JP3364418B2 - カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター及びその製造装置 - Google Patents

カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター及びその製造装置

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JP3364418B2 JP29746697A JP29746697A JP3364418B2 JP 3364418 B2 JP3364418 B2 JP 3364418B2 JP 29746697 A JP29746697 A JP 29746697A JP 29746697 A JP29746697 A JP 29746697A JP 3364418 B2 JP3364418 B2 JP 3364418B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CCDカメラや液
晶表示素子なの各種表示素子やカラーセンサーに使用さ
れるカラーフィルター及びその形成技術に関するもので
あり、着色層やブラックマトリックスの製造方法に関す
る。具体的には、フォトリソ工程を使わずに着色層やブ
ラックマトリックスを簡便にしかも高解像度で形成しう
る新規なカラーフィルターの製造方法、それに用いる製
造装置及びそれにより得られた、フィルター内に透明な
半導体膜を有する平滑性の高いカラーフィルターに関す
る。
【0002】
【従来の技術】現在、カラーフィルターの製造方法とし
ては、(1)染色法、(2)顔料分散法、(3)印刷
法、(4)インクジェット法(5)電着法などが知られ
ている。 (1)染色法は、ガラス基板上に染色させるための水溶
性高分子を形成し、これをフォトリソグラフィの工程を
経て所望の形状にパターンニングした後、染色液に浸す
ことで着色されたパターンを得て、これを3回繰り返し
R.G.B.のカラーフィルター層を得る方法である。
得られたフィルターは透過率も高く色相も豊富で、技術
の完成度も高いため、現在カラー固体撮像素子(CC
D)に多用されていたが、染料を使用するため耐光性に
劣り、製造工程の数も多いことから、液晶表示素子(L
CD)用としては、近年、顔料分散法に取って代わられ
ている。 (2)顔料分散法は、近年最も主流のカラーフィルター
の製造方法である。まず、ガラス基板上に顔料を分散し
た樹脂層を形成し、これをフォトリソグラフィー工程を
経てパターニングする。これを3回繰り返しR.G.
B.のカラーフィルター層を得る。この製造法は、技術
の完成度は高いが工程数が多くコストが高いのが欠点で
ある。 (3)印刷法は熱硬化型の樹脂に顔料を分散させ、印刷
を3回繰り返すことでR.G.B.を塗り分け、その後
で熱を加えて樹脂を硬化させることでカラーフィルター
層を得る。この方法は、R.G.B.層の形成に際して
は、フォトリソグラフィーが必要としないが、解像度や
膜厚の均一性の点に問題がある。 (4)インクジェット法は基体上に水溶性高分子のイン
ク受容層を形成し、この上に親水化・疎水化処理を施し
た後、親水化された部分にインクジェット法でインクを
吹きつけR.G.B.層を塗り分けカラーフィルター層
を得る方法である。この方法も、R.G.B.層の形成
に際しては、フォトリソグラフィーを必要としないが、
解像度の点で劣る。また、隣接するフィルター層に吹き
付け時にインクの小滴が飛散して混色する確率が高く位
置精度の点でも劣る。 (5)電着法は、水溶性高分子に顔料を分散させた電解
溶液中で、予めパターニングした透明電極上に70V程
度の高電圧を印加し、電着膜を形成することで電着塗装
を行い、これを3回繰り返しR.G.B.のカラーフィ
ルター層を得る。この方法は、予め、透明電極をフォト
リソグラフィーによりパターニングして、これを電着用
の電極として使用する必要があり、パターンの形状が限
定されるため、TFT液晶用には使えないという欠点が
ある。
【0003】本発明者らは、このような電着技術そのも
のを原理的なところから検討することにより、水溶性の
色素分子の中には、酸化状態、中性状態及び還元状態で
水への溶解度が大きく変化する分子があることに着目し
た。このような特性をもつ化合物の例を挙げれば、例え
ば、フルオレセイン系の色素であるローズベンガルやエ
オシンはpH4以上では還元状態をとり水に溶解する
が、pH4未満の領域では酸化されて中性状態となり析
出、沈殿する。また、一般にカルボキシル基をもった色
素材料は、構造変化を伴わなくても溶液の水素イオン濃
度(pH)によって溶解度が大きく変化することが知ら
れており、具体的には、耐水性改良インックジェット染
料は、pH6以上では水に溶けるがそれ以下では沈殿す
る。これらの色素を純水中に溶解し、溶液中に電極を浸
して電圧を印加すると、陽極側の電極上にこれらの色素
分子からなる電着膜が生成される。また、カルボキシル
基を持った高分子の一種である水溶性アクリル樹脂もp
Hが6以上では水に溶けるが、それ以下では沈殿する。
この高分子中に顔料を分散させて、溶液中に電極を浸し
電圧を印加すると、陽極側の電極上に顔料及び高分子が
析出して顔料と高分子が混合された電着膜が形成され
る。これらの電着膜は、逆電圧を印加するかpH10〜
12の水溶液に浸すことで、水溶液中に再溶出させるこ
とができる。また、キノンイミン染料の一つであるオキ
サジン系の塩基性染料Cathilon Pure B
lue 5GH(C.I.BasicBlue 3)や
チアジン系の塩基性染料メチレンブルー(C.I.Ba
sicBlue 9)はpHが10以下では酸化状態を
取り発色しているがそれ以上になると還元されて不溶化
し析出する。これらの色素を純水中に溶解し、溶液中に
電極を浸し電圧を印加すると、陰極側の電極上にこれら
の色素分子からなる電着膜が生成される。これらの色素
電着膜は、逆電圧を印加するかpH8以下の水溶液に浸
すことで、元に戻って水溶液中に再溶出する。
【0004】従来の電着技術は、電着膜形成に必要とな
る電圧が約70Vと高く、このような高い電圧を印加す
ると、半導体と電解液とのショトキーバリアを壊してし
まい画像形成はできない。また、透明で実用的はカラー
フィルターの形成に使用可能な半導体は皆無であった。
このことから、先に述べた従来の電着塗装を利用したカ
ラーフィルターの製造方法においては、透明電極のパタ
ーンニングが必要とされ、それがカラーフィルターのパ
ターンの形状が限定される要因となっている。
【0005】また、導電性高分子のドーピング・脱ドー
ピングに色素を用い、光で画像形成する方法も提案され
ているが、導電性高分子がなくても色素のみで電着膜を
形成することは可能である。ところが、色素自体で電着
膜を形成するのに必要な電圧は、導電性高分子がある場
合に比較して大きくなる。一方、光起電力は汎用のSi
においても約0.6V程度であり、画像形成するには光
起電力だけでは不十分である。従って、バイアス電圧を
印加してかさ上げするなどの方法が考えられるが、それ
でも一定の電圧(使用する半導体のバンドギャップに依
存した電圧)以上になると、光起電力の形成に必要な半
導体と溶液の間のショトキーバリアーが壊れてしまうと
いう問題があり、印加できるバイアス電圧には限界があ
る。このため、光起電力を用いた水溶液中での画像形成
は、1.0V以下で酸化還元するポリピロールなどの導
電性高分子の光重合反応を使うものなどに限られてい
た。また、この分野で公知の特開平5−119209号
公報(「カラーフィルター製造方法及びカラーフィルタ
ー製造用の電着基板」)や、特開平5−157905公
報(「カラーフィルター製造方法」)においては、電着
電圧は20Vから80Vと高くなっており、電着物質と
して高分子の酸化還元反応を利用している。このよう
に、一般的に電着用塗装として良く知られている高分子
は、電着に必要な電圧が10V以上である。従って、画
像形成には電子写真用のZnO2 などのフォトコンダク
ティブ特性を利用するなどしていたが取り扱いの容易な
水系液体で使用可能な実用的な材料は未だ見いだされて
いない。
【0006】また、カラーフィルターはカラーフィルタ
ー層だけで使用することは殆どなく、各カラーフィルタ
ー画素間をブラックマトリックスで覆ったものを用いる
ことが一般的である。通常、ブラックマトリックスの形
成にはフォトリソグラフィーが使われており、コストア
ップの大きな要因の一つである。従って、R.G.B.
層とブラックマトリックスを含めて考えると、高解像度
で、制御性が高く、さらにフォトリソグラフィー工程を
必要とせず、工程数が少ない、カラーフィルターの製造
方法は見いだされていないのが現状である。例えば、液
晶カラーディスプレイ装置等において、カラーフィルタ
ーがコストの大きな部分を占めることは周知であるが、
これもカラーフィルターの製造において、歩留りが上が
らずコストが高いことが大きな要因である。
【0007】さらに、前記(1)〜(5)の各方法で製
造されたカラーフィルターのうち、フォトリソグラフィ
ー工程による(1)、(2)及び(5)の方法で得られ
たものはリソグラフィーによって基体や形成されたカラ
ーフィルター層の表面には凹凸が形成され、印刷の技術
を応用した(3)及び(4)の方法で得られたものはイ
ンク層の表面に不均一な部分があり、いずれも表面の平
滑性に問題があり、このため、上部に簡単な保護層を形
成しても、保護層の厚みではその凹凸を充分には緩和で
きず、平滑化処理を行わなければ、理想的な平滑性が達
成されないのが現状であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、フォ
トリソグラフィーを使用することなく、工程数も少な
く、しかも、高解像度で制御性も高いカラーフィルター
の製造方法を提供することである。また、微細で複雑な
画素配置であっても対応でき、ブラックマトリックスの
形成が容易で、大量生産可能な簡便なカラーフィルター
の製造方法及びそれに用いる製造装置を提供することで
ある。さらに、本発明の他の目的は、微細で複雑な画素
配置に対応でき、且つ、表面の平滑性に優れ、フィルタ
ー内に透明な半導体膜を有する応用性の高いカラーフィ
ルターを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明者らは電着技術そのものを原理的なところ
から改めて見直した。そして、前述した水への溶解度が
大きく変化する分子について、その物性などを詳しく検
討した。この分子の溶解度変化による溶解或いは析出、
沈殿の相変化は、分子を電気化学的に直接酸化還元する
か、または分子が溶けている水溶液のpHを変化させる
ことで行える。これら電気化学的に相変化する材料を以
下、適宜、電着材料と称する。本発明のカラーフィルタ
ーの製造方法は、透明基板上に透明導電膜を形成し、そ
の上部に有機半導体膜又は無機半導体膜を形成した基板
を準備し、液体を保持しうる容器内に顔料とpHの変化
により化学的に溶解或いは析出・沈降する電着材料を含
有する水系液体であって、前記電着材料がカルボキシル
基を有する水溶性スチレン樹脂であり、該水系液体中の
電着材料の、pHの変化に対する溶解特性が、電着材料
の析出状態が一定期間保持されるヒステリシス曲線を示
す水系液体を準備し、電流または電界を供与できる手段
を透明導電膜に接続した該基板を半導体薄膜が該水系液
体に浸漬されるよう固定するとともに、電極対の他方で
ある対向電極を合わせ持つ装置を該容器内に配置し、該
基板を透明基板上に光照射を行い、かつ前記電着材料を
含む水系液体に電着特性に影響を与えない酸性又はアル
カリ性物質を加えて水系液体中のpHを制御し前記透明
導電膜と対向電極との間の電圧が5V以下となるように
して、光照射による起電力が発生した部分に選択的電着
材料を含む電着膜を析出させて単色のカラーフィルター
を形成すること、を特徴とする。なお、本発明のカラー
フィルターの製造方法においては、半導体薄膜を水系液
体に浸漬させるだけでなく、半導体薄膜が水系液体に接
触するように配置させてもよい。すなわち、電着基板の
半導体膜が水系液体に少なくとも接触するように電着基
板を配置すればよい。
【0010】この方法によれば、電着材料を水系の液体
中に溶解、分散し、水系液体中に電極を浸して電圧を印
加すると、陽極側の電極上にこれらの電着材料からなる
電着膜が生成される。電着材料が無色あるいは淡色高分
子材料である場合には、この高分子中に顔料等の色材を
分散させて、溶液中に電極を浸し電圧を印加すると、陽
極側の電極上に色材を含んだ状態で高分子が析出して顔
料と高分子が混合された有色の電着膜が形成される。ま
た、電着材料自体が有色物質である場合には、そのまま
着色電着膜が形成されるが、その場合は特に色材を添加
する必要はなく、本発明において、「色材とpHの変化
により化学的に溶解或いは析出・沈降する電着材料」と
は、それ自体が色材となる染料からなる電着材料をも包
含するものとする。これらの電着膜は、逆電圧を印加す
るか、溶解度の高いpH(アニオン性電着材料ではpH
10〜13、カチオン性電着材料ではpH1〜4)の水
溶液に浸すことで、水溶液中に再溶出させることができ
る。なお、本発明において、「水系液体」とは電着材料
(染料、顔料、高分子化合物等)の全てもしくは一部が
水系媒体に溶解もしくは分散した水溶液もしくは水系分
散液を総称するものである。
【0011】前記電着膜形成には、ある一定以上の閾値
電圧が必要であり、電流が流れれば必ず電着膜が形成さ
れるわけではない。従って、バイアス電圧を印加してお
けば、外部から入力される電圧レベルは小さくても画像
を形成することがである。そこで、電着される基板に透
明な半導体層を形成し、この入力信号に光を使用すれば
所望する位置に任意の電着膜を形成することができる。
以下、このようにして形成した電着膜を光電着膜と呼
ぶ。ここで、半導体層への光照射による起電力と、透明
電極に印加するバイアス電圧の総和により電着材料が電
着膜を形成すればよいのであるが、バイアス電圧の印加
は光起電力に応じて任意に調整すればよく、例えば、半
導体の光起電力が電着膜を形成するに十分であれば透明
電極に印加するバイアス電圧は省略することもできる。
【0012】本発明者らがここで提案する光電着膜を利
用したカラーフィルター製造技術は、上記知見に基づく
ものであり、その画像形成方法の概要は有機あるいは無
機の透明な半導体を基板として利用し、光を照射するこ
とで水溶液中の色材を含む(或いは兼ねる)電着材料を
半導体基板上に色素電着膜の形で析出させることで画像
を形成するため、従来電着法によるカラーフィルターの
形成法で必要であった予めパーターニングされた透明導
電膜が不要であり、フォトリソグラフィの工程なしに任
意の画像パターンを形成できる。
【0013】本発明に係る多色のカラーフィルター層
は、透明電極上に透明な半導体薄膜を形成し、カラーフ
ィルター形成材料を含む電着溶液中で、透明電極にバイ
アス電圧を加えておき、さらに光を照射して光起電力を
発生させることによって、基板近傍のpHを変化させ
て、高分子または色素分子のpHによる溶解度の違いを
利用した電着膜を光照射部に選択的に薄膜を形成し、こ
の工程を複数回繰り返すことにより形成できる。例え
ば、色材を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)として
3回繰り返すことでフルカラーのカラーフィルターが達
成される。
【0014】本発明のカラーフィルターの製造方法によ
れば、透明な半導体薄膜と電着溶液とのショトキー接
合、あるいは透明な半導体薄膜自身の、pn接合あるい
はpin接合を利用することで高解像度の光電着膜を形
成しうる。
【0015】さらに、本発明のカラーフィルターの製造
方法を応用すれば、カラーフィルター層を形成した後、
ブラックマトリックス形成材料を含む電着液中で、電圧
を印加することによって(この時、光はあっても無くて
もよい)、すでに形成されたカラーフィルター層の電気
抵抗が高いために、印加電圧の調整により、カラーフィ
ルター層の未形成部分のみに選択的に電着材料を含むブ
ラックマトリックスが形成されることになり、ブラック
マトリックスが簡便に形成できる。なお、ブラックマト
リックスは電着により形成する方法に限るわけではな
く、紫外線硬化樹脂を使って形成することもできる。
【0016】また、本発明のカラーフィルターは、透明
基板上に透明導電性層、透明な有機半導体層又は無機半
導体層、着色成分及びpHの変化により化学的に溶解或
いは析出・沈降する高分子を含有する電着材料により形
成された有色電着膜層を順次、積層してなることを特徴
とする。この有色電着膜層を色調を変えて複数設けるこ
とにより多色カラーフィルターとしてもよく、カラーフ
ィルター層に加えて、ブラックマトリックスを備えてい
てもよい。このカラーフィルターは、電着材料により、
好ましくは光起電力を利用して設けられるため、得られ
るカラーフィルターの表面は極めて平滑であり、優れた
表面特性を有する。さらに、基体に半導体層を有してい
うることもあり、このカラーフィルターの表面上に直接
電子デバイスを形成しうるなど、応用範囲がひろいとい
う利点を有する。
【発明の実施の形態】
【0017】以下、本発明をさらに詳細に説明する。ま
ず、アルカリ性あるいは酸性等のpHの変化や電気化学
的な変化により溶解度が変化し、溶解、或いは析出、沈
殿する分子(電着材料)が必要である。電着材料は色素
自身であるか、あるいは透明な高分子がアルカリ性ある
いは酸性で析出する性質を持ち、色材をこの高分子とと
もに分散させて使用してもよい。色材を高分子に分散さ
せて使用する場合には、染料だけではなく、顔料も使用
できる。高い耐光性が要求される部位に用いるカラーフ
ィルターの場合には、水性高分子に顔料を分散させたも
のを利用するほうが望ましい。
【0018】このような電気化学的な条件の変化により
溶解或いは析出、沈殿の相変化を起こす特性をもつ化合
物としては、例えば、色素材料としては、pH4以上で
は還元状態をとり水に溶解するが、pH4未満の領域で
は酸化されて中性状態となり析出、沈殿するフルオレセ
イン系の色素であるローズベンガルやエオシン、また、
構造変化を伴わなくても溶液の水素イオン濃度(pH)
によって溶解度が大きく変化するカルボキシル基をもっ
た色素材料(具体的には、耐水性改良インックジェット
染料が挙げられ、これはpH6以上では水に溶けるがそ
れ以下では沈殿する)等が挙げられる。また、高分子材
料としては、pHが6以上では水に溶けるが、それ以下
では沈殿するカルボキシル基を持った高分子の一種であ
る特定の水溶性アクリル樹脂等が挙げられる。また、そ
のほかにも、キノンイミン染料の一つであるオキサジン
系の塩基性染料Cathilon Pure Blue
5GH(C.I.Basic Blue 3)やチアジ
ン系の塩基性染料メチレンブルー(C.I.Basic
Blue 9)はpHが10以下では酸化状態を取り
発色しているがそれ以上になると還元されて不溶化し析
出する。これらの色素を純水中に溶解し、溶液中に電極
を浸し電圧を印加すると、陰極側の電極上にこれらの色
素分子からなる電着膜が生成される。これらの色素電着
膜は、逆電圧を印加するかpH8以下の水溶液に浸すこ
とで、元に戻って水溶液中に再溶出する。
【0019】これら電気化学的に相変化する材料を以
下、適宜、電着材料と称する。電着材料を純水中に溶解
し、溶液中に電極を浸して電圧を印加すると、陽極側の
電極上にこれらの電着材料からなる電着膜が生成され
る。電着材料が有色物質である場合には、そのまま着色
電着膜が形成され、無色あるいは淡色高分子材料である
場合には、この高分子中に顔料を分散させて、溶液中に
電極を浸し電圧を印加すると、陽極側の電極上に顔料及
び高分子が析出して顔料と高分子が混合された電着膜が
形成される。これらの電着膜は、逆電圧を印加するか、
溶解度の高いpH(アニオン性電着材料ではpH10〜
13、カチオン性電着材料ではpH1〜4)の水溶液に
浸すことで、水溶液中に再溶出させることができる。前
記電着膜形成には、ある一定以上の閾値電圧が必要であ
り、電流が流れれば必ず電着膜が形成されるわけではな
い。従って、バイアス電圧を印加しておけば、外部から
入力される電圧レベルは小さくても画像を形成すること
がである。そこで、電着される基板に半導体を用いて、
この入力信号に光を使用すれば所望する位置に任意の電
着膜を形成することができる。以下、このようにして形
成した電着膜を光電着膜と呼ぶ。
【0020】このような光電着膜を形成しうる化合物の
一例として、酸性染料で色素自身が電着形成能力があ
る、ゼネカ社製のPro Jet Farst Yel
low2を例にとって説明する。この染料は、純水(p
H6〜8)に容易に溶解し、アニオンとして水溶液中に
存在しているがpHが6以下になると不溶化して析出す
る性質を持つ。このPro Jet farst Ye
llow2の水溶液中に白金電極を浸し通電すると、陽
極付近では水溶液中のOH- イオンが消費されてO2
なり、水素イオンが増えてpHが低下する。これは、陽
極付近でホール(p)とOH- イオンとが結び付く次の
ような反応が起こるためである。 2OH- +2p+ → 1/2(O2 )+H2 O この反応が起こるには、一定の電圧が必要であり、反応
の進行に伴って水溶液中の水素イオン濃度が増えてpH
が低下するのである。従って、ある一定以上の電圧を印
加すると、電極の陽極側ではPro Jet fars
t Yellow2の溶解度が低下して不溶化し薄膜が
形成されるのである。
【0021】本発明はこの一定の閾値電圧を得るのに半
導体に光を照射して生じる光起電力を利用するものであ
る。このような、光起電力を利用する試みは今までいろ
いろな検討がなされてきた。たとえば、A.Fujis
hima, K.HondaNature Vol.2
38,p37,(1972)ではn型半導体のTiO2
に光を照射して水の電気分解を行った。また、フォトエ
レクトロクロミズムの研究に関連して、Si基板上に光
を照射してピロールを電気化学重合し、ドーピング・脱
ドーピングで画像形成を行った例がH. Yoneya
maらによりJ. Electrochem.So
c.,p2414,(1985)に報告されている。ま
た、本発明者らも、導電性高分子のドーピング・脱ドー
ピングに色素を用い、光で画像形成する方法を特許とし
て先に出願した。一方、導電性高分子を用いることなく
色素のみで電着膜を形成することも可能であるが、電着
膜形成に必要な電圧は、導電性高分子を用いる場合に比
較して大きくなる。一方、光起電力はSiでたかだか
0.6Vであり、画像形成するには光起電力だけでは不
十分である。従って、バイアス電圧を印加してかさ上げ
するなどの方法が考えられるが、それでも一定の電圧
(使用する半導体のバンドギャップに依存した電圧)以
上になると、光起電力の形成に必要な半導体と溶液の間
のショトキーバリアーが壊れてしまうという問題があ
り、印加できるバイアス電圧には限界がある。このた
め、光起電力を用いて物質の酸化還元を利用する水溶液
中での画像形成は、1.0V以下で酸化還元するポリピ
ロールなどの導電性高分子の光重合反応を使うものなど
に限られていた。ところが、本発明者らは上記の分子の
pHによる溶解度の違いを画像形成に利用するため、低
い電圧で有色高分子層の形成が可能であり、種々の半導
体を用いた光起電力による電着膜により着色画像形成が
できる、即ち、カラーフィルターの着色膜の形成が可能
となるのである。
【0022】透明な高分子の電着材料としては、分子内
に疎水基と親水基を併せ持ち、該高分子を構成するモノ
マ−単位の疎水基数が親水基と疎水基の総数の割合の4
0%から80%の範囲であり、親水基部分の50%以上
がpHの変化により親水基から疎水基に可逆的に変化で
きる特性を有し、且つ、酸価が30〜600である共重
合体を用いることが、析出性および形成された電着膜の
保持性の観点から好ましく、これに微粒子色材を併用す
ることにより、耐光性に優れた着色層を形成することが
できる。また、電着材料として、先に述べたように、分
子内にpHを変化させることにより析出・沈降する単位
と、色材単位とを併せ持つ化合物を用いることもでき
る。
【0023】次に、本発明のカラーフィルターの基体に
ついて述べる。本発明においては、カラーフィルターの
形成に光起電力を用いることから、基体は透明であるこ
とを要する。従って、基体は半導体の基体としても好適
に使用しうるガラス基体が好ましい。ガラス基体上にま
ず、透明な導電層を形成するが、この導電層は公知のも
のを任意に使用することができ、例えば、汎用のITO
膜を形成すればよい。
【0024】この透明な導電層上に透明な有機もしくは
無機の半導体層を形成する。この半導体層としては、と
くに、酸化チタンが好適である。この酸化チタンは吸収
が400nm以下にしかなく透明であり、カラーフィル
ター作製用の基板としてそのまま使用することが可能で
ある。また、近年、酸化チタンはゾル・ゲル法、スッパ
タリング法、電子ビーム蒸着法などいろいろな手法でn
型半導体として特性の良いものが得られている。ここで
好適な透明半導体であるTiO2 について述べる。Ti
2 は透明な酸化物半導体で紫外線を照射すると光起電
力が発生する。従って、基板の裏から紫外線を当てれば
透明な基板上に光電着膜を形成することができる。Ti
2 の製膜方法についてはいくつかの方法が知られてい
る。例えば、熱酸化膜法、スパッタリング法、エレクト
ロンビーム法(EB法)、ゾル・ゲル法などが有名であ
る。われわれは、EB法とゾル・ゲル法でTiO2 の製
膜を行った。ところが、通常の製膜法では効率が悪く電
着に必要な光電流が流れない。そこで、光電流の変換効
率を高めるために還元処理を行った。還元処理は、通常
は水素ガス中で550度程度で加熱するのが普通であ
る。例えば、Y.HamasakiらはJ.Elect
rochem. Soc. Vol.141, No
3.p660,1994では水素ガス中で約550度で
1時間程度で加熱している。ところが、我々は約360
度で10分間という低温かつ短時間の処理で十分な効果
を得た。これは、3%の水素混合窒素ガスを用いて1分
間に1リットルの流量を流しながら加熱することで達成
できたのである。
【0025】また、本発明のカラーフィルター用基体に
適用しうる半導体膜としては、基本的には光照射により
起電力を発生する透明薄膜基板であれば全て使用でき
る。具体的には、透明な半導体として有機半導体として
は、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン等が、無
機半導体としてはGa−N、ダイヤモンド、C−BN、
SiC、ZnSe、TiO2 、ZnOなどが挙げられ
る。半導体には、n型半導体とp型半導体があるが、本
発明ではいずれの半導体も使用可能である。さらに、p
n接合やpin接合を利用した積層構造にすれば、光電
流が良く流れ確実に起電力が得られてコントラストが良
くなりより望ましくなる。
【0026】次に、半導体と電着膜形成能力のある材料
との組合せであるが、これは使用する半導体の極性によ
って決まる。光起電力の形成には太陽電池として良く知
られているように、半導体と接触した界面に生じたショ
トキーバリアやpnあるいはpin接合を利用する。一
例として、図1の模式図によりn型半導体を例にとって
説明する。図1(A)の模式図はショトキー接合の場合
を示し、(B)の模式図はPIN接合の場合を示す。n
型半導体と溶液との間にショトキーバリアーがある時
に、半導体側を負にした場合には電流が流れる順方向で
あるが、逆に半導体側を正にした時には電流が流れな
い。ところが、半導体側を正にして電流が流れない状態
でも、光を照射するとエレクトロン・ホールペアが発生
し、ホールが溶液側に移動して電流が流れる。この場
合、半導体電極を正にするのであるから電着される材料
は負イオンでなければならない。従って、n型半導体と
アニオン性分子の組合せとなり、逆にp型半導体ではカ
チオンが電着されることになる。
【0027】一般に、半導体の光起電力は比較的大きな
Siでもせいぜい0.6Vしか得られない。ところが、
0.6Vで電着が可能な材料は限られている。そこで、
足りない電圧はバイアス電圧を印加して補う必要があ
る。印加できるバイアス電圧の上限は、ショトキーバリ
アーが維持される限界までである。ショトキーバリアー
が壊れると、光が当たってない領域も電流が流れて、半
導体基板の全領域に電着膜が形成され画像形成ができな
くなる。例えば、2.0Vで電着される材料であれば
1.5Vのバイアス電圧を印加して光を照射すると、半
導体の光起電力0.6Vを足して2.1Vとなり電着に
必要な閾値電圧を越えて、光が照射された領域のみ光電
着膜が形成される。
【0028】この電着膜を形成しうる物質(電着材料)
を選択する目安として電着材料のpHの変化に伴う溶解
特性を図2のグラフに示す。図2は、各種の材料の溶解
特性と溶液のpHとの関係を示すグラフである。材料の
中にはグラフA(実線で示す)のように、あるpH値を
境に急激に析出がおこるもの、グラフB(破線で示す)
の材料のようにpH値に係わらず溶解性が良好なもの、
グラフC(一点破線で示す)の材料のようにpH値に係
わらず不溶なものがあり、これらの特性は材料と用いる
溶媒(分散媒)との関係でも変化する。本発明において
はグラフAに示すような、あるpH値を境に急激に析出
がおこるものが好ましく、また、このグラフAが所謂ヒ
ステリシス曲線を示すように、pH値の変化に対して、
再溶解が急激に行われず、析出状態で一定期間保持され
るものが、形成された画像の安定性の観点からは理想的
である。従って、このような特性を有する電着材料と溶
媒との組み合わせを選択することが好ましい。
【0029】本発明のカラーフィルターの製造に利用さ
れているイオン性分子とは、アニオン性、カチオン性等
の分子からなり、pHの変化によって前記の如く溶解度
が変化する材料であれば公知のイオン性分子のいずれも
使用可能である。具体的には、トリフェニルメタンフタ
リド系、フェノサジン系、フェノチアジン系、フルオラ
ン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフ
タリド系、ジフェニルメタン系、クロメノピラゾール
系、ロイコオーラミン系、アゾメチン系、ローダミンラ
クタル系、ナフトラクタム系、トリアゼン系、トリアゾ
ールアゾ系、チアゾールアゾ系、アゾ系、オキサジン
系、チアジン系、ベンズチアゾールアゾ系、キノンイミ
ン系の化合物等が代表的な者として挙げられる。
【0030】これらの電着材料としては1種類の化合物
の使用のみならず、2種以上の化合物を組み合わせて用
いることもできる。例えば、(1)2種類以上のアニオ
ン性分子の混合物や2種類以上のカチオン性分子の混合
物のような同極性分子の混合物、(2)アニオン性分子
とカチオン性分子の混合物のような異極性分子の混合
物、(3)染料と顔料の混合物、(4)高分子と顔料の
混合物などさまざまな混合物の組み合わせで使用でき
る。2種以上の化合物がそれぞれ異なる色相を有する場
合には、混合色が得られることになる。混合物の場合に
は、単体でpHの変化によって溶解度が変化し薄膜が形
成されるという性質を持っている物質が少なくとも1種
類含まれる必要がある。この物質と併用することによ
り、単体では薄膜形成能力が無い材料であっても、膜形
成時には製膜能力がある材料に取り込まれた状態で電着
膜が形成されるため混合色が得られるのである。例え
ば、フルオレセイン系の色素であるローズベンガルやエ
オシンはpH4以上では還元状態をとり水に溶けるが、
それ以下では酸化されて中性状態となり沈殿する。同様
にジアゾ系のPro Jet Farst Yello
w2や、ある種の水溶性アクリル樹脂はpH6以上では
水に溶けるが、それ以下では沈殿する。これらの分子を
純水中に溶解し、溶液中に電極を浸し電圧を印加する
と、陽極側の電極上にこれらの分子からなる電着膜が生
成される。これらの電着膜は、逆電圧を印加するかpH
10〜12の水溶液に浸すことで、水溶液中に再溶出さ
せることができる。このように、ローズベンガルやエオ
シンやPro JetFarst Yellow2は単
体で電着膜形成能力がある材料であるが、これに電着膜
形成能力がない色素材料を混合すると混色の電着膜が得
られる。この時、混合する色素材料はイオン性があって
も無くても良い。また、組み合わせる物質の特性によっ
ては、イオンの極性が異なるもの同士も併用することが
できる。
【0031】2種類のイオンを混合した場合について考
えてみる。一般に、塩基性溶液と酸性溶液を混合すると
中和して錯体など別の析出物を生じて沈殿する。このた
め、2種類の色素を混合して混合色を出す場合には無極
性の顔料を使うか、同極性の材料を分散させるのが一般
的である。ところが、ある種の染料同士では、錯体が形
成されずイオンが共存した状態を取る。この場合には、
塩基性溶液と酸性溶液を混合しても析出物を抑えること
ができ、異なる極性のイオン同士の組み合わせでも使用
することができる。我々は、この性質を利用して2種類
の色素イオンを混合した場合について考察した。
【0032】まず第一に極性が同じ2種類のイオン、例
えばアニオン性で電着膜形成能力があるローズベンガル
(赤色)と同じアニオン性ではあるが電着膜形成能力が
ないブリリアントブルー(青色)を混合した混合溶液中
で、電気化学的に酸化させると電極には混合液の色と同
じ紫色の電着膜が形成される。これは、電着膜形成能力
があるローズベンガルにブリリアントブルーのイオンが
取り込まれて製膜されるからである。このように、極性
が同じ2種類のイオンを混合する場合には、いずれか1
種類のイオンに電着膜形成能力があればよい。
【0033】次に極性が異なる2種類のイオン、例えば
アニオン性で電着膜形成能力があるPro Jet F
arst Yellow2(黄色)とカチオン性で電着
膜形成能力があるCathilon Pure Blu
e 5GH(青色)を混合した混合溶液中で、電気化学
的に酸化させると電極には混合液の色と同じ緑色の電着
膜が形成される。逆に電気化学的に還元させると電極に
はCathilonPure Blue 5GH単体の
青色の電着膜が形成される。このようなイオン性化合物
の特性について説明するに、例えば、図3のグラフに示
すように一方の化合物がグラフA(実線で示す)のよう
に、中性領域では溶媒中に溶解しており、ある低pH値
において急激に析出がおき、他方の化合物はグラフB
(破線で示す)の材料のようにある中性領域では溶媒中
に溶解し、高pH値において急激に析出がおきる特性を
有する場合、中性領域では高い溶解性を保持し、特定p
H値において、溶解、析出の相変化を生じるため、併用
が可能となる。このような特性を有する場合、アニオン
性の色素溶液とカチオン性の色素溶液の混合液中で電気
化学反応をさせると印加する電圧の極性を変化させるだ
けで、同一の電極上に異なった色素の電着膜を形成でき
るのである。
【0034】次に顔料を色材として用いる場合には、電
着性のある透明あるいは淡色の高分子材料、例えば水溶
性アクリル樹脂や水溶性スチレン樹脂と組合せ、水溶液
中に分散させて使用すればよく、同じように電着材料が
電着膜を形成するとき、顔料を含む有色電着膜が得られ
るのである。
【0035】次に溶液の導電率とpHについて述べる。
導電率は我々の実験によると電着スピードいいかえれ
ば、電着量に関連しており、導電率が高くなればなるほ
ど一定時間に付着する電着膜の膜厚が厚くなり約100
mS/cm2 で飽和する。(図4参照)従って、色素イ
オンだけでは導電率が足りない場合には電着特性に影響
を与えない酸性又はアルカリ性物質、例えば、Na+
オンやCl- イオンを加えてやることで電着スピードを
コントロールすることができ、例えば、5V以下の電圧
の印加によっても電着膜の形成を可能にすることもでき
る。また、水溶液のpHも当然ながら電着膜の形成に影
響する。例えば、電着膜形成前には色素分子の溶解度が
飽和するような条件で電着膜形成を行えば膜形成後には
再溶解しにくい。ところが、未飽和状態の溶液のpHで
電着膜の形成を行うと、電着膜が形成されても、通電を
やめた途端に膜が再溶解し始める。従って、溶解度が飽
和するような溶液のpHで電着膜の形成を行うほうが望
ましい。
【0036】本発明のカラーフィルターの製造方法につ
いて、図5を参照して説明する。まず、前述のような透
明基板12上に透明導電膜14を形成し(図5
(A))、その上部に半導体薄膜16を形成した基板1
8(図5(B))を準備する。次に、図6に示す如き電
気化学で一般的な三極式の配置の装置を用いて、液体を
保持し得る容器20内に色材とpHの変化により化学的
に溶解或いは析出・沈降する電着材料とを含有する水系
液体22を満たして、さらに、容器20内に少なくとも
画像パターンに従って電流または電界を供与できる手段
24を透明導電膜14に接続した該基板18を半導体薄
膜(電極)16が該水系液体22に浸漬されるよう固定
するとともに、電極対の他方である対向電極26を同様
に容器20内に配置する。なお、前記のように、半導体
薄膜をその全部が水系液体に埋没するように配置させる
だけでなく、半導体薄膜が水系液体に接触するように配
置させてもよい。一方、飽和カロメル電極25を、基準
液体界面として飽和塩化カリウム水溶液を満たした容器
23に配置し、前記電着材料を含む容器22との間に塩
橋27を設けた。ここで、飽和カロメル電極25に対し
て、TiO2 電極16を作用電極として利用する。
【0037】該基板18の透明基板12上に所定のマス
クパターン28を配置して光照射を行うと、光照射によ
る起電力が発生した部分に選択的に電着材料と色材とを
含む有色電着膜30が析出し、これが単色のカラーフィ
ルターの着色層となる。この有色電着膜が形成された基
板18を水系液体22から取り出して溶媒を除去するこ
とにより、着色層30を固定化する。なお、ここではマ
スクパターン28を配置して起電力を発生させる部分を
決定したが、マスクパターン28を用いず、直接レーザ
ー光により書き込みを行うことにより、所定の部分に光
照射による起電力を発生させることもできる。
【0038】このとき色材の色調を、例えば、赤
(R)、緑(G)、青(B)に変えてこの工程(単色の
カラーフィルターを形成する工程)を繰り返すことによ
り、水系液体22とマスクパターン28とを変えて同様
の工程を行うのみで、多色のカラーフィルターを簡易に
形成することができる(図5(C))。さらに、後述す
るようにブラックマトリックス層32を形成し(図5
(D))、所望により保護層34を形成して、基板18
内に半導体膜16を含む多色カラーフィルターを得る
(図5(E))。
【0039】飽和カロメル電極電位は20℃、25℃、
30℃においてそれぞれ0.2444V、0.2412
V、0.23878Vであり、ほぼ接地電位=0Vに等
しい。画像を形成するに当たっては、飽和カロメル電極
を使用せず、容器(電解液)をアース接続して使用する
こともできるが、ワーク電極(析出側電極)の電位を明
確にするため、前記のように電解液を飽和カロメル電極
に接続し電解液表面の電位を飽和カロメル電極の標準電
位に設定してもよい。
【0040】次に、光電着膜作製用の露光装置について
述べる。カラーフィルターの背面からマスクパターンを
介して露光する必要があるため、露光光源は透明な半導
体に感度がある波長でなければならない。すると、40
0nm以下の光源で露光する必要があり、通常は水銀灯
や水銀キセノンランプ、He−CdレーザーやN2 レー
ザー、エキシマレーザーなどが好適に使われる。
【0041】次に、ブラックマトリックスの形成方法に
ついて述べる。ブラックマトリックスの形成は従来知ら
れてた一般的な方法はフォトリソグラフィを用いてカラ
ーフィルター層と同様にして形成する方法や紫外線硬化
樹脂を用いてカラーフィルター層の無い部分にのみブラ
ックマトリックスを形成する方法などがあるが、遮へい
を完全に行うためにはいろいろな工夫が必要であり、カ
ラーフィルターのコストアップの大きな要因である。と
ころが、我々の光電着法を用いてカラーフィルター層を
形成した場合には、光電着膜の未形成領域には半導体が
露出しており、この部分にブラックマトリックス用の電
着膜を容易に形成できる。さらに、一般に形成された電
着膜は有機薄膜であって絶縁性が高いので、形成された
カラーフィルター層の上部に、さらなる光電着膜を積層
して形成するのはむしろ困難である。従って、光電着法
を用いてカラーフィルター層を形成した後、ブラックマ
トリックス用の電解溶液中で電圧を印加すれば(この時
光はあっても無くてもよいため、特に露光は必要としな
い)、カラーフィルター層の未形成領域をブラックマト
リックスの電着膜がきれいに埋めるように形成される。
このように、光電着膜を利用すると、簡単にしかも低コ
ストでブラックマトリックスを形成できる。なお、同様
の作用により、紫外線硬化樹脂を用いた場合でもカラー
フィルター層の未形成領域にきれいに電着膜が形成され
るため、電着膜を形成する代わりに紫外線硬化樹脂を用
いても良い。ただし、導電性の高い電着材料を用いてカ
ラーフィルター層を形成した場合には、さらに電着膜を
積層することも可能であり、異なる機能のカラーフィル
ター層を形成する場合には、有用であるが、ブラックマ
トリックスを先に述べた方法により形成する場合には、
印加電圧等の条件に留意する必要がある。
【0042】このようにして、形成されたカラーフィル
ター層およびブラックマトリックスの上部には、平滑性
と耐久性向上のため、保護層を設けることができる。保
護層は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル
樹脂等の樹脂材料を用いて定法により形成することがで
きる。
【0043】前記の如き製造方法により得られた本発明
のカラーフィルターは、先の図5(D)に示すように、
透明基板上に透明導電性層、透明な有機半導体層又は無
機半導体層、着色成分及びpHの変化により化学的に溶
解或いは析出・沈降する電着材料により形成された有色
電着膜層を順次、積層してなることを特徴とし、色材と
して、顔料、染料を任意に使用しうるものであり、所望
の耐光性、色調を選択しうる。また、電着膜の形成条件
を調整することで、平滑な表面としうるため、平滑性に
優れたカラーフィルターを簡便な方法で低コストで製造
することができ、応用範囲が広いという利点を有する。
また、基板中に半導体膜を含み、表面平滑性が良好であ
るため、カラーフィルター表面に直接電子デバイスを形
成するような用途にも好適に使用しうる。
【0044】なお、本願明細書では、RGB及びブラッ
クマトリックスからなるフィルタの製造例を中心に説明
したが、着色材を増加してもしくは変えて、シアン、マ
ゼンタ、イエローの着色剤を含む電着材料を使用しての
CMY各色フィルタを作成しても良い。この場合は反射
型フィルタとして好適に使用できる。また、RGBフィ
ルタと組み合わせて3色以上、例えば6色フィルタ等の
形成も可能である。またブラックマトリックスは最後に
形成してもよいし、最初に形成してもよい。本発明の製
造方法によれば、透明基板、透明導電膜、無機もしくは
有機半導体膜、好ましくはRGB色分解フィルタ及びブ
ラックマトリックスを備える着色剤を含む透明電着着色
剤層がこの順序で積層されたカラーフィルタを製造する
ことができる。このカラーフィルタはそのままカラーフ
ィルタデバイスとして使用することもできるし、透明電
着着色剤層のみを転写して使用することもできる。
【0045】本発明のカラーフィルターの製造方法で
は、硬質の基板上に電気化学的な方法によりカラーフィ
ルター層を形成するため、欠陥が見いだされた場合で
も、所定部分のカラーフィルター層を除去し、新たなマ
スクパターンを用いて所望の部分のみ析出により新たな
層を形成することができ、欠陥補修が容易に行える。ま
た、不良品なども、形成されたフィルターの除去が簡単
に行え、基体が再使用可能であることから容易に再生す
ることができ、製造上の歩留りが飛躍的に向上し、廃棄
物の発生が少ないという利点も有する。
【実施例】
【0046】以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるも
のではない。 (実施例1)図7に示すように厚さ1mmのガラス基板
12にITOの透明導電膜14をスパッタリングで10
0nm製膜し、さらに250nmのTiO2 16を製膜
する。つぎに、TiO2 16の光電流特性を上げるため
に還元処理を行う。還元処理は、3%の水素ガスが混合
された純窒素ガス中で350度で10分間アニールする
ことで行った。これを、図6に示した装置を用いて電気
化学で一般的な三極式の配置において、電着材料として
のスチレンーアクリル酸共重合体(分子量13,00
0、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比65%、酸価
150)と色材としてのアゾ系赤色超微粒子顔料を固形
分比率で1対1に分散させた顔料を含む水溶液22中
で、飽和カロメル電極25に対しTiO2 電極16を作
用電極として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の
裏側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365
nmの光強度50mW/cm2 )をフォトマスク28を
介して10秒間光を照射したところ、TiO2 16表面
に光が照射された領域だけレッドのフィルターパターン
が形成された。このフィルターパターンを乾燥して、製
膜を確実に行った。
【0047】次に、スチレンーアクリル酸共重合体(分
子量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル
比65%、酸価150)とフタロシアニングリーン系超
微粒子顔料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含
む水溶液中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作
用電極として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の
裏側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365
nmの光強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介し
て10秒間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照
射された領域だけグリーンのフィルターパターンが形成
された。同様に、スチレンーアクリル酸共重合体(分子
量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比
65%、酸価150)とフタロシアニンブルー系超微粒
子顔料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含む水
溶液中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作用電
極として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の裏側
から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365nm
の光強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介して1
0秒間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照射さ
れた領域だけブルーのフィルターパターンが形成され
て、カラーフィルター層が形成された。
【0048】各カラーフィルター層が固定化された後、
純水で洗浄し、スチレンーアクリル酸共重合体(分子量
13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比6
5%、酸価150)とカーボンブラック粉末(平均粒子
径80nm)を固形分比率で1対1に分散させた顔料を
含む水溶液中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を
作用電極として利用し、作用電極を2.0Vにして電圧
を印加したところ、カラーフィルター層の無い領域のみ
にカーボンブラックを含む薄膜が形成され、ブラックマ
トリックスを形成できた。洗浄した後その上部に、保護
層をコーティングしてカラーフィルターを得た。このカ
ラーフィルターの表面を観察したところ、きわめて平滑
であり、一般のカラーフィルターとして好適に使用しう
るほか、このカラーフィルター上に直接電子デバイスを
形成する目的にも使用しうることがわかった。
【0049】(実施例2)図7に示すように厚さ1mm
のガラス基板にITOの透明導電膜をスパッタリングで
100nm製膜し、さらに250nmのTiO2 を製膜
する。つぎに、TiO2 の光電流特性を上げるために還
元処理を行う。還元処理は、3%の水素ガスが混合され
た純窒素ガス中で350度で10分間アニールすること
を行った。これを、実施例1と同様に電気化学で一般的
な三極式の配置において、スチレンーアクリル酸共重合
体(分子量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)
のモル比65%、酸価150)とアゾ系赤色超微粒子顔
料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含む水溶液
中で、飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作用電極
として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の裏側か
ら水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365nmの
光強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介して10
秒間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照射され
た領域だけレッドのフィルターパターンが形成された。
【0050】次に、スチレンーアクリル酸共重合体(分
子量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル
比65%、酸価150)とフタロシアニングリーン系超
微粒子顔料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含
む水溶液中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作
用電極として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の
裏側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365
nmの光強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介し
て10秒間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照
射された領域だけグリーンのフィルターパターンが形成
された。同様に、スチレンーアクリル酸共重合体(分子
量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比
65%、酸価150)とフタロシアニンブルー系超微粒
子顔料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含む水
溶液中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作用電
極として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の裏側
から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365nm
の光強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介して1
0秒間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照射さ
れた領域だけブルーのフィルターパターンが形成され
て、カラーフィルター層が形成された。
【0051】次に、形成されたカラーフィルター層を純
水で洗浄した後、スチレンーアクリル酸共重合体(分子
量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比
65%、酸価150)とカーボンブラック粉末(平均粒
子径80nm)を固形分比率で1対1に分散させた顔料
を含む水溶液中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極
を作用電極として利用し、作用電極を1.6Vにして基
板の裏側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長3
65nmの光強度50mW/cm2 )を全面に10秒間
光を照射したところ、カラーフィルター層の未形成領域
だけカーボンブラックを含む共重合体薄膜が形成され、
ブラックマトリックスとなった。洗浄した後その上部
に、保護層をコーティングしてカラーフィルターを得
た。本実施例においては、ブラックマトリックスの形成
に水銀キセノンランプの全面照射を用いたが、光照射を
用いず電圧を印加した実施例1と同様の良好なブラック
マトリックスが形成された。
【0052】(実施例3)図7に示すように厚さ1mm
のガラス基板にITOの透明導電膜をスパッタリングで
100nm製膜し、ITO薄膜上にゾル・ゲル法により
250nmTiO 2 を製膜する。製膜はITO基板上に
スピンコート法でTiO2 のアルコキシド(日本曹達
製、アトロンNTi−092)を回転速度1500回
転、20秒間で製膜したあと、約500度で1時間加熱
すればTiO2 の膜が形成される。還元処理は、実施例
1と同様に3%の水素ガスが混合された純窒素ガス中で
350度で10分間アニールすることを行った。これ
を、図6に示したように実施例1と同様な電気化学で一
般的な三極式の配置において、スチレンーアクリル酸共
重合体(分子量13,000、疎水基/(親水基+疎水
基)のモル比65%、酸価150)とアゾ系赤色超微粒
子顔料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含む水
溶液中で、飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作用
電極として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の裏
側から水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365n
mの光強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介して
10秒間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照射
された領域だけレッドのフィルターパターンが形成され
た。次に、スチレンーアクリル酸共重合体(分子量1
3,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比65
%、酸価150)とフタロシアニングリーン系超微粒子
顔料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含む水溶
液中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作用電極
として利用し、作用電極を1.7Vにして基板の裏側か
ら水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365nmの
光強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介して10
秒間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照射され
た領域だけグリーンのフィルターパターンが形成され
た。同様に、スチレンーアクリル酸共重合体(分子量1
3,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比65
%、酸価150)とフタロシアニンブルー系超微粒子顔
料を固形分比率で1対1に分散させた顔料を含む水溶液
中で飽和カロメル電極に対しTiO2 電極を作用電極と
して利用し、作用電極を1.7Vにして基板の裏側から
水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365nmの光
強度50mW/cm2 )をフォトマスクを介して10秒
間光を照射したところ、TiO2 表面に光が照射された
領域だけブルーのフィルターパターンが形成されて、カ
ラーフィルター層が形成された。次に、形成されたカラ
ーフィルター層を純水で洗浄した後、スチレンーアクリ
ル酸共重合体(分子量13,000、疎水基/(親水基
+疎水基)のモル比65%、酸価150)とカーボンブ
ラック粉末(平均粒子径80nm)を固形分比率で1対
1に分散させた顔料を含む水溶液中で飽和カロメル電極
に対しTiO2 電極を作用電極として利用し、作用電極
を1.6Vにして基板の裏側から水銀キセノンランプ
(山下電装製、波長365nmの光強度50mW/cm
2 )を全面に10秒間光を照射したところ、カラーフィ
ルター層の未形成領域だけカーボンブラックを含む共重
合体薄膜が形成され、ブラックマトリックスとなった。
洗浄した後その上部に、保護層をコーティングしてカラ
ーフィルターを得た。本実施例では、ゾル・ゲル法によ
りTiO2 を製膜したが、スパッタリング法で製膜した
場合と同様に、良好なカラーフィルターが得られた。
【0053】(実施例4)図7に示すように厚さ1mm
のガラス基板にITOの透明導電膜をスパッタリングで
100nm製膜し、ITO薄膜上にゾル・ゲル法により
250nmTiO 2 を製膜する。製膜はITO基板上に
スピンコート法でTiO2 のアルコキシド(日本曹達
製、アトロンNTi−092)を回転速度1500回
転、20秒間で製膜したあと、約500度で1時間加熱
すればTiO2 の膜が形成される。還元処理は、実施例
1と同様に3%の水素ガスが混合された純窒素ガス中で
350度で10分間アニールすることを行った。これ
を、図6に示したように電気化学で一般的な三極式の配
置において、スチレンーアクリル酸共重合体(分子量1
3,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比65
%、酸価150)とアゾ系赤色超微粒子顔料を固形分比
率で1対1に分散させた顔料を含む水溶液中で、飽和カ
ロメル電極に対しTiO2 電極を作用電極として利用
し、作用電極を1.7Vにして基板の裏側から水銀キセ
ノンランプ(山下電装製、波長365nmの光強度50
mW/cm2 )をフォトマスクを介して10秒間光を照
射したところ、TiO2 表面に光が照射された領域だけ
レッドのフィルターパターンが形成された。次に、スチ
レンーアクリル酸共重合体(分子量13,000、疎水
基/(親水基+疎水基)のモル比65%、酸価150)
とフタロシアニングリーン系超微粒子顔料を固形分比率
で1対1に分散させた顔料を含む水溶液中で飽和カロメ
ル電極に対しTiO2 電極を作用電極として利用し、作
用電極を1.7Vにして基板の裏側から水銀キセノンラ
ンプ(山下電装製、波長365nmの光強度50mW/
cm2 )をフォトマスクを介して10秒間光を照射した
ところ、TiO2 表面に光が照射された領域だけグリー
ンのフィルターパターンが形成された。同様に、スチレ
ンーアクリル酸共重合体(分子量13,000、疎水基
/(親水基+疎水基)のモル比65%、酸価150)と
フタロシアニンブルー系超微粒子顔料を固形分比率で1
対1に分散させた顔料を含む水溶液中で飽和カロメル電
極に対しTiO2電極を作用電極として利用し、作用電
極を1.7Vにして基板の裏側から水銀キセノンランプ
(山下電装製、波長365nmの光強度50mW/cm
2)をフォトマスクを介して10秒間光を照射したとこ
ろ、TiO2 表面に光が照射された領域だけブルーのフ
ィルターパターンが形成されて、カラーフィルター層が
形成された。
【0054】形成されたカラーフィルター層を純水で洗
浄した後、カーボンブラック粉末(平均粒子径80n
m)を分散させた紫外線硬化樹脂溶液に接触させ、基板
の裏側からUV光を照射したところ、カラーフィルター
層の未形成領域だけ硬化したカーボンの樹脂薄膜が形成
され、ブラックマトリックスを形成できた。その後、洗
浄した後で上部に保護層をコーティングしてカラーフィ
ルターを得た。本実施例においては、ブラックマトリッ
クスの形成に紫外線硬化樹脂溶液を用いたが、電着材料
を用いた前記各実施例と同様の良好なブラックマトリッ
クスが形成された。
【0055】(実施例5)図7に示すように厚さ1mm
のガラス基板にITOの透明導電膜をスパッタリングで
100nm製膜し、ITO薄膜上にゾル・ゲル法により
250nmTiO 2 を製膜する。製膜はITO基板上に
スピンコート法でTiO2 のアルコキシド(日本曹達
製、アトロンNTi−092)を回転速度1500回
転、20秒間で製膜したあと、約500度で1時間加熱
すればTiO2 の膜が形成される。還元処理は、実施例
1と同様に3%の水素ガスが混合された純窒素ガス中で
350度で10分間アニールすることを行った。これ
を、図6に示したように電気化学で一般的な三極式の配
置において、アゾ系赤色染料を含む水溶液中で、飽和カ
ロメル電極に対しTiO2 電極を作用電極として利用
し、作用電極を2.0Vにして基板の裏側から水銀キセ
ノンランプ(山下電装製、波長365nmの光強度50
mW/cm2 )をフォトマスクを通して10秒間光を照
射したところ、TiO2表面に光が照射された領域だけ
レッドのフィルターパターンが形成された。次に、スチ
レン−アクリル酸共重合体(分子量13,000、疎水
基/(親水基+疎水基)のモル比65%、酸価150)
とCathilon Pure Blue5GHを固形
分比率で1対1に分散させた染料を含む水溶液中で飽和
カロメル電極に対しTiO2 電極を作用電極として利用
し、作用電極を2.0Vにして基板の裏側から水銀キセ
ノンランプ(山下電装製、波長365nmの光強度50
mW/cm2 )をフォトマスクを通して10秒間光を照
射したところ、TiO2 表面に光が照射された領域だけ
ブルーのフィルターパターンが形成された。同様に、
0.01MのPro Jet Farst Yello
w2と0.01MのCathilon Pure Bl
ue 5GHを混合させた水溶液中で飽和カロメル電極
に対しTiO2 電極を作用電極として利用し、作用電極
を2.0Vにして基板の裏側から水銀キセノンランプ
(山下電装製、波長365nmの光強度50mW/cm
2 )をフォトマスクを通して10秒間光を照射したとこ
ろ、TiO2表面に光が照射された領域だけグリーンの
フィルターパターンが形成されて、カラーフィルター層
が形成された。次に、純水で洗浄した後、スチレン−ア
クリル酸共重合体(分子量13,000、疎水基/(親
水基+疎水基)のモル比65%、酸価150)とカーボ
ンブラック粉末(平均粒子径80nm)を固形分比率で
1対1に分散させた顔料を含む水溶液中で飽和カロメル
電極に対しTiO2 電極を作用電極として利用し、作用
電極を1.6Vにして基板の裏側から水銀キセノンラン
プ(山下電装製、波長365nmの光強度50mW/c
2 )を全面に10秒間光を照射したところ、カラーフ
ィルター層の無い領域だけカーボンの薄膜が覆いブラッ
クマトリックスを形成できた。洗浄した後その上部に、
保護層をコーティングしてカラーフィルターを得た。本
実施例においては、電着材料として電着膜を形成しうる
染料を用いて、レッドとグリーンのフィルターパターン
を形成した。この場合も、高分子電着材料と色材とを併
用した前記各実施例と同様に、良好なカラーフィルター
が得られた。
【0056】(実施例6)実施例4と同様の条件でTi
2 膜上にブラックマトリックスパタンに対応した露光
を行ってまず基板上にブラックマトリックスを形成し
た。ついでTiO2膜上のブラックマトリックスが形成
されていない領域に、実施例4と同様の条件で電解液と
露光パタンを変えてレッド、グリーン、ブルー各色フィ
ルタパターンを形成した。洗浄後、最上部に保護層をコ
ーテイングしてカラーフィルタを得た。本実施例におい
ては、先に基板上にブラックマトリックスを形成し、そ
の後、各色のフィルタパターンを形成したが、実施例1
4と同様の良好なカラーフィルタが得られた。
【0057】
【発明の効果】本発明のカラーフィルターの製造方法に
よれば、フォトリソグラフィーを使用することなく、工
程数も少なく、高解像度で制御性、平滑性が高いカラー
フィルターを、低コストで形成することができる。特
に、微細で複雑な画素配置であっても対応でき、ブラッ
クマトリックスの形成が容易で、大量生産可能であると
いう効果を奏する。それに用いるカラーフィルターの製
造装置によれば簡単な構造で複雑な画素配置に対応する
カラーフィルターが容易に製造できる。また、本発明の
カラーフィルターは、微細で複雑な画素配置に対応で
き、且つ、表面の平滑性に優れ、フィルター内に透明な
半導体膜を有する応用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はショトキー接合、(B)はPIN接合
の場合の半導体のエネルギーバンドを示す模式図であ
る。
【図2】電着材料のpHの変化に伴う溶解特性を示すグ
ラフである。
【図3】異なる極性を示し、かつ、併用可能な2つの電
着材料のpHの変化に伴う溶解特性を示すグラフであ
る。
【図4】導電率を変化させた時の電着材料の電着量の変
化を示すグラフである。
【図5】(A)〜(E)カラーフィルターの製造プロセ
スを示す概略断面図である。
【図6】カラーフィルターの製造に用いた装置の概略構
成図である。
【図7】カラーフィルターの基板となる透明n型半導体
の構造を示す模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 圷 英一 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリー ンテクなかい 富士ゼロックス株式会社 内 (72)発明者 夫 龍淳 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリー ンテクなかい 富士ゼロックス株式会社 内 (72)発明者 土屋 元彦 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリー ンテクなかい 富士ゼロックス株式会社 内 (56)参考文献 特開 平3−87702(JP,A) 特開 平1−246396(JP,A) 特開 平3−224661(JP,A) 特開 平3−263002(JP,A) 特開 平4−104101(JP,A)

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基板上に透明導電膜を形成し、その
    上部に有機半導体膜又は無機半導体膜を形成した基板を
    準備し、 液体を保持しうる容器内に顔料とpHの変化により化学
    的に溶解或いは析出・沈降する電着材料を含有する水系
    液体であって、前記電着材料がカルボキシル基を有する
    水溶性スチレン樹脂であり、該電着材料の水系液体中
    の、pHの変化に対する溶解特性が、電着材料の析出状
    態が一定期間保持されるヒステリシス曲線を示す水系液
    体を準備し、 電流または電界を供与できる手段を透明導電膜に接続し
    た該基板を半導体薄膜が該水系液体に浸漬されるよう固
    定するとともに、電極対の他方である対向電極を合わせ
    持つ装置を該容器内に配置し、 前記透明基板上に光照射を行い、かつ前記電着材料を含
    む水系液体に電着特性に影響を与えない酸性又はアルカ
    リ性物質を加えて水系液体中のpHを制御し前記透明導
    電膜と対向電極との間の電圧が5V以下となるようにし
    て、光照射による起電力が発生した部分に選択的に電着
    材料を含む電着膜を析出させて単色の着色膜を形成する
    こと、を特徴とするカラーフィルターの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記顔料の色調を変えて、複数の単色の
    着色膜を形成する工程を繰り返すことにより、多色のカ
    ラーフィルターを形成することを特徴とする請求項1記
    載のカラーフィルターの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記電着材料として、ブラックマトリッ
    クスを形成しうる顔料を含有し、請求項2に記載の方法
    により、複数色のカラーフィルターを形成した後、電圧
    を印加して、カラーフィルターを構成する複数色の電着
    膜の未形成部分に電着膜によるブラックマトリックスを
    形成する工程を含むことを特徴とするカラーフィルター
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記電着材料として、ブラックマトリッ
    クスを形成しうる顔料を含有し、請求項2に記載の方法
    により、複数色のカラーフィルターを形成した後、基体
    全面に光を照射しながら通電して、カラーフィルターを
    構成する複数色の電着膜の未形成部分に電着膜によるブ
    ラックマトリックスを形成することを特徴とするカラー
    フィルターの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記電着材料として、絶縁性の高い材料
    を使用し、カラーフィルター電着膜表面の絶縁性を利用
    して、カラーフィルター未形成領域のみに選択的にブラ
    ックマトリックス電着膜を形成することを特徴とする請
    求項3又は4に記載のカラーフィルターの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記基体上に形成された半導体薄膜がn
    型半導体からなることを特徴とする請求項1乃至5のい
    ずれか1項に記載のカラーフィルターの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記基体上に形成された半導体薄膜が、
    n型半導体とp型半導体を順に積層したpn接合、また
    はn型半導体、i型半導体、p型半導体を順に積層した
    pin接合を持つ半導体からなることを特徴とする請求
    項1乃至5のいずれか1項に記載のカラーフィルターの
    製造方法。
  8. 【請求項8】 前記n型半導体として酸化チタンを使用
    したことを特徴とする請求項6または7に記載のカラー
    フィルターの製造方法。
  9. 【請求項9】 透明基板上に透明導電膜を形成し、その
    上部に有機半導体薄膜又は無機半導体薄膜を形成した基
    板を準備し、 液体を保持し得る容器内に顔料とpHの変化により化学
    的に溶解或いは析出・沈降する電着材料を含有する水系
    液体であって、前記電着材料がカルボキシル基を有する
    水溶性スチレン樹脂であり、該水系液体中の電着材料
    の、pHの変化に対する溶解特性が、電着材料の析出状
    態が一定期間保持されるヒステリシス曲線を示す水系液
    体を準備し、 少なくとも画像パターンに従って電流または電界を供与
    できる手段を透明導電膜に接続した該基板を半導体薄膜
    が該水系液体に浸漬されるよう固定するとともに、電極
    対の他方である対向電極を合わせ持つ装置を該容器内に
    配置し、前記 透明基板上に光照射を行い、かつ前記電着材料を含
    む水系液体に電着特性に影響を与えない酸性又はアルカ
    リ性物質を加えて水系液体中のpHを制御し前記透明導
    電膜と対向電極との間の電圧が5V以下となるようにし
    て、光照射による起電力が発生した部分に選択的に電着
    材料を含む電着膜を析出させて単色の着色膜を形成する
    こと、を特徴とするカラーフィルターの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記電着材料としてブラックマトリッ
    クスを形成をしうる顔料を含有し、ブラックマトリック
    スを形成した後、複数の単色のカラーフィルターを形成
    する工程を繰り返す工程を含むことを特徴とする請求項
    1に記載のカラーフィルターの製造方法。
  11. 【請求項11】 透明基板上に透明導電膜を形成し、そ
    の上部に有機半導体膜又は無機半導体膜を形成した基板
    を準備し、 液体を保持しうる容器内に顔料とpHの変化により化学
    的に溶解或いは析出・沈降する電着材料を含有する水系
    液体であって、前記電着材料がカルボキシル基を有する
    水溶性スチレン樹脂であり、該水系液体中の電着材料
    の、pHの変化に対する溶解特性が、電着材料の析出状
    態が一定期間保持されるヒステリシス曲線を示す水系液
    体を準備し、 該基板を半導体膜が該水系液体に浸漬されるよう固定す
    るとともに、電極対の他方である対向電極を合わせ持つ
    装置を該容器内に配置し、 前記透明導電膜にバイアス電圧に印可しつつ該基板の透
    明基板上に光照射を行い、かつ前記電着材料を含む水系
    液体に電着特性に影響を与えない酸性又はアルカリ性物
    質を加えて水系液体中のpHを制御し前記透明導電膜と
    対向電極との間の電圧が5V以下となるようにして、光
    照射による起電力が発生した部分に選択的に電着材料を
    含む電着膜を析出させて単色のカラーフィルターを形成
    することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
  12. 【請求項12】 透明基板上に透明導電膜を形成し、そ
    の上部に有機半導体薄膜又は無機半導体薄膜を形成した
    基板と、顔料とpHの変化により化学的に溶解或いは析
    出・沈降する電着材料を含有する水系液体であって、前
    記電着材料がカルボキシル基を有する水溶性スチレン樹
    であり、該水系液体中の電着材料の、pHの変化に対
    する溶解特性が、電着材料の析出状態が一定期間保持さ
    れるヒステリシス曲線を示す水系液体を満たした容器
    と、少なくとも画像パターンに従って電流または電界を
    供与できる手段と、電極対の他方である対向電極と、該
    基板の透明基板上に光照射を行う光源とを備え、 該透明導電膜に該電流または電界を供与できる手段が接
    続され、該基板が半導体薄膜が該水系液体に浸漬される
    よう固定されていることを特徴とする請求項1ないし
    求項11のいずれか1項に記載のカラーフィルターの製
    造方法に用いるためのカラーフィルター製造装置。
  13. 【請求項13】 透明基板上に透明導電膜を形成し、そ
    の上部に有機半導体膜又は無機半導体膜を形成した電極
    対の一方として機能する電着基板の前記半導体膜を、
    とpHの変化により化学的に溶解或いは析出・沈降す
    る電着材料を含有する水系液体であって、前記電着材料
    がカルボキシル基を有する水溶性スチレン樹脂であり、
    該水系液体中の電着材料の、pHの変化に対する溶解特
    性が、電着材料の析出状態が一定期間保持されるヒステ
    リシス曲線を示す水系液体に少なくとも接触させ、電着
    基板と電極対の他方である対向電極との間に、水系液体
    を介して、電流または電界を供与するとともに、電着基
    板の半導体膜の選択領域に光照射を行い、かつ前記電着
    材料を含む水系液体に電着特性に影響を与えない酸性又
    はアルカリ性物質を加えて水系液体中のpHを制御し
    記透明導電膜と対向電極との間の電圧が5V以下となる
    ようにして、光照射による起電力が発生した部分に電着
    材料を含む電着膜を析出させて単色の着色膜を形成する
    ことを特徴とする、カラーフィルターの製造方法。
  14. 【請求項14】 顔料の色調を変えて色調の異なる着色
    膜を形成する工程を繰り返すことを特徴とする請求項
    に記載のカラーフィルターの製造方法。
  15. 【請求項15】 前記透明導電膜がITO膜であること
    を特徴とする請求項13または請求項14に記載のカラ
    ーフィルターの製造方法。
  16. 【請求項16】 前記無機半導体膜が酸化チタンである
    ことを特徴とする請求項13ないし請求項15のいずれ
    か1項に記載のカラーフィルターの製造方法。
  17. 【請求項17】 着色膜を形成した後、水系液体を除去
    することにより着色膜を固定化することを特徴とする請
    求項13ないし請求項16のいずれか1項に記載のカラ
    ーフィルターの製造方法。
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