JP3815061B2 - フィルターの製造方法及びフィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CCDカメラや液晶表示素子などの各種表示素子、およびカラーイメージセンサーに使用されるフィルター、特にカラーフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、カラーフィルターの製造方法としては、(1)染色法、(2)顔料分散法、(3)印刷法、(4)インクジェット法、(5) 電着法などが知られている。
第一の染色法は、透過率も高く色相も豊富で、技術の完成度も高いため、現在カラー固体撮像素子(CCD) に多用されている。しかし、染料を使用するため耐光性に劣り、またフォトリソグラフィを用いるため製造工程の数も多く価格が高く、液晶表示素子(LCD) 用としては、顔料分散法に取って替わられつつある。
第二の顔料分散法は、近年最も主流のカラーフィルターの製造方法である。この製造法は、得られるカラーフィルターが高解像度で高品質であり、技術の完成度は高いが、フォトリソグラフィを使用するため工程数が多く、コストが高いのが欠点である。
第三の印刷法は、R.G.B.層に限ればフォトリソグラフィーを必要としないため、低コストであり量産性が高いが、得られるカラーフィルターの解像度や膜厚の均一性の点で劣る。
第四のインクジェット法は、R.G.B.層に限ればフォトリソグラフィーを必要としないが、解像度の点で劣る。また、隣接するフィルター層に混色する確立が高く位置精度の点でも劣る。
【0003】
第五の電着法は、水溶性高分子に顔料を分散させた電解溶液中で、予めパターニングした光透過性電極上に70V 程度の高電圧を印加し、電着膜を形成することにより電着塗装を行い、これを3 回繰り返しR.G.B.のカラーフィルター層を得る。この方法は、予め、光透過性電極をフォトリソグラフィーによりパターニングする必要があり、これを電着用の電極として使用するため、パターンの形状が限定されTFT 駆動の液晶用には使えないという欠点がある。
また、一般に液晶用カラーフィルターはカラーフィルター層だけでは使えず、各微少セルのカラーフィルター画素間をブラックマトリックスで覆ったカラーフィルターとすることが必要である。高い解像度と制御性を有するカラーフィルターを作製するには、通常、各色のフィルターセルやブラックマトリックスはフォトリソグラフィー手法が使われており、このことがコストアップの大きな要因の一つとなっている。
したがって、フォトリソグラフィーを使用しなくても同じレベルのものが作成可能になれば、工程数が少なくなり歩留りも上がって、コストも大幅に減少される、カラーフィルターの製造方法を実現することができる。
【0004】
フォトリソグラフィを使用しないカラーフィルターの製造方法としては、例えば特開平5−150112号公報に、光メモリー性N型光半導体を用い、電着法によってカラーフィルターを製造する方法が提案されている。
この方法は、
1)ステンレス板等の導電性基板に、光メモリー性N型光半導体、例えば酸化亜鉛を樹脂に分散させたもの、の層を形成して電着基板とし、カラーフィルターの所定の一色に対応するフォトマスクを通して紫外線露光し、露光部にのみ導電性を発現させ(抵抗値を下げ)、非露光部には絶縁性を保持させる。
2)次に、光メモリー性N型光半導体を用いているため、露光部にのみ導電性が維持されている電着基板を、前記の色の電着膜を形成するための電着液に浸漬し、20〜80Vの電圧を印加して着色電着膜を電着する。この際、N型光半導体は陰極となるように電圧が印加され、電着液はカチオン型電着材料を含んでいる。
3)この露光・電着の各工程をカラーフィルターに必要とする色についてそれぞれ繰り返す。
4)次に、着色電着膜が形成された電着基板の全面に紫外線露光を行い、着色電着膜で覆われていない光メモリー性光半導体の部分にのみ導電性を発現させ、その後、この電着基板に金属メッキを行うか、あるいは混合黒色顔料をを含有する電着液を用いて黒色の電着膜を電着することによりブラックマトリックスを形成する。
5)形成された多色カラーフィルター層を透明な基板に転写する。
の工程を有している。
【0005】
この方法は、転写の際、多色カラーフィルター層と光メモリー性N型光半導体との剥離性を向上させるために、この2つの層の間にあらかじめ剥離層を設けるか、あるいはカラーフィルター層を設ける前に光半導体の表面にあらかじめ全面に金属メッキを行い、転写後多色カラーフィルター層に残留付着する金属メッキ層を溶解除去する工程などを必要としている。
前記の方法は、フォトリソグラフィ法を使用しない点では、従来のフォトリソグラフィ法を使用する方法に比較して価格の低廉化が実現されている。しかし、転写工程が必要なこと、露光と電着は別の工程で行うこと、剥離層を設ける工程が必要なことなど、依然として、多数の工程が必要である。
したがって、フォトリソグラフィ法を使用せず、かつ工程数も少なく、低廉な価格で高性能のカラーフィルターを製造する方法の出現が切望されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フォトリソグラフィー技術を使用せず、工程数が少なく、コストが低いカラーフィルターの製造方法であって、フィルター部とブラックマトリックス部のエッジ端部が明確な境界を有しかつ光の漏れがなく、かつ解像度及び制御性が高い優れた特性を有するカラーフィルターを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の工程を有するフィルターの製造方法(1)及び(2)を提供することにより達成される。
(1)光透過性の基体の上に光透過性の導電膜および光起電力機能を有する光半導体薄膜をこの順に設けた電着基板の、少なくとも前記光半導体薄膜を、着色電着材料を含む電着液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加すると共に前記電着基板に像露光して、光照射部に着色電着膜を形成する工程、
前記電着基板の少なくとも着色電着膜が形成された光半導体薄膜を金属メッキ液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加することにより、光半導体薄膜の着色電着膜未形成部分に金属メッキ膜のブラックマトリックスを形成する工程、
を備え、前記着色電着材料は、pHが低下することにより電着液に対する溶解性あるいは分散性が低下する物質を含み、前記物質は、疎水基と親水基を含有する重合体であって、疎水基の数が疎水基と親水基の総数の40〜80%であることを特徴とするフィルターの製造方法。
(2)光透過性の基体の上に光透過性の導電膜および光半導体薄膜をこの順に設けた電着基板の、少なくとも前記光半導体薄膜を、金属メッキ液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加すると共に前記電着基板に像露光して、非光照射部に金属メッキ膜のブラックマトリックスを形成する工程、
前記電着基板の少なくともブラックマトリックスが形成された光半導体薄膜を着色電着材料を含む電着液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加すると共に前記電着基板に像露光して、光照射部に着色電着膜を形成する工程、
を備え、前記着色電着材料は、pHが低下することにより電着液に対する溶解性あるいは分散性が低下する物質を含み、前記物質は、疎水基と親水基を含有する重合体であって、疎水基の数が疎水基と親水基の総数の40〜80%であることを特徴とするフィルターの製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記の目的を達成するために、本発明者らは、電着技術及び光電効果をその原理から検討し、水溶性高分子の中には、酸化状態、中性状態及び還元状態などの変化により水への溶解度が大きく変化する物質があることに着目するに至った。高分子のこれらの状態間の移動は、高分子を電気化学的に直接酸化還元するか、または高分子が溶けている水溶液のpHを変化させることにより行える。
一般に親水基であるカルボキシル基をもった高分子材料は、構造変化を伴わなくても溶液の水素イオン濃度(pH)によって溶解度が大きく異なる。例えば、アニオン性水系分散材の一部には、 pH8以上では水に溶けるがpH5以下では沈殿するものがある。また、例えば、カルボキシル基を有する水溶性アクリル樹脂の中にはpH7以上ではイオン解離して水に溶けるが、それ以下のpH値ではイオン解離できないために樹脂成分が沈殿するものがある。
このような性質を有する高分子材料を弱アルカリ性の水に溶解し、溶液中に電極を浸し電圧を印加すると、陽極側の電極上にこれらの高分子材料からなる電着膜が生成される。またこのような高分子材料によって顔料を分散させた水分散液中に電極を浸し電圧を印加すると、陽極側の電極上に顔料及び高分子が析出して顔料と高分子が混合された電着膜が形成される。これらの電着膜は、上記の電着液中で逆電圧を印加するか、あるいはpH10〜12の水溶液に浸すと、膜を構成する高分子が再びイオン解離し、電着膜が液中に再溶出し膜が減少するという結果が示された。
ところで、前記電着膜を形成するには、電着現象が生ずるためのある一定以上の電圧(閾値電圧)が必要であり、電流が流れれば必ず電着膜が形成されるわけではない。
【0009】
一例として、電着形成能力があるカルボキシル基含有水溶性アクリル樹脂を例にとって説明する。この樹脂は、弱アルカリ性水(pH8〜9)に容易に溶解し、アニオンとして水溶液中に存在するが、pHが7以下になると不溶化して析出する性質を持つ。この樹脂の水溶液中に白金電極を浸し通電すると、陽極付近では水溶液中のOH- イオンが消費されてO2 になり、水素イオンが増えてpHが低下する。これは、陽極付近でホール(p)とOH- イオンとが結び付く次のような反応が起こるためである。
2OH- +2p+ → 1/2(O2 )+H2 O
この反応が起こるには、一定の電圧印加による水のイオン解離が必要である。したがって、ある一定以上の電圧を印加すると、上記の反応が生じ、反応の進行に伴って水溶液中の水素イオン濃度が増えてpHが低下する。そうすると、陽極側では水溶性アクリル樹脂の溶解度が低下して不溶化し陽極上に薄膜が形成されるのである。
このような機構を利用すると、比較的低い電圧、すなわち3V以下で電着膜を形成することができる。
【0010】
本発明は、上記の知見を光電着法に適用したものである。
光電着法とは、本発明者らが既に特許出願を行った方法であり(特願平9−297466号)、上記の閾値電圧より大きい電圧を得るために、光起電力機能を有する光半導体に光を照射し、光照射部に起電力(光起電力)を生じさせ、これを利用して光照射部のみに電着膜を形成する方法である。
【0011】
本発明においては、光起電力の形成は、光半導体薄膜表面と電着液との界面に生ずるショトキーバリアや、太陽電池として良く知られているpn接合、あるいはpin接合を利用する。図1は、光半導体表面と電着膜液との界面に生ずるショトキーバリアを表す概念図であり、C.B.は伝導バンド、F.L.はフェルミレベル、V.B.は荷電子バンドを示す。また、図2は、金属電極と電着液の間に介在するpin接合を有する光半導体のi層に光を照射した場合のキャリアの発生と移動を示している。
ところで、光半導体薄膜に光を照射させて得られる光起電力は、効率の高い結晶シリコンでも高々0.6Vであり、この程度の光起電力は上記のような電極近傍の反応を利用したとしても電着現象を惹起させるには十分ではない。したがって、本発明においてはこの不足する電圧を、バイアス電圧を印加することにより補う。
【0012】
例えば、0.6Vの光起電力を有する光半導体を使用した場合、電着材料が2.0Vで電着されるものであれば、1.5Vのバイアス電圧を印加するとともに光を照射すると、バイアス電圧の1.5Vに光半導体の光起電力である0.6Vが足されて全体としては2.1Vとなり、電着に必要な閾値電圧を越え、光が照射された領域のみ光電着膜が形成される。
一方、嵩上げされた電圧が余りに大きい(例えば10V以上)と、ショトキーバリアが維持されなくなり、光照射部のみに選択的に電着膜を形成することができなくなる。すなわち、ショトキーバリアーが壊れることにより、光が当たっていない領域も電流が流れるようになり、光半導体薄膜全域に電着膜が形成されてします。
本発明においては、着色電着材料のpHによる溶解度の違いを利用することにより、上記のショトキーバリアーが破壊されない程度の、低いバイアス電圧(例えば5V以下)で使用することができる。
【0013】
ここで、本発明で使用する電着基板について説明する。本発明の電着基板は、光透過性の基体の上に光透過性の導電膜および光起電力機能を有する光半導体薄膜をこの順に設けたものである。前記の光透過性の基体とは、可視光域の光を透過させるものをいい、例えばガラス板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート等の板、シートあるいはフィルムが挙げられる。
また、光透過性の基体の上に設けられる光透過性の導電膜としては、ITO膜、二酸化スズ、酸化インジュウム等が挙げられる。
【0014】
次に、光透過性の導電膜に隣接して設けられる光起電力機能を有する光半導体薄膜(以下、単に「光半導体薄膜」という。)について説明する。
本発明は光起電力機能を有する光半導体薄膜に選択的に露光(像露光)し、露光部のみに光起電力を発生させ、またこれと同時に導電膜と電着液中の対向電極との間に電圧または電流を印加して、露光部にのみ着色電着膜を形成するものである。
本発明に利用できる光半導体としては、基本的には光照射により起電力を発生し、強い光履歴効果のない(非光メモリー性)光半導体薄膜であれば特に制限なく使用することができる。本発明においては強い光履歴効果(光メモリー性)のある光半導体を使用しないため、光が照射されている間にだけ光起電力が発生し電着現像が発生するので、解像度の高いシャープな画像を得ることができる。このような光半導体として、化合物半導体あるいは有機半導体及びアモルファスシリコン、ポリシリコンなどが挙げられる。
【0015】
具体的な光半導体の材料を挙げると、化合物半導体材料としては、酸化チタン、炭化けい素、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化錫、酸化モリブデン、が好ましく用いられ、この他に、GaN、a−C、BN、ZnSe、GaAs系化合物、CuS、Zn3 P2 等が挙げられる。また、有機半導体材料としては、フタロシアニン顔料系材料、ペリレン顔料系材料、アゾ顔料系材料、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。これらの半導体材料は単層または複数層として、あるいは混合物などとしても使用可能である。本発明で使用する光半導体はこれらの材料を用い、かつ結晶性、膜厚、体積固有抵抗値、光吸収性等を考慮して、強い光履歴効果のない光半導体薄膜が形成される。この他に、光半導体層への樹脂等の絶縁性材料の混合は発生電流を小さくし、そして大きな光履歴現象を発生させる要因となるので、これらのことも考慮する必要がある。
【0016】
前記の光半導体としては、可視光域での透光性が高いものが好ましい。
また本発明で使用する光半導体について、その極性の面から説明すると、本発明においては、n型光半導体、pn接合を有する光半導体、及びpin接合を有する光半導体が用いられる。積層構造の光半導体を用いた場合は、光電流が良く流れ確実に起電力が得られて、画像のコントラストが良くなり解像度の高いカラーフィルターが得られる。
また、本発明で使用する前記光半導体薄膜の体積抵抗値が105 Ω・cm以下であることが好ましい。その理由は、膜内を流れる電流量を制御する因子として体積抵抗値が大きく影響し、105 Ω・cm以下であればより電流量が大きく得られ、光起電力量の効率がより高くなるからである。
【0017】
本発明はブラックマトリックスを金属メッキ膜により形成するものであるが、遮光性のより高い金属メッキ膜を得るためには、金属メッキ膜が結晶性の高い膜であることを要する。そして、金属メッキ膜の結晶性は下地の結晶性の影響を受ける傾向があるので、光半導体薄膜は単結晶質、微結晶質または多結晶質等の高い結晶性を有していることが望まれる。
また、以下で詳述するが、例えば光半導体薄膜としてn型光半導体薄膜を用い、電着液としてアニオン性基を有する電着性分子を含むものを使用して、カラーフィルター膜を形成し、その後金属メッキ液を用いて光半導体薄膜のカラーフィルター膜未形成部分に金属メッキ膜のブラックマトリックスを形成する場合、最初のカラーフィルター層の形成時には光半導体薄膜は対向電極に対しプラスに、また金属メッキ膜を形成するときには、光半導体薄膜はマイナスになるように導電膜に電圧が印加され、光半導体薄膜は両方の電極として使われることになる。したがって、光半導体は電着液中において、両極の電極として用いた場合にも安定性が維持されることが必要である。
【0018】
光半導体のうち、化合物半導体は、水系液体の中でも物性的に安定であって表面が損なわれず、また光透過性が優れており、その中でもTiO2 は結晶性の高い多結晶構造をとり、光起電力性、可視部透光性、薄膜形成性などの点で優れているため、本発明において特に好適に用いられる。
TiO2 の製膜方法についてはいくつかの方法が知られている。例えば、熱酸化膜法、スパッタリング法、エレクトロンビーム法(EB 法)、ゾル・ ゲル法などが有名であるが、通常のEB法とゾル・ ゲル法によって製膜するTiO2 は、光起電力変換効率が低く電着のために十分な光起電力が得られるとはいいがたい。そこで、光電流の変換効率を高めるために還元処理を行う方がよい。還元処理は水素ガス中で加熱することによって行われる。例えば、 3%の水素を混合した窒素ガスを1L/min.の流量で流しながら、約360℃で10分間という低温かつ短時間の処理でも十分な効果を得ることができる。
【0019】
電着基板に設ける光半導体薄膜の厚みは、0.05μmから3μmの範囲が良好な特性が得られる範囲である。0.05μm未満では得られる光電力が弱すぎて電着膜形成に問題を生じる。また、3μmより厚いと光によって発生した電荷が光半導体層内にトラップされ光履歴現象が大きくなり過ぎ、シャープな画像形成が行われにくくなる。以下で述べるように作製された多色カラーフィルターの表面に保護層を設ける場合があるので、この保護層の厚みも考慮すると光半導体薄膜の厚みは前記の範囲にあることが好ましい。
また、光半導体膜は、光起電力の発生効率を高くし、電着膜の形成を容易にするために、光半導体単体によって構成し、樹脂等の絶縁性材料を混合して使用することが避けた方がよい。
【0020】
ここで、本発明において使用するカラーフィルター形成用電着液について説明する。カラーフィルター電着液は、着色電着材料を含み、前記着色電着材料は、pHが低下することにより電着液に対する溶解性あるいは分散性が低下する物質を含み、前記物質は、疎水基と親水基を含有する重合体であって、疎水基の数が疎水基と親水基の総数の40〜80%であることを特徴とする。(以下において前記のごとき重合体を「イオン性高分子」ということがある。)そして、このような物質は通常、分子中にイオン性基を有するイオン性分子である。そのようなイオン性分子を含む着色電着材料としては、例えば、該イオン性染料および/または顔料と、前記のようなイオン性分子であるイオン性高分子の混合物等を挙げることができる。本発明においては、前記イオン性分子として、電着液のpHの低下に対応して急激にその溶解性あるいは分散性が低下する性質を有するものが好ましい。
【0021】
ここで、図を用いて、本発明で使用する着色電着材料がpHの変化によりどのように凝析するか説明する。図3には、本発明で使用するアニオン性電着材料と参考として示すカチオン性電着材料について、pHの変化と上澄み液を発生して凝析する現象の関連を示している。曲線Aは、アニオン性電着材料がpHが低下することにより溶解性を失い、凝析(析出/沈降)することを、また曲線Bは、カチオン性電着材料がpHが高くなることにより溶解性を失い凝析することを示している。
上記のイオン性分子を含む着色電着材料としては、可視域で透光性を有する電着性の高分子により、任意の微粒子の色材(顔料、染料など)を分散させることができるという点により、イオン性染料および/または顔料と、前記のようなイオン性分子であるイオン性高分子の混合物を用いることが好ましい。また顔料は染料より耐光性および耐候性が高いことから、より好ましく用いられる。顔料は、それ自体電着膜形成能がなくても、前記の電着性を有するイオン性高分子と組み合わせることにより、イオン性高分子が凝析する際に顔料が取り込まれることにより高分子と顔料からなる電着膜が形成される。
顔料としては、公知の赤色、緑色、青色等の顔料を特に制限なく使用することができるが、顔料の粒子径が小さい程色相の再現性がよい。特に顔料の平均粒子径が200nm以下のものが好ましい。
【0022】
以下に、電着液のpHが低下するのに伴って電着液に対する溶解度あるいは分散性が低下して薄膜(電着膜)を形成するイオン性高分子(このような電着性を有するイオン性高分子を、以下、単に「電着性高分子」という。)について説明する。
前記電着性高分子は、水系液体(pH調節を行った水系液体を含む。)に対して十分な溶解性あるいは分散性を有していること、また光透過性を有していることが必要である。また前記電着性高分子は、それが溶解している電着液のpH値の低下に応じて、溶解状態あるいは分散状態から上澄みを発生して沈殿を生じる液性変化が、pH範囲領域2以内で生じることが好ましい。前記のpH範囲領域が2以内であると、通電による急峻なpH変化に対しても瞬時に画像の析出が可能となり、また析出する画像の凝集力が高く、電着液への再溶解速度が低減するなどの効果が優れている。そしてこのことにより、高い透光性と耐水性を有するフィルター層が得られる。
前記pH範囲領域が2より大きい場合は、十分な画像構造を得るための印字速度の低下や、画像の耐水性の欠如などが起こりやすい。より好ましい特性を得るには、前記pH範囲領域が1以内である。
【0023】
前記の電着性高分子としては、分子中に親水基と水への不溶化を促進させる疎水基を有する重合体である。疎水基は、色材として用いる有機顔料に対し親和性が強いため有機顔料を吸着する能力があり、重合体に良好な顔料分散機能を付与している。その上、疎水基は、前記のようなpHの変化によって親水基から疎水基に変化した疎水基と協働して、瞬時に画像を析出させるという機能をも重合体に付与している。
【0024】
疎水基と親水基を有する重合体中の疎水基の数は、親水基と疎水基の総数の40%から80%の範囲である。疎水基の数が親水基と疎水基の総数の40%未満のものは、電着時に形成された電着膜の耐水性や膜強度が不足する場合があり、また疎水基数が親水基と疎水基の総数の80%より大きい場合は、水系液体への重合体の溶解性が不十分となるため、電着液が濁ったり、電着材料の沈殿物が生じたり、電着液の粘度が上昇しやすくなるので、前記の範囲にあることが望ましい。また、この範囲にあると、電着電位を低減させることができるため、光起電力を利用する低電圧画像形成プロセスが良好に遂行される。親水基と疎水基の総数に対する疎水基数は、より好ましくは55%から70%の範囲である。この範囲のものは、特に電着析出効率が高く、低い電着電位で膜形成が可能な電着特性を示し、電着液の液性も安定している。
【0025】
図4には、電着性高分子の、疎水基と親水基の総数に対する疎水基が占める割合を種々変えた場合の、電着性高分子の溶液のpHの変化と電着性高分子の溶解特性の関係が示されている。図中、Aは疎水基と親水基の総数に対する疎水基が占める割合が70%、Bは同じく12%、Cは同じく83%の重合体について、それぞれ前記の関連を表している。Aの曲線の重合体は、pHを下げることにより狭いpHの範囲の中で急激にその溶解性が低下し、またその溶解度の差も大きい。このことは、Aの曲線の重合体は、本発明のカラーフィルターの製造方法に使用した場合、優れた電着特性を発揮することを示している。一方、Bの曲線の重合体はpHを低くさせると溶解性は低下するもののその変化は急峻ではなく、また、Cの曲線の重合体はpHの変化により溶解特性に顕著な差が発現せず、したがって、その電着性は十分とはいえない。
【0026】
分子中に疎水基と親水基とを有する重合体は、例えば疎水基を有するモノマーと親水基を有するモノマーをランダム共重合させることにより製造される。
【0027】
本発明の電着性高分子に含まれる親水基としては、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、無水マレイン酸、無水トリメリト酸、無水フタル酸、ヘミメリット酸、コハク酸、アジピン酸、プロピオル酸、プロピオン酸、フマル酸、イタコン酸、などに由来するカルボキシル基及び水酸基、あるいはこれらから誘導される基が挙げられる。特に、メタクリル酸、アクリル酸由来のものは、pH変化による電着効率が高くまた親水化効率も高い。カルボキシル基は電着高分子にアニオン性を付与する。
また、本発明の電着性高分子に含まれる疎水基としては、アルキル基、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、などに由来する基が挙げられ、特に、スチレン、α−メチル−スチレンに由来する基は疎水化効率が高いために、電着析出効率が高い。またスチレン、α−メチル−スチレンに由来する基は、それらを含む重合体を製造する際の制御性が高く有用である。
前記疎水基及び親水基は、それぞれ1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
また前記重合体の親水基の数の50%以上、より好ましくは75%以上がpHの変化により親水基から疎水基に可逆的に変化できる親水基であることが好ましい。pHの変化により親水基から疎水基に可逆的に変化できる親水基の数が、全親水基の50%より少ないと、沈殿の析出がゆっくりとなりやすく、また該基の数が75%より多いと、沈殿の析出が急峻となりすぎ安定性を欠くため、前記範囲にあることが望ましい。
pHの変化により親水基から疎水基に可逆的に変化できる親水基としては、カルボキシル基などが挙げられる。特にカルボキシル基は、pHの変化により親水基から疎水基に可逆的に変化する効率が高く、電着現象において膜の析出効率が良く、堅牢性の高い電着膜が作製される。
【0029】
また、本発明の電着性高分子としては、特に分子内にカルボキシル基を有する重合体が好ましく用いられる。陽電極に画像析出するタイプのこの高分子の酸価は、60から300の範囲が電着特性の観点から好ましい。特に酸価が90から195の範囲の高分子を用いると、良好な電着特性が得られる。カルボキシル基を有する高分子の酸価が60より小さいと、水系液体への溶解性が不十分となり、電着液が濁ったり沈殿物が生じたりする他、電着液粘度が上昇したり、また電着液の固形分濃度を適正値まで上げることができなくなったりすることがある。また、酸価が300より大きいと、形成された膜の耐水性が低かったり、通電電気量に対する電着効率が低かったりすることがある。
本発明において、カルボキシル基を有する電着性高分子は、前記のようにpHの変化により親水基から疎水基へ変化する効率が高く、また顔料は耐光性や耐候性が優れているため、この両者を組み合わせて着色電着材料とすることが好ましい。
【0030】
本発明で使用する前記電着性高分子は、電着した膜の特性や膜の接着強度の面から平均分子量が6,000から25,000のものが好ましく用いられる。より好ましくは平均分子量が9,000から20,000の範囲のものである。平均分子量が6,000より低いと膜が不均一で耐水性が低くなりやすく、そのため堅牢性の高い電着膜が得られず膜性が低く粉末化したりする。平均分子量が25,000より高いと、水系液体への溶解性が不十分となり、電着液の固形分濃度を適正値まで上げることができなくなったり、電着液が濁ったり沈殿物が生じたり、電着液の粘度上昇が起こりやすくなる。
また、前記電着性高分子の熱特性としては、ガラス転移点が100℃より低く、流動開始点が180℃より低く、分解点は150℃より高い特性の材料を用いると、光半導体薄膜上に設けたカラーフィルター膜を他の基板に熱転写する場合に、厳しい制御条件が不要となり、また転写されたカラーフィルターは透光性が高く、良好な転写特性が得られる。
【0031】
次にフィルター用電着液の導電率とpHとの関連について説明する。導電率は実験によると電着スピードにいいかえられ、電着量に関連して導電率(1/抵抗率)が高くなればなるほど一定時間に付着する電着膜の膜厚が厚くなる。体積抵抗値が約100 Ω・cmで電着量が飽和する傾向にある。電着液の抵抗率が106 Ω・cmより大きいと十分な電流が得られないために電着量が不足しがちであり、また100 Ω・cmより小さいと電着量を制御しにくくなるので、体積抵抗率は100 〜106 Ω・cmの範囲にあることが望ましい。図5に、導電率(1/抵抗率)と電着量の関係を示す。
【0032】
したがって、着色電着材料の中に含まれるイオンだけでは導電率が足りない場合には、電着に影響を与えないイオン例えばNa+ イオンやCl- イオンを加えることにより電着スピードをコントロールすることができる。
また、水溶液のpHも当然ながら電着膜の形成に影響する。例えば、電着液のpHが、着色電着材料、すなわち色素分子や電着性高分子の電着液に対する溶解度が飽和するようなpH条件で電着膜形成を行うと、電着膜形成後の電着膜の再溶解が起こりにくい。ところが、電着液が前記溶解度が飽和に達しないようなpH条件のまま、電着膜の形成を行うと、電着膜が形成されても、通電をやめた途端に膜が再溶解し始めることがある。したがって、電着液に対する着色電着材料の溶解度が飽和するようなpH条件を有する電着液を用いて、電着膜の形成を行う方が望ましい。
【0033】
本発明のカラーフィルターの製造方法においては、着色電着膜を形成する工程において導電膜に5V以下のバイアス電圧を印加することが好ましい。前記バイアス電圧を5Vより大きくすると、バブリングが生じ、着色電着膜に凹凸や欠落部が発生したりすることがある。
【0034】
次に上で説明した、光半導体薄膜と着色電着材料の組み合わせについて説明する。上で説明したように、本発明においては、光起電力を形成するために、半導体と電着液の接触界面に生じるショトキーバリアや、太陽電池として良く知られているpn接合あるいはpin接合を利用する。
一例としてn型光半導体を例にとって説明する。n型光型半導体と溶液との間にショトキーバリアーがある時に、光半導体側を負にした場合には電流が流れる方向が順方向であるが、逆に光半導体側を正にした時には電流が流れない。ところが、半導体側を正にして電流が流れない状態でも、光を照射するとエレクトロン・ ホールペアが発生し、ホールが溶液側に移動して電流が流れる。この場合、光半導体電極を正にするのであるから電着される材料は負イオンでなければならない。したがって、例えばn型光半導体とカルボキシル基を含有する電着性高分子とが組み合わせて用いられる。
逆にp型光半導体では光半導体側が負になるようにして光を照射し、電着液としてはカチオン性分子を含む電着液、例えば、アミノ基またはイミノ基を有する電着性高分子を含む電着液が用いられる。
また、pn接合あるいはpin接合を有する光半導体の場合であって、かつアニオン性分子を含む電着液を用いる場合には、光半導体のn側を電着液に浸漬し光半導体側が正になるように電圧が印加される。
また、pn接合あるいはpin接合を有する光半導体とカチオン性分子を含む電着液を用いる場合には、光半導体のp側を電着液に浸漬し光半導体側が負になるように電圧が印加される。
【0035】
本発明のフィルターは、上記のような光電着法を利用して、フィルターに必要な色を1種あるいは2種以上、例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3色について着色電着膜が形成される。
【0036】
上記のごときプロセスにより形成された着色電着膜を乾燥させた電着膜は十分な強度を有するものの、電着直後の電着膜は強度が十分でない。そのために、電着固形化した膜の強度増強を行うことが好ましいが、このためには、電着直後の電着膜の膜中の電着液のpHを電着液の凝析開始pHより低い値に保持することが推奨される。例えば、着色電着材料として、pHが低下することにより電着液に対する溶解性あるいは分散性が低下する物質を含む場合は、電着液の凝析開始pHよりさらに低い値のpH値を有する液体等で電着膜を処理することにより、電着膜の強度が増強される。この場合、電着膜はこのような液体に接することにより固形化が促進され、電着膜の堅牢性が増し解像性も高くなり、得られるカラーフィルターの画像は高画質となる。
前記の処理液体としては、そのpHが、電着液の凝析開始点のpH値よりpH値として2以上析出し易い値に設定する事が好ましい。
【0037】
一方、電着直後は電着基板の各所に不要な電着液が付着している。その不要な電着液を完全に除去するための、有効な手段として液体洗浄による洗い落しがある。特に、光透過性で安全性の高い不活性な液体での洗浄が有効である。
また、電着直後の電着膜の強化と不要電着液の洗浄除去を同時に行うことは、工程数を減ずることになりより好ましい。このためには、洗浄液として、pH値が電着液の析出開始pH値より析出し易い値のpHを有する水系洗浄液を用いることが好ましい。電着膜はこのような洗浄液に接することにより固形化が促進され、一方、不要な電着液の着色電着材料成分は凝集して付着性を失い、洗い落とされ易くなるのである。
このような洗浄液としては純水にHCl、H2 SO4 、KOH、NaOHのようなpH調節剤を加えたものを使用する他、アルコール系溶剤、多価アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、界面活性剤のごとき洗浄成分を含ませることが可能である。
【0038】
次に、本発明においてブラックマトリックスの形成法について説明する。まず、図を用いてNiメッキ膜と樹脂中にカーボンブラックを分散させた膜をブラックマトリックスとした場合の膜の厚さと遮光性を比較する。図6から分かるように、Niメッキ膜は極めて薄い膜でも遮光性が高く、たとえば透過光学濃度(−logR)が2.5の遮光性を得る膜厚は、Niメッキ膜はカーボンブラック樹脂膜の約10分の1である。すなわち、同じ遮光性を達成するために、金属メッキ膜の場合、極く薄い膜厚でよいということになる。このように金属メッキ膜は薄膜でも高い遮光性を得ることができるため、精度の高いカラーフィルターを作製することができる。本発明によると、従来の樹脂系ブラックマトリックスの5分の1の厚さでも十分な遮光性が得られる。
【0039】
図7には、ブラックマトリックス部を金属メッキ膜で構成した場合の、図8には、カーボンブラック分散樹脂膜で構成した場合の、ブラックマトリックス部とカラーフィルター部の境界領域が模式的に示されている。20は光透過性基板、22は光透過性導電膜、24は光半導体薄膜、26はフィルター部、28は金属メッキブラックマトリックス部を、30は樹脂系ブラックマトリックス部をそれぞれ示す。図7と図8の比較から分かるように、樹脂系ブラックマトリックスの場合には、ブラックマトリックス部とカラーフィルター部とが重なった部分が形成され、光透過性が曖昧になっているのに対し、金属メッキの場合は、薄い膜厚故、フィルター部とブラックマトリックス部のエッジ端部が明確な境界を有しており、樹脂系ブラックマトリックスにおける場合のような光学的曖昧さが減少している。また、カラーフィルターのエッジ部での光の漏れを減少させることができる。さらに、カラーフィルター層を形成した後金属メッキによってブラックマトリックスを形成すると、ピンホールや膜欠落部を金属膜で埋め込むという自己パターン修復作用があるため、光が漏れるなどの現象がなくなり、フィルターとしての光学性能が向上する。
【0040】
また、金属メッキ膜の厚さは流れる電流に比例するので、膜厚は均一であり、かつ膜厚の制御も容易である。
金属メッキ膜は、膜成長と共に結晶格子化を行うので、得られる膜は多結晶膜となる。そのため、可視光域で高い遮光性が得られる。遮光性の高いブラックマトリックスを得るためには、メッキ金属として、より結晶性の高い金属を使用することが好ましい。そのような金属としては、Ni、Cr、Cu、Au、Ag、Mo、Sn、Zn、Co等が挙げられる。金属メッキ層は下地の結晶性の影響を受けて結晶性が決まる傾向があるので、光半導体薄膜層は単結晶質、微結晶質または多結晶質等の高い結晶性を有していることが望まれる。
さらに、金属メッキ膜と下地(光半導体薄膜)との接着強度は、前記の膜成長がエピタキシャル成長に近い成膜性であるので、非常に大きい。
本発明の光電着法を用いるカラーフィルターの製造方法においては、光電着膜の未形成領域には光半導体が露出しており、この部分にブラックマトリックス用の金属メッキ膜を容易に形成できる。また、一般にカラーフィルターの電着膜は絶縁性が高く、したがってカラーフィルター層の上部に積層して金属メッキ膜が形成されることはない。従って、光電着法を用いてカラーフィルター層を形成した後、ブラックマトリックス用の金属メッキ液中で電圧を印加(この時光照射はしてもしなくてもよい。)すれば、カラーフィルター層の無い領域は金属メッキにより完全に埋められる。
【0041】
また、本発明においては、カラーフィルター層を形成する前に、金属メッキ膜のブラックマトリックスを形成することもできる。すなわち、この方法では、先ず電着基板をその少なくとも光半導体薄膜を金属メッキ液に浸漬し、導電膜に電圧または電流を印加しつつ像露光すると、光の非照射部にのみ金属メッキ膜よりなるブラックマトリックスが形成される。その後電着基板の少なくとも光半導体薄膜を着色電着材料を含む電着液に浸漬し、導電膜に電圧または電流を印加しつつ電着基板に像露光して、光照射部にのみ着色電着膜を形成するものである。メッキされた金属膜の抵抗は低く発生電流の拡散が生じるため、金属メッキ膜の上に不要な電着膜が積層されることはない。このことも金属メッキ法をブラックマトリックス形成に適用する利点となる。
この方法によっても、光電着膜形成方法と金属メッキ法を利用することにより、上記の方法と同様の性能を有するカラーフィルターを安価に作成することができる。
【0042】
カラーフィルター層を最初に形成する場合であって、またカルボキシル基含有電着性高分子を用いる場合には、金属メッキ液は酸性のものが良い。その理由は、酸性メッキ液はフィルター電着膜に対する悪影響が少ないからである。また、ブラックマトリックスを先ず形成する場合であって、またカルボキシル基を含有する電着性高分子を用いる場合には、メッキ金属として両性金属系を使用することは推奨されない。その理由は、カルボキシル基含有電着性高分子を含む電着液は通常弱アルカリ性であるからである。また、本発明のカラーフィルター製造プロセスにおいては様々な種類の水溶液が用いられるから、金属自体堅牢性の高い金属例えば、Ni,Cr,Cu,Au,Ag,Mo,Sn,Zn,Co、Ti、Ta、Pb、Rr等の金属又は合金を使用することが好ましい。
【0043】
本発明のブラックマトリックスの金属メッキ膜の厚さは70〜900nm(0.07〜0.9μm)の範囲にあることが好ましい。70nmより薄いと、ブラックマトリックスとしての光遮蔽効果が得られず、また900nmより厚いと、前記の光学的シャープさが十分でなくなる。
【0044】
本発明のフィルターの製造方法について詳細に説明を行ってきたが、そのプロセスをまとめて図示する。図9は最初にフィルター部を形成するプロセスの一例を、図10は最初にブラックマトリックスを形成するプロセスの一例を示す。図9において、先ず光透過性の基板2に光透過性の導電膜3及び光起電力機能を有する光半導体薄膜4をこの順に積層した電着基板1を用意する(A)。次に本発明の光電着法に基づき、フィルター部5を形成し(B)、同様に他の色のフィルター部6と7を形成する(C)。次いで、カラーフィルター部の間にブラックマトリックス8を金属メッキにより形成し(D)、最後にカラーフィルターとブラックマトリックスからなる層の表面に保護層9を設ける(E)。
ブラックマトリックスを先に形成する方法では、図10に示すように、先ず金属メッキによりブラックマトリックスを形成し(B’)、次に、本発明の光電着法により各カラーフィルターを順次形成し(C’〜D’)、最後に保護層を形成する(E’)。
【0045】
本発明において前記光電着法によりカラーフィルター部を形成する実験装置としては例えば図11の3極式の配置を有する装置が挙げられる。図中、5は電着膜、10は電着液、11はPt電極等の対向電極、12はポテンショスタット等のバイアス電圧印加手段、13はフォトマスク、14は塩橋、15は飽和カロメル電極等の制御電極、16は電着槽を表す。
あらかじめ例えばポテンショスタットによりバイアス電圧を加えつつ、フォトマスクを通して光透過性の基板の側から光を照射すると、電着基板の光半導体薄膜の光が照射された部分にのみ光起電力が発生し、電着電位よりわずかに高い電位となる。そうすると、上で説明したように光半導体薄膜の光照射部分の近傍の水系液体のpHが変化し、着色電着材料(イオン性高分子及び/又は色素イオン)の溶解度が低下し、結局、光照射部のみに着色電着膜が形成される。カラーフィルターを作製するには、例えば赤(R)、緑(G)及び青(B)用のフォトマスクや電着液等を順次変えて繰り返し上記の方法を適用することにより電着膜を形成する。
金属メッキを行う装置としては同様の装置を用いることができる。
【0046】
光照射、すなわち露光は基材の背面からフォトマスク等を介して行う。光源は、用いる光半導体に感度がある波長の光を供与するものであればいずれも用いることができる。例えば、400nm以下の光照射可能な、水銀灯、水銀キセノンランプ、He−Cdレーザー、N2 レーザー、エキシマレーザーなどが使われる。また、フォトマスクを使用しないで、ディジタル信号に基づいて直接レーザー光を必要な箇所に照射することも可能である。
【0047】
本発明の製造方法によると、上で説明した、電着基板にカラーフィルター部とブラックマトリックスを設けたものをそのままカラーフィルターとして使用することが可能で、他の光透過性の基板に転写する必要はないが、他の基板にカラーフィルター部とブラックマトリックスからなる層を熱や圧力により転写してカラーフィルターとして使用することも可能である。この場合は、電着基板を繰り返して使用することが可能となる。また転写する場合には、カラーフィルターに光を吸収する光半導体薄膜が存在しないので、一層、高透光性で高精度のカラーフィルターが得られる。
【0048】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
1.5mm厚みの石英ガラス基体にITOの光透過性導電層をスパッタリング法で0.1μm製膜し、さらに0.3μmのTiO2 をゾル−ゲル成膜塗布法により製膜した。つぎに、 TiO2 の光電流特性を上げるために還元処理を行った。還元処理は、4%の水素ガスが混合された純窒素ガス中で460℃で10分間アニールすることにより行った。このようにして作製した電着基板を図11で示すような、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置に組み込んだ。
レッドフィルター形成用電着液として、電着性高分子(スチレン−アクリル酸ランダム共重合体:分子量16,000、スチレン含有量65モル%、酸価130、ガラス転移点45℃,流動開始点95℃、分解点237℃、析出開始点pH5.8)と、アゾ系赤色超微粒子顔料を固形分比率で5対5の割合で含む水分散液(固形分濃度10重量%、pH:7.8)を使用した。
【0049】
光半導体薄膜(TiO2 膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.6Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側(電着基板の光透過性の基体の側からを意味する。以下同じ)からレッドフィルター用のフォトマスクを通して、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2 )により4秒間光を照射した。TiO2 表面に透過光が照射され、照射領域にだけレッドのマスクフィルターパターンが形成された。その後pH値4.2のpH調整液体で十分にカスケイド洗浄を行った。
【0050】
次に、前記と同じ電着性高分子のスチレン−アクリル酸共重合体とフタロシアニングリーン系超微粒子顔料を固形分比率で5対5の割合で含む水分散液(固形分濃度10重量%、pH:7.8)をグリーンフィルター形成用電着液として使用し、グリーンフィルター用のフォトマスクを通して、5秒間透過光を照射する他は、レッドフィルターの作製と同様にして、TiO2 表面に光が照射された領域にのみグリーンのマスクフィルターパターンを形成した。その後pH値4.2のpH調整液体で十分にカスケイド洗浄を行った。
同様に、前記と同じ電着性高分子であるスチレン−アクリル酸共重合体とフタロシアニンブルー系超微粒子顔料を固形分比率で5対5の割合で含む水分散液(固形分濃度10重量%、pH:7.8)をグリーンフィルター用電着液として用い、ブルーフィルター用のフォトマスクを通して、2秒間光を照射し、また、前記電位差がプラス1.7Vになるように導電膜に電圧を印加する他は、レッドのフィルターの作製と同様にして、TiO2 表面に光が照射された領域にのみブルーのマスクフィルターパターンそ形成した。その後、pH値4.2のpH調整液体で洗浄した。
【0051】
次に、pH値が4.1の硫酸ニッケルを主成分とするNiメッキ液(Niイオン濃度12.3%)に電着基板の全体を浸漬し、その後導電膜にマイナスのバイアス電圧1.7Vを印可し、着色フィルター膜以外の部分にNiメッキを行い、0.2μm厚のNiのメッキ膜からなるブラックマトリックスを形成した。このNiブラックマトリックス膜の光学透過濃度は3.2であった。
次いで、着色電着膜及びブラックマトリックスが形成された面の上に、保護層として、プラズマ重合により作製した50Å厚さのシリコーン樹脂層をコーティングしてカラーフィルターとした。
作製したカラーフィルターのフィルター部とブラックマトリックス部の境界の光学特性を評価したところ、境界のエッジ部のズレは10μm以内の高精度が実現できた。
【0052】
実施例2
1.2mm厚さの無アルカリガラス基体にスパッタリング法で0.2μm厚みのITOの光透過性導電膜を製膜し、さらに0.5μm厚みのTiO2 をスパッタリング法で製膜した。つぎに、TiO2 の光電流特性を上げるために還元処理として5%の水素ガスが混合された純窒素ガス中で420℃、20分間のアニールを行った。このようにして作製した電着基板を図11で示すような、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置に組み込んだ。
先ず、pH値が3.1で液温30℃の塩化スズを含有するスズメッキ液(Snイオン濃度7.3%)に電着基板の全体を浸漬し、その後電着基板の導電膜にマイナスのバイアス電圧2.0Vを印加すると共に、基板の裏側からブラックマトリックス用のフォトマスクを通して水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2 )を用いて光照射し、15秒間メッキ電流を発生させ、光電流の非発生面に0.12μm厚のスズのメッキ膜からなる平滑で薄層の均一なブラックマトリックス層を形成した。ブラックマトリックス膜の光学透過濃度は2.7であった。
【0053】
次に、上記と同様の装置を用い着色電着膜を形成した。
レッドフィルター形成用電着液としてスチレン−アクリル酸共重合体(分子量14,000、スチレン含有量73モル%、酸価140、ガラス転移点52℃、流動開始点97℃、分解点248℃、析出開始点pH6.0)と、アゾ系赤色超微粒子顔料を固形分比率で9対1の割合で含む水分散液(固形分濃度9.1重量%、pH:8.0)を用いた。
光半導体薄膜(TiO2 膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.8Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、基板の裏側からレッドフィルター用フォトマスクを通して水銀キセノンランプ(山下電装製、波長365nmの光強度50mW/cm2 )により6秒間光を照射したところ、 TiO2 表面の光が照射された領域にのみレッドのマスクフィルターパターンが形成された。その後、pH値4.5のpH調整液体で洗浄した。
次に、前記と同じ電着性高分子であるスチレン−アクリル酸共重合体とフタロシアニングリーン系超微粒子顔料を固形分比率で8対2の割合で含む水分散液(固形分濃度9.2重量%、pH:8.0)をグリーンフィルター形成用電着液として用い、グリーンフィルター用のフォトマスクを通して7秒間光を照射する他は、レッドのフィルターを作製するのと同様にして、TiO2 表面の光が照射された領域にのみグリーンのマスクフィルターパターンを形成した。その後、pH値4.4のpH調整液体で洗浄した。
【0054】
同様に、前記と同じ電着性高分子であるスチレン−アクリル酸共重合体とフタロシアニンブルー系超微粒子顔料を固形分比率で8対2の割合で含む水分散液(固形分濃度9.4重量%、pH8.0)をブルーフィルター形成用電着液として使用し、前記電位差がプラス1.9Vとなるように導電膜にバイアス電圧を印加し、ブルー色のフォトマスクを通して7秒間光を照射する他は、レッドのフィルターを作製するのと同様にして、TiO2 表面に光が照射された領域にのみブルーのマスクフィルターパターンを形成した。その後、pH値4.2のpH調整液体で洗浄した。 次いで、着色電着膜及びブラックマトリックスが形成された面の上に、保護層として、プラズマ重合により作製した50Å厚さのシリコーン樹脂層をコーティングしてカラーフィルターとした。
【0055】
実施例3
4.5mm厚のパイレックスガラス基体にITOの光透過性導電膜をスパッタリングで0 .2μm厚に製膜し、ITO薄膜上にゾル・ゲル法により0.8μm厚のTiO2 層を製膜した。TiO2 の製膜はITO膜上にTiO2 の水分散液をスピンコート法(回転速度1400回転)により被覆することにより行った。その後還元処理として、実施例1と同様に4%の水素ガスが混合された純窒素ガス中で360℃で20分間アニールを行った。
このようにして作製した電着基板を図11で示すような、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置に組み込んだ。
次に、液温50℃の硫酸ニッケルを含有するニッケルメッキ液(Niイオン12.3%)に、前記電着基板のTiO2 層がメッキ液に浸されるように電着基板を設置し、その後電着基板の導電膜に全体にマイナスのバイアス電圧1.9Vを印加すると共に、基板の裏側からブラックマトリックス用のフォトマスクを通して水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2 )を用いて光照射し、5秒間メッキ電流を発生させ、光電流の非発生面に0.20μm厚のニッケルのメッキ膜からなるブラックマトリックス層を形成した。ブラックマトリックス膜の光学透過濃度は2.9であった。
【0056】
次に、同様の装置を用い着色電着膜の形成を行った。
レッドフィルター形成用電着液として電着性高分子であるスチレン−アクリル酸共重合体(分子量1 0000、スチレン含有量68モル%、酸価160、ガラス転移点35℃,流動開始点85℃、分解点240℃、析出開始点pH5.8)と、アゾ系赤色超微粒子顔料を固形分比率で9対1の割合で含む水分散液(固形分濃度8.6重量%、pH:7.8)を使用した。
光半導体薄膜(TiO2 膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.7Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、基板の裏側からレッドフィルター用のフォトマスクを通して水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2 )により5秒間光を照射したところ、TiO2 表面の光が照射された領域にのみレッド色のマスクフィルターパターンが形成された。その後そのパターン像をpH値4.2のpH調整水溶液で浸水洗浄した。
次に、前記と同じ電着性高分子であるスチレン−アクリル酸共重合体とフタロシアニングリーン系超微粒子顔料を固形分比率で9対1の割合で含む水分散液(固形分濃度8.1重量%、pH7.8)を電着液として使用し、グリーン色用のフォトマスクを通して5秒間光を照射する他は、レッドフィルターの作製と同様にして、TiO2 表面の光が照射された領域にのみグリーンのマスクフィルターパターンを形成した。その後pH値4.2のpH調整液体で洗浄した。
【0057】
次に、前記と同じ電着性高分子であるスチレン−アクリル酸共重合体とフタロシアニンブルー系超微粒子顔料を固形分比率で9対1の割合で含む水分散液(固形分濃度8.5重量%、pH:7.8)を電着液として使用し、ブルー色用のフォトマスクを通して5秒間光を照射する他は、レッドフィルターの作製と同様にして、TiO2 表面の光が照射された領域にのみブルーのマスクフィルターパターンを形成した。
そのフィルター層の境界部分においても光学的に境界部が明確に示され漏れ光が確認されず良好な性能を確認できた。その後pH値4.2のpH調整液体で洗浄し乾燥した後、0.2mm厚のポリイミドフィルムを電着層面に載せて、終了したテストピースを純水中に20日間浸漬し、膜質を観察したが、変化が確認できず、このカラーフィルターが十分な堅牢性を示すものであった。これをカラーフィルターとした。
【0058】
実施例4
厚さ3mmの石英ガラス基体にITOの光透過性導電膜をスパッタリング法で0.3μm厚に製膜した後、 ITO薄膜上にシランガスのグロー放電着膜法によりa−Si膜と、着膜後半にジボランガスを導入しながら着膜し、p型a−Si膜を積層し、0.1μm厚の光起電力層を製膜した。そのあと、レーザー光線により約550℃の表面温度になるように加熱処理を行い、Si膜の結晶化度を上昇させ、pn接合型poly−Si膜とした。このようにして作製した電着基板を図11で示すような、電気化学分野において一般的な三極式の配置を有する装置に組み込んだ。
レッドフィルター用電着液として、実施例1と同じ電着性高分子とアゾ系赤色超微粒子顔料を固形分比率で7対3の割合で含むに弱アルカリ性水分散液(固形分濃度8.7重量%、pH:7.8)を使用した。
【0059】
光半導体薄膜(Si膜)が飽和カロメル電極に対してプラス1.7Vのバイアス電位差となるように、ITO導電膜に電圧を印加した。また、電着基板の裏側からHe-Ne レーザー光源を用いてレッドフィルター画素に対応した信号のレーザー光を照射し、Si膜の表面の光が照射された領域にだけレッド色のフィルターパターンそ形成した。その後そのパターン像をpH値3.0のpH調整水溶液で浸水洗浄した。
次に、実施例1と同じ電着性高分子とフタロシアニングリーン系超微粒子顔料を固形分比率で7対3の割合で含む水系顔料分散液(固形分濃度9.5重量%、pH:7.8)をグリーンフィルター用電着液として使用し、He-Ne レーザー光源を用いてグリーンフィルター画素に対応した信号のレーザー光を照射する他は、レッドフィルターの作製と同様にして、Si層のレーザー光が照射された領域にだけグリーンのフィルターパターンを形成した。その後そのパターン像をpH値3.0のpH調整水溶液で浸水洗浄した。
【0060】
同様に、実施例1と同じ電着性高分子とフタロシアニンブルー系超微粒子顔料を固形分比率で7対3の割合で含む水系顔料分散液(固形分濃度8.1重量%、pH:7.8)をブルーフィルター形成用電着液として使用し、He-Ne レーザー光源を用いてブルーフィルター画素に対応した信号のレーザー光を照射する他は、レッドフィルターの作製と同様にして、Si層のレーザー光が照射された領域にだけブルーのフィルターパターンを形成した。その後そのパターン像をpH値3.2のpH調整水溶液で浸水洗浄した。 次に、液温20℃の硫酸ニッケルを含むニッケルメッキ液(Niイオン12.3%)に、前記電着基板の着色電着膜が形成されたSi層を前記メッキ液に浸漬し、電着基板の導電膜にマイナスのバイアス電圧2.1Vを印加し、6.5秒間、着色フィルター電着部以外の部分にメッキ電圧を発生させ、厚さ0.2μmのニッケルメッキ膜からなるブラックマトリックスのパターン像を形成した。ブラックマトリックスは、カラーフィルター層がない部分にのみ形成され、その膜の光学透過濃度は、3.2であった。
次いで、着色電着膜及びブラックマトリックスが形成された面の上に、保護層として、プラズマ重合により作製した50Å厚さのシリコーン樹脂層をコーティングしてカラーフィルターとした。
【0061】
【発明の効果】
本発明は、フィルター部を光電着法によりまたブラックマトリックスを金属メッキにより形成するため、フォトリソグラフィ工程を一つも使わず、工程数が少なく、コストが低いカラーフィルターの製造方法を提供することが可能であり、また本発明の製造方法により、フィルター部とブラックマトリックス部のエッジ端部が明確な境界を示し、光の漏れがなく、解像度及び制御性及び透光性が共に高いカラーフィルターを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光半導体表面と電着液との界面に生ずるショトキー接合を説明する概念図である。
【図2】 pin接合のi層に光を照射した場合にi層にキャリアが発生・移動することを説明する概念図である。
【図3】 本発明の着色電着材料のpH変化に伴う溶解特性の変化を示す図である。
【図4】 本発明の、疎水基と親水基の総和に対する疎水基の数が異なる着色電着材料について、pH変化に伴う溶解特性の変化を示す図である。
【図5】 電着量と導電率の関係を示すグラフである。
【図6】 ブラックマトリックスの厚さと透過光学濃度の関係を示すグラフである。
【図7】 金属メッキ膜からなるブラックマトリックスとフィルター部の境界を示す模式図である。
【図8】 樹脂分散系ブラックマトリックスとフィルター部の境界を示す模式図である。
【図9】 本発明のフィルターの製造プロセスの一例を示す図である。
【図10】 本発明のフィルターの製造プロセスの他の一例を示す図である。
【図11】 本発明の光電着法によりフィルターを作製するための実験装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 電着基板
2、20 光透過性の基板
3、22 光透過性の導電膜
4、24 光起電力を有する光半導体薄膜
5、6、7、26 電着フィルター部
8、28、30 ブラックマトリックス
9 保護層
10 電着液
11 対向電極
12 バイアス電圧印加手段
13 フォトマスク
14 塩橋
15 制御電極
16 電着槽
Claims (23)
- 光透過性の基体の上に光透過性の導電膜および光起電力機能を有する光半導体薄膜をこの順に設けた電着基板の、少なくとも前記光半導体薄膜を、着色電着材料を含む電着液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加すると共に前記電着基板に像露光して、光照射部に着色電着膜を形成する工程、
前記電着基板の少なくとも着色電着膜が形成された光半導体薄膜を金属メッキ液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加することにより、光半導体薄膜の着色電着膜未形成部分に金属メッキ膜のブラックマトリックスを形成する工程、
を備え、前記着色電着材料は、pHが低下することにより電着液に対する溶解性あるいは分散性が低下する物質を含み、前記物質は、疎水基と親水基を含有する重合体であって、疎水基の数が疎水基と親水基の総数の40〜80%であることを特徴とするフィルターの製造方法。 - 前記光半導体薄膜が、酸化チタンを含有する化合物光半導体薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記酸化チタンが、水素化処理されたものであることを特徴とする、請求項2に記載のフィルターの製造方法。
- 前記光半導体薄膜が、炭化けい素、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化錫、酸化モリブデンよりなる群の中から選ばれる1つ以上を含有する化合物光半導体薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記光半導体薄膜が、含金属フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、アゾ系顔料、またはポリビニルカルバゾールよりなる群の中から選ばれる1つ以上を含有する有機光半導体薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記光半導体薄膜が、アモルファスシリコンまたはポリシリコンを含む光半導体薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記光半導体薄膜の体積抵抗値が105 Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記光半導体薄膜が、微結晶性または多結晶性であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記金属メッキ膜の厚さが70〜900nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記金属メッキ膜が、Ni、Cr、Cu、Au、Ag、Mo、Sn、Zn、Coよりなる群より選ばれる1種または2種以上の金属または合金からなることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記重合体が、疎水基を有するモノマーと親水基を有するモノマーのランダム共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記親水基の数の50%以上が、pHの変化により親水基から疎水基あるいはこの逆に可逆的に変化する親水基であることを特徴とする請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記pHの変化により親水基から疎水基あるいはこの逆に可逆的に変化する親水基が、カルボキシル基であることを特徴とする、請求項12に記載のフィルターの製造方法。
- 前記着色電着材料が、カルボキシル基を含有する電着性高分子と顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記カルボキシル基を有する電着性高分子の酸価が60〜300の範囲にあることを特徴とする、請求項14に記載のフィルターの製造方法。
- 着色電着膜を形成する工程において、光半導体薄膜が陽極となるように導電膜に電圧を印加し、ブラックマトリックスを形成する工程において光半導体薄膜が陰極となるように導電膜に電圧を印加することを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記光半導体薄膜がn型光半導体薄膜であり、また前記着色電着材料がカルボキシル基を有する電着性高分子を含むことを特徴とする、請求項16に記載のフィルターの製造方法。
- 前記光半導体薄膜が、pn接合またはpin接合を有する光半導体薄膜であり、また前記着色電着材料がカルボキシル基を有する電着性高分子を含むことを特徴とする、請求項16に記載のフィルターの製造方法。
- 電着後の着色電着膜の膜中の電着液のpHを、電着液からの着色電着材料の凝析開始pHより低い値に保持することを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 着色電着膜を形成する工程において、電着電位が5V以下の電圧を用いることを特徴とする請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 前記電着液に、電着特性に影響を与えないイオン解離する塩を加えて、電着液の体積固有抵抗率を100 〜106 Ω・cmの範囲に調節することを特徴とする、請求項1に記載のフィルターの製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により作製されるフィルター。
- 光透過性の基体の上に光透過性の導電膜および光半導体薄膜をこの順に設けた電着基板の、少なくとも前記光半導体薄膜を、金属メッキ液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加すると共に前記電着基板に像露光して、非光照射部に金属メッキ膜のブラックマトリックスを形成する工程、
前記電着基板の少なくともブラックマトリックスが形成された光半導体薄膜を着色電着材料を含む電着液に浸漬する工程、
前記導電膜に電圧または電流を印加すると共に前記電着基板に像露光して、光照射部に着色電着膜を形成する工程、
を備え、前記着色電着材料は、pHが低下することにより電着液に対する溶解性あるいは分散性が低下する物質を含み、前記物質は、疎水基と親水基を含有する重合体であって、疎水基の数が疎水基と親水基の総数の40〜80%であることを特徴とするフィルターの製造方法。
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