JP3464216B2 - ディスクブレーキのブレーキシリンダのためのダストカバー - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、リング形状のブートと、このブートの第１
の端部に設けられディスクブレーキのブレーキシリンダ
のピストンに形成された環状溝と係合する固定用球部
と、ブートを構成する構成材料によってその少なくとも
一部が包囲され、ブートの第２の端部をブレーキシリン
ダの前面に形成されたリング状の凹部の壁に対して押し
付けるリング状の固定用ライニングとを具備したディス
クブレーキのブレーキシリンダのためのダストカバーに
関する。

この種のダストカバーは欧州特許出願０ 366 505に
より公知である。この従来のダストカバーにあっては、
固定用ライニングがブートの弾性材料中に完全に埋設さ
れて加硫によって弾性材料と結合されている。このよう
な従来の構成では、製造コストが比較的高価になるとと
もに、固定用ライニングに組み付け具を取り付けること
ができないためダストカバーの自動組み立てが困難とな
る。

本発明の目的は、非常に安価に製造でき、しかも、自
動組み立てに適するダストカバーを提供することにあ
る。

本発明の目的は以下のような構成を成すダストカバー
によって達成される。すなわち、ブートの第２の端部は
一端側で開口するリング状の収容部を形成し、この収容
部内にはリング（バックアップリング）が挿入される。
収容部内に収容されるリングの部位にはブート材料が侵
入可能な穿孔が形成されている。収容部から突出するリ
ングの縁部には、ブートの第２の端部をブレーキシリン
ダに組み付けるための組み付け具が当接して取りつけら
れる当接面が設けられている。

本発明のダストカバーにおいては、ブートの弾性材料
と挿入されるリングとの間の付着結合度を考慮する必要
がない。リングに設けられた穿孔にブート材料が流れ込
むため、積極的な結合が果たされて、リングとブート同
志が強固に固定される。この場合、特定の結合作業を施
すことなくブート材料がリングに付着するため、製造コ
ストを非常に低減させることができる。さらに、リング
とブートとの間の付着結合度を考慮することなく、リン
グとブートの材料を自由に選択することができる。例え
ば、リングをステンレス鋼もしくは熱可塑性の合成材料
によって形成しても良い。また、ブートをゴムのような
材料の他、弾性を有するプラスチック材料によって形成
することもできる。リングを収容する収容部の形状によ
って、ブートの第２の端部とブレーキシリンダとの間に
良好なシールが保たれる。この場合、ブートの壁は、リ
ングとブレーキシリンダの凹部の内壁との間の締結部か
らピストンと係合する固定用球部まで途切れることなく
連続して形成されている。したがって、挿入されるリン
グをブートの材料に対して強固に固定するといったシー
ル結合は不必要となる。シール特性を向上させるため
に、ブレーキシリンダの凹部の壁に対して当接するリン
グ状の収容部の外面には、さらに、シールビーズもしく
はシールリップが設けられる。

前記当接面の存在に起因して、１つの組み付け具を使
用することによって、収容部から突出するリングの縁部
がダストカバーの収容と強固な支持を担って、ダストカ
バーが自動的に装着される。この場合、必要とされる押
し込み力はリングとブートとの間の積極的な結合関係
（locking engagement）によって伝達される。組み付け
の際の押し込みストロークは、組み付け具もしくは収容
部から突出するリングの縁部のいずれかが径方向のカラ
ー部を有し、このカラー部がブレーキシリンダの当接面
に対して軸方向に押し付けられることによって制限され
る。組み付け具による収容作業もまたこのカラー部によ
って容易となる。

本発明のダストカバーでは、ブートの第２の端部をブ
レーキシリンダに対して直接的な摩擦接触によって固定
するために、収容部から突出するリングの縁部がブレー
キシリンダの凹部の壁に係合する。このような構成にお
いて、リングの縁部は、径方向に折り曲げられるととも
に、互いに一定距離離間して設けられた切り欠き部によ
って途切れてその弾性が高められている。ブートから離
れて面する収容部の壁には、ブレーキシリンダの凹部の
壁に対して径方向に当接するシールビーズ（シールリッ
プ）と、ブレーキシリンダの凹部の壁に対して軸方向に
当接するシールビーズ（シールリップ）とが設けられて
いる。

本発明のダストカバーの好ましい製造方法では、ブー
トを形成するための射出成形用の金型内でリングが弾性
材料によってコーティングされる。この場合、収容部
は、射出成形用の金型内のリングの存在によって、直ち
に形成される。

第１図は、本発明の第１の実施例に係るダストカバー
によってシールされたブレーキディスクのブレーキシリ
ンダの部位の断面図である。

第２図は、本発明の第２の実施例に係るダストカバー
によってシールされたブレーキディスクのブレーキシリ
ンダの部位の断面図である。

第３図ないし第５図は、第２図のダストカバーに設け
られた固定用リングの部分図である。

第６図は、本発明の第３の実施例に係るダストカバー
のブート径方向外側端部の断面図である。

以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明
する。

シリンダボア２から突出するピストン３を有するディ
スクブレーキのシリンダ１の開口端部が第１図に示され
ている。ブレーキシリンダ１の前面にはリング状の凹部
５が設けられている。この凹部５にはダストカバー６が
配置されている。ダストカバー６は多数の折り返し部を
有するブート（boot）７を備えている。このブート７
は、リング状にピストン３を囲み、その径方向内側端部
が固定用球部８によりピストン３の環状溝９に係止され
ている。ブート７の径方向外側端部10は、ステンレス鋼
板からなる円筒状リング11によって固定されるととも
に、リング11の外面により凹部５の円筒状の内壁12に対
して強固に押し付けられている。リング11は、その一方
側がブート７の端部10によって形成される袋状の開口収
容部（open bag）内に埋設されているとともに、その径
方向外側に折り曲げられた他端側のカラー部（collar）
13が前記開口収容部から突出している。カラー部13に
は、ダストカバー６の端部10を自動的に組み付けるため
の組み付け具が取り付けられる。また、カラー部13は、
ブレーキシリンダ１の前面に当接するストッパーを構成
しており、このカラー部13がブレーキシリンダ１の前面
に当接することによって端部10の押し込み深さが制限さ
れる。

端部10によって形成される前記開口収容部に対してリ
ング11を埋設するために、ブート７を製作するための射
出成形用の金型にリング11を挿入した状態でブート成形
用の弾性材料を金型内に流し込む（ブート成形用の弾性
材料によってリング11をコーティングする）。この場
合、リング11に対してブート成形用の弾性材料を十分に
付着させるために、リング11には円形もしくは環状の穴
として形成された穿孔14が設けられている。射出成形時
にブート成形用の弾性材料がこの穿孔14に入り込むこと
によって、リング11とブート材料との付着結合度が強化
され、リング11に対してブート成形用の弾性材料が確実
に固着される。穿孔14によってリング11とブート材料と
の付着結合度が強化されることにより、凹部５に端部10
を押し込む際に生じるせん断力が伝達されるため、端部
10によって形成される前記開口収容部を損傷させること
なくリング11を介して端部10を図示する結合位置まで押
し込むことができる。したがって、ダストカバー６は、
リング11によって自動的かつ確実に組み付けられ、ブレ
ーキシリンダ１に対して強固に連結される。

第２図はダストカバーの変形例を示すものである。こ
のような形状のダストカバー15にあっては、ブート７の
径方向外側の端部10が熱可塑性の合成材料からなるリン
グ16によって固定される。第５図に示すように、リング
16には円形状の穿孔としての開口部17が形成されてい
る。開口部17の寸法は、ブート７が形成される弾性（ゴ
ム）材料の流動特性に応じて決められる。開口部17の代
わりに、リング16に第３図と第４図とに示すように配置
されたスロット18を設けても良い。この実施例において
も、リング16は、前述した実施例と同様にしてブート７
を形成する弾性（ゴム）材料で覆われる（コーティング
される）。

凹部５から離れて面するリング16の前面19と、この前
面19に隣接して位置するリング16の径方向外側の縁部
（rim）20との両者のみが外部に露出し、これらは、ダ
ストカバー15を凹部５内に自動的に挿入する組み付け具
が取り付けられる取り付け面を形成する。この場合、組
み付け深さは、ブレーキシリンダ１の前面４に対して組
み付け具が当接することによって決定される。リング16
を外側から覆う端部10の部位には２つのシールビーズ21
が設けられており、これらのシールビーズ21によって、
径方向に向かうひずみ力を高めることなくダストカバー
15の端部10とブレーキシリンダ１の内壁12との間の良好
なシールが確保される。

第６図はダストカバーの他の変形例を示している。こ
のダストカバー22にあっては、バッグ（bag）状に形成
されるボート７の径方向外側の端部10が、軸方向に切り
込まれた溝によって構成される凹部24の円筒状壁23を、
外側から包囲している。端部10に埋設された円筒状もし
くは円柱状のリング25には、バッグの内側に配置されて
外側に折り曲げられた縁部（rim）26と、バッグから突
出して内側に折り曲げられた縁部（rim）27とが形成さ
れている。縁部26と縁部27はそれぞれ切り欠き28,29に
よって途切れている。切り欠き28,29はそれぞれ円周方
向に互いに一定距離離間して配置されており、切り欠き
28,29内にはブート成形時にブート材料が完全にもしく
は部分的に流れ込む。縁部27の切り欠き29はリング25の
円筒部分にわたって延在しており、これによって径方向
における縁部27の弾性を高めている。したがって、ダス
トカバー22の端部10を凹部24内に挿入する際に縁部27は
径方向に広がることができ、その結果、組み付けられた
状態で、縁部27は壁23を強固に取り囲んで壁23との摩擦
接触によってダストカバー22を凹部24内に確実に保持す
る。リング25を弾性を有する金属によって形成すれば、
締め付け力や保持力を高めることができる。つまり、ブ
レーキシリンダ１の壁23とリング25との間の直接的な金
属接触によって、ゴム部材と金属との接触（rubber−me
tal seat）の場合におけるズレ現象（creep up）のよう
な製造誤差に関するどんな問題をも回避することができ
る。

リング25と凹部24の底部30との間において、ブート７
の端部10には、底部30に対して当接するシールリップ31
が軸方向に突設されているとともに、壁23を取り囲むシ
ールリップ32が径方向に突設されている。端部10を軸方
向に組み付ける際にシールリップ32が逆側に逃げること
ができしかも破損しない（剪断変形を受けることがな
い）ように、シールリップ32と縁部27との間には端部10
の下面を切り欠いて形成された切り欠き部33が設けられ
ている。シールリップ31,32はそれぞれ、リング25の押
し込み動作によって破損を受けることがない凹部24の領
域内でシールが行なわれるように配置されている。ダス
トカバー22の場合、リング25を収容するバッグの開口部
が、外側に対してシールされたブート７の内側に設けら
れているため、リング25も外側からの影響に対して保護
される。縁部26によって固定された端部10の部位には組
み付け具が取り付けられる。組み付け具の押し込み力は
ダストカバー22の弾性（ゴム）材料を介してリング25に
伝達される。

参照符号のリスト １…ブレーキシリンダ ２…シリンダボア ３…ピストン ４…前面 ５…凹部 ６…ダストカバー ７…ブート ８…固定用球部 ９…環状溝 10…端部 11…リング 12…内壁 13…カラー 14…穿孔 15…ダストカバー 16…リング 17…開口部 18…スロット 19…前面 20…縁部 21…シールビーズ 22…ダストカバー 23…壁 24…凹部 25…リング 26…縁部 27…縁部 28…切り欠き 29…切り欠き 30…底部 31…シールリップ 32…シールリップ 33…切り欠き部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 バッハ、ウベ ドイツ連邦共和国、デー−6272 ニーデ ルンハウゼン−オベルヨスバッハ、ラン トグラベン ３ (72)発明者 レンツナー、ホルスト ドイツ連邦共和国、デー−6467 シャト トルフ、グルントシュトラーセ ７ (56)参考文献 特開 昭55−47051（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−167940（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−45943（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭56−59305（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F16D 65/20

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】リング形状のブートと、このブートの第１
   の端部に設けられたディスクブレーキのブレーキシリン
   ダのピストンに形成された環状溝と係合する固定用球部
   と、前記ブートを構成する構成材料によってその少なく
   とも一部が包囲され、前記ブートの第２の端部を前記ブ
   レーキシリンダの前面に形成されたリング状の凹部の壁
   に対して押し付ける固定用のバックアップリングとを具
   備したディスクブレーキのブレーキシリンダのためのダ
   ストカバーにおいて、 前記ブート（７）の第２の端部（10）は一端側が開口す
   るリング状の収容部を形成し、この収容部内に前記バッ
   クアップリング（11,16,25）が挿入され、前記収容部内
   に挿入される前記バックアップリング（11,16,25）の部
   位には前記ブート（７）を構成する構成材料が侵入可能
   な穿孔（14,28,29）が設けられ、また、前記収容部から
   突出する前記バックアップリング（25）の縁部（27）が
   プレストレスを付加された状態でブレーキシリンダ
   （１）の内部の前記凹部（24）の壁（23）に対して直接
   に当接して摩擦接触することにより、ブレーキシリンダ
   に固定されることを特徴とするダストカバー。
2. 【請求項２】前記収容部から突出する前記バックアップ
   リング（11,16,25）の縁部（13,19,20,27）には、前記
   ブート（７）の第２の端部（10）を前記ブレーキシリン
   ダに組み付けるための組み付け具が当接して取り付けら
   れる当接面が設けられていることを特徴とする請求項１
   に記載のダストカバー。
3. 【請求項３】前記バックアップリング（25）の縁部（2
   7）は、径方向に折り曲げられるとともに、互いに一定
   距離離間して設けられた複数の切り欠き部（29）によっ
   て途切れていることを特徴とする請求項１に記載のダス
   トカバー。
4. 【請求項４】前記バックアップリング（11,25）がステ
   ンレス鋼によって形成されていることを特徴とする請求
   項１ないし請求項３のいずれか１項に記載のダストカバ
   ー。
5. 【請求項５】前記バックアップリング（16）が熱可塑性
   の合成材料によって形成されていることを特徴とする請
   求項１ないし請求項３のいずれか１項に記載のダストカ
   バー。
6. 【請求項６】前記収容部から突出する前記バックアップ
   リング（11）の縁部が径方向のカラー部（13）を有し、
   このカラー部（13）が前記ブレーキシリンダ（１）のス
   トッパ面（４）に対して軸方向に押し付けられることを
   特徴とする請求項１ないし請求項５のいずれか１項に記
   載のダストカバー。
7. 【請求項７】前記ブレーキシリンダ（１）の凹部（5,2
   4）の壁（12,23）に対して当接するリング状の収容部の
   外面にはシールビーズ（21）もしくはシールリップ（3
   1,32）が設けられていることを特徴とする請求項１ない
   し請求項６のいずれか１項に記載のダストカバー。
8. 【請求項８】ブート（７）を形成するための射出成形用
   の金型内で前記バックアップリング（11,16,25）が弾性
   材料によってコーティングされることを特徴とする請求
   項１ないし請求項７のいずれか１項に記載のダストカバ
   ーの製造方法。