JP3548492B2 - 排水の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排水を浄化処理する方法に関するものである。詳細には、有機および/または無機の被酸化性物質を含有する排水を、固体触媒を用いて酸素含有ガスの供給下で湿式酸化処理する方法に関し、殊に触媒保護処理を適宜実施することにより、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に触媒活性が低下することを抑制し、長期間安定的に排水を処理することのできる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機や無機の被酸化性物質を含有する排水を処理する方法としては、例えば生物学的処理法や湿式酸化法などが知られている。このうち生物学的処理法は、排水中の被酸化性物質を分解するのに長時間を要し、しかも低濃度のものしか処理できないので、排水が高濃度の被酸化性物質を含む場合、適切な濃度に希釈する必要があり、これらの為に処理施設の設備面積が広大になるという欠点を有する。また、使用する微生物は気温等の影響を大きく受けるため、安定した運転を続けることは困難であった。
【0003】
一方、湿式酸化法は、高温・高圧下、酸素の存在下で排水を処理し、排水中の被酸化性物質を酸化および/または分解処理(以下、「酸化・分解処理」と略記することもある)する方法である。この方法において、反応速度を速め且つ反応条件を緩和する手段として、例えば酸化物を用いた触媒やこれら酸化物と貴金属元素等を組み合わせた触媒を使用する触媒湿式酸化法等が提案されている。
【0004】
しかしながら、この方法で排水中に含有する種々の被酸化性物質を酸化・分解処理して排水を浄化するには、170℃以上の処理温度で処理する必要があり、このため処理圧力も1MPa(Gauge)を越える圧力が必要であることが多かった。例えば、特開平11−347574号には、チタニアに白金を担持した触媒を用い、170℃の処理温度下で酢酸を湿式酸化処理する方法が記載されているが、この技術では依然として比較的高温の処理条件が必要であり、更に170℃未満の低温・低圧条件で高度処理が可能な排水の処理方法の開発が望まれている。
【0005】
こうしたことから本発明者らも、新規触媒および新規処理方法について従来から検討してきた。その結果、より反応条件を緩和できる手段の1つとして、活性炭を含有した固体触媒を用いた場合には、170℃未満の低温・低圧の処理条件下で、有機や無機の被酸化性物質に対して特異的に高活性であることを確認できた。
【0006】
ところで、活性炭を含有した固体触媒を用いた場合には、従来の湿式酸化条件下では活性炭自身が燃焼するという問題が有り、長期間安定的に活性炭を湿式酸化用触媒として使用することは不可能であった。そこで本発明者らは、活性炭を含有する固体触媒を用いて処理した後の排ガス中の酸素濃度を0〜5%に維持することで活性炭自身の燃焼を抑制し、効率良く排水を処理できることを見出し、その技術的意義が認められたので先に出願している(特願平12−5198号)。
【0007】
こうした技術の開発によって、有機および/または無機の被酸化性物質を含有する排水を低温・低圧条件下でも高度に処理することが可能となった。しかしながら、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際、従来の触媒系と同じように、酸化雰囲気下で実施すると、活性炭自身の燃焼が生じやすくなり、触媒活性の低下することがあった。
【0008】
湿式酸化処理では、排水を加温すると共に、排水が液相を保持するように加圧して処理することが多い。こうしたことから、装置を立ち上げる際などには装置内の圧力を維持するのに、被酸化性物質の存在しない状態でも酸素含有ガスを供給するのが一般的である。こうした状況に起因して、排水処理をまだ開始してない装置の立ち上げの際や、排水の供給を停止して装置を停止している際に、活性炭を含む触媒における活性の劣化を引き起こすことになっている。このため、装置を立ち上げる際および/または装置を停止する際に、装置内に酸素を含有しないガス、例えば窒素ガスなどを供給する方法もあるが、コスト的な問題や操作の煩雑さから好ましいものではなかった。また酸素含有ガスを供給しないときにおいても、装置内に残存する酸素や触媒に吸着している酸素のために触媒活性が低下することがあった。
【0009】
従来、固体触媒を用いた湿式酸化処理装置の始動もしくは停止に関する技術としては、例えば特開平4−300696号には、スタートアップ時の予熱に要する機器を省略または簡略化し、しかも速やかに酸化反応を始められるようにする技術や、装置停止の際にも排水を高度処理する技術については存在している。しかし、触媒の活性低下が生じないようにする技術については、これまで提案されていないのが実状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、有機および/または無機の被酸化性物質を含有する排水を、比較的低温・低圧である170℃未満の処理温度、該排水が液相を保持する圧力下で、活性炭を含有する固体触媒を用いて排水を処理するに当たり、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、活性炭を含有する固体触媒の活性劣化を抑制することのできる排水の処理方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の排水の処理方法とは、排水中に含まれる有機および/または無機の被酸化性物質を、触媒を用いて酸化および/または酸化分解処理する排水の処理方法において、50℃以上170℃未満の処理温度、該排水が液相を保持する圧力下で、酸素含有ガスを供給して活性炭を含有する固体触媒を用いて排水を処理すると共に、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、易分解性の被酸化性物質を含有する触媒保護液を固体触媒層に供給して操業する点に要旨を有するものである。
【0012】
本発明方法を実施するに当たり、前記触媒保護液が触媒層出口で残留するようにして操業することが好ましい。また触媒保護液を供給するときの温度は、排水処理温度よりも低い温度であることが好ましい。更に、本発明で用いる触媒保護液としては、アルコール類を含有する液が挙げられる。また、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、触媒層を通過した排気ガス中の酸素濃度が0〜5vol%の範囲に維持して操業することが好ましい。
【0013】
本発明方法では、触媒保護液を触媒層に供給する際に、酸素含有ガスもしくは酸素非含有ガスを供給し、これら供給ガス中の酸素量が、[供給ガス中の酸素量]/[触媒保護液の処理効率が最大となるときの触媒保護液の酸素消費量]=0〜1.3の範囲となるように設定することが望ましい。また本発明では、前記固体触媒を充填した触媒層における気液の流通方法が、気液下向並流であることが望ましい。
【0014】
尚、本発明で用いる固体触媒は、基本的に活性炭を含有するものであるが、更にPt,Pd,Rh,Ru,Ir,AgおよびAuよりなる群から選択される1種以上の元素を含有するものであることが望ましい。また、本発明を実施するに当たり、前記酸素含有ガスは、液の流れ方向において、触媒層の下流側よりガスを供給し、装置内の圧力を維持するように圧力を制御することが好ましい実施形態として挙げられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、有機および/または無機の被酸化性物質を含有する排水を、比較的低温・低圧の条件下で、活性炭を含有する固体触媒を用いて排水を処理するに当たり、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、活性炭を含有する固体触媒の活性劣化を抑制することのできる方法について種々検討を重ねた。その結果、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、易分解性の被酸化性物質を含有する触媒保護液を触媒層に供給して操業すれば、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。また、より効果的には、易分解性の被酸化性物質を含有する触媒保護液が触媒層出口で残留するようにして操業すれば良いことも見出した。
【0016】
本発明では、易分解性の被酸化性物質を含有する触媒保護液を固体触媒層に供給することが必要である。またより効果的には、触媒層出口において触媒保護液が残留するようにすることである。触媒層内に気相部の酸素や触媒に吸着した酸素が存在する場合、触媒保護液中の易分解性の被酸化性物質は、低温から酸化・分解処理されるため、触媒層内に存在する酸素は反応に使用され、触媒層は酸素不足状態になる。従って、触媒の燃焼も生じにくく、触媒の活性低下を抑制できる。また、触媒層内に触媒保護液が存在する場合、活性炭を含有する触媒の熱劣化等も抑制できるものと考えられる。更に、装置を立ち上げる際の昇温後、触媒保護液から処理しようとする排水に切り替えた場合、触媒層に触媒保護液が残留していると、触媒の初期反応が起こりやすく、スムーズに通常の排水処理が実施できる。
【0017】
しかしながら、触媒保護液がない状態であると、余剰酸素により触媒の燃焼が生じやすくなり、スムーズに通常の排水処理に移行でき難くなる。また、装置を停止する際、排水から触媒保護液に切り替えた場合には、排水を最後まで高度に浄化でき、排水中の有害物質を排出し難くできる。更に、触媒保護液に切り替えなかった場合には、触媒の活性が低下し、排水を最後まで高度に浄化できないことや、次回に排水処理を開始した際にスムーズに排水処理できないなどの不具合を生じることがある。
【0018】
尚、触媒保護液が触媒層出口において残留しない条件においても、固体触媒層の大部分で触媒保護液の易分解性物質と固体触媒が接触できる場合には、かなりの触媒保護を図ることができるものである。これは、固体触媒の触媒全部を保護せずとも、易分解性物質の消失した後半の固体触媒層での残留酸素量が微量であるならば、触媒はさほど劣化しないためである。
【0019】
尚、本発明の触媒保護の方法は、通常は停止している装置を昇温して立ち上げる際および/または排水の処理を行なっている装置を冷却して停止する際に実施するものであるが、排水の処理を行なうに当たり、装置を加熱して維持しておく際にも適用できるものである。即ち、排水の処理を行なっていた装置を加熱した状態で保持し、再度排水処理を再開するまでの間の装置の保持にも適用することができる。従って、本発明において、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際とは、この装置を加熱して保持しておくことも含むものである。
【0020】
本発明の方法では、触媒保護液を供給するときの温度は、特に限定されるものではないが、触媒の保護を行なう本発明の目的から理解できるように、触媒層が加熱されている際に触媒保護液を供給することが望ましい。また本発明の触媒保護は、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に実施するものであるため、触媒保護液を供給するときの温度が、排水の処理温度よりも低い温度であることが多い。具体的には、50℃以上、多くの場合には60℃以上では、触媒保護液を供給しておくことが好ましい。また通常行なう排水の処理温度よりも5℃未満低い温度では、触媒保護液から排水の処理に変更すれば良いことが多い。このため、装置を昇温して立ち上げる際には、50℃以下、多くの場合には60℃以下で触媒保護液の供給を開始し、排水処理に切り替えるまで供給することが望ましいものである。また装置を冷却して停止する際には、排水処理から直ぐに触媒保護液の供給に切り替え、50℃以下、多くの場合には60℃以下になるまで触媒保護液を供給し続けることが望ましいものである。
【0021】
また、処理圧力は、触媒保護液が液相を保持する圧力であれば良い。但し、1MPa(Gauge)を超える圧力は、経済性の観点から好ましくない。また、処理圧力を過大に上げた場合、処理温度を上げた場合と同じく、活性炭自身の燃焼の問題も生じやすくなる。しかも、触媒の活性低下を生じることもある。このため加圧する際には湿式酸化処理装置の排ガス出口側に圧力制御弁を設け、反応塔内で排水が液相を保持できるように、処理条件に応じて適宜圧力を調節することが望ましい。また、触媒の耐久性を向上させるために、この処理圧力を処理する圧力の±20%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内に制御することが望ましい。
【0022】
本発明においては、触媒層にガスを供給せずに触媒保護液のみを供給し、装置の立ち上げや停止を実施することもできる。ガスを供給しなかった場合、圧力の制御が困難であることが多く、そのときの圧力変化により触媒に悪影響を及ぼすことが多い。このような場合、触媒層の後方よりガスを供給し、装置内の圧力を維持することで、安定した圧力制御が可能となるだけでなく、酸素が触媒層に供給されないため触媒の活性低下を効果的に抑制することができるものである。尚、本発明は湿式酸化法での排水の処理方法に関するものであるため、この場合のガスは排水処理に使用する酸素含有ガスを使用することが、操作性および経済性などの点で望ましい。
【0023】
また活性炭を含有する触媒を用いる場合、装置の停止中や触媒の保管時に、該触媒をその雰囲気が酸素濃度の薄い状態としておくことが望ましい。このため装置を停止し、反応塔内に該触媒を充填したままの状態で保管する場合には、装置を停止した際に触媒層内の酸素濃度が低濃度となるようにすることが望ましく、更に触媒保護液が触媒層内に存在していることが望ましい。
【0024】
本発明で使用される固体触媒は、少なくとも活性炭を触媒成分として含有するものであれば良い。また、活性炭の種類については、特に限定されるものではなく、例えば、木炭、ヤシガラ、石炭、コークス、ピート、リグナイト、ピッチなどを原料とするものが挙げられ、またアクリロニトリル系活性炭素繊維やフェノール系活性炭素繊維、セルロース系活性炭繊維、ピッチ系活性炭繊維等の炭素繊維系の活性炭であっても良い。また、固体触媒の形状についても、球状、粒状、ペレット状、リング状、破砕状、ハニカム状等、様々な形状のものが使用可能である。
【0025】
本発明では、活性炭のみからなる固体触媒を用いても、被酸化性物質の種類や濃度によっては、それを酸化・分解処理するのに必要な酸化活性を示すものとなるが、本発明で用いる固体触媒として、Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,AgおよびAuよりなる群から選択される1種以上の元素を更に含有させることも有効であり、これにより触媒活性をより高めた触媒とすることができる。これにより、排水中に含まれる被酸化性物質の酸化・分解処理効率を向上することができると共に、処理温度を更に下げることができるので望ましい。これらの元素の含有量は特に限定されないが、固体触媒中に好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%の割合で含有されていることが望ましい。また上記固体触媒には、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、鉄、マンガン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、セリウム、プラセオジウム、テルルおよびビスマスよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有させることもできる。
【0026】
本発明における活性炭を含有する触媒の物性値は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜10μmの細孔径を有する該細孔の容積の総和が0.1〜0.8ml/gで、且つ比表面積が100〜2,500m2/gのものが良い。また、0.1〜10μmの細孔径を有する該細孔の容積の総和が0.15〜0.7ml/gのものがより望ましく、更に望ましくは0.2〜0.6ml/gのものである。また比表面積が、500〜2,000m2/gのものがより望ましく、更に望ましくは800〜1,700m2/gのものであり、最も望ましくは900〜1,500m2/gのものである。これらの規定理由は、下記の通りである。
【0027】
本発明の排水の湿式酸化処理では、マクロ孔である0.1〜10μmの触媒細孔径が、排水中に含有される被酸化性物質や酸素の拡散に大きく影響する。このため、0.1〜10μmの細孔径が多い触媒では、被酸化性物質や酸素の拡散が容易になるので、反応が進行し易くなる。即ち、低温・低圧での処理効率が向上する。これに対して、0.1〜10μmの細孔径が少ない触媒では、被酸化性物質や酸素の拡散が悪い。このため、被酸化性物質の触媒活性点への吸着が生し難くなり、効率良く反応が進まなくなるばかりか、酸素が被酸化性物質の分解に効率良く使用されず、余剰酸素で活性炭自身が燃焼し易くなる。一方、0.1〜10μmの細孔径が非常に多い触媒では、触媒の機械的強度が低下する問題が生じる。このため、0.1〜10μmの細孔径を有する該細孔径容積の総和が、上記範囲の細孔容積を有する触媒が望ましいものである。
【0028】
また触媒の比表面積は、大きいものほど排水中に含有される被化性物質の吸着が増加し、これに伴って排水の処理効率が向上する傾向がある。このため、比表面積が小さい触媒は望ましくないものである。但し、触媒の比表面積が非常に大きい触媒では、触媒の機械的強度が低下する問題を生じる。こうしたことから、触媒の比表面積が、上記の範囲の値を有する触媒が望ましいものである。
【0029】
一般に活性炭は、酸化処理もしくは還元処理などの処理を実施すると、表面に極性基が導入されたり、逆に除去され、その物性値が著しく変化することが知られている。同様に、本発明に係る触媒においても、触媒中の極性基量に応じて、その触媒性能が著しく変化するものである。特にこの極性基量と触媒活性の関係は、排水中の処理対象成分(被酸化性物質)によって大きく変化する。例えば、処理対象成分(被酸化性物質)が有機物やアニオン性の無機物の場合では、活性炭を含有する触媒中の極性基量が少なく、疎水性の高い触媒(活性炭)である必要がある。このため、触媒は還元処理されたものほど高活性を示す傾向がある。逆にアンモニアやヒドラジンのようなカチオン性の無機物の場合では、活性炭を含有する触媒中の極性基量が多いものである必要がある。このため、触媒は酸化処理されたものほど高活性を示す場合がある。
【0030】
これらの理由としては、処理対象成分の触媒への吸着され易さが大きく影響しているものと考えられる。活性炭を含有する触媒中の極性基の多くは、水酸基やカルボキシル基などの含酸素官能基である。従って、本発明における活性炭を含有する触媒では、特に限定されるものではないが、触媒中の酸素量/炭素量(以下、O/C比とも記載する)が、触媒中の極性基量と相関関係にある。このため、極性基量の少ない触媒はO/C比が小さく、逆に極性基量の多い触媒はO/C比が大きいものである。また本発明に係る触媒は、処理対象成分に対する好ましい触媒と好ましくない触媒をO/C比で分類することができる。具体的に例示するならば、処理対象成分(被酸化性物質)が有機物やアニオン性の無機物の場合に望ましい触媒は、O/C比が0〜0.12であり、より望ましくは0〜0.10であり、更に望ましくは0〜0.08である。逆に処理対象成分(被酸化性物質)がアンモニアやヒドラジンのようなカチオン性の無機物の場合に望ましい触媒は、O/C比が0.08〜0.30であり、より望ましくは0.10〜0.25であり、更に望ましくは0.12〜0.20である。但し、あまりO/C比の大きい触媒は、触媒の機械的強度が低下する問題を生じるものである。
【0031】
上記のように、本発明における活性炭を含有する触媒は、特に限定するものではないが、触媒を製造するにあたり触媒に各種処理を実施し、各種処理目的に合わせたO/C比にすることが望ましい。具体的には、触媒中のO/C比を小さくし、極性基量の少ない触媒とするには、各種の還元処理を触媒に実施することが望ましい。例えば、水素を用いた気相還元や亜硫酸ナトリウムやヒドラジンなどの還元物質を用いた液相還元による方法が挙げられる。この処理によって、触媒の活性成分が還元および/または活性炭(活性炭表面)が水素化され、有機物やアニオン性の無機物に対して高活性な触媒を製造できると考えられる。また活性炭を製造する工程で通常行われる各種賦活処理で実施することもできる。例えば、高温で水蒸気、炭酸ガス、窒素ガスと接触させることによって実施することもできる。逆に、触媒中のO/C比を大きくし、極性基量の多い触媒とするには、各種の酸化処理を触媒に実施することが望ましい。例えば、酸素含有ガスやオゾン、NOxなどの各種ガスを用いて酸化処理する気相酸化や過酸化水素、オゾン水溶液、臭素水、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、次亜塩素酸塩、硝酸、リン酸などの薬品を用いた液相酸化による方法が挙げられる。この処理によって、触媒の活性成分が酸化および/または活性炭(活性炭表面)に含酸素官能基のような極性基が導入され、アンモニアやヒドラジンのようなカチオン性の無機物に対して高活性な触媒を製造できると考えられる。また、本発明における活性炭を含有する触媒には、ニトロ化やスルホン化、アミノ化などの処理やアルカリ金属化合物による処理なども実施することができる。
【0032】
上記のように、本発明における活性炭を含有する触媒では、処理対象成分(被酸化性物質)に対する吸着性能に優れた触媒が、触媒活性の高い触媒となる傾向がある。このため、本発明における活性炭を含有する触媒の物性値として、処理対象成分(被酸化性物質)に対する吸着性能を挙げることもできる。例えば、排水中の処理対象成分(被酸化性物質)が有機物の場合には、その有機物自身の吸着性能は勿論、その有機物が酸化・分解処理されて生成する被酸化性物質の吸着性能を挙げることもできる。更に、炭素数2以上の有機物が処理対象成分である場合、特に限定されるものではないが、一般に酢酸が湿式酸化処理後に処理液中に残留し易い。このため、酢酸の吸着性能に優れた活性炭を用いて作成した触媒が、有機物に対する触媒活性の高い触媒となる傾向がある。逆に処理対象成分(被酸化性物質)がアンモニアやヒドラジンのようなカチオン性の無機物の場合には、アンモニアの吸着性能に優れた活性炭を用いて作成した触媒が、これらに対して触媒活性の高い触媒となる傾向がある。また、特に限定されるものではないが、処理対象成分に対する吸着性能の優れた触媒に使用した活性炭は、処理対象成分に対する吸着性能の優れた活性炭である傾向がある。このため、本発明に係る触媒を製造するにあたり、使用する活性炭には、処理対象成分に対する吸着性能の優れた活性炭を使用することが望ましい。
【0033】
本発明において、「吸着性能に優れる」とは、例えば、ある特定の条件下、活性炭の単位量当たりの対象成分の飽和吸着量で表し、この量が多いものほど吸着性能に優れるものである。また、ある特定の条件下、活性炭の単位量当たりの対象成分の吸着速度で表し、この速度が早いものほど吸着性能に優れるものである。この吸着速度には初期の吸着速度で表すこともできれば、任意後の吸着速度で表すこともでき、特に限定されるものではない。しかしながら好ましくは、初期の吸着速度で表すことであり、特にこの初期の吸着速度が速い活性炭を使用した場合、触媒の活性が高く、また触媒化した際に吸着性能に優れる触媒となる傾向がある。
【0034】
本発明における活性炭を含有する触媒は、上記のような種々の物性値によって規定することができる。しかし、上記に記載しなかったこの他の各種物性値で、本発明に係る活性炭を含有する触媒の範囲が限定されるものではない。この他の各種物性値としては、例えば、各種官能基量、灰分や不純物の量、炭素の構造形態、酸性度、マクロ孔以外(メソ孔、ミクロ孔、サブミクロ孔)の細孔容積量やその比率、また外部比表面積や内部比表面積の値やその比率に関するものなどがある。
【0035】
本発明で対象とする「被酸化性物質」とは、酸化・分解処理によって浄化できる有機および/または無機の化合物を意味し、また有機化合物、硫黄化合物、窒素化合物等とも表現することができ、更には特に限定されるものではないが、有機ハロゲン化合物や有機燐化合物などであっても良い。具体的には、例えばメタノール、エタノール、アセトアルデヒド、ギ酸、アセトン、酢酸、プロピオン酸、テトラヒドロフラン(THF)、フェノール等の有機化合物;アンモニア、ヒドラジン、亜硝酸イオン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン等の窒素化合物;チオ硫酸イオン、硫化ナトリウム、ジメチルスルホキシド、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の硫黄化合物、等を挙げることができる。これらは、水中に溶解していても、また懸濁物質として存在していても良い。
【0036】
本発明方法では、基本的に50℃以上170℃未満の温度で排水の処理を行なうものであるが、この温度が50℃未満であると、有機および/または無機の被酸化性物質の酸化・分解処理を効率的に行なうことが困難になる。この処理温度は、好ましくは80℃を超える温度とするのが良く、より好ましくは100℃を超える温度であり、更に好ましくは110℃を超える温度とするのが良い。尚、処理温度が110℃以下であっても、メタノール、ギ酸、ホルムアルデヒド等の有機化合物の高度処理は可能であるが、炭素数2以上の有機化合物の高度処理の為には、100℃を超える反応温度が必要である場合が多い。この処理温度が170℃以上であると、活性炭自身の燃焼が生じやすくなるため実用的でなくなる。こうしたことから、処理温度は好ましくは160℃以下とするのが良く、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下とするのが良い。
【0037】
一方、排水を処理する際の圧力は、上記処理温度において排水が液相を保持する圧力であれば良いが、通常は大気圧から1MPa(Gauge)程度である。例えば処理温度が50〜90℃の場合には、排水は大気圧下においても液相状態であることが多いため、経済性の観点から大気圧下でも良いが、処理効率を向上させるためには加圧することが好ましい。また、処理温度が95℃を超える場合には、大気圧下では排水が気化することが多いため、0.2〜1MPa(Gauge)程度に加圧することが好ましい。但し、1MPa(Gauge)を超える圧力は、経済性の観点から好ましくない。また処理圧力を上げた場合、処理温度を上げた場合と同じく、活性炭自身の燃焼の問題も生じ易くなる。更に、触媒の活性低下を生じることもある。
【0038】
本発明で用いる触媒保護液は、易分解性の被酸化性物質を含有している液であれば特に限定されるものではない。具体的には、易分解性の被酸化性物質とは、50℃以上170℃未満の湿式酸化処理条件下、活性炭を含有する固体触媒を用いて容易に酸化・分解処理される物質であれば良い。この物質は、50℃以上140℃未満の条件で容易に酸化・分解処理される物質であることが好ましく、50℃以上120℃未満の条件で容易に酸化・分解処理される物質であることがより好ましく、50℃以上100℃未満の条件で容易に酸化・分解処理される物質であることが更に好ましく、50℃以上90℃未満の条件で容易に酸化・分解処理される物質であることが最も好ましい。
【0039】
また、易分解性物質を含有する水溶液のpHが中性であることが望ましく、酸性やアルカリ性では装置や触媒に対して腐食や劣化の原因となるので望ましくない。こうした触媒保護液としては、例えばアルコール類を含有する液であることが望ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール等を含有する液を挙げることができ、またグリコールやグリセリンを含有する液であっても良い。また効果的には、炭素数1〜4のアルコール類がその易分解性などから望ましく、より好ましくはメタノール、エタノール、プロパノールであり、最も好ましくはメタノールである。従って、通常の処理対象排水がメタノールなどを含有したものであっても良いし、更に排水にメタノールなどを加えたものであってもよい。但し、触媒保護液としてはこれだけに限定されるものではなく、種々の易分解性物質を含有する水溶液を使用することができる。例えば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトン、テトラヒドロフラン、フェノール、ギ酸等の有機物や、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム等の無機物を使用することができる。
【0040】
本発明において、触媒保護液の濃度は、特に限定されるものではないが、COD(Cr)濃度が0.1〜50g/リットルであることが好ましく、より好ましくは0.5〜30g/リットルである。この濃度は0.1g/リットル未満では触媒保護液による触媒保護効果が低くなる。一方、50g/リットルを超えると触媒保護液用の被酸化性物質が多く必要となりコスト高となるため、好ましくはない。
【0041】
また本発明において、触媒層出口での触媒保護液の濃度は、特に限定されるものではなく、触媒保護液が残留する程度の状態であれば触媒保護の効果が高く得られるものであるが、好ましくは触媒層出口でのCOD(Cr)濃度が0.05〜50g/リットルであることが良く、より好ましくは0.1〜30g/リットルである。この濃度が0.05g/リットル未満では、触媒層出口付近での触媒保護の効果が低くなる。一方、50g/リットルを超えると、コスト高となるだけでなく、残存した触媒保護液の後処理が煩雑となるため、好ましくない。
【0042】
本発明において、装置を昇温して立ち上げる際の触媒保護液の添加方法は、特に限定されるものではなく、水に溶かした易分解性物質をポンプ(例えば、後記図1に示す排水供給ポンプ5)を用いて直接湿式酸化処理装置に供給しても良いし、易分解性物質を排水タンクに添加し、排水と一緒に供給しても良い。また、装置を停止する際の触媒保護液の添加方法は、排水の供給を停止した後に、水に溶かした易分解性物質を排水と同じポンプで供給しても良い。更に、排水を供給するポンプと別のポンプを用いて触媒保護液を供給する場合は、反応塔の手前から供給する様にしても良い。
【0043】
触媒保護液の触媒層での空間速度は、特に限定されるものではなく、通常の排水処理条件と同等であればよいが、通常触媒層あたりの空間速度を0.1hr−1〜10hr−1、より好ましくは0.1hr−1〜5hr−1、更に好ましくは0.1hr−1〜3hr−1となるようにすれば良い。この空間速度が0.1hr−1未満の場合、十分な触媒保護効果を得るのに時間がかかり、実用的でない。また、逆に10hr−1を超える場合には、触媒保護液の量が多く必要となり、好ましくない。
【0044】
尚、本発明を実施する装置において、反応塔の数、種類、形状等は特に限定されるものではなく、通常の湿式酸化処理に用いられる単管式の反応塔や多管式の反応塔などを用いることができる。
【0045】
本発明の実施によって排出された使用済み触媒保護液は、易分解性の被酸化性物質を含有していることが多いことから、河川、海等に直接放出することは好ましくないことが多い。従って、使用済みの触媒保護液を排水タンクに戻し、触媒保護液またはこの触媒保護液と排水を共に湿式酸化処理し、浄化することが好ましく、また触媒保護液を繰り返し使用することも好ましい。また後処理として生物学的処理、化学的処理等を実施してから、河川、海等に直接放流する様にしても良い。
【0046】
本発明において、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、触媒層を通過した排気ガス中の酸素濃度は、0〜5vol%の範囲に維持することが望ましい。この酸素濃度を0〜5vol%とすることで、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際、触媒の活性低下を抑制する効果がより一層顕著なものとなる。しかしながら、排ガス中の酸素濃度が5vol%を超えると、過剰酸素による活性炭の燃焼を生じるため好ましくない。従って、好ましくは酸素の不足した状態で処理することである。こうした観点から、排気ガス中の酸素濃度が0vol%に近いほど望ましく、最も好ましくは酸素の残存しない0vol%である。このため、排気ガス中の酸素濃度が好ましくは0〜4vol%、より好ましくは0〜2vol%、更に好ましくは0〜1vol%の範囲に維持するのが良い。即ち、装置を運転する上で装置内の圧力を維持することができるのであれば、触媒活性低下を抑制するという観点からすれば、酸素含有ガスの供給量は少ないほど望ましいものである。但し、この供給量があまりに少なくなると、装置を立ち上げて排水処理に運転状態を切り替える際に、運転操作面で煩雑になることもある。また装置を停止する際にも、排水の処理が最後まで完全に行なわれなくなって、好ましくない。
【0047】
尚、本発明では、装置を昇温して立ち上げる際もしくは装置を冷却して停止する際に、触媒保護液を供給するときの温度が排水を処理するときの温度よりも著しく低い温度の場合、酸素が触媒層内に存在していても触媒の活性低下を急激に生じることはない。このため50℃未満、多くの場合は60℃未満では、特に酸素が5vol%を越えて存在していても良く、また触媒保護液が触媒層内になくても良いことが多い。また排水を処理する温度が90℃を越えるような場合では、50℃以上80℃未満程度の低い温度であれば、酸素が5vol%を越えて存在していても、短時間、例えば24時間以内、より好ましくは12時間以内で、且つ触媒保護液が触媒層内に存在しているならば、触媒の活性低下を生じないことが多い。
【0048】
本発明において、排気ガス中の酸素濃度を0〜5vol%の範囲に維持するには、後記図1、2に示す様に排気ガス中の酸素濃度を酸素濃度計16を用いて測定し、この測定値に基づいて酸素含有ガスまたは酸素非含有ガスの供給量を調節もしくは制御することが望ましい。排気ガス中の酸素濃度の測定の測定する為に用いる酸素濃度計は、通常の酸素測定に使用できるものであればいずれでも良く、市販の酸素濃度計を用いることができる。この様な酸素濃度計としては、例えばジルコニアの酸素センサーを用いた酸素濃度計、酸素ダンベル式酸素濃度計、ガスクロマトグラフ等が挙げられ、これらはその使用方法により特に限定されるものではない。また酸素含有ガスの供給量を調節もしくは制御する方法も特に限定されるものではなく、例えば酸素含有ガス流量調節弁9などで調節もしくは制御できるが、他の手段であっても良いことは勿論である。
【0049】
尚、本発明において「排気ガス中の酸素濃度」とは、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、触媒層を通過した直後の気相中における酸素濃度のことを意味し、通常は後記図1に示す様に、触媒保護液で処理した後の気液を気液分離処理した際に発生する排気ガス中の酸素濃度のことである。
【0050】
本発明における触媒保護処理は、酸素含有ガスの供給下または非供給下のどちらでも実施できるが、少量の酸素含有ガスの供給下に実施することが望ましい。通常、湿式酸化処理は加圧下に処理されることが多いので、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、湿式酸化処理装置内の圧力をある程度維持する必要がある。この際、少量のガスを供給することによって装置内の圧力を安定して維持することもできるのである。
【0051】
更に、酸素含有ガスの変わりに窒素ガスなどの不活性ガスや、酸素を含有してないガスを用いることもできる。しかしながら、本発明は湿式酸化法での排水の処理方法に関するものであるため、排水処理に使用する酸素含有ガスを使用することが、操作性および経済性などの点で望ましい。
【0052】
本発明においては、触媒保護処理時に排気ガス中の酸素濃度を0〜5vol%の範囲に維持して操業することが好ましいが、その為の好ましい具体的制御手段としては、[供給ガス中の酸素量]/[触媒保護液の処理効率が最大になるときの触媒保護液の酸素消費量](以下、この比を「D値」と呼ぶことがある)=0〜1.3の範囲となる様に設定することが挙げられる。即ち、上記の比で示されるD値が0〜1.3の範囲となる様に例えばガスの供給量を調節若しくは制御することによって、触媒の活性低下を抑制することができる。本発明では、後に詳述する様に、易分解性の被酸化性物質が触媒層出口で残留する様にすることがより好ましいが、上記D値が1.0〜1.3程度になると、易分解性の被酸化性物質が触媒層出口においても残留しないことがある。こうしたことから、上記D値が1.0特に1.3を超えると、触媒保護液の酸化・分解処理に要する酸素量よりも酸素供給量が多くなり、過剰酸素による活性炭自体の燃焼が生じ易くなる。こうした観点から、上記D値は0〜0.8程度であることが好ましく、より好ましくは0〜0.6程度であり、更に好ましくは0〜0.4程度とするのが良い。
【0053】
本発明における、この[触媒保護液の処理効率が最大になるときの触媒保護液の酸素消費量]とは、排水処理温度、処理圧力、LHSV、気流の流通方式、使用する触媒などの処理条件を一定にした状態で、酸素供給量のみを変化させた場合、触媒保護液の処理効率が最大となるときの触媒保護液の酸素消費量のことである。尚、触媒保護液の処理効率は処理温度によって変化するが、然るに本発明に係る方法では、触媒保護液の処理温度は変化するものである。このため、上記D値を算出する際の処理温度は、触媒保護液を供給する最も高い温度での値とするものである。通常、本発明の方法では、最も高い温度のときに、処理効率も高くなるのである。従って、このD値は、触媒の保護処理を行なうにあたり、酸素供給量の過剰率を示す指標となる。具体的に例示するならば、ある任意の処理条件下、酸素供給量を変化させて触媒保護液により固体触媒を処理したときの化学的酸素要求量(COD(Cr))処理効率が最大90%であった場合、酸素含有ガスがO2/COD(Cr)=0.9で供給されたならば、上記D値は1.0である。また、酸素含有ガスがO2/COD=1.0の割合で供給されたならば、D値は1.11である。但し、このD値の分母である「触媒保護液の処理効率が最大となるときの触媒保護液の酸素消費量」は、「触媒保護液の処理効率が最大となるときの供給ガス中の酸素量」と同量とは限らない。即ち、「D値の分母」と「触媒保護液の処理効率が最大になるときの酸素供給量」が、同量とは限らない。先に例示した酸素供給量がO2/COD(Cr)=0.9のときに、COD(Cr)の処理効率が90%で最大であったならば、酸素供給量と「D値の分母」は同量である。しかし、酸素供給量がO2/COD(Cr)=2.0のときに、COD(Cr)処理効率が90%で最大の場合もある。このときのD値は、2.22である。
【0054】
本発明に係る[触媒保護液の処理効率が最大となるときの触媒保護液の酸素消費量]で記載される「触媒保護液の処理効率」とは、例えば触媒保護液のCOD処理効率、TOC処理効率、窒素処理効率、BOD処理効率、TOD処理効率もしくは特定物質の処理効率など、触媒保護液に応じて種々の処理効率を採用することができ、特に限定されるものではない。しかしながら、触媒保護液は、易分解性の被酸化性物質を含有している液であり、なおかつこの場合、酸素の消費量が特に重要であるから、触媒保護液のCOD処理効率で表記することが望ましい。
【0055】
本発明において、触媒を充填した触媒層における気液の流通方法は、特に限定されるものではないが、より好ましい方法としては、気液下向並流で流す方法が挙げられる。気液を下向きに並流で流すことで、気液の接触効率が向上して酸素の溶解量が増加すること、および液と触媒の接触効率が向上するため、処理効率が向上するものと考えられる。また、気液を並流に流すと、触媒層入口部分で被酸化性物質を多量に含有する液と酸素濃度の高いガスが接触するため、活性炭自身の燃焼を抑制するものと考えられる。
【0056】
また、本発明で固体触媒を保護処理するに際して、触媒を充填した触媒層における気液の流通方法は、特に限定されるものではない。しかしながら好ましい方法としては、排水処理での気液の流通方向と同じにすることである。排水処理での気液の流通方向と同じにすることで操作性などの面でより容易に実施することができる。このため、好ましい方法としては、後記図1に示す様な気液下向並流で流す方法が挙げられる。また、後記図2に示す様な気液上向並流で流すこともできるし、流動層式であっても良い。また、気液向流で流すこともできるが、気液並流の方が望ましいものである。気液を並流で流すと、触媒層入口部分で被酸化性物質を多量に含有する液と酸素濃度の高いガスが接触するため、活性炭自身の燃焼を抑制するものと考えられる。
【0057】
本発明に係る排水の処理方法では、排水処理装置の固体触媒層の形式を流動層式(流動床式)とすることもできる。固体触媒を用いた湿式酸化処理において、本発明に係る活性炭を含有する触媒を用いた場合、従来の固体触媒を使用した場合と比較して、より容易に流動層式の排水処理装置を採用することができる。流動層式の排水処理装置では、反応によるホットスポットを生じ難いことから、固定層式(固定床式)の装置と比較してより高濃度の排水処理が可能である。また活性炭を含有する触媒の劣化を生じ易い排水においても、その装置の特性から処理が容易となる。これは、流動層式の排水処理装置では、劣化した廃触媒を抜き出しつつ、新触媒もしくはリサイクルした触媒を追加することが可能となるためである。従来、固体触媒を用いた湿式酸化処理では、触媒劣化の原因として、固体触媒中の活性成分が固定床の後方に移動する問題があった。この問題に関しても流動層式の装置では、固体触媒自身が移動することから解決できるものである。また流動層式とした場合、固定層式で通常採用する固体触媒よりも粒径の小さなものを採用することができ、より気液との接触効率も向上できることから、処理性能も向上できる。また流動層式とした場合、固定層式では処理困難であった若干の固形物を含有する排水においても、反応塔が閉塞する問題を生じ難いことから処理可能になり、処理可能な対象排水の範囲をより広げることができるものである。
【0058】
この流動層式の装置とした場合、特に限定されるものではないが、反応塔は1塔であっても良いし、複数塔であっても良く、操作性および設備費の面からは1塔の方が望ましい。また、特に限定されるものではないが、反応塔内部は1室であっても良いが、複数室(多段)に分割されている方がより処理性能が向上し、また運転の制御面からも望ましい。
【0059】
本発明において「酸化・分解処理」とは、酢酸を二酸化炭素と水にする酸化分解処理、酢酸を二酸化炭素とメタンにする脱炭酸分解処理、尿素をアンモニアと二酸化炭素にする加水分解処理、アンモニアやヒドラジンを窒素ガスと水にする酸化分解処理、ジメチルスルホキシドを二酸化炭素、水、硫酸イオンなどの灰分にする酸化および酸化分解処理、ジメチルスルホキシドをジメチルスルホンやメタンスルホン酸にする酸化処理などが例示され、即ち易分解性の被酸化性物質を窒素ガス、二酸化炭素、水、灰分などにまで分解する処理や、難分解性の有機物や窒素化合物を低分子量化する分解処理、もしくは酸化する酸化処理など種々の酸化および/または分解を含む意味である。
【0060】
本発明で適用される処理対象排水の種類は特に限定されず、例えば化学プラント、電子部品製造設備、食品加工設備、金属加工設備、金属メッキ設備、印刷製版設備、写真設備などの各種産業プラントからの排水や、火力発電や原子力発電などの発電設備等からの排水であってもよい。具体的にはEOG製造設備、メタノール、エタノール、高級アルコールなどのアルコール製造設備からの排水、特にアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の脂肪族カルボン酸やそのエステル、或はテレフタル酸、テレフタル酸エステル等の芳香族カルボン酸もしくは芳香族カルボン酸エステルの製造プロセスから排出される有機物含有排水が例示される。また、アミン、イミン、アンモニア、ヒドラジン等の窒素化合物を含有している排水であってもよい。更に、チオ硫酸イオンや硫化物イオン、ジメチルスルホキシド等のイオウ化合物を含有している排水であってもよい。また下水やし尿などの生活排水であってもよい。或はダイオキシン類やフロン類、フタル酸ジエチルヘキシル、ノニルフェノールなどの有機ハロゲン化合物や環境ホルモン化合物などの有害物質を含有している排水でもよい。
【0061】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に逸脱しない範囲で変更することはいずれも本発明の技術範囲に含まれるものである。
【0062】
【実施例】
実施例1
図1に示す装置を使用し、排水処理を実施した。反応塔1は、内径26mmφ、長さ3,000mmの円筒状であり、その内部に活性炭と白金を主成分とし、白金を0.3質量%含有する4mmφのペレット状の固体触媒を1リットル(390g)、触媒層長1880mmH充填した。
【0063】
この装置におけるスタートアップを、下記の手順で行なった。まずメタノール10g/リットルを含有するCOD(Cr)15,000mg/リットルの触媒保護液を、排水供給ライン6を通じて排水供給ポンプ5に送り、この排水供給ポンプ5によって1リットル/hの流量で昇圧フィードした。また酸素含有ガス供給ライン8から導入した空気(酸素含有ガス)を、コンプレッサー7で昇圧した後、加熱器3の手前で触媒保護液に供給した。このとき供給空気は、酸素含有ガス流量調節弁9によって供給量を制御した。そして、この供給量を、前記D値が反応塔1の内部温度が120℃のときに0.3となる様にした。加熱器3を経た気液混合物は、反応塔1の上部より気液下向並流となる様に供給した。気液供給開始時の反応塔1の内部温度は、20℃であった。尚、反応塔1の内部温度が120℃において、触媒保護液の処理効率が最大となったのは、O2/COD(Cr)=0.99で空気を供給したときであり、このときのCOD(Cr)処理効率は100%であった。
【0064】
反応塔1内には触媒層が充填されており、この触媒層を通過した触媒保護液等は、反応塔1の下部から排出された後、冷却器4で冷却した後、圧力制御弁12から解圧して排出し、気液分離器11で気液分離した。この圧力制御弁12では、反応塔1の気液出口側に備えられた圧力コントローラーPCで反応塔1内の圧力を検出し、0.6MPa(Gauge)の圧力を保持するように制御した。このため、空気の供給開始時には大気圧であったが徐々に昇圧し、反応塔1内の温度が100℃を上回ったときには、0.6MPa(Gauge)の圧力で安定していた。尚、気液分離器11中の排気ガス中の酸素濃度は、酸素濃度計16を用いて測定し、その排気ガスはガス排出ライン13から排出した。
【0065】
この様にして触媒保護液の供給を開始し、圧力制御弁12から該触媒保護液が排出されることを確認した後、加熱器3および電気ヒーター2を用いて昇温を開始した。この昇温中は、常に触媒保護液を触媒層に供給し、触媒の活性が低下しない様にした。この場合に、触媒出口(排出される液中)において触媒保護液が常に残留する様にした。この触媒保護液の供給によるこの装置のスタートアップは、反応塔1の内部温度が120℃になるまで行なった。そして、120℃のときの触媒層出口(気液分離液11中)における触媒保護液濃度は、10,400mg/リットルであった。また、昇温時の排気ガスの酸素濃度は、反応塔1の内部温度が60℃を超えたあたりから常に0vol%であった。
【0066】
反応塔1の内部温度が120℃に到達した後、触媒保護液の供給を停止し、直ちに処理対象排水の供給に切り替えた。尚、処理対象排水は、触媒保護液と同じく排水供給ライン6より行なった。またこのときの処理対象排水は、脂肪酸カルボン酸および脂肪族カルボン酸エステル製造設備から排出された排水で、アルコール、アルデヒド、カルボン酸など炭素数2以上の有機化合物を含有し、COD(Cr)が15,000mg/リットル、pHは2.8であった。また全TOC成分中の40%が酢酸であった。
【0067】
排水の処理では、反応塔1の内部温度が130℃となる様に加熱器3および電気ヒーター2を制御した。空気の供給量は、気液分離器11内の排気ガス中の酸素濃度が0.2vol%となる様に、酸素含有ガス流量調節弁9を制御した。このときの空気供給量は、O2/COD(Cr)[供給ガス中の酸素量/排水の化学的酸素要求量]比で0.96であった。また気液分離器11中の処理液は、液面コントローラーLCを用いて液面の高さを検出し、一定の液面高さとなる様に処理液排出ポンプ14を制御した。これら以外は、装置をスタートアップした方法に準じて処理を行なった。そして、処理液排出ポンプ14から排出された処理液は、処理液排出ライン15を経て排出し、この処理液を随時サンプリングしてCOD(Cr)濃度を測定した。運転開始から50時間経過し、処理が安定したときのCOD(Cr)処理効率は96%であった。
【0068】
比較例1
図1に示した装置を使用し、メタノール10g/リットルを含有するCOD(Cr)15,000mg/リットルの触媒保護液の代りに水を用いてスタートアップした以外は、実施例1に準じて処理を行なった。尚、酸素含有ガス(空気)の供給量は、実施例1で供給した空気量と同量とした。このため、昇温時における気液分離器11中の排気ガス中の酸素濃度は常に21vol%であった。
【0069】
そして、120℃までの昇温が終了した後、実施例1と同様に水から排水に供給液を切り替え、排水の処理を開始した。尚、このとき用いた排水は、実施例1と同じものとした。また実施例1と同様に、反応塔1の内部温度を130℃とし、空気供給量も気液分離器11中の排気ガスの酸素濃度が0.2vol%となる様に酸素含有ガス流量調節弁9を制御した。
【0070】
その結果、排水の供給を開始してから50時間経過後のCOD(Cr)処理効率は65%であった。またこのときの空気の供給量は、O2/COD(Cr)比で0.65であった。
【0071】
実施例2〜6
触媒保護液として、メタノール10g/リットルを含有する液を用いる代りに、下記表1に示す液を使用する以外は、実施例1と同じ処理方法、同じ処理条件で実施例1に準じた方法で処理を実施した。また処理対象排水も、実施例1と同じ排水を用いた。尚、各々の触媒保護液のCOD(Cr)濃度は、15,000mg/リットルであった。その結果を、下記表1に示す。また、実施例6では、触媒保護液として処理対象排水をそのまま用いた。即ち、触媒保護液として用いた液は、昇温後に処理する排水であった。尚反応塔1の内部温度が120℃において実施例2〜5の触媒保護液の処理効率が最大となったのは、O2/COD(Cr)=約1.0で空気を供給したときであり、このときのCOD(Cr)処理効率は100%であった。また反応塔1の内部温度が120℃において実施例6の触媒保護液(処理対象排水)の処理効率が最大となったのは、O2/COD(Cr)=0.82で空気を供給したときであり、このときのCOD(Cr)処理効率は82%であった。従って、実施例6では、D値を0.3とするために、O2/COD(Cr)=約0.25で空気を供給した。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例7〜10、比較例2,3
前記D値を下記表2に示した値にした以外は、実施例1と同じ触媒保護液、同じ排水、同じ触媒、同じ処理条件、同じ装置を用いて処理を行なった。その結果を、下記表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例11
図1に示した装置を使用し、下記の条件以外は実施例1と同様にして排水処理を実施した。反応塔1の内部には、活性炭とパラジウムを主成分とし、パラジウムを0.5質量%含有する直径5mmφのペレット状の固体触媒を1リットル(440g)、触媒層長1880mmH充填した。触媒保護液には、メタノール6g/リットルを含有するCOD(Cr)10,000mg/リットルの液を用い、排水供給ポンプ5によって2リットル/hの流量で昇圧フィードした。また圧力制御弁12は、0.5MPa(Gauge)の圧力を保持する様に制御した。
【0076】
供給空気量は前記D値が反応塔1の内部温度が110℃のときに0.4となる様に制御し、この触媒保護液による反応塔1の内部温度が110℃となるまで行なった。この110℃のときの触媒層出口(気液分離器中)における触媒保護液濃度は、5,800mg/リットルであった。また昇温時における排気ガス中の酸素濃度は、反応塔1の内部温度が60℃を超えたあたりから常に0vol%であった。尚、反応塔1の内部温度が110℃において触媒保護液の処理効率が最大となったのは、O2/COD(Cr)=0.99で空気を供給したときであり、このときのCOD(Cr)処理効率は100%であった。
【0077】
その直後に、触媒保護液の供給を停止し、直ちに処理対象排水の供給に切り替えた。このとき用いた処理対象排水は、エチルアルコールやプロピルアルコール等のアルコール類を多く含有する溶剤系排水であり、該排水のCOD(Cr)は30,000mg/リットル、pHは7.1であった。尚、この排水には、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、無機塩は含有していなかった。
【0078】
そして、この排水の処理では、反応塔1の内部温度が115℃となる様に、加熱器3および電気ヒーター2を制御した。また空気の供給量は、気液分離器11中の排気ガスの酸素濃度が0.5vol%となる様に、酸素含有ガス流量調節弁9を制御した。このときの空気の供給量は、O2/COD(Cr)比で0.97であった。
【0079】
その結果、排水の供給を開始してから50時間経過し、処理が安定したときのCOD(Cr)処理効率は95%であった。
【0080】
比較例4
装置の昇温時に、触媒保護液を供給せずに水を使用した以外は、実施例11に準じて装置に立ち上げを行なった。尚、空気の供給量は、実施例11で供給した空気量と同量とした。このため、昇温時における気液分離器11中の排気ガス中の酸素濃度は常に21vol%であった。
【0081】
そして、110℃までの昇温が終了後、引き続き実施例11と同じエチルアルコールやプロピルアルコール等のアルコール類を多く含有する溶剤系排水に切り替え、排水の処理を実施した。このとき、空気の供給量は実施例11と同様に、気液分離器11中の排気ガスの酸素濃度が0.5vol%となる様に、酸素含有ガス流量調節弁9を制御した。
【0082】
その結果、排水の供給を開始してから50時間経過後のCOD(Cr)処理効率は55%であった。また、このときの空気供給量はO2/COD(Cr)比で0.56であった。
【0083】
実施例12
図2に示す装置を使用した。図2に示した装置における基本構成は、前記図1に示した装置と類似し、対応する部分には同一の参照符号を付してある。この図2に示した装置では、加熱器3によって加熱された排水が、反応塔21(22は電気ヒーター)の底部から供給されると共に、酸化・分解処理された後の処理液は、反応塔21の上部から排出される様に構成されたものである。即ち、図2に示した反応塔21は、触媒層における気液の流通方式が気液上向並流のものである。
【0084】
上記反応塔21は、内径26mmφ、長さ3,000mmの円筒状であり、その内部には実施例1で示したのと同じ固体触媒を同量充填した。そして、実施例1と同じ要領(同じ排水、同じ処理方法、同じ処理条件)で排水の処理を実施した。
【0085】
尚、触媒保護液を用いて昇温し、反応塔21の内部温度が120℃になったときの触媒層出口(気液分離器11中)における触媒保護液濃度は10,400mg/リットルであった。また昇温時の排気ガス中の酸素濃度は、反応塔21の内部温度が60℃を超えたあたりから常に0vol%であった。
【0086】
その結果、排水の供給を開始してから50時間経過し、処理が安定したときのCOD(Cr)処理効率は88%であった。尚、排水処理時の空気供給量は、気液分離器11内の排気ガス中の酸素濃度が0.2vol%となる様に酸素含有ガス流量調節弁9を制御した。またこのときの空気供給量はO2/COD(Cr)比で0.89であった。
【0087】
実施例13
図3に示した装置を使用し、排水処理を実施した。図3に示した装置は、スタートアップ時に装置内の圧力を維持する為の空気供給位置が反応塔1の後方に別途設けられた以外は、前記図1に示した装置構成と同じである。即ち、図3に示した装置では、前記図1に示した装置構成に加え、反応塔1と圧力制御弁12の間に、酸素含有ガス供給ライン31が接続されたものであり、この酸素含有ガス供給ライン31によって、前記酸素含有ガス供給ライン8からの空気を、酸素含有ガス流量調節弁32を介して圧力制御弁12の上流側に供給できる様に構成したものである。
【0088】
そして、スタートアップ時に、この酸素含有ガス供給ライン31から空気を供給した以外は実施例1に同様にして処理を行なった。即ち、スタートアップ時の供給空気を、酸素含有ガス流量調節弁32によって制御し、前記D値が1.5となる様にし、なお且つこの空気の供給位置を変更した以外は実施例1に準じて処理を行なった。従って、スタートアップ時の排気ガス中の酸素濃度は常に21vol%であった。但し、昇圧後には、反応塔1の内部(固体触媒層)には空気が供給されていないので、反応塔1内部の気相中の酸素濃度は0vol%(即ち、前記D値が0)となっていると考えられる。また、触媒層出口(気液分離器11中)における触媒保護液濃度は、14,800mg/リットルであった。
【0089】
上記スタートアップ直後の排水処理を実施例1に準じて行なったところ、排水の処理結果は、COD(Cr)処理効率で96%であった。
【0090】
実施例14
実施例1で示した排水処理を行なった後、引き続いて以下の方法に従って装置の冷却を実施した。この冷却方法は、まず電気ヒーター2および加熱器3による加熱を停止し、装置の冷却を開始し、同時に酸素供給量をO2/COD(Cr)=0.82にした。そして、反応塔1の内部温度が120℃になった直後に、実施例1でスタートアップに用いた触媒保護液を排水に切り替えて供給し、触媒の活性が低下しない様にした。また同時に、D値が0.3になる様に酸素含有ガスの減量を行なった。このとき、触媒層出口において、触媒保護液が残留する様にした。
【0091】
その結果、排気ガス中の酸素濃度は、排水処理時には0.2vol%であったが徐々に減少し、反応塔1の温度が60℃程度に低下するまで常に0vol%であった。
【0092】
装置の温度が30℃まで低下した後、引き続き実施例1と同じ方法で昇温を開始した。更に、実施例1に準じた方法で排水の処理を再開した。その結果、排水の供給を開始してから50時間経過し、処理が安定したときのCOD(Cr)処理効率は96%であった。
【0093】
比較例5
メタノール10g/リットルを含有するCOD(Cr)15,000mg/リットルの触媒保護液の代りに水を用いて冷却した以外は、実施例14に準じて処理を行なった。冷却時における気液分離器11内の排気ガス中の酸素濃度は、排水から触媒保護液に切り替えた直後は、約0.2vol%であったが、急速に増加し、反応塔1の温度が110℃程度のときに20vol%を超えていた。
【0094】
そして、装置の温度が30℃まで低下した後、引き続き実施例1と同じ方法で昇温を開始し、更に実施例1に準じた方法で排水の処理を再開した。その結果、排水の供給を開始してから50時間経過し、処理が安定したときのCOD(Cr)処理効率は71%であった。
【0095】
実施例15〜19
下記表3に示す各種触媒保護液を使用し、前記実施例2の排水の処理に引き続いて下記実施例15の装置の冷却を行なった。また同様に、前記実施例3の排水の処理に引き続い下記実施例16の装置の冷却を、前記実施例4の排水の処理に引き続いて下記実施例17の装置の冷却を、前記実施例5の排水の処理に引き続いて下記実施例18の装置の冷却を、前記実施例6の排水の処理に引き続い下記実施例19の装置の冷却を、夫々行なった。このときの冷却方法は、全て前記実施例14に準じた方法で実施した。尚、各々の触媒保護液は、全て前記実施例2〜6と同じ液とした。
【0096】
そして、装置の温度が30℃まで低下した後、引き続き各々の実施例が対応する前記実施例2〜6と同じ方法で昇温を開始し、更に実施例1に準じた方法で排水の処理を再開した。排水の供給を開始してから50時間経過し、処理が安定したときのCOD(Cr)処理効率を下記表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例20
実施例14で装置を冷却する際の酸素含有ガスの供給量をD値で1.1とした以外は、実施例14と同じ触媒保護液、同じ排水、同じ処理条件、同じ装置を用いて処理を行なった。
【0099】
その結果、排気ガスの酸素濃度は徐々に上昇し、110℃のときの排気ガスの酸素濃度は約2vol%となった。また、110℃および80℃のときの気液分離器11中における触媒保護液の残存COD(Cr)濃度は、100mg/リットル未満であった。そして、実施例1に準じて行なった排水の処理結果は、COD(Cr)処理効率で88%であった。
【0100】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、固体触媒の性能が低下しない様に、処理装置を昇温して立ち上げ、若しくは装置を冷却して停止することができ、固体触媒の耐久性を飛躍的に向上させることができる様になった。また、本発明によって長時間安定的に排水を浄化することができるようになり、排水の処理費を低く抑えることができることになる。
【0101】
また、本発明が基本的に採用している湿式酸化法による排水の処理方法は、排水の処理設備および排水の処理費を安価にでき、しかも高度に排水を処理することができる優れた処理方法である。従って、こうした湿式酸化法において本発明の触媒保護による効果を付加することによって、その方法による効果を著しいものとすることができる。
【0102】
更に、本発明によって処理した排水の処理液は、他の用途にも用水として再利用することができ、資源のリサイクルとの面からも優れており、これによってコストダウンを図れると共に、資源を有効に活用できる、等の効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する為に構成される装置の一構成例を示す概略説明図である。
【図2】本発明を実施する為に構成される装置の他の構成例を示す概略説明図である。
【図3】本発明を実施する為に構成される装置の更に他の構成例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1,21 反応塔
2,22 電気ヒーター
3 加熱器
4 冷却器
5 排水供給ポンプ
6 排水供給ライン
7 コンプレッサー
8,31 酸素含有ガス供給ライン
9,32 酸素含有ガス流量調節弁
10 処理液ライン
11 気液分離器
12 圧力制御弁
13 ガス排出ライン
14 処理液排出ポンプ
15 処理液排出ライン
16 酸素濃度計
Claims (8)
- 排水中に含まれる有機および/または無機の被酸化性物質を、触媒を用いて酸化および/または酸化分解処理する排水の処理方法において、
50℃以上170℃未満の処理温度、該排水が液相を保持する圧力下で、酸素含有ガスを供給して活性炭を含有する固体触媒を用いて排水を処理すると共に、装置を昇温して立ち上げる際および/または装置を冷却して停止する際に、易分解性の被酸化性物質を含有する触媒保護液を固体触媒層に供給して操業し、且つ触媒層を通過した排気ガス中の酸素濃度が0〜5vol%の範囲に維持するものであることを特徴とする排水の処理方法。 - 前記触媒保護液が触媒層出口で残留するようにして操業する請求項1に記載の方法。
- 触媒保護液を供給するときの温度が、排水処理温度よりも低い温度である請求項1または2に記載の方法。
- 触媒保護液が、アルコール類を含有する液である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 触媒保護液を触媒層に供給する際に、酸素含有ガスもしくは酸素非含有ガスを供給し、これら供給ガス中の酸素量が、[供給ガス中の酸素量]/[触媒保護液の処理効率が最大となるときの触媒保護液の酸素消費量]=0〜1.3の範囲となるように設定する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記固体触媒を充填した触媒層における気液の流通方法が、気液下向並流である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記固体触媒が更にPt,Pd,Rh,Ru,Ir,AgおよびAuよりなる群から選択される1種以上の元素を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 前記酸素含有ガスは、液の流れ方向において、触媒層の下流側よりガスを供給し、装置内の圧力を維持するように圧力を制御する請求項1〜5、7のいずれかに記載の方法。
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