JP3506371B2 - 擁壁緑化ブロックおよび擁壁緑化構造 - Google Patents

擁壁緑化ブロックおよび擁壁緑化構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は擁壁緑化ブロック
および擁壁緑化構造に関し、特に安定性と保水性にすぐ
れたものとして開発されたものである。
【0002】
【従来の技術】これまで、擁壁の壁面を緑化する方法と
して、例えば地山法面上にボックス状の擁壁ブロックを
積み重ね、各擁壁ブロックに土砂と肥料を中詰めして、
自然に植物が枝や根を張って生い茂るようにした植生緑
化ブロック工法、緑化ブロック工法が一般に知られてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これまでの擁
壁の緑化工法はいずれも、擁壁ブロックがボックス状を
なすことで主に軽量化とコンクリートの節約化を図った
もので、植物はブロック間の隙間に生育するのみで、壁
面全体を完全に覆い隠せるほどの緑化は不可能なもので
あった。
【0004】このため、擁壁の壁面全体を緑化すること
により自動車の騒音を吸収したり、騒音の乱反射を防い
だり、さらには最近の地球温暖化の大きな要因となって
いる二酸化炭素を吸収させようとする試みはほとんど期
待できないものであった。
【0005】また、これまでの緑化構造の擁壁には専用
の潅水施設は特に布設されておらず、潅水は専ら降雨に
依存している場合が多く、このため降雨量がすくない乾
燥時期の灌水が問題で、特にこの乾燥時期の降雨量が少
ないために植物が繁茂しないことが多かった。
【0006】なお、常用の潅漑施設は擁壁外部に灌水装
置を設置し、配水管を張り巡らし制御する工法が一般的
に知られているが、工事が大規模化し、しかも工費も嵩
むことから公共工事縮減化傾向にある今日の状況にそぐ
わないものであった。
【0007】この発明は以上の課題を解決するためにな
されたもので、特に保水性と安定性にすぐれ、長期にわ
たる植物の生育を可能にした擁壁緑化ブロックおよび擁
壁緑化構造を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の擁壁緑化
ブロックは、所定間隔に配置された表面板と背面板、こ
の表面板と背面板との間に配置された底面板と連結板、
これらの板からなる中詰め材充填空間とをそれぞれ有
し、鉄筋コンクリートで一体成形されたブロック本体
と、前記表面板に取り付けられた植生基盤とからなり、
前記表面板、背面板および底面板は両端が薄く、中央に
向かって徐々に厚くなるように形成され、前記表面板と
前記背面板に植生基盤側に連通する水通し孔をそれぞれ
有し、かつ前記表面板の下端部に前記植生基盤の下端部
を支持する固定溝を横方向に連続して有し、前記植生基
盤は合成繊維または無機繊維、もしくは植物繊維を重層
することにより成形された不織布のマット状成形物に種
子、土壌、保水剤および栄養剤との混練物を重層して形
成され、かつ前記固定溝に挿入して取り付けられてなる
とを特徴とするものである。
【0009】請求項2の擁壁緑化ブロックは、請求項1
の擁壁緑化ブロックにおいて、植生基盤は、表面板の表
側または裏側に取り付けてあることを特徴とする。
【0010】この発明に係る請求項3の擁壁緑化構造
は、請求項1または2の擁壁緑化ブロックを地山法面に
沿って複数積み重ね、かつ各擁壁緑化ブロックの中詰め
材充填空間に中詰め材を充填してなることを特徴とす
る。
【0011】請求項4記載の擁壁緑化構造は、請求項3
記載の擁壁緑化構造において、最上段の擁壁緑化ブロッ
クを貯水用ブロックとし、この貯水用ブロックとこれよ
り下方の擁壁緑化ブロックとの間に潅水管を布設し、
該灌水管の下端側は表面板の表側に開口してなることを
特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】図1(a)〜(c)は、この発明
に係る擁壁緑化ブロックの一例を示し、図において、擁
壁緑化ブロック1はブロック本体2とこのブロック本体
2の表側に取り付けられた植生基盤(マット)3とから
構成されている。
【0013】ブロック本体2は、地山法面Aの勾配にそ
って斜めに、かつ地山法面Aの面外方向に所定間隔おい
て配置された表面板4と背面板5、この表面板4と背面
板5との間に配置された底面板6および連結板7とをそ
れぞれ有し、鉄筋コンクリートによって一体的に成形さ
れている。
【0014】表面板4と背面板5はともに矩形板状に形
成され、かつ地山法面Aの面外方向に所定間隔をおいて
配置されていることで、双方の板間に土砂や砕石、客土
などの中詰め材を充填するための中詰め材充填空間8が
形成されている。
【0015】また、表面板4には中詰め材充填空間8側
から表面板4の表側に連通する水通し孔4aが数カ所に
形成され、さらに表面板4の下端部には植生基盤3の下
端部を挿入して植生基盤3を表面板4の上に保持固定す
るための固定溝9が表面板4の横方向に連続して突設さ
れている。
【0016】なお、水通し孔4aと同様の水通し孔は背
面板5にも形成されていてよい。また、連結板7の上端
部は中詰め材充填空間8が上端部まで完全に仕切られな
いように凹状に形成されている。さらに、表面板4、背
面板5および底面板6は両端部分が薄く、中央に向かっ
て徐々に厚くなるように形成されていることで、ブロッ
ク本体2の剛性を保持しつつ全体の軽量化が図られてい
る。
【0017】植生基盤3としては、例えば合成繊維また
は無機繊維、もしくは植物繊維を重層纏絡することによ
り成形された不織布のマット状成形物に、これを一体成
形し、植物が繁茂できるように植物の種子、土壌、保水
剤および栄養剤と水との混練物を重層したものが設置さ
れている。
【0018】また、植生基盤3の表面は特殊加工によ
り、混練物が流失しないよう表面を特殊加工してある。
なお、植生基盤3としては、他に人工芝でもよい。
【0019】また、植生基盤3は、下端部を表面板4の
下端部に突設された固定溝9に単に挿入して固定されて
いることで、必要に応じて別のものと簡単に交換するこ
とができる。発明の実施の形態2.図2は、この発明に
係る擁壁緑化構造の一例を示し、地山法面Aの下端部に
コンクリートによる布基礎10が施工され、この布基礎
10の上に擁壁緑化ブロック1が複数、地山法面Aを覆
うように積み重ねられ、かつ各擁壁緑化ブロック1の中
詰め材充填空間8に土砂や砕石、あるいは客土などの中
詰め材11がそれぞれ充填されている。
【0020】また、各擁壁緑化ブロック1の植生基盤3
として、周辺環境や季節に応じて最も適した植物の種子
を混ぜ込んだものが取り付けられている。
【0021】このような構成において、表面板4の上に
取り付けられた植生基盤3と中詰め材11が充填されて
いる中詰め材充填空間8とが、表面板4に形成された水
通し孔4aを介して連通していることで、中詰め材充填
空間8内の中詰め材11に浸透した雨水などが水通し孔
4aを介して植生基盤3側に灌水される。したがって、
植生基盤3の保水性が維持され、長期にわたる植物の育
成が可能となる。この場合、水通し孔4aと同様の水通
し孔が背面板5にも形成されていれば、地山側からも灌
水されるため植生基盤3の保水性はさら維持される。発
明の実施の形態3.図3は、この発明に係る擁壁緑化構
造の他の例を示し、図2の例において、最上段の擁壁緑
化ブロック1の上に貯水用ブロック12が設置され、こ
の貯水用ブロック12とその下側の擁壁緑化ブロック1
との間に潅水管13が布設されている。
【0022】また、貯水用ブロック12の上方に集水槽
14が埋設され、この貯水用ブロック12と集水槽14
との間に送水管15が布設されている。
【0023】貯水用ブロック12は擁壁緑化ブロック1
とほぼ同じ形状に成形され、擁壁緑化ブロック1の中詰
め材充填空間8に相当する部分が雨水などを溜めておく
貯水槽12aになっており、貯水槽12aには上蓋16
が被せられている。
【0024】なお、貯水用ブロック12と上蓋16はと
もに、鉄筋コンクリートによって成形されている。
【0025】灌水管13は、1個または上下に隣接する
複数の擁壁緑化ブロック1の中詰め材充填空間10を連
通して複数本布設されている。また、灌水管13の上端
側は貯水用ブロック12の貯水槽12aに接続され、下
端側は擁壁緑化ブロック1の表面板4を貫通して表面板
4の表側に開口している。
【0026】このような構成において、表面板4の上に
取り付けられた植生基盤3と中詰め材11が充填されて
いる中詰め材充填空間8とが、表面板4に形成された水
通し孔4aを介して連通していることで、中詰め材充填
空間8内の中詰め材11に浸透した雨水などが水通し孔
4aを介して植生基盤3側に灌水され、さらに、貯水槽
12aに溜まった雨水が灌水管13を介して植生基盤3
に灌水される。また、貯水槽12aには集水槽14に溜
まった雨水などが送水管15を介して給水される。した
がって、植生基盤3の保水力が維持され、特に降雨量の
すくない乾燥時期にも充分な灌水がなされるため、長期
にわたる植物の育成が可能となる。なお、符号17は貯
水槽12a内にゴミ等が流れ込まないようにするための
フィルターである。
【0027】
【発明の効果】この発明は以上説明したとおりであり、
擁壁緑化ブロックのブロック本体が所定間隔で配置され
た表面板と背面板、この表面板と背面板との間に配置さ
れた底面板と連結板、さらにこれらの板からなる中詰め
材充填空間とをそれぞれ有し、鉄筋コンクリートで一体
成形されているので、ボックス状に成形されているもの
の、中詰め材充填空間に土砂や砕石、あるいは客土など
の中詰土砂を充填することで、必要な重量を付与してき
わめて安定した擁壁を構築することができる。
【0028】また、表面板の上に取り付けられた植生基
盤と中詰材が充填された中詰め材充填空間とは、表面板
に形成された水通し孔を介して連通しており、この水通
し孔を介して充填空間内の中詰土砂から植生基盤に必要
な灌水がなされるため、植生基盤の保水が維持され、長
期にわたる植物の育成が図れる。
【0029】さらに、最上段に積層された貯水用ブロッ
クの貯水槽に溜まった雨水が灌水管を介して植生基盤に
灌水されることから、特に降雨量のすくない乾燥時期に
も充分な灌水がなされ、しかもポンプ等の動力を使用し
ないで自然灌水がなされるので、長期にわたる植物の育
成が可能となる。
【0030】したがって、本願発明の擁壁緑化構造は、
長期にわたる擁壁全面部の植生が可能なことにより、例
えば道路に面する擁壁に適用すれば、単なる擁壁面の緑
化方法としてだけでなく、植生基盤の吸音性を利用した
防音対策としても大いに寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】緑化ブロックの一例を示し、(a)は平面図、
(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】擁壁緑化構造の一例を示す擁壁の縦断面図であ
る。
【図3】擁壁緑化構造の一例を示す擁壁の縦断面図であ
る。
【符号の説明】 1 擁壁緑化ブロック 2 ブロック本体 3 植生基盤(植生マット) 4 表面板 4a 水通し孔 5 背面板 6 底面板 7 連結板 8 中詰め材充填空間 9 固定溝 10 布基礎 11 中詰土砂 12 貯水用ブロック 13 潅水管 14 集水槽 15 送水管 16 上蓋 17 フィルター
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−55634(JP,A) 特開 平10−266218(JP,A) 特開 平11−81350(JP,A) 特開 平10−338934(JP,A) 特開 平10−168911(JP,A) 特開 平6−189637(JP,A) 特開 平11−241352(JP,A) 特開 平11−280092(JP,A) 特開2000−96586(JP,A) 実開 昭62−91913(JP,U)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定間隔に配置された表面板と背面板、
    この表面板と背面板との間に配置された底面板と連結
    板、これらの板からなる中詰め材充填空間とをそれぞれ
    有し、鉄筋コンクリートで一体成形されたブロック本体
    と、前記表面板に取り付けられた植生基盤とからなり、
    前記表面板、背面板および底面板は両端が薄く、中央に
    向かって徐々に厚くなるように形成され、前記表面板と
    前記背面板に植生基盤側に連通する水通し孔をそれぞれ
    有し、かつ前記表面板の下端部に前記植生基盤の下端部
    を支持する固定溝を横方向に連続して有し、前記植生基
    盤は合成繊維または無機繊維、もしくは植物繊維を重層
    することにより成形された不織布のマット状成形物に種
    子、土壌、保水剤および栄養剤との混練物を重層して形
    成され、かつ前記固定溝に挿入して取り付けられてなる
    とを特徴とする擁壁緑化ブロック。
  2. 【請求項2】 植生基盤は、表面板の表側または裏側に
    取り付けてあることを特徴とする請求項1記載の擁壁緑
    化ブロック。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の擁壁緑化ブロッ
    クを地山に沿わせて複数段に積層し、かつ各擁壁緑化ブ
    ロックの中詰め材充填空間に中詰め材を充填してなるこ
    とを特徴とする擁壁緑化構造。
  4. 【請求項4】 最上段の擁壁緑化ブロックを貯水用ブロ
    ックとし、この貯水用ブロックとこれより下方の擁壁緑
    化ブロックとの間に潅水管を布設し、当該灌水管の下端
    側は表面板の表側に開口してなることを特徴とする請求
    項3記載の擁壁緑化構造。
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