JPH0640838A - 歯質に対する接着性プライマー組成物および接着方法 - Google Patents

歯質に対する接着性プライマー組成物および接着方法

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JPH0640838A
JPH0640838A JP4199814A JP19981492A JPH0640838A JP H0640838 A JPH0640838 A JP H0640838A JP 4199814 A JP4199814 A JP 4199814A JP 19981492 A JP19981492 A JP 19981492A JP H0640838 A JPH0640838 A JP H0640838A
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meth
weight
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acid
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JP4199814A
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Takashi Yamamoto
山本隆司
Shigemichi Honda
本田成道
Akifumi Kasagi
笠置昭文
Yoshiko Ono
小野佳子
Junko Iizuka
飯塚純子
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 歯牙の表面に施すことにより、強力に歯牙と
硬化性樹脂組成物を接着させることができる接着性プラ
イマー組成物を提供する。 【構成】 重合性単量体、硫黄を含有する還元性無機化
合物および水を含有する接着性プライマー組成物および
この接着性プライマー組成物を使用した歯牙と硬化性組
成物の接着方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は歯牙に対して、硬化性の
樹脂または樹脂複合材料(接着材)を強力に接着するた
めに、予め歯牙表面に適用するための接着性プライマー
組成物に関する。さらに詳しくは、特に歯の治療に際し
て、硬化性樹脂組成物などを歯質に対して強力に接着さ
せるために予め歯質表面に適用するための接着性プライ
マー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】歯科治療において、歯と修復材料との接
着は重要であるため接着材が使用され、用途によって液
状のもの、セメントあるいはペースト状のものが用いら
れている。しかし多くの場合、歯牙特に象牙質と接着材
またはセメント材との間の接着力が不十分であるため
に、歯質との界面から剥離して温痛や冷痛が生じたり、
その隙間からムシ歯が再発したり修復材料が脱落するな
どの問題を発生させている。
【0003】これまでに、歯牙に対して十分な接着力を
得るために、歯牙の表面に酸エッチングによる処理をす
る方法が知られている(Buonocore,M.G.,etal., J.Den
t.Res.,34,849-853,1955)。典型的なエッチング剤とし
て、リン酸、金属塩を含むクエン酸およびEDTAなど
の水溶液が例示できる。この方法は歯牙エナメル質に接
着する際の表面処理として特に有効であったが、象牙質
に対する接着には多くの問題を残した。
【0004】そこで象牙質への接着力を向上させるため
に、酸エッチングを行った歯牙表面に対し、さらにプラ
イマーによる処理を加えて接着材を適用する方法が提案
されている(Munksgaad,E.C., Asmussen,J.Dent.Res.,6
3,1087-1089,1984、および特開昭63−279,851
号公報参照)。この提案においては、酸エッチング剤と
してリン酸やクエン酸などの酸とN−フェニルグリシン
(NPG)などのアミノ酸を含む水溶液を使用し、プラ
イマーとしてグルタルアルデヒドと2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレート(HEMA)および水からなる組成物
を用いて樹脂もしくは樹脂複合材料を接着したが、接着
力は十分ではなかった。
【0005】早川らは、上記のプライマー組成物に酸性
基を含有する重合性単量体を加えて、接着力を改善する
方法を提案しており(歯科材料・器械、4(6)、67
〜68、1985)、十分とは言えないものの接着力の
向上を認めている。
【0006】上記の提案におけるHEMAのような水溶
性の重合性単量体と水とを組み合わせることを特徴とし
ているプライマーを用いても、未だ十分な接着力が得ら
れていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決すべき課題】本発明の目的は、上記の従来
技術における問題点を解決することにあり、歯質特に象
牙質に対して優れた接着性を発揮させる接着性プライマ
ー組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、(A)重合性単量体、(B)
硫黄を含有する還元性無機化合物 および(C)水系溶
媒を含有することを特徴とする歯質に対する接着性プラ
イマー組成物によって達成される。
【0009】すなわち本発明によれば、硫黄を含有する
還元性無機化合物と歯牙に対して高い浸透性を示す重合
性単量体を含む接着性プライマー組成物を歯牙の表面に
接触させることによって、歯質に硬化性の樹脂組成物も
しくは樹脂複合材料を強力に接着することができる。
【0010】本発明の接着性プライマー組成物は研削し
た歯質表面に直接に適用できるが、リン酸水溶液、金属
塩を含むクエン酸水溶液またはEDTA水溶液などのエ
ッチング剤によって、あらかじめ歯牙の表面を処理して
から使用することが好ましく、その際、エッチング剤と
してリン酸水溶液や塩化第二鉄とクエン酸を含む水溶液
が好ましく用いられる。
【0011】本発明の接着性プライマー組成物におい
て、(A)成分は重合性単量体である。かかる単量体の
重合性基としては、例えばアクリロイル基、メタクリロ
イル基(以下、アクリロイル基とメタクリロイル基の総
称として(メタ)アクリロイル基ということがある)、
スチリル基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合可
能な不飽和基を挙げることができる。かかる重合性基は
1分子中に少なくとも1個含有していればよい。1分子
中に上記の重合性基が1個、2個および3個含有する重
合性単量体として、それぞれ単官能単量体、2官能単量
体および3官能単量体が好ましく用いられる。さらに、
これらの重合性単量体は、分子内にカルボキシル基、リ
ン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、グリシジル
基などの官能基を含有することができる。
【0012】(A)成分として使用できる重合性単量体
として、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)ア
クリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メ
タ)アクリル酸ブチル、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の脂肪族エ
ステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、2または3−プロピル(メタ)アクリレート、グリ
セロールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール
モノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェ
ノキプロピル(メタ)アクリレート、1モルのビスフェ
ノールAと2モルのグリシジル(メタ)アクリレートの
付加物などの水酸基含有の(メタ)アクリレート類;メ
チロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の
(メタ)アクリルアミド類;
【0013】エチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ト
リエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタ
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチ
レングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート類;プロピレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレング
リコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコ
ールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリ
コールジ(メタ)アクリレート類;上記のポリエチレン
グリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート類のどちらか一方
の(メタ)アクリロイル基がメチル基およびエチル基な
どに置換されたモノ(メタ)アクリレート類;2−(メ
タ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートまたは
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート
または1,3,5−トリメチルヘキサメチレンジイソシア
ネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの
付加物などのウレタン結合を有する(メタ)アクリレー
ト類;ビスフェノールAにオキシエチレンを付加させた
生成物にさらに(メタ)アクリル酸縮合させた2,2−
ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフ
ェニル)プロパン類などを挙げることができる。これら
の重合性単量体は単独でもしくは組み合わせて使用でき
る。
【0014】また、(A)成分として使用できる1分子
中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する重合性単
量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカ
ルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらの誘導体
を挙げることができ、例えば(メタ)アクリル酸、マレ
イン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリロ
イルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC
−10)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチ
ルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエ
チルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−(メ
タ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびそ
の無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ
メリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイ
ルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4−
[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]
ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3−ビス
(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル
(メタ)アクリレート、N,O−ジ(メタ)アクリロイ
ルオキシチロシン、O−(メタ)アクリロイルオキシチ
ロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N
−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N−
(メタ)アクリロイルp−アミノ安息香酸、N−(メ
タ)アクリロイルO−アミノ安息香酸、N−(メタ)ア
クリロイル5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリ
ロイル4−アミノサリチル酸、2または3または4−
(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物
の付加生成物(PMDM)、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3',4,
4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BT
DA)または3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボ
ン酸二無水物の付加反応物、2−(3,4−ジカルボキ
シベンゾイルオキシ)1,3−ジ(メタ)アクリロイル
オキシプロパン、N−フェニルグリシンまたはN−トリ
ルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加
物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイ
ルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−
[N−メチルN−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アク
リロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げ
ることができる。このうち、11−メタクリロイルオキ
シ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−1
0)、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
無水物(4−META)およびN−メタクリロイル5−
アミノサリチル酸(5−MASA)が好ましく用いられ
る。これらのカルボキシル基を有する重合性単量体は単
独または組み合わせて使用できる。
【0015】1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有
する重合性単量体として、例えば2−(メタ)アクリロ
イルオキシエチルアシドホスフェート、2および3−
(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェー
ト、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホス
フェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルア
シドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオ
クチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイ
ルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)ア
クリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス
{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホス
フェート、ビス{2または3−(メタ)アクリロイルオ
キシプロピル}アシドホスフェート、2−(メタ)アク
リロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2
−(メタ)アクリロイルオキシエチルp−メトキシフェ
ニルアシドホスフェートなどを挙げることができる。こ
れらの化合物におけるリン酸基は、チオリン酸基に置き
換えることができる。このうち、2−(メタ)アクリロ
イルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−
(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート
が好ましく用いられる。これらのリン酸基を有する重合
性単量体は単独または組み合わせて使用できる。
【0016】1分子中に少なくとも1個のスルホン酸基
を有する重合性単量体としては、例えば2−スルホエチ
ル(メタ)アクリレート、2または1−スルホ−1また
は2−プロピル(メタ)アクリレート、1または3−ス
ルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−
2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−
メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレ
ート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)ア
クリルアミドなどを挙げることができる。このうち、2
−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホ
ン酸を好ましく用いられる。これらのスルホン酸基を有
する重合性単量体は単独または組み合わせて使用でき
る。
【0017】上記(A)成分としては、上記の重合性単
量体をそれぞれ単独で使用でき、また組み合わせて使用
することもできる。
【0018】本発明の接着性プライマー組成物におい
て、(B)成分は硫黄を含有する還元性無機化合物であ
る。かかる化合物としては、水などの媒体中でラジカル
重合性単量体を重合させる際に使用できるレドックス重
合開始剤としての硫黄を含有する還元性無機化合物が好
ましく用いられる。例えば亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫
酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオ
ン酸、1,2チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸および
これらの塩が挙げられる。このうち亜硫酸塩が好ましく
用いられ、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜
硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましい。
これらの還元性無機化合物は単独でもしくは組み合わせ
て使用できる。さらに本発明の効果を損なわない範囲
で、他の還元性無機化合物もしくは還元性有機化合物を
組み合わせて使用することができる。
【0019】本発明の接着性プライマー組成物におい
て、(C)成分は水系溶媒である。かかる水系溶媒とし
ては、水単独もしくは水および水と混合し得る有機溶媒
とを混合した溶媒を挙げることができる。ここで使用で
きる水としては、例えば蒸留水、イオン交換水または生
理食塩水などが挙げられる。ここでは蒸留水およびイオ
ン交換水が好ましく用いられる。さらに上記有機溶媒と
しては(A)、(B)および(C)成分を均一に溶解さ
せるかもしくは分散させるものが特に好ましく用いられ
る。例えばメタノール、エタノール、プロパノールなど
のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどの
ケトン類、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテ
ル類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類な
どが挙げることができる。このうちエタノールおよびア
セトンが好ましく用いられる。かかる水系溶媒のうち、
歯牙へ用いる場合に生体への毒性や刺激性を考慮して、
エタノールやアセトンを用いることが特に好ましい。
【0020】本発明の接着性プライマー組成物は、上記
(A)、(B)および(C)の各成分について、これら
(A)、(B)および(C)成分の合計重量に基づい
て、(A)成分を1〜99重量部、(B)成分を0.0
1〜50重量部および(C)成分を1〜95重量部の範
囲で含有するのが有利である。さらに好ましい組成は、
(A)成分が1〜80重量部、(B)成分が0.05〜
30重量部および(C)成分が5〜80重量部の範囲で
ある。
【0021】本発明の接着性プライマー組成物は、上記
(A)、(B)および(C)成分の他に、本発明の効果
を損なわない範囲で過酸化ベンゾイル(BPO)、ラウ
リルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドおよび
t−ブチルハイドロパーオキシドなどの有機過酸化物ま
たは過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウ
ム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カ
リウムなどの無機過酸化物;N,N−ジメチルアミノエ
チルメタクリレート、N,N−ジメチルp−トルイジ
ン、N−フェニルグリシンなどの脂肪族あるいは芳香族
の第2級あるいは第3級アミンなどの還元性有機化合
物;ホルムアルデヒドやグルタルアルデヒドなどのアル
デヒド類の如きタンパク架橋剤;ハイドロキノン、ハイ
ドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキシメトキシベ
ンゾキノンまたはブチル化したヒドロキシトルエンなど
の貯蔵安定剤、重合体による増粘剤、および無機および
有機の充填材などを含有させることができる。
【0022】本発明のプライマー組成物は、上記
(A)、(B)および(C)成分を予め混合して歯質に
適用することができあるいは歯質上で混合し適用するこ
ともできる。歯質上その場で混合する場合には、これら
(A)、(B)および(C)成分をその場で混合するか
あるいは、例えば(A)1分子中に少なくとも1個の酸
性基を有する重合性単量体および(C)水または水と水
溶性の有機溶剤から成る液をA液として調製しまた
(B)硫黄を含有する無機化合物および(C)水から成
る液をB液として調製しておき、これらA液とB液をそ
の場で混合するかあるいは(C)水溶性の有機溶媒と
(A)から成る液をA液として調製しまた(B)および
(C)から成る液をB液として調製しておき、これらA
液とB液をその場で混合する場合などが挙げられる。
【0023】本発明の接着性プライマー組成物は直接に
歯質表面に適用できるが、前述の如く、エッチング剤に
よって予め歯牙表面を処理した後に施すこともできる。
後者の方が好ましい。その際、本発明の接着性プライマ
ー組成物として、(A)から(C)成分を予め混合した
溶液を接触させるか、あるいは上記の如く調製した溶液
を逐次に接触させることによって、歯牙に硬化性樹脂組
成物を強力に接着せしめる。
【0024】以下、本発明を実施例により説明するが、
本発明がこれら実施例に限定されるものではない。な
お、実施例中、接着力は次のようにして評価した。
【0025】新鮮なウシ下顎前歯を抜去し、水中で凍結
し保存したものを歯質サンプルとして使用した。解凍し
た牛歯エナメル質および象牙質を、回転式研磨機ECO
MET-III(BUEHLER製)で注水、指圧下で耐水エメ
リー紙600番まで研削し、平滑な面を得た。研削した
牛歯を37℃の水中に15分間浸漬した。牛歯を水中か
ら取り出して気銃にて水分を除去した。研削面にエッチ
ング剤として3重量%塩化第二鉄を含む10重量%クエ
ン酸水溶液(10−3)をスポンジに充分に浸して塗布
して30秒後に水洗し、気銃にて乾燥した。その表面
に、本発明の接着性プライマー組成物を塗布して15秒
静置し気銃にて乾燥した(約20秒間)。この上に、接
着面積を規定するため、直径5.1mmの円孔のあいた
厚さ1mmの厚紙を置いて固定した。この穴に、本発明
の硬化性樹脂組成物を充填し、厚さ50〜100μmの
ポリエステル製フィルムを介してスライドガラスにて蓋
をした。10分後にスライドガラス及びポリエステルフ
ィルムをはずし、メタファースト(サンメディカル製)
にて硬化物とステンレス棒を接着して15分間静置し3
7℃の水中に24時間浸漬後、引っ張り接着試験(クロ
スヘッドスピード2mm/min)を行った。
【0026】本発明の接着性プライマー組成物の歯牙へ
の接着力を評価するのに使用した硬化性組成物として、
2−ヒドロキシエチルメタクリレート59重量部、2,
2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキ
シフェニル)プロパン(2.6E、新中村化学)32重
量部、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロイルオキ
シプロパン9重量部およびジエチルp−トルイジン0.
45重量部からなる液剤0.1重量部と接着性複合レジ
ンセメントであるケミエースに使用されている粉剤0.
09重量部を使用直前に混合し、混合後20秒から60
秒以内にある状態のもの(硬化性組成物Aと略する)、
または5重量部の4−メタクリロイルオキシエチルトリ
メリット酸無水物(4−META)、94重量部のトリ
エチレングリコールジメタクリレート(3G)、0.5
重量部のd,l−カンファーキノン(CQ)および0.5
重量部のN,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEAB
A)から成る溶液75重量部と微粉末シリカ(RM−5
0)25重量部を混合したもの(硬化性組成物Bと略す
る)を使用した。硬化性組成物Bについては、接着性プ
ライマー組成物で処理した後に薄く塗布して可視光線照
射器(トランスルクスCL、KULZER製)にて20
秒間光照射し、さらにコンポジットレジンSilux
Plus(3M製)を充填し1分間光照射して硬化させ
た。本発明の前処理剤が適用できる硬化性組成物は、上
記の硬化性組成物に限定されるものではない。
【0027】
【実施例】以下に実施例および比較例を記載した。 実施例1 接着性プライマー組成物として、5重量部のノナエチレ
ングリコールジメタクリレート(9G)、50重量部の
エタノール(EtOH)、2.5重量部のNa2SO3
よび42.5重量部の水から成る溶液を使用直前に調製
して使用した。硬化性組成物Aを用いて接着試験を行っ
たところ、接着強さは136±41kgf/cm2であ
り、破壊の形態は一部に硬化性組成物の凝集破壊、残り
は界面剥離を示す混合破壊であった。
【0028】実施例2 実施例1において、9Gの代わりにメトキシノナエチレ
ングリコールモノメタクリレート(M90G)を使用し
た他は、実施例1と同様に接着試験を行った。その結
果、接着強さは89±18kgf/cm2であり、破壊
の形態は界面剥離であった。
【0029】実施例3 接着性プライマー組成物として、2.5重量部の4−メ
タクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物(4−
META)、62.5重量部のエタノール(EtO
H)、2.5重量部の亜硫酸ナトリウム(Na2SO3
および32.5重量部の水を使用直前に調製して使用し
た。硬化性組成物Aを用いて接着試験を行った結果、象
牙質に対する接着強さは79±2kgf/cm2であっ
た。破壊は界面剥離であった。
【0030】実施例4 接着性プライマー組成物として、1.5重量部の4−M
ETA、2.5重量部の2−メチル−2−(メタ)アク
リルアミドプロパンスルホン酸(TBAS)、41重量
部のEtOH、2.5重量部のNa2SO3および52.5
重量部の水を使用直前に調製して使用した。硬化性組成
物Aを用いて接着試験を行った結果、象牙質に対する接
着強さは65±37kgf/cm2であった。破壊は界
面剥離であった。
【0031】実施例5 実施例1において、接着性プライマー組成物として、4
−METAの代わりに2−メタクリロイルオキシエチル
フェニルアシドホスフェート(Phenyl−P)を使
用した他は、実施例1と同等にして行った。硬化性組成
物Bを用いて接着試験を行った結果、象牙質に対する接
着強さは61±3kgf/cm2であった。破壊は界面
剥離であった。
【0032】比較例1 実施例1において、接着性プライマー組成物を使用せず
に接着したところ、象牙質に対する接着強さは8±4k
gf/cm2であった。
【0033】比較例2 実施例1において、接着性プライマー組成物として重合
性単量体を使用せずに、5重量部のNa2SO3、65重
量部の水および30重量部のEtOHの溶液を使用した
他は、実施例1と同様に行った。その結果、象牙質に対
する接着強さは50±7kgf/cm2であった。破壊
は象牙質と硬化物との界面剥離であった。
【0034】比較例3 実施例3において、接着性プライマー組成物を使用せず
に接着したところ、象牙質に対する接着強さは49±8
kgf/cm2であった。
【0035】実施例6 接着性プライマー組成物として、2.4重量部の5−M
ASA、4.9重量部のトリエチレングリコールジメタ
クリレート(3G)、39.1重量部のEtOH、2.4
重量部のNa2SO3および51.2重量部の水を使用直
前に調製して使用した。硬化性組成物Aを用いて接着試
験を行った結果、象牙質に対する接着強さは89±76
kgf/cm2であった。破壊は混合破壊であった。
【0036】実施例7 接着性プライマー組成物として、1.4重量部の4−M
ETA、2.4重量部の5−MASA、4.8重量部の3
G、38.5重量部のEtOH、2.4重量部のNa2S
O3および50.5重量部の水を使用直前に調製して使用
した。硬化性組成物Aを用いて接着試験を行った結果、
象牙質に対する接着強さは131±81kgf/cm2
であった。破壊は大部分が硬化物の凝集破壊であった。
【0037】実施例8 実施例7の接着性プライマー組成物のうち、3Gの代わ
りにオキシエチレン連鎖が23個のポリエチレングリコ
ールジメタクリレート(23G)を使用した他は実施例
7と同様に接着試験を行った。その結果、象牙質に対す
る接着強さは134±17kgf/cm2であった。破
壊は大部分が硬化物の凝集破壊であった。
【0038】実施例9 実施例7の接着性プライマー組成物のうち、3Gの代わ
りにメトキシノナエチレングリコールモノメタクリレー
ト(M90G)を使用した他は実施例7と同様に接着試
験を行った。その結果、象牙質に対する接着強さは11
6±24kgf/cm2であった。破壊は大部分が硬化
物の凝集破壊であった。
【0039】実施例10 実施例7の接着性プライマー組成物のうち、3Gの代わ
りにオキシエチレン連鎖が23個のポリエチレングリコ
ールの片末端にメトキシ基を有するモノメタクリレート
(M230G)を使用した他は実施例7と同様に接着試
験を行った。その結果、象牙質に対する接着強さは13
6±49kgf/cm2であった。破壊は大部分が硬化
物の凝集破壊であった。
【0040】実施例11 実施例7の接着性プライマー組成物のうち、3Gの代わ
りにネオペンチルグリコールジメタクリレート(NPG
MA)を使用した他は実施例7と同様に接着試験を行っ
た。その結果、象牙質に対する接着強さは116±31
kgf/cm2であった。破壊は大部分が硬化物の凝集
破壊であった。
【0041】実施例12 実施例7の接着性プライマー組成物のうち、3Gの代わ
りに1モルのビスフェノールAと2モルのグリシジルメ
タクリレートの付加物(Bis−GMA)を使用した他
は実施例7と同様に接着試験を行った。その結果、象牙
質に対する接着強さは88±30kgf/cm2であっ
た。破壊は一部分が硬化物の凝集破壊で、残りが界面剥
離の状態の混合破壊であった。
【0042】実施例13 実施例7の接着性プライマー組成物のうち、3Gの代わ
りに2−ヒドロキシ−3−フェノキプロピルメタクリレ
ート(HPPM)を使用した他は実施例7と同様に接着
試験を行った。その結果、象牙質に対する接着強さは9
8±32kgf/cm2であった。破壊は一部分が硬化
物の凝集破壊で、残りが界面剥離の状態の混合破壊であ
った。
【0043】以上の結果を表1にまとめて記載した。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】本発明の接着性プライマー組成物は、酸
性基を有する重合性単量体、硫黄を含有する還元性無機
化合物および水から成る組成物をあらかじめ歯牙表面に
接触させることによって、歯質組織内に硬化性組成物を
浸透させ、かつ硬化を促進させて高い接着力を得ること
ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小野佳子 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内 (72)発明者 飯塚純子 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)重合性単量体、(B)硫黄を含有
    する還元性無機化合物 および(C)水系溶媒を含有す
    ることを特徴とする歯質に対する接着性プライマー組成
    物。
  2. 【請求項2】 上記の組成物において、(A)、(B)
    および(C)成分の合計を100重量部としたとき、
    (A)成分が1〜99重量部、(B)成分が0.01〜
    50重量部および(C)成分が1〜95重量部の範囲で
    含有される請求項1に記載の接着性プライマー組成物。
  3. 【請求項3】 上記の組成物において、(B)成分が亜
    硫酸またはその塩からなる還元性無機化合物である請求
    項1に記載の接着性プライマー組成物。
  4. 【請求項4】 上記の(A)、(B)および(C)の成
    分を任意に組み合わせて2つ以上に分割すること特徴と
    する請求項1に記載の接着性プライマー組成物。
  5. 【請求項5】 上記の(A)、(B)および(C)の成
    分を歯質表面上で混合し、または予め混合して歯質に適
    用することを特徴とする、歯質に硬化性組成物を接着さ
    せる際の前処理方法。
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