JP5611644B2 - 歯科用接着性組成物およびキット - Google Patents

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本発明は、歯科用接着剤ならびに歯科用コーティング材として好適に使用される歯科用接着性組成物ならびにそのキットに関する。さらに詳しくは、生体に関わる温度領域や湿度・湿潤領域において薄く塗り広げたとしても硬化性に優れ、硬化物の耐水性、強度、硬度、接着性能、色調並びに保存安定性に優れた歯科用接着性組成物ならびにそのキットに関する。さらに本発明は、エナメル質・象牙質およびセメント質などの歯質硬組織、ならびに被着体(歯科用金属、ポーセレンなどのセラミックス、コンポジットレジン・硬質レジン・義歯床用レジン・レジンセメントなどの歯科用レジン)を対象として、薄くて硬い耐水性被膜を形成させることができるコーティング材および/または強固に接着するボンディング材として使用できる硬化性の歯科用接着性組成物ならびに歯科用接着性組成物用キットに関する。
歯科用の接着剤、コンポジットレジン、硬質レジン、義歯床用レジン、セメント、コーティング材などに使用される硬化性組成物としては、主にスチレン誘導体や(メタ)アクリル酸誘導体などに代表されるビニルモノマーなどのラジカル重合性単量体と、これを重合硬化させるための重合開始剤(触媒、硬化剤という場合がある)からなる硬化性組成物が多数提案されている。
生体、特に歯科用の硬化性組成物に要求される性能は、口腔内の温度領域や湿度・湿潤領域における硬化速度が比較的大きく制御可能なこと、硬化物の耐水性、強度、硬度および接着性能が高く、色調が容易に制御できること等に優れていることである。
また、接着剤として適用する場合には、歯質はもとより、金属、セラミックス、硬化前あるいは硬化後のレジン(樹脂とも呼ぶことがある)、コンボジットレジンおよびレジンセメントなど多種にわたる被着体に対応できる性能が要求される。
また、コーティング材においては、上記の性能に加えて、薄い被膜の形成が必要となる場合がある。薄い被膜を形成させて、かつ、高い接着性能を発揮させながら硬化物の機械的な強度を向上させることは、酸素による重合阻害を受けやすく重合が充分進行しないラジカル重合性組成物においては非常に困難であった。さらに、実際の歯科臨床においては、歯質をコーティング材でコーティングした後に更に上部に接着剤等(以下、「上部接着剤層」と呼ぶことがある)を用いて補綴物等を接着することがあるが、この際に、コーティング材中の残留水分や、口腔内での保持の際に吸着した水分等の影響で、上部接着剤層の重合不良を招き、接着力が低下し補綴物等が脱落することがあった。
歯質にレジン修復材料を強固に接着させるための歯質表面処理方法として、次の三つの方法が主に採用されている。すなわち、第一に、リン酸やクエン酸などの歯質脱灰性のある溶液をエナメル質および/または象牙質の表面に塗布して、その後水洗いして洗い流すエッチング法、第二に、エッチング法を行った後の歯質表面にさらにプライマーを塗布して乾燥させるエッチングプライマー法、および第三にエッチングせずに歯質に脱灰機能を有するプライマーを適用するセルフエッチングプライマー法である。これらの歯質処理方法は欠損した歯質を補うための材料と歯質を接着させるための接着剤料、すなわちボンディング材やレジンセメントを適用する際の前処理であり、ここで使用する前処理組成物のみでは歯質と欠損を補う材料とを強固に接着できない。
ラジカル重合性単量体と光重合開始剤からなる硬化性組成物を使用して、前述の性能向
上を達成しようとして次のような提案がなされている。特許文献1(特公昭53−33687号公報)および特許文献2(特公昭54−10986号公報)には、α−ジケトンなどのカルボニル化合物とアミン類からなる組成物が提案されている。この組成物は、硬化物の色調が変化したり、耐水性、強度および接着性能が不充分であった。また、特許文献3(特開昭56−120610号公報)には、酸性基を有するビニルモノマーとα−ジケトンおよび芳香族スルフィン酸塩類とからなる光硬化性組成物が提案されている。この組成物は、色調の安定性は優れているが強度や接着耐久性に問題があった。特許文献4(特公昭61−3684号公報)には、カルボン酸無水物を含むモノマーと有機過酸化物、アミンおよび芳香族スルフィン酸塩を用いた組成物が提案されている。この組成物は、接着強度が充分ではなかった。また、特許文献5(特開昭60−44508号公報)、特許文献6(特開昭60−123515号公報)および特許文献7(特公平7−2613号公報)には、カルボン酸含有モノマーと芳香族スルフィン酸塩を含有し、目的に応じてさらにアミン、α−ジケトンまたはジアルデヒドを含有させた組成物が提案されている。これら組成物についても充分な接着強度が得られていない。その後、特許文献8(特公平6−62688号公報)では、カルボン酸含有モノマー、α−ジケトン、アミンおよび芳香族スルフィン酸(塩)からなる組成物が提案され、色調の安定性が著しく改善され、さらに接着性や耐久性の改善がなされた旨開示されている。
上記一連の提案はすべて、歯質表面を、酸性化合物を含有するエッチング組成物で予め表面処理することが前提となっている。このエッチング処理は歯質の研削の際に表面上に残存する削りクズ層(スメア層)を除去し、接着強度を向上させる目的で行われた。さらに近年ではエッチング処理後にあるいはスメア層が残存したままで、モノマーを含むプライマー組成物で表面処理し、その後硬化性組成物を適用する方法も提案されている。エッチングやプライマーなどを、硬化性組成物を適用する前に施すことにより接着強度を向上させるこのような提案は、施術者の手間が多く複雑となり、治療時間も長くなり、患者に対する負担が大きい方法であった。
接着剤組成物を、歯質に、強固に長期にわたって接着させるには、健全歯質にまで接着剤成分を拡散させて、その拡散した部分までも確実に硬化することが必要であるとの考えが一般的となっている。しかし、従来実施されているエッチング材組成物やプライマー組成物を使用した後に、接着性組成物を適用する方法には種々の問題が懸念されている。例えば、歯質エッチング材と硬化性組成物からなる接着方法は、齲蝕を切削・除去した際に生成するスメア層(切削クズ)を除去するためのエッチングによって、残しておきたい健全歯質までも侵襲され、接着部位の劣化を招く場合があった。
歯質に対する接着剤料は、歯質と修復材料とを隙間なく強力に接着すること、かつ口腔内での作業であるため可能な限り、簡単で短時間の作業で終了できることが望ましい。そのため、セルフエッチングプライマー方の改良が求められていた。
特許文献9(特公昭63−25562号公報)には、酸性基を有するビニルモノマー、α−ジケトン、芳香族スルフィン酸塩またはチオ尿素類からなる歯科用材料が開示されている。特許文献10(特開平10−245525号公報)には、特定のリン酸基含有重合性単量体と多価カルボン酸基含有重合性単量体と重合開始剤を含有する組成物が開示されている。さらに、特許文献11(特開平11−240815号公報)には有機溶媒を併用する組成物が提案されている。また、本願出願人は、特許文献12(特開2003−238325号公報)で、分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体および他官能ラジカル重合性単量体などを含有する組成物を提案している。このような組成物は、歯質との接着性の点では優れた組成物であるが、歯質を脱灰しすぎる場合があった。
特公昭53−33687号公報 特公昭54−10986号公報 特開昭56−120610号公報 特公昭61−3684号公報 特開昭60−44508号公報 特開昭60−123515号公報 特公平7−2613号公報 特公平6−62688号公報 特公昭63−25562号公報 特開平10−245525号公報 特開平11−240815号公報 特開2003−238325号公報
本発明の目的は、歯質への接着性能および耐久性が充分な接着性組成物、歯科用接着剤、高い耐水性およびビッカース硬度を有することで歯科用コーティング材として好適に用いられる組成物ならびに歯科用接着性組成物用キットを提供することにある。
本発明の他の目的は、歯質に対して使用する場合に、硬化性組成物を使用する前に、エッチング処理やプライマー処理などの前処理を必ずしも行う必要がなく、歯質に直接適用できる歯科用接着剤ないしはコーティング材として好適に用いられる組成物(本発明では、「セルフエッチングボンディング材組成物」と呼ぶことがある)ならびにキットを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、歯質に直接接触させることによって研削屑であるスメア層の一部または全部を脱灰し、且つ接着強度を発揮するに充分な接着剤成分を歯質表面に拡散させるとともに、歯質表面上に必要な厚みの耐水性被膜を形成させうる歯科用接着性組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、虫歯治療等の歯科医の行う行為を非常に単純化および簡素化して歯科医および患者の負担を大幅に少なくすることのできる歯科用接着性組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、たとえばコンポジットレジンなどの歯質と接着性のない材料を接着させるためのボンディング材として、また、レジンセメントの歯質接着性能の向上を目的に使用するボンディング材として使用することができ、さらに、種々の被着体、すなわち歯質、金属、セラミックス、レジンなどの表面を保護するためのコーティング材として使用することができ、特に、歯髄(神経と呼ぶことがある)に大きく影響を与える象牙質が露出した部分へのコーティング材として使用したときには、磨耗や刺激からの保護ばかりでなく、知覚過敏の抑制、齲蝕感染の予防、術後疼痛の発生抑制などに有効となる歯科用接着性組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、状況に応じて、エッチングおよび/またはプライマーを施した後の歯質に使用することができる歯科用接着性組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の接着性組成物を長期間安定に保存できるキットを提供することにある。
本発明の歯科用接着性組成物は、(A)37℃の蒸留水100重量部への溶解度が5重量部未満である、分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体、
(B)37℃の蒸留水100重量部への溶解度が10重量部以上である、分子内に酸性基を有しない親水性ラジカル重合性単量体、
(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体、
(D)重合開始剤、
(E)水、および
(G)N-芳香族置換グリシンまたはその塩(G1')を含む非ラジカル重合性アミン化合物(G1)、スルフィン酸またはその塩(G2)およびバルビツール酸またはその塩(G3)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる還元剤を含有してなり、
(A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、(A)成分の含有量が10〜65重量部であり、(B)成分の含有量が0.5〜5重量部であり、(C)成分の含有量が1〜70重量部であり、(D)成分の含有量が0.01〜30重量部であり、(E)成分の含有量が5〜80重量部および(G)成分の含有量が0.01〜20重量部である組成物であって、
該組成物が、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有しない時には、歯質表面に適用する際に乳濁状態であり、
該組成物が、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有する時には、歯質表面に適用した際に、該水溶性有機溶媒の揮発により、歯質表面上で相分離することを特徴とする。
なお、本発明において、(A)37℃の蒸留水100重量部への溶解度が15重量部未満である、分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体のことを単に「(A)成分」と言うこともある。(B)〜(H)も同様である。
本発明において、単に「溶解度」という時は、37℃の蒸留水100重量部への溶解度のことを示す。
本発明の歯科用接着性組成物は、(F)その他のラジカル重合性単量体を、上記(A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、0〜90重量部でさらに含有することが好ましい。
上記(A)分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体が、カルボン酸基、カルボン酸無水基、リン酸基およびスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物であることが好ましく、37℃の蒸留水100重量部への溶解度が5重量部未満の化合物であることが好ましい。
上記(B)分子内に酸性基を有しない親水性ラジカル重合性単量体が、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ピロリドン基、アミノ基およびその塩、アミド基ならびにスルホニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物であることが好ましく、37℃の蒸留水100重量部への溶解度が7重量部以上の化合物であることが好ましい。
上記(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体が、分子内に酸性基を有しない3官能以上の非親水性多官能ラジカル重合性単量体であることが好ましく、37℃の蒸留水100重量部への溶解度が5重量部未満の化合物であることが好ましい。
上記(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体が、トリアジン環を含有する化合物、ウレタン結合を有する化合物、脂肪族エステル系化合物、芳香族(メタ)アクリレート系化合物、(ポリ)(ヒドロキシオキシアルキレン)ジ(メタ)アクリレート、および下記式(1)で表わされる化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
CH2=CR1COO(R2O)nCOCR1=CH2・・・(1)
(式(1)中、R1は、水素またはメチル基であり、R2は、エチル基またはプロピル基で
あり、R2がエチル基の場合は、nは6未満の整数であり、R2がプロピル基の場合は、nは12以下の整数である。)
上記(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体の、分子量/重合性基の数が500以下であることが好ましい。
上記(D)重合開始剤が、(D1)光重合開始剤および/または(D2)過酸化物であって、該(D1)光重合開始剤が(D11)α−ケトカルボニル化合物および/または(D12)アシルホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物は、(G)還元剤を、上記(A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、0.01〜20重量部でさらに含有することが好ましい。
上記(G)還元剤が、(G1)非ラジカル重合性のアミン化合物、(G2)スルフィン酸またはその塩、および(G3)バルビツール酸またはその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、少なくとも1種の(G1')N−芳香族
基置換グリシンまたはその塩、および、少なくとも1種の(G2)スルフィン酸塩であることが好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物は、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を、(A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、50〜300重量部でさらに含有することが好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物は、歯質表面において相分離することが好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物は、セルフエッチングボンディング材組成物であることが好ましい。
本発明の歯科用接着剤は、上記本発明の歯科用接着性組成物を含有することを特徴とする。
歯科用コーティング材は、上記本発明の歯科用接着性組成物を含有することを特徴とする。
本発明の硬化物は、上記本発明の歯科用接着性組成物、歯科用接着剤または歯科用コーティング材を硬化してなることを特徴とする。
本発明の硬化物は、ビッカース硬度が15〜100であることが好ましく、膜厚が0.1〜50μmであることが好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物用キットは、上記(G)還元剤を含有したアプリケータと、上記の歯科用接着性組成物の(G)還元剤以外の成分を含有した一つ以上の容器との組合せからなることを特徴とする。
本発明の歯科用接着性組成物は、歯質との接着性に優れ、接着剤やコーティング材として好適に使用することができる。
本発明の歯科用接着性組成物は、虫歯治療等の歯科医の行う行為を非常に単純化および簡素化して歯科医および患者の負担を大幅に少なくすることができ、特に、歯髄(神経と呼ぶことがある)に大きく影響を与える象牙質が露出した部分へのコーティング材として
使用したときには、磨耗や刺激からの保護ばかりでなく、知覚過敏の抑制、齲蝕感染の予防、術後疼痛の発生を抑制することができる。
また、本発明の硬化物は、歯質との接着性に優れ、吸水性が低く、硬度が高い。
図1は、本発明の歯科用接着性組成物を歯質表面に適用した際の一例を模式的に示す断面図である。
≪歯科用接着性組成物≫
本発明の歯科用接着性組成物は、(A)37℃の蒸留水100重量部への溶解度が15重量部未満である、分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体、(B)37℃の蒸留水100重量部への溶解度が5重量部以上である、分子内に酸性基を有しない親水性ラジカル重合性単量体、(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体、(D)重合開始剤、および(E)水を含有してなり、
(A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、(A)成分の含有量が3〜80重量部であり、(B)成分の含有量が0.05〜30重量部であり、(C)成分の含有量が1〜70重量部であり、(D)成分の含有量が0.01〜30重量部であり、および(E)成
分の含有量が5〜80重量部である組成物であって、
該組成物が、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有しない時には、歯質表面に適用する際に乳濁状態であり、
該組成物が、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有する時には、歯質表面に適用した際に、該水溶性有機溶媒の揮発により、歯質表面上で相分離することを特徴とする。
歯質組織、特に象牙質には多量の水分が存在する。この組織に接着剤を適用して充分な接着性能を引き出すには、接着剤成分が充分に組織表面に拡散し硬化することが必要であるといわれ、良好な接着性能を有する接着剤を使用した場合には歯質との接着界面付近には歯質組織と接着剤成分が混在した樹脂含浸層が形成されることが明らかになっている。一般に、歯質組織表面に接着剤成分が拡散するためには、歯質組織内の水分と混合しやすい重合性単量体や重合開始剤を使用することが好ましいと言われる。この方法は短期的には良好な接着強度が得られるものの長期的に良好な接着耐久性が保てないことがある。その原因は、水に溶解しやすい成分を使用することによる耐水性の低下にあると推察される。
特許文献8(特公平6−62688号公報)では、エタノールなどの水に可溶な揮発性有機溶媒を使用する組成物が提案されているが接着性能は充分といえない。これは、該組成物が充分に歯質組織表面に拡散し、硬化できていないためと考えられる。
また、特許文献11(特開平11−240815号公報)に記載の組成物は、たとえば、生活歯髄を有する歯質象牙質に適用した場合に、一過性の痛みを感じさせることがある。また、義歯や義歯床などの硬化した樹脂に適用した場合に、選択した有機溶媒の種類によっては樹脂に亀裂を発生させる場合があるので、使用用途が限定されることがある。
本発明は上述のように、概略(A)溶解度が15重量部未満である、分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体、(B)溶解度が5重量部以上である、分子内に酸性基を有しない親水性ラジカル重合性単量体、(C)分子内に酸性基を有しない非親水性ラジカル重合性単量体、(D)重合開始剤、および、歯質内に取り込まれ易い(E)水を混合して歯質表面に接触させる方法である。
本発明の組成物を歯質表面に適用した場合、接着の際の構造の例を模式的に示すと、例えば図1のようになる。
すなわち、本発明の組成物を歯質表面に適用すると、歯質表面はハイドロキシアパタイトを主成分とし、水を含有するため、(A)成分の一部と親水性の(B)成分および(E)成分を主成分とする成分(I)が歯質表面に拡散し、歯質表面層(図1の2)を形成する。
一般に、1分子内に親水性基と疎水性基をバランスよく有する重合性単量体は、歯質組表面に拡散しやすいので、(A)成分は、親水性が高くなくても、その一部は、歯質表面に拡散し吸着されると推察される。
一方で、(A)成分の残りと(C)成分を主成分とするとする成分(II)は、上記歯質表面層の上部に表層(図1の3)を形成する。
このため、本発明の組成物は、(H)成分を含有するときには、該(H)成分の揮発により歯質表面上で相分離する。
この歯質表面層のうち、(A)成分は酸性基を有するため、歯質表面のハイドロキシアパタイトを脱灰し、歯質表面と強固に接着する。(A)成分は、親水性が高くなく、また、本発明の組成物中には、親水性の(B)成分が所定量存在するため、本発明の組成物中の(A)成分の多くは、表層を形成し、一部が歯質表面層を形成する。そのため、歯質表面を脱灰しすぎることなく、適度な接着性を有する組成物を得ることができる。
また、歯質表面層のうち、(B)成分は、歯質表面のヒドロキシル基と水素結合等を形成するため、歯質表面と適度な接着性を有する組成物を得ることができる。
表層における(A)成分は、該表層の上に金属等の被着体を適用する際に高い接着性を発現させる。また、表層は、非親水性多官能化合物である(C)成分を含有するため、吸水性が低く、硬度の高い硬化物を得ることができる。さらに表層における(C)成分は、歯質表面層と表層とを架橋し、硬化物の硬度を高めたり、表層の上にコンポジットレジン等の被着体や上部接着剤層を適用する際の接着性を高める。
このような本発明の接着性組成物は、該組成物中の、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒と、(D)重合開始剤の全部あるいは一部を除いた混合物を、密閉した同一包装容器内で30〜40℃の恒温水槽内にて24時間強く攪拌して各成分を充分に混合し、その後、一度、該混合物を室温(23℃)にした後、再度、約15秒間激しく振盪した場合、通常、完全に溶解せずに乳濁して分散するか、あるいは、5分以内に相分離を起こす特長を有する。また、(H)成分を含む場合には、(H)成分を室温付近で蒸発させた残留組成物を約15秒間激しく振盪した場合、通常、完全に溶解せずに乳濁して分散するか、あるいは、5分以内に相分離を起こすとの特性を有する。
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、37℃の蒸留水100重量部への溶解度が15重量部未満である、分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体である。
この(A)成分は、溶解度が高くなく、どちらかと言えば低い化合物であるため、相分離した組成物において、主に有機層に存在する。そのため、該相分離した状態で重合すると、主に、表層(図1の3)を形成することになると考えられる。この表層が、酸性基を
有することで、金属等の被着体を適用する場合に、該被着体と高い接着性を有する組成物を得ることができると考えられる。よって、本発明の組成物は、金属等の被着体を適用する場合の接着剤および該被着体のコーティング材として好適に用いることができる。
一方で、酸性基を有する(A)成分は、歯質表面にも存在する。そのため、本発明の組成物を重合すると、歯質表面で下記(B)成分と共重合し、歯質表面層(図1の2)を形成すると考えられる。よって、該層中の酸性基により、歯質表面との接着性が高く、スメア層の一部または全部を適度に脱灰することができる組成物を得ることができると考えられる。このため、本発明の組成物は、セルフエッチングボンディング材組成物として好適に使用することができる。
(A)成分としては、例えばカルボン酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基およびスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物等を挙げることができる。
1分子中にカルボン酸基またはその無水物基を有する単官能重合性単量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸およびポリカルボン酸またはその無水物などを挙げることができる。ここで、使用できる化合物としては、特許文献8(特公平6−62688号公報)に記載されているカルボン酸および/またはその無水物を挙げることができる。
具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、β−(メタ)アクリロキシエチルハイドロジェンフタレート、マレイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−10)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,
2,6−トリカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸および
その無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2または3または4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N,O−ジ(メタ)アクリ
ロイルオキシチロシン、O−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−O−アミノ安息香酸、N−フェニルグリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−[N−メチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、(メタ)アクリロイルアミノサリチル酸、(メタ)アクリロイルオキシサリチル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(PMDM)、2モルの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと1モルの無水マレイン酸または3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物などを反応させた付加反応物ならびに2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ
)1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパンなどを挙げることができる。このうち
、11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−10)およ
び4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸(4−MET)またはその無水物(4−META)が好ましく用いられる。
1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有する重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2または3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホス
フェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2または3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェートおよび2−(メタ)アクリロイルオキシエチルp−メトキシフェニルアシドホスフェートなどを挙げることができる。これらの化合物におけるリン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。
チオリン酸基を有する重合性単量体としては、特開昭54−21438号公報、特開昭59−140276号公報および特開昭59−142268号公報に記載されているものを使用することができる。具体的には下記の化合物を挙げることができ、[ ]内に記載した構造で示した互変異性体であってもよい。
Figure 0005611644
Figure 0005611644
このうち、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、および/または10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好ましく用いられる。
1分子中にスルホン酸基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1−スルホ−1または2−プロピル(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミドおよび
2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸などを挙げることができる。このうち、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましく用いられる。
(A)成分としては、上記化合物の酸性基の一部を1価または多価の金属塩やアンモニウム塩などの塩に変えた化合物を使用することもできる。この場合、組成物中における(A)成分が酸として働くようにすることが好ましい。
(A)成分としては、上記化合物を1種単独で、または組み合わせて使用することができる。
このような(A)成分は、溶解度が15重量部未満であるラジカル重合性単量体である。より好ましくは、溶解度が10重量部未満であり、更に好ましくは5重量部未満である。溶解度が15重量部以上であると、重合・硬化後の硬化物の吸水性が向上し、ビッカース硬度および接着強さが低下する可能性がある。また、形成される歯質表面層(図1の2)に存在する酸性基の量が多くなるため、歯質表面を過度に脱灰してしまう組成物となる可能性があり、さらに、表層(図1の3)に存在する酸性基の量が少なくなるため金属等の被着体への接着性に劣る組成物となる可能性がある。
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、37℃の蒸留水100重量部への溶解度が5重量部以上である、分子内に酸性基を有しない親水性ラジカル重合性単量体である。
この(B)成分は、親水性の化合物であるため、相分離した組成物において、主に水層に存在する。そのため、(B)成分は、歯質表面層(図1の2)を形成する。このように、歯質表面層が、主に酸性基を有しない化合物からなることにより、一種のクッション材として、歯質表面が過度に脱灰されることなく、歯質との接着性に優れる組成物および硬化物を得ることができると考えられる。
(B)成分としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ピロリドン基、アミノ基およびその塩、アミド基ならびにスルホニル基等の官能基から選ばれる少なくとも1つの親水性基を有するラジカル重合性単量体が挙げられる。
以下に具体例を示すが、なんらこれらに限定されるものではなく、溶解度が5重量部以上、好ましくは7重量部以上、より好ましくは10重量部以上のラジカル重合性単量体が用いられる。
溶解度が5重量部未満であると、歯質接着の際に歯質への重合性単量体の浸透不足を招来し、接着強さが低下する可能性がある。
分子中に少なくとも1つのヒドロキシ基又はアルコキシ基を有する親水性重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジンクモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシポ
リエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
分子内に少なくとも1つのピロリドン基を有する親水性ラジカル重合性単量体としては、n−ビニルピロリドンなどを挙げることができる。
分子内に少なくとも1つのアミノ基およびその塩を有する親水性ラジカル重合性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、p−ビニルアニリン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレートおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート
などを挙げることができる。
分子内に少なくとも1つのアミド基を有する親水性ラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸アミド、エチレンビス(メタ)アクリル酸アミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリロイルモルホリンなどを挙げることができる。
分子内に少なくとも1つのスルホニル基を有する親水性ラジカル重合性単量体としては、1モルのビス(4−2−ヒドロキシエチルチオフェニル)スルホンと2モルの2−イソシアネートエチルアクリレートとの反応生成物などを挙げることができる。
(B)成分としては、上記化合物を1種単独で、または組み合わせて使用することができる。
<(C)成分>
本発明の(C)成分は分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体である。
この(C)成分は、非親水性の化合物であるため、相分離した組成物において、主に有機層に存在する。そのため、(C)成分は、歯質表面層(図1の3)を形成する。表層が、特に、非親水性多官能ラジカル重合性単量体を含有することで、重合・硬化の際に重合性基が表面に残存し、コンポジットレジンやレジンセメントなどの被着体や上部接着剤層と共重合することで、被着体や上部接着剤層と歯質とをより強固に接着させることができる。また、非親水性多官能化合物であるため架橋構造が形成され、この架橋構造によって、水分の吸着を抑制し、より高い耐水性を有した硬度の高い硬化物の形成が可能となる。このため、本発明の組成物は、コンポジットレジンやレジンセメントなどの被着体や上部接着剤層を適用する際の接着剤として、また、該被着体のコーティング材として好適に用いることができる。
さらに、歯質表面層中の化合物と表層中の化合物との架橋剤としての役割をも有するため、硬度の高い硬化物を得ることができる。
かかる重合性単量体としては、特に、蒸留水中に5重量部になるように加え、37℃で10分間振盪して肉眼的に観察して相分離が見られる(溶解していない)ものが好ましい。すなわち、溶解度が、好ましくは5重量部未満、より好ましくは4重量部未満、更に好
ましくは3重量部未満のものである。溶解度が5重量部以上であると、重合・硬化後の硬化物の吸水性が向上し、ビッカース硬度や接着強さが低下する可能性があり、コンポジットレジンやレジンセメントなどの被着体や上部接着剤層との接着性に劣る接着剤となる可能性がある。
(C)成分としては、例えば、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物類;
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジメタクリ
レート(1,6−HX)、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタ
ンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよび下記式(2)で表わされるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル類;
Figure 0005611644
1モルのビスフェノールAと2モルのグリシジルメタクリレートの付加物(Bis−GMA)、1モルのビスフェノールAグリシジルエーテルの付加重合物と2モルの(メタ)アクリル酸の縮合物(VR90)、および、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物1モルと2モルの(メタ)アクリル酸の縮合物(エチレンオキシドの付加連鎖数m+n≧2;m+n=2.6は2.6Eと略記)などの芳香族(メタ)アクリレート類;
ポリエステルポリウレタン(メタ)アクリレートおよび1モルの2,2,4−(または2,4,4−)トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートと2モルの2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレートの付加物(UDMA)などのウレタン結合含有(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類(連鎖数n=6未満);
プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類(連鎖数n=12以下);
トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート;
溶解度が5重量部未満の(ポリ)(ヒドロキシオキシアルキレン)ジ(メタ)アクリレート、好ましくは、(ポリ)グリセリンジ(メタ)アクリレート、さらに好ましくは、グリセリンジ(メタ)アクリレート;
トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアネート、ジ(メタ)アクリル化イソシアネート;
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;
下記式(3)で表わされるトリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートのヒドロキシエチルアクリレートエステル;
Figure 0005611644
下記式(4)で表わされるヒドロキシエチルメタクリレートとジアリリデンペンタエリスリトールの付加物;
Figure 0005611644
下記式(5)で表わされるトリメチロールプロパンジメタクリレートとジアリリデンペンタエリスリトールの付加物;
Figure 0005611644
下記式(6)で表わされるトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのアクリレートエステル(A−9300);
Figure 0005611644
などの重合性単量体を挙げることができる。
(C)成分としては、上記化合物を1種単独で、または組み合わせて使用することができる。
これらの多官能ラジカル重合性単量体の中では、トリアジン環を含有する化合物、または、ウレタン結合を有する化合物、芳香族環を有する化合物が好ましく使用される。
(C)成分の分子量/重合性基の数は、好ましくは500以下、より好ましくは400
以下、更に好ましくは350以下である。(C)成分の分子量/重合性基の数が500を超えると、重合・硬化後の硬化物の吸水性が向上し、ビッカース硬度および被着体や上部接着剤層との接着強さが低下する可能性がある。
<(D)成分>
本発明の(D)成分は重合開始剤である。かかる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤として公知の(D1)光重合開始剤および(D2)過酸化物を挙げることができる。
かかる(D1)光重合開始剤は、その化合物単独で、または、他の化合物との共存下で光によって励起し、本発明の歯科用接着性組成物を硬化せしめる役割を有する。
(D1)光重合開始剤としては、例えば、(D11)α−ケトカルボニル化合物、および(D12)アシルホスフィンオキシド化合物などを挙げることができる。
(D1)光重合開始剤は、(D11)成分および(D12)成分をそれぞれ単独で使用してもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。
(D11)α−ケトカルボニル化合物としては、たとえば、α−ジケトン、α−ケトアルデヒド、α−ケトカルボン酸およびα−ケトカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
さらに具体的には、ジアセチル、2,3−ペンタジオン、2.3−ヘキサジオン、ベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−ジエトキシべンジル、4,4’−オキシベ
ンジル、4,4’−ジクロルベンジル、4−ニトロベンジル、α−ナフチル、β−ナフチ
ル、カンファーキノン、カンファーキノンスルホン酸、カンファーキノンカルボン酸および1,2−シクロへキサンジオンなどのα−ジケトン;
メチルグリオキザールおよびフェニルグリオキザールなどのα−ケトアルデヒド:
ピルビン酸、ベンゾイルギ酸、フェニルピルビン酸、ピルビン酸メチル、べンゾイルギ酸エチル、フェニルピルビン酸メチルおよびフェニルピルビン酸ブチルなどのα−ケトカルボン酸またはα−ケトカルボン酸エステルを挙げることができる。
これらのα−ケトカルボニル化合物のうちでは安定性などの面からα−ジケトンを使用することが好ましい。α−ジケトンのうちではジアセチル、ベンジル、カンフアーキノン(CQ)が好ましい。
これらの化合物は、1種単独で、または組み合わせて使用することができる。
(D12)アシルホスフィンオキシド化合物としては、たとえば、ベンゾイルジメトキシホスフィンオキシド、ベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどを挙げることができる。
これらの化合物は、1種単独で、または組み合わせて使用することができる。
(D2)過酸化物としては、有機過酸化物や無機過酸化物を挙げることができる。
例えば、ジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,
p’−ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p’−ジメトキシベンゾイルペルオキシド
、p,p’−ジメチルベンゾイルペルオキシドおよびp,p’−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物;
過硫酸、過塩素酸、過臭素酸、過リン酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過塩素酸カリウム、過臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物を挙げることができる。
(D1)および(D2)以外のラジカル重合開始剤としては、有機ホウ素化合物、または、これを含有してなる組成物などを挙げることが出来る。
有機ホウ素化合物としては、例えば、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリオクチルホウ素、トリデシルホウ素、トリドデシルホウ素、トリシクロペンチルホウ素およびトリシクロヘキシルホウ素などのトリアルキルホウ素類;
ブトキシジブチルホウ素などのアルコキシアルキルホウ素類;
ブチルジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボランおよび9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナンなどのジアルキルボランなどを挙げることができ、上記の化合物の一部が部分的に酸化されていてもよい。これらの化合物は、1種単独でも組み合わせて使用することもできる。これらの中ではトリブチルホウ素、あるいはこれを部分酸化した部分酸化トリブチルホウ素が好ましく用いられる。部分酸化トリブチルホウ素は、例えば、トリブチルホウ素1モルに対してO2を0.3〜0.9モル付加させたものが好ましく用いられる。
また、有機ホウ素化合物を含有してなる組成物として、上記有機ホウ素化合物と、非プロトン性溶媒および/または有機ホウ素化合物に不活性な液状もしくは固体状の有機オリゴマーまたはポリマーとを含有する組成物を使用することができる。
<(E)成分>
本発明の(E)成分は水である。(E)成分を含有することによって、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有しない時には、歯質表面に適用する際に乳濁状態であり、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有する時には、歯質表面に適用した際に、該水溶性有機溶媒の揮発により、歯質表面上で相分離する組成物を得ることができるため、歯質との接着性に優れる組成物、特に、接着剤やコーティング材として好適に使用することができる組成物、および、吸水性が低く、硬度の高い硬化物を得ることができる。また、(E)成分は本発明の組成物のpHを低下させる役割があり、この効果によって、該組成物を研削歯質に適用した場合には比較的短時間でスメア層中のハイドロキシアパタイトを溶解することができ、主に(B)成分を歯質表面に拡散することができる。
ここで使用できる水としては、例えば蒸留水、イオン交換水、精製水および生理食塩水などが挙げられる。特に蒸留水、精製水またはイオン交換水が好ましく用いられる。また、電気分解によって調製される酸化還元水などを使用することもできる。
<(F)成分>
本発明の(F)成分はその他のラジカル重合性単量体である。かかるその他のラジカル重合性単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレートおよびtert−ブチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの直鎖アルキルまたは分岐アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、モノ(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などの高親水性酸性ラジカル重合性単量体、ならびに2,2,2−トリフルオロエチレン(メタ)アクリレートなどの含フッ素系ラジカル重合性単量体などが挙げられるが、なんらこれらに限定されるものではなく、(A)成分、(B)成分および(C)成分以外の一般的に歯科用途として使用可能なラジカル重合性単量体が用いられる。
(F)成分は、組成物の使用目的に応じ、硬化物の接着性、吸水性や硬度を調整するために適宜用いられる。
<(G)成分>
本発明の(G)成分は還元剤である。(G)還元剤は、好ましくは、(G1)非ラジカル重合性のアミン化合物、(G2)スルフィン酸またはその塩、および(G3)バルビツール酸またはその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、さらに好ましくは、少なくとも1種の(G1')N−芳香族基置換グリシンまたはその塩、および
少なくとも1種の(G2)スルフィン酸塩である。
(G1)成分としては、非ラジカル重合性の、脂肪族アミン、脂環族アミンまたは芳香族アミンのいずれであってもよい。また、第一アミン、第二アミンおよび第三アミンのいずれでもよい。好ましくは、芳香族アミンであり、さらに好ましくはN,N−ジメチルアミノ安息香酸、そのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸、そのアルキルエステル、および、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド等の芳香族第三アミンを挙げることができる。アミン化合物として具体的には、例えば、トリエチルアミノアセチルベンゼンなどの脂肪族アルキルアミノアシルベンゼン類;
N−フェニルグリシン(NPG)、N−トリルグリシン(NTG)、N,N−(3−メ
タクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニルグリシン(NPG−GMA)およびこれらの塩などのN−芳香族置換グリシン類を使用することができる。
N−芳香族置換グリシンの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩およびアンモニウム化合物の塩などを挙げることができる。
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などを挙げることができる。
アルカリ土類金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩およびバリウム塩を挙げることができる。
アミン塩としてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミンおよびキシリレンジアミンなどの第一アミンの塩;
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジフェニルアミンおよびN−メチルトルイジ
ンなどの第二アミン塩;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルトルイジンおよびN,N−(β−ヒドロキシエチル)トルイジンなどの第三アミンの塩を挙げることができる。
アンモニウム化合物の塩としてはアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩およびトリメチルベンジルアンモニウム塩などを挙げることができる。
これらのうち、N−フェニルグリシン(NPG)およびその塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)が好ましい。
これらの化合物は単独で、または組み合わせて使用することができる。
(G2)有機スルフィン酸またはその塩としては、スルフィン酸またはスルフィン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩およびアンモニウム化合物の塩などが使用される。芳香族スルフィン酸塩を使用すると硬化物の色調が優れるので好ましい。
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などを挙げることができる。
アルカリ土類金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩およびバリウム塩を挙げることができる。
アミン塩としてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミンおよびキシリレンジアミンなどの第一アミンの塩;
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジフェニルアミンおよびN−メチルトルイジンなどの第二アミン塩;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルトルイジンおよびN,N−(β−ヒドロキシエチル)トルイジンなどの第三アミンの塩を挙げることができる。
アンモニウム化合物の塩としてはアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩およびトリメチルベンジルアンモニウム塩などを挙げることができる。
有機スルフィン酸として具体的には、エタンスルフィン酸、プロパンスルフィン酸、ヘキサンスルフィン酸、オクタンスルフィン酸、デカンスルフィン酸およびドデカンスルフィン酸などのアルカンスルフィン酸;
シクロヘキサンスルフィン酸およびシクロオクタンスルフィン酸などの脂環族スルフィン酸;
ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸およびナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸を挙げることができる。
有機スルフィン酸塩として具体的には、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸マグネシウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸ストロンチウム、ベンゼンスルフィン酸バリウム、ベンゼンスルフィン酸ブチルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸アニリン塩、ベンゼンスルフィン酸トルイジン塩、ベンゼンスルフィン酸フェニレンジアミン塩、ベンゼンスルフィン酸ジエチルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸ジフェニルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸トリエチルアミン塩、ベンゼンスルフィン酸アンモニウム塩、ベンゼンスルフィン酸テトラメチルアンモニウムおよびベンゼンスルフィン酸トリメチルベンジルアンモニウムなどを挙げることができる。
さらに、o−トルエンスルフィン酸リチウム、o−トルエンスルフィン酸ナトリウム、o−トルエンスルフィン酸カリウム、o−トルエンスルフィン酸カルシウム、o−トルエンスルフィン酸シクロヘキシルアミン塩、o−トルエンスルフィン酸アニリン塩、o−トルエンスルフィ酸アンモニウム塩、o−トルエンスルフィン酸テトラエチルアンモニウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸バリウム、p−トルエンスルフィン酸エチルアミン塩、p−トルエンスルフィン酸トルイジン塩、p−トルエンスルフィン酸N−メチルアニリン塩、p−トルエンスルフィン酸ピリジン塩、p−トルエンスルフィン酸アンモニウム塩、p−トルエンスルフィン酸テトラメチルアンモニウム、β−ナフタリンスルフィン酸ナトリウム、β−ナフタリンスルフィン酸ストロンチウム、β−ナフタリンスルフィン酸トリエチルアミン、β−ナフタリンスルフィン酸−N−メチルトルイジン、β−ナフタリンスルフィン酸アンモニウムおよびβ−ナフタリンスルフィン酸トリメチルベンジルアンモニウムなどを挙げることができる。
(G3)バルビツール酸およびその塩としては、1,3,5-トリメチルバルビツール酸
、1,3,5-トリエチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、1−メチル−5−エチルバルビツール酸、1−メチル
−5−プロピルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−メチル−1−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられ、その濃度が歯科用接着性組成物全体に対して0.1〜10部であることが好ましい。
一般に、酸性基を有する重合性単量体および水を含有するような接着性組成物であると重合性が低下して硬化物の表面硬度が低下することが多い。しかしながら、本発明の接着性組成物では接着性能と表面硬度を併せ持つという、予測外の新たな特性が見出された。なかでも(G)還元剤を水溶性化合物、たとえば、スルフィン酸塩および/またはN−芳香族基置換グリシン塩などを使用することによってこの特性が現れやすく、特に、スルフィン酸塩とN−芳香族基置換グリシン塩を同時に使用すると、その効果がより顕著に現れる。
(G)成分は、本発明の組成物を長期にわたって安定に保存するために、それ単独で、または中性からアルカリ性を示す条件下で溶解または分散させることが好ましい。(G)成分は、使用する際の操作を簡便にするために、本発明の組成物を歯質表面に適用する際に使用するスポンジ球、スポンジ片などのスポンジや綿球、筆、ブラシ、ダッペンディッシュ、練和紙およびスパチュラなどのアプリケータに予め含有または付着させておくかまたは吸着させ、(A)〜(F)成分および(H)成分とは別に保存し、また、これらの成分と容易に混合できるようにしておくことが好ましい。またこのようなアプリケータは、ディスポーザブルとして使用できるので、歯科治療における感染対策として有効である。
還元剤を2種以上併用する場合は、通常同量で使用するが、必要に応じてその配合比を変えてもよい。例えば、還元剤を2種使用する場合は、一方の量の1/10〜10倍程度変えることができる。
<(H)成分>
本発明の(H)成分は、沸点100℃未満の水溶性有機溶媒であり、上記の本発明の組成物の各成分を均一に溶解または分散させ、本発明の組成物の取扱を向上させるためのものである。(H)成分は、通常、歯質に塗布した際に短時間に揮発して残った成分が相分離を生じるように溶解または分散するために必要な最少量であることが好ましい。
また、(H)成分を沸点100℃未満にすることによって、本発明の組成物を使用する際に、常に一定の組成比率で取り出すことができ、さらに本発明の組成物を塗布した際に比較的短時間内に揮発させることができ、この揮発によって、本発明の組成物を相分離を起こす組成に戻すことができる利点を有する。
ここで使用する溶媒は、(A)〜(D)および(F)成分を溶解でき、かつ、(E)成分の水と(A)〜(D)および(F)成分を歯質に塗布するまでの期間均一にまたは安定して分散または溶解しうる性質を有するものが好ましい。ここで使用できる有機溶媒としては、(A)〜(D)および(F)成分を溶解することができる溶媒であればよいが、好ましくは水と任意の比率で混和しうる溶媒である。また、(H)成分は、本発明の組成物を歯質に適用した際に短時間に揮発する溶媒であればよいが、通常は沸点が100℃未満であり、好ましくは80℃未満であり、より好ましくは60℃未満である。
このような(H)成分として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(T
HF)およびジオキサンなどのエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;
N,N-ジメチルスルホキサイド(DMSO)などのスルホキサイド類;
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド類などを挙げることができる。
その他、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールなどの高級アルコール類も使用できる。ここでは、生体への安全性を考慮して、アルコール、アセトン、THFおよびDMSOなどが特に好ましい。
本発明の組成物は、(A)〜(E)成分の合計100重量部としたとき、(A)成分は3〜80重量部の範囲、好ましくは5〜70重量部の範囲、さらに好ましくは10〜65重量部の範囲である。前記数値範囲の下限値を下回ると、歯質との接着の際に歯質の脱灰が不足し、接着強さが低下する可能性があり、前記数値範囲の上限値を上回ると重合・硬化後の硬化物の吸水性が向上し、ビッカース硬度や接着強さが低下する可能性がある。
(B)成分は0.05〜30重量部の範囲、好ましくは0.2〜10重量部の範囲、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。前記数値範囲の下限値を下回ると、組成物の接着強さが低下する可能性があり、前記数値範囲の上限値を上回ると、重合・硬化後の硬化物の吸水性が向上し、ビッカース硬度や接着強さが低下する可能性がある。
(C)成分は1〜70重量部の範囲、好ましくは3〜65重量部の範囲、さらに好ましくは5〜60重量部の範囲であり、前記数値範囲の下限値を下回ると重合・硬化後の硬化物の吸水性が向上し、ビッカース硬度や接着強さが低下する可能性があり、前記数値範囲の上限値を上回ると歯質との接着の際に歯質への重合性単量体の浸透不足を招き接着強さが低下する可能性がある。
(D)成分は0.01〜30重量部の範囲、好ましくは0.05〜20重量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜10重量部の範囲であり、前記数値範囲の下限値を下回ると、重
合性単量体の重合不足を招き、硬化物のビッカース硬度が低下する可能性があり、前記数値範囲の上限値を上回ると、歯質接着の際の重合性単量体の歯質への浸透・拡散が不充分となり接着強さが低下する可能性があり、また、(C)成分の重合性基が過度に反応することで、被着体や上部接着層との接着強さが低下する可能性がある。
(E)成分は5〜80重量部の範囲、好ましくは15〜70重量部の範囲、さらに好ましくは20〜60重量部の範囲である。前記数値範囲の下限値を下回ると、組成物の接着強さが低下する可能性があり、前記数値範囲の上限値を上回ると、重合・硬化後の硬化物の吸水性が向上し、ビッカース硬度や接着強さが低下する可能性がある。
(A)〜(F)成分の合計100重量部としたときに、さらに加える成分として、(F)成分は、好ましくは0〜90重量部の範囲、より好ましくは0〜80重量部の範囲で使用できる。(F)成分の含有量が上記範囲にあれば、硬化物の接着性、吸水性、および硬度を目的に応じ調整することができる。
(G)成分は、好ましくは0.01〜20重量部の範囲、より好ましくは0.05〜15重量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜10重量部の範囲で使用できる。前記数値範囲
にあることにより(D)成分とのレドックス反応により、ラジカルが発生し、より効率よく重合・硬化が促され、接着強さが更に向上することが考えられる。前記数値範囲の上限値を上回ることにより還元剤が過剰となり、発生したラジカルが還元剤と反応して安定化するため、重合が阻害される。そのため、接着強さが低下する可能性がある。
(H)成分は好ましくは50〜300重量部の範囲であり、より好ましくは70〜250重量部の範囲、さらに好ましくは80〜200重量部の範囲で使用できる。前記数値範囲にあることにより親水成分と疎水成分の均一な混和が可能となり、組成物の歯質表面への適用の際の操作性が向上する。前記数値範囲の上限値を上回ると、重合を阻害し、また、(H)成分が硬化体中に残留することで、ビッカース硬度が低下したり、接着強さが低下する可能性がある。
本発明の歯科用接着性組成物は、さらに、シランカップリング剤、貴金属表面に適用する際に好適なイオウ化合物を含有させることができる。
本発明に使用できるシランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を有する重合性単量体を好ましいものとして挙げることができる。アルコキシシリル基を有する重合性単量体としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、トリメトキシシリルプロピルアリルアミンなどを挙げることができる。この中では、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよび2−スチリルエチルトリメトキシシランが好ましく使用される。
上記の重合性単量体はそれぞれ単独で、または組み合わせて使用することができる。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、フッ化ナトリウムなどのフッ素含有化合物、フッ素放出性フィラー、重合禁止剤、顔料、色素、ポリマー、フィラー、防カビ剤、抗
菌剤、界面活性剤などを含有させることができ、通常、これらは本発明の組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲で使用される。
≪歯科用接着剤≫
本発明の歯科用接着剤は、上記本発明の歯科用接着性組成物を含有してなる。本発明の歯科用接着剤は、基本的には、上記本発明の歯科用接着性組成物からなるが、必要に応じて、所望の成分を含有してもよい。このため、本発明の接着剤は、歯質表面との接着性が高い。
本発明の接着剤は、使用目的に応じ、所望の方法で使用されるが、具体的な使用方法としては、接着剤を歯質表面に塗布し、必要に応じて仮硬化させ、その上に被着体を圧接し、その後、接着剤を硬化させる方法を挙げることができる。
ここで使用される被着体としては、歯科用金属、ポーセレンなどのセラミックス、コンポジットレジン・硬質レジン・義歯床用レジン・レジンセメントなどの歯科用レジンなどを挙げることができる。
いずれの被着体に対しても、本発明の接着剤は高い接着性を有する。
≪歯科用コーティング材≫
本発明の歯科用コーティング材は、上記本発明の歯科用接着性組成物を含有してなる。本発明の歯科用コーティング材は、基本的には、上記本発明の歯科用接着性組成物からなるが、必要に応じて、所望の成分を含有してもよい。
本発明の歯科用コーティング材は、歯質表面のコーティング材であっても、上記被着体表面のコーティング材であってもよく、どちらの場合であっても高い接着性および硬度を有する。
≪硬化物≫
本発明の硬化物は、上記本発明の組成物またはコーティング材を硬化することによって得られる。
本発明の組成物を歯質に適用した場合、以下の接着メカニズムが推察される。即ち、均一になるまで混合もしくは乳濁した組成物を歯質表面に接触させると、まず、一部の(A)成分、親水性の(B)成分および(E)成分を主成分とする成分(I)が歯質表面に拡散し、歯質表面のハイドロキシアパタイトを溶解しながら、歯質表面と吸着する。ここで、一般に、1分子内に親水性基と疎水性基をバランスよく有する重合性単量体は、歯質表面に拡散しやすいといわれているので、親水性が高くなくても(A)成分の一部は歯質表面に拡散し吸着されると推察される。歯質組織に存在する水分と上記成分(I)とが速やかに接着界面付近で混合し、さらに該成分(I)が歯質表面に拡散し、歯質組織と吸着する過程で、同時に、水に溶解しなかった成分が徐々に分離する。さらに、歯質組織と吸着した成分(I)中の単量体が重合する過程で、水は徐々に表面へと追いやられる。このとき圧搾空気や温風を、該組成物を適用した部位に施こすことによって、接着に不要な水分や歯質成分の溶解残渣を接着面から除外することができる。その後、可視光線などの照射や温風などによって、接着に必要なだけ重合を進行させる。コーティング材として使用する場合には、表層に残る少量の未重合の重合性単量体をエタノールを含む綿球などで除去すると終了するが、必要に応じてコンポジットレジン等の修復物を適用させて治療を終了させることができる。このように、接着界面付近の水分を、本発明の組成物によって徐々に組織外部へ排除しながら歯質組織内に硬化性組成物を深く浸透させることによって、湿潤条件でも強力な接着強さが得られ、水に不溶または難水性の硬化物を形成できるので優
れた耐水性が得られるものと考えられる。また、重合・硬化の際に残存する(メタ)アクリレート等の重合性基によりコンポジットレジンや上部接着剤層との共重合し、より強固な接着修復を可能とする。
本発明の硬化物の厚さは、その使用態様に合わせて適宜選定することができるが、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは、0.5〜30μm、特に好ましくは1〜10μmである。
コーティング材などの硬さが要求される場合には、硬化物のビッカース表面硬度は高いほうが好ましく、接着性とのバランスから通常、象牙質上10μmの塗膜で15〜100が好ましく、20〜80がより好ましく、25〜80であることがさらに好ましい。
一般にラジカル重合性組成物は、硬化時に酸素による重合阻害を受けやすいので薄い塗膜状態で硬化させると重合が不充分となり表面硬度は低くなる。さらに、酸性基を有する重合性単量体および水を含有するような接着性組成物であると重合性が低下して硬化物の表面硬度が低下することが多い。しかしながら、本発明の接着性組成物では接着性能と表面硬度を併せ持つという、予測外の新たな特性が見出された。なかでも(G)還元剤として、水溶性化合物、たとえば、スルフィン酸塩やN−芳香族基置換グリシン塩などを使用することによってこの特性が現れやすく、特に、スルフィン酸塩とN−芳香族基置換グリシン塩を同時に使用するとき顕著になることがわかった。
本発明の組成物、コーティング材および接着剤を硬化する方法としては、特に制限されないが、本発明の組成物、コーティング材および接着剤に、可視光および紫外線などを通常3秒〜2分、好ましくは、3〜60秒間照射する方法が挙げられる。特に、口腔内で、本発明の組成物等を使用する場合には、患者や歯科医の負担を考慮すると、3〜20秒間可視光を照射することで、本発明の硬化物を得ることが好ましい。
本究明の効果をより高めるため、歯質に対して本発明の組成物を適用する場合には、塗布後5秒以上、好ましくは10秒以上、さらに好ましくは30秒以上静置する。これは本発明の組成物が歯質表面のスメア層および/または歯の基質の一部または全部を溶解し拡散するために必要な時間と推察される。しかし、その静置時間が長いほど本発明の効果を高めるが、口腔内での使用を考慮すると、長くても1分間程度にとどめるのが好ましい。また、金属化合物を含んでも良いリン酸やクエン酸などの無機酸ならびに有機酸によって、予め表面処理した歯質に適用することもできる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
(重合性単量体の水への溶解度試験)
例えば、溶解度が5重量部以上か、それ未満かを測定する方法を示す。
(A)〜(C)および(F)成分に相当するラジカル重合性単量体を、蒸留水中に5重量部になるように加え、37℃の温度下にて10分間振盪した後に4時間静置し、相分離の有無を肉眼で観察した。相分離のあるものを溶解度が重量5部未満、均一に乳化している場合を含めて溶解しているものは溶解度が5重量部以上とした。このようにして、(A)〜(C)および(F)成分が37℃における溶解度が5重量部未満であるラジカル重合性単量体であるか否かを判断した。
(接着試験方法)
健康な牛の下顎前歯を抜去し、水中で冷凍して保存したものを歯質サンプルとして使用
した。解凍した牛歯を象牙質が露出するように回転式研磨機ECOMET−III(BUE
HLER製)で注水しながら、指圧下で耐水エメリー紙#180を用いて研磨し、平滑な面を得た。研削した牛歯を一度気銃にて水分を除去し、直ちに片面に粘着材のついた内径4.8mm円孔を持つ厚さ1mmの原紙を牛歯に接着した。その後、該円孔部分に本発明
の組成物を塗布した。20秒間後に気銃エアーブローして液材を膜状に伸ばし、可視光照射器(TransluxCL、Kulzer製)にて3秒間光照射して、塗布した組成物を仮硬化させた後、この仮硬化物上にコンボジットレジン(メタフィルC、サンメディカル製)を充填して、厚さ50mmのポリエステルフィルムで覆った。更にこのフィルムの上から可視光照射器にて20秒間光照射してコンボジットレジンを硬化させた後、フィルムを剥がし、スーパーボンド(サンメディカル社製)にてアクリル棒を植立して15分間静置した。37℃水中に一日浸漬後、引張り試験をクロスヘッドスピード2mm/minで行った。
(被膜厚さ試験)
健康な牛の下顎前歯を抜去し、水中で冷凍して保存したものを歯質サンプルとして使用した。解凍した牛歯を象牙質が露出するように回転式研磨機ECOMET−III(BUE
HLER製)で注水しながら、指圧下で耐水エメリー紙#180を用いて研磨し、平滑な面を得た。研削した牛歯を一度気銃にて水分を除去した。研削面の半面にセロハンテープを貼り、本発明の接着性組成物をもう半面の象牙質表面に適用して20秒間静置した後、気銃でエアーブローして薄く均一にした。可視光照射器(TransluxCL、Kulzer製)にて10秒間光照射して、エタノールを含む綿球にて表面の未硬化組成物を拭い取った。セロハンテープを取り除き、アクリル板と粘土にて、研削面を上にして牛歯を水平に固定して、被膜測定器DIGIMATIC INDICATOR(MITUTOYO製)にセットし、セロハンテープで覆っていた表面(研削面)と本発明の組成物を適用した表面との差を計測して被膜厚さを算出した。
(吸水試験およびビッカース硬度試験用サンプルの調製)
下記実施例1〜4および、比較例1の組成物をアクリル板の上に適量滴下し、エアーブローによりアセトンを揮発させた。アセトンの揮発により水層とその他成分離に層分離した液に、更にエアーブローを行い、水層を除去後、テフロン(登録商標)製のヘラで残留混合物を回収して、該残留混合物を直径10mm×高さ1mmの穴の開いたテフロン(登録
商標)モールドに充填した。該充填面にガラス板を圧接して、モリタ社製歯科用光照射器
「αライト」にて片面5分ずつ光照射して、重合・硬化させて吸水試験および、ビッカース硬度試験用のサンプルとした。
(ビッカース硬度試験法)
上記の硬化体サンプルの最表層の未重合部分をエタノールの含む綿球によって除去した。この表面の硬さをビッカース硬度計(島津製作所 HMV−2000)にて、50gで約12秒間荷重をかけて測定して、ビッカース硬度(HV)を算出した。
(吸水試験)
上記の硬化体サンプルを37℃のデシケーター内に22時間保管後、23℃のデシケーター内に2時間保管してから重量測定を行い、重量が一定になるまで、この操作を繰り返して硬化体サンプルを乾燥した。乾燥したサンプルを37℃の水中に7日間浸漬し吸水させ(このとき、1サンプルに対して水10ml/mm3以上となるように水を添加)、吸
水後の硬化体サンプルの重量を測定した。このときの重量をm2とした。吸水した硬化体サンプルを37℃と23℃のデシケーターを用いて、上記サイクルにて乾燥し、再乾燥後の硬化体サンプルの重量を測定した。このときの重量をm3とした。これらの測定値を用いて以下の式にて吸水量Wspを算出した。
Wsp=(m2−m3)/V Wsp:吸水量(μg/mm3
m2:吸水後の硬化体サンプルの重量
m3;再乾燥後の硬化体サンプルの重量
V:硬化体サンプルの体積
[実施例1〜4および比較例1]
下記表1に示す化合物を表1に示す量で混合し、組成物を調製した。なお、表1中の数値は、重量部である。
(A)成分;
4−MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸(溶解度:1重量部以下)
(B)成分;
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(溶解度:85重量部以上)
23G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=23)(溶解度:75重量部以上)
(C)成分;
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(溶解度:0.1重量部以下)
GDMA:グリセリンジメタクリレート(溶解度:2重量部以下)
DGMA:2、2−ビス[4−(2−ヒドロキシー3−メタクリロキシプロポキシ)フ
ェニル]プロパン(溶解度:0.1重量部以下)
UDMA:ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン(溶解度:0.1重量部以下)
3G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3)(溶解度:1重量部以下)(D)成分;
(D11)CQ:カンファーキノン
(D12)DTMPO:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(E)成分;
DW:精製水
(G)成分;
(G1)p−TS・Na:スルフィン酸ナトリウム塩
(G2)NGP・Na:N−フェニルグリシンナトリウム塩
Figure 0005611644
Figure 0005611644
表1に示したように、本発明の組成物により、歯質との強固に接着する接着剤としての性能を発揮するだけでなく、薄くて硬い耐水性被膜を形成することが可能となる。このため、本発明の組成物は、コーティング材としても有効である。
1:歯質
2:歯質表面層
3:表層

Claims (18)

  1. (A)37℃の蒸留水100重量部への溶解度が5重量部未満である、分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体、
    (B)37℃の蒸留水100重量部への溶解度が10重量部以上である、分子内に酸性基を有しない親水性ラジカル重合性単量体、
    (C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体、
    (D)重合開始剤、
    (E)水、および
    (G)N-芳香族置換グリシンまたはその塩(G1')を含む非ラジカル重合性アミン化合物(G1)、スルフィン酸またはその塩(G2)およびバルビツール酸またはその塩(G3)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる還元剤を含有してなり、
    (A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、(A)成分の含有量が10〜65重量部であり、(B)成分の含有量が0.5〜5重量部であり、(C)成分の含有量が1〜70重量部であり、(D)成分の含有量が0.01〜30重量部であり、(E)成分の含有量が5〜80重量部および(G)成分の含有量が0.01〜20重量部である組成物であって、
    該組成物が、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有しない時には、歯質表面に適用する際に乳濁状態であり、
    該組成物が、(H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を含有する時には、歯質表面に適用した際に、該水溶性有機溶媒の揮発により、歯質表面上で相分離することを特徴とする歯科用接着性組成物。
  2. (F)その他のラジカル重合性単量体を、上記(A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、0〜90重量部でさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  3. 上記(A)分子内に酸性基を有するラジカル重合性単量体が、カルボン酸基、カルボン酸無水基、リン酸基およびスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用接着性組成物。
  4. 上記(B)分子内に酸性基を有しない親水性ラジカル重合性単量体が、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ピロリドン基、アミノ基およびその塩、アミド基ならびにスルホニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  5. 上記(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体が、37℃の蒸留水100重量部への溶解度が5重量部未満の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  6. 上記(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体が、トリアジン環を含有する化合物、ウレタン結合を有する化合物、脂肪族エステル系化合物、芳香族(メタ)アクリレート系化合物、(ポリ)(ヒドロキシオキシアルキレン)ジ(メタ)アクリレート、および下記式(1)で表わされる化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
    CH2=CR1COO(R2O)nCOCR1=CH2・・・(1)
    (式(1)中、R1は、水素またはメチル基であり、R2は、エチル基またはプロピル基であり、R2がエチル基の場合は、nは6未満の整数であり、R2がプロピル基の場合は、nは12以下の整数である。)
  7. 上記(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体が、分子内に酸性基を有しない3官能以上の非親水性多官能ラジカル重合性単量体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科接着用組成物。
  8. 上記(C)分子内に酸性基を有しない非親水性多官能ラジカル重合性単量体の、分子量/重合性基の数が500以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  9. 上記(D)重合開始剤が、(D1)光重合開始剤および/または(D2)過酸化物であって、該(D1)光重合開始剤が(D11)α−ケトカルボニル化合物および/または(D12)アシルホスフィンオキシド化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  10. (H)沸点100℃未満の水溶性有機溶媒を、(A)〜(E)成分の合計100重量部に対し、50〜300重量部でさらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  11. 上記歯科用接着性組成物が、歯質表面において相分離することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  12. 上記歯科用接着性組成物が、セルフエッチングボンディング材組成物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  13. 上記請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物を含有することを特徴とする歯科用接着剤。
  14. 上記請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物を含有することを特徴とする歯科用コーティング材。
  15. 上記請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物、請求項13に記載の歯科用接着剤または請求項14に記載の歯科用コーティング材を硬化してなることを特徴とする硬化物。
  16. ビッカース硬度が15〜100であることを特徴とする請求項15に記載の硬化物。
  17. 膜厚が0.1〜50μmであることを特徴とする請求項15〜16のいずれか1項に記載の硬化物。
  18. 上記(G)還元剤を含有したアプリケータと、上記請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物の(G)還元剤成分から(G)還元剤を含有したアプリケータを除く成分を含有した一つ以上の容器との組合せからなることを特徴とする歯科用接着性組成物用キット。
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