JP4172149B2 - 低電位電着用電着液及びこれを用いた電着方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種表示素子やカラーイメージセンサに好適なカラーフィルタの形成や、電着塗装に用いられる電着液及び電着方法に関し、詳しくは、電着法若しくは光電着法により低電位で電着可能な電着液、及びこれを用いた電着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、カラーフィルタの製造方法としては、(1)染色法、(2)顔料分散法、(3)印刷法、(4)インクジェット法(5)電着法等が知られており、それぞれ固有の特徴及び利点を有するが、以下のような欠点がある。即ち、
第一の染色法は、パターニングにフォトリソグラフィ工程が必要であり、また染料を用いるため耐光性に劣り、製造工程の数も多いという欠点がある。
第二の顔料分散法も、フォトリソグラフィ工程によりパターニングし、かつ工程数も多いため、コストが高いという欠点がある。
第三の印刷法及び第四のインクジェット法は、いずれもフォトリソグラフィ工程を要しないが、前者は解像度や膜厚均一性の点で劣り、後者は、隣接フィルタ層間で混色を生じやすく、解像度、位置精度の点で劣る。
【0003】
第五の電着法は、予めパターニングした電極を形成するなど、フォトリソグラフィによるパターニング工程を要するため、パターン形状が限定され、しかも70V以上の高電圧を要することから、TFTを備えた液晶用には使えないという欠点がある。この電着法では、例えば電着塗装などの場合、通常100〜200Vの高電圧を供給すれば、ある程度の膜厚を有する膜を形成することができるが、高電圧が印加されると、過剰のプロトンが電極周囲に供給される一方、脱水素反応が急速に進行するため、該脱水素反応により生じた酸素が気泡として発生する、いわゆるバブリング現象が生じてしまう。この場合、形成した膜は、電極の気泡発生面から剥離し、空隙(ボイド)を含む非平滑な膜、若しくは欠陥のある膜となるといった問題を招く。
【0004】
また、一般に液晶用カラーフィルタは、カラーフィルタ層を形成するのみでは使えず、各色のフィルタセル間をブラックマトリックスで覆う必要があるが、該ブラックマトリックス形成にも、通常、フォトリソグラフィ法が用いられ、コストアップの大きな要因の1つとなっている。
【0005】
以上の点を踏まえ、本発明者等は、水溶性であって、pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する化合物に着目し、光電着法によりカラーフィルタを作製する技術を提案している(特開平11−133224号公報、特開平11−174790号公報等)。即ち、有機又は無機の半導体を基板に利用し、パターン状に光照射して水溶液中の半導体界面のpHを部分的に変化させることにより、所望のパターン膜を析出形成できるので、フォトリソグラフィ工程を設ける必要がなく、高電圧を印加する必要もなく、高精細で複雑な画素パターンにも対応できる。しかもブラックマトリックスの形成も容易で、カラーフィルタの低コスト化にも大きく寄与する。
【0006】
しかしながら、前記光電着法による場合であっても、光半導体に基づく光起電力が電着に要する閾値電圧に達し得ない系では、より均一な膜厚及び着色濃度を有し、かつ表面平滑な電着膜を安定的に形成する観点から、補助的にバイアス電圧が印加される。したがって、工程数や装置の簡易化の観点からは、バイアス電圧を必要とせず、光のみで高品質の電着膜を形成し得る技術が望まれている。
【0007】
また一方、低電位の電圧印加のみによっても高品質の電着膜の形成が可能であれば、工程や装置の簡易化、及び低コスト化が実現され、高電圧の印加に伴う弊害を受けることなく、形成膜の更なる高品質化をも実現できる。
例えば、前記光電着法によらない電着塗装などの場合、これまで電圧停止後の液中での再溶解による膜減り等を考慮して、数100Vの高電圧を印加して行われてきた。しかし、このような高電圧下では、大容量の電源が要求され、しかも金属の被電着材自身からの金属イオンの溶出によって液の劣化が促進されるといった問題があった。また、前述のように、バブリング現象による膜質の低下を伴う問題もある。更に、作業環境上、高電圧の印加に伴う危険性に対する懸念もあった。
【0008】
また、基板上に導電膜(電極)と薄膜トランジスタ(TFT)等が配列形成されたTFT基板等を被電着材として用いる場合に、電極上に光半導体を設けずにTFTの駆動電圧のみを利用することにより、均一な膜厚及び着色濃度を有し、かつ表面平滑な電着膜(カラーフィルタ膜)を安定的に形成することができれば、上記同様の液の劣化やバブリング現象による膜質低下等の発生も抑えられ、装置の簡易化、低コスト化が図れる。
【0009】
更に、デバイスを作製する製造プロセスにおいては、一般的に、電着膜の一種やオーバーコート層等の形成ごとにゴミ等の除去等の目的でアセトン等の有機溶剤を用いた洗浄が複数回にわたり行われ、またカラーフィルタの場合には電着膜が液晶中の有機溶剤と接触した状態となるなどによって、形成された電着膜が有機溶剤により再溶解等して膜減りやダメージを受けるといった問題もあった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、電着法又は光電着法において低電位の電圧を印加して、凹凸のない均一な膜厚及び着色濃度を有し表面平滑であると共に、高い耐熱性、耐水性、耐溶剤性をも示す電着膜を安定的に形成する手段は、未だ提供されていないのが現状である。そこで、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、電着法及び光電着法に用いられ、低電位の電圧印加による膜形成性を良化し、金属イオンの溶出も抑制し、かつ均一な膜厚及び着色濃度を有し表面平滑であって耐熱性、耐溶剤性、耐水性に優れた電着膜を安定的に析出形成しうる低電位電着用電着液を提供することを目的とする。また、
本発明は、電着法及び光電着法を利用し、低電位の電圧印加による膜形成性に優れ、金属イオンの溶出をも抑制され、均一な膜厚及び着色濃度を有し表面平滑な電着膜を安定的に析出形成しうる電着方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 導電性材料と対向電極との間に電圧が印加されることにより、前記導電性材料に電着材料よりなる電着膜を析出形成し得る低電位電着用電着液であって、前記電着材料が電着性高分子材料を含み、該電着性高分子材料の少なくとも一種が、疎水性モノマーと親水性モノマーと可塑性モノマーとからなる共重合体であることを特徴とする低電位電着用電着液である。
前記導電性材料が、光透過性の基体上に光透過性の導電膜を有する基板、及び光透過性の基体上に光透過性の導電膜が配列された基板のいずれかである態様も好適である。
【0012】
<2> 全組成中の共重合体の含有量が、0.3〜25質量%である前記<1>に記載の低電位電着用電着液である。
<3> 共重合体の酸価が、60〜160である前記<1>又は<2>に記載の低電位電着用電着液である。
【0015】
> 電着性高分子材料が架橋性基を含み、電着性高分子材料中に占める該架橋性基の組成比(質量比)が、0.1〜30質量%である前記<1>〜<>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
> 共重合体のガラス転移点が25〜90℃である前記<1>〜<>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
> 共重合体の重量平均分子量が6000〜30000である前記<1>〜<>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
【0016】
> 共重合する可塑性モノマーが、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、無水マレイン酸エステル類、フタル酸エステル類、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも一種である前記<1>〜<>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
> 共重合する疎水性モノマーが、スチレン及びその誘導体、ベンゼン及びその誘導体、アルキルベンゼン及びその誘導体、及び1−フェニル−ブタジエン及びその誘導体から選択される少なくとも一種である前記<1>〜<>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
前記アルキルベンゼン及びその誘導体の中でも、エチルベンゼン及びその誘導体、ジエチルベンゼン及びその誘導体が好ましい。
【0017】
> 親水性モノマーが、カルボキシル基を含むモノマーである前記<1>〜<>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
10> 共重合する親水性モノマーが、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、無水マレイン酸及びその誘導体、フマル酸及びその誘導体、クロトン酸及びその誘導体、桂皮酸及びその誘導体、フタル酸及びその誘導体、トルイル酸及びその誘導体、及びトリメリト酸及びその誘導体から選択される少なくとも一種である前記<1>〜<>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
【0018】
11> 200℃の大気(湿度10%RH以下、30分間)中での電着膜の重量変化が5%以下である前記<1>〜<10>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
12> 電着材料が色材を含み、該色材の数平均粒子径が0.2〜150nmである前記<1>〜<11>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
前記数平均粒子径としては、20〜90nmがより好ましい。
【0019】
13> 電着材料が水系媒体に溶解若しくは分散されてなり、該水系媒体の含有量が55〜93質量%である前記<1>〜<12>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
14> 色材の含有量が0.5〜25質量%である前記<12>又は<13>に記載の低電位電着用電着液である。
【0020】
15> pH値が、電着材料が析出開始するpHaと、該pHaから電着材料の溶解方向に1.9の範囲となるpHbとの間にある前記<1>〜<14>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
16> 導電性材料が、光透過性の基体上に光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜とをこの順に有する基板であって、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することにより該選択領域の光半導体薄膜と対向電極との間に電圧が印加される前記<1>〜<15>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
【0021】
17> 電圧が5V以下である前記<1>〜<16>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。3.0V以下がより好ましい。
18> pH調整剤を含有し、該pH調整剤が、アンモニア系化合物、飽和若しくは不飽和アミン類、第4級アンモニウム化合物、及びテトラアルキルアンモニウム化合物から選択される少なくとも一種である前記<1>〜<17>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
【0022】
19> pH調整剤の含有量が30mmol/l〜18mol/lである前記<18>に記載の低電位電着用電着液である。
20> 導電率が0.1〜100mS/cmである前記<1>〜<19>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
21> 水可溶であって、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体を含有し、該液体の含有量が0.5〜25質量%である前記<1>〜<20>のいずれかに記載の低電位電着用電着液である。
【0023】
22> 電着材料を含む水系の電着液に導電性材料を接触させた状態で、該導電性材料と電着液中に配置された対向電極との間に電圧を印加し、前記導電性材料に電着材料よりなる電着膜を析出形成する工程を含む電着方法において、前記電着液が、前記<1>〜<21>のいずれかに記載の低電位電着用電着液であることを特徴とする電着方法である。
前記導電性材料が、光透過性の基体上に光透過性の導電膜を有する基板、及び光透過性の基体上に光透過性の導電膜が配列された基板のいずれかである態様も好適である。
23> 電着膜を析出形成する工程で形成された電着膜を熱処理する工程を有する前記<22>に記載の電着方法である。
24> 熱処理の温度が180℃以上である前記<23>に記載の電着方法である。前記温度としては、200℃以上が好ましい。
25> 導電性材料を陽極電極とし、かつ電着電圧が5V以下である前記<22>〜<24>のいずれかに記載の電着方法である。3.0V以下がより好ましい。
【0024】
26> 導電性材料が、鉄及びその化合物、ニッケル及びその化合物、亜鉛及びその化合物、銅及びその化合物、チタン及びその化合物、及びこれらの混合材料より選択される少なくとも一種である前記<25>に記載の電着方法である。
27> 導電性材料が、光透過性の基体上に光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜とをこの順に有する基板であって、前記基板を、電着液に少なくとも前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することにより該選択領域の光半導体薄膜と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に電着材料よりなる電着膜を析出形成する前記<22>〜<24>のいずれかに記載の電着方法である。
【0025】
28> 光半導体薄膜が、酸化チタン系化合物を主に含有してなる前記<27>に記載の電着方法である。
29> 導電性材料が、結晶系、微結晶系及びアモルファス系の少なくとも一種よりなるシリコン系半導体を含む電子回路材料を備える前記<22>〜<28>のいずれかに記載の電着方法である。
【0026】
30> 電極対の一方をなす導電膜と他方をなす対向電極との間にバイアス電圧を印加した状態で光照射する前記<27>〜<29>のいずれかに記載の電着方法である。
31> 電着材料が色材を含有してなり、互いに異なる色相の色材を含む複数の電着液を用いて、光半導体薄膜の選択領域に電着膜を析出形成する工程を2回以上繰り返す前記<27>〜<30>のいずれかに記載の電着方法である。
【0027】
32> 電着膜として着色膜及びブラックマトリックスを析出形成する工程において、最後に析出形成される着色膜又はブラックマトリックスが、電圧及び光のいずれかを基板全面に印加若しくは照射することにより電着膜の未形成領域に形成される前記<27>〜<31>のいずれかに記載の電着方法である。
33> 電着膜として着色膜及びブラックマトリックスの少なくとも一種が析出形成された基板を洗浄する洗浄工程が設けられ、該洗浄工程の洗浄液のpH値が、電着材料が析出開始するpHaと、該pHaから電着材料の析出方向に0.3〜1.5の範囲内となるpHcとの間にある前記<27>〜<32>のいずれかに記載の電着方法である。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の低電位電着用電着液においては、電着材料を構成する電着性高分子材料として、疎水性モノマーと親水性モノマーと可塑性モノマーとからなる共重合体を少なくとも一種含有する。また、本発明の電着方法においては、前記本発明の低電位電着用電着液が用いられ、低電位の電圧を印加して膜形成する。そして、電着膜を析出形成した後、形成された電着膜を熱処理することが好ましい。
以下、本発明の低電位電着用電着液及びこれを用いた電着方法について詳細に説明する。
【0029】
<低電位電着用電着液>
本発明の低電位電着用電着液は、水系の電着液であって、該電着液に接する導電性材料(以下、「被電着材」ということがある。)と対向電極との間に電圧が印加されることにより、前記導電性材料に電着材料よりなる電着膜を析出形成し得る方法に用いられ、水系溶媒に電着性高分子材料を含む電着材料が溶解若しくは分散されてなる。また、必要に応じて、色材やpH調整剤等の他の成分を含有してなる。
【0030】
ここで、導電性材料と対向電極との間に電圧が印加されることにより、前記導電性材料に電着材料よりなる電着膜を析出形成し得る方法には、(1) 電着塗装等に代表され、電極(必要に応じてパターン化される)に電圧を印加して電着(膜形成)する電着法、(2) 電圧印加手段として、光半導体への光照射による光起電力を利用して電着(膜形成)する、いわゆる光電着法等が含まれる。
【0031】
後者(2)の光電着法については、下記▲1▼〜▲4▼のいずれの光電着法にも本発明の低電位電着用電着液を適用することができる。
▲1▼ 導電膜及び光半導体薄膜を有する電着用基板(薄膜トランジスタ(TFT)と導電膜とが配列形成されていてもよい)を水系の電着液に接触配置した状態で、光半導体薄膜の選択領域に光照射することにより電着用基板と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に電着膜を析出形成する方法、
▲2▼ 前記▲1▼において、電極対の一方をなす導電膜と電着液中に配置され電極対の他方をなす対向電極との間にバイアス電圧を印加した状態で、更に光半導体薄膜の選択領域に光照射する方法、
▲3▼ 前記▲1▼において、TFTと導電膜とが配列形成された電着用基板を用い、TFTを選択的に駆動し、該駆動電圧を対応する導電膜と電極対の他方をなす対向電極との間に印加することにより、あるいは印加した状態で更に全面照射することにより、駆動するTFTに対応する導電膜上の光半導体薄膜上にのみ電着膜を析出形成する方法、
▲4▼ 特願平11−322507号及び特願平11−322508号に記載の光触媒着膜方法、
【0032】
(電着材料)
前記電着材料は、電着性高分子材料を含んでなり、該電着性高分子材料として、疎水性モノマーと親水性モノマーと可塑性モノマーとからなる共重合体の少なくとも一種を含んでなり、前記共重合体を構成するモノマーの最小構成単位の総質量に対して、前記可塑性モノマーの最小構成単位の質量が30〜70質量%であり、前記親水性モノマーの最小構成単位の質量が9〜30質量%であり、前記疎水性モノマーの最小構成単位の質量が15〜45質量%であって、前記可塑性モノマーのモノポリマー状態におけるガラス転移点を−125℃〜50℃の範囲とする。また、必要に応じて色材、導電材料等を含んでなる。
【0033】
−電着性高分子材料−
前記電着性高分子材料(電着材)は、pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する材料であり、親水性モノマーと疎水性モノマーと可塑性モノマーとからなる共重合体の少なくとも一種を含んで構成される。即ち、電着性高分子材料は実質的に膜を形成するものであり、水系液体(pH調整を行った水系液体を含む。)中でイオン解離し、十分な溶解性あるいは分散性を示す親水性モノマーと、水素イオン濃度の変化により溶解度が変化し非水溶性を示す疎水性モノマーと、優れた成膜性(被電着材への接着性)を備え、膜形成(乾燥)後に膜質劣化を抑さえる可塑性モノマーとが共重合してなる共重合体を含んでなり、光透過性であることが好ましい。
【0034】
ここで、電着性高分子材料としては、電着膜中での再溶解を回避し、電着膜を迅速に形成でき、しかも強い凝集力により耐水性に優れた着色膜が得られる観点から、溶液のpH変化に依存して急峻に溶解度が変化する性質(溶存状態→析出の変化)を有するもの、即ち、大きなヒステリシス特性を示すものが好ましい。ここで、析出状態への変化が急峻で、かつ逆の溶存状態への変化が緩慢であるものがなお好ましい。例えば、溶液の±2.0のpH変化に対応して、より好ましくは、±1.0のpH変化に対応して、特に溶存状態から析出状態に変化し、又pHの回復により析出状態から溶存状態に変化する時に時間的に変化の遅延によるヒステリシス特性を持つ材料が好ましい。
【0035】
本発明においては、電着性高分子材料として、特に、互いに異なる性質を有する3種のモノマーを最小構成単位(親水性モノマー単位、疎水性モノマー単位及び可塑性モノマー単位)としてなる共重合体を用いることが重要であり、該共重合体を含むことによって、第一に、親水性モノマー単位の作用により、水系媒体に対する易溶性を確保でき、第二に、疎水性モノマー単位の作用により、強い凝集力により耐溶剤性、耐水性に優れた電着膜を迅速に形成することができ、第三に、親水性及び疎水性モノマー単位の作用により、pHの変化により水性液体に対する溶解性ないし分散性が低下する機能を持たせ、電着時において、溶液のpH変化に依存して急峻に溶解度が変化する性質(溶存状態→析出の変化)、即ちヒステリシス特性を示し、電着液中での再溶解を回避でき、第四に、可塑性モノマー単位の作用により、被電着材への成膜性(接着性)が向上し、低電位の電圧印加によって均一な膜厚及び着色濃度を有し表面平滑な膜形成が可能で、しかも膜形成(乾燥)後にクラック等の膜質の低下を回避することができる。前記低電位の電圧としては5V以下でよく、3.0V以下が好ましく、2.8V以下が特に好ましい。尚、モノマーの最小構成単位とは、モノマー中に不飽和結合と結合する末端基が外れ、2価の結合手を持つ単位をいう。
【0036】
ここで、疎水性モノマーとは、分子内に疎水基を有し、モノマー全体として疎水性を示すモノマーをいい、疎水性を示す範囲で同一分子内に親水基を有していてもよく、親水性モノマーとは、分子内に親水基を有し、モノマー全体として親水性を示すモノマーをいい、親水性を示す範囲で同一分子内に疎水基を有していてもよい。また、可塑性モノマーとは、分子内に可塑性基を有し、モノマー全体として可塑性を示すモノマーをいい、可塑性を示す範囲で同一分子内に疎水基及び/又は親水基を有していてもよい。
【0037】
前記共重合体において、共重合する親水性モノマー、疎水性モノマー、及び可塑性モノマーの各最小構成単位の構成比(共重合比)としては、pH変化による析出効率が特に高く、付着しやすく低電位でも成膜でき、かつ均一膜を形成し得る着膜(ヒステリシス)特性を示し、電着液の液性も安定で、クラック等を生じ難い良好な膜質とし得る点で、以下に示す範囲が好ましい。
【0038】
共重合する親水性モノマーの最小構成単位の質量としては、水系液体(pH調整を行った水系液体を含む)に対して十分な溶解性若しくは分散性を確保する点で、共重合体を構成するモノマーの最小構成単位の総質量の9〜30質量%が好ましく、11〜29質量%がより好ましく、17〜24質量%が特に好ましい。前記親水性モノマーの最小構成単位の質量が、9質量%未満であると、水に対する溶解度が低下しすぎ、水に溶けず溶液の調製が困難となることがあり、30質量%を超えると、pHの変化により水溶性から非水溶性、或いは、この逆に可逆的に変化しやすくなりすぎて、析出膜の再溶解を起こしやすくなることがある。
【0039】
共重合する疎水性モノマーの最小構成単位の質量としては、共重合体を構成するモノマーの最小構成単位の総質量の15〜45質量%が好ましく、23〜39質量%がより好ましく、28〜37質量%が特に好ましい。
前記疎水性モノマーの最小構成単位の質量が、15質量%未満であると、析出形成された電着膜の耐水性や膜強度が不十分となることがあり、45質量%を超えると、共重合体の水系溶媒に対する親和性が低下して適量を溶解できなかったり、沈殿を生じたり、或いは、電着液の粘度が高くなりすぎて均一な膜を形成できないことがある。
一方、疎水性モノマーの質量が前記範囲にあると、水系溶媒との親和性も高く、電着液の液性が安定化するとともに、電着効率も高いので好ましい。
【0040】
更に、図2に示すように、共重合する可塑性モノマーの最小構成単位の質量は、形成された電着膜のクラック(ひび割れ等)の発生に影響するので、下記範囲とするのが好ましい。図2は、電着性高分子材料の重量平均分子量と形成膜のクラック発生量との関係を示すグラフである(図2中の「%」は「質量%」を表す)。即ち、
共重合する可塑性モノマーの最小構成単位の質量としては、被電着材への付着性、接着性を高め成膜性を向上させ、かつ乾燥後の膜質を改善(柔軟化)する点で、共重合体を構成するモノマーの最小構成単位の総質量の30〜70質量%が好ましく、40〜58質量%がより好ましい。
前記可塑性モノマーの最小構成単位の質量が、30質量%未満であると、成膜性が低下して低電位で均一な膜が形成できなかったり、膜形成(乾燥)後、クラック(膜のひび割れ)等を生じて膜質が劣化することがあり、70質量%を超えると、膜の機械強度が不足したり、パターンエッジ部の形成がなまったりすることがある。
【0041】
前記可塑性モノマーとしては、該可塑性モノマーをモノポリマー状態とした時のガラス転移点が−125℃〜50℃の範囲にあるものが好ましく、耐熱性を安定化でき、クラックを生じ難い可塑性を付与し得る点で、前記ガラス転移点は−80℃〜25℃の範囲にあるものがより好ましい。
前記ガラス転移点が−125℃未満であると、十分な耐熱性を得ることはできないことがあり、50℃を超えると、形成膜にクラックを生じ易くなることがある。
前記モノポリマーのガラス転移点は、各種の学会誌や技術文献、例えば、「Polymer Handbook」のIII章 Glass Transition of Polymers(p.140〜147、Wiley Interscience社)、「高分子ハンドブック」の4.2章ガラス転移温度(p.525〜531、培風館)等の記載を参照できる。
【0042】
また、電着膜に軟性を付与し、膜形成(乾燥)後のクラック(ひび割れ)等を回避する点では、共重合体のガラス転移点(Tg)を下記範囲とするのが好ましい。即ち、図3に示すように、ガラス転移点を下げると、クラックの発生を抑制することができる。図3は、電着性高分子材料のガラス転移点とクラック発生量との関係を示すグラフである。
前記共重合体のガラス転移点は、下記範囲となるように、可塑性モノマーの融点及び共重合比を相互に変えることにより調整することができる。例えば、分子量に応じて、可塑性モノマーの共重合比を変えてもよい。
【0043】
前記共重合体のガラス転移点(Tg)としては、25〜90℃が好ましく、35〜70℃がより好ましく、45〜60℃がより好ましい。
前記Tg値が、25℃未満であると、膜の機械強度、耐熱性が不足したり、パターンエッジ部の形成不良が発生することがあり、90℃を超えると、容易にクラックを生じて、一定の膜質を保持できないことがある。
【0044】
前記共重合体の重量平均分子量としては、図1に示すように、膜性(膜厚、表面平滑性等)及び膜の接着強度が良化する点で、6000〜30000が好ましく、6000〜28000がより好ましく、9000〜22000が特に好ましく、13000〜22000が最も好ましい。
前記重量平均分子量が、6000未満であると、電着材料の析出量が少なく、再溶解し易くなって膜が不均一となることがあり、30000を超えると、電着液の調製が行い難くなったり、また、図2に示すように、電着膜中にクラック(ひび割れ等)が発生したり、電着膜が粉末化して膜質堅牢性の高い電着膜が得られないことがある。
【0045】
また、前記共重合体は、流動開始点が180℃以下であり、分解点が150℃以上、好ましくは220℃以上であると、基板上に形成された電着膜の膜性が良好になり、その後に引き続き行う電着による劣化を招き難く、更に電着後のデバイス作製工程における耐性(余裕度)をも向上し得る点で好ましい。
【0046】
共重合体に要求される疎水性と親水性のバランスは、例えば、共重合する疎水性モノマーの最小構成単位の割合(質量)と親水性モノマーの最小構成単位の割合(質量)とにより表すことができるが、共重合体がアニオン性高分子の場合は、酸価で表すこともできる。
共重合体の酸価としては、電着特性が良好となる点で、60〜160が好ましく、90〜145がより好ましい。前記酸価が、60未満であると、水系溶媒への親和性が低くなり沈殿したり、電着液の粘度が高くなりすぎて、均一な電着膜が形成できないことがあり、160を超えると、形成された電着膜の耐水性が低下したり、電着効率が低下することがある。
【0047】
本発明に係る共重合体は、陰イオン解離性基(例えば、カルボキシル基等)を有するアニオン性分子であってもよいし、陽イオン解離性基(例えば、アミノ基、イミノ基等)を有するカチオン性分子であってもよい。いずれを選択するかは、電着性高分子材料が有するpHの変化に対応した溶解度の変化特性を目安にすることができる。
【0048】
前記共重合体の中でも、カルボキシル基を含む親水性モノマーを最小構成単位として共重合したものが好ましい。
例えば、カルボキシル基を有する電着性高分子材料の場合、pHがアルカリ性領域においてはカルボキシル基が解離状態になって水性液体に溶解し、酸性領域においては解離状態が消失し溶解度が低下し析出する。また、疎水性モノマー単位の存在は、前記のようなpHの変化によってイオン解離している基がイオン性を失うこととあいまって、瞬時に膜を析出させるという機能を電着性高分子材料に付与している。
【0049】
本発明に係る共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はブロック共重合体とグラフト共重合体若しくはランダム共重合体との混合物が好ましい。更に、薄膜トランジスタ(TFT)を備える基板を用い、該TFTの駆動電圧を利用して膜形成する場合には、色材の分散性を向上させる観点から、ブロック共重合体、又はブロック共重合体とグラフト共重合体との混合物が特に好ましい。
【0050】
前記ブロック共重合体の中でも、色材の分散性が良好である点で、疎水性モノマーをA、親水性モノマーをB、可塑性モノマーをCとして表した場合、疎水性モノマーAよりなるブロック部分と、親水性モノマーBよりなるブロック部分と、可塑性モノマーCよりなるブロック部分とが、例えばBBB−AAA−CCCで表されるトリブロック共重合体が好ましい。また、グラフト共重合体の中でも、例えばAAAAAAで表されるポリマー主鎖に、BBBBBB及びCCCCCCで表される複数の側鎖が結合したグラフト共重合体が好ましい。
【0051】
これは、色材としては主に顔料が用いられるが、Aよりなる疎水性ブロック部が、疎水性を示す顔料表面に対する吸着基として作用すると同時に、顔料表面において高分子鎖が適当に絡み合い、適当な厚みを持つ高分子で覆われることにより、隣接する顔料同士の凝集を防止することができるためと考えられる。
この時、Bよりなる親水性ブロック部は溶媒である水と親和して、水系電着液中での顔料の分散安定性を補助するように作用する。従って、水不溶性の顔料は、互いに凝集することなく、安定に分散された状態で保持される。
【0052】
共重合体を構成する親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基等を含む親水性モノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、フマル酸及びその誘導体、クロトン酸及びその誘導体、桂皮酸及びその誘導体、フタル酸及びその誘導体、トルイル酸及びその誘導体、トリメリト酸及びその誘導体等が好適に挙げられる。共重合体中、前記親水性モノマーの少なくとも一種が共重合していればよく、二種以上が共重合してなる共重合体も好ましい。
【0053】
より具体的には、陰イオン性解離基を有する親水性モノマーとして、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、(無水)マレイン酸、(無水)トリメリト酸、(無水)フタル酸、ヘミメリット酸、コハク酸、アジピン酸、プロピオル酸、プロピオン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー、及びこれらの誘導体が挙げられる。
中でも、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらの誘導体が、これらをモノマーとするイオン性分子は、pHの変化により状態変化が急峻であるとともに、水系液体への親水性も高い点で好ましい。
【0054】
また、前記親水性モノマーのように陰イオン性解離基を有しない下記モノマーを、親水性モノマーとして用いてもよい。該モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル等が挙げられる。
【0055】
共重合体を構成する疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン及びその誘導体、ベンゼン及びその誘導体、アルキルベンゼン及びその誘導体、1−フェニル−ブタジエン及びその誘導体等が好適に挙げられる。共重合体中、前記疎水性モノマーの少なくとも一種が共重合していればよく、二種以上が共重合してなる共重合体も好ましい。
より具体的には、前記スチレン及びその誘導体として、例えばスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、及びこれらのベンゼン環が置換された置換体等が、前記アルキルベンゼン及びその誘導体として、例えばエチルベンゼン、ジエチルベンゼン等が、更にベンゼン、1−フェニル−ブタジエン、等が好適に挙げられる。中でも、疎水化効率が高く析出効率が良好である点、親水性モノマーと共重合する際の制御性に優れる点で、スチレン、α−メチルスチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、1−フェニル−ブタジエンが好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、1−フェニル−ブタジエンが特に好ましい。
【0056】
共重合体を構成する可塑性モノマーとしては、エステル基を含むモノマーが挙げられ、例えば、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、無水マレイン酸エステル類、フタル酸エステル類、及びこれらの誘導体等が好適に挙げられ、既述の通り、モノポリマー状態とした時のガラス転移点が−125〜50℃の範囲内にあるものが好ましい。共重合体中、前記可塑性モノマーの少なくとも一種が共重合していればよく、二種以上が共重合してなる共重合体も好ましい。
【0057】
前記メタクリル酸エステル類及びその誘導体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、アクリル酸エステル類及びその誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、無水マレイン酸エステル類及びその誘導体としては、例えば、無水マレイン酸メチル、無水マレイン酸エチル等が挙げられ、フタル酸エステル類及びその誘導体としては、例えば、フタル酸メチル、フタル酸エチル等が挙げられる。
上記エステル類において、メチル、エチル、ブチル等のアルキル部が、単一若しくは複数の水酸基等の置換基で置換されたヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシブチル等も好ましい。
【0058】
前記共重合体を色材と共に使用する場合は、該共重合体としては、色材の色純度を低下させない点で、透明な電着膜を形成し得るものが好ましく、例えば、水溶性の(メタ)アクリル酸エステル類は特に好ましい。
以上の点より、pH変化による状態変化が急峻で、親水性も高い観点からは、共重合体を構成するモノマーとして、スチレン及びその誘導体と、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、エステル類(より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類)とを共重合成分に含む共重合体が特に好ましい。
【0059】
本発明の低電位電着用電着液においては、電着性高分子材料として、前述の3種のモノマーを最小構成単位(親水性モノマー単位、疎水性モノマー単位及び可塑性モノマー単位)としてなる共重合体と共に、他の公知の電着能を持つ高分子(例えば、pHの変化により溶解性若しくは分散性が低下して析出しうるイオン性高分子や、イオン性の分子で電着能を有する色材(電着性色素)等)を併用してもよい。
また、上述の通り、共重合する親水性モノマー、疎水性モノマー及び可塑性モノマーのそれぞれについて、各々の種類数やそれらの組合せは共重合体の特性や目的等に応じて選択でき、3元共重合のみならず4元共重合以上も好適である。
【0060】
また、電着性高分子材料は、形成される電着膜に耐溶剤性を付与し膜減りやダメージを回避する点で、熱、光等のエネルギーの付与、他の架橋開始剤の作用、あるいは縮合若しくは重合反応によって架橋反応を起こし得る架橋性基を有することが好ましく、前述の3種のモノマーを最小構成単位(親水性モノマー単位、疎水性モノマー単位及び可塑性モノマー単位)としてなる共重合体が架橋性基を含む態様も好適である。即ち、デバイス形成プロセスにおいて膜形成ごとに施される洗浄や、電着膜の表面への他の機能性膜の形成の際に用いる各種有機溶剤、強酸、強塩基等による、膜減りや膜面へのダメージを回避することができる。
【0061】
電着性高分子材料中に占める前記架橋性基の組成比(質量比)としては、電着性能と形成された膜特性の観点から、0.1〜30質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。該組成比が、0.1質量%未満であると、架橋による膜強化効率が低く、耐溶剤性が不十分であることがあり、30質量%を超えると、電着性能や膜特性が低下することがある。
【0062】
前記架橋性基の具体例としては、カルボニル基、シアノ基、ジオール基、フェノキシ基、シクロヘキサンカルボニル基、アミド基、及びこれらの誘導基等が挙げられる。
【0063】
上記のように、互いに異なる性質を有する3種のモノマーを最小構成単位としてなる共重合体の含有量としては、低電位電着用電着液の全質量の0.3〜25質量%が好ましく、0.7〜7質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.3質量%未満であると、膜形成性が低下し不安定となり、膜性が劣ることがあり、25質量%を超えると、電着液の粘度が高くなり、液補給性等の製造上の問題を生ずることがある。
【0064】
電着性高分子材料は、それが溶解している電着液のpH値の変化に応じて、溶解状態あるいは分散状態から上澄みを発生して沈殿を生じる液性変化が、pH範囲領域2以内で生じることが好ましく、1以内で生じることがより好ましい。
前記のpH範囲領域が2以内であると、通電による急峻なpH変化に対しても瞬時に画像の析出が可能となり、また析出する画像の凝集力が高く、電着液への再溶解速度が低減するなどの効果が優れている。このことにより、高い透光性と耐水性を有するフィルター層が得られる。前記pH範囲領域が2を超えると、十分な画像構造を得るための着膜速度の低下や、画像の耐水性の欠如などが起こりやすい。
【0065】
さらに、前記電着性高分子材料が溶解した状態の電着液は、pH値の変化に対して沈殿を生じる状態変化が急峻に生じることの他に、更に再溶解しにくいという特性を有していることが好ましい。この特性はいわゆるヒステリシス特性といわれるもので、例えば下記表1−(B)に示すように、アニオン性の電着材料の場合ではpHが低下することにより急激に析出が起こるが、pHが上昇しても(例えば電着終了時、すなわち電圧印加が0になった場合等)再溶解が急激に起こらず、析出状態が一定時間保持されることを意味する。一方、下記表1−(A)に示すようにヒステリシス特性を示さないものの場合では、pHが僅かに上昇しても溶解度が上昇し、析出膜が再溶解しやすい。ここで、表1は、ヒステリシス特性を示さない電着性高分子材料(ポリアクリル酸)のpH変化による析出性(A)と、ヒステリシス特性を示す電着性高分子材料(本発明に係る、疎水性モノマーと親水性モノマーと可塑性モノマーとの共重合体を含む材料)のpH変化による析出性(B)とを示す。
【0066】
【表1】
Figure 0004172149
【0067】
上記のごとき特性を有する電着性高分子材料は、親水基と疎水基の種類、親水基と疎水基のバランス、酸価、分子量等を適宜調節することにより得られる。
【0068】
前記色材としては、染料や顔料等の色材が挙げられ、耐光性や均一厚の膜を安定に形成しうる点から顔料が好ましい。染料及び顔料自身は、既述の通り必ずしも電着能を有することを要せず、この場合は、例えば電着性高分子材料が凝集・析出して着膜する際にその膜に取り込まれて膜を着色する。
【0069】
前記顔料としては、公知の赤色、緑色、青色等の顔料を挙げることができ、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料等が挙げられる。
顔料の粒子径は小さい程色相の再現性がよい。前記顔料の数平均粒子径としては、分散性及び着色膜の透明性の観点から、0.2〜150nmが好ましく、20〜90nmがより好ましい。前記数平均粒子径が、0.2nm未満であると、製造時のコストが高くなると共に、安定した品質が得られないことがあり、150nmを超えると、色相にズレを生じ易く、濁りを生じて透明性の低下をも招くことがある。
【0070】
前記電着性色素としては、液のpHが変化することにより溶解性あるいは分散性が低下する染料、即ち、イオン性染料が挙げられる。該イオン性染料と前記顔料を組み合わせて使用することもできる。
前記イオン性染料としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、フェノサジン系、フェノチアジン系、フルオレセイン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、ジフェニルメタン系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、アゾメチン系、ローダミンラクタル系、ナフトラクタム系、トリアゼン系、トリアゾールアゾ系、チアゾールアゾ系、アゾ系、オキサジン系、チアジン系、ベンズチアゾールアゾ系、キノンイミン系の染料、及びカルボキシル基、アミノ基、又はイミノ基を有する親水性染料等が挙げられる。
【0071】
具体的には、フルオレセイン系の色素であるローズベンガルやエオシンはpH4以上では水に溶けるが、それ以下では中性状態となり沈殿する。同様にジアゾ系のPro Jet Fast Yellow2はpH6以上では水に溶けるが、それ以下では沈殿する。
また、カラーフィルタ用の色材としては、本発明者らが、光電着法に適する材料として先に、特開平11−105418号公報、特願平9−329798号として提案した明細書に記載の着色材なども用いることができる。
【0072】
また、二種以上の色材を用いれば、任意の混合色が得られ、染料と顔料を組合わせることも可能である。2種類の着色材を混合して混合色を出す場合の着色材のイオン性については、色材が沈殿あるいは析出することを防ぐため、無極性の色材を使うか、あるいは同極性の色材を用いるのが一般的である。しかし、ある種の染料同士では、錯体が形成されずイオンが共存した状態を取るので、この場合には、塩基性溶液と酸性溶液を混合しても析出物を抑えることができ、イオンの極性によらず使用することができる。
本発明においては、アニオン性基を有する電着性高分子材料を用いて顔料を分散させた電着液が、カラーフィルタ用として好ましく用いられる。
【0073】
本発明の低電位電着用電着液における色材の含有量としては、0.5〜25質量%が好ましく、0.8〜23質量%がより好ましく、1.2〜6質量%が特に好ましく、1.8〜5.5質量%が最も好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、十分な着色濃度の電着膜が得られないことがあり、25質量%を超えると、膜表面の平滑性に劣り、光透過率が低下することがある。
【0074】
導電性の電着膜(カラーフィルタ膜を含む)を形成する場合には、電着液中に、導電材料や導電性の色材を含有させる。
前記導電材料としては、光透過性の導電材料、光透過性の導電性高分子化合物、塩、導電性の色材等が挙げられる。前記光透過性の導電材料としては、ITO、SnO2等の透明導電性材料、及びその混合物が挙げられる。前記塩としては、後述の塩が挙げられる。前記導電性の色材としては、前記イオン性染料の他、カーボンブラック等が挙げられる。
【0075】
次に、電着液の導電率ついて説明する。
導電率は電着速度、換言すれば電着量に関連しており、導電率が高くなるほど一定時間に付着する電着膜の膜厚は厚くなり約20mS/cmで飽和する。従って、高分子材料や電着性の色素イオンだけでは導電率が足りない場合には、電着に影響を与えないイオン、例えばNH4 +イオンやCl-イオンを加えることで、電着速度をコントロールすることができる。通常、電着液は、着色膜の形成に影響を与えない塩(支持塩)を加えて導電率を高める。
【0076】
本発明の低電位電着用電着液の導電率としては、0.1〜100mS/cmが好ましく、1〜15mS/cmがより好ましく、2〜14mS/cmが特に好ましい。前記導電率が、0.1mS/cm未満であると、十分な電流が得られず、電着膜を迅速に形成できないことがあり、100mS/cmを超えると、電着量の制御性が悪くなることがある。
【0077】
電気化学において、一般的に使われる支持塩としては、NaClやKCl等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属等の無機系材料、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、テトラエチルアンモニウムパークロレート(Et4NClO4)等のテトラアルキルアンモニウム塩等の有機系材料が挙げられる。しかし、アルカリ金属は、基板上にシリコン系半導体を含む電子回路材料(薄膜トランジスタ等)の特性に悪影響を及ぼすため、該電子回路材料が存在する場合にはこれを含む電着液は利用できず、特にNH4ClやNH4NO3等のアンモニウム塩や、Et4NClO4、n−Bu4NClO4、Et4NBF4、Et4NBr、n−Bu4NBr等のテトラアルキルアンモニウム塩を用いることが好ましい。このような化合物は電着膜中に存在しても、トランジスタ特性に悪影響を及ぼさない。
【0078】
また、電着液のpHも当然ながら薄膜の形成に影響する。例えば、薄膜形成前には着膜性分子の溶解度が飽和するような条件で着膜を行えば薄膜形成後には再溶解しにくい。ところが、未飽和状態の溶液のpHで膜の形成を行うと、薄膜が形成されても、光照射をやめた途端に膜が再溶解し始める。従って、溶解度が飽和するような溶液のpHで薄膜の形成を行うほうが望ましいことから、酸やアルカリ等のpH調整剤を用いて電着液を所望のpHに調整することが望まれる。
【0079】
前記pH調整剤としては、前記同様の理由で、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む無機系のアルカリ剤は使用できないことから、有機系のpH調整剤であって、沸点が200℃以下のものが好ましく、50〜160℃のものがより好ましい。前記沸点が200℃を超えると、電着膜の形成後には付着残留した濃縮液で悪影響を受けることがあるのでpH調整剤を除去することが好ましいが、該除去処理が容易に行えず電着膜からの除去率が低下したり、除去温度温度を高くせざるを得ないことがある。また、沸点が50℃未満であると、電着液から常に蒸散しやすく電着液の安定性が低下することがある。
【0080】
前記pH調整剤としては、例えば、アンモニア系化合物、飽和若しくは不飽和アミン類、第4級アンモニウム化合物、及びテトラアルキルアンモニウム化合物等が好適に挙げられ、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。中でも、テトラメチルハイドロオキサイドは、フォトレジストのエッチング液として多用されており、薄膜トランジスタとの相性が良いため、特に好適に利用できる。
【0081】
具体的には、例えば、アンモニア水、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、テトラエチルアンモニウムパークロレート、テトラメチルアンモニウムパークロレート、テトラプロピルアンモニウムパークロレート、トリエチルプロピルアンモニウムパークロレート、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシ、テトラエチルアンモニウムヒドロキシ、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン等が挙げられる。
【0082】
前記pH調整剤の含有量としては、膜形成時の混入操作や、pHを安定的に調整する観点から、30mmol/l(リットル)〜18mol/lが好ましく、0.1mol/l〜10mol/lがより好ましく、0.6mol/l〜5mol/lが最も好ましい。
【0083】
本発明の低電位電着用電着液においては、pH値としては、膜形成能及び再溶解防止の点で、電着材料が析出開始するpHa(析出開始点)と、該pHaから電着材料の溶解方向に1.9(好ましくは1.7)の範囲となるpHbとの間にあることが好ましい。
【0084】
−水系溶媒−
本発明の低電位電着用電着液は、電着材料を水系溶媒中に溶解又は分散させてなるが、前記水系溶媒とは、水を主成分とし、所望により本発明の効果を損なわない範囲でアルコール等の水と親和性のある他の溶剤や、種々の塩及び添加剤等を添加した溶媒をいう。
低電位電着用電着液中の水系溶媒の含有量としては、液の表面張力の維持、安全性、電着性の制御の点で、55〜93質量%が好ましく、65〜90質量%がより好ましい。
【0085】
また、本発明の低電位電着用電着液には、電着液の水系溶媒の蒸散を防止して電着液の安定性を向上させ、形成後の電着膜に湿潤性を付与してクラック等の発生をより抑制する観点から、水可溶であって、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体を含有させることが好ましい。
水可溶であって、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体としては、例えば、多価アルコール等が挙げられ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0086】
前記水可溶であって、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体の含有量としては、0.5〜25質量%が好ましく、2.2〜7質量%がより好ましく、3〜8質量%が特に好ましい。前記含有量が0.5質量%未満であると、水成分の蒸散が多く、液性変化を起こし易くなることがあり、25質量%を超えると、乾燥を容易に行えなくなることがある。
【0087】
尚、本発明の低電位電着用電着液を用いて形成された電着膜は、その耐熱特性として、200℃、好ましくは220℃の大気(湿度10%RH以下のほぼ絶乾状態)中に30分間放置された後における電着膜の重量変化が5%以下であることが好ましい。
前記耐熱特性において、重量変化が5%を超えるものであると、膜の形状変化や膜質変化を起こして色相が変化することがある。
【0088】
以上のように、電着性高分子材料として、互いに異なる性質を有する3種のモノマー(親水性モノマー、疎水性モノマー及び可塑性モノマー)からなる共重合体を含有することにより、pHの変化に依存して急峻に溶解度が変化ヒステリシス特性を示し、電着液中での再溶解を回避できると共に、被電着材に対する接着性の向上に伴う成膜性を向上させることができるので、低電位の電圧を印加することにより、耐水性に優れ、膜厚及び着色濃度の均一性、及び表面平滑性に優れ、しかも膜形成(乾燥)後にクラック等の膜質低下のない、高品質な電着膜(カラーフィルタ膜)を安定に形成することができる。
【0089】
<電着方法>
本発明の電着方法は、導電性材料を水系の電着液に接触させた状態で、該導電性材料と電着液中に配置された対向電極との間に電圧を印加し、前記導電性材料に電着材料よりなる電着膜を析出形成する工程を含む電着方法であり、前記電着液として、既述の本発明の低電位電着用電着液(以下、単に「電着液」ということがある。)を用いる。
【0090】
例えば、電極対の一方を陽極として、電着膜を形成しようとする導電性材料(被電着材)を電着液と接触させ、他方として対向電極を前記電着液中に配置し、両電極間に電圧を印加することにより、陽極である導電性材料の表面で水が電気分解してプロトンを生じ、該表面のpH変化により電着材料が析出して電着膜が形成される。
ここで、電着液として本発明の低電位電着用電着液を用いるので、前記電圧としては高電圧を印加する必要はなく、5V以下の低電圧を印加することによって、均一な膜厚及び着色濃度を有し、表面平滑であって、膜質の良好な電着膜を安定に形成することができる。即ち、低電位の電圧印加による電着塗装が可能である。
【0091】
前記導電性材料としては、透明及び不透明な材料から適宜選択でき、例えば、鉄及びその化合物、ニッケル及びその化合物、亜鉛及びその化合物、銅及びその化合物、チタン及びその化合物、及びこれらの混合材料等が挙げられる。
上記のほか、(1) 光透過性の基体に光透過性の導電膜を備える基板(導電膜と該導電膜に接合する電子回路材料とが配列形成されていてもよい)や、(2) 光透過性の基体に光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜とがこの順に設けられた基板(導電膜と該導電膜に接合する電子回路材料とが配列形成されていてもよい)を、前記導電性材料としてもよい。
【0092】
まず、前記(1)の基板を用いた場合(電着法)について詳述する。
前記(1)の基板を用いる場合、導電膜が対向電極と電極対をなす一方の電極として機能し、該導電膜上に着色された電着膜(着色膜等)を析出形成することができる。電圧の供給には、ポテンショスタット等の外部電源が使用可能である。また、導電膜と該導電膜に接合する電子回路材料(TFT等)とが配列形成されている場合には、電子回路材料を選択的に駆動することにより、電圧として、該駆動電圧を対応する導電膜と電極対の他方をなす対向電極との間に印加し、駆動する電子回路材料に対応する導電膜上にのみ着色された電着膜(着色膜等)を析出形成することができ、カラーフィルタを作製することができる。
【0093】
具体的には、隣接する3個の導電膜上にそれぞれ別個に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の着色膜を形成する必要があり、例えば、まず、隣接する3個の導電膜を赤色顔料と電着性高分子材料が溶解若しくは分散されている赤色用電着液と接触させた後、各導電膜と接合する駆動用ICを制御して赤色画素に対応するTFTのみを駆動させ、該TFTに対応する導電膜上にのみ赤色膜を形成する。形成された赤色膜は、水洗、必要に応じて乾燥、定着され、好ましくは水に対して不溶化処理が施される。次いで、同様の工程を青色用電着液、緑色用電着液を用いて、駆動用ICの制御により駆動する能動素子を変えて同様の操作を繰り返し、隣接する3つの導電膜上にRGB3色の着色膜を形成する。即ち、各色に対応する電着液を用いて、複数の異なる導電膜に対して複数回繰り返し行うことによりフルカラーの着色膜(カラーフィルタ膜)を形成できる。
【0094】
三極式配置とし印加する電圧(陽極と陰極若しくは参照電極との間の電位差)としては、5V以下、好ましくは3.0V以下、特に好ましくは2.8V以下である。該電圧下では、電気分解して生じた多量のプロトンの生成に伴っても酸素の発生量が少なく液体中に溶存するため気体として発生する危険性が少ないので、バブルによる脱泡跡や膜の剥離等による凹凸等が形成されることもなく、本発明の低電位電着用電着液を用いるので、5Vの低電位で膜厚、着色濃度が均一で、表面平滑な電着膜が安定に形成できる。前記参照電極は、電気化学分野で一般に用いられる、電極を三極式配置してなる装置の陽極、陰極を除く、もう一方の電極をいう。
【0095】
次に、電着液中の電着性高分子材料と色材である顔料との分散状態、電着液の基板近傍で生じるpH変化、及びこれに伴う着色電着膜の形成機構について説明する。図4は、水中で分散している顔料粒子の様子を模式的に示す図である。図5は、導電膜を正極とし、図示しない対向電極との間に電圧を印加した直後の液性を示す図である。図6は、電着性高分子材料のカルボキシル基が疎水化し、導電膜(電極)上に電着膜が成膜された状態を示す図である。
【0096】
図4に示す通り、ヒゲ状に表された、疎水性モノマーと親水性モノマーと可塑性モノマーとからなる共重合体等のイオン性分子(電着材)は、顔料粒子の表面に配向して顔料粒子の電着液における分散を補助しており、電着液中に単独で存在するイオン性分子は、光透過性の導電膜上に着色膜を形成する際に着色膜のマトリックス形成物質として作用する。
図4は、光透過性の導電膜に電圧印加されていない状態を表しており、この状態ではイオン性分子の親水性基(例えば、カルボキシル基)は、=R−COO-として溶液中でイオン解離した状態をとっている。
【0097】
図5に示すように、光透過性の導電膜を正極とし、図示しない対向電極との間に電圧が印加されると、前記導電膜に正電荷が付与され、導電膜近傍に存在する水が電気分解反応を起こし、次式で表される反応が生起する。
2O → 2H+ + 1/2O2 + 2e-
上記反応により発生した水素イオンは、電圧が印加された導電膜(電極)近傍の水素イオン濃度を上昇させ、その上昇の程度は電極近傍になるほど大きく、電極から離れるほど小さくなり、それに応じてpHも変化する。
つまり、導電膜表面の近傍で電着液中の水素イオン濃度が急激に上昇する領域、即ち、部分的若しくは特異的若しくは局部的に高水素イオン濃度領域(低pH領域、酸性領域)を生成する。このpH値の等しい領域を線で結ぶと、図5に示すpH等価線で表わすことができる。
導電膜付近で生成した水素イオン(プロトン)は、イオン性分子の親水性基である、例えば、イオン解離した=RCOO-と結合し、
=RCOO- + H+ → =RCOOH
の反応により、カルボキシル基が疎水化し、イオン性分子の持つ親水ドメインの割合が減少して、図6に示すように、光透過性の導電膜上に顔料が取りこまれた樹脂膜(電着膜)が成膜される。
【0098】
ここで、導電膜(電極)付近で生成した水素イオンは、電着液中のイオン性分子の解離陰イオンと次々に結びつくため、この状態ではイオン性分子が導電膜(電極)上に堆積する反応が優先的に進行する。
本発明の電着方法においては、電極表面に生じる水素イオン濃度の局所的変化、即ち、局所的pH変化に基づく水素イオン交換反応により顔料を取りこんだ樹脂膜が形成されるものであり、従来報告されている一般的な電気泳動に基づく電着とはその技術的思想が異なる。
例えば、本発明においては、光透過性の導電膜への印加電圧と、該導電膜表面への相対着膜速度との関係は、図7に示す通り、導電膜への印加電圧が1.4V付近になると水の電気分解が生じ、それと同時に導電膜表面へのイオン性分子の着膜が開始し、3Vに至るまでその着膜速度は、印加電圧に比例して進行する。従来、一般に行われてきた、発生するバブルを用いて攪拌し膜形成する電着の場合に数10〜数100Vの印加電圧を要していたものと、この点で明確に区別できる。
【0099】
前記相対着膜速度は、図7に示す通り、電極付近の多量の水素イオン(プロトン)の発生に伴って酸素ガスを生成する(酸素のバブリング現象)電圧まで直線的に増加する。本発明においては、この電圧間において成膜を行うため、着色膜を形成しようとする導電膜上に酸素ガスが気泡まで成長せずに液体中に溶存するので気泡として生ずることなく、成膜時の気泡の発生による膜剥がれや凹凸がなく、均一厚で表面平滑性に優れた着色膜を安定に形成することができる。
【0100】
次に、印加電圧と、成膜した相対付着量との関係を図8−(1)及び(2)に示す。図8−(1)は、ヒステリシスの小さい電着材料(ブチルアクリレート/アクリル酸(共重合比6/4)の共重合体)の例であり、電着液中での再溶解等を生じ易い点で不適であり、図8−(2)は、ヒステリシスの大きい電着材料(スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸(共重合比3/5/2)の共重合体)の例であり、下記の通り電着材料として好適である。
図8−(2)のように、ヒステリシスの大きい電着材料では、印加電圧を徐々に向上させ、印加電圧が一定の電圧(電気分解開始電位)を超えると、急激にイオン性分子の析出量は増加し、その後印加電圧が徐々に低下した場合でも、電着材料の相対付着量が低下しない特性を有する。このようなヒステリシス性は、イオン性分子を成膜した後の電着液中への再溶解、即ち、形成した膜の保持性を確保して品質低下を防止するのに重要であり、電着材料としては、pHの変化に対応する状態変化(溶存状態→析出の変化と析出→溶解状態の変化)にヒステリシスを示すものが好ましい。即ち、pHの減少又は増加に対応する析出状態への変化は急峻であり、かつpHの増加又は減少に対応する溶存状態への変化は緩慢であると、電着膜の安定性が向上するので好ましい。
電極近傍に生ずる局所的なpH低下は、具体的には、電極近傍ではpH 値にして約1〜2、水素イオン濃度に換算して1012〜1014モル程度の水素イオン濃度の変化(水素イオン濃度の増加、pH値の減少)に相当するものと推定される。
【0101】
次に、前記(2)の基板を用いた場合(光電着法)について詳述する。
前記(2)の基板を用いる場合、導電膜及び光半導体薄膜を有する電着用基板を、電着液に少なくとも前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することにより該選択領域の光半導体薄膜と対向電極との間に電圧(光起電力)を印加し、前記選択領域に電着膜(着色膜等)を析出形成して、カラーフィルタを作製することができる。前記電圧として、光起電力のみを利用した態様である。光照射時に補助電圧としてバイアス電圧を印加しておいてもよい。また、該基板に、更に前記導電膜に接合する電子回路材料(TFT)が導電膜と共に配列形成されている場合には、電子回路材料を選択的に駆動し、該駆動電圧を対応する導電膜と電極対の他方をなす対向電極との間に印加した状態で更に全面照射することにより、駆動する電子回路材料に対応する導電膜上の光半導体薄膜上にのみ着色膜を析出形成して、カラーフィルタを作製することができる。この場合には、電子回路材料がアドレッシング機能を担う。
【0102】
具体例として、例えば、導電膜及び光半導体薄膜を有する電着用基板を用いてカラーフィルタを作製する方法(光電着法)を図18により説明する。図18は、本発明の電着方法において、光電着法により基板上に電着膜を析出形成している状態を説明するための概略説明図である。
【0103】
対向電極38が配置された電着槽42には、電着液37としてブラックマトリクス形成用の本発明の低電位電着用電着液が収納されている。対向電極38は、ポテンショスタット39と接続されている。電着槽42中の液面には、基体31の表面に導電膜32と光半導体薄膜33とが順次積層された電着用基板35が、少なくとも光半導体薄膜33が電着液37と接触するように配置され、作用電極として導電膜32を介してポテンショスタット39と接続されている。
電着用基板35は、基体31の導電膜及び光半導体薄膜が設けられていない側の上方に配置された光源によりフォトマスク40を介して光照射され、マスクの画像パターン状に光照射される。このとき、電着用基板35には、更に導電膜32を介してポテンショスタット39から負のバイアス電圧が印加できるようになっている。
【0104】
電着用基板35としてp型半導体基板を用いた場合、光半導体薄膜33の光照射部にのみ負の光起電力が生じ、この負の光起電力と負のバイアス電圧との総電位が、電着液37の電着材料の電着が開始されるしきい値を超えると、光照射部のみにブラックマトリクス(電着膜)が形成される。
一方、電着用基板35としてn型半導体基板を用いた場合、光半導体薄膜33の光照射部では電着液中の金属イオンの還元反応が抑制されるが、未照射部では負のバイアス電圧により電着液37の電着材料中の金属イオン(色材)が還元されて未照射部のみにブラックマトリックスが(電着膜)形成される。
【0105】
電着用基板35上にブラックマトリックスを形成した後、電着液37を、RGBのいずれかの色材を含有する3種の本発明の低電位電着用電着液に順次代え、正のバイアス電圧を印加し、各色に対応するフォトマスクを用いて光照射することにより、ブラックマトリックスの未形成部分の光照射部に、選択的に各色の着色電着膜が形成され、所望のカラー画像パターンを有するカラーフィルタを作製することができる。
【0106】
また、例えば、図19に示すような態様でカラーフィルタを作製することもできる。即ち、水銀灯、水銀キセノンランプ等の公知の光源1を用い、該光源1から発せられた光は、結像光学部材2を通してフォトマスク3上に結像され、該フォトマスク3を介して所望の画像パターン状の光とした後、さらに結像光学部材4を介して、電着用治具9の電着液収容部に収容された電着液10と接触する光半導体薄膜7表面に結像させて光照射する。この光学系を利用した露光装置は、一般に、プロジェクション型露光装置とも呼ばれている。
この場合、一定の電位を確保する目的で、基板8を基体5表面のITO薄膜6を介してポテンショスタット12と接続し、さらに該ポテンショスタット12は、リファレンス電極13およびカウンター電極11と接続された三極式に配置して構成する等により、バイアス電圧を印加してもよい。
【0107】
この場合において、ブラックマトリックス及び着色電着膜(図中の14)のいずれをも形成することができ、どちらを先に形成してもよく、表面平滑性に優れ、高解像度のカラーフィルタを形成することができる。また、電着材料が均一に分散された電解液を使用するため、均一で、高い導電性を有するカラーフィルタ層を有するカラーフィルタを得ることができる。また、フォトリソグラフィによるパターニングを必要とすることなく、簡易な構造で、低コストにカラーフィルタを製造することができる。
【0108】
この場合、結像光学部材4と結像面(光半導体薄膜7表面)との距離(以下,「焦点距離」という。)は、基板8の裏面から光が入射されるため、基板8の厚み以上離れた位置から光照射される。一方、焦点距離が長くなると、解像力が低下しやすく、露光装置の設計上の点でも極端に焦点距離を離すことは好ましくなく、実用上、前記焦点距離は1〜500mmとすることが好ましい。
前記プロジェクション型露光装置では、焦点深度を±10〜±100μmと深くすることが可能なため、基板8のたわみ等が生じた場合や用いる基体の表面精度が不十分な場合でも結像が可能であり、鮮鋭で、高解像度のカラーフィルタを安定に製造することができる。焦点深度とは、露光面上における照射光の広がりやボケの生じない、深さ方向の遠近の範囲をいう。
【0109】
また、画像パターン状の光をさらに結像する結像光学部材Bに代えて、ミラー反射光学部材を用いて上記同様に構成した露光装置(ミラープロジェクション型露光装置)を用いた態様の装置も好ましい。前記ミラープロジェクション型露光装置は、市販のものを利用できる。
また、光源としては、高圧水銀ランプやDeepUVが出力される水銀キセンノンランプが好ましく用いられる。
【0110】
前記反射光学系の場合、色収差がないことから、光源の全ての波長が使えることになり有利となる。また、反射ミラー面と結像照射面(光半導体薄膜の表面等)との距離を自由に設計できるため、基板を上面に配置して下面から光を入射するなどの自由度がある。
光を下面から入射する場合、電着液を基板上面に設ける必要があるが、基板の保持が容易であり、たわみを少なくでき点で有利である。
また、このようなミラープロジェクション型露光装置においても、焦点深度が±10〜±100μmと深く設計することができ、基板のたわみ等が生じていても、比較的容易に光半導体薄膜の表面に結像させることが可能である。
【0111】
前記(1)及び(2)のいずれかの基板を用いてカラーフィルタを作製する場合、一般に、カラーフィルタはRGB3色の着色膜及び必要に応じてブラックマトリクスからなるので、互いに色相の異なる複数の電着液を用いて、電着膜を析出形成する工程を2回以上(複数回)繰り返し行うことにより作製できる。
ここで、前記(2)の基板を用いた場合には、光照射又は電子回路材料によりアドレッシングされパターン状に電着膜を形成できるので、最後に析出形成される着色膜又はブラックマトリックスについては、電圧及び光のいずれかを基板全面に印加若しくは照射することによって電着膜の未形成領域に形成することができる。
【0112】
次に、電着液の基板近傍で生じるpH変化、及びこれに伴う着色電着膜の形成機構について説明する。
一般的に、水溶液中に白金電極を浸し電流又は電圧を供与すると、アノード近傍の水溶液中のOH-イオンは消費されてO2になり、水素イオンが増えてpHが低下する。これは、アノード近傍でホール(p)とOH-イオンとが結び付く以下の反応が起こるためである。
2OH-+2p+ → 1/2(O2)+H2
但し、この反応が起こるには、基板の電位が一定値(しきい値電位)を超える必要がある。しきい値電位を超えて始めて反応が進行し、水溶液中のpHが変化する(アノード近傍ではpHが低下し、カソード近傍ではpHが増加する)。
本発明において着色電着膜を形成する場合、光照射により光半導体に光起電力を起こさせ、光照射部のみをしきい値電位を超える電位とし、基板の光照射部近傍の電着液のみに前記の反応を進行させるものである。反応が進行した結果、光照射部近傍の電着液のpHは変化し、これに対応して電着材料の溶解度が変化し、光照射部のみに着色電着膜が形成される。
【0113】
このように、光起電力を利用して電気化学反応を引き起こす試みは、今までに種々検討されてきた。例えば、A.Fujishima,K.Honda,Nature vol.238,p37,(1972)には、n型光半導体のTiO2に光を照射して、生じた光起電力により水の電気分解を行った例が報告されている。 また、 光起電力を利用した画像形成の例としては、H.Yoneyama,et al,J.Electrochem.Soc.,p2414(1985)に、Si基板上に光を照射して、生じた光起電力によりピロールを電解重合し、 ドーピング・ 脱ドーピングで画像形成を行った例が報告されている。 また、 我々も導電性高分子のドーピング・ 脱ドーピングに色素を用い、 光で画像形成する方法を特許出願中である。 しかし、光起電力を利用して、導電性高分子により画像形成を行う場合は、使用できる発色材料に限界がある。その結果、多彩色の画像形成を行うのは困難であった。
【0114】
導電性高分子が存在しない系であっても、着色電着膜を形成することは可能であるが、着色電着膜形成に必要な電圧は、 導電性高分子がある場合に比較して大きくなる。 例えば、 前記特開平5−119209号公報「カラーフィルター製造方法及びカラーフィルター製造用の電着基板」、及び特開平5−157905号公報「カラーフィルター製造方法」では、 光半導体薄膜に光照射を行い、該光照射部に発現した光導電性を利用して着色電着膜を形成する技術が開示されているが、印加電圧は、20Vから80Vであり、電着物質は高分子の酸化還元反応を利用している。 一方、 光半導体薄膜の光起電力は1V未満(例えば、Siで0.6V程度)であり、画像を形成するには光起電力だけでは不十分である。 あらかじめ電流又は電圧の供与により電位を嵩上げしておくことも考えられるが、一定の電圧(用いる光半導体のバンドギャップに対応する電圧)を超えて電圧を印加すると(例えば、Siで5Vを越える電圧)、半導体と電着液間のショトキーバリヤーが壊れてしまい、画像形成ができなくなる。本発明では、電着に高分子等の酸化還元反応を利用せず、前記のように、電着液中のpH変化に対応した電着材料の溶解度変化を利用して着色電着膜を形成しているので、ショットキーバリヤーを破壊しない範囲で、電着することが可能である。
【0115】
本発明において、あらかじめ基板(基板の光透過性導電膜)に電圧を印加しておいてもよい。ここで、電気化学分野で一般に用いられる三極式配置の構成の場合には、陽極と陰極若しくは参照電極の間の電位差が4V以下、好ましくは2V以下となるようにバイアス電圧を印加し、電着膜として着色膜又はブラックマトリックスを形成することが好ましい。
このときに印加するバイアス電圧は、光半導体薄膜が発現する光起電力により基板に生じる電位を補い、基板の電位がしきい値電位に達するようにその大きさを設定する。また、印加するバイアス電圧は、ショトキーバリアーを超えない大きさに設定する。あらかじめ基板に印加する電圧が大きすぎると、ショトキーバリアーが壊れ、光照射されていない領域にも電流が流れ、光半導体基板の全領域に電着膜が形成され、着色電着膜の形成位置を制御できなくなるからである。
例えば、TiO2の光起電力は、約0.6Vであるので、2.0Vで電着する電着材料であれば、1.5Vのバイアス電圧を印加しつつ光照射すると、基板(光半導体膜)の光照射部の電位は0.6V+1.5V=2.1Vとなり、電着に必要なしきい値電位を越え、光照射部のみに着色電着膜が形成される。一方、この基板に2.5V以上のバイアス電圧を印加すると、ショトキーバリアーが壊れてしまう。
【0116】
次に、光半導体と電着材料の組合わせについて説明する。
本発明では、光起電力の形成に、光半導体と接触した界面に生じるショトキーバリヤーや、pn接合あるいはpin接合の障壁を利用している。図9にn型光半導体と電着液との界面に生じるショトキーバリヤーを、図10にpin接合のエネルギーバンドを模式的に示す。
例えば、n型光半導体を用いた場合、n型光半導体側を負にした場合には、電流の流れる順方向であるので電流は流れるが、逆に、n型光半導体側を正にした場合は、n型光半導体と電着液とのショトキー接合がバリヤーを形成して、電流は流れない。ところが、n型光半導体側を正にして電流が流れない状態でも、光を照射するとn型光半導体薄膜からエレクトロン・ホールペアが発生し、ホールが溶液側に移動して電流が流れる。この場合、n型光半導体を正電位にするのであるから電着する材料はアニオン性分子でなければならない。従って、n型光半導体とアニオン性分子の組合せとなり、逆にp型光半導体ではカチオンが電着されることになる。特に、n型光半導体を用いた場合はカルボキシル基を有するアニオン性分子、p型半導体を用いた場合はアミノ基、又はイミノ基を有するカチオン性分子を含有する着色電着材料を用いるのが好ましい。
【0117】
本発明においては、上述の電着膜を析出形成する工程で電着膜を形成した後、熱処理する工程(以下、「熱処理工程」ということがある。)を設けることが好ましい。熱処理工程は、電着膜を析出形成する工程を複数回繰り返して所望の電着膜(例えば、カラーフィルタ等)及び必要に応じてブラックマトリクスを形成した後に一括して行ってもよいし、電着膜(着色膜、ブラックマトリクス)を析出形成する工程を1回行うごとに行ってもよい。また、前記熱処理工程は、電着膜を析出形成する工程後に行う乾燥工程(例えば30℃付近)の後に別途設けてもよいし、乾燥工程を兼ねて熱処理工程を設けてもよい。
形成された電着膜を180℃以上(好ましくは200℃以上)の高温で熱処理することによって、再度電着液に接触させた際の耐水性や、洗浄に用いられたり隣接層中に含まれる有機溶剤に対する耐溶剤性を向上させることができ、一旦形成された電着膜の再溶解、膜減りを効果的に回避することができる。したがって、一般にはデバイス作製工程において有機溶剤による洗浄工程が前処理として行われ、従来形成された電着膜には耐溶剤性が必要とされ、例えば耐溶剤性の保護層が設けられていたが、本発明においては、電着膜上に更に保護膜を形成する必要はなく、工程数の減少及び低コスト化を図ることができる。
【0118】
これは、図11〜17に示すように、電着膜中に存在する水酸基(OH基)、カルボキシル基が減少するためと推測される。即ち、図11〜14では、それぞれ20℃,70℃,110℃,148℃の温度で1時間熱処理(乾燥)が施されているが、いずれもほぼ同様のスペクトルを示し、およそ3400cm-1(wavenumber)付近に水酸基に特有の吸収(ピーク;図中の*1)が認められ、約1700cm-1(wavenumber)付近にカルボキシル基に特有の吸収(ピーク;図中の*2)が認められる。しかしながら、図15〜17に示すように、それぞれ200℃,228℃,250℃の温度で1時間熱処理(乾燥)を施した場合には、前記水酸基及びカルボキシル基に特有のピークは低下又は消滅していることがわかる。
図11〜17は、熱処理した後の電着膜のIRスペクトルを示す図である。
【0119】
熱処理工程における熱処理の温度としては、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。上記のように、該温度が180℃未満であると、水や溶剤への再溶解が生じ、耐水性、耐溶剤性が不十分となることがある。また、熱処理温度の上限は、使用する電着性高分子材料の種類により異なるが、電着膜を損なわないように電着性高分子材料の熱分解点を超えないことが望ましい。
【0120】
−ブラックマトリクス−
カラーフィルタには、ブラックマトリクスを形成することが好ましい。ブラックマトリクスの光学濃度は、通常2.5以上必要であり、光が漏れないことが必要である。本発明においては、ブラックマトリクスは絶縁性であることと低誘電率を有することが必要である。
また、光電着法によりカラーフィルタを製造する場合、ブラックマトリックスは、複数色の着色膜の形成前及び形成後のいずれに形成することもできる。
【0121】
複数色の着色膜を形成した後にブラックマトリックスを形成する方法としては、例えば、着色膜が形成された基板に全面に黒色の紫外線硬化樹脂あるいはネガ型フォトレジストを塗布し、次に前記基板の裏側から紫外線等を照射し、着色膜の未形成部分の硬化した、あるいはエッチングにより残った黒色の樹脂膜(ブラックマトリックス)を形成する方法がある。その他、色材としてカーボンブラック等を含むブラックマトリックス形成用の電着液を用い、着色膜が形成された基板にブラックマトリックスを電着法あるいは光電着法により設けることも可能である。また、着色膜を形成する前にブラックマトリックスを形成する方法としては、ブラックマトリックス形成用の電着液を用い、フォトマスクを用いて、光照射部分にのみブラックマトリックスを形成する光電着法のほか、通常のフォトリソ法を用いて形成することもできる。
前記ブラックマトリックス形成用の電着液としては、本発明の低電位電着用電着液が使用できる。
【0122】
中でも、複数色の着色膜を形成した後、ブラックマトリックス形成用の電着液を用いて、電圧及び光のいずれかを基板全面に印加若しくは照射する(電着法若しくは光電着法)のが、電着膜の未形成領域に黒色電着膜としてブラックマトリクスを簡易に形成することができる点で好ましい。この場合、複数色の着色膜に欠陥がある場合でも、ブラックマトリクスで埋設でき、歩留まりを抑制することもできる。
【0123】
電子回路材料(TFT等)を備える基板を用いる場合のブラックマトリクスの形成法としては、前記のように着色膜形成面に黒色の紫外線硬化樹脂やネガ型フォトレジストを塗布した後、基板の裏側から紫外線等を照射する方法や、電着膜の形成前に、黒色のポジ型フォトレジストを電子回路材料を備える基板に全面塗布し、その後電子回路材料が設けられていない側から光を照射した後エッチングすることにより、光が遮断される電子回路材料の部分に黒色レジスト部分を残す方法、等が好適なものとして挙げられる。
前記の黒色レジスト層は、いずれも絶縁保護膜とブラックマトリクスを兼ねるものである。
【0124】
この他にブラックマトリクスは、電子回路材料(TFT等)の電極部を利用することもできる。TFT回路のゲート電極とソース電極の光の遮断性は元々高いが、ゲート電極やソース電極を低反射の金属膜、例えば2層又は3層のCr膜等で形成すれば、カラーフィルタの形成後に電極と電極ライン部分とがブラックマトリックスを兼用することになるので、別途ブラックマトリクスを設けなくてもよい。この場合には、カラーフィルタの開口率を極限まで高めることができ、非常に明るく高精細な液晶表示装置を形成できる。
TFT電極及び電極ラインをブラックマトリクスとして利用する場合には、TFTと光透過性の導電膜を配列形成する際に、TFTの電極を低反射の材料を用いて作製し、該電極にさらに窒化シリコン膜などの絶縁性保護層を設けた後、画素電極である導電膜を形成することにより、ブラックマトリクスを絶縁性とすることができる。
また、カラーフィルタ層との絶縁性が保たれれば、金属系のブラックマトリクスを常法により形成する方法も利用できる。この他、公知のブラックマトリックスの形成法が制限なく利用できる。
【0125】
各色の電着膜及び/又はブラックマトリックスを形成した後、基板に付着している、各工程で用いた電着液を除去する目的で、基板を液体洗浄する洗浄工程を設けてもよい。
用いる洗浄液としては、透明で安全性の高い不活性な液体が好ましい。また、電着膜の固形化が促進されるような洗浄液を用いると、電着膜の膜強度が向上するのでさらに好ましい。そのような洗浄液としては、電着液中の電着材料の析出開始pH値よりも更に析出方向側にpH調製された水系液体が好ましい。このような液体で電着膜が形成された基板を洗浄すると、基板に付着している前工程に使用した電着液等を除去できると共に、電着膜の膜強度をより向上させることができる。
【0126】
具体的には、洗浄性と膜の硬質化の点で、洗浄工程の洗浄液のpH値が、電着材料が析出開始するpHa(析出開始点)と、該pHaから電着材料の析出方向に0.3から1.7(好ましくは0.6から1.5)の範囲内となるpHcとの間、即ち、pHaからpH値として0.3以上(好ましくは0.6以上)析出し易い値に設定することが好ましい。一方、1.5を超えると、着膜された膜の再溶解が著しく生じることがある。
例えば、カルボキシルキ等の陰イオン性解離基を有する電着材料を用いた場合は、洗浄液のpH値が電着材料の析出開始のpH値よりも低く、アミノ基等の陽イオン性解離基を有する電着材料の場合は、洗浄液のpH値が電着材料の析出開始のpH値よりも高くすることにより、電着膜の堅牢性が向上し、結果として解像度の高いカラーフィルターを作製できる。
【0127】
−基板−
前記基板は、光透過性の基体上に、光透過性の導電膜、光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜、電子回路材料等が設けられてなる。
《基体》
基体としては、光透過性の種々の材料を用いることができ、例えば、ガラス、プラスチック等を好適に挙げられる。
【0128】
《導電膜》
導電膜は、導電性を有しかつ光透過性の材料であれば広く用いることができる。例えば、ITO(インジュウム−スズ酸化物)、二酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。導電性膜は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等従来公知の方法により支持体上に形成することができる。前記導電膜の膜厚としては、100Å〜3μmが好ましく、300Å〜3000Åがより好ましい。
【0129】
《光半導体薄膜》
光半導体薄膜は、光照射により光起電力を生じるものであって、光透過性のものであればいずれも使用することができる。光半導体は光照射による効果を一定期間保有する光履歴効果を有するが、本発明に用いられる光半導体は、光履歴効果の弱いものが好ましい。但し、光履歴効果が強いものであっても、光半導体薄膜を薄くすれば、光履歴効果を小さくなる傾向があるので、使用することができる。
光半導体には、n型光半導体とp型光半導体があるが、本発明ではいずれの光半導体も使用可能である。さらに、n型光半導体薄膜とp型光半導体薄膜とを積層したpn接合を有する光半導体薄膜、又はn型光半導体薄膜と、i型光半導体薄膜と、n型光半導体薄膜とを積層したpin接合を有する光半導体薄膜等、積層構造の光半導体薄膜を用いると、高出力の光電流が確実に得られ、画像のコントラストがより高くなるので好ましい。
【0130】
前記光半導体薄膜は、無機光半導体、有機光半導体のいずれからなるものであってもよく、例えば、無機光半導体として、GaN、ダイヤモンド、a−C、BN、SiC、ZnSe、酸化チタン(TiO2)系化合物、ZnO、GaAs系化合物、CuS、Zn32等が挙げられ、有機光半導体として、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン等が挙げられる。これらの混合物からなるものであってもよく、各々の材料からなる光半導体薄膜を複数積層したものであってもよい。
中でも、TiO2、ZnO等の金属酸化物は、電着時の安定性に優れ、光照射効率も優れているので、繰り返し使用するような場合には好適であり、特に酸化チタン(TiO2)系化合物を主に含有してなるものが好ましい。
【0131】
次に、光半導体と電着膜形成能力のある材料との組合せであるが、これは使用する半導体の極性によって決まる。光起電力の形成には太陽電池として良く知られているように、半導体と接触した界面に生じたショトキーバリアやpnあるいはpin接合を利用する。一例としてn型半導体を例にとって説明する。n型半導体と溶液との間にショトキーバリアーがある時に、半導体側を負にした場合には電流が流れる順方向であるが、逆に半導体側を正にした時には電流が流れない。ところが、半導体側を正にして電流が流れない状態でも、光を照射するとエレクトロン・ホールペアが発生し、ホールが溶液側に移動して電流が流れる。この場合、半導体電極を正にするのであるから電着される材料は負イオンでなければならない。従って、n型半導体とアニオン性分子の組合せとなり、逆にp型半導体ではカチオンが電着されることになる。
【0132】
特に、酸化チタンは吸収が400nm以下にしかなく、透明でありカラーフィルタ作製用の光半導体薄膜としてはそのまま使用することが可能である。基板に酸化チタン光半導体薄膜を設ける方法としては、ゾル・ゲル法、スッパタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法などの方法があり、これらの方法によりn型半導体として特性の良いものが得られる。
【0133】
但し、プラスチック製の基板やTFTを備える基板の場合には、基板やTFTに悪影響を与えない成膜法を選択する必要がある。ゾル・ゲル法は、光半導体として光学活性が高い酸化チタンを形成できるが、500℃で焼結させる必要があるため、200℃程度までの耐熱性しか持たないプラスチック基板を用いる場合や、250℃以上に加熱することができないTFT基板上に酸化チタン膜を作製することは困難である。
【0134】
したがって、プラスチック基板を用いる場合には、なるべく低温で、できれば200℃以下で製膜することが可能で、比較的基板に対するダメージの小さい成膜方法であるスパッタリング法が好ましく用いられる(電子ビーム法やイオンプレーティング法は、200℃前後で基板を加熱するので好ましくない)。
一方、TFTを備える基板を用いる場合には、スパッタリングや電子ビーム加熱法を用いたり、あるいは光触媒酸化チタン微粒子を分散させた薄膜形成用の塗布液(TOTO(株)や日本曹達(株)など)を使用して(フォトレジストを用いるリフトオフ法など)、低温で酸化チタン薄膜を形成する方法が適用される。
【0135】
プラスチック基板に光学活性に優れた酸化チタン膜を形成でき、プラスチック基板やTFTに悪影響を与えない観点では、スパッタリング法が好ましく、中でもRFスパッタリング法が好ましい。特に、光学活性の高いアナターゼ型の酸化チタン薄膜を形成する等の場合には、RFスパッタリング法を用いるのが好ましい。RFスパッタリング法によると、高い光起電力が得られやすい。
【0136】
光半導体薄膜の厚みとしては、0.05〜3.0μmの範囲、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲が良好な特性が得られる範囲である。前記厚みが、0.05μm未満であると、光の吸収が不十分となり、生じる光起電力による電流が弱すぎてパターン(像)形成に問題を生ずることがあり、3.0μmを超えると、膜にクラックが生ずるなどの成膜性が悪くなりやすいので、前記範囲が適切である。
【0137】
本態様では、光起電力だけでは膜形成に要する電圧が足りず膜形成できない場合として、光半導体薄膜による光起電力を利用するに当って、補助的にバイアス電圧をも印加する。このバイアス電圧の上限は、ショトキーバリアーが維持される限界までである。ショトキーバリアーが壊れると、光が当たってない領域も電流が流れて、基板の全領域に電着膜が形成され画像形成ができなくなる。例えば、光起電力0.6Vの場合、2.0Vで電着される材料であれば、バイアス電圧を1.5V印加し光を照射すると、総和電位が2.1Vとなり電着に要する閾値電圧を越え、光照射領域にのみ膜が形成される。
しかし、閾値電圧を越える光起電力が得られる場合は必ずしもバイアス電圧を印加する必要はなく、紫外光の照射のみにより膜形成することもできる。
【0138】
《電子回路材料》
電子回路材料は、結晶系、微結晶系及びアモルファス系の少なくとも一種よりなるシリコン系半導体を含む電子回路材料から適宜選択できる。
前記シリコン系半導体としては、ポリシリコン、アモルファスシリコン等が挙げられ、前記電子回路材料としては、薄膜トランジスタ(TFT)等が挙げられ、中でも、内部抵抗が1MΩ以下のものが好ましく、300KΩのものが好ましい。例えば、ポリシリコン薄膜トランジスタ(ポリシリコンTFT)、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ(a−SiTFT)等が挙げられる。
【0139】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「%」、「固形分比率」は、それぞれ「質量%」、「固形分質量の比率」を表す。
(実施例1)
−基板の作製−
厚み0.7μmの石英ガラス基体上に、クロム(Cr)よりなるゲート線、ITOよりなる導電膜、SiO2よりなる絶縁層、低温ポリシリコンよりなる半導体層を順次積層し、更にアルミニウム(Al)よりなるソース電極を積層して形成し、ドレイン電極を各表示素子(画素)となる導電膜に接続して薄膜トランジスタ(TFT)が二次元的に配列された基板を得た。尚、ガラス基体上には、複数の導電膜と各導電膜と接合してTFTが配列されている。
得られた基板上に、ネガ型フォトレジスト液をスピンコータにより全面塗布し、プリベーク後、導電膜部分を選択的に露光して溶剤により除去し、非露光部をポストベークして、導電膜表面のみが露出するように絶縁膜を形成した。
【0140】
−赤色膜の形成−
まず、下記の通り、赤色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、スチレン−アクリル酸−アクリル酸ヘキシルのランダム共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量19,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=35/22/43(質量比)、酸価120、ガラス転移点55℃、流動開始点90℃、分解点247℃、析出開始点(pH)5.8;以下、「電着性高分子材料A」と称する。〕と、アゾ系赤色超微粒子顔料とを固形分比(質量)1:1で分散混合し、I液を得た。該I液に、I液に対して180mmol/lの割合でジメチルアミノエタノール(水可溶で、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体)を加え、更に導電率が12mS/cmとなるように塩化アンモニウム(pH調整剤)を添加、混合して、pH7.9の電着液Rを調製した。
【0141】
次に、内部に対向電極が配設された電着槽に前記電着液Rを収納し、該電着液Rの液面において、前記基板の少なくとも導電膜が接触するように配置し、該導電膜と接合されたTFTの電極をポテンショスタット(外部電極)に接続し、更に参照電極として電着液Rに浸漬された飽和カロメル電極と対向電極とがポテンショスタットと接続されて、電気化学分野において一般的な三極式に構成されている。
【0142】
飽和カロメル電極に対し、ITO導電膜を作用電極として利用し、該作用電極に2.6Vの電圧をTFT回路を介して印加して、4.5秒間TFTを選択的に駆動させたところ、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ、赤色パターンが形成された。
【0143】
−緑色膜の形成−
次のようにして、緑色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、前記電着性高分子材料A(スチレン−アクリル酸−アクリル酸ヘキシルのランダム共重合体)と、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料とを固形分比(質量)1:1で分散混合し、II液を得た。該II液に、II液に対して150mmol/lの割合でジメチルアミノエタノール(水可溶で、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体)を加え、更に導電率が12mS/cmとなるように塩化アンモニウム(pH調整剤)を添加、混合して、pH7.8の電着液Gを調製した。
電着槽内の電着液Rに代え、前記電着液Gを収納し、2.8Vの電圧をTFT回路を介して6秒間TFTを選択的に駆動したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ緑色パターンを形成した。
その後、pH4.7にpH調整した洗浄液で十分にカスケイド洗浄を行った。
【0144】
−青色膜の形成−
次のようにして、青色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、前記電着性高分子材料A(スチレン−アクリル酸−アクリル酸ヘキシルのランダム共重合体)と、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料とを固形分比(質量)1:1で分散混合し、III液を得た。該III液に、III液に対して190mmol/lの割合でジメチルアミノエタノール(水可溶で、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体)を加え、更に導電率が19mS/cmとなるように塩化アンモニウム(pH調整剤)を添加、混合して、pH8.0の電着液Bを調製した。
電着槽内の電着液Gに代え、前記電着液Bを収納し、2.5Vの電圧をTFT回路を介して5.7秒間TFTを選択的に駆動したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ青色パターンを形成した。
以上より、RGB3色の着色膜が形成された。
【0145】
−ブラックマトリクスの形成−
粒子表面にカルボキシル基を有するカーボンブラック黒色顔料(平均粒子径13nm)8%と、感光性高分子材料(アクリル系高分子材料)0.8%と、純水91.2%とを超音波分散した分散溶液中に着色膜が設けられた基板の全体を浸漬し、その後取り出して該基板にパターン状に露光した。着色膜以外の導電性部分に膜形成し、1.6μm厚のブラックマトリックスを形成した。ブラックマトリックスの光学透過濃度は2.9であった。
【0146】
続いて、基板を180℃の加熱オーブンに入れて1時間放置し、電着膜の硬質化とpH調整剤の除去を行った。そして、着色膜及びブラックマトリクス(カラーフィルタ膜)上に更にITOよりなる導電膜をスパッタ法によりコーティングし、各画素の表面を孤立状にパターニングし、基体及び光半導体薄膜間のITO導電膜との導電路を確保して、TFT一体型のカラーフィルタを得た。
【0147】
以上のように、TFTの駆動電圧のみを利用し(電着法)、低電位の電圧の供給によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑なカラーフィルタを安定に作製することができ、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。また、TFTを備える基板とカラーフィルタ基板の貼り合わせによらず、TFTを備える基板上に直接カラーフィルタ膜を形成でき、より低コストのカラーフィルタを得ることができた。着色膜とブラックマトリクスの境界部における光学特性を評価したところ、境界のエッジ部のテイパー量は4.6μm以下であり、高精度にパターン化されていることが確認できた。
【0148】
(実施例2)
−基板の作製−
ポリシリコン薄膜トランジスタ(p−SiTFT)が設けられた、0.5mm厚の無アルカリガラス基板(7059、コーニング社製)を用意し、p−SiTFTを有する側の全表面にスパッタリング法で、膜厚0.2μmのITO導電膜を成膜し、更にスパッタリング法で、該ITO導電膜上に膜厚0.2μmのTiO2膜(光半導体薄膜)を着膜した。
【0149】
−ブラックマトリクスの形成−
ブラックマトリクスを形成しようとする領域に、ホトリソグラフィによりパターン化してカーボンブラック黒色顔料を混合分散してなる黒色樹脂膜を形成した。ブラックマトリクスの膜厚は0.85μmであり、光学透過濃度は2.8であった。
【0150】
−赤色膜の形成−
次のようにして、赤色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチルの共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量14,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=30/18/52(質量比)、酸価110、ガラス転移点49℃、流動開始点90℃、分解点239℃、析出開始点(pH)5.9;以下、「電着性高分子材料B」と称する。〕とアンモニア水(25%;pH調整剤)を添加して固形分濃度6%とし、この全溶液におけるアンモニア含有量を130mmol/lとして前記電着性高分子材料Bを溶解し、a液を得た。該a液とアゾ系赤色超微粒子顔料とを固形分比率で6対4となるように混合、分散してpH7.8の電着液R'を調製した。
【0151】
次に、内部に対向電極が配設された電着槽に前記電着液R'を収納し、該電着液R'の液面において、前記基板の少なくとも光半導体薄膜が接触するように配置し、導電膜と接合されたTFTの電極をポテンショスタット(外部電極)に接続し、更に参照電極として電着液Rに浸漬された飽和カロメル電極と対向電極とをポテンショスタットと接続して、電気化学分野において一般的な三極式に構成した。
基板の導電膜及び光半導体薄膜が設けられていない側の上方には光源が配置されている。
【0152】
飽和カロメル電極に対し、表示画素用にパターン化したITO導電膜を作用電極として利用し、基板全面に光照射した状態で、作用電極に1.7Vの電圧をTFT回路を介して印加して、8.7秒間TFTを選択的に駆動させたところ、駆動するTFTに対応するITO導電膜上の光半導体薄膜の表面のみに赤色パターンが形成された。
その後、pH4.9にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
【0153】
−緑色膜の形成−
前記電着液R'の調製に用いたアゾ系赤色超微粒子顔料に代え、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料を用いたこと以外、電着液R'と同様にして、pH7.7の電着液G'を調製した。
電着槽内の電着液R'に代え、前記電着液G'を収納し、作用電極に1.7Vの電圧をTFT回路を介して印加して、4.3秒間TFTを選択的に駆動させたこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ緑色パターンを形成した。
その後、pH4.8にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
【0154】
−青色膜の形成−
前記電着液R'の調製に用いたアゾ系赤色超微粒子顔料に代え、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料を用いたこと以外、電着液R'と同様にして、pH7.9の電着液B'を調製した。
電着槽内の電着液G'に代え、前記電着液B'を収納し、作用電極に1.8Vの電圧をTFT回路を介して印加して、4.8秒間TFTを選択的に駆動させたこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ青色パターンを形成した。
その後、pH4.6にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
以上より、ブラックマトリクス及びRGB3色のカラーフィルタ膜が形成され、TFT一体型のカラーフィルタを得た。
【0155】
以上のように、光起電力とTFTの駆動電圧を利用し(光電着法)、低電位の電圧の供給によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑なカラーフィルタを安定に作製することができ、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。また、TFTを備える基板とカラーフィルタ基板の貼り合わせによらず、TFTを備える基板上に直接カラーフィルタ膜を形成でき、より低コストのカラーフィルタを得ることができた。
【0156】
(実施例3)
−基板の作製−
0.8mm厚のパイレックスガラス基体に、スパッタリング法により膜厚0.1μmのITO導電膜を成膜し、更に該ITO導電膜上にスパッタリング法により膜厚0.2μmのTiO2膜(光半導体薄膜)を成膜した。そして、画素表示用のポリシリコン薄膜トランジスタ(p−SiTFT)をTiO2膜上に設けた。
−赤色膜の形成−
次のようにして、赤色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチルの共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量17,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=37/23/40(質量比)、酸価132、ガラス転移点50℃、流動開始点84℃、分解点235℃、析出開始点(pH)6.2;以下、「電着性高分子材料C」と称する。〕と、該共重合体に対しテトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を190mmol/lの割合で添加し、90℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度28%のp液を得た。該p液とアゾ系赤色超微粒子顔料とを固形分比率で6対4となるように混合、分散してpH7.6の電着液R''を調製した。
【0157】
次に、内部に対向電極が配設された電着槽に前記電着液R''を収納し、該電着液R''の液面において、前記基板の少なくとも光半導体薄膜が接触するように配置し、導電膜と接合されたTFTの電極をポテンショスタット(外部電極)に接続し、更に参照電極として電着液R''に浸漬された飽和カロメル電極と対向電極とをポテンショスタットと接続して、電気化学分野において一般的な三極式に構成した。
基板の導電膜及び光半導体薄膜が設けられていない側(以下、「裏面」ということがある)の上方には、フォトマスクを介在して光源(水銀キセノンランプ、山下電装(株)製、波長365nmの光強度50mW/cm2)が配置されている。
【0158】
飽和カロメル電極に対し、ITO導電膜を作用電極として利用し、基板に設けられたTFTを駆動して作用電極に1.7Vの電圧を印加した状態で、基板の裏面から赤色用のフォトマスクを通して7秒間光照射したところ、ITO導電膜上の光半導体薄膜の光照射された選択領域にのみ赤色パターンが形成された。
その後、pH5.1にpH調整した洗浄液で浸水洗浄を行った。
【0159】
−緑色膜の形成−
次のようにして、緑色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、前記電着性高分子材料C(α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチルの共重合体)と、該共重合体に対しテトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を190mmol/lの割合で添加し、90℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度28%のp液を得た。該p液とフタロシアニングリーン系超微粒子顔料とを固形分比率で7対3となるように混合、分散してpH7.8の電着液G''を調製した。
電着槽内の電着液R''に代え、前記電着液G''を収納し、作用電極に1.8Vの電圧を印加した状態で、基板の裏面から緑色用のフォトマスクを通して8秒間光照射したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、光半導体薄膜の光照射された選択領域にのみ緑色パターンを形成した。
その後、pH4.6にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
【0160】
−青色膜の形成−
次のようにして、青色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、前記電着性高分子材料C(α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチルの共重合体)と、該共重合体に対しテトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を190mmol/lの割合で添加し、90℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度28%のp液を得た。該p液とフタロシアニンブルー系超微粒子顔料とを固形分比率で6.5対3.5となるように混合、分散してpH7.9の電着液B''を調製した。
電着槽内の電着液G''に代え、前記電着液B''を収納し、作用電極に1.9Vの電圧を印加した状態で、基板の裏面から青色用のフォトマスクを通して、光強度70mW/cm2、7秒間光照射したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、光半導体薄膜の光照射された選択領域にのみ青色パターンを形成した。
以上より、RGB3色の着色膜が形成された。
【0161】
−ブラックマトリクスの形成−
粒子表面にカルボキシル基とスルホン酸基を有する酸性カーボンブラック黒色顔料(平均粒子径33nm)17%、及び前記電着性高分子材料C(α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチルの共重合体)12%に、テトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を190mmol/lの割合で添加し、プロペラ攪拌による混合分散した分散溶液中に、着色膜が設けられた基板の全体を浸漬し、その後取り出してTFTを用いて電圧2.8Vで駆動しながら全面に2.1秒間光照射した。すると、着色膜以外の導電性部分に膜形成し、0.71μm厚のブラックマトリックスを形成した。
【0162】
続いて、基板を190℃の加熱オーブンに入れて10分間放置し、電着膜の硬質化とpH調整剤の除去を行った。着色膜との境界部分において光学特性を評価したところ、境界部が高精度にパターン化され、光漏れも認められなかった。
その後、pH5.1の洗浄液で洗浄、加熱乾燥して、TFT一体型のカラーフィルタを作製した。このカラーフィルタを純水中に20日間浸漬し、着色膜及びブラックマトリクスの膜質を観察したが変化は認められず、十分な堅牢性を有していた。
【0163】
また、光照射及びTFTの駆動電圧を利用し(光電着法)、低電位の電圧の供給によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑なカラーフィルタを安定に作製することができ、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。また、TFTを備える基板とカラーフィルタ基板の貼り合わせによらず、TFTを備える基板上に直接カラーフィルタ膜を形成でき、より低コストのカラーフィルタを得ることができた。
【0164】
(実施例4)
まず、下記の通り、黒色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、α−メチルスチレン−メタクリル酸−アクリル酸エチルの共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量20,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=39/28/33(質量比)、酸価142、ガラス転移点58℃、流動開始点104℃、分解点245℃、析出開始点(pH)6.2〕と、該共重合体に対しテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを210mmol/lの割合で混合して、95℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度28%の溶液とし、この溶液とカーボンブラック黒色顔料とを固形分比率で6対4に分散混合して電着液を調製した。
【0165】
次に、内壁が金属の電着槽に前記電着液を収納し、5mm厚の鋼鈑基板の端部を直流電源の陽極に接続し、前記電着槽に浸漬した。鋼鈑基板を作用電極として利用し、電着液と接する電着槽内壁を対向電極として直流電源の陰極に接続し、更に参照電極として電着液Rに浸漬する飽和カロメル電極として直流電源に接続して電気化学で一般的な三極式の配置とし、2.9Vの電圧を15秒間通電すると、電着液中において鋼鈑基板の表面に、下地塗装として2.8μm厚の黒色の電着膜が形成された。
続いて、前記鋼鈑基板を190℃の加熱オーブンに30分間入れ、電着膜の硬質化とpH調整剤の除去を行った。
【0166】
以上のように、低電位の電圧の供給(電着法)によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑な膜を安定に形成することができ、ピンホールの抜けもなく良好な膜性を有していた。また、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。
更に、下地塗装された鋼鈑材を塩水中に50日間浸漬し膜質を観察したが、膜質の変化や劣化は認められず、十分な堅牢性を示した。また、使用後の電着液の金属イオン分析を行った結果、鉄イオン濃度は1ppm以下であり、電着処理中のイオンの溶出は問題ないレベルであった。
【0167】
(実施例5)
−基板の作製−
厚み0.9mmの石英ガラス基体を用いたこと以外、実施例1と同様にして薄膜トランジスタ(TFT)が二次元的に配列された基板を得た。尚、基体上には、複数の導電膜と各導電膜と接合してTFTが配列され、得られた基板上には、実施例1と同様にして、導電膜表面のみが露出するように絶縁膜を形成した。
【0168】
−赤色膜の形成−
まず、下記の通り、赤色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、スチレン−アクリル酸−メタアクリル酸ブチルのランダム共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量9,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=35/19/46(質量比)、酸価120、ガラス転移点53℃、流動開始点95℃、分解点237℃、析出開始点(pH)5.8、メタアクリル酸ブチルのモノポリマーのガラス転移点−24℃;以下、「電着性高分子材料D」と称する。〕と、アゾ系赤色超微粒子顔料とを固形分比(質量)1:1で分散混合し、IV液を得た。該IV液に、IV液に対して120mmol/lの割合でジメチルアミノエタノール(水可溶で、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体)を加え、更に導電率が12mS/cmとなるように塩化アンモニウム(pH調整剤)を添加、混合して、pH7.9の電着液rを調製した。
【0169】
次に、内部に対向電極が配設された電着槽に前記電着液rを収納し、該電着液rの液面において、前記基板の少なくとも導電膜が接触するように配置し、該導電膜と接合されたTFTの電極をポテンショスタット(外部電極)に接続し、更に参照電極として電着液rに浸漬された飽和カロメル電極と対向電極とがポテンショスタットと接続されて、電気化学分野において一般的な三極式に構成されている。
【0170】
飽和カロメル電極に対し、ITO導電膜を作用電極として利用し、該作用電極に2.3Vの電圧をTFT回路を介して印加して、4.5秒間TFTを選択的に駆動させたところ、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ、赤色パターンが形成された。
【0171】
−緑色膜の形成−
次のようにして、緑色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、実施例1と同様の電着性高分子材料A(スチレン−アクリル酸−アクリル酸ヘキシルのランダム共重合体;アクリル酸ヘキシルのモノポリマーのガラス転移点−57℃)と、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料とを固形分比(質量)1:1で分散混合し、V液を得た。該V液に、V液に対して90mmol/lの割合でジメチルアミノエタノール(水可溶で、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体)を加え、更に導電率が13mS/cmとなるように塩化アンモニウム(pH調整剤)を添加、混合して、pH7.8の電着液gを調製した。電着槽内の電着液rに代え、前記電着液gを収納し、2.8Vの電圧をTFT回路を介して6秒間TFTを選択的に駆動したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ緑色パターンを形成した。その後、pH4.7にpH調整した洗浄液で十分にカスケイド洗浄を行った。
【0172】
−青色膜の形成−
次のようにして、青色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、実施例1と同様の電着性高分子材料A(スチレン−アクリル酸−アクリル酸ヘキシルのランダム共重合体;アクリル酸ヘキシルのモノポリマーのガラス転移点−57℃)と、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料とを固形分比(質量)1:1で分散混合し、VI液を得た。該VI液に、VI液に対して100mmol/lの割合でジメチルアミノエタノール(水可溶で、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体)を加え、更に導電率が10mS/cmとなるように塩化アンモニウム(pH調整剤)を添加、混合して、pH8.0の電着液bを調製した。電着槽内の電着液gに代え、前記電着液bを収納し、2.5Vの電圧をTFT回路を介して5.7秒間TFTを選択的に駆動したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ青色パターンを形成した。
以上より、RGB3色の着色膜が形成された。
【0173】
−ブラックマトリクスの形成−
粒子表面にカルボキシル基を有するカーボンブラック黒色顔料(平均粒子径13nm)8%と、感光性高分子材料(アクリル系高分子材料)0.8%と、純水91.2%とを超音波分散した分散溶液中に着色膜が設けられた基板の全体を浸漬し、その後取り出して該基板にパターン状に露光した。着色膜以外の導電性部分に膜形成し、1.6μm厚のブラックマトリックスを形成した。ブラックマトリックスの光学透過濃度は2.9であった。
【0174】
続いて、基板を200℃の加熱オーブンに入れて1時間放置し、電着膜の硬質化とpH調整剤の除去を行った(熱処理工程)。そして、着色膜及びブラックマトリクス(カラーフィルタ膜)上に更にITOよりなる導電膜をスパッタ法によりコーティングし、各画素の表面を孤立状にパターニングし、基体及び光半導体薄膜間のITO導電膜との導電路を確保して、TFT一体型のカラーフィルタを得た。
【0175】
上記より得られたカラーフィルタに対し、200℃の熱処理の前後においてIRスペクトルを測定した結果、熱処理前(20℃での乾燥後)では図11と同様のピークが、熱処理(200℃)後では図15と同様のピークが得られ、熱処理後においては、水酸基に相当するピーク(図11中の*1)及びカルボキシル基に相当するピーク(図11中の*2)は認められなかった。この熱処理(200℃)後のカラーフィルタを、アセトン中に浸漬し20分間超音波洗浄を行った結果、カラーフィルタ膜に変化は認められず、高い耐溶剤性を示した。
【0176】
また、TFTの駆動電圧のみを利用し(電着法)、低電位の電圧の供給によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑なカラーフィルタを安定に作製することができ、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。TFTを備える基板とカラーフィルタ基板の貼り合わせによらず、TFTを備える基板上に直接カラーフィルタ膜を形成でき、より低コストのカラーフィルタを得ることができた。更に、着色膜とブラックマトリクスの境界部における光学特性を評価したところ、境界のエッジ部のテイパー量は4.6μm以下であり、高精度にパターン化されていることが確認できた。
【0177】
(実施例6)
−基板の作製−
ポリシリコン薄膜トランジスタ(p−SiTFT)が設けられた、0.5mm厚の無アルカリガラス基板(7059、コーニング社製)を用意し、p−SiTFTを有する側の全表面にスパッタリング法で、膜厚0.15μmのITO導電膜を成膜し、更にスパッタリング法で、該ITO導電膜上に膜厚0.2μmのTiO2膜(光半導体薄膜)を着膜した。
【0178】
−ブラックマトリクスの形成−
ブラックマトリクスを形成しようとする領域に、ホトリソグラフィによりパターン化してカーボンブラック黒色顔料を混合分散してなる黒色樹脂膜を形成した。ブラックマトリクスの膜厚は1.5μmであり、光学透過濃度は3.3であった。
【0179】
−赤色膜の形成−
実施例2で調製した電着液R'において、電着性高分子材料Bに代えて、α−メチルスチレン−アクリル酸−メタクリル酸ブチルの共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量16,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=38/18/44(質量比)、酸価110、ガラス転移点51℃、流動開始点99℃、分解点229℃、析出開始点(pH)5.9、メタクリル酸ブチルのモノポリマーのガラス転移点−24℃;以下、「電着性高分子材料E」と称する。〕を用いたこと以外、実施例2の電解液R'と同様にして、pH7.8の電着液r'を調製した。
【0180】
次に、内部に対向電極が配設された電着槽に前記電着液r'を収納し、該電着液r'の液面において、前記基板の少なくとも光半導体薄膜が接触するように配置し、導電膜と接合されたTFTの電極をポテンショスタット(外部電極)に接続し、更に参照電極として電着液r'に浸漬された飽和カロメル電極と対向電極とをポテンショスタットと接続して、電気化学分野において一般的な三極式に構成した。基板の導電膜及び光半導体薄膜が設けられていない側の上方には光源が配置されている。
飽和カロメル電極に対し、表示画素用にパターン化したITO導電膜を作用電極として利用し、基板全面に光照射した状態で、作用電極に1.7Vの電圧をTFT回路を介して印加して、8.7秒間TFTを選択的に駆動させたところ、駆動するTFTに対応するITO導電膜上の光半導体薄膜の表面のみに赤色パターンが形成された。その後、pH4.9にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
【0181】
−緑色膜の形成−
前記電着液r'の調製に用いたアゾ系赤色超微粒子顔料に代え、フタロシアニングリーン系超微粒子顔料を用いたこと以外、電着液r'と同様にして、pH7.7の電着液g'を調製した。
電着槽内の電着液r'に代え、前記電着液g'を収納し、作用電極に1.8Vの電圧をTFT回路を介して印加して、8.4秒間TFTを選択的に駆動させたこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ緑色パターンを形成した。その後、pH5.2にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
【0182】
−青色膜の形成−
前記電着液r'の調製に用いたアゾ系赤色超微粒子顔料に代え、フタロシアニンブルー系超微粒子顔料を用いたこと以外、電着液r'と同様にして、pH7.9の電着液b'を調製した。
電着槽内の電着液g'に代え、前記電着液b'を収納し、作用電極に1.8Vの電圧をTFT回路を介して印加して、7.3秒間TFTを選択的に駆動させたこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、駆動するTFTに対応するITO導電膜の表面にのみ青色パターンを形成した。
その後、pH4.9にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
【0183】
続いて、基板を228℃の加熱オーブンに入れて20分間放置し、電着膜の硬質化とpH調整剤の除去を行った(熱処理工程)。そして、着色膜及びブラックマトリクス(カラーフィルタ膜)上に更にITOよりなる導電膜をスパッタ法によりコーティングし、各画素の表面を孤立状にパターニングし、基体及び光半導体薄膜間のITO導電膜との導電路を確保して、TFT一体型のカラーフィルタを得た。
【0184】
上記より得られたカラーフィルタに対し、実施例5と同様にして、225℃の熱処理の前後においてカラーフィルタ膜のIRスペクトルを測定した結果、熱処理前(20℃での乾燥後)では図11と同様に水酸基とカルボキシル基に特有のピークが認められ、熱処理(225℃)後ではその両吸収は認められなかった。この熱処理(225℃)後のカラーフィルタを、イソプロピルアルコール中に浸漬し30分間超音波洗浄を行った結果、カラーフィルタ膜に変化は認められず、高い耐溶剤性を示した。
【0185】
以上のように、光起電力とTFTの駆動電圧を利用し(光電着法)、低電位の電圧の供給によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑なカラーフィルタを安定に作製することができ、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。また、TFTを備える基板とカラーフィルタ基板の貼り合わせによらず、TFTを備える基板上に直接カラーフィルタ膜を形成でき、より低コストのカラーフィルタを得ることができた。
【0186】
(実施例7)
まず、基板として、ITO導電膜の膜厚を0.1μmとしたこと以外、実施例3と同様にして、パイレックスガラス基体の表面にITO導電膜、TiO2膜、ポリシリコン薄膜トランジスタ(p−SiTFT)を有する基板を作製した。
【0187】
−赤色膜の形成−
次のようにして、赤色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ヒドロキシブチルの共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量17,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=37/23/40(質量比)、酸価132、ガラス転移点58℃、流動開始点94℃、分解点232℃、析出開始点(pH)6.2、メタクリル酸ブチルのモノポリマーのガラス転移点−24℃;以下、「電着性高分子材料F」と称する。〕と、該共重合体に対しテトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を150mmol/lの割合で添加し、90℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度18%のs液を得た。該s液とアゾ系赤色超微粒子顔料とを固形分比率で6対4となるように混合、分散してpH7.6の液とし、該液に対して1.5質量%の重合剤を加えて十分に攪拌し、電着液r''を調製した。
【0188】
次に、内部に対向電極が配設された電着槽に前記電着液r''を収納し、該電着液r''の液面において、前記基板の少なくとも光半導体薄膜が接触するように配置し、導電膜と接合されたTFTの電極をポテンショスタット(外部電極)に接続し、更に参照電極として電着液r''に浸漬された飽和カロメル電極と対向電極とをポテンショスタットと接続して、電気化学分野において一般的な三極式に構成した。
基板の導電膜及び光半導体薄膜が設けられていない側(以下、「裏面」ということがある)の上方には、フォトマスクを介在して光源(水銀キセノンランプ、山下電装(株)製、波長365nmの光強度50mW/cm2)が配置されている。
【0189】
飽和カロメル電極に対し、ITO導電膜を作用電極として利用し、基板に設けられたTFTを駆動して作用電極に1.7Vの電圧を印加した状態で、基板の裏面から赤色用のフォトマスクを通して9.6秒間光照射したところ、ITO導電膜上の光半導体薄膜の光照射された選択領域にのみ赤色パターンが形成された。その後、pH5.1にpH調整した洗浄液で浸水洗浄を行った。
【0190】
−緑色膜の形成−
次のようにして、緑色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、前記電着性高分子材料F(α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ヒドロキシブチルの共重合体)と、該共重合体に対しテトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を190mmol/lの割合で添加し、90℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度28%のt液を得た。該t液とフタロシアニングリーン系超微粒子顔料とを固形分比率で7対3となるように混合、分散してpH7.8の電着液g''を調製した。
電着槽内の電着液r''に代え、前記電着液g''を収納し、作用電極に1.8Vの電圧を印加した状態で、基板の裏面から緑色用のフォトマスクを通して9.6秒間光照射したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、光半導体薄膜の光照射された選択領域にのみ緑色パターンを形成した。
その後、pH4.6にpH調整した洗浄液で十分に洗浄を行った。
【0191】
−青色膜の形成−
次のようにして、青色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、前記電着性高分子材料F(α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ヒドロキシブチルの共重合体)と、該共重合体に対しテトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を190mmol/lの割合で添加し、90℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度28%のu液を得た。該u液とフタロシアニンブルー系超微粒子顔料とを固形分比率で6.5対3.5となるように混合、分散してpH7.9の電着液b''を調製した。
電着槽内の電着液g''に代え、前記電着液b''を収納し、作用電極に1.9Vの電圧を印加した状態で、基板の裏面から青色用のフォトマスクを通して、光強度70mW/cm2、11秒間光照射したこと以外、前記赤色膜の形成の場合と同様にして、光半導体薄膜の光照射された選択領域にのみ青色パターンを形成した。以上より、RGB3色の着色膜が形成された。
【0192】
−ブラックマトリクスの形成−
粒子表面にカルボキシル基とスルホン酸基を有する酸性カーボンブラック黒色顔料(平均粒子径33nm)17%、及びα−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸オクチルの共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量17,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=37/23/40(質量比)、酸価132、ガラス転移点48℃、流動開始点84℃、分解点225℃、析出開始点(pH)6.2、メタクリル酸オクチルのモノポリマーのガラス転移点−25℃〕12%に、テトラヒドロアンモニウムヒドロキシド(pH調整剤)を180mmol/lの割合で添加し、プロペラ攪拌による混合分散した分散溶液中に、着色膜が設けられた基板の全体を浸漬し、その後取り出してTFTを用いて電圧2.8Vで駆動しながら全面に6.1秒間光照射した。すると、着色膜以外の導電性部分に膜形成し、0.91μm厚のブラックマトリックスを形成した。
【0193】
続いて、基板を220℃の加熱オーブンに入れて20分間放置し、電着膜の硬質化とpH調整剤の除去を行った(熱処理工程)。その後、pH5.1の洗浄液で洗浄、加熱乾燥し、着色膜及びブラックマトリクス(カラーフィルタ膜)上に更にITOよりなる導電膜をスパッタ法によりコーティングし、各画素の表面を孤立状にパターニングし、基体及び光半導体薄膜間のITO導電膜との導電路を確保して、TFT一体型のカラーフィルタを得た。着色膜との境界部分において光学特性を評価したところ、境界部が高精度にパターン化され、光漏れも認められなかった。
【0194】
上記より得られたカラーフィルタに対し、実施例5と同様にして、220℃の熱処理の前後においてカラーフィルタ膜のIRスペクトルを測定した結果、熱処理(220℃)後においては、熱処理前(20℃での乾燥後)に認められた図11と同様の水酸基とカルボキシル基に特有のピークは認められなかった。このカラーフィルタを純水中に20日間、更にアセトン中に2日間浸漬し、着色膜及びブラックマトリクスの膜質を観察した結果、膜に変化は認められず、高い耐溶剤性を示し、十分な堅牢性を有していた。
また、光照射及びTFTの駆動電圧を利用し(光電着法)、低電位の電圧の供給によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑なカラーフィルタを安定に作製することができ、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。また、TFTを備える基板とカラーフィルタ基板の貼り合わせによらず、TFTを備える基板上に直接カラーフィルタ膜を形成でき、より低コストのカラーフィルタを得ることができた。
【0195】
(実施例8)
まず、下記の通り、黒色膜形成用の電着液を調製した。即ち、純粋100g中に、α−メチルスチレン−メタクリル酸−アクリル酸エチルの共重合体〔電着性高分子材料;重量平均分子量25,000、疎水性モノマー/親水性モノマー/可塑性モノマー=39/28/33(質量比)、酸価142、ガラス転移点66℃、流動開始点134℃、分解点245℃、析出開始点(pH)6.2、アクリル酸エチルのモノポリマーのガラス転移点−25℃〕と、該共重合体に対しテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを190mmol/lの割合で混合して、95℃の加熱下で強制攪拌を行って固形分濃度28%の溶液とし、この溶液とカーボンブラック黒色顔料とを固形分比率で5対5に分散混合して電着液を調製した。
【0196】
次に、内壁が金属の電着槽に前記電着液を収納し、5mm厚の鋼鈑基板の端部を直流電源の陽極に接続し、前記電着槽に浸漬した。鋼鈑基板を作用電極として利用し、電着液と接する電着槽内壁を対向電極として直流電源の陰極に接続し、更に参照電極として電着液Rに浸漬する飽和カロメル電極として直流電源に接続して電気化学で一般的な三極式の配置とし、2.7Vの電圧を50秒間通電すると、電着液中において鋼鈑基板の表面に、下地塗装として12.6μm厚の黒色の電着膜が形成された。
続いて、前記鋼鈑基板を230℃の加熱オーブンに30分間入れ、電着膜中のpH調整剤を除去すると共に膜の硬質化を行った。
【0197】
以上のように、低電位の電圧の供給(電着法)によって、膜厚及び着色濃度が均一で、表面平滑な膜を安定に形成することができ、ピンホールの抜けもなく良好な膜性を有していた。また、工程及び装置の簡易化をも図ることができた。
更に、黒色の電着膜に対して、実施例5と同様にしてIRスペクトルを測定した結果、熱処理(230℃)後には図11と同様の水酸基とカルボキシル基に特有の吸収(ピーク)は認められなかった。そして、下地塗装された鋼鈑材をメチルアルコール中に1日間浸漬し、6%の塩化ナトリウム水溶液中に50日間浸漬し膜質を観察した結果、膜質の変化や劣化は認められず高い耐溶剤性を示し、十分な堅牢性を示した。また、使用後の電着液の金属イオン分析を行った結果、鉄イオン濃度は1ppm以下であり、電着処理中のイオンの溶出は問題ないレベルであった。
【0198】
(実施例9)
実施例5で用いた電着性高分子材料D8.0gを純粋100g中に溶解し、これをフッ化カルシウム基体の表面にキャストコートし、2.2μm厚の膜を形成した。これを7枚用意し、それぞれ▲1▼20℃環境下で1日、▲2▼70℃環境下で1時間、▲3▼110℃環境下で1時間、▲4▼148℃環境下で1時間、▲5▼200℃環境下で1時間、▲6▼228℃環境下で1時間、▲7▼250℃環境下で1時間乾燥(熱処理)して、IRスペクトルにより膜中の電着性高分子材料の構造変化を評価した。各温度環境で熱処理した後のIRスペクトルを図11〜17に示す。図11〜17は、各々温度で乾燥(熱処理)した後のIRスペクトルである。
【0199】
その結果、図11〜14に示すように、20℃、70℃、110℃及び148℃の温度下においては、スペクトルからは吸着水分の蒸散以外に顕著な変化は認められず、3400cm-1付近に水酸基(OH基)に起因する吸収(図11中の*1)が、1700cm-1付近にカルボキシル基に起因する吸収(図11中の*2)が認められた。一方、200℃,228℃,250℃の温度環境(図15)で熱処理した場合は、図中の3400cm-1付近の水酸基に起因する吸収(ピーク)は消失し、また1700cm-1付近のカルボキシル基に起因する吸収(ピーク)も減少しているのが認められた。尚、図16及び17より、カルボキシル基の減少は200℃以上において引き続き変化していると推定できる。
【0200】
【発明の効果】
本発明によれば、電着法及び光電着法に用いられ、低電位の電圧印加による膜形成性を良化し、金属イオンの溶出をも抑制し、かつ均一な膜厚及び着色濃度を有し表面平滑であって耐熱性、耐溶剤性、耐水性に優れた電着膜を安定的に析出形成しうる低電位電着用電着液を提供することができる。また、電着法及び光電着法を利用し、低電位の電圧印加による膜形成性に優れ、金属イオンの溶出をも抑制され、均一な膜厚及び着色濃度を有し表面平滑な電着膜を安定的に析出形成しうる電着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電着性高分子材料の重量平均分子量と電着材料の付着量との関係を示すグラフである。
【図2】 電着性高分子材料の重量平均分子量と形成膜のクラック発生量との関係を示すグラフである。
【図3】 電着性高分子材料のガラス転移点とクラック発生量との関係を示すグラフである。
【図4】 水中で分散している顔料粒子の様子を模式的に示す図である。
【図5】 導電膜を正極とし、図示しない対向電極との間に電圧を印加した直後の液性を示す図である。
【図6】 電着性高分子材料のカルボキシル基が疎水化し、導電膜(電極)上に電着膜が成膜された状態を示す図である。
【図7】 電着時の印加電圧と着膜速度との関係を示す図である。
【図8】 電着時の印加電圧に対する電着膜の形成特性を示す図である。
【図9】 ショトキー接合を有する光半導体のエネルギーバンドを示す図である。
【図10】 pin接合を有する光半導体のエネルギーバンドを示す図である。
【図11】 20℃で処理した後の膜中の電着性高分子材料の組成を示すIRスペクトルである。
【図12】 70℃で処理した後の膜中の電着性高分子材料の組成を示すIRスペクトルである。
【図13】 110℃で処理した後の膜中の電着性高分子材料の組成を示すIRスペクトルである。
【図14】 148℃で処理した後の膜中の電着性高分子材料の組成を示すIRスペクトルである。
【図15】 200℃で処理した後の膜中の電着性高分子材料の組成を示すIRスペクトルである。
【図16】 228℃で処理した後の膜中の電着性高分子材料の組成を示すIRスペクトルである。
【図17】 250℃で処理した後の膜中の電着性高分子材料の組成を示すIRスペクトルである。
【図18】 本発明の電着方法において、光電着法により基板上に電着膜を析出形成している状態を説明するための概略説明図である。
【図19】 本発明の電着方法において、プロジェクション型露光装置を用いて光電着法により基板上に電着膜を析出形成している状態を説明するための概略説明図である。
【符号の説明】
2,4…結像光学部材
3,40…フォトマスク
6,32…導電膜
7,33…光半導体薄膜
8,35…導電性材料
10,37…低電位電着用電着液
11,38…対向電極
14,34…着色電着膜又はブラックマトリックス

Claims (33)

  1. 導電性材料と対向電極との間に電圧が印加されることにより、前記導電性材料に電着材料よりなる電着膜を析出形成し得る低電位電着用電着液であって、
    前記電着材料が電着性高分子材料を含み、該電着性高分子材料の少なくとも一種が、疎水性モノマーと親水性モノマーと可塑性モノマーとからなる共重合体であり、前記共重合体を構成するモノマーの最小構成単位の総質量に対して、前記可塑性モノマーの最小構成単位の質量が30〜70質量%であり、前記親水性モノマーの最小構成単位の質量が9〜30質量%であり、前記疎水性モノマーの最小構成単位の質量が15〜45質量%であって、前記可塑性モノマーのモノポリマー状態におけるガラス転移点が−125℃〜50℃の範囲にあることを特徴とする低電位電着用電着液。
  2. 全組成中の共重合体の含有量が、0.3〜25質量%である請求項1に記載の低電位電着用電着液。
  3. 共重合体の酸価が、60〜160である請求項1又は2に記載の低電位電着用電着液。
  4. 電着性高分子材料が架橋性基を含み、電着性高分子材料中に占める該架橋性基の組成比(質量比)が、0.1〜30質量%である請求項1からのいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  5. 共重合体のガラス転移点が25〜90℃である請求項1からのいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  6. 共重合体の重量平均分子量が6000〜30000である請求項1からのいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  7. 共重合する可塑性モノマーが、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、無水マレイン酸エステル類、フタル酸エステル類、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも一種である請求項1からのいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  8. 共重合する疎水性モノマーが、スチレン及びその誘導体、ベンゼン及びその誘導体、アルキルベンゼン及びその誘導体、及び1−フェニル−ブタジエン及びその誘導体から選択される少なくとも一種である請求項1からのいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  9. 親水性モノマーが、カルボキシル基を含むモノマーである請求項1からのいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  10. 共重合する親水性モノマーが、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、無水マレイン酸及びその誘導体、フマル酸及びその誘導体、クロトン酸及びその誘導体、桂皮酸及びその誘導体、フタル酸及びその誘導体、トルイル酸及びその誘導体、及びトリメリト酸及びその誘導体から選択される少なくとも一種である請求項1からのいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  11. 200℃の大気(湿度10%RH以下、30分間)中での電着膜の重量変化が5%以下である請求項1から10のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  12. 電着材料が色材を含み、該色材の数平均粒子径が0.2〜150nmである請求項1から11のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  13. 電着材料が水系媒体に溶解若しくは分散されてなり、該水系媒体の含有量が55〜93質量%である請求項1から12のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  14. 色材の含有量が0.5〜25質量%である請求項12又は13に記載の低電位電着用電着液。
  15. pH値が、電着材料が析出開始するpHaと、該pHaから電着材料の溶解方向に1.9の範囲となるpHbとの間にある請求項1から14のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  16. 導電性材料が、光透過性の基体上に光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜とをこの順に有する基板であって、
    前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することにより該選択領域の光半導体薄膜と対向電極との間に電圧が印加される請求項1から15のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  17. 電圧が5V以下である請求項1から16のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  18. pH調整剤を含有し、該pH調整剤が、アンモニア系化合物、飽和若しくは不飽和アミン類、第4級アンモニウム化合物、及びテトラアルキルアンモニウム化合物から選択される少なくとも一種である請求項1から17のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  19. pH調整剤の含有量が30mmol/l〜18mol/lである請求項18に記載の低電位電着用電着液。
  20. 導電率が0.1〜100mS/cmである請求項1から19のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  21. 水可溶であって、沸点110℃以上かつ蒸気圧100mHg以下の液体を含有し、該液体の含有量が0.5〜25質量%である請求項1から20のいずれかに記載の低電位電着用電着液。
  22. 電着材料を含む水系の電着液に導電性材料を接触させた状態で、該導電性材料と電着液中に配置された対向電極との間に電圧を印加し、前記導電性材料に電着材料よりなる電着膜を析出形成する工程を含む電着方法において、
    前記電着液が、請求項1から21のいずれかに記載の低電位電着用電着液であることを特徴とする電着方法。
  23. 電着膜を析出形成する工程で形成された電着膜を熱処理する工程を有する請求項22に記載の電着方法。
  24. 熱処理の温度が180℃以上である請求項23に記載の電着方法。
  25. 導電性材料を陽極電極とし、かつ電着電圧が5V以下である請求項22から24のいずれかに記載の電着方法。
  26. 導電性材料が、鉄及びその化合物、ニッケル及びその化合物、亜鉛及びその化合物、銅及びその化合物、チタン及びその化合物、及びこれらの混合材料より選択される少なくとも一種である請求項25に記載の電着方法。
  27. 導電性材料が、光透過性の基体上に光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透過性の光半導体薄膜とをこの順に有する基板であって、
    前記基板を、電着液に少なくとも前記光半導体薄膜が接触するように配置した状態で、前記光半導体薄膜の選択領域に光照射することにより該選択領域の光半導体薄膜と対向電極との間に電圧を印加し、前記選択領域に電着材料よりなる電着膜を析出形成する請求項22から24のいずれかに記載の電着方法。
  28. 光半導体薄膜が、酸化チタン系化合物を主に含有してなる請求項27に記載の電着方法。
  29. 導電性材料が、結晶系、微結晶系及びアモルファス系の少なくとも一種よりなるシリコン系半導体を含む電子回路材料を備える請求項22から28のいずれかに記載の電着方法。
  30. 電極対の一方をなす導電膜と他方をなす対向電極との間にバイアス電圧を印加した状態で光照射する請求項27から29のいずれかに記載の電着方法。
  31. 電着材料が色材を含有してなり、互いに異なる色相の色材を含む複数の電着液を用いて、光半導体薄膜の選択領域に電着膜を析出形成する工程を2回以上繰り返す請求項27から30のいずれかに記載の電着方法。
  32. 電着膜として着色膜及びブラックマトリックスを析出形成する工程において、最後に析出形成される着色膜又はブラックマトリックスが、電圧及び光のいずれかを基板全面に印加若しくは照射することにより電着膜の未形成領域に形成される請求項27から31のいずれかに記載の電着方法。
  33. 電着膜として着色膜及びブラックマトリックスの少なくとも一種が析出形成された基板を洗浄する洗浄工程が設けられ、該洗浄工程の洗浄液のpH値が、電着材料が析出開始するpHaと、該pHaから電着材料の析出方向に0.3〜1.5の範囲内となるpHcとの間にある請求項27から32のいずれかに記載の電着方法。
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