段階(B)は起こらなくてもよい。
床下地盤の放熱によって保温される建築物あるいは居住空間の温度は、気温および居住空間における暖房の有無などで変わる。例えば、居住空間の温度が10℃よりも下がらないように保温しておくことが有効である。好ましくは、居住空間の温度が15℃よりも下がらないようにする。
<停止段階(C)>
熱媒体発生設備で生成される熱媒体の放熱部への導入を停止する。
放熱部から床下地盤への伝熱および蓄熱は無くなる。床下地盤から床下空間および建築物の上部構造への放熱もなくなる。
熱媒体発生設備と放熱部とを連結する流路を遮断すればよい。熱媒体利用部から放熱部へと熱媒体を供給している場合は、その部分の流路を遮断する。放熱部から熱媒体利用部へ熱媒体を供給している場合は、放熱部を介さず熱媒体発生設備から熱媒体利用部へと直接に熱媒体が供給されるように流路を切り換えればよい。
この停止段階(C)では、床下地盤から床下空間、さらには居住空間を含む建築物の温度は、気温と建築物に備える冷暖房装置で制御される。保温機能は働かない。但し、床下地盤に蓄熱されている熱が、徐々に床下空間から上方に放熱される作用が続くことはある。また、蓄熱状態の床下地盤は、建築物の周囲の地盤などとの間における伝熱によって、徐々に周囲の地盤との温度差が少なくなっていく。床下地盤と建築物の周辺地盤との温度差がなくなれば、床下地盤の蓄熱はない状態である。
<各段階の切り換え>
前記した蓄熱段階(A)、放熱段階(B)および停止段階(C)を適切に切り換えることで、年間を通じ、季節の変化に合わせて、建築物および居住空間を適切な温度環境に維持することができる。
このような切り換え操作は、特定の日時に行なうように年間スケジュールを管理したり自動制御したりすることもできる。但し、年によって地域によって気候条件は変わるので、建築物が設置された地域の気温や地盤温度の変化に合わせて切り換えることが有効である。
そのために、建築物の外壁や近傍の屋外に温度センサを設置して、気温変化を継続的に検知しておくことができる。建築物の居住空間に温度センサを設置しておいて、室内温度と外気温およびその差をもとにして、前記切り換え操作を行うこともできる。建築物の周囲など複数個所に温度センサを設置して、それらの測定値を演算処理することで、より適切な切り換え操作を行うこともできる。蓄熱を行なう床下地盤の温度や建築物周辺の地盤温度を検知しておくことも有効である。
複数個所あるいは複数種類の温度を、コンピュータなどに組み込まれたプログラムにしたがって演算処理して、適切な切り換え制御を行なうこともできる。
<床下地盤温度>
床下地盤の温度を基準にして、前記段階(A)〜(C)の切り換えを行なうことができる。
床下地盤の温度を継続的に検知する。具体的には、温度センサを床下地盤に埋設しておくことができる。床下地盤の複数個所に温度センサを埋設しておき、複数の温度測定値を平均したり荷重平均したりして、基準となる温度を求めることもできる。
床下地盤の温度が規定の下限値を超える温度から下限値以下に下がると、蓄熱段階(A)を開始する。夏から秋を経て冬に近づくにつれて、気温が下がり、建築物の周辺地盤および床下地盤の温度が下がる。床下地盤の温度が下がり過ぎない前に、床下地盤への蓄熱を開始する。前記規定の下限値としては、地域によっても異なるが、例えば15℃に設定できる。
蓄熱段階(A)を開始すれば、必然的に、放熱段階(B)も開始される。但し、建築物および居住空間の室温はまだ十分に高いので、床下地盤から建築物および居住空間への伝熱は実質的にはないか極めて少ない状態である。気温が下がってくるにつれて、床下地盤から建築物および居住空間への伝熱量が増えるので、建築物および居住空間の温度が大きく下がることがない。放熱部への熱媒体の導入を制御して、床下地盤の温度が前記規定の下限値から大きく下がらず、下限値を大きく超えることもないように調整することが望ましい。例えば、床下地盤の温度が15〜30℃の範囲に収まるようにする。
秋から冬の初めであれば、床下地盤の放熱のみで建築物および居住空間を、生活にとって快適な温度範囲に保温することができる。真冬の酷寒期には、建築物に備えた通常の暖房設備を稼動させることで、床下地盤からの放熱とともに、居住空間を適温に維持できる。暖房設備の暖房強度を弱くしたり暖房設備の容量が小さかったりしても、十分に対応することができる。就寝時に暖房を止めておいても、床下地盤からの放熱が継続するので、建築物および居住空間が極端に冷えてしまうことがない。朝になって暖房を入れれば、直ぐに昇温して適温に戻すことができる。暖房設備の稼動コストが大幅に節約できる。
季節が、冬から酷寒期を経て春になるまで、蓄熱段階(A)および放熱段階(B)が続けられる。そして、床下地盤の温度が規定の上限値を超えると、前記した停止段階(C)に移行する。気温が上昇すれば建築物を保温する必要がなくなるので、床下地盤への蓄熱を止める。規定の上限値としては、例えば、35℃に設定できる。
上記のような制御を行なえば、床下地盤の温度は、年間を通じて、規定の上下限値範囲内に維持される。床下地盤からの放熱によって保温される建築物の温度も、一定の範囲内に維持される。
<気温>
建築物の周辺における気温を基準にして、前記段階(A)〜(C)の切り換えを行なうこともできる。
切り換え操作の基準となる温度条件として、生活適温範囲がある。生活適温範囲は、建築物の居住空間で居住者が生活するのに適した温度の範囲を意味する。建築物を建設する地域や居住の仕方、居住者の間隔によっても、生活適温範囲の上下限値は変わる。例えば、我が国の平均的な気候条件では、生活適温範囲を15〜25℃に設定できる。また、10〜20℃、18±2℃、20〜30℃などに設定することもできる。生活適温範囲の上下限値は、冬から春、夏へと向かう場合と、夏から秋、冬に向かう場合とでは、少し違ってくることもある。
気温が生活適温範囲を超える温度から生活適温範囲まで下がった時期に、段階(A)を開始する。真夏は生活適温範囲の上限温度を超えており、通常は、冷房が必要とされる。冷房が稼動していれば、居住空間は生活適温範囲内になっている場合もあるが、建築物の外側の気温は、生活適温範囲を超える温度である。真夏を過ぎて秋になると、気温は生活適温範囲まで下がる。冷房は不要であり、居住空間に外気を取り込んで、快適に生活することができる。建築物の周囲の地盤は日射によって温められており、床下地盤も周辺地盤と同程度の温度になっている。秋が深まるにつれ、気温は下がり、建築物および床下地盤の温度は下がってくる。
この時期から、蓄熱段階(A)を開始することができる。床下地盤の温度が下がり過ぎないように蓄熱させる。具体的には、蓄熱段階(A)を開始する気温を、15〜20℃に設定できる。
床下地盤の温度がそれほど低くなっていない段階では、放熱部に導入する熱媒体の温度や量を抑えて、床下地盤に供給する熱量を少なくしておき、建築物の周辺地盤が冷たくなる晩秋から冬の初めにかけて、床下地盤に供給する熱量すなわち熱媒体の温度や量を増やしていくことができる。建築物の居住空間が生活適温範囲を超えてしまうほど、床下地盤に蓄熱させるのは好ましくない。床下地盤の過剰な冷却が抑えられる程度に蓄熱させれば十分である。放熱部に導入する熱量は少ないので、熱媒体発生設備の負荷が増大することはない。通常、熱媒体発生設備は最大利用時にも対応できる熱媒体発生能力を有しているので、床下地盤の放熱部に熱媒体の一部が使われても、熱媒体発生設備の余剰能力を利用するだけで、過大な負荷はかからない。
蓄熱段階(A)を開始すれば、放熱段階(B)も始まる。但し、建築物の温度が高い間は、実質的に床下地盤から建築物への放熱はほとんどない。
季節が秋から冬の寒冷期に移り、さらに真冬の酷寒期になると、気温は生活適温範囲よりも低くなる。この時期は、蓄熱段階(A)と放熱段階(B)とを継続して行う。気温が下がるにつれて、建築物の熱が奪われ冷たくなる。それに伴って、床下地盤から建築物への伝熱量が増える。床下地盤および建築物が過剰に冷却されないように、放熱部に導入する熱媒体の熱量を増やすことができる。床下地盤が、少なくとも、建築物周辺の地盤温度よりも高い温度に維持されるようにしておく。
前記したように、気温が生活適温範囲にあるうちから、蓄熱段階(A)を開始して、床下地盤に十分に蓄熱し、建築物の温度が大きく下がらないように保温しているので、気温が低くなっても、建築物自体に蓄えられた熱および床下地盤から逐次供給される熱によって、建築物の温度は下がり難くなっている。特に、急激に気温が下がるような気候の急変があっても、建築物の温度が急激に下がることはない。
冬の初めであれば、床下地盤からの放熱のみで、建築物の居住空間を生活適温範囲に維持することもできる。冬が進んで、床下地盤からの放熱のみでは、生活適温範囲を下回るようになれば、建築物に備えた通常の暖房装置を稼動させる。このとき、建築物の温度が過剰に下がっていないので、暖房装置の暖房強度を弱くしていても、十分に対応することができる。建築物の壁構造や床構造などが、外界の気温と同じ程度まで冷えてしまっていると、暖房装置を稼動しても居住空間の温度はなかなか上昇しない。暖房強度を強くしたり急速暖房に設定したりするなどのエネルギーコストが高くつく運転状態にしなければならない。急速暖房が可能なほど大容量で大能力の暖房装置が必要になる。しかし、予め床下地盤から建築物が適切に保温されていれば、比較的に少容量の暖房装置を弱く稼動させるだけでよく、暖房コストの大幅な低減が実現できる。暖房設備にかかる設備コストも削減できる。
なお、酷寒期など気温が非常に下がったときには、暖房装置を十分に働かせる必要が生じることもある。しかし、前記したように建築物が保温されている状態であれば、暖房装置によって供給すべき熱量あるいは稼動コストは少なくて済む。
季節が酷寒期を過ぎて、気温が上昇し始めるにつれて、暖房装置の負荷は減る。床下地盤の放熱部に導入する熱媒体の熱量も少なくできる。暖房装置を止めて、床下地盤から建築物への放熱だけで、居住空間を快適な温度に維持することも可能になる。
季節が春になり、気温が生活適温範囲を超えれば、蓄熱段階(A)を終了して、停止段階(C)に移る。放熱部に熱媒体を導入しなくなる。この段階までに床下地盤に蓄熱された熱があるので、床下地盤の温度は、周辺地盤の温度よりも高い状態である。建築物も保温された状態を維持している。建築物の居住空間は快適に生活できる状態である。
この状態で、季節が春から初夏の温暖期、初夏から真夏の暑熱期、真夏を過ぎて秋になるまでの期間を過ごせばよい。夏に生活適温範囲を超えれば、前記したように冷房を入れることになる。
本発明にかかる建築物の保温方法では、建築物での生活に利用する温水などの熱媒体を供給する熱媒体発生設備から、建築物の床下地盤の放熱部に熱媒体を導入して、床下地盤に蓄熱させておく。床下地盤の蓄熱を床下空間から建築物に放熱させて建築物を保温することができる。この保温状態を、建築物に暖房が必要になる前の段階から行っておくことができる。熱媒体発生設備で生成される熱媒体を床下地盤の蓄熱に流用するので、特別な蓄熱用の熱源が不要であり、設備コストが削減でき、保守管理の手間もかからない。
その結果、季節が秋から冬の寒冷期、酷寒期になっても、建築物が過剰な低温状態になることがない。気温がそれほど低くない時期であれば、床下地盤からの放熱だけで、建築物の居住空間を生活に快適な温度に維持できる。気温が下がってきても、建築物に備えた通常の暖房設備を稼動させれば、居住空間を生活快適温度に維持できるとともに、床下地盤からの放熱が加わることで、暖房設備の負荷が軽減される。暖房設備の稼動に要する電気代などのコストが低減される。暖房設備の容量を小さくできるので、暖房設備の設備コストも削減できる。夜間などに暖房設備を止めても、床下地盤からの放熱によって、建築物の温度が急激に下がることがなく、次の朝に暖房設備を稼動させれば、居住空間は直ぐに適切な温度まで上昇する。
図1に示す実施形態は、建築物における保温装置の模式的な配置構造を示す。
〔建築物〕
建築物10は、一般的な戸建て住宅を想定している。地盤Eに一部が埋め込まれて構築されたコンクリート製の布基礎20の上に、床構造12、外壁構造14、屋根構造16などで構成される上部構造が構築されている。下面が床構造12、側面が外壁構造14、上面が屋根構造16で囲まれた居住空間Rを有する。周囲を布基礎20で囲まれ、上面が床12、下面が床下地盤eで構成された床下空間Uを有する。
布基礎20の外周面には断熱材層34が設けられており、布基礎20および床下空間Uを、建築物10の外側の外気や地盤Eに対して断熱している。図示を省略しているが、建築物10の外壁構造14や屋根構造16にも、断熱材を組み込んで、高断熱構造にしておく。特に、外壁構造14などの屋外側に断熱層を設けた、外断熱構造を採用しておくことで、本発明の効果がより高まる。
建築物10の外には温水給湯装置40が設置されている。温水給湯装置40は、電力で稼動され、ヒートポンプ方式で熱を生成して水道水を加熱し、生成した温水を温水タンクに蓄えておき、必要に応じて、温水を供給する。通常、コストの安い夜間電力で稼動させて、温水タンクに十分な量の温水を蓄えておき、昼間には蓄えた温水を使用することになる。
温水給湯装置40から引き出された温水供給配管60が、居住空間Rに設置された浴槽設備70などの温水利用部へと延びており、必要なときに温水を自由に使うことができる。温水利用部70は、浴槽以外にも、台所や洗面所など建築物の各所に設けられる。
〔保温装置〕
床下空間Uの下方で周囲を布基礎20で囲まれた床下地盤eに、放熱部50が埋設されている。放熱部50は、熱伝導性の良い金属パイプなどでU字管状に構成されていたり、外周に放熱フィンが取り付けられていたりして、放熱部50の内部と外側の床下地盤eとの間で効率的に熱交換が行われる。図1では、放熱部50が熱交換機能を有することを模式的に示すためにジグザグ状に表示しているが、直管状であっても構わない。
放熱部50と温水給湯装置40の温水タンクとは、配管52で連結されている。温水給湯装置40に蓄えられた温水が、配管52を通じて放熱部50に送られ、放熱部50を通過した温水が、再び配管52を経て温水給湯装置40へと戻される。温水が、温水給湯装置40と放熱部50との間を循環することになる。
放熱部50から温水給湯装置40へと温水が戻る配管52の途中には、切換弁54が設けられ、居住空間R側に延びる配管56が設けられている。図示を省略したが、配管56は居住空間Rに設置された温水利用装置に接続されている。切換弁54を切換操作すれば、放熱部50を出た温水を、温水給湯装置40に戻さずに、居住空間Rの温水利用装置に供給することができる。
放熱部50よりも下方の床下地盤eには、布基礎20の内側を塞いで断熱材層32が埋め込まれている。断熱材層32は、発泡ポリスチレンなどの断熱性に優れたシート材料からなる。布基礎20の構築作業で地盤Eを掘り下げたときに、布基礎20の内側で地盤Eの表面を覆うようにして断熱材層32を配置し、そのあとで、布基礎20の内側空間に土砂などを埋め戻すことで、断熱材層32が設置される。断熱材層32の上に土砂を覆い、その上に放熱部50も設置したあと、地表面まで土砂などを埋め戻して、床下地盤eが設けられる。
床下空間Uおよび床下地盤eは、底面には断熱材層32、周囲は布基礎20および断熱材層34で囲まれた状態であり、外界との間が良好に断熱隔離された状態である。
床下地盤eには温度センサ58が埋め込まれており、床下地盤eの温度を検知する。図示を省略しているが、温度センサ58は、無線あるいは有線の情報伝達手段で、コンピュータなどを組み込んだ制御装置に温度情報を送り、制御装置で温度情報を演算処理して、放熱部50への熱媒体の導入や切換弁54の作動など、保温装置に関わる機器の動作を制御することができる。さらに、温度センサは、建築物の外側に設置して外気温を検知するものや、床下空間U、居住空間Rなど、保温装置の制御に有用な個所の温度を検知できるところにも設置しておくことができる。
<蓄熱および放熱機能>
放熱部50を温水が通過すると、温水の熱が放熱部50を介して床下地盤eに伝達される。床下地盤eを構成する土や岩石などに熱が蓄積される。床下地盤eが蓄熱体として機能する。
床下地盤eに蓄熱された熱は、周囲に放熱されるが、床下地盤eの下面では断熱材層32で遮断され、床下地盤eの周囲では布基礎20および断熱材層34で遮断されているので、上方の床下空間Uへと効率的に放熱される。床下空間Uから床構造12を介して居住空間Rへと放熱される。床構造12および居住空間Rが保温される。布基礎20から外壁構造14、あるいは、床構造12から外壁構造14などに熱が伝わって、外壁構造14を含む建築物10の構造部材そのものを保温する機能も生じる。建築物10が外断熱式の高断熱構造を有していれば、外断熱層よりも内側の建築物10の全体が効果的に保温され、外界に熱が逃げ難い。
〔保温方法〕
季節あるいは外気温の変化に合わせて、保温装置の作動を制御する。
1年を、春に相当する第1の温暖期、夏に相当する暑熱期、秋に相当する第2の温暖期、冬に相当する寒冷期に分ける。温暖期は、特に冷房および暖房がなくても快適に生活できる温度環境である。暑熱期は冷房が必要とされ、寒冷期は暖房が必要とされる温度環境である。具体的な月や日数は、地方によって異なる。日中の最高気温によって、15〜25℃の期間を第1、第2の温暖期、25℃を超える期間を暑熱期、15℃を下回る期間を寒冷期とすることができる。
<蓄熱段階(A):寒冷期に入る前の温暖期から寒冷期>
秋から冬にかけての期間に相当する。居住空間Rは、冷房がなくても暑くはない。冬になる前であれば、特に暖房の必要もなく、生活に適した温度環境である。床下地盤eの温度は、夏の間に蓄えられた熱によって、十分に高い状態である。
気温、あるいは、床下地盤eの温度、居住空間Rの温度が、あまり下がらないうちに、蓄熱段階を開始する。通常の暖房設備では、居住者が寒いと感じてから稼動させるのが普通であるが、本発明では、暖房が必要とされるまでの時期に、蓄熱段階を開始する。
温水給湯装置40は、年間を通じて稼動しているが、この温水給湯装置40で生成された温水の一部を、配管52を通じて放熱部50に循環させる。放熱部50から床下地盤eに蓄熱される。放熱部50から温水給湯装置40に戻った温水は、放熱部50で熱を奪われて温度が下がっているが、温水給湯装置40で再び加熱されるので、温水給湯装置40から温水利用部70に供給される温水の温度は変わらず、温水利用部70の機能が損なわれることはない。
床下地盤eに蓄熱された熱は、床下地盤eの温度を維持するとともに、徐々に、床下空間Uから居住空間Rへと伝達されて放熱される。但し、寒冷期に入る前の温暖期では、建築物10および居住空間Rの温度が十分に高いので、床下地盤eの温度との間に大きな違いはなく、居住空間Rへと放熱されて散逸する熱エネルギーはそれほど多くない。また、床下地盤eから居住空間Rへの放熱があっても、居住空間Rが暑くなるほどのことはない。
放熱部50への温水循環量や時間設定を調整して蓄熱量と放熱量とのバランスを取り、床下地盤eの温度が、適切な温度範囲に収まるように制御する。例えば、初秋の時期には、蓄熱がなくても、床下地盤eの温度は高いので、放熱部50への温水の導入はほとんどなくてもよい。秋が深まり外気温および地盤Eの温度が下がるにつれて、放熱部50への温水の導入を多くして床下地盤eに十分な蓄熱を行っておくことが望ましい。
<段階(B):寒冷期>
晩秋から冬に至る寒冷期になると、外気温が低くなり、居住空間Rの室内温度は生活適温よりも低い温度に下がってくる。
床下地盤eに蓄熱された熱が、床下地盤eから床下空間U、床構造12を経て、居住空間Rへと供給される。床構造12から居住空間Rを保温することができる。基礎構造20、外壁構造14を伝達して建築物10の全体を保温することにもなる。
冬の初めなど、外気温がそれほど低くなければ、床下地盤eから居住空間Rへの伝熱だけで、居住空間Rを適温に維持することもできる。
外気温が下がってくると、床下地盤eからの伝熱だけでは、居住空間Rを適温に維持できなくなる。そのときは、居住空間Rで、ストーブや空調暖房などの通常の暖房設備を稼動させる。床下地盤eからの伝熱が加わるので、暖房設備の暖房能力はそれほど大きくなくてもよい。暖房設備に消費する電力や灯油などのエネルギーコストも少なくて済む。
特に、通常の暖房設備は、居住者の就寝時には暖房を止めることがある。その場合でも、床下地盤eから床構造12および居住空間Rへの熱供給は維持されるので、暖房を止めた居住空間Rが、極端に冷えてしまうことがない。次の日の朝に暖房設備を稼動させれば、短い時間、少ないエネルギー消費で、居住空間Rを適温に戻すことができる。
なお、この段階(B)でも、前記した段階(A)における放熱部50への温水の導入による床下地盤eへの蓄熱は継続しておくことができる。段階(A)で、床下地盤eが十分に蓄熱されていれば、居住空間Rへの放熱によって失われた熱量を補充できる程度に、短い時間あるいは少ない量で温水の導入を行うだけでよい。
<段階(C):寒冷期のあとの温暖期とそれに続く暑熱期>
真冬の酷寒期を過ぎて、外気温が上昇してくる晩冬から春、真夏に相当する。春になれば、気温は生活適温になり、居住空間Rは、暖房がなくても寒くはない。
居住空間Rの暖房あるいは保温は不要になり、床下地盤eから居住空間Rへの熱の供給は不要になる。放熱部50への温水の導入を停止すればよい。
なお、酷寒期を過ぎて、外気温が上昇し始めるにつれて、放熱部50への温水の導入を少なくしていけばよい。床下地盤eの蓄熱量は、放熱部50への温水の導入が少なくなるにつれて減少していく。建築物10の周囲の地盤Eが日射などで昇温し、床下地盤eの温度との差が実質的に無くなれば、床下地盤eへの蓄熱は必要なく、放熱部50への温水の導入を完全に停止すればよい。温水給湯装置40の温水は、必要なときに、本来の温水利用部60のみに供給すればよい。
さらに、春から夏に向かって外気温が上昇し、居住空間Rで冷房が必要になる期間は、勿論、放熱部50への温水導入、床下地盤eへの蓄熱は、却って有害である。
暑熱期を過ぎて、外気温が生活快適温度まで下がってくると、前記した段階(A)から再び繰り返すことになる。
本発明にかかる建築物の保温方法は、例えば、戸建て住宅における保温あるいは暖房補助に利用できる。ストーブや空調暖房などの設備を容量削減したり簡略化したり稼動を少なくしたりすることで、建築物の暖房コストを大幅に削減できるとともに、年間を通じて快適な温度環境を維持することができる。
本発明の実施形態を表す建築物および保温装置の配置構造図。
符号の説明
10 建築物
12 床構造
20 布基礎
32、34 断熱材層
40 温水給湯装置
50 放熱部
52、56 配管
54 切換弁
60 温水供給配管
70 温水利用部
E 地盤
e 床下地盤
R 居住空間
U 床下空間

Claims (7)

  1. 建築物が過剰な低温状態にならないように保温しておく方法であって、
    前記建築物で利用する熱媒体を供給する熱媒体発生設備で生成された熱媒体を、建築物の床下地盤に埋設された放熱部に導入して、床下地盤に蓄熱させる段階(A)と、
    前段階(A)で床下地盤に蓄熱された熱を、床下地盤から床下空間を経て建築物へ放熱させて建築物を保温する段階(B)と、
    前記熱媒体発生設備で生成される前記熱媒体の前記放熱部への導入を停止する段階(C)と
    を含む建築物の保温方法。
  2. 前記段階(A)において、前記熱媒体発生設備として温水給湯器を用い、前記熱媒体として温水を用いる
    請求項1に記載の建築物の保温方法。
  3. 前記段階(A)において、前記放熱部で床下地盤に蓄熱させたあとの熱媒体を、放熱部から前記熱媒体発生設備に戻す
    請求項1または2に記載の建築物の保温方法。
  4. 前記段階(A)において、前記放熱部で床下地盤に蓄熱させたあとの熱媒体を、前記建築物の熱媒体利用部へと供給する
    請求項1〜3の何れかに記載の建築物の保温方法。
  5. 前記床下地盤の温度を継続的に検知し、
    前記床下地盤の温度が規定の下限値を超える温度から下限値以下に下がると、前記段階(A)および段階(B)を開始し、
    前記段階(A)および段階(B)を実行中、前記床下地盤の温度が規定の上限値を超えると、前記段階(C)に移行する
    請求項1〜4の何れかに記載の建築物の保温方法。
  6. 建築物が過剰な低温状態にならないように保温しておく装置であって、
    前記建築物に設けられ、建築物で利用する熱媒体を供給する熱媒体発生設備と、
    前記建築物に設けられ、前記熱媒体発生設備から供給された熱媒体を利用する熱媒体利用部と、
    前記建築物の床下地盤に埋設され、前記熱媒体発生設備からの熱媒体が導入自在な放熱部と、
    前記放熱部の周囲に放熱部との間に間隔をあけて配置され、放熱部と周囲の地盤とを断熱遮蔽する断熱材層と、
    前記床下地盤の温度を検知する温度センサと
    を備える建築物の保温装置。
  7. 前記放熱部に導入された熱媒体を、前記熱媒体発生設備に戻すか、前記熱媒体利用部へ供給するかを切り換える切換部をさらに備える
    請求項6に記載の建築物の保温装置。
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