JP3419814B2 - 歯質に接着性を有する表面被覆材 - Google Patents

歯質に接着性を有する表面被覆材

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JP3419814B2
JP3419814B2 JP06671293A JP6671293A JP3419814B2 JP 3419814 B2 JP3419814 B2 JP 3419814B2 JP 06671293 A JP06671293 A JP 06671293A JP 6671293 A JP6671293 A JP 6671293A JP 3419814 B2 JP3419814 B2 JP 3419814B2
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正三 荒田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、歯牙および骨に代表さ
れる生体硬組織の修復および保護を行うにあたり、硬組
織表面に被膜を形成するための表面被覆材およびそれを
含む製品キットに関する。さらに詳しくは、生体硬組
織、特に歯牙とPMMA系レジン、ボンディング材、レ
ジンセメント、コンポジットレジン等の歯科用修復レジ
ンを接着する際に、予め硬組織表面に被膜を形成し強い
接着性と封鎖性を付与するための表面被覆材およびそれ
を含む製品キットに関する。
【0002】
【従来の技術】歯科治療においては、歯質と修復材料を
隙間なく強力に接着させることが重要となる。しかし、
これまでに提案されてきた接着材の多くは歯質との接着
性および封鎖性が不十分であるために歯質と接着材との
間に隙間が生じ、歯髄への刺激、二次カリエスおよび着
色を引き起こしたり、修復物が脱落するなどの問題があ
った。
【0003】歯質と修復材料を強力に接着させるために
は、両者を接着させる接着材を歯質に十分に浸透させた
後に確実に硬化させることが必要である。歯牙の修復に
あたっては、接着材自体の耐摩耗性は低いので、特に修
復のマージン部では極力接着材の厚みは薄いのが望まし
い。
【0004】これまでに提案されてきた接着材の多く
は、歯質内への浸透性が十分とはいえず、更に残念なこ
とに嫌気性であり、。空気中では酸素の影響を受け重合
が抑制されて硬化性が低下する。これは接着材の厚みが
薄くなるほど顕著になる。また、近年修復用レジンとし
て一般的になった可視光硬化型コンポジットレジンを用
いた修復においては、接着材が硬化する前に充填したコ
ンポジットレジンを硬化させるとコンポジットレジンの
重合収縮によって接着材が歯質表面から剥がれてしま
い、期待した接着力や封鎖性が得られないという問題が
ある。
【0005】歯質への浸透性を向上させるための方法と
して、エッチング(Buonocore, M.G., J. Dent. Res.,
34, 849-853, 1955参照)及びプライマー処理(Munksga
ad,E. C., Asmussen, J. Dent. Res., 63, 1087-1089,
1984、および特開昭63−279851号公報参照)の
提案がなされてきた。エッチング処理は、切削によって
ムシ歯を除去する際に表面に固着した切削クズの層(ス
メア層)を取り除き、歯質に接着材を十分に接触および
浸透させる効果があると推測されている。また、プライ
マー処理は、接着材が歯質内に浸透しやすくなるよう
に、濡れ性を改善する効果を有すると推察されている。
【0006】歯質表面に対するエッチング処理およびプ
ライマー処理によって接着力の改善は認められるもの
の、臨床的にはまだ満足される性能には至っていない。
象牙質へのエッチングは歯髄に外部での刺激を伝えやす
くするため、エッチングした象牙質表面に冷・温水、プ
ライマーや接着材等を接触させる際には、患者に強い痛
みを与える場合があった。この痛みの原因は、スメア層
によって覆われていた象牙質がエッチングによって露出
し、象牙質中にある歯髄に通じる無数の象牙細管が表面
部分で大きく開口してしまうためと推察されている(高
橋和人、岸好彰、the Quintessence, 11(3), 513-520,
1992)。したがって、象牙質に対する接着においてはエ
ッチング処理を行うと接着力は向上する反面、接着操作
中に歯髄への刺激を与え易くなるという問題があった。
さらには、このような方法では接着操作がエッチング、
プライマー、接着材を順次に歯質へ接触させてコンポジ
ットレジンなどの修復材料を適用することになるので、
修復治療に手間がかかる問題があった。
【0007】コンポジットレジンの重合収縮による接着
材の剥離を改善するための方法としては、コンポジット
レジンを充填する前に可視光硬化型の接着材を予め硬化
させる方法が試みられている。しかし、空気中の酸素に
よる重合阻害があるため接着材を厚くしなければならな
い等の問題を抱えている。
【0008】本出願人は、歯質への接着はコンポジット
レジンが充填される以前に完了していることが好まし
く、そのためには歯質成分と反応できる高分子重合体を
用いるのが望ましいことを見い出した。すなわち、接着
材を適用する前に、予め歯質特に象牙質の表面にモノマ
ーの重合に頼らないで接着する高分子重合体の被膜を形
成させる表面処理剤を提案している(特開昭62−33
109号公報参照)。該提案に基づいてエッチング処理
もしくは覆罩を行うと、歯質表面に上記の重合体の被膜
が形成し象牙細管を封鎖し、さらに接着性レジンとの接
着力を向上させることができる。また木下らは、種々の
歯科用レジンを使用して、このような重合体の歯質接着
性を検討し報告している(歯科材料・器械、8(6), 913-9
29, 1989または 9(1), 86-101, 1990)。本報告による
と、歯質中のカルシウム成分と反応して水に不溶となり
表面に沈着して被膜となり象牙細管を封鎖できる。その
ため、接着性レジンを適用する際に生じる刺激が少なく
なり、しかも接着力を向上させることができる。しかし
ながら、処理剤を歯質表面に塗布した後に水洗を行うた
めに水洗の方法や表面の粗さなどによって被膜の形成が
不十分な場合がある。水洗を行わない覆罩の場合では処
理剤を塗布してそのまま乾燥するので被膜の形成は十分
であったが、被膜の水への溶解性が高いために強度が低
下し接着力が不十分であった。
【0009】
【発明が解決すべき課題】本発明の目的は、上記の従来
技術における問題点を解決することにあり、象牙細管を
開口させずに象牙質表面を被覆し硬化性組成物を接着さ
せるのに有効な表面被覆材およびこの被覆材を含む製品
キットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、 (A)分子内にスルホン酸基を有するビニルモノマーユ
ニットを含有する高分子重合体、 (B)ラジカル重合性単量体、 (C)水または水に混合し得る有機溶媒と水との混合溶
媒、および (D)還元性化合物 を含有する歯質に接着性を有する表面被覆材によって達
成される。
【0011】すなわち、本発明は分子内にスルホン酸基
を有する重合体とラジカル重合性単量体を含有した被膜
を歯質特に象牙質表面に形成させることによって歯質表
面を被覆することができ、しかもこの被膜によって接着
性レジンを強力に、しかも簡便に接着することのできる
歯質に接着性を有する表面被覆材およびそれを含む製品
キットを提供するものである。
【0012】本発明の表面被覆材は、歯質の表面にその
まま接触させるのが好ましいが、リン酸水溶液、金属塩
を含むクエン酸水溶液またはEDTA水溶液などのエッ
チング剤によって、あらかじめ歯牙の表面を処理してか
ら使用することもできる。その際、エッチング剤とし
て、塩化第二鉄とクエン酸を含む水溶液が好ましく用い
られる。
【0013】本発明の表面被覆材において、(A)成分
は分子内にスルホン酸基を有する高分子重合体である。
かかる高分子重合体は、平均分子量が5000以上であ
ることが好ましい。(A)成分は歯質表面に対して反応
性もしくは結合性を有し、しかも分子量が高いために歯
質表面で被膜を形成させる役割を果たす。したがって、
セルロース誘導体やタンパク質誘導体などの天然高分子
量体、または合成高分子量体を挙げることができ、さら
には懸濁重合体や乳化重合体なども挙げることができ
る。
【0014】歯質に対して、長期にわたり高い接着性を
特に要求される場合には、(A)成分はスルホン酸基を
有するビニルモノマーユニットと酸性基を有しないビニ
ルモノマーユニットを同時に含有する共重合体であるこ
とが好ましい。とりわけ、(メタ)アクリル酸アルキル
エルテルとスチレンスルホン酸の共重合体であることが
特に好ましい。
【0015】ルホン酸基を含有する重合体を製造する
方法として、例えばスルホン酸またはその塩を有する重
合性単量体を単独で、もしくは他の共重合可能な重合性
単量体を予め共重合した後単離することができる。ここ
で使用できるスルホン酸基を含有する重合性単量体とし
て、例えばスチレンスルホン酸、2−アクリルアミド2
−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸および
これらの金属塩やアンモニウム塩を挙げることができ
る。スルホン酸基を含有する重合性単量体と共重合でき
る重合性単量体としては、分子中に重合性基を含有する
重合性単量体が好ましく、さらに水酸基、カルボン酸
基、リン酸基、アミノ基、アミド基などの官能基を含ん
でもよい脂肪族および芳香族の重合性単量体である。
【0016】これら単量体の具体例としては、例えば
(メタ)アクリル酸メチル(MMA)、(メタ)アクリ
ル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)ア
クリル酸ブチルなどの脂肪族(メタ)アクリル酸エステ
ル類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン
類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−
ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル
(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド
類;(メタ)アクリル酸、β−(メタ)アクリロイルオ
キシエチルハイドロゲンサクシネートなどのカルボン酸
基含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、メチロール(メタ)アクリル
アミドなどの水酸基含有の(メタ)アクリレート類およ
び(メタ)アクリルアミド類などを挙げることができ
る。これらのモノマーは組み合わせて用いることができ
る。
【0017】(A)成分として更に好ましくは、既に報
告されている方法[中林ら、歯科材料・器械、6
(6)、873−876、1987または木下ら、歯科
材料・器械、8(6)、913−921、1989およ
び山本ら、高分子論文集、49(2)、119−12
3、1992]に基づいて、上記の単量体を予めラジカ
ル重合して得られた重合体で、平均分子量が5,000
以上を有するスルホン酸基含有の重合体である。
【0018】(A)成分中の酸性基の一部がナトリウ
ム、カリウムおよびアンモニウムなどの1価のカチオ
ン、もしくはカルシウム、マグネシウム、銅、アルミニ
ウムもしくは鉄などの多価のカチオンと塩を形成するこ
とができる。
【0019】本発明の表面被覆材において、(B)成分
ラジカル重合性単量体である。かかる単量体の重合性
基は、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビ
ニル基、アリル基などを有するラジカル重合可能な不飽
和基を挙げることができ、1分子中に少なくとも1個含
有していればよい。1分子中に上記の重合性基が1個、
2個および3個含有する重合性単量体として、それぞれ
単官能単量体、2官能単量体および3官能単量体が好ま
しく用いられる。さらに、これらの重合性単量体は、分
子内にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、水酸
基、アミノ基、グリシジル基などの官能基を含有するこ
とができる。
【0020】(B)成分として使用できる重合性単量体
として、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)ア
クリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メ
タ)アクリル酸ブチル、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の脂肪族エ
ステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、2または3−プロピル(メタ)アクリレート、グリ
セロールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール
モノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェ
ノキプロピル(メタ)アクリレート、1モルのビスフェ
ノールAと2モルのグリシジル(メタ)アクリレートの
付加物などの水酸基含有の(メタ)アクリレート類;メ
チロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の
(メタ)アクリルアミド類;エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート類;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノ
ナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
上記のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート
およびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト類のどちらか一方の(メタ)アクリロイル基がメチル
基およびエチル基などに置換されたモノ(メタ)アクリ
レート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソ
シアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレン
ジイソシアネートまたは1,3,5−トリメチルヘキサメ
チレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレートの付加物などのウレタン結合を有する
(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAにオキシエ
チレンを付加させた生成物にさらに(メタ)アクリル酸
を縮合させた2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイル
オキシポリエトキシフェニル)プロパン類などを挙げる
ことができる。これらの重合性単量体は単独で、もしく
は組み合わせて使用できる。
【0021】(B)成分の1種として使用できる1分子
中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する重合性単
量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカ
ルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらの誘導体
を挙げることができる。例えば(メタ)アクリル酸、マ
レイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリ
ロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MA
C−10)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエ
チルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ
エチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−
(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およ
びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチル
トリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリ
ロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、
4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキ
シ]ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3−
ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピ
ル(メタ)アクリレート、N,O−ジ(メタ)アクリロ
イルオキシチロシン、O−(メタ)アクリロイルオキシ
チロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、
N−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N
−(メタ)アクリロイルp−アミノ安息香酸、N−(メ
タ)アクリロイルO−アミノ安息香酸、N−(メタ)ア
クリロイル5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリ
ロイル4−アミノサリチル酸、2または3または4−
(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物
の付加生成物(PMDM)、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3',4,
4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BT
DA)または3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボ
ン酸二無水物の付加反応物、2−(3,4−ジカルボキ
シベンゾイルオキシ)1,3−ジ(メタ)アクリロイル
オキシプロパン、N−フェニルグリシンまたはN−トリ
ルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加
物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイ
ルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−
[N−メチルN−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アク
リロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げ
ることができる。このうち、11−メタクリロイルオキ
シ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−1
0)、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
無水物(4−META)およびN−メタクリロイル5−
アミノサリチル酸(5−MASA)が好ましく用いられ
る。これらのカルボキシル基を有する重合性単量体は単
独または組み合わせて使用できる。
【0022】(B)成分の1種として使用される1分子
中に少なくとも1個のリン酸基を有する重合性単量体と
しては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチル
アシドホスフェート、2および3−(メタ)アクリロイ
ルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)ア
クリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メ
タ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、
8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフ
ェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシ
ドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシド
デシルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリ
ロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2ま
たは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシド
ホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル
フェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイ
ルオキシエチルp−メトキシフェニルアシドホスフェー
トなどを挙げることができる。これらの化合物における
リン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。
このうち、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェ
ニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイル
オキシデシルアシドホスフェートが好ましく用いられ
る。これらのリン酸基を有する重合性単量体は単独また
は組み合わせて使用できる。
【0023】また(B)成分の1種として使用される1
分子中に少なくとも1個のスルホン酸基を有する重合性
単量体として、例えば2−スルホエチル(メタ)アクリ
レート、2または1−スルホ−1または2−プロピル
(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチ
ル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2
−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−
スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−
ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミドな
どを挙げることができる。このうち、2−メチル−2−
(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましく
用いられる。これらのスルホン酸基を有する重合性単量
体は単独または組み合わせて使用できる。
【0024】上記の(B)成分は、上記の重合性単量体
をそれぞれ単独で使用できるが、組み合わせて使用する
こともできる。
【0025】本発明の表面被覆材において(C)成分は
水または水系溶媒である。かかる(C)成分としては、
水を単独で、もしくは水に混合し得る有機溶媒とを混合
した溶媒である。ここで使用できる水としては、例えば
蒸留水、イオン交換水または生理食塩水などが挙げら
れ、ここでは蒸留水およびイオン交換水が好ましく用い
られる。さらに上記の水に混合し得る有機溶媒としては
(A)および(B)成分を均一に溶解させるかもしくは
分散させるものが特に好ましく用いられ、例えばメタノ
ール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラ
ヒドロフラン(THF)などのエーテル類;N,N−ジ
メチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げることが
でき、このうちエタノールおよびアセトンが好ましく用
いられる。かかる水系溶媒のうち、歯牙へ用いる場合に
生体への毒性や刺激性を考慮して、水単独で、もしくは
水とエタノールやアセトンの混合液を用いることが特に
好ましい。
【0026】本発明の表面被覆材において(D)成分は
還元性化合物である。かかる還元性化合物としては、例
えばN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−ト
ルイジン(DMPT)、N,N−ジエチルp−トルイジ
ン、N,N−ジエタノールp−トルイジン、N,N−ジメ
チルp−tert−ブチルアニリン、N,N−ジメチル
アニシジン、N,N−ジメチルp−クロルアニリン、N,
N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチルp−クロル
アニリン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびその
アルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸お
よびそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベ
ンツアルデヒド、N,N−ジエチルアミノベンツアルデ
ヒド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ
ート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ
ートなどの脂肪族あるいは芳香族アミン類を挙げること
ができる。また、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエン
スルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベン
ゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデ
シルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン
酸、ナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸
またはその塩類を挙げることができる。これらの還元性
化合物は単独で、もしくは組み合わせて使用できる。
【0027】還元性化合物のうち、有機化合物では、下
記一般式(I)
【0028】
【化2】
【0029】(ここで、R1は水素原子または金属であ
り、そしてR2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子ま
たは官能基もしくは置換基を含有してもよいアルキル基
を示す。)で表されるアミン化合物を使用することが好
ましく使用できる。R1は水素原子または金属である。
2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子または官能基
もしくは置換基を含有してもよいアルキル基である。こ
のような化学構造を有する化合物として、例えばN−フ
ェニルグリシン(NPG)、N−トリルグリシン、N,
N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロ
ピル)フェニルグリシンなどを挙げることができる。こ
れらのアミン化合物は単独で、もしくは組み合わせて使
用できる。NPGを含む組み合わせが特に好ましく用い
られる。
【0030】還元性化合物のうち、無機化合物では、硫
黄を含有する還元性無機化合物が好ましく使用できる。
かかる化合物としては、水または水系溶媒などの媒体中
でラジカル重合性単量体を重合させる際に使用できるレ
ドックス重合開始剤としての使用される還元性無機化合
物が好ましく、例えば、亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫
酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオ
ン酸、1,2チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸および
これらの塩が挙げられる。このうち亜硫酸塩が好ましく
用いられ、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜
硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましい。
これらの還元性無機化合物は単独で、もしくは組み合わ
せて使用できる。
【0031】本発明の表面被覆材は発明の効果を損なわ
ない範囲でさらに重合開始剤を使用することができる。
かかる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤
を使用することができる。ラジカル重合開始剤として
は、例えばジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオ
キシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシ
ド、ジラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシ
ド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'−ジクロルベ
ンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメトキシベンゾイル
ペルオキシド、p,p'−ジメチルベンゾイルペルオキシ
ド、p,p'−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどの
有機過酸化物を例示することができる。さらに、過硫酸
アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素
酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物
を挙げることができる。
【0032】また、紫外光線もしくは可視光線を照射す
ることによって重合する重合開始剤を使用することもで
きる。かかる光重合の際に使用できる重合開始剤に特に
制限はないが、例えばベンジル、4,4'−ジクロロベン
ジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾ
インエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテ
ル、ベンゾフェノン、9,10−アントラキノン、ジア
セチル、カンファキノン(CQ)などの紫外線または可
視光線増感剤が挙げられる。
【0033】その他、トリアルキルホウ素またはその部
分酸化物を使用することもできる。具体的には、トリア
ルキルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピル
ホウ素、トリ−n−ブチルホウ素、トリ−n−アミルホ
ウ素、トリアミルホウ素、トリイソアミルホウ素、トリ
−sec−アミルホウ素またはこれらの一部が酸化され
たトリアルキルホウ素酸化物を用いることができる。こ
れらのなかでは、トリ−n−ブチルホウ素またはその部
分酸化物を使用することが好ましい。
【0034】本発明の表面被覆材は、上記(A)、
(B)、(C)および(D)の各成分について、これら
(A)、(B)、(C)および(D)成分の合計重量1
00重量部のうち、(A)成分を0.1〜70重量部、
(B)成分を1〜95重量部、(C)成分を1〜95重
量部、および(D)成分を0.01〜20重量部の範囲
で含有するのが好ましい。さらに好ましくは、(A)成
分が1〜30重量部、(B)成分が3〜80重量部、
(C)成分が1〜50重量部、および(D)成分が0.
1〜10重量部の範囲で使用される。
【0035】本発明の表面被覆材は、上記(A)、
(B)、(C)および(D)成分の他に、被膜形成促進
剤として、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ス
トロンチウムやバリウムなどのアルカリ土類金属、アル
ミニウム、ガリウム、インジウムなどの第III族金
属、ゲルマニウム、スズ、鉛などの第IV族の金属およ
び鉄、銅、コバルト、ニッケルなどの遷移金属などの多
価金属の水酸化物、ハロゲン化物、酸化物などを含有さ
せることができる。
【0036】本発明の表面被覆材は、上記(A)、
(B)、(C)および(D)成分を予め混合して歯質に
適用することができる。これらの3成分の混合物が長期
にわたり変化し、本発明の効果を損なう恐れがある場合
には、分割して保存することができる。保存の方法とし
て、例えばA/C/Dの混合物とBの2つに分割する場
合、A/C/Dの混合物とB/Cの混合物に分割する場
合あるいはA/B/C/Dの混合物とB/Cの混合物な
どが挙げることができる。この組み合わせは、上記に記
載したものに限定されない。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】実施例1 分子内にスルホン酸基を有する
重合体(A)の合成 2lのフラスコに33gのp−スチレンスルホン酸ナト
リウム(p−SSA、和光純薬)、144gのメタクリ
ル酸メチル(MMA、和光純薬)および2.26gの2,
2'−アゾビスイソブチロニトリルを窒素雰囲気下で1.
6lの水/エタノール(EtOH)の混合溶媒(水/E
tOH=1/0.6容量比)で溶解し、続いて溶液を7
5℃の油浴中に入れて11時間撹拌した。溶液を室温に
もどして減圧下でEtOH分を留去した。残った溶液は
透析チューブ(Union Carbide、三光純薬)に詰めてイ
オン交換水中で3日間透析を行った。チューブ内の溶液
を集め、1.5Kgのイオン交換樹脂(アンバーライトI
R-118、オルガノ)を充填したカラムに通し脱塩した。
水を留去して目的の重合体を得た。得られた重合体は、
1H−NMR、元素分析およびGPC分析を行い、数平
均分子量が10万以上のメタクリル酸メチル−p-スチ
レンスルホン酸共重合体(MMA含量約90モル%、以
下これを共重合体Aと略記する)であることを確認し
た。
【0039】なお、実施例中、接着力および象牙細管の
封鎖状態は次のようにして評価した。
【0040】実施例2 接着力の評価 新鮮なウシ下顎前歯を抜去し、水中で凍結し保存したも
のを歯質サンプルとして使用した。解凍した牛歯エナメ
ル質および象牙質を、回転式研磨機ECOMET-III(BUE
HLER製)で注水、指圧下で耐水エメリー紙600番まで
研削し、平滑な面を得た。研削した牛歯を37℃の水中
に15分間浸漬した。牛歯を水中から取り出して気銃に
て水分を除去した。研削面に本発明の表面被覆材をスポ
ンジにて塗布して15秒間静置し、気銃にて約20秒間
空気を吹きかけて乾燥した。表面被覆材を塗布した表面
を光学顕微鏡にて観察し、表面処理材によって完全に歯
質表面が被覆されていることを確認した。この上に、接
着面積を規定するため直径5.1mmの円孔のあいた両
面粘着テープを固定した。実施例4〜9においては、歯
科用接着材のスーパーボンドDライナー(サンメディカ
ル)を塗布し、気銃にて余剰の接着材を除去した。更
に、直径5.1mmの円孔のあいた厚さ1mmの厚紙を
置いて固定し、この穴にコンポジットレジン(Silux Pl
us, 3M)を充填した。可視光照射器(Translux CL, Kul
zer)にて60秒間光照射してコンポジットレジンを硬
化させた後、メタファースト(サンメディカル)にてア
クリル棒を接着して15分間静置した。37℃の水中に
24時間浸漬した後、引っ張り接着試験(クロスヘッド
スピード2mm/min)を行った。実施例10〜12
では、上記の方法のうち、スーパーボンドDライナーお
よびコンポジットレジンを用いる代わりに、試作の可視
光硬化型レジンセメントは、歯科用複合レジンセメント
のケミエース(サンメディカル)に使用されている粉剤
と、液剤として65重量部のHEMA、35重量部の
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンジメタク
リレート(UDMA)、0.5重量部のd,l−カンファ
キノン(CQ)および0.5重量部のN,N−ジエチルア
ミノ安息香酸(DEABA)からなる溶液を重量比で
1:1で混練して2分以内のものを充填し、厚さ50μ
mのポリエステルフィルムで覆った。そしてその上から
光照射を60秒間行った。
【0041】実施例3 象牙細管の封鎖状態についての
評価 本発明の表面被覆材について歯質表面での被膜の形成状
態を調べるために、被覆材処理後の象牙質表面での象牙
細管の封鎖状態を光学顕微鏡にて観察した。
【0042】実施例4 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、10重量部のトリエチレングリコー
ルジメタクリレート(3G)からなる溶液と5重量部の
N−フェニルグリシン(NPG)および95重量部のエ
タノール(EtOH)からなる溶液を使用直前に重量比
1:1で混合したものを使用した。被膜が良好に形成し
ていることは目視でも確認できた。光学顕微鏡による観
察では象牙細管の開口がなく良好な封鎖状態であった。
レジンセメントを使用した場合の接着試験の結果、象牙
質に対する接着強さは60±15kgf/cm2であ
り、すべて表面被覆材の凝集破壊であった。
【0043】実施例5 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、10重量部のノナエチレングリコー
ルジメタクリレート(9G)からなる溶液と5重量部の
N−フェニルグリシン(NPG)および95重量部のエ
タノール(EtOH)からなる溶液を使用直前に重量比
1:1で混合したものを使用した。被膜が良好に形成し
ていることは目視でも確認できた。光学顕微鏡による観
察では象牙細管の開口がなく良好な封鎖状態であった。
レジンセメントを使用した場合の接着試験の結果、象牙
質に対する接着強さは51±12kgf/cm2であ
り、すべて表面被覆材の凝集破壊であった。
【0044】実施例6 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、10重量部のメトキシノナエチレン
グリコールメタクリレート(M90G)からなる溶液と
5重量部のN−フェニルグリシン(NPG)および95
重量部のエタノール(EtOH)からなる溶液を使用直
前に重量比1:1で混合したものを使用した。被膜が良
好に形成していることは目視でも確認できた。光学顕微
鏡による観察では象牙細管の開口がなく良好な封鎖状態
であった。レジンセメントを使用した場合の接着試験の
結果、象牙質に対する接着強さは57±28kgf/c
2であり、すべて表面被覆材の凝集破壊であった。
【0045】実施例7 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、10重量部の3Gおよび50重量部
の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)か
らなる溶液と5重量部のNPGおよび95重量部のEt
OHからなる溶液を使用直前に重量比1:1で混合した
ものを使用した。被膜が良好に形成していることは目視
でも確認できた。光学顕微鏡による観察では象牙細管の
開口がなく良好な封鎖状態であった。レジンセメントを
使用した場合の接着試験の結果、象牙質に対する接着強
さは81±43kgf/cm2であり、すべて表面被覆
材の凝集破壊であった。
【0046】実施例8 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、10重量部の3G、50重量部のH
EMAおよび3重量部の4−メタクリロイルオキシエチ
ルトリメリット酸無水物(4−MATA)からなる溶液
と5重量部のNPGおよび95重量部のEtOHからな
る溶液を使用直前に重量比1:1で混合したものを使用
した。目視による被膜の形成は良好で、光学顕微鏡によ
って象牙細管の良好な封鎖を確認した。レジンセメント
を使用した場合の接着試験の結果、象牙質に対する接着
強さは89±5kgf/cm2であり、1部レジンセメ
ントの凝集破壊と表面被覆材の凝集破壊であった。
【0047】実施例9 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のHEMAおよび3重量
部の4−MATAからなる溶液と5重量部のNPGおよ
び95重量部のEtOHからなる溶液を使用直前に重量
比1:1で混合したものを使用した。目視による被膜の
形成は良好で、光学顕微鏡によって象牙細管の良好な封
鎖を確認した。レジンセメントを使用した場合の接着試
験の結果、象牙質に対する接着強さは84±38kgf
/cm2であり、1部レジンセメントの凝集破壊と表面
被覆材の凝集破壊であった。
【0048】実施例10 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のEtOH、および10
重量部のM90Gおよび3重量部の4−MATAからな
る溶液と5重量部のNPGおよび95重量部のEtOH
からなる溶液を使用直前に重量比1:1で混合したもの
を使用した。目視による被膜の形成は良好で、光学顕微
鏡によって象牙細管の良好な封鎖を確認した。レジンセ
メントを使用した場合の接着試験の結果、象牙質に対す
る接着強さは51±4kgf/cm2であり、表面被覆
材の凝集破壊であった。
【0049】実施例11 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のEtOH、10重量部
の3Gおよび3重量部の4−MATAからなる溶液と5
重量部の亜硫酸ナトリウム、65重量部の水および30
重量部のEtOHからなる溶液を使用直前に重量比1:
1で混合したものを使用した。目視による被膜の形成は
良好で、光学顕微鏡によって象牙細管の良好な封鎖を確
認した。レジンセメントを使用した場合の接着試験の結
果、象牙質に対する接着強さは88±27kgf/cm
2であり、1部にレジンセメントの凝集破壊を含むが、
多くは表面被覆材の凝集破壊であった。
【0050】実施例12 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のEtOH、10重量部
の3G、5重量部のtert−ブチルアクリルアミドスルホ
ン酸および3重量部の4−MATAからなる溶液と5重
量部の亜硫酸ナトリウム、95重量部の水からなる溶液
を使用直前に重量比1:1で混合したものを使用した。
目視による被膜の形成は良好で、光学顕微鏡によって象
牙細管の良好な封鎖を確認した。レジンセメントを使用
した場合の接着試験の結果、象牙質に対する接着強さは
60±19kgf/cm2であり、表面被覆材の凝集破
壊であった。
【0051】比較例1 実施例4において表面被覆材を使用せずにレジンセメン
トを接着したが、象牙質に対する接着強さは0であっ
た。
【0052】比較例2 実施例8において、表面被覆材として実施例1の共重合
体Aを使用しないで40重量部の水、50重量部のHE
MA、10重量部の3G、3重量部の4−MATAから
なる溶液と5重量部のNPGおよび95重量部のEtO
Hからなる溶液を使用直前に重量比1:1で混合したも
のを使用した他は、実施例8と同様に行った。光学る観
察によっても被膜は確認できず、未処理の表面との明確
な違いは認められなかった。象牙質に対する接着強さは
34±10kgf/cm2であり、すべて界面剥離であ
った。
【0053】以上の結果を表1にまとめて記載した。
【0054】
【表1】
【0055】COPOLY-A:分子内に酸性基を有する重合体
(A)、 HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、 EtOH:エタノール、 3G:トリエチレングリコールジメタクリレート、 4−META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメ
リット酸無水物、 9G:ノナエチレングリコールジメタクリレート、 M90G:メトキシノナエチレングリコールメタクリレ
ート、 TBAS:tert−ブチルアクリルアミドスルホン
酸、 NPG:N−フェニルグリシン、 Na2SO3:亜硫酸ナトリウム
【0056】
【発明の効果】本発明の歯質に接着性を有する表面被覆
材は、歯質表面に適用するすることによって被膜を形成
して歯質表面の保護を行うことができる。さらに、この
被膜は歯牙特に象牙質と接着性レジンを強力にしかも簡
便に接着させることができる。この発明の効果の原因は
十分に解明されていないが、本発明の表面被覆材を歯質
表面に適用すると、まずスルホン酸基を有する高分子重
合体が歯質表面で反応して不溶化して沈着して重合性単
量体を含む被膜を形成するため、被膜のなかに含まれる
重合性単量体はエアーなどを吹き付けて乾燥させても必
ずある一定の割合で表面に存在できるようになる。この
被膜を形成した後に接着性レジンを用いると被膜中の重
合性単量体が接着性レジンと共に重合して硬化するの
で、歯質と接着性レジンの接着力を向上させるものと推
察される。
フロントページの続き (72)発明者 笠置 昭文 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内 (72)発明者 荒田 正三 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内 (72)発明者 中林 宣男 千葉県松戸市小金原5−6−20 (56)参考文献 特開 昭61−28567(JP,A) 特開 平2−261442(JP,A) 特開 昭63−279851(JP,A) 特開 平1−144487(JP,A) 国際公開92/021314(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 6/00 - 6/083

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)分子内にスルホン酸基を有するビ
    ニルモノマーユニットを含有する高分子重合体、 (B)ラジカル重合性単量体 (C)水または水に混合し得る有機溶媒と水との混合溶
    媒、および (D)還元性化合物 を含有することを特徴とする歯質に接着性を有する表面
    被覆材。
  2. 【請求項2】 上記の表面被覆材において、(A)、
    (B)、(C)および(D)成分の合計を100重量部
    としたとき、(A)成分が0.1〜70重量部、(B)
    成分が1〜95重量部、(C)成分が1〜95重量部、
    および(D)成分が0.01〜20重量部の範囲で含有
    する請求項1に記載の歯質に接着性を有する表面被覆
    材。
  3. 【請求項3】 (A)成分の平均分子量が5,000以
    上である請求項1に記載の歯質に接着性を有する表面被
    覆材。
  4. 【請求項4】 (A)成分がスルホン酸基を有するビニ
    ルモノマーユニットと酸性基を有しないビニルモノマー
    ユニットを同時に含有する共重合体である請求項1に記
    載の歯質に接着性を有する表面被覆材。
  5. 【請求項5】 上記の(A)成分が(メタ)アクリル酸
    アルキルエステルとスチレンスルホン酸の共重合体であ
    る請求項1に記載の歯質に接着性を有する表面被覆材。
  6. 【請求項6】 上記の(D)成分が下記一般式(I) 【化1】 (ここで、R1は水素原子または金属であり、そしてR2
    およびR3はそれぞれ独立に、水素原子または官能基も
    しくは置換基を含有してもよいアルキル基を示す。)で
    表されるアミン化合物である請求項1に記載の歯質に接
    着性を有する表面被覆材。
  7. 【請求項7】 上記の(D)成分が硫黄を含有する無機
    化合物である請求項1に記載の歯質に接着性を有する表
    面被覆材。
  8. 【請求項8】 上記の(D)成分が亜硫酸またはその塩
    からなる無機化合物である請求項1に記載の歯質に接着
    性を有する表面被覆材。
  9. 【請求項9】 上記請求項1に記載の表面被覆材におい
    て、(A)から(D)の成分を任意の組合せで2つ以上
    に分割して保存することを特徴とする請求項1に記載の
    歯質に接着性を有する表面被覆材製品キット。
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