JP3419470B2 - 歯質用接着剤 - Google Patents
歯質用接着剤Info
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Description
さらに詳しくは、金属化合物を含有するプライマーを利
用した、特に歯の象牙質に対し有効な接着剤に関する。 【0002】 【従来の技術】歯科治療の分野では、歯質特に象牙質と
他の材料、たとえば高分子、金属、陶材などとを強く接
着する必要があり、そのための接着剤がすでに種々提案
されている。このような歯科用接着剤としては、(1)
ラジカル重合性のメタクリレート系モノマーと、(2)
重合開始剤としての過酸化ベンゾイルと芳香族第3級ア
ミンとの混合系、あるいはこの混合系にスルフィン酸塩
を添加した系と、(3)充填剤とからなる接着剤組成
物、あるいは(1)ラジカル重合性のメタクリレート系
モノマーと、(2)光増感剤としてのカンファーキノン
と、還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエチルメタ
クリレートなどのアミンとからなる光重合開始剤と、
(3)充填剤とからなる接着剤組成物、さらには(1)
ラジカル重合性のメタクリレート系モノマーと、(2)
接着促進モノマーとしての4−メタクリロイルオキシエ
トキシカルボニルフタル酸無水物(4−META)と、
(3)重合開始剤としてのトリブチルボラン部分酸化物
(TBBO)と、充填剤としてのポリメチルメタクリレ
ート(PMMA)とからなる接着剤組成物などが提案さ
れている。 【0003】このように従来知られている接着剤組成物
では、ラジカル重合性モノマーの重合開始剤として種々
の化合物が用いられているが、TBBOを用いる場合を
除き十分な接着力は得られていない。また、接着性改善
のため、接着促進モノマーあるいは歯質と親和性を有す
るモノマー、例えば、カルボキシル基を有する4−メタ
クリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸(4−M
ET)あるいはその無水物(4−META)、10−メ
タクリロイルオキシデシルマロン酸(MAC−10)、
リン酸基を有するものとして10−メタクリロイルオキ
シデシルジハイドロジェンホスフェートなどの利用も提
案されているが、象牙質に対しては十分な効果をあげて
いない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来技術の中では、T
BBOを用いる接着剤は比較的高い接着力を発揮するも
のではあるが、TBBOをモノマーの10%ないしはそ
れ以上の多量に使用しなければならず、また硬化も遅
く、しかも重合性モノマーとしてはほとどんどメチルメ
タクリレートに限定され、ジメタクリレート類のような
架橋性モノマーを利用できない等の欠点があった。さら
に歯質の前処理の面でも、基本的にはエナメル質はリン
酸、象牙質は塩化第二鉄を含むクエン酸溶液で処理する
という煩雑さの問題を抱えている。前記のスルフィン酸
塩を一成分とする重合開始剤はTBBOの問題点の多く
を解決し得る可能性を有しており、歯質との接着にも有
効とされている。しかし、特公昭56−33363号公
報、特開昭59−15468号公報などに提案されてい
るこれまでの接着剤では、象牙質に対しては十分な接着
力は得られておらず、さらに工夫する必要がある。本発
明の目的は、歯質、とりわけ象牙質に対して高い接着力
を発揮しうる新規な接着剤を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは前記のスル
フィン酸塩を重合開始剤の一成分として含む硬化性組成
物をプライマーと組合せることにより接着力の向上を図
るべく検討した結果、本発明を完成するに至った。 【0006】すなわち本発明は、銅、鉄もしくはコバル
ト化合物、並びに2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒ
ドロキシプロピルメタクリレート、N−ビニルピロリド
ン、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノ
マーおよびリン酸基を有する(メタ)アクリレートモノ
マーからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー
を含有するプライマーと、(メタ)アクリレートモノマ
ー、並びに芳香族スルフィン酸塩、第3級アミンおよび
過酸化物からなる重合開始剤を含む硬化性組成物とを組
み合わせてなる歯質用接着剤である。プライマー中に含
まれる金属化合物としては銅、鉄またはコバルトの化合
物が好ましい。金属化合物の形態としては、塩化物、硝
酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アクリル酸塩、メタクリル酸塩
などの無機酸または有機酸の塩、アセチルアセトナト錯
体等の有機錯体などが挙げられる。これらの金属化合物
中の金属元素はいずれの価数のものでもよい。金属化合
物のプライマー中の含有量は0.0005〜0.5重量
%であることが好ましい。とりわけ金属化合物が銅化合
物である場合には0.0005〜0.1重量%が好まし
く、また金属化合物が鉄化合物またはコバルト化合物で
ある場合には0.005〜0.5重量%が好ましい。 【0007】本発明で使用するプライマーの組成は、上
記金属化合物およびモノマーを含有する点以外は、特に
限定されず、例えば歯科用途において通常使用されるよ
うなプライマーに金属化合物を配合したものであっても
よい。プライマーは、通常、溶媒を含有する。溶媒とし
ては、プライマー中の金属化合物を溶解しうるものが好
ましい。この観点において、多くの場合、水または水と
エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒド
ロフラン等の水混和性有機溶媒との混合液が好結果を与
える。またモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメ
タクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタク
リレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレー
ト、N−ビニルピロリドン、カルボキシル基を有する
(メタ)アクリレートモノマーおよびリン酸基を有する
(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選ばれる
少なくとも1種を使用する。なお、プライマー中のモノ
マーの含有量は1〜50重量%であることが好ましく、
5〜40重量%であることがより好ましい。 【0008】本発明における硬化性組成物に含有される
(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチルメタク
リレート、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオ
キシ−2−ヒドロキシプロボキシ)フェニル〕プロパ
ン、トリエチレングリコールジメタクリレート、HEM
A、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、10−
メタクリロイルオキシデシルハイドロジェンホスフェー
トなどのメタクリレート系モノマーなどが好ましい。硬
化性組成物に含有される芳香族スルフィン酸塩として
は、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフ
ィン酸ナトリウムなどの芳香族スルフィン酸のアルカリ
金属塩などが好ましい。硬化性組成物中の芳香族スルフ
ィン酸塩の含有量は0.1〜10重量%が好ましい。芳
香族スルフィン酸塩は、重合開始剤として、過酸化物お
よび第3級アミンと併用する。硬化性組成物はエタノー
ル等の溶媒を含んでいてもよい。(メタ)アクリレート
系モノマー、並びに芳香族スルフィン酸塩、第3級アミ
ンおよび過酸化物を含有する硬化性組成物は、フィラー
を含むコンポジットレジンであってもよいし、コンポジ
ットレジン用のボンディング剤、ライナーとしての接着
剤であってもよい。 【0009】本発明の接着剤は、プライマーと硬化性組
成物よりなるが、歯面等の接着面にプライマーを塗布
し、その面にさらに硬化性組成物を塗布したのち、もう
一方の被着材との接触下に該硬化性組成物を硬化させる
ことによって使用される。なお、歯面に本発明の接着剤
を適用する場合には、歯面には予め常法に従って、リン
酸処理、クエン酸処理、エチレンジアミン四酢酸処理等
の酸処理などの前処理を施しておくことが、本発明の接
着剤の高い接着力を効果的に発現させるうえで好まし
い。 【0010】 【作用】本発明の接着剤では、プライマー中に含まれる
金属化合物が象牙質中に取り込まれるとともに、硬化性
組成物中の芳香族スルフィン酸塩がそこへ拡散してゆ
き、酸化・還元系を形成してラジカルを発生し、硬化性
組成物中のモノマーの重合を急速に開始、進行させる結
果、歯質の面から重合、硬化が進行して強い接着力が得
られるものと推定される。 【0011】 【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、本発
明はこれらの実施例に限定されるものではない。 (接着強さの測定方法) (1)牛前歯の唇側面を切削して象牙質面を出し、60
0番のエメリー紙で仕上げて接着面とした。リン酸水溶
液、クエン酸水溶液またはエチレンジアミン四酢酸(E
DTA)水溶液で処理し、水洗、乾燥した後、直径5m
mの孔のあいたプラスチック粘着テープをはりつけ接着
面積を規定した。プライマーを塗布して乾燥し、芳香族
スルフィン酸ナトリウムとしてベンゼンスルフィン酸ナ
トリウム、第三級アミンおよび過酸化物を重合開始剤成
分として含み、かつ多官能メタクリレート、10−メタ
クリロイルオキシデシルハイドロジェンホスフェートな
どをモノマー成分として含む硬化性組成物を塗布し、弱
圧のエアーで揮発成分を蒸散させた後、光照射器トラン
スルックス(クルツアー社製)で30秒光照射を行っ
た。厚さ1mm、直径6mmの孔の開いたシリコーンゴ
ムスペーサーをのせ光重合型のコンポジットレジン(フ
ォトクリアフィルA、クラレ社製)を填塞し、60秒間
光照射を行い硬化させた。スペーサーをはずし、即時重
合レジンによりアクリル棒を硬化物に接着し、37℃の
蒸留水中に24時間浸漬した後、引張り試験を行い、接
着強さを測定した。5個の試験片での平均値を求めた。 【0012】(2)芳香族スルフィン酸ナトリウムとし
てベンゼンスルフィン酸ナトリウム、第三級アミンおよ
び過酸化物を重合開始剤成分として含み、かつ多官能メ
タクリレート、10−メタクリロイルオキシデシルハイ
ドロジェンホスフェートなどをモノマー成分として含む
硬化性組成物を塗布し、弱圧のエアーで揮発成分を蒸散
させた後、厚さ1mm、直径6mmの孔の開いたシリコ
ーンゴムスペーサーをのせ、レドックス重合型のコンポ
ジットレジン(クリアフィルF、クラレ社製)を填塞
し、硬化させた。この部分以外は上記方法(1)と同様
に操作を行った。 【0013】(実施例1)象牙質を10%リン酸水溶液
で30秒間処理し、0.003gの塩化第二銅、35g
の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび65gの
水からなるプライマーを塗布して、接着強さの測定方法
(1)にしたがって試験を行ったところ、8.3MPa
の接着強さが得られた。 【0014】(実施例2)実施例1の10%リン酸水溶
液の代わりに40%リン酸水溶液で30秒間処理した以
外は実施例1と同様にして接着試験を行ったところ、
8.9MPaの接着強さが得られた。 (比較例1)プライマーを塗布しなかった点以外は実施
例1と同様に接着試験を行ったところ、接着強さは4.
1MPaであった。 (比較例2)40%リン酸水溶液で30秒間処理した点
およびプライマーを塗布しなかった点以外は実施例1と
同様に接着試験を行ったところ、接着強さは4.6MP
aであった。 (比較例3)塩化第二銅を除いたプライマーを用いた点
以外は実施例1と同様に接着試験を行ったところ、接着
強さは4.3MPaであった。 【0015】(実施例3)40%リン酸水溶液で30秒
間処理した点および0.07gの塩化第二鉄、35gの
2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび65gの水
からなるプライマーを塗布した点以外は実施例1と同様
に接着試験を行ったところ、8.0MPaの接着強さが
得られた。 (実施例4)0.01gの塩化コバルト、35gの2−
ヒドロキシエチルメタクリレートおよび65gの水から
なるプライマーを塗布した点以外は実施例1と同様に接
着試験を行ったところ、7.6MPaの接着強さが得ら
れた。 (実施例5)象牙質を10%リン酸水溶液で30秒間処
理し、0.003gのメタクリル酸銅、35gの2−ヒ
ドロキシエチルメタクリレートおよび65gの水からな
るプライマーを塗布して、接着強さの測定方法(2)に
したがって試験を行ったところ、8.8MPaの接着強
さが得られた。 【0016】(実施例6)象牙質を10%クエン酸水溶
液で60秒間処理した以外は、実施例5と同様にして接
着試験を行ったところ、8.3MPaの接着強さが得ら
れた。 (実施例7)象牙質を15%EDTA水溶液で60秒間
処理した以外は、実施例5と同様にして接着試験を行っ
たところ、8.0MPaの接着強さが得られた。 (比較例4)プライマーを塗布しなかった以外は実施例
5と同様に接着試験を行ったところ、接着強さは2.3
MPaであった。 (比較例5)メタクリレート酸銅を除いたプライマーを
用いた以外は実施例5と同様にして接着試験を行ったと
ころ、接着強さは3.4MPaであった。 【0017】 【発明の効果】本発明によれば、上記の実施例から明ら
かなとおり、歯質、とりわけ象牙質に対して強固な接着
力を発現しうる接着剤が提供される。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 銅、鉄もしくはコバルト化合物、並びに
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロ
ピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメ
タクリレート、N−ビニルピロリドン、カルボキシル基
を有する(メタ)アクリレートモノマーおよびリン酸基
を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より
選ばれる少なくとも1種のモノマーを含有するプライマ
ーと、(メタ)アクリレートモノマー、並びに芳香族ス
ルフィン酸塩、第3級アミンおよび過酸化物からなる重
合開始剤を含む硬化性組成物とを組み合わせてなる歯質
用接着剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17727491A JP3419470B2 (ja) | 1991-06-20 | 1991-06-20 | 歯質用接着剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17727491A JP3419470B2 (ja) | 1991-06-20 | 1991-06-20 | 歯質用接着剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05920A JPH05920A (ja) | 1993-01-08 |
JP3419470B2 true JP3419470B2 (ja) | 2003-06-23 |
Family
ID=16028188
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17727491A Expired - Lifetime JP3419470B2 (ja) | 1991-06-20 | 1991-06-20 | 歯質用接着剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3419470B2 (ja) |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4540722A (en) * | 1982-01-15 | 1985-09-10 | Minnesota Mining And Manufacturing Company | Dentin and enamel adhesive |
JPS62161709A (ja) * | 1986-01-10 | 1987-07-17 | Mitsui Petrochem Ind Ltd | 歯質接着性硬化剤 |
JPS62231652A (ja) * | 1986-04-01 | 1987-10-12 | 三井化学株式会社 | 歯科用接着性表面処理方法 |
JP2609775B2 (ja) * | 1991-06-05 | 1997-05-14 | テルモ株式会社 | 歯質用接着剤 |
JP3034650B2 (ja) * | 1991-06-19 | 2000-04-17 | 株式会社ジーシー | 歯質用接着剤 |
-
1991
- 1991-06-20 JP JP17727491A patent/JP3419470B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05920A (ja) | 1993-01-08 |
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