JP3920517B2 - 有機酸含有液の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機化合物および/または窒素化合物含有液を浄化処理する方法に関するものである。詳細には炭素数2以上の有機化合物および/または窒素化合物含有液(以下、「含有液」と略記する)を、逆浸透膜を用いて分離し、非透過液を酸化処理工程に付すことによって効率よく酸化処理する方法,或いは回収工程に付すことによって有用な物質を効率よく回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より有機化合物や窒素化合物含有液の処理方法として、生物処理法,燃焼法,逆浸透膜法,湿式酸化法などが知られている。生物処理法では、余剰汚泥などの副生物が発生するため、その処理が問題であったり、処理困難な排水が多く存在するなどの問題が生じていた。また燃焼法では、燃料として化石燃料を燃焼させるため資源の浪費であるばかりか、近年地球温暖化の問題でクローズアップされている二酸化炭素の排出量が増加するなどの問題を有していた。
【0003】
また逆浸透膜を用いて含有液中に含まれる有機化合物や窒素化合物を分離除去する方法として、例えば酢酸セルロース系逆浸透膜を用いた有機化合物含有液の処理方法が提案されているが、該逆浸透膜では含有液中に含まれてる酢酸など低分子量の有機化合物はほとんど排除することができず、透過液中に含まれてしまうため、透過液を更にメタン醗酵などの処理工程に付す必要があった。更に酢酸などに対して高い排除率を有する逆浸透膜として、ポリアミド系逆浸透膜を用いる方法が提案されているが、該逆浸透膜を用いても含有液のpHが低い場合には、酢酸などを十分に排除することができず、依然として透過液中に酢酸が含まれていた。そのため低分子量である酢酸等を含む含有液でも十分に処理できる方法が求められていた。
【0004】
上記の様な問題を生じることなく含有液を処理する方法として、湿式酸化処理など酸化処理が注目されている。例えば湿式酸化処理に付される含有液中の被酸化物の濃度が低いと処理効率が悪く、また反応塔内での酸化処理に要する熱量が不足し、別途加熱を要するためにランニングコストが上昇していた。また湿式酸化処理に付す含有液量が多いため湿式酸化処理設備の大型化が問題となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、炭素数2以上の有機化合物および/または窒素化合物含有液を酸化処理工程に付し、処理する際の処理効率向上、および装置の小型化が達成できる方法、また含有液中の有効成分を効率よく回収することの出来る方法を提供することである。また更に本発明は、逆浸透膜の排除率を向上することの出来る方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明の方法とは、炭素数2以上の有機化合物および/または窒素化合物含有液を、高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて非透過液と透過液とに分離し、該非透過液の全部または一部を酸化処理工程に付すことに要旨を有する。
【0007】
上記酸化処理工程には湿式酸化処理を用いることが推奨され、更に該酸化処理工程を経て得られた処理液の全部または一部を有機酸および/またはアンモニアの回収工程に付してもよい。あるいは該非透過液の全部または一部を有機化合物および/または窒素化合物の回収工程に付してもよい。この時、逆浸透膜で処理される含有液のpHを4以上とすることが望ましい。
【0008】
また本発明は炭素数2以上の有機化合物および/または窒素化合物含有液のpHを4以上で、高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて処理することに要旨を有する。
【0009】
尚、本発明で用いる高脱塩率を有する逆浸透膜としては、ポリアミド系複合膜を用いることが推奨される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、含有液を高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて処理すると、非透過液中には被酸化物が濃縮されており、該非透過液を湿式酸化処理などの酸化分解処理工程や有効成分の回収工程に付すと、処理効率の向上,処理装置の小型化,熱的自立運転が図れることを見出した。
【0011】
また高脱塩率を有する逆浸透膜で処理される含有液のpHを4以上にすると、該含有液中に含まれる酢酸などの有機化合物および/またはアンモニアなどの窒素化合物に対する排除率が飛躍的に向上することを見出した。
【0012】
即ち、本発明の処理方法では、炭素数2以上の有機化合物および/または窒素化合物含有液を、高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて処理し、非透過液中に有機化合物および/または窒素化合物を濃縮させる逆浸透膜処理工程と、得られた非透過液を酸化処理および/または分解処理する酸化処理工程に付すところに一つの特徴を有している。
【0013】
本発明に係る処理方法で処理される液の種類は特に限定されず、例えば化学プラント,電子部品製造設備,食品加工設備,金属加工設備,金属めっき設備,印刷製版設備,写真設備等の各種産業プラント,更に火力発電や原子力発電などの発電設備などからの液でもよく、具体的にはEOG製造設備,メタノール,エタノール,高級アルコールなどのアルコール製造設備からの液,特にアクリル酸,アクリル酸エステル,メタクリル酸,メタクリル酸エステルなどの脂肪族カルボン酸やそのエステル,或いはテレフタル酸,テレフタル酸エステルなどの芳香族カルボン酸もしくは芳香族カルボン酸エステルの製造設備から排出される有機物含有液が推奨される。またアミン,イミン,アンモニア,ヒドラジン等の窒素化合物を含有している液でもよい。また下水やし尿などの生活排液であってもよい。或いはダイオキシン類やフロン類,フタル酸ジエチルヘキシル,ノニルフェノールなどの有機ハロゲン化合物や環境ホルモン化合物等の有害物質を含有している液でも良い。これらの中でも特に酢酸および/またはアンモニアを含有する液が推奨されるが、要するに炭素数2以上の有機化合物および/または窒素化合物含有液であれば全て包含される。
【0014】
この様な液を高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて処理すると、有機化合物(酢酸など)および/または窒素化合物(アンモニアなど)等を非透過液中に濃縮することができる。
【0015】
尚、被酸化物量は、例えばTOD,ThOD,COD(Cr),COD(Mn),TOC,BOD,全窒素、あるいは特定成分の測定値から算出することができる。
【0016】
逆浸透膜で処理される含有液をMF膜,UF膜などの各種ろ過設備を用いて予め固液分離処理を行ってから逆浸透膜で処理を行っても良い。
【0017】
本発明において「高脱塩率を有する逆浸透膜」とは、圧力1.47MPa(Gauge),pH6.5,温度25℃の条件下で0.15%NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が98.0%以上,より好ましくは99.0%以上,更に好ましくは99.5%以上を示す逆浸透膜であって、且つ分子量100未満の有機酸、例えば酢酸に対して高い分離性能(排除率60%以上,好ましくは70%以上,更に好ましくは80%以上)を有する逆浸透膜を意味し、この様な逆浸透膜としては、例えば架橋ポリアミド系や芳香族ポリアミド系などを含むポリアミド系,脂肪族アミン縮合物系,複素環ポリマー系の逆浸透膜等が例示される。これらの中でも特に架橋ポリアミド系や芳香族ポリアミド系等のポリアミド系逆浸透膜は有機酸および/またはアンモニアに対する分離性が高いので推奨される。
【0018】
尚、酢酸セルロース系,ポリエチレン系,ポリビニルアルコール系,ポリエーテル系などの逆浸透膜の様に分子量100未満の有機酸、例えば酢酸に対して分離性能(排除率60%未満)が低い逆浸透膜は高脱塩率を有していても好ましくない。
【0019】
逆浸透膜の膜形態としては、非対称膜,複合膜などの各種膜形態を用いることが出来るが、これらのうち特に複合膜が推奨され、本発明では逆浸透膜としてポリアミド系複合膜を用いることが推奨される。
【0020】
本発明で用いられる逆浸透膜の膜モジュールは特に限定されず、例えば平膜型モジュール,中空糸型モジュール,スパイラル型モジュール,円筒型モジュール,プリーツ型モジュールなどのいずれであってもよく、特にモジュールの膜面積が大きく、装置のコンパクト化に好適であるスパイラル型モジュールが望ましい。
【0021】
この様な高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて含有液を処理すると、非透過液中に有機化合物および/または窒素化合物を濃縮することができ、該非透過液を酸化処理工程や回収工程に付すと処理効率向上を図ることができる。
【0022】
また透過液には被酸化物がほとんど含まれておらず、高度に浄化された処理液であるので、生物処理等の従来行われていた酢酸処理工程などに付すことなく、工業用水や生活用水として再利用することができる。また該透過液に更に高度浄化処理を施して得られた処理水は純水として再利用することもできる。
【0023】
尚、高脱塩率を有する逆浸透膜を用いても含有液のpHが低い場合には、酢酸などの低分子量有機化合物は逆浸透膜を透過してしまい、非透過液中に十分に濃縮することができず、透過液の浄化性も低下する。また含有液中に含まれる有機化合物(特に有機酸)および/またはアンモニアは夫々有機酸塩,アンモニウム塩とすれば、逆浸透膜での被酸化物に対する排除率を高めることができる。
【0024】
有機酸を塩にする方法としては、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンを添加することが望ましい。
【0025】
添加されたアルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンは、処理液中に含まれる有機酸とイオン結合して、有機酸塩を形成し、分子サイズが大きくなるので逆浸透膜のこれら被酸化物に対する分離性能(排除率)が向上する。また有機酸はアルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンの添加によって負の電荷を有する様になり、負の電荷を有する逆浸透膜と静電反撥を起こし、逆浸透膜の分離性能が向上する。
【0026】
尚、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンを含有液に添加する場合、含有液を逆浸透膜で処理するまでに添加すればよい。
【0027】
この際、有機酸全量に対してアルカリ金属イオン及び/またはアンモニウムイオンの含有量が50モル%以上となる様に添加すると、逆浸透膜の分離性能を更に高めることができるので望ましい。
【0028】
またアンモニアを塩にする方法としては、有機酸および/または無機酸を添加することが好ましいが、有機酸は、透過液の浄化性を低下させるため、硫酸などの無機酸を添加することが望ましい。
【0029】
添加された有機酸および/または無機酸は、処理液中に含まれるアンモニアとイオン結合して、アンモニウム塩を形成し、分子サイズが大きくなるので逆浸透膜のこれらの被酸化物に対する分離性能が向上する。
【0030】
尚、有機酸および/または無機酸は、含有液を逆浸透膜で処理するまでに添加すればよい。この際、処理液中に含まれるアルカリ成分全量に対して有機酸および/または無機酸を50モル%以上の含有量となる様に添加すると逆浸透膜の分離性能を更に高めることができる。
この時、被酸化物量は、例えばTOD,ThOD,COD(Cr),COD(Mn),TOC,BOD,全窒素,あるいは特定成分の測定値から算出することができる。
【0031】
また逆浸透膜の分離性能は、逆浸透膜で処理される含有液のpHが4以上であれば、逆浸透膜の分離性能が更に向上し、被酸化物に対する逆浸透膜の排除率が上がり、得られた非透過液を用いた酸化処理工程を飛躍的に向上させることができる。
【0032】
含有液中の有機酸含有率が高い場合は、好ましくはpH4以上、より好ましくはpH5以上、更に好ましくはpH6以上となる様に調整することが望ましい。pHが9を超えると逆浸透膜の分離性能が低下することが多いため、含有液のpH上限はpH9とすることが好ましく、より好ましくはpH8、更に好ましくはpH7.5である。
【0033】
また含有液中のアンモニア含有率が高い場合は、好ましくはpH4以上、より好ましくはpH5以上、更に好ましくはpH6以上となる様に調整することが望ましいが、pHを高くし過ぎると逆浸透膜の分離性能が低下するので、好ましくはpH9以下、より好ましくはpH8以下にすることが推奨される。
【0034】
含有液を上記逆浸透膜によって処理すると、有機化合物および/または窒素化合物(アンモニウム塩)は非透過液中に補足されているので、該非透過液を用いれば、効率よく酸化処理工程、あるいは回収工程を行うことができる。
【0035】
本発明における酸化処理工程としては、湿式酸化処理,超臨界酸化処理,オゾン酸化処理,過酸化水素を用いた酸化処理,過塩素などを用いた酸化処理,亜硝酸を用いた酸化処理,紫外光を用いた酸化処理,電解を用いた酸化処理,生物処理法や種々の化学的処理法が例示され、目的に合わせて自由に組合せて用いることもできるが、特に湿式酸化処理を用いることが推奨される。
【0036】
以下、図1の処理装置を用いて非透過液を湿式酸化処理する方法について説明する。図1は酸化処理工程の一つとして湿式酸化処理を採用した場合の処理装置の一実施態様を示す概略図であるが、本発明で用いられる装置はこれに限定する趣旨では決してない。
【0037】
含有液を上述したような高脱塩率を有する逆浸透膜で処理し、得られた非透過液は、液ライン6を通じて液タンク18に供給されるが、液タンク18を設けなくてもよい。また後述する処理液は、濃縮液返還ライン19を通じて該液タンク18に供給される場合があるが、該処理液は任意の位置で非透過液に供給してもよい。
【0038】
該非透過液は液タンク18から液供給ポンプ5により加熱器3に送られる。この際の空間速度は特に限定されず、反応塔の処理能力によって適宜決定すればよいが、通常は、反応塔あたりの空間速度で0.1hr-1〜10hr-1,より好ましくは0.2hr-1〜5hr-1,更に好ましくは0.3hr-1〜3hr-1となるように調整することが推奨される。空間速度が0.1hr-1未満の場合、非透過液の処理量が低下して、過大な設備が必要となり、逆に10hr-1を超える場合には、反応塔内での被酸化物の酸化処理が不十分になる。
【0039】
本発明で用いることができる湿式酸化処理は酸素含有ガス存在下、もしくは不存在下のいずれの条件でも行うことが出来るが、非透過液中の酸素濃度を高めると反応塔内での酸化処理効率を向上させることができるので、非透過液に酸素含有のガスを混入させることが望ましい。
【0040】
酸素含有ガスの存在下に酸化処理を行う場合には、酸素含有ガスを酸素含有ガス供給ライン10より導入し、コンプレッサー9で昇圧した後、非透過液が加熱器3に供給される前に混入することが望ましい。
【0041】
本発明で用いることの出来る酸素含有ガスとしては、酸素分子および/またはオゾンを含有するガスであれば特に限定されず、純酸素,酸素富化ガス,空気等でもよく、あるいは過酸化水素水や、他のプラントで生じた酸素含有の排ガスを利用してもよい。これらの中でも空気を用いることが経済的観点から推奨される。
【0042】
酸素含有ガスを供給する場合の供給量は特に限定されず、非透過液中の被酸化物を酸化する能力を高めるのに有効な量を供給すればよい。酸素含有ガスの供給量は例えば、酸素含有ガス流量調節弁11を設けることによって供給量を適宜調節することが出来る。酸素含有ガスの供給量として好ましくは、非透過液中の被酸化物の理論酸素要求量の0.5〜5.0倍、より好ましくは0.7倍〜3.0倍の酸素量であることが推奨される。酸素含有ガスの供給量が0.5倍未満である場合は、被酸化物が十分に酸化および/または分解されずに湿式酸化処理を経て得られた処理液中に比較的多く残留する。また5.0倍を超えて酸素を供給しても酸化能力が飽和する。
【0043】
尚、本発明において「理論酸素要求量」とは、排水中の被酸化物を窒素,二酸化炭素,水,灰分にまで酸化,分解するのに必要な酸素量を意味し、理論酸素要求量はCOD(Cr)によっても求めることができる。
【0044】
次に加熱器3に送られた非透過液は予備加熱された後、反応塔1に供給される。反応塔内での非透過液の温度は他の条件にも影響されるが、370℃を超える温度に加熱されると、非透過液の液相を保持するのに高い圧力を加えなければならず、そのために設備の大型化,ランニングコストの上昇をもたらすので、加熱温度は好ましくは270℃以下,より好ましくは230℃以下,より更に好ましくは170℃以下とすることが望ましい。一方、温度が80℃未満では被酸化物の酸化分解処理を効率的に行うことが困難になるので、好ましくは100℃以上,より好ましくは110℃以上に加熱することが望ましい。
【0045】
尚、非透過液を加熱する時期は特に限定されず、上述した通り予め加熱した非透過液を反応塔に供給してもよいし、或いは、反応塔内に供給した後に加熱してもよく、また蒸気などの熱源を非透過液に供給してもよい。
【0046】
尚、本発明で用いられる湿式酸化法において、反応塔の数,種類,形状等は特に限定されず、通常の湿式酸化処理に用いられる反応塔を単数又は複数組合せて用いることができ、例えば単管式の反応塔や多管式の反応塔などを用いることができる。また複数の反応塔を設置する場合、目的に応じて反応塔を直列または並列にするなど任意の配置とすることができる。
【0047】
非透過液の反応塔への供給方法としては、気液上向並流,気液下向並流,気液向流など種々の形態を用いることができ、またこれらの供給方法を2以上組合せても良い。
【0048】
湿式酸化での処理に固体触媒を用いると、被酸化物の酸化処理効率を向上することができると共に、固体触媒を用いない場合に比べて、反応塔内の処理温度を下げることができるので望ましい。本発明で用いることができる固体触媒は特に限定されないが、例えばマンガン,コバルト,ニッケル,銅,セリウム,銀,白金,パラジウム,ロジウム,金,イリジウム,ルテニウムの群から選ばれる少なくとも1種を含有する固体触媒が推奨される。これらの元素の含有量は特に限定されないが、固体触媒中に好ましくは0.05〜25質量%,より好ましくは0.05〜10質量%の割合で含有されていることが望ましい。また固体触媒には、上記元素に加え、チタン,ジルコニウム,アルミニウム,ケイ素,鉄,活性炭から選ばれる少なくとも1種以上を含有させることが望ましい。
【0049】
上記固体触媒の形状は特に限定されず、例えばペレット状,球状,粒状,リング状あるいはハニカム状等、任意の形状で用いることができる。
【0050】
湿式酸化処理を用いた場合、上記固体触媒を数種類用いてもよく、また複数の反応塔を用いる場合には、固体触媒を用いた反応塔と、固体触媒を用いない反応塔を組合せることもでき、固体触媒の使用方法は特に限定されるものではない。
【0051】
また反応塔内にはこれらの固体触媒以外にも、気液の攪拌,接触効率の向上,気液の偏流低減等を目的として、反応塔に種々の充填物,内作物などを組み込んでもよい。
【0052】
一方、非透過液を高温にしすぎると反応塔内で非透過液がガス状態となるため、触媒表面に有機物,無機物などが付着し、触媒の活性が劣化することがある。従って高温下でも非透過液が液相を保持できる様に反応塔内に圧力を加えることが推奨される。また湿式酸化装置の排ガス出口側に圧力調整弁を設け、反応塔内で非透過液が液相を保持できるように処理温度に応じて圧力を適宜調節することが望ましく、例えば処理温度が80℃以上,95℃未満の場合には、大気圧下においても排水は液相状態であり、経済性の観点から大気圧下でもよいが、処理効率を向上させるためには加圧することが好ましい。また処理温度が95℃以上の場合、大気圧下では排水が気化することが多いため、処理温度が95℃以上,170℃未満の場合、0.2〜1MPa(Gauge)程度の圧力、処理温度が170℃以上,230℃未満の場合、1〜5MPa(Gauge)程度の圧力、また処理温度が230℃以上の場合、5MPa(Gauge)超の圧力を加え、排水が液相を保持できる様に圧力を制御することが望ましい。
【0053】
非透過液中の被酸化物は反応塔1内で酸化処理されるが、本発明において「酸化」とは、酢酸を二酸化炭素と水にする酸化分解処理、酢酸を二酸化炭素とメタンにする脱炭酸の分解処理,尿素をアンモニアと二酸化炭素にする加水分解処理,アンモニアやヒドラジンを窒素ガスと水にする酸化分解処理,ジメチルスルホキシドを二酸化炭素,水,硫酸イオンなどの灰分にする酸化及び酸化分解処理、ジメチルスルホキシドをジメチルスルホンやメタンスルホン酸にする酸化処理などが例示され、即ち易分解性の被酸化物を窒素ガス,二酸化炭素,水,灰分などにまで分解する処理や、難分解性の有機物や窒素化合物を低分子量化する分解処理、若しくは酸化する酸化処理など種々の酸化処理および/または分解処理を含む意味である。
【0054】
尚、湿式酸化処理を経て得られた処理液中には、被酸化物のうち難分解性の有機物が低分子化されて残存していることが多く、低分子化された有機物としては低分子量の有機酸、特に酢酸が残留していることが多い。また非透過液中の被酸化物として窒素化合物が多い場合、湿式酸化処理を経て得られた処理液中にはアンモニアが残留していることが多く、特に固体触媒を用ずに湿式酸化処理を行うと、湿式酸化処理後の処理液中にアンモニアを多量に残存させることができる。
【0055】
反応塔で酸化処理された非透過液は、処理液ライン12から取り出され、必要に応じて冷却器4で適度に冷却された後、気液分離器13によって気体と液体に分離される。その際、液面コントローラーLCを用いて液面状態を検出し、液面制御弁15によって気液分離器内の液面が一定となるように制御することが望ましい。或いは酸化処理された非透過液を冷却せずに、または図3に示す様に冷却器34である程度冷却した後に、圧力制御弁44を介して排出し、その後で気液分離器43によって気体と液体に分離しても良い。
【0056】
ここで、気液分離器内の温度は、特に限定されないが、反応塔で酸化処理された非透過液中には二酸化炭素が含有されているため、例えば気液分離器内の温度を高くして液中の二酸化炭素を放出させたり、あるいは気液分離器で分離した後の液体を空気等のガスでバブリング処理して液体中の二酸化炭素を放出することができる。
【0057】
尚、本発明で用いられる湿式酸化処理を行うに当たり、加熱器及び冷却器には熱交換器を用いることもでき、これらを適宜組合せて使用することができる。
【0058】
湿式酸化処理を経て得られた処理液の一部または全部を、有機酸(有機酸塩)やアンモニア(アンモニウム塩)など処理液中含まれる有効成分の回収工程に付しても良い。このときの回収方法としては特に限定されず、例えば直接蒸留によって回収する方法、有機溶媒を用いて有機酸を抽出し、その後抽出液を蒸留により脱水,脱溶媒して有機酸を回収する方法など公知の回収方法を用いることができる。または処理液の一部または全部を直接的に、または間接的に湿式酸化処理工程に再度付しても良い。あるいは非透過液の全部又は一部を該非透過液中に含まれる有機化合物および/または窒素化合物の回収工程に付しても良い。
【0059】
また本発明に係る回収工程後の残留液,逆浸透膜の透過液,酸化処理後の処理液などの一部または全部をメタン醗酵等の生物処理に付して処理してもよく、あるいは燃焼処理などの他の処理を実施することも出来る。
【0060】
また酸化処理後の処理液を前述する高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて処理することもできる。
【0061】
また更に湿式酸化処理を経て得られた処理液および/または湿式酸化処理後、回収工程に付して得られた残存液を再度湿式酸化処理に循環させて処理すると、循環させた残存液中の被酸化物をほぼ完全に酸化処理することができる。
【0062】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。
【0063】
【実施例】
実施例1
脂肪族カルボン酸および脂肪族カルボン酸エステル製造プロセスから排出されたカルボン酸などの炭素数2以上の有機化合物を含有する排水を、逆浸透膜で処理した。該排水のCOD(Cr)は6.5g/リットル,pHは3.1であった。また該排水は、全TOC成分中の約94%が酢酸であった。該排水に水酸化ナトリウムを添加し、排水のpHを6.2となる様に調節してから逆浸透膜で処理をした。
【0064】
(逆浸透膜処理工程)
該排水を図2で示される様な逆浸透膜処理装置20に3MPa(Gauge)の圧力を保持する様に供給し、非透過液量が供給排水量の約1/3となるように制御した。逆浸透膜には、0.15%NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が99.5%の性能を有するポリアミド系複合膜を使用した。得られた透過液のCOD(Cr)は0.05g/リットルであった。また非透過液のCOD(Cr)は19.4g/リットルであった。
【0065】
比較例1
(逆浸透膜処理工程)
pHを調節しなかった以外は、実施例1の排水,逆浸透膜処理工程を用いて実施例1と同じ条件で排水を処理した。得られた透過液のCOD(Cr)は2.7g/リットルであった。また非透過液のCOD(Cr)は14.2g/リットルであった。
【0066】
比較例2
(逆浸透膜処理工程)
逆浸透膜には0.15NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が95%の性能を有する酢酸セルロース系の膜を使用した以外は、実施例1と同じ条件で排水を処理を行った。得られた透過液のCOD(Cr)は4.7g/リットルであった。また非透過液のCOD(Cr)は10.1g/リットルであった。
実施例2
半導体製造プロセスから排出された硫安とナトリウムイオンと炭酸イオンを含有する排水を逆浸透膜処理装置を用いて処理した。該排水のアンモニア濃度は1.5g/リットル,pHは7.2であった。
【0067】
(逆浸透膜処理)
該排水を逆浸透膜処理装置20に2MPa(Gauge)の圧力を保持する様に供給し、非透過液量が供給排水量の約1/4となるように制御した。逆浸透膜には、0.15%NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が99.5%の性能を有するポリアミド系複合膜を使用した。得られた透過液のアンモニア濃度は0.1g/リットル未満であった。また非透過液のアンモニア濃度は5.9g/リットルであった。
【0068】
比較例3
(逆浸透膜処理工程)
逆浸透膜に0.15NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が95%の性能を有する酢酸セルロース系の膜を使用した以外は、実施例2と同じ方法で排水を処理した。得られた透過液のCOD(Cr)は3.0g/リットルであった。また非透過液のCOD(Cr)は6.2g/リットルであった。
【0069】
実施例3
(酸化処理工程)
実施例1で得られた非透過液(COD(Cr)19.4 g/リットル)を図3に示す湿式酸化処理装置を使用し、下記の条件で100時間処理を行った。湿式酸化処理には直径26mm,長さ3000mmの円筒状の反応塔31を用い、内部には、活性炭と白金を主成分とし、白金の含有量が0.1質量%の触媒を1.0リットル充填した。排水は排水供給ポンプ35によって0.5リットル/hの流量で昇圧フィードさせた後、加熱器33で120℃に加熱し、反応塔31の上部より供給し、気液下向並流で処理した。尚、空気を酸素含有ガス供給ライン40より供給し、コンプレッサー39で昇圧した後、O/COD(Cr)=0.99の割合になる様に酸素含有ガス流量調節弁41で流量を制御して加熱器33の手前から排水に供給した。反応塔31では、電気ヒーター32を用いて排水を120℃に保温し酸化・分解処理を行った。排水は反応塔31で処理された後、処理液ライン42を経て、冷却器34で冷却し、圧力制御弁44から解圧排出し、気液分離器43で気液分離した。尚、圧力制御弁44では圧力コントローラーPCで圧力を検出し、0.6MPa(Gauge)の圧力を保持する様に制御した。得られた処理液のCOD(Cr)は0.14g/リットル,pHは7.8であった。また全TOC成分中の99%以上が酢酸であった。
【0070】
実施例4
(逆浸透膜処理工程)
実施例3で得られた処理液を実施例1で用いた様な逆浸透膜処理装置に1MPa(Gauge)の圧力を保持する様に供給し、非透過液量が供給処理液量の1/5となるように処理を行った。逆浸透膜には0.15NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が99.5%の性能を有するポリアミド系複合膜を使用した。得られた透過液のCOD(Cr)は0.01g/リットル未満であった。また非透過液のCOD(Cr)は0.7g/リットルであった。
【0071】
実施例5
(酸化処理工程)
実施例2で得られた非透過液(アンモニア濃度5.9g/リットル)を酸化処理工程に付した。酸化処理工程には図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、下記の条件で湿式参加処理を100時間行った。直径26mm,長さ3000mmの円筒状の反応塔1を使用し、反応塔1の内部にはチタニアと白金を主成分とする、白金の含有量が0.3重量%の触媒を1.0リットル充填した。排水を排水供給ポンプ5で0.5リットル/hの流量で昇圧フィードした後、加熱器3で160℃に加熱し、反応塔1の底より供給した。尚、空気を酸素含有ガス供給ライン10より供給し、コンプレッサー9で昇圧した後、O/COD(Cr)=2.0の割合となる様に酸素含有ガス流量調節弁11で流量を制御して加熱器3の手前から排水に供給した。反応塔1では、電気ヒーター2を用いて排水を160℃に保温し酸化・分解処理を実施した。処理された排水は冷却器4で30℃に冷却された後、気液分離器13で気液分離した後、液面制御弁15から排出した。尚、圧力制御弁14によって0.9MPa(Gauge)の圧力を保持する様に圧力コントローラーPCで圧力を制御した。得られた処理液のアンモニア濃度は0.3g/リットルであった。
【0072】
実施例6
(酢酸回収工程)
溶媒抽出法および蒸留法を用いて、実施例3で得られた処理液を酢酸回収工程に付した。溶媒抽出法では容量1リットルの分液ロートを用い、酢酸エチルを抽剤に使用して3回抽出した。得られた3回の抽剤相は混合後、蒸留装置にて蒸留処理して酢酸を回収した。その結果、回収工程に付した処理液中の酢酸の79%を回収することができた。また、回収した酢酸の純度は99%以上であった。
【0073】
実施例7
(酢酸回収工程)
溶媒抽出法および蒸留法を用い、実施例4で得られた非透過液を酢酸回収工程に付した。溶媒抽出法では容量1リットルの分液ロートを用い、酢酸エチルを抽剤に使用して3回抽出した。得られた3回の抽剤相は混合後、上流装置にて蒸留処理して酢酸を回収した。その結果、回収に付した非透過液中の酢酸の88%を回収することができた。また回収した酢酸の純度は99%以上であった。
【0074】
実施例8
(アンモニア回収工程)
実施例5で得られた処理液を蒸留法を用いたアンモニア回収工程に付してアンモニアを回収した。その結果、アンモニア回収工程に付した処理液中のアンモニアの82%を回収することができた。
【0075】
実施例9
(酢酸回収工程)
溶媒抽出法および蒸留法を用い、実施例1で得られた非透過液を酢酸回収工程に付した。溶媒抽出法では容量1リットルの分液ロートを用い、酢酸エチルを抽剤に使用して3回抽出した。得られた3回の抽剤相は混合後、蒸留装置にて蒸留処理して酢酸を回収した。その結果、回収に付した非透過液中の酢酸の98%を回収することができた。また回収した酢酸の純度は約95%であった。
【0076】
実施例10
化学プラントから排出された酢酸を多く含有する排水を、逆浸透膜で処理した。該排水のCOD(Cr)は8.7g/リットル、pHは2.9であった。また該排水は、全TOC成分中の99%以上が酢酸であった。該排水に水酸化ナトリウムを添加し、排水のpHを7.5となるように調節してから逆浸透膜での処理を実施した。
【0077】
(逆浸透膜処理工程)
該排水を図4で示されるような逆浸透膜処理装置50に5MPa(Gauge)の圧力を保持するように供給し、非透過液が供給排水の約1/3となるように制御した。逆浸透膜には、0.15%NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が99.5%の性能を有する本発明にかかるポリアミド系複合膜を使用した。得られた透過液のCOD(Cr)は0.1g/リットル未満であった。また非透過液のCOD(Cr)は26g/リットルであった。
【0078】
(酢酸回収工程)
そして得られた非透過液は溶媒抽出法および蒸留法を用い、酢酸回収工程に付した。溶媒抽出法では容量1リットルの分液ロートを用い、酢酸エチルを抽剤に使用して3回抽出した。得られた3回の抽剤相は混合後、蒸留装置にて蒸留処理して酢酸を回収した。その結果、回収に付した非透過液中の酢酸の99%を回収することができた。また回収した酢酸の純度は99%以上であった。
【0079】
【発明の効果】
含有液を、高脱塩率を有する逆浸透膜を用いて処理すると、非透過液中には被酸化物が濃縮されており、該非透過液を湿式酸化処理などの酸化分解処理工程や有効成分の回収工程に付すと、処理効率の向上,処理装置の小型化,が達成できる。特に湿式酸化処理の場合、湿式酸化処理装置の小型化が可能になり、また湿式酸化を熱的な自立運転が可能となり、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0080】
尚、この様な処理効率の向上は実験機サイズでは十分な処理効率向上が得られないが、通常の酸化処理工程で用いる設備では飛躍的な処理効率の向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る湿式酸化処理の処理装置の実施態様の一つである。
【図2】本発明に係る排水の処理方法の概略の一つである。
【図3】本発明に係る湿式酸化処理の処理装置の実施態様の一つである。
【図4】本発明に係る排水の処理方法の概略の一つである。
【符号の説明】
1,31 反応塔
2,32 電気ヒーター
3,33 加熱器
4,34 冷却器
5,35 液供給ポンプ
6,36 液供給ライン
7,37 アルカリ供給ポンプ
8,38 アルカリ供給ライン
9,39 コンプレッサー
10,40 酸素含有ガス供給ライン
11,41 酸素含有ガス流量調節弁
12,42 処理液ライン
13,43 気液分離器
14,44 圧力制御弁
15 液面制御弁
16,46 ガス排出ライン
17,47 処理液排出ライン
18,48 液タンク
19,49 濃縮液返還ライン
20,50逆浸透膜処理装置
LC 液面コントローラー
PC 圧力コントローラー

Claims (2)

  1. 炭素数2以上の有機酸含有液を処理するにあたり、該含有液のpHを4以上9以下とし、高脱塩率(圧力1.47MPa(Gauge),pH6.5,温度25℃の条件で0.15%NaCl水溶液に対して脱塩率(排除率)が98.0%以上を示し、且つ分子量100未満の有機酸に対して排除率60%以上)を有するポリアミド系複合膜(逆浸透膜)を用いて非透過液と透過液とに分離し、該非透過液の全部または一部を固体触媒を用いた湿式酸化処理工程に付すことを特徴とする有機酸含有液の処理方法。
  2. 前記湿式酸化処理工程を経て得られた処理液の全部または一部を有機酸の回収工程に付す請求項1に記載の方法。
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