JP4363770B2 - 鋼矢板親水護岸構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、十分な治水機能を有するとともに、景観、親水性等の環境保全に配慮した河川や湖沼等の護岸構造、さらには、土留め機能と景観や環境保全に配慮した道路・建築物等の山止め壁・土留め壁等に関する。
【0002】
【従来の技術】
景観、親水性等の環境保全に配慮した河川護岸構造として、用地制限の比較的少ない河川においては、十分な護岸や堤体の用地確保が可能であり緩やかな法面勾配が得やすいため、強度は低いものの極力自然の材料(土壌・植生・樹木・石等)を護岸構造の構成材料として使用する工法が用いられている。また、特に水流の速いところでは、鋼製ネット内に自然石等を投入した蛇篭を法面前面に積み重ねて防御工として使用する等の護岸工法が用いられている。
【0003】
護岸建設のための用地制限の比較的厳しい河川では、堤体・護岸を作るための広い用地が確保できないため、護岸の法面勾配を急にする必要があり、十分な強度を有し空隙内に土壌・肥料・保水材等を含むことにより植物の生育が可能としたポーラスコンクリート(緑化コンクリート)を施工したり、植物の生育が可能な根鉢部を有するコンクリートブロックを法面に積み上げることにより、護岸構造を構築している。
【0004】
また、護岸建設のための用地制限の厳しい河川では、鋼矢板を地中に鉛直に打設し、少ない用地においても広い河道面積を確保できる鋼矢板護岸が適用される場合が多い。一般的に鋼矢板壁面は硬質で鉛直な壁面形状となるため、植物の生育が困難であり景観・親水性が劣るが、鋼矢板壁面に植物が生育しやすいように水平面部を有する鋼製の植栽フィンを設けてその中に植生を行ない景観・親水性を高める護岸構造が提案されている(特開平08−12064号公報)。
【0005】
上記の景観・親水性等の環境保全に配慮した河川護岸構造としては、土・植生・樹木・石等の自然の材料を構成材料として使用することが望ましい。しかし、護岸・堤体が脆弱である場合が多く、洪水時の水流等の大きな外力に対して護岸強度の信頼性が低い。このとき、土・植生等の材料をたくさん投入することによって強度を高めることができるが、建設コストが高くなるという問題があった。
【0006】
また、空隙内に土壌・保水材等を充填したポーラスコンクリートや根鉢を有するコンクリートブロックを用いた護岸構造は、基礎構造の構築やコンクリートを打設するための仮設工事が必要であり、多数の施工重機が必要となる。そのため工期が長くなることから緊急を要する工事に不向きであり、しかも工費が高くなるという問題もある。
【0007】
さらに、護岸構造として十分な強度を有し、土壌・保水材等を充填するための所要の空隙量や根鉢面積を確保するためには、コンクリート部の厚さを厚くしたり、ブロック形状を大きくする必要がある。その結果、壁体幅が厚くなることから河道面積が狭くなるという問題があった。
【0008】
一方、通常の河川での水際部では、河川部からの水分や養分を吸収する植物と陸部の土壌から水分や養分を吸収する植物が連続的に変化する植物の生育空間が構成されるが、植栽フィンを取付けた鋼矢板護岸では、打設した鋼矢板により、河川部と陸部の自然環境を分断してしまうという問題がある。
【0009】
また、植物は鉛直面では生育しにくいため、植物が生育しやすいように鋼矢板壁面に設置した水平面部を有する植栽フィン内に植えた植物のみでは部分的な緑化は可能であるが、鋼矢板壁面全域の緑化が困難なため景観が劣る。しかも植栽フィンの取付けコストが高い等の問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明は、施工が容易で、高耐震性・高耐洗掘性等の優れた治水機能を有しつつ、壁面全面の緑化による修景と生物の生育空間として河川部と陸部の連続性を確保することにより、簡単に景観・親水性等の環境保全に配慮した河川や湖沼等の護岸構造を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
[第1の発明]
第1の発明は、地中に鋼矢板を傾斜して打設して、3分から5分の傾斜を有する斜面部を形成するとともに地盤より上の鋼矢板の突出部に開孔を有する鋼矢板壁の、河川側表面を植生基盤で被覆した護岸構造を特徴とする。
【0012】
[第2の発明]
第2の発明は、第1の発明において、植生基盤が内部に土壌・肥料・保水材・種子のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填した袋状物であり、袋状物を貫通するアンカー部材および袋状物表面に配置された押え部材で前記袋状物が鋼矢板壁に固定されたことを特徴とする。
【0013】
[第3の発明]
第3の発明は、第1の発明において、植生基盤が、空隙部に土壌・肥料・保水材のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填したポーラスコンクリートと前記ポーラスコンクリートの河川側表面に付着された種子を含む客土であり、鋼矢板壁に予め固定された定着部材により打設されたポーラスコンクリートが鋼矢板壁に固定されたことを特徴とする。
【0014】
[第4の発明]
第4の発明は、第1の発明において、植生基盤が、空隙部に土壌・肥料・保水材のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填したポーラスコンクリート製のプレキャストコンクリートブロックと前記プレキャストコンクリートブロックの河川側表面に付着された種子を含む客土であり、前記プレキャストコンクリートブロックに取付けられた連結部材により、前記プレキャストコンクリートブロックを鋼矢板凸部の平坦部に溶接固定し、かつ鋼矢板凹部と前記プレキャストコンクリートブロックの間隙に土壌を充填したことを特徴とする。
【0015】
[第5の発明]
第5の発明は、第1の発明において、植生基盤が、空隙に土壌・肥料・保水材のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填したポーラスコンクリートと、内部に土壌・肥料・保水材・種子のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填した袋状物であり、袋状物を貫通するアンカー部材および袋状物表面に配置された押え部材でポーラスコンクリートが打設された鋼矢板壁に前記袋状物が固定されたことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る河川護岸構造の一形態を示し、この護岸構造は、河川1の河床(地盤)2に斜め(約1:0.5の勾配、河床2に対して約65度)に連続して打ち込まれた鋼矢板3からなっている。
【0020】
鋼矢板壁4の河川側表面全面には、植生基盤5が取付けられており、鋼矢板壁4の裏側には陸部6の背面土7がある。
【0021】
本発明に係る護岸構造の鋼矢板は、鋼矢板壁面上に植物が生育しやすい環境を創造するため、地表面に対して傾斜するように打設される。
【0022】
鋼矢板を地表面に対して傾斜するように打設するのは、ポーラスコンクリートや袋状物等からなる比較的小型の植生基盤を鋼矢板壁面に取付けるだけで、鋼矢板壁面上に植物が生育しやすい環境が比較的簡易に創造できるためである。
【0023】
つまり、鋼矢板を地表面に対して鉛直に打設して鋼矢板壁を形成した場合には、鉛直面上では育成しにくいという植物本来の特性に加え、植物への雨水等の供給も十分に行なわれないことから、永続的に植物が生育しにくい。
【0024】
また、鋼矢板を地表面に対して鉛直に打設して形成した鋼矢板壁面に水平面部を有する植栽フィンを設置した場合には、部分的な緑化は可能であるが鋼矢板壁面全域の緑化は困難であり、しかも植栽フィンの取付けコストが高い等の問題が生じるためである。
【0025】
鋼矢板の傾斜は、限定するものではないが、2分勾配(1:0.2の勾配、地表面に対して78.7°)以上傾斜しているのが好適であり、3分勾配(1:0.3の勾配、地表面に対し矢板壁が73.3°)から5分勾配(1:0.5の勾配、地表面に対し矢板壁が63.4°)の傾斜が特に好適である。
【0026】
地中に傾斜して打設した鋼矢板3の地盤から上の突出部には、多数の開口8を設けるようにしてもよい。
【0027】
図2は、図1の実施形態に示される鋼矢板壁4の植生基盤5の取付け前の状態の斜視図であり、鋼矢板3の上側には直径が約20mmの開孔8が64個/m2程度で等間隔に設けられている。鋼矢板3に設けた開孔8の孔開けは、鋼矢板3の地盤への打設前又は打設後に行ってもよい。
【0028】
鋼矢板河川護岸の背面部の水位は高いため、鋼矢板に開孔を設けることで背面土から開孔を通して植生基盤への水分や養分の供給が図ることができ、植物の生育が更に容易となる。
【0029】
また、植生基盤で生育した植物の根が開孔を通過して背面土へ定着することにより、植物の長期的で安定した生育が可能となる。
【0030】
さらに、前記構造によると、河川部と陸部での酸素や水分の往来が可能となり、微生物等を始めとする種々の動植物が生育しやすい空間が創造できる。
【0031】
なお、鋼矢板は継手相互を嵌合させかつ地中に打設することにより自立させ、鋼矢板の地中の根入れ部の横抵抗により護岸としての機能を発揮させる構造とする場合が多い。
したがって、鋼矢板の頂部に多少の開孔を設けても、鋼矢板の中央部や地表面付近の発生断面力と比較して、地中から突出した頂部付近の発生断面力が小さくなるため護岸構造の機能は損なわれることはない。
【0032】
鋼矢板に設ける開孔部分の面積は、護岸としての機能を損なわない様に鋼矢板護岸の鋼矢板の必要断面性能や、鋼矢板の地中への打設時の外力に対する矢板の強度や施工性から決定される。
【0033】
当該開孔面積は、特に限定するものではないが、鋼矢板壁の投影面積の1〜4%程度が好適である。
【0034】
植生基盤は、植物の長期的な育成が可能なように、水分・肥料を貯え、根を張ることができるように空隙部を有しており、鋼矢板壁に密着するように鋼矢板壁に取り付けられる。
【0035】
植生基盤としては、1)内部に土壌・堆肥・保水材・種子を充填した袋状物、2)空隙に土壌・堆肥・保水材を充填したポーラスコンクリートの河川側表面に種子を含む客土を付着させたもの、3)空隙に土壌・堆肥・保水材を充填したポーラスコンクリートの河川側表面に、内部に土壌・堆肥・保水材・種子を充填した袋状物を固定させたもの、などが該当する。
【0036】
ここで袋状物の布は、限定するものではないが綿やポリエステル等の繊維からなり、布目の粗さは発芽を阻害せずかつ土壌等の充填物の流出を防止できるものであり、植物の根が充填された土壌内に強固に定着するまでの所要期間の機能を保持できる強度・耐久性を有するものとする。
【0037】
また河川側表面に客土を付着させる方法は、本発明を限定するものではないが、ポーラスコンクリートの表面の傾斜度合いに応じて、客土をポーラスコンクリート表面に敷き並べる方法、客土をポーラスコンクリートの空隙に充填する方法、客土に粘性をもたせてポーラスコンクリートの表面に塗布する方法、客土層の上から不織布等の繊維材で客土を保持する方法のいずれを採用してもよい(図示を省略する)。
【0038】
本発明を特に限定するものではないが、植生基盤に用いられるポーラスコンクリートの空隙率は、ポーラスコンクリートにある程度の強度(100kgf/cm2)を期待する場合、ポーラスコンクリートの容積に対し20%〜25%が好適である。また、ポーラスコンクリートにあまり強度が必要とされない場合(100kgf/cm2以下)、空隙量をポーラスコンクリートの25%〜35%程度とすることができる。
【0039】
ここで、ポーラスコンクリートの空隙率の測定方法は、JIS A 1128に示される「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法(空気室圧力方法)」等がある。また、ポーラスコンクリートの圧縮強度の測定方法は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」等に示される。
【0040】
本発明護岸構造における植生基盤の鋼矢板壁への取付けは、例えば以下のように行なわれる。
【0041】
(1)植生基盤として袋状物を用いた場合
図3Aは植生基盤5となる袋状物9の取付け前の状態を示した図であり、図3Bは鋼矢板壁4に袋状物9を取付けた後の状態を示している。
【0042】
鋼矢板3には、袋状物9の剥離やずれを防止するため、ネジ付き丸棒からなるアンカー部材12が溶接固定されている。袋状物9は綿糸により構成されており、袋状物9の内部には土壌・堆肥・保水材・種子等が充填されている(図示を省略する)。
【0043】
アンカー部材12が袋状物9を貫通して突出するように、袋状物9は鋼矢板壁4に設置される。袋状物9は、直径4mm程度の鋼線が10mmピッチに配置された金網からなる押え部材13により、袋状物9が鋼矢板3に密着するように袋状物9を鋼矢板壁4と押え部材13により挟み込むようにして固定される。
【0044】
そして押え部材13は、ネジによりアンカー部材12(ネジ付き丸棒)に固定される。これにより、袋状物9が水流等の外力に対して鋼矢板壁4から剥落せず、また袋状物9が鋼矢板壁の凹部及び凸部に密着するように完全に固定される。袋状物9内に充填された種子は発芽して袋状物9内で生育し、鋼矢板壁4全面の緑化が可能となる。
【0045】
(2)植生基盤としてポーラスコンクリートを用いた場合
図4Aは植生基盤5であるポーラスコンクリート10の取付け前の状態を示した図であり、図4Bは鋼矢板3にポーラスコンクリート10を取付後の状態を示した図である。
【0046】
鋼矢板3には直径13mmの鉄筋からなる定着部材14が50cmピッチで溶接固定されている。
【0047】
ポーラスコンクリートは鋼矢板壁面に打設された後、ポーラスコンクリートの硬化に伴い鋼矢板壁に予め固定された定着部材により鋼矢板壁に密着するように固定される。その後、ポーラスコンクリートの空隙内に土壌・堆肥・保水材等が充填されるとともに、表面に種子を含む客土をポーラスコンクリートの河川側表面に付着させることで、植物が安定して発芽・生育できるようになる。
【0048】
鋼矢板3に打設されるポーラスコンクリート10は、骨材19とセメント20からなり、その全容積の約25%〜35%が空隙21であり、当該空隙21内には土壌や堆肥等の肥料22、保水材23が充填されている。さらにポーラスコンクリート10の河川側表面には種子等を含む客土15が付着されている。なお、ポーラスコンクリートの断面図を図8に示す。
【0049】
(3)植生基盤としてポーラスコンクリートのプレキャストコンクリートブロックを用いた場合
図5は、植生基盤5としてポーラスコンクリートのプレキャストコンクリートブロック11を用いた場合の取付け後の状態を示した図である。
【0050】
プレキャストコンクリートブロック11は平板形状に予め成型されている。プレキャストコンクリートブロック11の厚さや大きさは、プレキャストコンクリートブロックの必要長さや施工性を考慮して適宜分割することが可能であり、必要に応じてプレキャストブロック11内に鉄筋等の筋材を配置することによりブロックを補強することも可能である(図示を省略する)。
【0051】
そして、プレキャストコンクリートブロック11には、鋼板製の連結部材16が固定されており、鋼矢板壁4の凸部の平坦部17にプレキャストコンクリートブロックの前記連結部材16を溶接することにより一体化される。なお、前記連結部材16は、アンカー部を有する鋼板製(埋め込み金物)であり、アンカー部をプレキャストコンクリートブロックに埋め込むことで固定することができる。
【0052】
プレキャストコンクリートブロック11は、骨材19とセメント20からなり、その全容積の約25%〜35%が空隙21であり、当該空隙21内には土壌や堆肥等の肥料22、保水材23が充填されている。さらにプレキャストコンクリートブロック11の河川側表面には種子等を含む客土15が付着されている。
なお、プレキャストコンクリートブロックの断面図を図8に示す。
【0053】
プレキャストコンクリートブロック11は、鋼矢板壁4の凸部の平坦部17にプレキャストコンクリートブロック11と一体化した連結部材16を密着して溶接固定することで、鋼矢板壁4に固定される。プレキャストブロック11と鋼矢板壁の凹部との間隙には土壌18が充填されている。
【0054】
そして、隣接するプレキャストコンクリートブロック11同士も、プレキャストコンクリートブロック11同士の接合面に固定した埋込み金物等の連結部材16aを溶接することで強固に連結されている。
【0055】
連結部材16aの溶接は、隣接する連結部材16a同士を直接溶接してもよく、また隣接する連結部材16aの上を覆うように接合用鋼板を重ね合わせて溶接して接合してもよい(図示を省略する)
【0056】
(4)植生基盤5としてポーラスコンクリート10および袋状物9を用いた場合
図6Aは、植生基盤5となるポーラスコンクリート10および袋状物9の取付け前の状態を示した図であり、図6Bは、鋼矢板3にポーラスコンクリート10および袋状物9を取付け後の状態を示した図である。
【0057】
鋼矢板3には、袋状物9の剥離・ずれの防止およびポーラスコンクリートの定着部材として直径9mmのネジ付き丸棒からなるアンカー部材12が予め40cm間隔で鋼矢板3に溶接固定されている。
【0058】
アンカー部材12を溶接固定した後、ポーラスコンクリート10が打設されることにより、ポーラスコンクリートの硬化に伴いアンカー部材12によりポーラスコンクリート10は鋼矢板壁4に強固に密着固定される。
【0059】
ポーラスコンクリート10は、骨材19とセメント20からなり、その全容積の約25%〜35%が空隙21であり、当該空隙21内には土壌や堆肥等の肥料22、保水材23が充填されている。さらにポーラスコンクリート10の河川側表面には種子等を含む客土15が付着されている。
なお、ポーラスコンクリートの断面図を図8に示す。
【0060】
アンカー部材12が袋状物9を貫通して突出するように、袋状物9がポーラスコンクリート10の上に設置される。袋状物9は綿糸により構成されており、袋状物9の内部には土壌・堆肥・保水材・種子等が充填されている(図示を省略する)。
【0061】
袋状物9は、直径4mm程度の鋼線が10mmピッチに配置された金網からなる押え部材13により、袋状物9がポーラスコンクリート10に密着するように押え部材13とポーラスコンクリート10で挟み込むようにして袋状物9が固定される。
【0062】
そして押え部材13は、ネジによりアンカー部材12(ネジ付き丸棒)に固定される。これにより、袋状物9が水流等の外力に対してポーラスコンクリート10を打設した鋼矢板壁4から剥落せず、また袋状物9が鋼矢板壁の凹部及び凸部に密着するように完全に固定される。
【0063】
【実施例】
図7は、地中に連続して打設された鋼矢板壁の勾配を、▲1▼鉛直(地表面に対し矢板壁が90°)、▲2▼3分勾配(1:0.3の勾配、地表に対し矢板壁が73.3°)及び▲3▼5分勾配(1:0.5の勾配、地表に対し矢板壁が63.4°)と変化させた場合の植物の生育状況比較を目的とした植生試験の結果の一例を示す。
【0064】
植生試験では、植生基盤としてポーラスコンクリートを使用した図4と同様の護岸構造を用いたもので、斜めに打設した鋼矢板壁の勾配のみを上記の通り変化させている(試験に用いた護岸形状の詳細の図示は省略する)。
なお、試験に用いた護岸形状の鋼矢板の勾配を地表面に対して鉛直にした場合については図9に示す。(鋼矢板の勾配が、3分勾配、5分勾配の場合については、図示を省略する。)
【0065】
試験に使用した植物(芝)の、植生基盤の全面積に対する植生基盤上で生育する植物(芝)の被覆面積を被植率として植生状況の評価を行った。
【0066】
試験では、壁面が鉛直(地表に対し矢板壁が90°)な場合、主に充填材や客土の表層からの脱落や、植生基盤や植生基盤上の植物への雨水等の水分の供給・保水が行われにくいため、植物の長期的な生育が困難であり、200日を経過後ほとんどが枯死した。
【0067】
一方、壁面の勾配を、3分勾配(地表に対し矢板壁が73.3°)又は5分勾配(地表に対し矢板壁が63.4°)とした場合、3分勾配よりも傾斜の緩やかな5分勾配の方が被植率が高いが、いずれの場合も鉛直壁面の場合と比較して被植率高く、700日経過後においても高い被植率を示した。
【0068】
従って、鋼矢板壁面に3分程度傾斜させて地中に打設することにより、雨水等の水分の植物への供給や植生基盤での保水が容易になるとともに、充填材や客土の脱落が抑制され、長期的に安定した植生が可能である。
【0069】
【発明の効果】
[第1の発明の効果]
鋼矢板を地盤に斜めに打設することにより、河川部と陸部間で連続的な生物の生育空間を創造し、鋼矢板壁面の河川側表面全域に植生基盤を取付けることにより、硬質で鉛直な壁面であるため本来植物の生育が困難であった鋼矢板壁面においても、植物が長期間安定して生育することができ、護岸の緑化修景・親水性の向上が図れる。
【0070】
[第2の発明の効果]
植生基盤として袋状物を用いることにより、袋状物は軽量で大掛かりな重機等を用いることなく容易に緑化基盤の製作・施工でき、また、材料も安価であり、建設コストが安いという特徴がある。
【0071】
[第3の発明の効果]
植生基盤としてポーラスコンクリートを用いることにより、植生基盤自体の強度が高く、かつ植生基盤が鋼矢板壁面に強固に固定されるという効果を有する。つまり、植生基盤に激しい水流が作用した場合においても植生基盤が損傷する可能性が低く、植生基盤の維持管理が容易で長期的に安定した植生が可能となる。
【0072】
[第4の発明の効果]
植生基盤としてポーラスコンクリートブロックを用いることにより、第3の発明による効果が享受できることに加えて、ポーラスコンクリートブロックを予め製作して現場で取りつけることができるため、急速施工が可能となる。
【0073】
[第5の発明の効果]
植生基盤としてポーラスコンクリートと袋状物を用いることにより、鋼矢板の傾斜が少ない場合においても、ポーラスコンクリートよりも袋状物の方が保水性能が高く、ポーラスコンクリートのみを用いた場合と比較して鋼矢板全面への緑化が容易となる。
【0074】
[第6の発明の効果]
通常、鋼矢板河川護岸の背面部の水位は高く、鋼矢板に開孔を設けることにより、背面土から開孔を通して植生基盤への水分や養分の供給が図ることができ植物の生育が容易となるとともに、植生基盤で生育した植物の根が開孔を通過して背面土へ定着することにより、植物の長期的で安定した生育が可能となる。また、河川部と陸部での酸素や水分の往来が可能となり、微生物等を始めとする種々の動植物が生育しやすい空間が創造できる。
【0075】
[第7の発明の効果]
完成後の鋼矢板護岸の耐荷性能および施工性等を損なわない範囲で、開孔量を1〜4%としたので、植生基盤上での植栽の長期的な維持に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼矢板河川護岸の断面図である。
【図2】地盤に打設された鋼矢板からなる鋼矢板壁の斜視図である。
【図3】図(A)、(B)は、植生基盤として袋状物を用いる場合の袋状物取付け前の状態を示したと袋状物取付け後の鋼矢板護岸の斜視図である。
【図4】図(A)、(B)は、植生基盤としてポーラスコンクリートを用いた場合のポーラスコンクリート打設前の状態を示した斜視図と、ポーラスコンクリート打設後の鋼矢板護岸の斜視図である。
【図5】植生基盤としてポーラスコンクリートブロックを用いた場合の鋼矢板護岸の斜視図である。
【図6】図(A)、(B)は、植生基盤としてポーラスコンクリートおよび袋状物を用いた場合のポーラスコンクリート打設前の状態を示した斜視図および、完成した鋼矢板護岸の斜視図である。
【図7】壁面勾配を変化させた場合の植物の生育状況比較の表である。
【図8】本発明で用いられるポーラスコンクリート・プレキャストコンクリートブロックの断面図である。
【図9】試験に用いた護岸形状の鋼矢板の勾配(地表面に対して鉛直にした場合)について示した図である。
【符号の説明】
1 河川
2 河床
3 鋼矢板
4 鋼矢板壁
5 植生基盤
6 陸部
7 背面土
8 開孔
9 袋状物
10 ポーラスコンクリート
11 プレキャストコンクリートブロック
12 アンカー部材
13 押え部材
14 定着部材
15 客土
16 連結部材
16a ポーラスコンクリート連結部材
17 鋼矢板凸部の平坦部
18 土壌
19 骨材
20 セメント
21 空隙
22 ポーラスコンクリート内の土壌や堆肥等の肥料
23 保水剤

Claims (5)

  1. 地中に鋼矢板を傾斜して打設して、3分から5分の傾斜を有する斜面部を形成するとともに地盤より上の鋼矢板の突出部に開孔を有する鋼矢板壁の、河川側表面を植生基盤で被覆した護岸構造。
  2. 植生基盤が内部に土壌・肥料・保水材・種子のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填した袋状物であり、袋状物を貫通するアンカー部材および袋状物表面に配置された押え部材で前記袋状物が鋼矢板壁に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の護岸構造。
  3. 植生基盤が、空隙部に土壌・肥料・保水材のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填したポーラスコンクリートと前記ポーラスコンクリートの河川側表面に付着された種子を含む客土であり、鋼矢板壁に予め固定された定着部材により打設されたポーラスコンクリートが鋼矢板壁に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の護岸構造。
  4. 植生基盤が、空隙部に土壌・肥料・保水材のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填したポーラスコンクリート製のプレキャストコンクリートブロックと前記プレキャストコンクリートブロックの河川側表面に付着された種子を含む客土であり、前記プレキャストコンクリートブロックに取付けられた連結部材により、前記プレキャストコンクリートブロックを鋼矢板凸部の平坦部に溶接固定し、かつ鋼矢板凹部と前記プレキャストコンクリートブロックの間隙に土壌を充填したことを特徴とする請求項1に記載の護岸構造。
  5. 植生基盤が、空隙に土壌・肥料・保水材のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填したポーラスコンクリートと、内部に土壌・肥料・保水材・種子のいずれか1つ又は複数の組み合わせを充填した袋状物であり、袋状物を貫通するアンカー部材および袋状物表面に配置された押え部材でポーラスコンクリートが打設された鋼矢板壁に前記袋状物が固定されたことを特徴とする請求項1に記載の護岸構造。
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