JP3932725B2 - 着色膜の形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CCDカメラや液晶表示素子等の各種表示素子や表示パネル、及びカラーイメージセンサー等に使用されるカラーフィルタにおける着色膜の形成方法、及び薄膜トランジスタ(TFT)等の能動素子を備えた基板へのダイレクトな着色膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、カラーフィルタの製造方法としては、(1)染色法、(2)顔料分散法、(3)印刷法、(4)インクジェット法(5)電着法等が知られており、それぞれ固有の特徴及び利点を有するが、以下のような欠点がある。即ち、
第一の染色法は、パターニングにフォトリソグラフィ工程が必要であり、また染料を用いるため耐光性に劣り、製造工程の数も多いという欠点がある。
第二の顔料分散法も、フォトリソグラフィ工程によりパターニングし、かつ工程数も多いため、コストが高いという欠点がある。
第三の印刷法及び第四のインクジェット法は、いずれもフォトリソグラフィ工程を要しないが、前者は解像度や膜厚均一性の点で劣り、後者は、隣接フィルタ層間で混色を生じやすく、解像度、位置精度の点で劣る。
第五の電着法は、共通電極を形成するなど、フォトリソグラフィによるパターニング工程を要するため、パターン形状が限定され、TFT液晶用には使えないという欠点がある。
【0003】
また、一般に液晶用カラーフィルタは、カラーフィルタ層を形成するのみでは使えず、各色のフィルタセル間をブラックマトリックスで覆う必要があるが、該ブラックマトリックス形成にも、通常、フォトリソグラフィ法が用いられ、コストアップの大きな要因の1つとなっている。
【0004】
従って、フォトリソグラフィ工程を経ることなく、簡易な工程で低コストに、高解像度でパターン精度に優れたカラーフィルタを製造しうる製造方法が望まれており、近年では、映像情報及び通信情報を高解像度に表示しうるディスプレイへの要求が高まり、より高精細のパターン化されたカラーフィルタが求められている。
そこで、本発明者らは、前記問題点を解決するため光電着法を利用した簡易な工程により、高解像度でパターン精度に優れたカラーフィルタを安定に製造しうる技術について、既に出願中である(特願平9−135410号、特願平9−297466号等、特願平10−162170号、特願平10−197564号等)。
【0005】
ところが、上述の各カラーフィルタの製造方法により作製されたカラーフィルタは、そのカラーフィルタ膜の膜強度及び耐溶剤性が、十分満足のいく水準に達し得ないことがあり、例えば、製造時にフィルタ膜に傷を生じたり、フィルタ膜上への配向膜形成時にフィルタ材料の一部が溶出や変質を起こしたり、液晶材料と組合せた場合に、液晶材料の影響でカラーフィルタ膜に液晶材料の一部が溶出したり、或いは、クラックや膜剥がれ等の故障を生じ、表示画像の解像度や均一性を低下させるといった問題があった。
近年の、映像情報及び通信情報の表示画像の高解像度化に伴い、上記問題を回避しうる、より高い膜強度と耐溶剤性を有するカラーフィルタが求められている。
【0006】
一方、上記カラーフィルタを用いた、薄膜トランジスタ(TFT)液晶表示素子の場合、一般に、TFT駆動基板と、RGBカラーフィルタ基板との間に透明導電膜を介して液晶材料を挟持し、透明導電膜への電圧印加をON/OFF制御することにより、RGBカラーフィルタへの光の透過性を制御しカラー液晶表示を行う。しかし、TFT駆動基板とカラーフィルタ基板とは、異なる製造過程で作製されるため、最終的な両者の位置決めが難しく、また製造コストが高くなるといった問題がある。
【0007】
これを解決するため、例えば、特公平3−45804号公報では、TFT駆動基板の液晶制御用の透明電極を電着液中に浸し、TFT駆動電圧を利用して、透明電極上に直接着色膜(カラーフィルタ層)を形成する技術が提案されている。
この場合においても、その着色膜の膜強度及び耐溶剤性は、上述した各カラーフィルタの製造方法で作製したカラーフィルタと同様、十分満足のいく水準には達しておらず、表示画像の解像度を低下させるといった問題があった。
【0008】
上記の通り、膜強度のより高い、十分な耐溶剤性を有する着色膜をカラーフィルタ膜として備えた材料は、未だ提供されていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、簡易な工程で、パターン精度に優れた高い解像度が得られ、かつ膜強度が高く、耐溶剤性に優れた着色膜を形成しうる着色膜の形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 光透過性の基体上に少なくとも光透過性の導電膜を有する基板を、少なくとも色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程と、前記基板に、電気化学的に電着材料を析出させて選択的に着色電着膜を形成する工程と、を含む着色膜の形成方法であって、析出した前記電着材料が、少なくとも1種のラジカル発生剤又は酸発生剤を含有し、前記着色電着膜を形成する工程の後に、前記着色電着膜に熱処理又は光照射処理を施して、前記着色電着膜を硬膜させる硬膜工程を有することを特徴とする着色膜の形成方法である。
【0011】
<2> 電解液に接触させる工程が、光透過性の導電膜上に、さらに光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜を積層した基板の前記光半導体薄膜を、電解液に接触させる工程であり、着色電着膜を形成する工程が、前記基板を電解液中で光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程である前記<1>に記載の着色膜の形成方法である。
即ち、光透過性の基体上に、少なくとも光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜とをこの順に積層した基板の前記光半導体薄膜を、少なくとも色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程と、前記基板を電解液中で光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に前記電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程と、を含む着色膜の形成方法であって、前記電解液が、少なくとも1種のラジカル発生剤又は酸発生剤を含有することを特徴とする着色膜の形成方法である。
【0012】
<3> 電解液に接触させる工程が、光透過性の導電膜と接合する能動素子を備えた基板の前記光透過性の導電膜を電解液に接触させる工程であり、着色電着膜を形成する工程が、前記基板の能動素子を、電解液に前記光透過性の導電膜を接触させた状態で駆動することにより、前記光透過性の導電膜に、電解液が電気分解してプロトンを発生し、かつ実質的に膜形成性を低下させる気泡の発生のない電圧を印加して、該光透過性の導電膜上に電着材料を析出させ着色電着膜を形成する工程である前記<1>に記載の着色膜の形成方法である。
即ち、光透過性の基体上に、少なくとも光透過性の導電膜と該光透過性の導電膜に接合された能動素子とを備える基板の少なくとも前記光透過性の導電膜を、少なくとも色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程と、前記基板の能動素子を、電解液に前記光透過性の導電膜を接触させた状態で駆動することにより、前記光透過性の導電膜に、電解液が電気分解してプロトンを発生し、かつ実質的に膜形成性を低下させる気泡の発生のない電圧を印加して、前記光透過性の導電膜上に電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程と、を含む着色膜の形成方法であって、前記電解液が、少なくとも1種のラジカル発生剤又は酸発生剤を含有することを特徴とする着色膜の形成方法である。
【0013】
<4> 基板上に、選択的にブラックマトリックスを形成する工程を有する前記<1>〜<3>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
<5> ブラックマトリックスを形成する工程が、基板の少なくとも光半導体薄膜を、黒色の色材又は金属を含有する電着材料を含む電解液に接触させて光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に電着材料を析出させてブラックマトリックスを形成する工程である前記<4>に記載の着色膜の形成方法である。
【0014】
<6> ブラックマトリックスを形成する工程が、選択的に電極部分を形成した基板の光半導体薄膜を、黒色の色材又は金属を含有する電着材料を含む電解液に接触させ、電圧印加して前記電極部分にブラックマトリックスを形成する工程である前記<4>に記載の着色膜の形成方法である。
<7> 前記ブラックマトリックスを形成する工程で析出した電着材料が、少なくとも1種のラジカル発生剤又は酸発生剤を含有し、前記ブラックマトリックスを形成する工程の後に、形成された前記ブラックマトリックスに熱処理又は光照射処理を施して、前記ブラックマトリックスを硬膜させる硬膜工程を有する前記<5>又は<6>に記載の着色膜の形成方法である。
【0015】
<8> ラジカル発生剤及び酸発生剤が、熱ラジカル発生剤及び熱酸発生剤である前記<1>〜<7>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
<9> ラジカル発生剤及び酸発生剤が、トリハロメチル基含有トリアジン誘導体、オニウム酸化合物又はベンゾフェノン系化合物である前記<1>〜<8>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
<10> 電解液中における、ラジカル発生剤又は酸発生剤の含有量が、電解液の全固形分重量に対し、0.005〜20.0重量%である前記<1>〜<9>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
【0016】
<11> 着色電着膜を形成する工程及び/又はブラックマトリックスを形成する工程の後、50〜250℃の温度で熱処理する工程を有する前記<1>〜<10>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
<12> 電着材料が、カルボキシル基を有する化合物を含む前記<1>〜<11>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
<13> カルボキシル基を有する化合物が、疎水基と親水基を有する重合体であって、疎水基の数が疎水基と親水基の総数の40〜80%である前記<12>に記載の着色膜の形成方法である。
【0017】
<14> 重合体の親水基数の50%以上が、pHの変化により水溶性から非水溶性、或いは、この逆に可逆的に変化しうる前記<13>に記載の着色膜の形成方法である。
<15> 重合体の酸価が、60から200である前記<13>又は<14>に記載の着色膜の形成方法である。
<16> 重合体の数平均分子量が、6000〜25000である前記<13>〜<15>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
<17> 重合体が、ガラス転移点が80℃以下、流動開始点が180℃以下、分解点が150℃以上の重合体である前記<13>〜<16>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
【0018】
<18> 着色電着膜を形成する工程及びブラックマトリックスを形成する工程において、陽極と陰極若しくは参照電極との電極間の電位差が4V以下である前記<1>〜<17>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
<19> 着色電着膜を形成する工程において、電解液中に、電着特性に影響を与えないイオン解離性の塩を加えて、電解液の体積固有抵抗率を100〜105Ω・cmとする前記<1>〜<18>のいずれかに記載の着色膜の形成方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の着色膜の形成方法においては、ラジカル発生剤及び/又は酸発生剤を含有する電解液を用いて、着色電着膜やブラックマトリックスを形成する。
以下、本発明の着色膜の形成方法について詳細に説明する。
【0020】
<着色膜の形成方法>
本発明の着色膜の形成方法は、光透過性の基体上に少なくとも光透過性の導電膜を有する基板を、少なくとも色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程(以下、「接触工程」ということがある。)と、前記基板に、電気化学的に電着材料を析出させて選択的に着色電着膜を形成する工程(以下、「着色電着膜形成工程」ということがある。)と、着色電着膜形成工程後に、着色電着膜に熱処理又は光照射処理を施して、前記着色電着膜を硬膜させる硬膜工程とを有してなり、必要に応じて、ブラックマトリックスを形成する工程(以下、「ブラックマトリックス形成工程」ということがある。)等の他の工程を有してなる。
【0021】
−電解液−
まず、本発明の着色膜の形成方法に用いる電解液について説明する。
前記電解液としては、ラジカル発生剤又は酸発生剤の少なくとも1種を含有する電着材料を分散又は溶解させた水系溶媒を用いる。
前記ラジカル発生剤及び酸発生剤は、併用することもできる。
【0022】
−電着材料−
本発明の着色膜の形成方法に用いる電着材料としては、少なくとも溶液のpH変化に対応して溶解度が変化するイオン性分子と、電着膜を所望の色に着色するための染料、顔料、色素等の色材と、を含有し、さらにラジカル発生剤及び/又は酸発生剤を含有してなり、必要に応じて、他の成分を含有してなる。
前記色材自体は必ずしも電着能を有する必要はなく、イオン性分子が電着する際に、色材を取り込んで凝集、析出することにより着色電着膜等が形成されてもよい。また、色材自体がイオン性分子であって、電着能を有する場合は、電着材料は色材のみからなっていてもよい。ここで、色材として顔料を含有するとともに、イオン性高分子を含有させた電着材料を用いると、形成した着色電着膜の耐光性を向上させることができ、特に好ましい。
【0023】
−ラジカル発生剤、酸発生剤−
本発明においては、電極上に形成する着色電着膜やブラックマトリックスの膜性を強化する目的で、電解液中にラジカル発生剤や酸発生剤を含有させる。
着色電着膜やブラックマトリックスの形成時に電極上に析出した電着材料中にラジカル発生剤や酸発生剤を含ませ、着色電着膜形成工程やブラックマトリックス形成工程の終了後に熱処理や光照射等の処理を施すことにより、形成した着色電着膜及びブラックマトリックス膜の膜性、即ち、膜強度及び耐溶剤性を向上させることができる。
【0024】
具体的には、以下の通りである。即ち、
電解液中には、液のpH変化により電極上に析出して膜形成する高分子材料を含むが、該高分子材料としては一般にイオン性分子を用いるため、電圧の印加を終了した際、基板を電解液中から引き上げる際、又は引き上げた後に、電極上に形成された着色電着膜近傍では局所的にpHが徐々に上昇する傾向があり、成膜された電着材料が再び溶出し易くなる方向へ反応が進む。従って、基板への膜付着性や付着量が低下したり、膜が膨潤等して最終的に形成される膜の膜性は低下し、その膜強度や耐溶剤性が低下しやすくなる。
従って、形成する膜の膜性を高めるためには、基板への膜付着性の低下や膜の膨潤等を防止する必要がある。
【0025】
ここで、電解液中にラジカル発生剤を含有させた場合、形成した膜中にはラジカル発生剤が含有され、これに加熱処理や光照射等の処理を施すと、ラジカル発生剤よりラジカルが放出され、膜を形成するイオン性分子の重合反応を促進し、その重合度をより向上させることができる。従って、膜を構成するイオン性分子自体がより強く結合され、その結果、形成される着色電着膜、又はブラックマトリックスの膜強度及び耐溶剤性を向上させることができる。
【0026】
また、電解液中に酸発生剤を含有させた場合には、形成した膜中には酸発生剤が保持され、これに加熱処理等の処理を施すことにより、膜中に酸が発生してpH低下を伴い、可逆反応の進行をイオン性分子の析出方向とすることができる。従って、電極への着膜性及び膨潤等により軟化した膜の膜強度及び耐溶剤性を向上させることができる。
【0027】
従って、本発明の着色膜の形成方法においては、用いる電解液中にラジカル発生剤や酸発生剤を含有し、着色電着膜やブラックマトリックスを形成した後に、さらに後述する硬膜処理を設けることが好ましい。
【0028】
電解液中には、前記ラジカル発生剤及び酸発生剤の両者を含有させてもよいが、必ずしもその両者を含有させる必要はなく、少なくとも1種のラジカル発生剤、若しくは少なくとも1種の酸発生剤を含有すればよい。
前記ラジカル発生剤及び酸発生剤としては、公知のものの中から適宜選択でき、加熱によりラジカルや酸を発生するもの、光照射等によりラジカルや酸を発生するものなど、いずれの性質のものであってもよい。中でも、形成した膜中に均一にラジカル若しくは酸を発生させうる観点から、加熱により反応してラジカル若しくは酸を発生させうる、熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤が好ましい。
【0029】
前記ラジカル発生剤及び酸発生剤としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系化合物、トリハロメチル基含有トリアジン誘導体、オニウム塩化合物類等が好ましい。
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、4−{o−ブロム−p−N,N’−ジ(エトキシカルボニル)アミノフェニル}、2,6−ジ(トリクロロメチル)−S−トリアジン、7−「{4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−S−トリアジン−2−イル}アミノ」−3−フェニルクマリン等が挙げられる。
【0030】
前記トリハロメチル基含有トリアジン誘導体としては、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリコロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0031】
前記オニウム塩化合物類としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロオロアセネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネート、4−メトキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルヨードニウムトリフルオロアルセネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセネート等が挙げられる。
【0032】
上記のうち、電解液自体の長期での保存安定性の観点からは、酸発生剤を用いることがより好ましい。ラジカル発生剤を用いた場合、電解液中における反応性が活性化されることがあり、保存時における安定性の点から電解液中に多量に含有させることができなかったり、また、保存環境の影響を考慮しなければならなくなることがある。
【0033】
電解液中における、前記ラジカル発生剤又は酸発生剤の含有量としては、電解液中の全固形分重量に対し、0.005〜20.0重量%が好ましく、0.05〜4重量%がより好ましい。
前記含有量が、0.005重量%未満であると、十分な膜強度と耐溶剤性を有する着色電着膜、ブラックマトリックスを形成できないことがあり、20.0重量%を超えると、電解液の液性(粘度、液寿命、分散安定性等)の低下や劣化を招きやすくなることがある。
【0034】
前記イオン性分子としては、陰イオン解離性基を有するアニオン性分子であっても、陽イオン解離性基を有するカチオン性分子であってもよい。特に、後述の第一の態様においては、用いられる光半導体薄膜の極性に応じて選択される。
【0035】
いずれのイオン性分子を電着材料として選択するかは、イオン性分子が有するpHの変化に対応した溶解度の変化特性を目安にすることができる。本発明に用いられる電着材料は、溶液のpH変化に依存して、急激に溶解度が変化する性質を有するものが好ましい。例えば、溶液の±2.0のpH変化に対応して、より好ましくは、±1.0のpH変化に対応して状態変化(溶存状態→沈殿、又は沈殿→溶存状態)するものが好ましい。このような溶解度特性を有するイオン性分子を電着材料として用いれば、より迅速に電着膜を作製でき、また強い凝集力により耐水性に優れた電着膜を作製することができる。
さらに、電着材料として用いるイオン性分子は、pHの変化に対応する状態変化(溶存状態→析出の変化と析出→溶存状態の変化)にヒステリシスを示すものが好ましい。即ち、pHの減少又は増加に対応する析出状態への変化は急峻であり、かつpHの増加又は減少に対応する溶存状態への変化は緩慢であると、着色電着膜の安定性が向上するので好ましい。
【0036】
前記イオン性分子としては、例えば、陰イオン性解離基であるカルボキシル基等を有するアニオン性高分子化合物;陽イオン性解離基であるアミノ基、イミノ基等を有するカチオン性高分子化合物等が挙げられる。
本発明においては、電着材料として用いるイオン性分子としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、該カルボシキ基を有する化合物が疎水基と親水基とを有する重合体であることが好ましい。
上記のうち、イオン性解離基を有する親水性モノマー(親水ドメイン)と疎水性モノマー(疎水ドメイン)との共重合体が好ましく、中でも、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はブロック共重合体とグラフト共重合体若しくはランダム共重合体との混合物がより好ましい。さらに、基板として、光透過性の導電膜と接合する能動素子を備えた基板を用い、該能動素子を駆動する際の駆動電圧を利用して着色膜を形成する場合には、色材の分散性を向上させうる観点から、ブロック共重合体、又はブロック共重合体とグラフト共重合体との混合物が最も好ましい。
【0037】
前記ブロック共重合体としては、色材の分散性が良好である点で、疎水性モノマーをA、親水性モノマーをBとして表した場合、疎水性モノマーAよりなるブロック部分と、親水性モノマーBよりなるブロック部分とがAAA−BBBで表されるジブロック共重合体、BBB−AAA−BBBで表されるトリブロック共重合体が特に好ましい。また、グラフト共重合体としては、AAAAAAで表されるポリマー主鎖に、BBBBBBで表される複数の側鎖が結合したグラフト共重合体が特に好ましい。
【0038】
これは、上記のような導電膜と接合する能動素子を備えた基板を用いる場合には、色材としては主に顔料を用いるが、Aよりなる疎水性ブロック部が、疎水性を示す顔料表面に対する吸着基として作用すると同時に、顔料表面において高分子鎖が適当に絡み合い、適当な厚みを持つ高分子で覆われることにより、隣接する顔料同士の凝集を防止することができるためと考えられる。
この時、Bよりなる親水性ブロック部は溶媒である水と親和して、電解液中での顔料の分散安定性を補助するように作用する。従って、水不溶性の顔料は、互いに凝集することなく、安定に分散された状態で保持される。
【0039】
親水ドメインである、陰イオン性解離基を有する親水性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、無水マレイン酸、無水トリメリト酸、無水フタル酸、ヘミメリット酸、コハク酸、アジピン酸、プロピオル酸、プロピオン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー、及びこれらの誘導体が挙げられる。
中でも、メタクリル酸、アクリル酸及びこれらの誘導体が、これらをモノマーとするイオン性高分子は、pHの変化により状態変化が急峻であるとともに、水系液体への親水性も高い点で好ましい。
【0040】
陽イオン性解離基を有するモノマーとしては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アミン、オキサゾリン、アルキルアミン、アルキルイミン、ポリアミン、ポリイミン等のアミノ基又はイミノ基を有するモノマー等が挙げられる。
また、陽イオン性解離基を有するカチオン性高分子は、高分子にアミノ基、イミノ基等の陽イオン性解離基を導入したものであってもよい。
親水性モノマーは、その分子構造中に50〜75重量%の割合でイオン解離性基を含有するものが好ましい。また、親水性モノマーは、2種類以上を組合わせて用いてもよい。
【0041】
疎水性モノマー(疎水ドメイン)としては、例えば、エチレン、ブタジエン等のオレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル等、及びこれらの誘導体が挙げられる。
中でも、スチレン、α−メチルスチレン及びこれらの誘導体は、疎水化効率が高く、電着析出効率が良好である点、また親水性モノマーとの共重合の際の制御性が高い点で好ましい。特に、後述の第二の態様のように、導電膜と接合する能動素子を備えた基板を用いる場合には、印加電圧を切った後でも、再溶解されにくく、表面平滑で均一厚の着色電着膜を形成しうる点で好ましい。
尚、疎水性モノマーは、2種類以上を組合わせて用いてもよい。
【0042】
イオン性高分子を色材とともに使用する場合は、イオン性高分子は、透明な電着膜を形成し得るものが、色材の発色を妨げないので好ましい。例えば、水溶性アクリル樹脂が好ましい。
【0043】
上記より、pH変化による状態変化が急峻で、親水性も高い観点から、上記イオン性分子のうち、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体が特に好ましい。
【0044】
前記イオン性高分子としては、電着液の液安定性の観点からは、適度な親水性を有している必要があり、一方、電着膜の膜強度及び耐水性の観点からは、適度な疎水性を有している必要がある。
電着材料として用いるイオン性高分子に要求される疎水性と親水性のバランスは、例えば、以下のようなモノマー単位の疎水性基の数と、親水性基の数とで表すことができる。
即ち、イオン性高分子が、疎水性モノマーと親水性モノマーとの共重合体である場合、モノマー単位の疎水性基数と親水性基数との総和に対する疎水性基の数としては、40〜80%が好ましく、55〜70%がより好ましい。
前記疎水性基数の割合が、40%未満であると、電着膜の耐水性や膜強度が不十分となることがあり、80%を超えると、イオン性高分子の水系溶媒に対する親和性が低下し沈殿を生じたり、電着液の粘度が高くなりすぎて、均一な電着膜を形成できないことがある。一方、疎水性基の数が前記範囲にあると、水系溶媒との親和性も高く、電着液の液性が安定化するとともに、電着効率も高いので好ましい。
【0045】
一方、前記親水基としては、該親水基の数の50%以上が、pHの変化により水溶性から非水溶性、或いは、この逆に可逆的に変化しうる親水基であることが好ましい。
前記親水基の数が、50%未満であると、水に対する溶解度が低すぎて水に溶けなくなることがある。
【0046】
イオン性高分子の疎水性と親水性のバランスは、アニオン性高分子を用いる場合は、酸価によって示すこともできる。
アニオン性高分子の酸価は、電着特性が良好となる点で、60〜200が好ましく、70〜140が特に好ましい。
前記アニオン性高分子の酸価が、60未満であると、水系溶媒への親和性が低くなり、アニオン性高分子が沈殿したり、電着液の粘度が高くなりすぎて、均一な電着膜が形成できないことがあり、200を超えると、形成された電着膜の耐水性が低下したり、電着効率が低下することがある。
【0047】
前記イオン性分子の分子量としては、電着膜の膜特性等の観点から、数平均分子量が6.0×103〜2.5×104が好ましく、9.0×103〜2.0×104がより好ましい。
前記数平均分子量が、6.0×103未満であると、膜が不均一となり、耐水性が低下する結果、電着膜中にクラックが発生したり、電着膜が粉末化して、堅牢性の高い電着膜が得られないことがあり、2.5×104を超えると、水系溶媒との親和性が低下し、沈殿が生じたり、電着液の粘度が高すぎて電着膜が不均一となることがある。
【0048】
また、前記イオン性高分子は、ガラス転移点が80℃以下であり、流動開始点が180℃以下であり、分解点が150℃以上、好ましくは220℃以上であると、基板上に形成されたイオン性高分子からなる電着膜の膜性が良好になり、その後に施す着膜等による劣化を招き難くなる点で好ましい。
を別の画像保持基材上に熱転写する場合に、転写制御が容易となり好ましい。
【0049】
電着材料がイオン性の色材を含有してなる場合、該イオン性の色材としては、トリフェニルメタンフタリド系、フェノサジン系、フェノチアジン系、フルオレセイン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、ジフェニルメタン系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、アゾメチン系、ローダミンラクタル系、ナフトラクタム系、トリアゼン系、トリアゾールアゾ系、チアゾールアゾ系、アゾ系、オキサジン系、チアジン系、ベンズチアゾールアゾ系、キノンイミン系の染料、及びカルボキシル基、アミノ基、又はイミノ基を有する親水性染料等が挙げられる。
【0050】
但し、均一厚の膜を安定に形成しうる点から、顔料を用いることが特に好ましい。
前記顔料としては、汎用の公知の顔料を挙げることができ、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料等が挙げられる。
【0051】
電解液は、水系溶媒中に前記電着材料を溶解又は分散させて用いるが、水系溶媒とは、水を主成分とし、所望により本発明の効果を損なわない範囲でアルコール等の水と親和性のある他の溶剤や、種々の塩及び添加剤等を添加した溶媒をいう。
【0052】
本発明の着色膜の形成方法としては、ラジカル発生剤又は酸発生剤を含有する電解液を用い、該電解液に着色膜を形成しようとする基板を接触させ、電着法により、電気化学的に電着材料を析出させて着色膜を形成する方法であればよく、例えば、以下の第一の態様、又は第二の態様に示す形成方法であってもよい。
【0053】
−第一の態様−
まず、第一の態様について説明する。
前記第一の態様においては、光透過性の基体上に、少なくとも光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜とをこの順に積層した基板の前記光半導体薄膜を、色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程(接触工程)と、前記基板の前記光半導体薄膜を電解液中で光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に前記電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程(着色電着膜形成工程)と、前記着色電着膜に熱処理又は光照射処理を施して、前記着色電着膜を硬膜させる硬膜工程とを有してなり、必要に応じて、ブラックマトリックス形成工程を有してなる。
【0054】
[接触工程]
前記接触工程は、光透過性の基体上に、光透過性の導電膜及び光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜をこの順に積層した基板の、少なくとも前記光半導体薄膜を、上述の色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程である。
【0055】
前記基板の光半導体薄膜を電解液に接触させる際の、電解液に対する位置関係としては、任意の位置関係を適宜選択でき、例えば、基板全体を電解液中に浸漬して配置してもよいし、基板の一部、例えば、着色電着膜を形成する光半導体薄膜のみが接触するように配置してもよい。
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、少なくとも、着色電着膜を形成しようとする部分が電解液に接触するように配置し、着色電着膜を形成しようとする部分の裏側の表面(光半導体薄膜の設けられていない側の基体表面)は、電着液外に存在している態様が好ましい。
【0056】
一方、導電膜及び光半導体薄膜を形成した基板上に光照射して画像パターンを形成する場合、一般に、フォトマスクと、前記基板の光半導体薄膜表面とを密着させて、フォトマスク上から公知の光源により平行光を照射してもよい。
しかし、上記のように電着液中には色材等の、光を吸収しうる成分が含有されているため、フォトマスクを密着した面を電解液に接触して光照射しても所望の画像パターンを得ることはできない。従って、着色電着膜を形成しようとする光半導体薄膜の設けられていない側の基体表面(裏面)にフォトマスクを配置し、照射光が電解液を通過しないように裏面のフォトマスク上から光照射する態様が好ましい。
【0057】
ここで、着色電着膜を形成しようとする光半導体薄膜に光を入射させる場合、入射光は、基板の厚み方向へ基体及び導電膜を通過して進むため、電解液と接する光半導体薄膜の表面に到達するまでに、光が拡散したり、回折の影響を受けて解像度が低下してしまうことがある。
従って、ブラックマトリックスや着色電着膜を形成しようとする光半導体薄膜(露光面)の設けられていない側の基板表面から、少なくとも、第二の結像光学部材若しくはミラー反射光学部材と、少なくとも導電膜および光半導体薄膜をこの順に積層した基板をパターニングするためのフォトマスクと、第一の結像光学部材と、光源とをこの順に配置してなる露光装置を用いて、光源から第一の結像光学部材を経てフォトマスクに結像し、フォトマスクを介して出てきた画像パターン状の光をさらに第二の結像光学部材を通して前記露光面に光を結像させる態様がより好ましい。
【0058】
[着色電着膜形成工程]
前記着色電着膜形成工程は、基板の前記光半導体薄膜を所望の電解液に接触させた状態で光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に前記電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程である。本態様における着色電着膜形成工程は、電着技術を用いた膜形成技術によるものであり、水溶性分子のうち、酸化状態、中性状態、還元状態で各々水への溶解度が大きく変化しうる分子に注目し、水溶性分子を電気化学的に直接酸化還元するか、又は水溶性分子が溶解された水溶液のpHを適宜変化させることにより、前記状態間の移動を可能とする原理を利用するものである。
形成された電着膜は、逆電圧を印加するか、或いは、pH10〜12の水溶液に浸すことにより、水溶液中に再溶出させることができる。
【0059】
ところが、着色電着膜の形成には、ある一定のしきい値以上の電圧を印加する必要があり、単に電流が流れても必ずしも電着膜が形成されるわけではない。従って、バイアス電圧を印加しておくことにより、仮に外部から入力される電圧レベルが小さい場合でも着色電着膜を形成することができ、用いる入力電圧レベルを制御することにより所望の着色電着膜を形成することができる。
ここで、着色電着膜を形成しようとする基板に半導体材料を利用し、電極として用いれば、入力信号に光を用い、さらにこの光の照射を制御することにより所望の位置に着色電着膜を形成することができ、任意の画像パターンを形成することができる。
【0060】
即ち、具体的には、前述のように、液性変化により溶解度が大きく変化する顔料や染料等を含有する電着材料を溶解、分散した溶液(以下、「電解液」ということがある。)を入れた電解液槽を用意し、該槽内の電解液に電極として有機又は無機の半導体材料を接触又は浸した状態で、光を所望の画像パターンに対応するように前記半導体材料上に照射することにより、電解液中の電着材料を半導体材料上に析出させ、所望の画像パターンのカラーフィルタ層を有する単色のカラーフィルタを形成することができる。これを、赤色、緑色、青色のそれぞれの電解液を用いて繰り返し行うことにより、多色のカラーフィルタを形成することができる。
従って、従来の電着法のように、予めパターニングされた透明導電膜が不要であり、フォトリソグラフィ工程を経ることなく、簡易で低コストな方法で任意の画像パターンを平滑に、かつ高解像度に形成することができる。
また、前記電解液中の電着材料として、導電性の電着材料を用いれば、電極とした半導体材料上に導電性の電着材料を析出させて、導電性を持つカラーフィルタ層を有する導電性カラーフィルタを形成することもできる。
【0061】
用いる電解液の光照射前のpHは、陽極電着の場合には、用いる電着材料の状態変化が生じるpHから+2以内、陰極電着の場合には、用いる電着材料の状態変化が生じるpHから−2以内の範囲に設定することが好ましい。
電解液のpHをこのような範囲に設定しておけば、電着膜が形成される前に電着材料の水系溶媒への溶解が飽和状態となる。その結果、一旦着色電着膜を形成してしまえば、膜形成後に電解液中に再溶解し難いので、安定的に着色電着膜を形成することができる。一方、着色電着膜の形成時に、電着材料が未飽和状態であると、一旦電着膜が形成されても、電流等の供与を中止した途端に膜が再溶解し始めることがある。
尚、電着液のpHを調整するには、電着特性に影響を与えない酸性又はアルカリ性物質を添加し、光照射して電着する場合には、予め印加しておく直流電圧を、2V以内として着色電着膜を形成することがより好ましい。
【0062】
また、エッジ部がシャープで、高鮮鋭なブラックマトリックス及び着色電着膜を形成しうる観点から、電着時に用いる電解液の温度を一定の温度に保持し、一定の電着速度でブラックマトリックス及び着色電着膜を形成することが好ましい。
【0063】
電解液中には、電着速度を速める目的で、電着材料以外に電着特性に影響を与えないイオン解離性の塩を添加してもよく、塩の添加により溶液の導電率が増加する。
水系液体中の導電率と、電着速度(換言すれば、電着量)とは相関し、導電率が高くなればなるほど一定時間に付着する電着膜の膜厚が厚くなり、導電率が約100mS/cm2(10Ω・cmに相当する。)になると飽和に達する。従って、電解液中に着色電着膜の形成に影響しないイオン、例えば、Na+イオン、Cl-イオン等を加えれば、電着速度をコントロールすることができる。
上記塩を添加して電解液中の体積固有抵抗率を調整する場合、該体積固有抵抗率としては、100〜105[Ω・cm]が好ましい。
【0064】
次に、電解液の基板近傍で生じるpH変化、及びこれに伴う着色電着膜の形成機構について説明する。
一般的に、水溶液中に白金電極を浸し電流又は電圧を供与すると、アノード近傍の水溶液中のOH-イオンは消費されてO2になり、水素イオンが増えてpHが低下する。これは、アノード近傍でホール(p)とOH-イオンとが結び付く以下の反応が起こるためである。
2OH-+2p+ → 1/2(O2)+H2
但し、この反応が起こるには、基板の電位が一定値(しきい値電位)を超える必要がある。しきい値電位を超えて始めて反応が進行し、水溶液中のpHが変化する(アノード近傍ではpHが低下し、カソード近傍ではpHが増加する)。
本発明において着色電着膜を形成する場合、光照射により光半導体に光起電力を起こさせ、光照射部のみをしきい値電位を超える電位とし、基板の光照射部近傍の電解液のみに前記の反応を進行させるものである。反応が進行した結果、光照射部近傍の電解液のpHは変化し、これに対応して電着材料の溶解度が変化し、光照射部のみに着色電着膜が形成される。
【0065】
このように、光起電力を利用して電気化学反応を引き起こす試みは、今までに種々検討されてきた。例えば、A.Fujishima,K.Honda,Nature vol.238,p37,(1972)には、n型光半導体のTiO2に光を照射して、生じた光起電力により水の電気分解を行った例が報告されている。 また、 光起電力を利用した画像形成の例としては、H.Yoneyama,et al,J.Electrochem.Soc.,p2414(1985)に、Si基板上に光を照射して、生じた光起電力によりピロールを電解重合し、 ドーピング・ 脱ドーピングで画像形成を行った例が報告されている。 また、 我々も導電性高分子のドーピング・ 脱ドーピングに色素を用い、 光で画像形成する方法を特許出願中である。 しかし、光起電力を利用して、導電性高分子により画像形成を行う場合は、使用できる発色材料に限界がある。その結果、多彩色の画像形成を行うのは困難であった。
【0066】
導電性高分子が存在しない系であっても、着色電着膜を形成することは可能であるが、着色電着膜形成に必要な電圧は、 導電性高分子がある場合に比較して大きくなる。 例えば、 前記特開平5−119209号公報「カラーフィルター製造方法及びカラーフィルター製造用の電着基板」、及び特開平5−157905号公報「カラーフィルター製造方法」では、 光半導体薄膜に光照射を行い、該光照射部に発現した光導電性を利用して着色電着膜を形成する技術が開示されているが、印加電圧は、20Vから80Vであり、電着物質は高分子の酸化還元反応を利用している。 一方、 光半導体薄膜の光起電力は1V未満(例えば、Siで0.6V程度)であり、画像を形成するには光起電力だけでは不十分である。 あらかじめ電流又は電圧の供与により電位を嵩上げしておくことも考えられるが、一定の電圧(用いる光半導体のバンドギャップに対応する電圧)を超えて電圧を印加すると(例えば、Siで5Vを越える電圧)、半導体と電着液間のショトキーバリヤーが壊れてしまい、画像形成ができなくなる。本発明では、電着に高分子等の酸化還元反応を利用せず、前記のように、電着液中のpH変化に対応した電着材料の溶解度変化を利用して着色電着膜を形成しているので、ショットキーバリヤーを破壊しない範囲で、電着することが可能である。
【0067】
本発明において、あらかじめ基板(基板中の光透過性導電膜)に電圧を印加しておいてもよい。ここで、電気化学分野で一般に用いられる三極式配置の構成の場合には、陽極と陰極若しくは参照電極の間の電位差が4V以下、好ましくは2V以下となるように、バイアス電圧をかけて着色電着膜、又は後述のブラックマトリックスを形成することが好ましい。
このときに印加するバイアス電圧は、光半導体薄膜が発現する光起電力により基板に生じる電位を補い、基板の電位がしきい値電位に達するようにその大きさを設定する。また、印加するバイアス電圧は、ショトキーバリアーを超えない大きさに設定する。あらかじめ基板に印加する電圧が大きすぎると、ショトキーバリアーが壊れ、光照射されていない領域にも電流が流れ、光半導体基板の全領域に電着膜が形成され、着色電着膜の形成位置を制御できなくなるからである。
例えば、TiO2の光起電力は、約0.6Vであるので、2.0Vで電着する電着材料であれば、1.5Vのバイアス電圧を印加しつつ光照射すると、基板(光半導体膜)の光照射部の電位は0.6V+1.5V=2.1Vとなり、電着に必要なしきい値電位を越え、光照射部のみに着色電着膜が形成される。一方、この基板に2.5V以上のバイアス電圧を印加すると、ショトキーバリアーが壊れてしまう。
【0068】
次に、光半導体と電着材料の組合わせについて説明する。
本発明では、光起電力の形成に、光半導体と接触した界面に生じるショトキーバリヤーや、pn接合あるいはpin接合の障壁を利用している。図1にn型光半導体と電着液との界面に生じるショトキーバリヤーを、図2にpin接合のエネルギーバンドを模式的に示す。
例えば、n型光半導体を用いた場合、n型光半導体側を負にした場合には、電流の流れる順方向であるので電流は流れるが、逆に、n型光半導体側を正にした場合は、n型光半導体と電解液とのショトキー接合がバリヤーを形成して、電流は流れない。ところが、n型光半導体側を正にして電流が流れない状態でも、光を照射するとn型光半導体薄膜からエレクトロン・ホールペアが発生し、ホールが溶液側に移動して電流が流れる。この場合、n型光半導体を正電位にするのであるから電着する材料はアニオン性分子でなければならない。従って、n型光半導体とアニオン性分子の組合せとなり、逆にp型光半導体ではカチオンが電着されることになる。特に、n型光半導体を用いた場合はカルボキシル基を有するアニオン性分子、p型半導体を用いた場合はアミノ基、又はイミノ基を有するカチオン性分子を含有する着色電着材料を用いるのが好ましい。
【0069】
導電性膜に電流又は電圧を供与するには、導電性膜の側縁等に電流又は電圧が供与されるための通電路を設ければよい。電流又は電圧の供給には、ポテンショスタット等が使用可能である。
【0070】
各色の着色電着膜形成工程、又は後述のブラックマトリックス形成工程の後、基板に付着している、各工程で用いた電解液を除去する目的で、基板を液体洗浄してもよい。
用いる洗浄液としては、透明で安全性の高い不活性な液体が好ましい。また、着色電着膜の固形化が促進されるような洗浄液を用いると、着色電着膜の膜強度が向上するのでさらに好ましい。そのような洗浄液としては、電解液の析出開始pH値よりも含有される電着材料が析出し易いpHに調製されている水系液体が好ましい。このようなpH調製液で着色電着膜が形成された基板を洗浄すると、基板に付着している前工程に使用した電解液等を除去できるとともに、着色電着膜の膜強度を向上させることができる。このような洗浄により、例えば、カルボキシルキ等の陰イオン性解離基を有する電着材料を用いた場合は、洗浄液のpH値が電着材料の析出開始のpH値よりも低く、アミノ基等の陽イオン性解離基を有する電着材料の場合は、洗浄液のpH値が電着材料の析出開始のpH値よりも高くすることにより、電着膜の堅牢性が向上し、結果として解像度の高いカラーフィルターを作製できる。
【0071】
[硬膜工程]
本発明の着色膜の形成方法においては、用いる電着液中にラジカル発生剤や酸発生剤を含有させ、着色電着膜形成工程や、後述のブラックマトリックス形成工程を経た後、形成した膜を光照射、加熱等する硬膜工程を設ける。上述の通り、ラジカル発生剤及び酸発生剤としては、膜中で均一にラジカル若しくは酸を発生しうる点から熱反応性ものが好ましく、この場合には、前記硬膜工程では、形成した膜に熱処理を施すことにより、形成した膜の膜強度や耐溶剤性を向上させることができる(熱処理する工程)。
この硬膜工程は、各色の着色電着膜を形成した後に逐次設けてもよいし、RGB3色の着色電着膜を形成した後に設けてもよいし、さらにブラックマトリックスを設けた後に一括して設けてもよい。但し、各膜の膜性を十分に向上させる観点からは、各色の着色電着膜を形成した後に、逐次前記硬膜工程を設けることが好ましい。また、光電着法により、ブラックマトリックスを先に設ける場合には、ブラックマトリックスのみを形成した後に設けてもよい。
【0072】
膜を加熱する際の加熱方法としては、オーブン、真空加熱器等の所望の温度に調整した中に入れて加熱する方法、加熱ガスを表面に吹き付ける方法等が挙げられる。
熱処理する工程での加熱温度としては、50〜250℃が好ましく、90〜200℃がより好ましい。
前記加熱温度が、50℃未満であると、ラジカル若しくは酸を均一かつ十分に発生させることができず、十分な膜強度及び耐溶剤性が得られないことがあり、250℃を超えると、樹脂等の他の材料の耐熱限界を超えることがある。
また、加熱時間は、上記加熱温度に応じて、任意に設定することができる。
【0073】
硬膜工程としては、前記熱処理する工程に限らず、電解液中に含有するラジカル発生剤及び酸発生剤の性質に応じて、適宜光照射する等の、ラジカル若しくは酸を発生しうる工程とすることができる。
【0074】
−基板−
本態様において用いる基板の断面構造を図3に示す。
前記基板は、光透過性の基体31上に、少なくとも、光透過性の導電膜32と、光起電力機能を有する光半導体薄膜33と、を順次積層したものである。
(基体)
前記基体としては、光透過性の種々の材料を用いることができ、例えば、ガラス、プラスチック等を好適に挙げられる。
【0075】
(導電膜)
導電膜は、導電性を有し、かつ光透過性の材料であれば広く用いることができる。例えば、ITO(インジュウム−スズ酸化物)、二酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。また、導電性カーボン材料、導電性セラミックス材料等を用いることもできる。導電性膜は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等従来公知の方法により支持体上に形成することができる。
【0076】
(光半導体薄膜)
光半導体薄膜は、光照射により光起電力を生じるものであればいずれも使用することができる。光半導体は光照射による効果を一定期間保有する光履歴効果を有するが、本発明に用いられる光半導体は、光履歴効果の弱いものが好ましい。但し、光履歴効果が強いものであっても、光半導体薄膜を薄くすれば、光履歴効果を小さくなる傾向があるので、使用することができる。
光半導体には、n型光半導体とp型光半導体があるが、本発明ではいずれの光半導体も使用可能である。さらに、n型光半導体薄膜とp型光半導体薄膜とを積層したpn接合を有する光半導体薄膜、又はn型光半導体薄膜と、i型光半導体薄膜と、n型光半導体薄膜とを積層したpin接合を有する光半導体薄膜等、積層構造の光半導体薄膜を用いると、高出力の光電流が確実に得られ、画像のコントラストがより高くなるので好ましい。
【0077】
また、本発明に用いられる光半導体薄膜は、無機光半導体からなるものであっても、有機光半導体からなるものであってもよい。
無機光半導体としては、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化ニッケル、酸化錫、酸化モリブデン、SiGaN、a−C、BN、ZnSe、ダイヤモンド、GaAs系化合物、CuS、Zn32、ポリシリコン等が挙げられる。
有機光半導体としては、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン等が挙げられる。
これらの混合物からなるものであってもよく、また、各々の材料からなる光半導体薄膜を複数積層したものであってもよい。
【0078】
中でも、TiO2、ZnO等の金属酸化物は、電着時の安定性に優れ、光照射効率も優れている。
また、TiO2は、ゾル−ゲル法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法等種々の方法により製膜すると、良好なn型光半導体薄膜が得られることが近年の研究で明らかになっている。
光電流の変換効率を高めるには、還元処理が有効であり、通常、水素ガス中で300℃程度で加熱する。例えば、約300℃下で10分間、3%の水素混合窒素ガスを用いて1分間に1lの流量を流しながら、加熱することにより達成できる。
【0079】
光半導体薄膜は、従来公知のゾル−ゲル法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンコート法、グロー放電着膜法等により、導電性膜上に形成することができる。
前記光半導体薄膜の膜厚としては、特に制約はないが、良好な特性が得られる点で、0.05〜3.0μmが好ましい。
前記膜厚が、0.05μm未満であると、生じる光起電力が弱すぎてパターン形成に問題を生ずることがり、3.0μmを超えると、光照射によって生じた電荷が膜内にトラップされ、光履歴効果が大きくなるためパターン形成性が悪化することがある。
【0080】
光半導体薄膜は、微結晶性又は多結晶性の膜質を有しているのが、光起電力発生効率の点で好ましい。さらに、光半導体のみからなるものが好ましく、樹脂等の絶縁性材料を含有していないものが好ましい。光半導体薄膜に樹脂等の絶縁性材料を混合すると、光起電力の発生効率が低下し、光履歴効果が高くなる。
尚、光半導体薄膜の光照射下での体積抵抗値としては、10-2〜108Ω・cmが好ましく、100〜106Ω・cmがより好ましい。
前記光半導体薄膜の体積抵抗値が、108Ω・cmを越えると、通電するのに高い電圧が必要となるため、光起電力の発生効率が著しく低下することがある。
【0081】
本態様の着色膜の形成方法を、図15により簡単に説明する。
電着槽42には電着液37が満たされ、該電着槽中にはカウンター電極38が配置され、ポテンショスタット39と接続されている。電着槽42上には、基体31上に導電膜32と光半導体薄膜33とが順次積層された電着用基板35が、少なくとも光半導体薄膜33が電着液37と接触するように配置され、作用電極として導電膜32を介してポテンショスタット39と接続されている。電解液37には、少なくとも黒色の色材又は金属を含有する電着材料が、ラジカル発生剤又は酸発生剤と共に溶解または分散されている。
【0082】
電着用基板35の上方には、光源が配置されている。電着用基板35は、導電膜32を介してポテンショスタット39から負のバイアス電圧が印加された後、光源よりフォトマスク40を介して光照射され、マスクの画像パターン状に光照射される。
【0083】
電着用基板35としてp型半導体基板を用いた場合、光半導体薄膜33の光照射部にのみ負の光起電力が生じ、この負の光起電力と負のバイアス電圧との総電位が、電解液37の電着材料の電着が開始されるしきい値を超えると、光照射部のみにブラックマトリックスが形成される。
一方、電着用基板35としてn型半導体基板を用いた場合、光半導体薄膜33の光照射部では電解液中の金属イオンの還元反応が抑制されるが、未照射部では負のバイアス電圧により電解液37の電着材料中の金属イオンが還元されて未照射部のみにブラックマトリックスが形成される。
【0084】
電着用基板35上にブラックマトリックスを形成した後、電着液37を、ラジカル発生剤又は酸発生剤と共にRGBのいずれかの色材を含有する3種の電着液に順次変え、正のバイアス電圧を印加し、各色に対応するフォトマスクを用いて光照射することにより、電着用基板35上にブラックマトリックスの未形成部分の光照射部に、選択的に各色の着色電着膜が形成され、所望のカラー画像パターンを有するカラーフィルタを作製することができる。
【0085】
上記より、高解像度でパターン精度に優れるとともに、膜強度及び耐溶剤性の高い、高品質のカラーフィルタを低コストに作製することができる。
【0086】
−第二の態様−
次に、本発明の着色膜の形成方法の第二の態様について説明する。
前記第二の態様においては、光透過性の基体上に、少なくとも光透過性の導電膜と該光透過性の導電膜に接合された能動素子とを備える基板の少なくとも前記光透過性の導電膜を、少なくとも色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程(接触工程)と、前記基板の能動素子を、電解液に前記光透過性の導電膜を接触させた状態で駆動することにより、前記光透過性の導電膜に、電解液が電気分解してプロトンを発生し、かつ実質的に膜形成性を低下させる気泡の発生のない、又は発生しにくい電圧を印加して、前記光透過性の導電膜上に電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程(着色電着膜形成工程)と、前記着色電着膜に熱処理又は光照射処理を施して、前記着色電着膜を硬膜させる硬膜工程とを有してなり、必要に応じて、ブラックマトリックス形成工程を有してなる。
【0087】
[接触工程]
前記接触工程は、光透過性の基体上に、光透過性の導電膜と該光透過性の導電膜に接合された能動素子とを備える基板の少なくとも前記光透過性の導電膜を、少なくとも色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程である。ここで、能動素子とは、光透過性の導電膜に隣接して配設され、かつ接合されるソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、及び半導体薄膜を備えたスイッチング素子をいい、例えば、薄膜トランジスタ(TFT;以下、単に「TFT」ということがある。)等が挙げられる。
上記のように、電解液に光透過性の導電膜(以下、「透明導電膜」ということがある。)を接触させる場合、同一の基体上に設けられた薄膜トランジスタ(TFT)、及びクロム(Cr)やアルミニウム(Al)よりなるソース電極、ドレイン電極及びゲート電極は水と接触すると劣化し易く、TFT駆動時にショートしやすいことから、予め着色電着膜を形成しようとする透明導電膜のみを残して絶縁処理しておくことが好ましい。この絶縁処理の方法については後述する。
【0088】
前記基板の透明導電膜を電解液に接触させる際の、電解液に対する位置関係としては、任意の位置関係を適宜選択でき、例えば、基板全体を電解液中に浸漬して配置してもよいし、基板の一部、例えば、着色電着膜を形成する透明導電膜のみが接触するように配置してもよい。
【0089】
絶縁処理の方法としては、適当な溶媒に紫外線硬化樹脂を溶解した樹脂溶液を塗布し、透明導電膜部分のみをマスクして紫外線ランプにより全面を照射して硬化させた後、溶剤により透明導電膜上の樹脂溶液を溶解除去する方法、ネガ型フォトレジスト液をスピナー等の塗布装置により表面被覆し、プリベークした後、透明導電膜上を露光し、溶剤により分解、現像し、非露光部分をホストベークで硬化させる方法等が挙げられる。
上記のようにして絶縁処理を施す場合、使用する絶縁材料中に黒色の色材を含有させ、黒色の絶縁膜を形成することによりブラックマトリックスとしてもよい。この場合に使用可能な黒色の色材としては、カーボンブラック、フタロシアニン系顔料等の2色若しくは3色の混合顔料等が挙げられる。
但し、能動素子を配置した部分は、光非透過性であるため、必ずしも上記のようなブラックマトリックスを形成しなくてもよい。
【0090】
[着色電着膜形成工程]
本態様の着色電着膜形成工程においては、着色膜を形成しようとする透明導電膜に接合された 能動素子を駆動することにより、同一の基体上に設けられた複数の透明導電膜のうち選択された透明導電膜に、電解液が透明導電膜上で電気分解してプロトンを発生し、かつ実質的に膜形成性を低下させる気泡の発生のない、又は発生しにくい電圧を印加して、該透明導電膜上に電着材料を析出させて着色電着膜を形成する。従って、フルカラーとする場合には、隣接する3個の透明導電膜上にそれぞれ別個に、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の着色膜を形成する必要があり、具体的には、まず、隣接する3個の透明導電膜を赤色顔料と水溶性重合体材料が分散されている赤色用電解液と接触させた後、各透明導電膜と接続された駆動用ICを制御して赤色画素に対応する薄膜トランジスタ(TFT)のみを駆動させ、該TFTに対応する透明導電膜上にのみ赤色膜を形成する。形成された赤色膜は、水洗、必要に応じて乾燥、定着され、好ましくは水に対して不溶化処理が施される。
次いで、同様の工程を青色用電解液、緑色用電解液を用いて、駆動用ICの制御により駆動する能動素子を変えて同様の操作を繰り返し、隣接する3つの透明導電膜上にRGBの各着色膜を形成する。即ち、各色に対応する電解液を用いて、浸漬工程及び電着工程をこの順に複数の異なる透明導電膜に対して複数回繰り返し行うことによりフルカラーの着色膜を形成できる。
【0091】
着色膜を形成する際の印加電圧、即ち、三極式配置とした場合における、陽極と陰極若しくは参照電極との間の電位差としては、能動素子を駆動する際の駆動電圧に近似する電圧、好ましくは同等の電圧がよく、能動素子の耐圧以下の電圧であればよい。具体的には、10V以下が好ましく、4V以下がより好ましい。
前記印加電圧が10Vを超えると、着色膜を形成しようとする透明導電膜上に、電気分解して生じた多量のプロトンの生成に伴って、酸素が気体として発生することになり、形成された着色膜がその部分で剥離等して、気泡による凹凸や脱泡跡が形成されて表面平滑な着色膜を形成できないことがある。
前記参照電極は、電気化学分野で一般に用いられる、電極を三極式配置してなる装置の陽極、陰極を除く、もう一方の電極をいう。
【0092】
透明導電膜に電圧印加した際の電流値としては、0.3〜50mA/cm2が好ましく、0.3〜10 mA/cm2がより好ましい。即ち、透明導電膜1個(1画素)当りに換算すると、0.3〜30μAの電流値である。
電圧印加時の通電時間としては、印加電流値の強さに比例するが、特に0.01秒〜1時間が好ましく、0.1秒〜10分がより好ましい。
【0093】
次に、電解液中の、疎水ドメインを有するイオン性分子と、色材である顔料の分散状態、電解液の基板近傍で生じるpH変化、及びこれに伴う着色電着膜の形成機構について説明する。図4は、水中で分散している顔料粒子の様子を模式的に示す図である。図5は、光透過性の導電膜を正極とし、図示しない対向電極との間に電圧を印加した直後の液性を示す図である。図6は、イオン性分子のカルボキシル基が疎水化し、光透過性の導電膜上に着色膜が成膜された状態を示す図である。
【0094】
図4に示す通り、ヒゲ状に表された、疎水ドメインと親水ドメインとを備えたイオン性分子(電着材料)は、顔料粒子の表面に配向して顔料粒子の電解液における分散を補助しており、電解液中に単独で存在するイオン性分子は、光透過性の導電膜上に着色膜を形成する際に着色膜のマトリックス形成物質として作用する。
図4は、光透過性の導電膜に電圧印加されていない状態を表しており、この状態ではイオン性分子の親水性基(例えば、カルボキシル基)は、=R−COO-として溶液中でイオン解離した状態をとっている。
【0095】
図5に示すように、光透過性の導電膜を正極とし、図示しない対向電極との間に電圧が印加されると、前記導電膜に正電荷が付与され、導電膜近傍に存在する水が電気分解反応を起こし、次式で表される反応が生起する。
2O → 2H+ + 1/2O2 + 2e-
上記反応により発生した水素イオンは、電圧が印加された導電膜近傍の水素イオン濃度を上昇させ、その上昇の程度は電極近傍になるほど大きく、電極から離れるほど小さくなり、それに応じてpHも変化する。
つまり、導電膜表面の近傍で電解液中の水素イオン濃度が急激に上昇する領域、即ち、部分的若しくは特異的若しくは局部的に高水素イオン濃度領域(低pH領域、酸性領域)を生成する。このpH値の等しい領域を線で結ぶと、図5に示すpH等価線で表わすことができる。
導電膜付近で生成した水素イオン(プロトン)は、イオン性分子の親水性基である、例えば、イオン解離した=RCOO-と結合し、
=RCOO- + H+ → =RCOOH
の反応により、カルボキシル基が疎水化し、イオン性分子の持つ親水ドメインの割合が減少して、図6に示すように、光透過性の導電膜上に顔料が取りこまれた樹脂膜(着色膜、着色電着膜)が成膜される。
【0096】
ここで、透明電極付近で生成した水素イオンは、電解液中のイオン性分子の解離陰イオンと次々に結びつくため、この状態ではイオン性分子が透明電極上に堆積する反応が優先的に進行する。
本発明の着色膜の形成方法においては、透明電極表面に生じる水素イオン濃度の局所的変化、即ち、局所的pH変化に基づく水素イオン交換反応により顔料を取りこんだ樹脂膜が形成されるものであり、従来報告されている一般的な電気泳動に基づく電着とはその技術的思想が異なる。
例えば、本発明においては、光透過性の導電膜への印加電圧と、該導電膜表面への相対着膜速度との関係は、図7に示す通り、導電膜への印加電圧が1.4V付近になると水の電気分解が生じ、それと同時に導電膜表面へのイオン性分子の着膜が開始し、3Vに至るまでその着膜速度は、印加電圧に比例して進行する。従来、一般に行われてきた電気泳動法により電着する場合に、数10〜数100Vの印加電圧を要していたものと、この点で明確に区別できる。
【0097】
前記相対着膜速度は、図7に示す通り、透明電極付近の多量の水素イオン(プロトン)の発生に伴って酸素ガスを生成する(酸素のバブリング現象)電圧まで直線的に増加する。本発明においては、この電圧間において成膜を行うため、着色膜を形成しようとする透明導電膜上に酸素ガスが気泡として生ずることなく、成膜時の気泡の発生による膜剥がれや凹凸がなく、均一厚で表面平滑性に優れた着色膜を安定に形成することができる。
【0098】
次に、印加電圧と、成膜した相対付着量との関係を図8−(1)及び(2)に示す。図8−(1)は、ヒステリシスの大きい電着材料の例であり、図8−(2)は、ヒステリシスの小さい電着材料の例である。
前記ヒステリシスを示す電着材料では、印加電圧を徐々に向上させ、印加電圧が一定の電圧(電気分解開始電位)を超えると、急激にイオン性分子の析出量は増加し、その後印加電圧が徐々に低下した場合でも、電着材料の相対付着量が低下しない特性を有する。
このようなヒステリシス性は、イオン性分子を成膜した後の電解液中への再溶解、即ち、形成した膜の保持性を確保して品質低下を防止するのに重要であり、電着材料としては、pHの変化に対応する状態変化(溶存状態→析出の変化と析出→溶解状態の変化)にヒステリシスを示すものが好ましい。即ち、pHの減少又は増加に対応する析出状態への変化は急峻であり、かつpHの増加又は減少に対応する溶存状態への変化は緩慢であると、着色電着膜の安定性が向上するので好ましい。
透明電極近傍に生ずる局所的なpH低下は、具体的には、電極近傍ではpH 値にして約1〜2、水素イオン濃度に換算して1012〜1014モル程度の水素イオン濃度の変化(水素イオン濃度の増加、pH値の減少)に相当するものと推定される。
【0099】
電解液中には、電着速度を速める目的で、電着特性に影響を与えないイオン解離性の塩を添加してもよく、塩の添加により溶液の導電率が増加する。
水系液体中の導電率と、電着速度(換言すれば、電着量)とは相関し、導電率が高くなればなるほど一定時間に付着する電着膜の膜厚が厚くなり、導電率が約100mS/cm2(10Ω・cmに相当する。)になると飽和に達する。従って、電解液中に着色電着膜の形成に影響しないイオン、例えば、Na+イオン、Cl-イオン等を加えれば、電着速度をコントロールすることができる。
上記塩を添加して電解液中の体積固有抵抗率を調整する場合、該体積固有抵抗率としては、100〜105[Ω・cm]が好ましい。
【0100】
各色の着色電着膜形成工程、又は後述のブラックマトリックス形成工程の後、基板に付着している、各工程で用いた電解液を除去する目的で、基板を液体洗浄してもよい。用いる洗浄液としては、前記第一の態様で使用可能なものと同様のものを使用できる。
【0101】
[硬膜工程]
本態様における硬膜工程としては、前記第一の態様における硬膜工程と同様の処理を設けることできる。
該硬膜工程により、形成した膜の膜強度及び耐溶剤性を向上させることができる。
【0102】
<基板>
同一の基体上に、透明導電膜と該透明導電膜に接合された能動素子とを備える基板としては、TFTを駆動して該駆動電圧により直接着色膜を形成しうる基板であって、以下に説明する駆動素子、アクティブマトリックス素子等が挙げられる。
【0103】
−駆動素子−
前記駆動素子とは、同一の基体上に透明導電膜と、該透明導電膜に隣接してソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を備えた能動素子とを備え、前記透明導電膜がドレイン電極と電気的に結合されてなる基板をいい、上記駆動素子を使用しこれに電圧印加して電流を通じることにより、電解液と接触する前記透明導電膜上に着色膜を電着形成することができる。
【0104】
前記着色膜付の駆動素子を作製するに当り用いる前記駆動素子としては、いずれの態様の駆動素子であってもよく、市販の駆動素子の中から適宜選択することができ、例えば、図10に示す態様の駆動素子であってもよい。図10は、駆動素子の一例を示す平面構成図である。
【0105】
図10に示す態様の駆動素子は、以下のように構成されている。即ち、同一のガラス基体1上にゲート電極2と透明導電膜3が隣接して形成され、さらに前記ゲート電極2上には、絶縁膜4(図9参照)と半導体薄膜5とがこの順に積層されている。また、前記透明導電膜3はドレイン電極7と接合され、該ドレイン電極7と接合された半導体薄膜5を介してソース電極6’でソース電極6と接続されている。
上記素子に、該基板若しくはその外部に設けた駆動用ICを制御することにより、ゲート電極及びソース電極の両電極に通電された薄膜トランジスタ(TFT)のみを駆動させて、電解液と接する特定の透明導電膜3上に選択的に着色膜を形成することができる。
【0106】
−アクティブマトリックス素子−
前記アクティブマトリックス素子とは、同一の基体上に透明導電膜と、該透明導電膜に隣接する位置にソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を備えた能動素子と、を2次元的に配設し、さらに前記ソース電極が第一の共通電極線と電気的に結合され、前記ゲート電極が第二の共通電極線に結合され、前記ドレイン電極が透明電極板と電気的に結合さてなる基板をいい、上記アクティブマトリックス素子を使用しこれに電圧印加して電流を通じることにより、電解液と接触する前記透明導電膜上に着色膜を電着形成することができる。
前記ゲート電極は、透明導電膜及び能動素子を備える各表示素子(画素)に備えられ、実際には隣接する各表示素子間を通ずる第二の共通電極線の一部を担っている。
【0107】
前記着色膜付のアクティブマトリックス素子を作製するに当って用いる前記アクティブマトリックス素子としては、いずれの態様の駆動素子であってもよく、市販のアクティブマトリックス素子の中から適宜選択することができ、例えば、図12又は13に示す態様のアクティブマトリックス素子であってもよい。図12及び13は、アクティブマトリックス素子の一例を示す平面構成図である。
【0108】
図12に示す態様のアクティブマトリックス素子は、以下のように構成されている。即ち、同一のガラス基体12上にゲート電極13と、該ゲート電極13に接合するように透明導電膜14が形成され、さらに前記ゲート電極13上には、絶縁膜15(図11参照)と半導体薄膜16とがこの順に積層されている。前記ゲート電極13は、ガラス基体12上にマトリックス状に配列された、透明導電膜14及び能動素子を備える各表示素子(画素)に備えられており、実際には隣接する各表示素子間を通ずる第二の共通電極線を構成し、第二の共通電極線の一部を担っている。また、ドレイン電極17は、半導体薄膜16と着色膜形成後に配設する透明電極板20とを接続するように配置されており、さらに半導体薄膜16を介してソース電極18’でソース電極18と接合されている。尚、透明電極板20は、着色膜形成前のアクティブマトリックス素子(基板)には設けられていない。
前記第一の共通電極線は、ソース電極18を示し、ガラス基体12上に配列された、透明導電膜14と能動素子とを備える各表示素子(画素)間を通っている。
上記素子に、該素子若しくはその外部に設けた駆動用ICを制御することにより、前記ソース電極及びゲート電極の両電極に通電し選択した薄膜トランジスタ(TFT)のみを駆動させて、電解液と接する特定の透明導電膜3上に選択的に着色膜を形成することができる。
【0109】
(導電膜)
前記導電膜としては、導電性を有し、かつ光透過性の材料であれば広く用いることができる。例えば、ITO(インジュウム−スズ酸化物)、二酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。また、導電性セラミックス材料等を用いることもできる。導電性膜は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等従来公知の方法により支持体上に形成することができる。
【0110】
(基体)
前記基体としては、光透過性の種々の材料であればよく、例えば、ガラス、プラスチック等の前記第一の態様で使用可能な基体と同様のものを挙げることができる。
【0111】
(能動素子)
前記能動素子は、ゲート電極、該ゲート電極上に設けられる絶縁膜、半導体薄膜、ソース電極、ドレイン電極等を備えてなり、透明導電膜と接合して電着時にスイッチング機能を担う。
前記ソース電極及びドレイン電極は、一般にアルミニウム、モリブデン、銅、タンタル等よりなり、ゲート電極は、一般にクロム、銅、アルミニウム、モリブデン、タンタル等よりなる。
アクティブマトリックス素子の場合には、前記ソース電極は、第一の共通電極線と電気的に結合され、前記ゲート電極は、第二の共通電極線に接合されている。前記ゲート電極は、透明導電膜及び能動素子を備える各表示素子(画素)に備えられ、実際には隣接する各表示素子間を通ずる第二の共通電極線の一部を担っている。
【0112】
前記半導体薄膜としては、無機、有機のいずれの半導体であってもよい。
無機半導体としては、結晶Si、アモルファスシリコーン、ポリシリコーン、GaAs系化合物等が挙げられる。有機半導体としては、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン等が挙げられる。
前記絶縁膜としては、シリコーンオキサイド(SiO2)膜、シリコーンナイトライド(SiNx)膜、ポリイミド膜、ポリアクリル膜等が挙げられる。
【0113】
以下、本態様の着色膜の形成方法を、図10及び15により簡単に説明する。
まず、能動素子としての薄膜トランジスタ(TFT)と光透過性の導電膜とを有する前記駆動素子を準備する。即ち、ガラス等の基体1上に、ゲート電極2、ITO(Indium−Tin−Oxide)等の光透過性の導電膜3が形成され、さらに絶縁膜4(図9参照)、半導体薄膜5が積層される。これらは、基体1上に各材料を、蒸着、塗布、レジスト膜形成、エッチング等の薄膜形成プロセスで代表されるホトリソエッチングプロセスにより形成できる。
また、同様の方法により、ソース電極6’、ドレイン電極7が、半導体薄膜5上に形成される。この時、各表示画素に対応するドレイン電極7は、これに対応して隣接する導電膜3と電気的に接続されるように形成される。
このようにして、導電膜及び薄膜トランジスタ(TFT)を有する基板を作製することができる。
【0114】
次に、上記ガラス基体上に設けた導電膜3上には、以下のようにして着色膜(カラーフィルタ膜)8を形成できる(図9参照)。
マトリックス状に配列された個々のTFT及び導電膜3が設けられた基体1を、導電膜3が残るように電気的にマスクする。これは、電着工程において、基体1を電解液に接触若しくは浸漬し、ゲート電極2及びソース電極6に通電した際に、各表示画素に対応するTFTがショートしたり、各TFTを構成する各電極や半導体薄膜が、水との接触により酸化されるのを防止するためである。尚、この場合においても、各表示画素における各TFTが接続されたソース電極6、ゲート電極2も、水との接触が絶縁されて基体1の端部にまで延び、基体1の端部において、好ましくは基体と一体化されたTFT駆動用のICに接続される。
駆動用ICは、基体1上に一体的に薄膜形成プロセスで形成された薄膜ICであってもよい。この場合、薄膜ICは基体1外の電源に接続される。
また、前記駆動用ICは、前記基体1の端部に別個に実装されるか、又は基体1外に設けられた、前記ソース電極6、ゲート電極2に接続された駆動用ICチップであってもよい。
【0115】
次いで、各色相に対応する電解液10を入れた電着槽42を準備し、該電着槽の電解液中には、電圧供給装置に接続された対向電極38が配置されている。
図15と同様の構造を有する装置を準備し、電着用基板35を、上記より作製した、導電膜及び薄膜トランジスタ(TFT)を有する基板に代えて装着した。但し、本態様においては、基板上には光源を設ける必要はない。
【0116】
導電膜3を残して絶縁処置された基体1は、唯一電気的に絶縁されていないガラス基体上の導電膜3上に着色膜を形成するため、少なくとも該導電膜3が電解液37と接触、又は電解液37中に浸漬するように配置する。この状態で、所定の順序で基体1上の薄膜トランジスタ(TFT)を選択的に制御しながら駆動させることにより、電解液中で露出している複数の透明導電膜に選択的に電圧印加し、電着液中に別個に配置された対向電極との間で通電する。通電された導電膜上には、均一厚で、気泡の混入がなく(Non−Bubble)、気泡による凹凸や脱泡跡のない表面平滑性に優れた着色膜が形成され、各色に対応する電解液を用いて選択的に電圧印加して通電を繰り返すことにより、TFT及び導電膜を備えた基板上に直接フルカラーのフィルタ膜を形成することができる。
【0117】
上記より、透明導電膜と能動素子とを備えた基板の該能動素子を駆動し該駆動時の駆動電圧を利用して、前記透明導電膜上に直接、高解像度かつ均一厚で、気泡による凹凸や脱泡跡のない表面平滑性に優れた着色膜を形成することができる。また、電解液として、既述のラジカル発生剤及び/又は酸発生剤を含有する電解液を用いることにより、膜強度のより高い、十分な耐溶剤性を有する着色膜が形成された駆動素子、アクティブマトリックス素子を得ることができる。
【0118】
<ブラックマトリックスの形成工程>
次に、ブラックマトリックスの形成工程について説明する。
ブラックマトリックスの形成工程は、上述の着色電着膜形成工程と同様のプロセスにより、基板の少なくとも光半導体薄膜を、黒色の色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させて光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に電着材料を析出させて黒色の着色電着膜、即ち、ブラックマトリックスを形成する工程であってもよいし、電解液として、金属を含有する電着材料を含む電解液を用い、同様にして金属メッキ薄膜を形成する工程であってもよい。また、既に、選択的に電極部分が形成された基板の光半導体薄膜を、黒色の色材又は金属を含有する電解液に接触させ、その全体に電圧印加して前記電極部分にブラックマトリックスを形成する工程であってもよい。
これらの場合には、フォトリソグラフィを用いることなく、ブラックマトリックスを簡易かつ高精細に形成することができる。ブラックマトリックス形成工程は、前記着色電着膜形成工程の前に設けてもよく、着色電着膜形成工程を経た後に設けてもよい。
【0119】
ブラックマトリックス層の機能としては、遮光性と光反射防止性の両方の特性を必要とされる。また、薄膜で得られなければ、ブラックマトリックス層の微細パターン化は難しくなる。即ち、光の透光性が高く、かつ入射光を反射せずに吸収しうる、といった2つの機能を持つ薄膜を形成することにより、高い特性を示す。
上記のように、金属薄膜の持つ高い遮光能力と、黒色顔料分散樹脂系薄膜の持つ高い光吸収性と、さらに薄膜化とを満足しうるブラックマトリックス層を形成するには、金属薄膜と黒色顔料分散樹脂系薄膜とを複合(積層)した層構造のブラックマトリックス層を形成することもできる。
【0120】
ブラックマトリックスの形成工程が、黒色の色材を含有する電解液を用いて膜形成する工程である場合には、前記着色電着膜を形成する場合と同様、膜強度及び耐溶剤性を向上させる目的で、用いる電解液中に少なくとも1種のラジカル発生剤及び/又は酸発生剤を含有することが好ましい。ラジカル発生剤及び酸発生剤は併用してもよい。
ここで、前記ラジカル発生剤及び酸発生剤としては、前記着色電着膜の形成において使用可能なものと同様のものを、電解液量に対し同様の量を含有させることができる。
【0121】
黒色の色材を含有する電解液を用いた方法の場合、前記黒色の色材としては、公知の黒色の色材を適宜使用できるが、後述するようにブラックマトリックスを形成した後に着色電着膜を重なり部分を有するように形成させることができる観点からは、導電性の黒色の色材が好ましく、中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
前記カーボンブラックの平均粒子径としては、良好な光学特性と電解液中での分散安定性を得る観点から、8〜80nmが好ましく、12〜30nmがより好ましい。
その他、電着材料に含有される高分子材料等については、着色電着膜形成工程に用いる材料と同様である。
【0122】
金属メッキ薄膜を形成する場合においては、電解液として金属を含む電着材料を含有する電解液を用い、前記着色電着膜形成工程、及び黒色の色材を含有する電解液を用いたブラックマトリックス形成工程と同様のプロセスにより金属メッキ薄膜よりなるブラックマトリックスを形成できる。
金属メッキ薄膜が着膜した上層では、金属膜の抵抗が低いために、発生電流の拡散が生じ、不要に電着膜が積層され難い傾向があり、ブラックマトリックスを薄層化できる点で好ましい。
金属メッキ薄膜を、着色電着膜形成工程後に設ける場合には、使用する電解液は着色電着膜に悪影響を及ぼさない液特性を有していることが好ましく、例えば、着色電着膜が、陰イオン性解離基を有する電着材料からなる場合は、電解液は酸性系であることが好ましい。
【0123】
また、金属メッキ薄膜を、着色電着膜形成工程前に設ける場合には、金属メッキ薄膜が着色電着膜形成工程に用いる電解液に対して、耐性を持つことが好ましい。従って、金属メッキ薄膜として、高い堅牢性を有する金属を含む電解液を用いることが好ましく、該金属としては、例えば、Ni,Cr,Cu,Au,Ag,Mo,Sn,Zn,Co,Ti,Ta,Pb,Rr等が挙げられ、これらより選択される金属イオン1種又は複数種を含有する電解液を用いることが好ましい。中でも、Ni,Cr,Cu,Au,Ag,Mo,Sn,Zn,Coより選択される金属イオンは、薄膜形成能及びメッキ液安定性等の点で特に好ましい。
【0124】
尚、金属は、陰極性の電極に析出するものがほとんどなので、基板を構成する光半導体薄膜として、例えば、酸化チタン等のn型光半導体を用いる場合は、着色電着膜形成工程では、基板が陽極性となるようにバイアスを印加し、金属メッキ薄膜を形成場合においては、基板が陰極性となるようにバイアスを印加する。
【0125】
また、基板に形成された着色電着膜上に、カーボンブラック粉末等の黒色の色材を含む紫外線硬化樹脂の溶液を塗布したり、或いは、着色電着膜を形成した基板を前記溶液に接触させて、紫外線照射して黒色の色材を含む樹脂薄膜を形成させることにより、ブラックマトリックスを形成してもよい。
【0126】
前記黒色の色材を含む紫外線硬化樹脂の溶液を用いてブラックマトリックスを形成する場合には、溶媒に紫外線硬化樹脂を溶解した溶液中に、黒色の色材を分散させ、これを着色電着膜を形成した側の基板上の表面全体に付着させ、ブラックマトリックスを形成する領域のみに紫外線を照射して硬化させ、その後、溶媒で溶解させて未硬化領域に存在する前記溶液を除去する。
【0127】
基板上に着色電着膜及びブラックマトリックスを設ける場合、該着色電着膜とブラックマトリックスとの隙間を無くす目的で、フォトマスクを介してブラックマトリックス又は単色若しくは複数色の着色電着膜を形成した後、該ブラックマトリックス又は着色電着膜と互いに重なりを有するように、単色若しくは複数色の着色電着膜又はブラックマトリックスを形成することが好ましい。
即ち、ブラックマトリックスを形成した後に着色電着膜を形成する場合、ブラックマトリックスと重なる領域ができるようにブラックマトリックスの領域まで光照射することにより、光照射されたブラックマトリックス上にも着色電着膜を形成する。逆に、着色電着膜を形成した後にブラックマトリックスを形成する場合においても同様である。
【0128】
ブラックマトリックスを設けることにより、簡素な工程で光漏れの殆ど無い、数十μm以下の高精細の画像パターンを有する、高解像度のカラーフィルタを作製することができる。
【0129】
<カラーフィルタ>
本発明の着色膜の形成方法の前記第一の態様により、膜強度が高く、十分な耐溶剤性を有する高解像度のカラーフィルタを得ることができる。該カラーフィルタは、光透過性の基体上に、光透過性の導電膜、光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜、及びカラーフィルタ層を有してなり、必要に応じて、他の層を有してなる。図14(C)にカラーフィルタの概略断面図を示す。
尚、図14(A)は、基板上に、ブラックマトリクスのみを形成したカラーフィルタの断面図を、図14(B)は、これにさらに単色の着色電着膜を形成したカラーフィルタの断面図を示す。
図14(C)中に示す着色電着膜36B,36G,36Rは、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)のカラーフィルタ膜を示し、これらは、導電性を有する着色電着膜であってもよい。この場合には、カラーフィルタ層と液晶層とが積層してなる液晶表示素子を作製したときに、導電膜をそのまま液晶表示のための駆動電極として利用することができる。
【0130】
<素子>
本発明の着色膜の形成方法の前記第二の態様により、膜強度が高く、十分な耐溶剤性を有する高解像度の着色膜を有する、駆動素子又はアクティブマトリックス素子を得ることができる。
また、上記着色膜を有する、駆動素子、アクティブマトリックス素子等の素子を採用すれば、高解像度の液晶表示素子を安価に製造することもできる。
−駆動素子−
前記駆動素子は、同一の基体上に、透明導電膜と前記本発明の着色膜の形成方法により得られる着色電着膜との積層体と、該積層体に隣接する位置にソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を備えた能動素子と、を備え、さらに前記透明導電膜が、ドレイン電極と電気的に結合されてなる。該駆動素子上に、液晶材料及び透明導電板を組合せれば、例えば、図9に示す構造の液晶表示素子を構成することもできる。
上記着色膜は、導電性の電着材料を含む電解液を用いることにより、導電性の着色膜としてもよい。
【0131】
−アクティブマトリックス素子−
前記アクティブマトリックス素子は、同一の基体上に、透明導電膜と前記本発明の着色膜の形成方法により得られる着色電着膜と透明電極板とをこの順に積層した積層体と、該積層体に隣接する位置にソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を備えた能動素子と、を2次元的に配設し、前記ソース電極が第一の共通電極と電気的に結合され、前記ゲート電極が第二の共通電極線に結合され、前記ドレイン電極が透明電極板と電気的に結合されてなる。上記駆動素子の場合同様、例えば、図11に示す構造の液晶表示素子を構成することもできる。
上記着色膜は、導電性の電着材料を含む電解液を用いることにより、導電性の着色膜としてもよく、この場合には、必ずしも着色膜上に透明導電板を設ける必要はない。
【0132】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「%」は、全て「重量%」を表す。
(実施例1)
厚さ0.5mmの石英ガラス基体上に、スパッタリング法により膜厚0.1μmのITOの透明な導電膜(ITO薄膜)を製膜し、該ITO薄膜上にさらにスパッタリング法により膜厚0.2μmのTiO2膜を製膜(TiO2薄膜)して図3に示す構造の電着用基板を得た。次に、TiO2薄膜の電流特性を向上するために、4%の水素ガスを混合する純窒素ガス中で、360℃下で10分間アニールし、還元処理を施した。
【0133】
上記よりITO薄膜及びTiO2膜を形成した電着用基板を用い、このTiO2膜上にカラーフィルタ層を形成する、図15と同様の構造を有する、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置と同様の装置を準備した。
また、電着槽42には、電解液37を準備した。
【0134】
前記電解液37として、まず純粋100g中に、スチレン−アクリル酸ランダム共重合体(分子量19,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比73%、酸価90、ガラス転移点75℃、流動開始点110℃、分解点247℃、析出開始点pH5.8)とアゾ系赤色超微粒子顔料(平均粒子径23nm)とを固形分比率5:5で分散混合し、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらに2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの1%イソプロピルアルコール溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
【0135】
光半導体薄膜(TiO2膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.7Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側(電着基板の、光半導体薄膜を有しない側の基体表面)からレッドフィルタ用のフォトマスクを通して、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2)により4秒間光を照射した。TiO2表面に透過光が照射され、照射領域にのみ赤色の着色膜が形成された。
【0136】
次に、前記同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料(平均粒子径30nm)とを、固形分比率5:5で分散混合し、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらに2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの1%イソプロピルアルコール溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
電解液37を得られた水溶液に代え、上記と同様にして、グリーンフィルタ用のフォトマスクを通して光照射すると、TiO2表面の光照射領域にのみ緑色の着色膜が形成された。
その後、pH値4.2のpH調整液で十分に洗浄した。
【0137】
さらに、前記同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料(平均粒子径31nm)とを、固形分比率5:5で分散混合し、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらに2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの1%イソプロピルアルコール溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
バイアス電圧を1.8Vとし、電解液37を得られた水溶液に代え、前記同様にして、ブルーフィルタ用のフォトマスクを通して光照射すると、TiO2表面の光照射領域にのみ青色の着色膜が形成された。
【0138】
次いで、前記同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、カーボンブラックの超微粒子顔料(pH値3.5、平均粒子径34nm、吸油量(DPB):70cc/100g)とを、固形分比率2:8で分散混合し、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらに2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの1%イソプロピルアルコール溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
【0139】
電解液37を得られた水溶液に代え、光半導体薄膜(TiO2膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.7Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側(電着基板の、光半導体薄膜の設けられていない側の基体表面)から、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2)を用いて全面に3秒間光照射した。基板上のTiO2表面の着色電着膜の未形成領域には、膜厚0.7μmの均一厚のブラックマトリックスが形成された。前記ブラックマトリックスの微小面積部を測定した光学透過濃度は、2.5であった。
【0140】
次に、BGR3色の着色電着膜及びブラックマトリックスを形成した基板を、温度210℃のオーブン中に入れて1時間加熱し、硬膜処理を行った。その後、形成した着色電着膜及びブラックマトリックス上に、保護層として、アクリル樹脂溶液をスピンコート法によりコーティングし、カラーフィルタ(1)を得た。
【0141】
<超音波耐久性試験>
得られたカラーフィルタ(1)をイソプロピルアルコール中に浸漬した状態で、20時間超音波振動をあて、その後の着色電着膜の表面状態を目視により評価した。
試験後のカラーフィルタ(1)の着色膜表面は、クラックや剥離等の欠陥を生ずることなく、十分な耐溶剤性を示した。
【0142】
また、得られたカラーフィルタ(1)の着色電着膜とブラックマトリックスの境界部の光学特性を、微小面積光学濃度測定装置により評価したところ、境界部における、両者のエッジのズレは5μm以内であり、高精度な画像パターンを形成できた。
【0143】
(比較例1)
実施例1の各色の着色電着膜及びブラックマトリックスの形成時に調製した6%水溶液中に、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの1%イソプロピルアルコール溶液を混合しなかったこと以外、実施例1と同様にして、カラーフィルタ(2)を作製した。
得られたカラーフィルタ(2)を用い、実施例1と同様にして超音波耐久性試験と、着色電着膜とブラックマトリックスとの境界部の光学特性の評価を行った。その結果、高精度な画像パターンは得られたものの、超音波耐久性試験後のカラーフィルタ(2)の着色膜表面は、クラックや剥離等の欠陥が生じ、十分な耐溶剤性を得ることはできなかった。
【0144】
(実施例2)
厚さ0.5mmの無アルカリガラス基体上に、スパッタリングにより膜厚0.1μmのITOの透明な導電膜(ITO薄膜)を製膜し、該ITO薄膜上にさらにゾル・ゲル法により膜厚0.2μmのTiO2膜を製膜(TiO2薄膜)した後、約500℃で30分間加熱して図3に示す構造の電着用基板を得た。
次に、TiO2薄膜の電流特性を向上するために、5%の水素ガスを混合する純窒素ガス中で、360℃下で20分間アニールし、還元処理を施した。
【0145】
上記よりITO薄膜及びTiO2膜を形成した電着用基板を用い、このTiO2膜上にカラーフィルタ層を形成する、図15と同様の構造を有する、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置と同様の装置を準備した。
また、電着槽42には、電解液37を準備した。
【0146】
前記電解液37として、まず純粋100g中に、スチレン−アクリル酸ランダム共重合体(分子量22,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比70%、酸価100、ガラス転移点55℃、流動開始点94℃、分解点254℃、析出開始点pH5.9)とカーボンブラックの超微粒子顔料(pH:2.5、平均粒子径21nm、吸油量(DPB):110cc/100g)とを固形分比率3:7で分散混合した、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらにジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートの2%ジオキサン溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
【0147】
光半導体薄膜(TiO2膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.7Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側(電着基板の、光半導体薄膜の設けられていない側の基体表面)からブラックマトリックス用のフォトマスクを通して、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2)により2秒間光を照射した。TiO2表面に透過光が照射され、照射領域にのみ膜厚1.2μmの均一厚の黒色のパターン、即ち、ブラックマトリックスが形成された。その後、pH4.5のpH調整液で十分にカスケイド洗浄を行った。
実施例1同様にして測定した、ブラックマトリックスの光学透過濃度は2.6であった。
【0148】
次いで、純粋100g中に、スチレン−アクリル酸ランダム共重合体(分子量14,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比73%、酸価89、ガラス転移点42℃、流動開始点97℃、分解点238℃、析出開始点pH6.3)とアゾ系赤色超微粒子顔料(平均粒子径21nm)とを固形分比率6:4で分散混合し、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらにジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートの2%ジオキサン溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
【0149】
電解液37を得られた水溶液に代え、光半導体薄膜(TiO2膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.8Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側(電着基板の、光半導体薄膜の設けられていない側の基体表面)からレッドフィルタ用のフォトマスクを通して、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2)により6秒間光を照射した。TiO2表面に透過光が照射され、照射領域にのみ赤色の着色膜が形成された。その後、pH4.8のpH調整液で十分にカスケイド洗浄を行った。
【0150】
次に、前記赤色の着色膜の形成に用いたものと同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料(平均粒子径19nm)とを、固形分比率6:4で分散混合し、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらにジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートの2%ジオキサン溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
電解液37を得られた水溶液に代え、上記と同様にして、グリーンフィルタ用のフォトマスクを通して光照射すると、TiO2表面の光照射領域にのみ緑色の着色膜が形成された。
その後、pH値4.7のpH調整液で十分に洗浄した。
【0151】
さらに、前記赤色の着色膜の形成に用いたものと同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料(平均粒子径27nm)とを、固形分比率6:4で分散混合し、固形分濃度6%水溶液を調製した。この6%水溶液中に、さらにジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネートの2%ジオキサン溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
バイアス電圧を1.9V、光照射時間を7秒間とし、電解液37を得られた水溶液に代え、前記同様にして、ブルーフィルタ用のフォトマスクを通して光照射すると、TiO2表面の光照射領域にのみ青色の着色膜が形成された。
その後、pH値4.2のpH調整液で十分に洗浄した。
【0152】
BGR3色の着色電着膜及びブラックマトリックスを形成した基板を、温度190℃のオーブン中に入れて1時間加熱し、硬膜処理を行った。
前記硬膜処理の後、形成した着色電着膜及びブラックマトリックス上に、保護層として、低温硬化ポリイミド溶液をロールコーター法によりコーティングし、250℃の温度下で20分加熱乾燥してカラーフィルタ(3)を得た。
【0153】
<引っ掻き試験>
カラーフィルタ(3)の保護層形成前のものを用い、その着色膜及びブラックマトリックスの膜表面を、鉛筆(2H)により一定の圧力で押圧しながら引っ掻き、その後の着色電着膜等の表面状態を目視により評価した。
試験後のカラーフィルタ(3)の膜表面には、傷等の発生はなく、十分な膜強度を有していた。
【0154】
また、得られたカラーフィルタ(3)の着色電着膜とブラックマトリックスの境界部の光学特性を微小面積光学濃度測定装置により評価したところ、境界部における、両者のエッジのズレは5μm以内であり、高精度な画像パターンを形成できた。
いた。
【0155】
(比較例2)
実施例2の各色の着色電着膜及びブラックマトリックスの形成時に調製した6%水溶液中に、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの1%イソプロピルアルコール溶液を混合しなかったこと以外、実施例2と同様にして、カラーフィルタ(4)を作製した。
カラーフィルタ(4)の保護層形成前のものを用い、実施例2と同様にして引っ掻き試験と、着色電着膜とブラックマトリックスとの境界部の光学特性の評価を行った。その結果、高精度な画像パターンは得られたものの、引っ掻き試験後の膜表面は、傷等が生じ、十分な膜強度を得ることはできなかった。
【0156】
(実施例3)
厚さ0.8mmのパイレックスガラス基体上に、スパッタリングにより膜厚0.16μmのITOの透明な導電膜(ITO薄膜)を製膜し、該ITO薄膜上にさらにゾル・ゲル法により膜厚0.8μmのTiO2膜を製膜(TiO2薄膜)して図3に示す構造の電着用基板を得た。TiO2膜の製膜は、ITO基板上にスピンコート法でTiO2のアルコキシド(アトロンNTi−092,日本曹達(株)製)を回転速度1400回転、20秒間で製膜した後、約500℃で30分間加熱して形成した。
次に、TiO2薄膜の電流特性を向上するために、4%の水素ガスを混合する純窒素ガス中で、360℃下で20分間アニールし、還元処理を施した。その後、pH4.2のpH調整液で十分に洗浄を行った。
【0157】
上記よりITO薄膜及びTiO2膜を形成した電着用基板を用い、このTiO2膜上にカラーフィルタ層を形成する、図15と同様の構造を有する、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置と同様の装置を準備した。
また、電着槽42には、電解液37を準備した。
【0158】
前記電解液37として、まず純粋100g中に、スチレン−アクリル酸ランダム共重合体(分子量13,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比70%、酸価95、ガラス転移点46℃、流動開始点90℃、分解点244℃、析出開始点pH5.9)とカーボンブラックの超微粒子顔料(pH:2.9、平均粒子径14nm、吸油量(DPB):145cc/100g)とを固形分比率1:9で分散混合し、固形分濃度8%水溶液を調製した。この8%水溶液中に、さらに2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの2.5%ジオキサン溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
【0159】
光半導体薄膜(TiO2膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.7Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側(電着基板の、光半導体薄膜の設けられていない側の基体表面)からブラックマトリックス用のフォトマスクを通して、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2)により2秒間光を照射した。TiO2表面に透過光が照射され、照射領域にのみ膜厚0.8μmの均一厚の黒色のパターン、即ち、ブラックマトリックスが形成された。その後、pH4.5のpH調整液で十分にカスケイド洗浄を行った。
実施例1同様にして測定した、ブラックマトリックスの光学透過濃度は2.9であった。
【0160】
次いで、純粋100g中に、スチレン−アクリル酸ランダム共重合体(分子量10,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比68%、酸価130、ガラス転移点65℃、流動開始点95℃、分解点240℃、析出開始点pH5.8)とアゾ系赤色超微粒子顔料(平均粒子径35nm)とを固形分比率8:2で分散混合し、固形分濃度8%水溶液を調製した。この8%水溶液中に、さらに2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの2.5%ジオキサン溶液、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
【0161】
電解液37を得られた水溶液に代え、光半導体薄膜(TiO2膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.7Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側(電着基板の、光半導体薄膜の設けられていない側の基体表面)からレッドフィルタ用のフォトマスクを通して、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2)により5秒間光を照射した。TiO2表面に透過光が照射され、照射領域にのみ赤色の着色膜が形成された。その後、pH4.2のpH調整液で十分に洗浄を行った。
【0162】
次に、前記赤色の着色膜の形成に用いたものと同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料(平均粒子径39nm)とを、固形分比率8:2で分散混合し、固形分濃度8%水溶液を調製した。この8%水溶液中に、さらに2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの2.5%ジオキサン溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
電解液37を得られた水溶液に代え、上記と同様にして、グリーンフィルタ用のフォトマスクを通して光照射すると、TiO2表面の光照射領域にのみ緑色の着色膜が形成された。
その後、pH値4.6のpH調整液で十分に洗浄した。
【0163】
さらに、前記赤色の着色膜の形成に用いたものと同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料(平均粒子径41nm)とを、固形分比率8:2で分散混合し、固形分濃度8%水溶液を調製した。この8%水溶液中に、さらに2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの2.5%ジオキサン溶液を、該水溶液中における含有量が5%となるまで攪拌しながら混合した。
電解液37を得られた水溶液に代え、上記と同様にして、ブルーフィルタ用のフォトマスクを通して光照射すると、TiO2表面の光照射領域にのみ青色の着色膜が形成された。
【0164】
BGR3色の着色電着膜及びブラックマトリックスを形成した基板を、温度170℃のオーブン中に入れて1時間加熱し、硬膜処理を行い、形成した着色電着膜及びブラックマトリックス上に、保護層として、厚み0.2μmのポリイミドフィルムを載せて接着し、カラーフィルタ(5)を得た。
【0165】
<耐水試験>
得られたカラーフィルタ(5)を、80℃の純水中に浸漬した状態で放置し、20日間経過した後に取り出し、その着色電着膜及びブラックマトリックスの膜質を目視により評価した。
試験後のカラーフィルタ(5)の膜には膨潤や剥離等の発生は認められず、十分な堅牢性を有する膜質を示した。
【0166】
また、得られたカラーフィルタ(5)の着色電着膜とブラックマトリックスの境界部の光学特性を微小面積光学濃度測定装置により評価したところ、境界部における、両者のエッジのズレは5μm以内であり、高精度な画像パターンを形成できた。
【0167】
(比較例3)
実施例3の各色の着色電着膜及びブラックマトリックスの形成時に調製した8%水溶液中に、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの1%イソプロピルアルコール溶液を混合しなかったこと以外、実施例3と同様にして、カラーフィルタ(6)を作製した。
カラーフィルタ(6)の保護層形成前のものを用い、実施例3と同様にして耐水試験と、着色電着膜とブラックマトリックスとの境界部の光学特性の評価を行った。その結果、高精度な画像パターンは得られたものの、耐水試験後の膜は、膨潤や膜剥がれを生じ、十分な堅牢性を得ることはできなかった。
【0168】
(実施例4)
厚み0.8μmの石英ガラス基体上に透明導電膜と、該透明導電膜に隣接する位置にソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を備えた能動素子と、を2次元的に配設し、さらに前記ソース電極が第一の共通電極線と電気的に結合され、前記ゲート電極が第二の共通電極線に結合され、前記ドレイン電極が透明電極板と電気的に結合された、図12に示す基板と同様の電着用基板(アクティブマトリックス基板)を準備した。但し、図12中の透明電極板20は、着色電着膜を形成した後に設ける液晶駆動用電極であるため、前記電着用基板には含まれない。
【0169】
図15と同様の構造を有する装置に前記アクティブマトリックス基板を装着し、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置と同様の装置を準備した。
また、電着槽42には、電解液37を準備した。
【0170】
前記電解液37として、まず純粋100g中に、スチレン−アクリル酸ランダム共重合体(分子量19,000、疎水基/(親水基+疎水基)のモル比73%、酸価90、ガラス転移点45℃、流動開始点90℃、分解点247℃、析出開始点pH5.8)とアゾ系赤色超微粒子顔料(平均粒子径19nm)とを固形分比率5:5で分散混合した水溶液に、さらにジメチルアミノエタノールを400mol/L(リットル)混合して、pH8.0の固形分濃度8%水溶液を調製した。この8%水溶液中に、さらに2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの3.5%テトラヒドロフラン溶液を、該水溶液中における含有量が10%となるまで攪拌しながら混合した。
【0171】
光半導体薄膜(TiO2膜)が飽和カロメル電極に対してプラス2.0Vのバイアス電位で、所望の表示素子(画素)に対応するTFT駆動回路を逐次駆動することにより、この時の駆動電圧を利用して3.5秒間電圧を印加した。その結果、所望の表示素子(画素)に対応する透明導電膜表面に赤色の着色膜が形成された。
【0172】
次に、前記同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料(平均粒子径22nm)とを、固形分比率5:5で分散混合した水溶液に、さらにジメチルアミノエタノールを200mol/L(リットル)混合して、pH8.0の固形分濃度8%水溶液を調製した。この8%水溶液中に、さらに2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの3.5%テトラヒドロフラン溶液を、該水溶液中における含有量が10%となるまで攪拌しながら混合した。
バイアス電圧を2.8V、電圧印加時間を3秒とし、電解液37を得られた水溶液に代え、前記同様にして電圧印加したところ、所望の表示素子(画素)に対応する透明導電膜表面に緑色の着色膜が形成された。
その後、pH値5.2のpH調整液で十分にカスケイド洗浄を行った。
【0173】
さらに、前記同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体と、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料(平均粒子径30nm)とを、固形分比率5:5で分散混合した水溶液に、さらにジメチルアミノエタノールを190mol/L(リットル)混合して、pH8.0の固形分濃度8%水溶液を調製した。この8%水溶液中に、さらに2−ベンジル−2,2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの3.5%テトラヒドロフラン溶液を、該水溶液中における含有量が10%となるまで攪拌しながら混合した。
バイアス電圧を2.5V、電圧印加時間を3秒とし、電解液37を得られた水溶液に代え、前記同様にして電圧印加したところ、所望の表示素子(画素)に対応する透明導電膜表面に青色の着色膜が形成された。
【0174】
次いで、下記組成の化合物を超音波分散した分散液中に、上記より得られた3色の着色電着膜が形成された基板を浸漬、塗布し、取り出した基板上にさらにパターン露光して、着色電着膜の未形成な導電性部分に0.6μmのブラックマトリックスを形成した。
前記ブラックマトリックスの微小面積部を測定した光学透過濃度は、2.5であった。
〔分散液の組成〕
下記含有率は、分散液全重量に対する含有率を示す。
・粒子表面にカルボキシル基を有するカーボンブラック顔料粒子
(平均粒子径13nm) ・・・ 8%
・前記同様のスチレン−アクリル酸ランダム共重合体 ・・・ 0.8%
(疎水基/(親水基+疎水基)のモル比73%、
分子量19,000、酸価90、ガラス転移点45℃、
流動開始点90℃、分解点247℃、析出開始点pH5.8)
・純水 ・・・91.2%
【0175】
次に、BGR3色の着色電着膜及びブラックマトリックスを形成した基板を、温度180℃のオーブン中に入れて1時間加熱し、硬膜処理を行った。その後、形成した着色電着膜及びブラックマトリックス上に、スパッタリング法によりITOの透明導電膜(膜厚0.12μm)を形成し、図11と同様の構造を有するアクティブマトリックス素子を得た。
【0176】
得られたアクティブマトリックス素子上の着色電着膜とブラックマトリックスの境界部の光学特性を微小面積光学濃度測定装置により評価したところ、境界部における、両者のエッジのズレは4.4μm以内であり、高精度な画像パターンを形成できた。
【0177】
【発明の効果】
本発明によれば、簡易な工程で、パターン精度に優れた高い解像度が得られ、かつ膜強度が高く、耐溶剤性に優れた着色膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ショトキー接合を有する光半導体のエネルギーバンドを示す図である。
【図2】 pin接合を有する光半導体のエネルギーバンドを示す図である。
【図3】 本発明の着色膜の形成方法の第一の態様で用いる基板の構造を示す概略断面図である。
【図4】 水中で分散している顔料粒子の様子を模式的に示す図である。
【図5】 透明電極を正極とし、図示しない対向電極との間に電圧を印加した直後の液性を示す図である。
【図6】 水溶性重合体のカルボキシル基が疎水化し、透明導電膜上に着色膜が成膜された状態を示す図である。
【図7】 電着時の印加電圧と着膜速度との関係を示す図である。
【図8】 電着時の印加電圧に対する着色膜の形成特性を示す図である。
【図9】 液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。
【図10】 駆動素子の一例を示す平面構成図である。
【図11】 液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。
【図12】 アクティブマトリックス素子の一例を示す平面構成図である。
【図13】 アクティブマトリックス素子の一例を示す平面構成図である。
【図14】 カラーフィルタの構造の一例を示す概略断面図である。
【図15】 光電着法によりフィルタを作製するための装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1,12,31 基体
2,13 ゲート電極
3,14 透明導電膜
4,15 絶縁膜
5,16 半導体薄膜
6,18 ソース電極
7,17 ドレイン電極
8,19 着色膜
11 液晶材料
21 透明導電板
32 導電膜
33 光半導体薄膜
34 着色電着膜又はブラックマトリックス
34’ ブラックマトリックス
35 基板
36 単色の着色電着膜
40 フォトマスク

Claims (19)

  1. 光透過性の基体上に少なくとも光透過性の導電膜を有する基板を、少なくとも色材を含有する電着材料を含む電解液に接触させる工程と、
    前記基板に、電気化学的に電着材料を析出させて選択的に着色電着膜を形成する工程と、を含む着色膜の形成方法であって、
    析出した前記電着材料が、少なくとも1種のラジカル発生剤又は酸発生剤を含有し、
    前記着色電着膜を形成する工程の後に、前記着色電着膜に熱処理又は光照射処理を施して、前記着色電着膜を硬膜させる硬膜工程を有することを特徴とする着色膜の形成方法。
  2. 電解液に接触させる工程が、光透過性の導電膜上に、さらに光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜を積層した基板の前記光半導体薄膜を、電解液に接触させる工程であり、
    着色電着膜を形成する工程が、前記基板を電解液中で光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程である請求項1に記載の着色膜の形成方法。
  3. 電解液に接触させる工程が、光透過性の導電膜と接合する能動素子を備えた基板の前記光透過性の導電膜を電解液に接触させる工程であり、
    着色電着膜を形成する工程が、前記基板の能動素子を、電解液に前記光透過性の導電膜を接触させた状態で駆動することにより、前記光透過性の導電膜に、電解液が電気分解してプロトンを発生し、かつ実質的に膜形成性を低下させる気泡の発生のない電圧を印加して、該光透過性の導電膜上に電着材料を析出させ着色電着膜を形成する工程である請求項1に記載の着色膜の形成方法。
  4. 基板上に、選択的にブラックマトリックスを形成する工程を有する請求項1から3のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  5. ブラックマトリックスを形成する工程が、基板の少なくとも光半導体薄膜を、黒色の色材又は金属を含有する電着材料を含む電解液に接触させて光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に電着材料を析出させてブラックマトリックスを形成する工程である請求項4に記載の着色膜の形成方法。
  6. ブラックマトリックスを形成する工程が、選択的に電極部分を形成した基板の光半導体薄膜を、黒色の色材又は金属を含有する電着材料を含む電解液に接触させ、電圧印加して前記電極部分にブラックマトリックスを形成する工程である請求項4に記載の着色膜の形成方法。
  7. 前記ブラックマトリックスを形成する工程で析出した電着材料が、少なくとも1種のラジカル発生剤又は酸発生剤を含有し、前記ブラックマトリックスを形成する工程の後に、形成された前記ブラックマトリックスに熱処理又は光照射処理を施して、前記ブラックマトリックスを硬膜させる硬膜工程を有する請求項5又は6に記載の着色膜の形成方法。
  8. ラジカル発生剤及び酸発生剤が、熱ラジカル発生剤及び熱酸発生剤である請求項1から7のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  9. ラジカル発生剤及び酸発生剤が、トリハロメチル基含有トリアジン誘導体、オニウム酸化合物又はベンゾフェノン系化合物である請求項1から8のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  10. 電解液中における、ラジカル発生剤又は酸発生剤の含有量が、電解液の全固形分重量に対し、0.005〜20.0重量%である請求項1から9のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  11. 着色電着膜を形成する工程及び/又はブラックマトリックスを形成する工程の後、50〜250℃の温度で熱処理する工程を有する請求項1から10のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  12. 電着材料が、カルボキシル基を有する化合物を含む請求項1から11のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  13. カルボキシル基を有する化合物が、疎水基と親水基を有する重合体であって、疎水基の数が疎水基と親水基の総数の40〜80%である請求項12に記載の着色膜の形成方法。
  14. 重合体の親水基数の50%以上が、pHの変化により水溶性から非水溶性、或いは、この逆に可逆的に変化しうる請求項13に記載の着色膜の形成方法。
  15. 重合体の酸価が、60から200である請求項13又は14に記載の着色膜の形成方法。
  16. 重合体の数平均分子量が、6000〜25000である請求項13から15のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  17. 重合体が、ガラス転移点が80℃以下、流動開始点が180℃以下、分解点が150℃以上の重合体である請求項13から16のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  18. 着色電着膜を形成する工程及びブラックマトリックスを形成する工程において、陽極と陰極若しくは参照電極との電極間の電位差が4V以下である請求項1から17のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
  19. 着色電着膜を形成する工程において、電解液中に、電着特性に影響を与えないイオン解離性の塩を加えて、電解液の体積固有抵抗率を100〜105Ω・cmとする請求項1から18のいずれかに記載の着色膜の形成方法。
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