JP3435168B2 - 音程制御装置及び方法 - Google Patents

音程制御装置及び方法

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JP3435168B2
JP3435168B2 JP30215391A JP30215391A JP3435168B2 JP 3435168 B2 JP3435168 B2 JP 3435168B2 JP 30215391 A JP30215391 A JP 30215391A JP 30215391 A JP30215391 A JP 30215391A JP 3435168 B2 JP3435168 B2 JP 3435168B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は音程制御装置及び方法に関し、特
にオーディオ信号の周波数を所望の周波数に変化させる
ことによって原音と再生音との間の音程を制御する音程
制御装置及び方法に関する。
【0002】
【背景技術】従来の音程制御装置としては、アナログ入
力信号をサンプリングして得られたディジタル化データ
をリングバッファに順次書込み、その書込み周期とは異
なる周期でデータを読出して読出したデータを順次復調
することにより、該信号の音程を変えるようにしたもの
がある。かかる装置においては音程を下げる場合にはリ
ングバッファからのデータの読出し周期を書込み周期よ
り長くし、音程を上げる場合にはリングバッファからの
データの読出し周期を書込み周期より短くする。従って
リングバッファにデータを書込む書込みアドレスに対
し、データを読出す読出しアドレスは相対的に回転し、
予め定められた周期で追い越したり追い越されたりす
る。ここで、リングバッファのデータの書込み位置にお
いては前回書込んだデータが逐次書き換えられているか
ら、そこでデータの内容は不連続となっている。そし
て、書き換えられた位置が読出し位置になるとき、再生
される音に不連続点が生じる。これを軽減するためにい
わゆるクロスフェードという方法が用いられる。読出し
周期が書込み周期より短いときについて説明すると、図
7(a) に示すように通常、リングバッファの書込み位置
Wと読出し位置Rとの間の差を示すdR-Wは所定値dth
より大である。なお、リングバッファの各位置が時計回
りに進み、読出し位置Rがそれより早く時計回りに進む
とする。dR-W <d thとなると、図7(b) に示すように
読出し位置Rより時計回り方向に所定値dthだけ離れた
もう一つの読出し位置R´からも読出し、読出し位置R
からのデータ値を直線的にフェードアウト処理し、読出
し位置R´からのデータ値を直線的にフェードイン処理
して各データ値を加算することでクロスフェードが行な
われる。これにより常に、不連続点を通過しない方の読
出し位置からのデータを出力するようにする。なお、d
thは通常、リングバッファサイズの1/2に設定され
る。
【0003】しかしながら、クロスフェードの期間では
読出し位置の数が1つから2つに変化するので、一種の
くし型フィルタの効果が働き信号中の周波数成分によっ
ては互いに逆相の関係になりその周波数成分が打ち消さ
れたり、互いに同相関係では周波数成分レベルが上昇
し、いわゆるくし型特性(図8のB)となる。クロスフ
ェードが行なわれていない期間では平坦特性(図8の
A)であるから、クロスフェードの周期に合わせて周波
数特性の変動が図8の矢印部分(周波数 1 ,f 3 ,f 5 ,
…)で大きくなりいわゆるトレモロ音が発生するという
問題点があった
【0004】
【発明の目的】そこで、本発明の目的は、トレモロ音の
発生を抑制した音程制御装置及び方法を提供することで
ある
【0005】
【0006】本願第1の発明の音程制御装置は、所定の
サンプリング間隔でサンプリングされた入力ディジタル
化オーディオ信号データに対する再生音の音程を制御す
る音程制御装置であって、所定数の記憶位置を有してリ
ングバッファを構成するメモリと、メモリの少なくとも
1つの書込み記憶位置と複数の読出し記憶位置とを順次
指定する記憶位置指定手段と、入力ディジタル化オーデ
ィオ信号データに基づいたデータをメモリの書込み記憶
位置に書き込み、メモリの複数の読出し記憶位置からデ
ータを各々読み出して所定のサンプリング間隔が示す周
期とは異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読
出手段と、複数の読出し記憶位置からの読出しデータに
個別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算
して出力データとする演算手段と、を備え、記憶位置指
定手段は書込み記憶位置とは無関係に複数の読出し記憶
位置各々を連続的に指定し、複数の読出し記憶位置間の
記憶位置の個数が互いに異なることを特徴としている。
【0007】本願第2の発明の音程制御装置は、所定の
サンプリング間隔でサンプリングされた入力ディジタル
化オーディオ信号データに対する再生音の音程を制御す
る音程制御装置であって、所定数の記憶位置を有してリ
ングバッファを構成するメモリと、メモリの少なくとも
1つの書込み記憶位置と複数の読出し記憶位置とを順次
指定する記憶位置指定手段と、入力ディジタル化オーデ
ィオ信号データに基づいたデータをメモリの書込み記憶
位置に書き込み、メモリの複数の読出し記憶位置からデ
ータを各々読み出して所定のサンプリング間隔が示す周
期とは異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読
出手段と、複数の読出し記憶位置からの読出しデータに
個別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算
して出力データとする演算手段と、複数の読出し記憶位
置各々で、係数を所定の負値から所定の正値までの範囲
読出し記憶位置と書込み記憶位置との差に応じた値に
設定する係数設定手段と、を備えたことを特徴としてい
る。
【0008】本願第3の発明の音程制御装置は、所定の
サンプリング間隔でサンプリングされた入力ディジタル
化オーディオ信号データに対する再生音の音程を制御す
る音程制御装置であって、所定数の記憶位置を有してリ
ングバッファを構成するメモリと、メモリの少なくとも
1つの書込み記憶位置と複数の読出し記憶位置とを順次
指定する記憶位置指定手段と、入力ディジタル化オーデ
ィオ信号データに基づいたデータをメモリの書込み記憶
位置に書き込み、メモリの複数の読出し記憶位置からデ
ータを各々読み出して所定のサンプリング間隔が示す周
期とは異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読
出手段と、複数の読出し記憶位置からの読出しデータに
個別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算
して出力データとする演算手段と、を備え、演算手段の
加算出力経路中又は各係数乗算経路中にくし型フィルタ
を設けたことを特徴としている。本願第4の発明の音程
制御方法は、所定のサンプリング間隔でサンプリングさ
れた入力ディジタル化オーディオ信号データに対する再
生音の音程を制御する音程制御方法であって、所定数の
記憶位置を有してリングバッファを構成するメモリの少
なくとも1つの書込み記憶位置と複数の読出し記憶位置
とを順次指定する記憶位置指定行程と、入力ディジタル
化オーディオ信号データに基づいたデータをメモリの書
込み記憶位置に書き込み、メモリの複数の読出し記憶位
置からデータを各々読み出して所定のサンプリング間隔
が示す周期とは異なる周期の読出しデータを各々生成す
る書込読出行程と、複数の読出し記憶位置からの読出し
データに個別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互
いに加算して出力データとする演算行程と、を備え、
憶位置指定行程は書込み記憶位置とは無関係に複数の読
出し記憶位置各々を連続的に指定し、複数の読出し記憶
位置間の記憶位置の個数が互いに異なることを特徴とし
ている。本願第5の発明の音程制御方法は、所定のサン
プリング間隔でサンプリングされた入力ディジタル化オ
ーディオ信号データに対する再生音の音程を制御する音
程制御方法であって、所定数の記憶位置を有してリング
バッファを構成するメモリの少なくとも1つの書込み記
憶位置と複数の読出し記憶位置とを順次指定する記憶位
置指定行程と、入力ディジタル化オーディオ信号データ
に基づいたデータをメモリの書込み記憶位置に書き込
み、メモリの複数の読出し記憶位置からデータを各々読
み出して所定のサンプリング間隔が示す周期とは異なる
周期の読出しデータを各々生成する書込読出行程と、複
数の読出し記憶位置からの読出しデータに個別に係数を
乗算し、その乗算後のデータを互いに加算して出力デー
タとする演算行程と、複数の読出し記憶位置各々で、係
数を所定の負値から所定の正値までの範囲で読出し記憶
位置と書込み記憶位置との差に応じた値に設定する係数
設定行程と、を備えたことを特徴としている。本願第6
の発明の音程制御方法は、所定のサンプリング間隔でサ
ンプリングされた入力ディジタル化オーディオ信号デー
タに対する再生音の音程を制御する音程制御方法であっ
て、所定数の記憶位置を有してリングバッファを構成す
るメモリの少なくとも1つの書込み記憶位置と複数の読
出し記憶位置とを順次指定する記憶位置指定行程と、入
力ディジタル化オーディオ信号データに基づいたデータ
をメモリの書込み記憶位置に書き込み、メモリの複数の
読出し記憶位置からデータを各々読み出して所定のサン
プリング間隔が示す周期とは異なる周期の読出しデータ
を各々生成する書込読出行程と、複数の読出し記憶位置
からの読出しデータに個別に係数を乗算し、その乗算後
のデータを互いに加算して出力データとする演算行程
と、を備え、演算行程の出力データ又は各係数乗算経路
中のデータにくし型フィルタ特性を与えることを特徴と
している。
【0009】
【発明の作用】
【0010】本願第1の発明の音程制御装置及び本願第
4の音程制御方法においては、書込み記憶位置とは無関
係に複数の読出し記憶位置各々が連続的に指定され、
数の読出し記憶位置間の記憶位置の個数を互いに異なら
せることにより、読出される複数のデータ間の時間差が
異なるようにしている。本願第2の発明の音程制御装置
及び本願第5の音程制御方法においては、係数を所定の
負値から所定の正値までの範囲で変化する値にすること
により、トレモロ音の生じる周波数がクロスフェード毎
に変化する。
【0011】本願第の発明の音程制御装置及び本願第
6の音程制御方法においては、トレモロ音成分帯域がく
し型フィルタにより除去される。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳
細に説明する。図1に示した本発明による音程制御装置
においては、ディジタルオーディオ信号が供給される入
力端子INにはLPF(ローパスフィルタ)1が接続さ
れている。LPF1はエイリアシング(aliasing)を防
止するために設けられており、例えば、2次IIR型フ
ィルタからなる。LPF1には補間回路2が接続されて
いる。補間回路2は供給されるディジタルオーディオ信
号のサンプリングタイミングに従ったk(kは正の整数
で定数)個のデータからk+1又はk−1個のデータを
直線補間により作成する。補間回路2は2つの連続する
データの出力を有し、その2つの出力はリングバッファ
3に接続されている。リングバッファ3からはリングバ
ッファの1巡期間内に異なるアドレスから3つの読出し
が行なわれる。リングバッファ3の読出しアドレスはア
ドレス制御回路4によって制御される。3つの読出し出
力には乗算器5,6,7が接続されている。乗算器5,
6,7は読出された信号に対し係数を乗算する。乗算器
5,6,7の各係数ka ,k b ,kcはクロスフェード
係数設定回路8によって設定される。クロスフェード係
数設定回路8には例えば、マイクロコンピュータからな
るアドレス制御回路4の出力が接続されている。また、
乗算器5,6,7の各出力には加算器9が接続され、乗
算器5,6,7の各出力信号が合算されるようになって
いる。加算器9の出力が出力端子OUTに接続されてい
る。
【0013】クロック発生器11の出力にはカウンタ1
2が接続されている。クロック発生器11は原入力ディ
ジタルオーディオ信号のサンプリングタイミングに同期
したクロックパルスを発生し、カウンタ12はクロック
発生器11から出力されるクロックパルスを0からk−
1又はk+1までを繰り返し計数する。カウンタ12の
出力には補間係数設定回路13及び補間タイミング検出
回路14が接続されている。補間係数設定回路13はカ
ウンタ12の計数値に応じて補間係数gを設定し、その
補間係数gは補間回路2に供給される。補間タイミング
検出回路14はカウンタ12の計数値に応じて補間タイ
ミング信号を発生する。この補間タイミング信号は補間
回路2と共にアドレス制御回路4に供給されるようにな
っている。アドレス制御回路4は補間回路2の2つの出
力データを書込むべき2つの連続する書込みアドレスを
指定する。アドレス制御回路4にはキーボード15が接
続されており、キーボード15はキーアップ(音程上
昇)時のキーアップ量又はキーダウン(音程降下)時の
キーダウン量を操作により入力できるようになってい
る。更にアドレス制御回路4はカウンタ12に接続さ
れ、計数値を指定する。
【0014】なお、LPF1、補間回路2、アドレス制
御回路4、乗算器5,6,7、加算器9、クロスフェー
ド係数設定回路8、カウンタ12、補間係数設定回路1
3及び補間タイミング検出回路14をDSPによって構
成することもできる。また、リングバッファのメモリサ
イズ(一巡のメモリ数)及び定数kは音程の上下量に応
じて所定の値に設定されるようになっている。
【0015】かかる構成において、補間回路2はk個の
サンプルデータを1つの単位としてデータを補間する。
すなわち、キーアップ時にはk個のサンプルデータから
k−1個のデータを作成し、キーダウン時にはk個のサ
ンプルデータからk+1個のデータを作成する。この補
間動作について具体的に説明する。キーアップ時にはサ
ンプルデータをxpとすると、サンプルデータxp
0,x1,……,xk-1のk個である。補間の結果、得
られる補間デ―タをxp´とすると、補間データxp´は
1´,……,xk-1 ´のk−1個であり、x0´は存在
しない。補間データの算出式は次式の如くなる。 xp´=g・xp+(1−g)・xp-1 (1) このとき係数gは g=(p−1)/(k−1) (2) であり、補間係数設定回路13から順次出力される。例
えば、k=4とすると、連続する4つのサンプルデータ
0,x1,x2,x3から補間データx1´,x2´,x3
´を作成する場合にはその補間データは次表の如くな
る。
【0016】
【表1】 キーダウン時にはx0,x1,……,xk-1のk個のサン
プルデータxpからの補間の結果、補間データxp´はx
0´,x1 ´,……,xk´のk+1個である。補間デー
タの算出式は上記の式(1) と同じである。このとき係数
gは g=1−p/(k+1) (3) であり、補間係数設定回路13から順次出力される。例
えば、k=4とすると、連続する4つのサンプルデータ
0,x1,x2,x3 から補間データx0´,x 1´,
2´,x3´,x4´を作成する場合にはその補間デー
タは次表の如くなる。
【0017】
【表2】 ただし、P=4の時点は次の単位のP=0の時点である
から、この時点においては両者の演算結果が存在するこ
とになる。次に、アドレス制御回路4の動作を図2に示
したフロー図に従って説明する。アドレス制御回路4
は、キーボード15からキーアップ量及びキーダウン量
のいずれか1が指定されると、リングバッファ3のメモ
リ数(メモリサイズ)m、読出しアドレスRa,Rb,R
c及び計数値k+1又はk−1を設定する(ステップS
1)。アドレスは0〜m−1とし、図1の反時計回り方
向に増加するものとする。なお、データの回転方向は矢
印で示す時計回り方向である。またデ−タの回転とはデ
ータが転送されるものとする。リングバッファ3のメモ
リ数m、読出しアドレスRa,Rb,Rc及び計数値k+
1又はk−1はキーアップ量及びキーダウン量に応じた
値としてアドレス制御回路4内のROM(図示せず)に
予め記録されているので、指定されたキーアップ量又は
キーダウン量に応じてROMから読出される。
【0018】リングバッファ3のメモリ数m、読出しア
ドレスRa,Rb,Rcにおいて隣接する読出しアドレス
の差分の合計は次式で示される。なお、m−1≧Ra
b>Rc≧0とする。 |Ra−Rb|+|Rb−Rc|+|m+(Rc−Ra)|=m (4) ただし、|Ra−Rb|≠|Rb−Rc|,|Rb−Rc|≠|m+
(Rc−Ra)|,|m+(Rc−Ra)|≠|Ra−Rb|であ
る。読出しアドレスRa,Rb,Rcは例えば、これら差
分が互いに素となるように設定される。
【0019】これより各2相間でトレモロを起こす周波
数が異なるようになり、トレモロ感を軽減することがで
きる。アドレス制御回路4は補間タイミング信号に同期
してリングバッファ3の連続するアドレスWn,Wn-1
書込みアドレスとして指定する(ステップS2)。キー
アップ量又はキーダウン量が指定された直後のステップ
S2の実行時にはアドレスWn,Wn-1には初期値が設定
されるが、その後は後述する如く変数nに1が加算され
るので、新たな書込みアドレスWn,Wn-1が指定され
る。次いで、データxpのp、すなわち、カウンタ12
の計数値が0であるか否かを判別し(ステップS3)、
p=0ならば、キーダウン及びキーアップのいずれの動
作時であるか否かを判別する(ステップS4)。キーア
ップ時の場合には変数nから1を減算し(ステップS
5)、キーダウン時の場合には変数nに更に1を加算す
る(ステップS6)。
【0020】ステップS3においてp≠0ならば、リン
グバッファ3のアドレスWnの記憶位置に今回の補間デ
ータxp´を書込み、アドレスWn-1の記憶位置に前回の
補間データxp-1´を書込む(ステップS7)。ステッ
プS5の実行後においては、アドレスWnの記憶位置に
前回の補間データxp-1´を書込み、アドレスWn-1の記
憶位置に前前回の補間データxp-2´を書込む(ステッ
プS8)。ステップS6の実行後においては、アドレス
nの記憶位置にx0´=x0すなわち補間回路2への入
力データをxpそのまま書込み、アドレスWn-1の記憶位
置に補間データxk´を書込む(ステップS9)。
【0021】よって、p≠0のキーアップ時及びキーダ
ウン時にはリングバッファ3のアドレスWnの記憶位置
に今回の補間データが書込まれ、アドレスWn-1の記憶
位置に前回の補間データが書込まれるので、例えば、上
記の補間データx1’,x2’,x3’のいずれか1がア
ドレスWnの記憶位置に書込まれ、アドレスWn-1の記憶
位置すなわち前回アドレスWnであった記憶位置には前
回と同じデータが再度書込まれるのである。p=0のキ
ーアップ時にはステップS5で前回の書込みアドレスに
戻されるので、前回の2つの書込み補間データが再び前
回と同じ記憶位置に書込まれ、重複した動作が行なわれ
る。これは上記したようにキーアップ時にはp=0のと
きの補間データx0’が存在しないのでデータを詰めて
空きが生じないようにするためである。p=0のキーダ
ウン時にはステップS6で書込みアドレスが更に1だけ
進められるので、アドレスWn,Wn-1共に新たなデータ
が書込まれる。すなわちキーダウン時には補間データが
1つだけ増えるので、p=0のときだけは補間データx
4’がアドレスWn-1の記憶位置に書込まれ、次のデータ
群の補間データx0’(=x0)がアドレスWnの記憶位
置に書込まれる。この実施例では重複書込みを行ってい
るが、重複書込み自体、元来無駄な動作なので、重複書
込みを検出して、書込みを行わないという制御方法もあ
る。
【0022】アドレス制御回路4は読出しアドレス
a,Rb,Rcの記憶位置からデータを各々読出す(ス
テップS10)。読出された各データは乗算器5,6,
7に供給される。ステップS10の実行後、リングバッ
ファ3のメモリに記憶されたm個のデータを各々アドレ
スの1つ小さい記憶位置に転送する(ステップS1
1)。この際、アドレス0の記憶位置のデータはアドレ
スm−1の記憶位置に転送される。その後、補間タイミ
ング信号が供給されたか否かを判別し(ステップS1
2)、補間タイミング信号が供給されたならば、ステッ
プS3に戻る。
【0023】なお、ステップS5で変数nから1を減じ
た場合にn=−1となったならば、変数nをm−1に設
定し、変数nから1を減じた場合にn=0となったなら
ば、n−1をm−1に設定する。また、ステップS9で
n=0の場合のWn-1のn−1としてはm−1と読み替
える。アドレス制御回路4の上記した動作はキーボード
15の操作によりキーアップ量又はキーダウン量が指定
又は変化されるとステップS1から実行されるようにな
っている。
【0024】このように書込みの前にデータを補間して
おくことにより、書込みのタイミングと読出しタイミン
グとを共通化することができ、クロック周波数が1つで
済む。次に、クロスフェード係数設定回路8は、読出し
アドレスRa,Rb,Rcと書込みアドレスWnとの差Ra
−Wn,Rb−Wn,Rc−Wnによって係数ka ,kb,k
cを設定する。差が0のときka=0であり、差が増加す
るに従ってkaも増加し、差がm/2のときkaは最大値
1をとる。その後、差が増加するに従ってkaは減少
し、差がmのときka=0となり、差が3m/2のとき
aは最小値(負の最大値)−1となる。その後、再び
増加し、差が2mで初期値0に戻る。すなわち、書込み
アドレスが読出しアドレスを通過するときに係数が0と
なり最も離れたときに+1又は−1の値を交互にとる。
従って、係数kaの変化は書込みアドレスと読出しアド
レスの交差2回を1サイクルとした波形となる。kb
cにおいても同様であるが、書込みアドレスと交差す
る時期がずれているから波形は互いにずれる。一例とし
て変化特性が直線である場合の係数ka,kb,kcと時
間との関係を示すと図3の如くなる。なお、クロスフェ
ード係数設定回路8においては補間タイミング信号に同
期して所定の関数式を用いて読出しアドレスRa,Rb
cと書込みアドレスWnと、メモリ数mとから係数
a,kb,kcを算出するようにしても良いが、ROM
等のメモリに読出しアドレスRa,Rb,Rcと書込みア
ドレスWnと、アドレス数mとから定まる係数の値を予
め記憶させておき、そのときのRa,Rb,Rc、Wn及び
mの各値から対応する係数をメモリから読出してka
b,kcを定めるようにしても良い。また、係数ka
b,kcの変化特性は図3の如く直線でなく、曲線であ
っても良い。
【0025】このように設定された係数ka,kb,kc
ディジタル信号として乗算器5,6,7に供給される。
乗算器5は読出しアドレスRaから読出されたデータに
係数kaを乗算し、乗算器6は読出しアドレスRbから読
出されたデータに係数bを乗算し、乗算器7は読出し
アドレスRcから読出されたデータに係数kcを乗算す
る。乗算器5,6,7の各出力信号は加算器9に供給さ
れて合算される。加算器9から音程制御されたディジタ
ル信号が出力される。
【0026】係数ka,kb,kcを−1から+1の範囲
で変化させたことにより、特定の2相間で考えれば図4
に示すように同相でのクロスフェードと逆相でのクロス
フェードとが交互に生ずることとなり、同相時は実線、
逆相時は破線の各くし型特性が時間経過に従って交互に
生じて、矢印で示したレベル変化によるトレモロ音が生
ずる周波数が分散されることとなり、その部分の平均レ
ベルが上昇し、トレモロ感が軽減する。上記の実施例の
場合には3相のクロスフェードが行なわれるのでトレモ
ロ音が生ずる周波数はさらに多く分散される。
【0027】なお、上記した実施例においては、補間回
路2がk+1又はk−1個のデータを作成するようにし
たが、これに限らず、書込み位置を2位置以上として他
の個数のデータを作成しても良い。また、リングバッフ
ァの読出し箇所は3箇所でなく、例えば、2箇所や4箇
所でも良い。図5は本願第4の発明の実施例たる音程制
御装置の一部分だけ示している。この装置においては、
加算器9の出力にくし型フィルタ16が設けられ、くし
型フィルタ16の出力が出力端子OUTに接続されてい
る。くし型フィルタ16は加算器9の出力信号を遅延さ
せる遅延素子17と、加算器9及び遅延素子17の各出
力信号を加算する加算器18とから構成されている。そ
の他の構成は図1に示した装置と同様である。なお、く
し型フィルタはDSPによって構成することもできる。
【0028】かかる構成において、加算器9の出力信号
はくし型フィルタ16の遅延素子17によって遅延さ
れ、その遅延信号と加算器9の出力信号とが加算器18
によって加算される。例えば、遅延素子17の遅延時間
が0.1sec ならば、加算器9の出力信号、すなわち原
信号に対して遅延信号は0.1sec だけ遅れた信号とな
る。これにより、原信号が直流信号のときは加算後の信
号が2倍となる。10Hzでは信号の山と山、谷と谷と
が重なるので信号レベルが2倍となる。また10Hzの
整数倍となる20Hz等の周波数でも同様に信号レベル
が2倍となる。しかしながら、それらの中間周波数、例
えば、5Hz,15Hz等の周波数では双方の信号が互
いに打ち消されて信号レベルは0となる。よって、くし
型フィルタ16の周波数特性は例えば、図6に示す如く
なる。トレモロ音を生ずる周波数も基本周波数の整数倍
の周波数で生ずるので、くし型フィルタ16の周波数特
性で谷となる周波数をクロスフェードによりトレモロ音
を生ずる周波数に一致させることによりトレモロ音信号
成分を除去することができる。よって、音程制御された
再生音中においてトレモロ音の発生を軽減することがで
きる。なお、くし型フィルタの挿入位置は加算器9の出
力に限らず信号系統のいずれかに挿入すれば良い。
【0029】また、図1の装置では、読出し位置を3箇
所(3相)とし、互いのアドレス間隔を異ならせたから
トレモロ音が生ずる基本周波数は各組合せごとにあり多
数となる。従って、くし型フィルタの周波数特性はこの
うちの1つに設定しても良いし、周波数特性を適宜変化
させるか、或いは異なる周波数特性のくし型フィルタを
複数設けても良い。ただし、従来のようにアドレス間隔
を等しくした場合は1つで良いことはもちろんである。
【0030】更に、図1の装置ではトレモロ音が生ずる
周波数が図4に示した特性の如くクロスフェードが1回
行なわれる毎に変化するので、それに合せて遅延素子1
7の遅延時間を変化させることによりくし型フィルタ1
6の周波数特性を変化させても良いし、いずれかのみに
設定してもよい。しかしながら、係数ka,kb,kc
負の値をとらず0〜+1の間で変化するならば、くし型
フィルタ16の周波数特性を変化させる必要はない。或
いはトレモロを起こす複数の基本周波数にそれぞれ対応
するくし型フィルタを挿入しても良い。
【0031】また、上記した実施例においては、入力デ
ィジタル化オーディオ信号データを所定のサンプリング
数単位で音程上昇時にデータ数を間引き音程降下時にデ
ータ数を増やす補間を行なうことにより書込みタイミン
グと読出しタイミングとを共通にできるようにした装置
を示したが、これに限らず、背景技術の欄に示した従来
装置のように書込み時にはサンプリング周期毎にデータ
を単にリングバッファのアドレス順に書込み、読出し時
に書込みとは異なる速度で読出し、一部重複して読出し
たり、或いは読出すデータを一部読み飛してその後のデ
ータから読出すことにより音程制御する装置の場合にも
本発明を適用することができる。
【0032】更に、上記した各実施例においては、リン
グバッファとしてメモリの内容が実際に転送される方式
の場合について説明したが、アドレス値を演算により読
み替えることで転送と同等の効果を得るようにしても良
い。
【0033】
【0034】本願第1及び第4の発明によれば、書込み
記憶位置とは無関係に複数の読出し記憶位置各々を連続
的に指定し、更に、複数の読出し記憶位置間の記憶位置
の個数を互いに異ならせることにより、読出される複数
のデータ間の時間差が異なるようにしているので、トレ
モロ音の生じる周波数が特定の周波数から分散される。
よって、周波数によるトレモロ音のレベル差が少なくな
るので、トレモロ音の発生が抑制される。
【0035】また、本願第2及び第5の発明によれば、
メモリの複数の読出し記憶位置からの読出しデータに個
別に係数を乗算し、乗算後のデータを互いに加算して出
力データとし、複数の読出し記憶位置各々で、係数を所
定の負値から所定の正値までの範囲で読出し記憶位置と
書込み記憶位置との差に応じた値に設定するので、トレ
モロ音が生ずる周波数が変化して従来装置に比して各周
波数におけるトレモロ音の生じる周期が長くなり、聴感
上トレモロ音が軽減される。
【0036】更に、本願第3及び第6の発明によれば、
くし型フィルタの周波数特性で谷となる周波数をクロス
フェードによるトレモロ音を生ずる周波数に一致させる
ことによりトレモロ音信号成分を除去することができ
る。よって、音程制御された再生音中においてトレモロ
音の発生を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の装置中のアドレス制御回路の動作を示す
フロー図である。
【図3】各係数の変化を示す図である。
【図4】係数を−1から+1の範囲で変化させた場合の
クロスフェード時の周波数特性を示す図である。
【図5】発明の実施例を示すブロック図である。
【図6】図5の装置中のくし型フィルタの特性を示す図
である。
【図7】従来の音程制御装置におけるリングバッファの
書込みアドレスと読出しアドレスとの位置関係を示す図
である。
【図8】従来の音程制御装置のクロスフェード時の周波
数特性を示す図である。
【主要部分の符号の説明】
2 補間回路 3 リングバッファ 4 アドレス制御回路 5,6,7 乗算器 8 クロスフェード係数設定回路 9 加算器 13 補間係数設定回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10H 7/00 - 7/12 G10L 21/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定のサンプリング間隔でサンプリング
    された入力ディジタル化オーディオ信号データに対する
    再生音の音程を制御する音程制御装置であって、 所定数の記憶位置を有してリングバッファを構成するメ
    モリと、 前記メモリの少なくとも1つの書込み記憶位置と複数の
    読出し記憶位置とを順次指定する記憶位置指定手段と、 前記入力ディジタル化オーディオ信号データに基づいた
    データを前記メモリの前記書込み記憶位置に書き込み、
    前記メモリの前記複数の読出し記憶位置からデータを各
    々読み出して前記所定のサンプリング間隔が示す周期と
    は異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読出手
    段と、 前記複数の読出し記憶位置からの前記読出しデータに個
    別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算し
    て出力データとする演算手段と、を備え、前記記憶位置指定手段は前記書込み記憶位置とは無関係
    に前記複数の読出し記憶位置各々を連続的に指定し、
    記複数の読出し記憶位置間の記憶位置の個数が互いに異
    なることを特徴とする音程制御装置。
  2. 【請求項2】 所定のサンプリング間隔でサンプリング
    された入力ディジタル化オーディオ信号データに対する
    再生音の音程を制御する音程制御装置であって、 所定数の記憶位置を有してリングバッファを構成するメ
    モリと、 前記メモリの少なくとも1つの書込み記憶位置と複数の
    読出し記憶位置とを順次指定する記憶位置指定手段と、 前記入力ディジタル化オーディオ信号データに基づいた
    データを前記メモリの前記書込み記憶位置に書き込み、
    前記メモリの前記複数の読出し記憶位置からデータを各
    々読み出して前記所定のサンプリング間隔が示す周期と
    は異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読出手
    段と、 前記複数の読出し記憶位置からの前記読出しデータに個
    別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算し
    て出力データとする演算手段と、 前記複数の読出し記憶位置各々で、前記係数を所定の負
    値から所定の正値までの範囲で前記読出し記憶位置と前
    記書込み記憶位置との差に応じた値に設定する係数設定
    手段と、を備えたことを特徴とする音程制御装置。
  3. 【請求項3】 所定のサンプリング間隔でサンプリング
    された入力ディジタル化オーディオ信号データに対する
    再生音の音程を制御する音程制御装置であって、 所定数の記憶位置を有してリングバッファを構成するメ
    モリと、 前記メモリの少なくとも1つの書込み記憶位置と複数の
    読出し記憶位置とを順次指定する記憶位置指定手段と、 前記入力ディジタル化オーディオ信号データに基づいた
    データを前記メモリの前記書込み記憶位置に書き込み、
    前記メモリの前記複数の読出し記憶位置からデータを各
    々読み出して前記所定のサンプリング間隔が示す周期と
    は異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読出手
    段と、 前記複数の読出し記憶位置からの前記読出しデータに個
    別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算し
    て出力データとする演算手段と、を備え、 前記演算手段の加算出力経路中又は各係数乗算経路中に
    くし型フィルタを設けたことを特徴とする音程制御装
    置。
  4. 【請求項4】 所定のサンプリング間隔でサンプリング
    された入力ディジタル化オーディオ信号データに対する
    再生音の音程を制御する音程制御方法であって、 所定数の記憶位置を有してリングバッファを構成するメ
    モリの少なくとも1つの書込み記憶位置と複数の読出し
    記憶位置とを順次指定する記憶位置指定行程と、 前記入力ディジタル化オーディオ信号データに基づいた
    データを前記メモリの前記書込み記憶位置に書き込み、
    前記メモリの前記複数の読出し記憶位置からデータを各
    々読み出して前記所定のサンプリング間隔が示す周期と
    は異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読出行
    程と、 前記複数の読出し記憶位置からの前記読出しデータに個
    別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算し
    て出力データとする演算行程と、を備え、前記記憶位置指定行程は前記書込み記憶位置とは無関係
    に前記複数の読出し記 憶位置各々を連続的に指定し、
    記複数の読出し記憶位置間の記憶位置の個数が互いに異
    なることを特徴とする音程制御方法。
  5. 【請求項5】 所定のサンプリング間隔でサンプリング
    された入力ディジタル化オーディオ信号データに対する
    再生音の音程を制御する音程制御方法であって、 所定数の記憶位置を有してリングバッファを構成するメ
    モリの少なくとも1つの書込み記憶位置と複数の読出し
    記憶位置とを順次指定する記憶位置指定行程と、 前記入力ディジタル化オーディオ信号データに基づいた
    データを前記メモリの前記書込み記憶位置に書き込み、
    前記メモリの前記複数の読出し記憶位置からデータを各
    々読み出して前記所定のサンプリング間隔が示す周期と
    は異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読出行
    程と、 前記複数の読出し記憶位置からの前記読出しデータに個
    別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算し
    て出力データとする演算行程と、 前記複数の読出し記憶位置各々で、前記係数を所定の負
    値から所定の正値までの範囲で前記読出し記憶位置と前
    記書込み記憶位置との差に応じた値に設定する係数設定
    行程と、を備えたことを特徴とする音程制御方法。
  6. 【請求項6】 所定のサンプリング間隔でサンプリング
    された入力ディジタル化オーディオ信号データに対する
    再生音の音程を制御する音程制御方法であって、 所定数の記憶位置を有してリングバッファを構成するメ
    モリの少なくとも1つの書込み記憶位置と複数の読出し
    記憶位置とを順次指定する記憶位置指定行程と、 前記入力ディジタル化オーディオ信号データに基づいた
    データを前記メモリの前記書込み記憶位置に書き込み、
    前記メモリの前記複数の読出し記憶位置からデータを各
    々読み出して前記所定のサンプリング間隔が示す周期と
    は異なる周期の読出しデータを各々生成する書込読出行
    程と、 前記複数の読出し記憶位置からの前記読出しデータに個
    別に係数を乗算し、その乗算後のデータを互いに加算し
    て出力データとする演算行程と、を備え、 前記演算行程の前記出力データ又は各係数乗算経路中の
    データにくし型フィルタ特性を与えることを特徴とする
    音程制御方法。
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