JP2001164399A - 高分子膜の形成方法 - Google Patents

高分子膜の形成方法

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JP2001164399A
JP2001164399A JP34605299A JP34605299A JP2001164399A JP 2001164399 A JP2001164399 A JP 2001164399A JP 34605299 A JP34605299 A JP 34605299A JP 34605299 A JP34605299 A JP 34605299A JP 2001164399 A JP2001164399 A JP 2001164399A
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Japan
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film
electrodeposition
forming
substrate
light
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JP34605299A
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English (en)
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Takao Tomono
孝夫 友野
Shigemi Otsu
茂実 大津
Takashi Shimizu
敬司 清水
Hidekazu Akutsu
英一 圷
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Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子回路材料の動作特性への悪影響を与えず
に、電子回路材料を備えた基板に、直接、高解像度で濃
度均一性に優れると共に、強固な高分子膜を形成しうる
高分子膜の形成方法を提供する。 【解決手段】 導電性を有する基板を電着材料を含む水
系電解液に接触させる第一の工程と、前記基板に水素イ
オン濃度の変化により電気化学的に電着材料を析出させ
て電着膜を形成する第二の工程とを含む高分子膜の形成
方法であって、かつ前記水系電解液が、アンモニウム化
合物及びその塩の少なくとも一方を含有することを特徴
とする。アンモニウム化合物又はその塩が、テトラアル
キルアンモニウム化合物又はテトラアルキルアンモニウ
ムヒドロキシドである態様が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子膜の形成方
法、及びCCDカメラや液晶表示素子等の各種表示素子
や表示パネル及びカラーイメージセンサー等に使用され
るカラーフィルタにおける着色膜の形成方法、及び薄膜
トランジスタ(TFT)等の能動素子を備えた基板に直
接着色膜(カラーフィルタ膜)を形成する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】現在、カラーフィルタの製造方法として
は、(1)染色法、(2)顔料分散法、(3)印刷法、
(4)インクジェット法、(5)電着法、(6)ミセル
電解法等が知られており、それぞれ固有の特徴及び利点
を有するが、以下のような欠点がある。即ち、第1の染
色法は、透過率も高く色相も豊富で技術上の完成度も高
いため、カラー固体撮像素子(CCD)に多用されてい
る。しかし、パターニングにフォトリソグラフィ工程が
必要であり、また染料を用いるため耐光性に劣り、製造
工程の数も多いという欠点がある。第2の顔料分散法
も、フォトリソグラフィ工程によりパターニングし、か
つ工程数も多いため、コストが高いという欠点がある。
第3の印刷法及び第4のインクジェット法は、いずれも
フォトリソグラフィ工程を要しないが、前者は解像度や
膜厚均一性の点で劣り、後者は、隣接フィルタ層間で混
色を生じやすく、解像度、位置精度の点で劣る。
【0003】第5の電着法は、共通電極を形成するな
ど、フォトリソグラフィによるパターニング工程を要す
るため、パターン形状が限定され、TFTを備えた液晶
用には使えないという欠点がある。また、TFT液晶基
板側に電着法によりカラーフィルタを一体形成できれば
パターニングする必要はないが、従来の電着法では電着
電圧が高くTFTの画素電極を利用した電着が不可能で
あった。また、カラーフィルタ層自体が絶縁性であるた
め駆動電圧が上昇する等の理由で利用できない。第6の
ミセル電解法は電着法の一種であるが、フェロセンの酸
化還元を利用するため低電圧で電着でき、TFT液晶基
板側に直接カラーフィルタを一体形成できる。しかし、
ミセル電解法で形成される薄膜は、フェロセンや界面活
性剤等の不純物が混入してしまい、電着にも長時間を要
する点で劣る。さらに、フェロセンは非常に高価であり
コストの点でも不利である。
【0004】また、一般にカラーフィルタは、カラーフ
ィルタ層を形成するのみでは使えず、各色のフィルタセ
ル間をブラックマトリックスで覆う必要があるが、該ブ
ラックマトリックス形成にも通常フォトリソグラフィ法
が用いられ、コストアップの大きな要因の1つとなって
いる。
【0005】従って、フォトリソグラフィ工程を経るこ
となく、簡易な工程で低コストに、高解像度でパターン
精度に優れたカラーフィルタを製造しうる製造方法が望
まれており、近年では、映像情報及び通信情報を高解像
度に表示しうるディスプレイへの要求が高まり、より高
精細のパターン化されたカラーフィルタが求められてい
る。そこで、本発明者らは、前記問題点を解決するため
光電着法を利用した簡易な工程により、高解像度でパタ
ーン精度に優れたカラーフィルタを安定に製造しうる技
術について、既に出願中である(特願平9−13541
0号、特願平9−297466号等、特願平10−16
2170号、特願平10−197564号等)。
【0006】ところが、前記電着法等のほか光電着法に
おいても、カラーフィルタの製造に用いる電解液中に無
機アルカリ材(金属カチオン)を使用しており、特に薄
膜トランジスタ(TFT)等の電子回路材料(能動素
子)を備えた基板に直接高分子膜(カラーフィルタ膜)
を形成しようとすると、前記無機金属カチオン(アルカ
リ金属、アルカリ土類金属)を含む電解液がTFT素子
に触れることによりその動作特性に悪影響を与える。従
って、電子回路材料を備えた基板を、無機アルカリ材を
含む電解液中に浸漬することはできず、即ち、電子回路
材料を備えた基板上に、高解像度でパターン精度に優れ
たカラーフィルタを安定に形成することは困難であっ
た。また、電着性の高分子材料(電着材料)を無機アル
カリ材を含む水系溶媒に溶解し電解液とする場合、電着
材料の溶解限界pHは7.6程度である一方、顔料の分
散によりそのpHは0.2以上上昇する。このため、形
成した高分子膜の再溶解現象を防止し、平滑で強固な高
分子膜を形成するためには、電解液のpHとしては、よ
り低いことが必要である。
【0007】さらに、電解液の電着材料の濃度を高める
ことは、顔料等の色材を含む場合に、顔料表面への被覆
や顔料の分散性を向上させることが可能となり、顔料を
含有する着色薄膜の形成に有利となる。即ち、電解液中
で、顔料が均一に分散された状態にあるため、形成され
る着色膜の色濃度も均一となり、濃度ムラや膜厚差の少
ない着色膜を形成することができる。従って、上記の通
り、電解液のpHとしては低いことが必要
【0008】上記の通り、顔料の分散性をより向上させ
ることができると共に、形成された高分子膜の再溶解現
象を効果的に防止し、より平滑で強固な高分子膜を形成
し得、さらに電着用基板として、TFT素子等の電子回
路材料を備えた基板を用いた場合でも、該電子回路材料
の動作特性への悪影響を考慮することなく、該基板上
に、直接高解像度でパターン精度に優れた高分子膜(カ
ラーフィルタ)を安定に形成しうる方法は、未だ提供さ
れていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来に
おける諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課
題とする。即ち、本発明は、TFT素子等の電子回路材
料の動作特性への悪影響を考慮することなく、電子回路
材料を備えた基板上に、直接高解像度でパターン精度に
優れた高分子膜を安定に形成しうる高分子膜の形成方法
を提供することを目的とする。さらに、上記同様、電子
回路材料を備えた基板上に、直接高解像度でパターン精
度に優れたカラーフィルタ膜を安定に形成しうる高分子
膜の形成方法を提供することを目的とする。本発明は、
顔料の分散性をより向上させうると共に、形成された高
分子膜の再溶解現象を効果的に防止し、濃度均一性に優
れ、より平滑で強固な高分子膜を形成しうる高分子膜の
形成方法を提供することを目的とする。また、
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段は以下の通りである。即ち、 <1> 導電性を有する基板を、電着材料を含む水系電
解液に接触させる第一の工程と、前記基板に、水素イオ
ン濃度の変化により電気化学的に電着材料を析出させて
電着膜を形成する第二の工程と、を含む高分子膜の形成
方法であって、前記水系電解液が、アンモニウム化合物
及びその塩の少なくとも一方を含むことを特徴とする高
分子膜の形成方法である。
【0011】<2> アンモニウム化合物が、アンモニ
ウム又は有機アンモニウム化合物である前記<1>に記
載の高分子膜の形成方法である。 <3> 有機アンモニウム化合物が、テトラアルキルア
ンモニウム化合物である前記<2>に記載の高分子膜の
形成方法である。
【0012】<4> テトラアルキルアンモニウム化合
物の塩が、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドで
ある前記<3>に記載の高分子膜の形成方法である。 <5> テトラアルキルアンモニウム化合物又はその塩
のアルキル基が、メチル基又はエチル基である前記<3
>又は<4>に記載の高分子膜の形成方法である。
【0013】<6> 水系電解液がさらに色材を含有
し、第二の工程において着色電着膜を形成する前記<1
>〜<5>のいずれかに記載の高分子膜の形成方法であ
る。
【0014】<7> 第一の工程が、光透過性の基体上
に、少なくとも光透過性の導電膜と光起電力機能を有す
る光透過性の光半導体薄膜とをこの順に積層した基板の
前記光半導体薄膜を、色材を含有する電着材料を含む水
系電解液に接触させる工程であり、第二の工程が、前記
基板を水系電解液中で光照射し、前記光半導体薄膜の光
照射部に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に前
記電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程であ
る前記<6>に記載の高分子膜の形成方法である。 <8> 基板が、さらに電子回路材料を有する前記<7
>に記載の高分子膜の形成方法である。
【0015】<9> 第一の工程が、光透過性の基体上
に、少なくとも光透過性の導電膜と該光透過性の導電膜
に接合された電子回路材料とを備える基板の少なくとも
前記光透過性の導電膜を、色材を含有する電着材料を含
む水系電解液に接触させる工程であり、第二の工程が、
前記基板の電子回路材料を、水系電解液に前記光透過性
の導電膜を接触させた状態で駆動することにより、前記
光透過性の導電膜に、水系電解液が電気分解して水素イ
オンを発生しかつ実質的に膜形成性を低下させる気泡の
発生のない電圧を印加して、前記光透過性の導電膜上に
電着材料を析出させ着色電着膜を形成する工程である前
記<6>に記載の高分子膜の形成方法である。
【0016】<10> 光半導体薄膜が、酸化チタン系
化合物を主成分として含んでなる前記<7>又は<8>
に記載の高分子膜の形成方法である。 <11> 色材が顔料であって、該顔料の数平均粒子径
が0.2〜200nmである前記<6>〜<10>のい
ずれかに記載の高分子膜の形成方法である。
【0017】<12> 電着材料が、カルボキシル基を
有する化合物を含む前記<1>〜<11>のいずれかに
記載の高分子膜の形成方法である。 <13> カルボキシル基を有する化合物が、疎水ドメ
インと親水ドメインを有する重合体であって、疎水ドメ
インの数が疎水ドメインと親水ドメインの総数の30〜
85%である前記<12>に記載の高分子膜の形成方法
である。
【0018】<14> 重合体が、スチレン構造又は置
換スチレン構造を持つ疎水ドメインと、親水ドメインと
の共重合体であって、かつ疎水ドメインの数が疎水ドメ
インと親水ドメインの総数の55〜85%である前記<
13>に記載の高分子膜の形成方法である。 <15> 重合体が、スチレン−アクリル酸−アクリル
酸エステル共重合体である前記<13>又は<14>に
記載の高分子膜の形成方法である。
【0019】<16> 重合体の酸価が、60〜200
である前記<13>〜<15>のいずれかに記載の高分
子膜の形成方法である。 <17> 重合体の親水ドメインの数の50%以上が、
pHの変化により水溶性から非水溶性、或いは、この逆
に可逆的に変化しうる前記<13>〜<16>のいずれ
かに記載の高分子膜の形成方法である。 <18> 重合体の数平均分子量が、6000〜250
00である前記<13>〜<17>のいずれかに記載の
高分子膜の形成方法である。
【0020】<19> 水系電解液のpHが、電着材料
が析出開始するpH値の±2.5の範囲にあり、かつ
8.5以下である前記<1>〜<18>のいずれかに記
載の高分子膜の形成方法である。 <20> 水系電解液のpH調整剤として、塩化アンモ
ニウムを用いる前記<1>〜<19>のいずれかに記載
の高分子膜の形成方法である。
【0021】<21> 水系電解液が、導電材料を含有
する前記<1>〜<20>のいずれかに記載の高分子膜
の形成方法である。 <22> 水系電解液中の水系溶媒の含有量が、水系電
解液の全重量の65〜96重量%である前記<1>〜<
21>のいずれかに記載の高分子膜の形成方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の高分子膜の形成方法は、
水系電解液として、電着材料と共にアンモニウム化合物
及びその塩の少なくとも一方を含む水系電解液を用い、
前記水系電解液に浸漬した基板上に高分子膜を、特に前
記水系電解液が色材を含む場合には、該色材の色相に応
じ着色された高分子膜(カラーフィルタ膜)を、形成す
る。以下、本発明の高分子膜の形成方法について説明す
る。
【0023】本発明の高分子膜の形成方法は、導電性を
有する基板を、電着材料と共にアンモニウム化合物及び
その塩の少なくとも一方を含む水系電解液に接触させる
第一の工程と、前記基板に、水素イオン濃度の変化によ
り電気化学的に電着材料を析出させて電着膜を形成する
第二の工程とを含んでなり、前記水系電解液が色材を含
む場合には該色材色相に着色された電着膜(以下、「着
色電着膜」又は「着色膜」ということがある。)を形成
し、さらに必要に応じて、ブラックマトリックスを形成
する工程(以下、「ブラックマトリックス形成工程」と
いうことがある。)、熱処理等を行う硬膜工程等の他の
工程を有してなる。
【0024】<第一の工程>前記第一の工程では、導電
性を有する基板を、電着材料と共に、アンモニウム化合
物及びその塩の少なくとも一方を含む水系電解液(以
下、単に「電解液」ということがある。)に接触させ
る。 −水系電解液− 前記水系電解液としては、水系溶媒に、少なくとも電着
材料とアンモニウム化合物及びその塩の少なくとも一方
を分散又は溶解させた水系電解液を用いる。後述のよう
に、着色された高分子膜を形成する場合には、色材を含
有することができ、必要に応じて、導電材料、pH調整
剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0025】(アンモニウム化合物等)前記アンモニウ
ム化合物及びその塩としては、原子団NH4 +(アンモニ
ウム)のほか、そのHが炭化水素基などで置換された有
機アンモニウム化合物、及びこれらの塩が挙げられる。
本発明においては、前記アンモニウム化合物としては、
アンモニウム(NH4 +)、有機アンモニウム化合物とし
てR4+型の第4アンモニウム化合物(テトラアルキル
アンモニウム化合物)が好ましく、中でも特に、テトラ
メチルアンモニウム((CH3)4+)、テトラエチルア
ンモニウム((C25)4+)が好ましい。また、前記
アンモニウム化合物の塩としては、テトラアルキルアン
モニウム化合物の塩が好ましく、中でも、テトラアルキ
ルアンモニウムヒドロキシド(R4N−OH)がより好
ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド((C
3) 4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシ
ド((C25)4NOH)が最も好ましい。
【0026】前記アンモニウム化合物及びその塩は、市
販品であっても、適宜製造して得られたものであっても
よく、水系電解液を構成する水系溶媒と溶解混合し適当
な濃度のアンモニウム化合物水溶液として使用すること
ができ、これを電着材料を溶解する溶媒として用いるこ
ともできる。また、水系溶媒に、電着材料を溶解した後
若しくは溶解しながら、前記アンモニウム化合物又はそ
の塩を添加してもよい。アンモニウム化合物及びその塩
は、二種以上併用してもよい。
【0027】電着材料を溶解、分散する水系溶媒とし
て、前記アンモニウム化合物及びその塩の少なくとも一
方を含有する溶媒を用いると、該溶媒が、従来用いられ
てきた無機アルカリ水溶液に比べ、一般にpH値の高い
強アルカリの水溶液であることから電着材料を多量に溶
解させることができ、さらに最終的に調製した電解液の
pH値をも、無機アルカリ水溶液を溶媒とした場合より
も下げることができる。即ち、電解液のpH値として
は、ある程度低い方が好ましく、基板上に電着膜を形成
した後、電圧印加を終了した場合でも電解液中への再溶
解現象を抑制することができ、より平滑で強固な高分子
膜を安定に形成することができる。
【0028】さらに、電着液中の電着材料の濃度も高め
られることから、後述するように、電着材料と共に顔料
等の色材を含有して顔料含有高分子膜(着色膜/カラー
フィルタ)を形成する場合には、該色材の分散材として
も作用し、電解液中における顔料の分散性を向上でき、
濃度均一性に優れた着色膜(カラーフィルタ)を形成す
ることができる。
【0029】前記有機アルカリ材の含有量としては、用
いる水系溶媒(重量)に対して、0.1〜30重量%が
好ましく、1〜10重量%がより好ましい。前記含有量
が、0.1重量%未満であると、電着電圧が上昇し、低
電圧で電着できないことがあり、30重量%を超える
と、多量に電着される結果、電着性を制御できないこと
がある。
【0030】従来、水系電解液には、電解液中における
十分な導電度を確保する目的で、アルカリ土類金属やア
ルカリ金属を含む無機アルカリ材が使用されてきたが、
該無機アルカリ材は、TFT素子等の電子回路材料に対
してVFをシフトさせ、動作自体の特性に悪影響を与え
る傾向がある。従って、前記無機アルカリ材に代え有機
アルカリ材を用いることにより、上記のような悪影響を
回避し、電子回路材料を備えた基板を電解液中に浸漬
し、該基板上に直接高分子膜(カラーフィルタ膜)を形
成した場合でも、電子回路材料の動作特性を損なうこと
なく、後述のように、高解像度でパターン精度に優れた
高分子膜を安定に形成することができる。
【0031】(電着材料)前記電着材料としては、少な
くとも溶液のpH変化に対応して溶解度が変化するイオ
ン性分子と、電着膜を所望の色に着色するための染料、
顔料、色素等の色材とを含有してなり、必要に応じて、
他の成分を含有してなる。さらに、導電性の材料を含有
して導電性の電着材料としてもよく、前記導電性の材料
を含有するとともに、或いは、前記導電性の材料を含有
させずに、前記色材として導電性の着色材を用いて構成
することもできる。
【0032】前記色材自体は必ずしも電着能を有する必
要はなく、イオン性分子が電着する際に、色材を取り込
んで凝集、析出することにより着色膜等が形成されても
よい。また、色材自体がイオン性分子であって、電着能
を有する場合は、電着材料は色材のみからなっていても
よい。ここで、色材として顔料を含有するとともに、イ
オン性高分子を含有させた電着材料を用いると、形成し
た着色膜の耐光性を向上させることができ、特に好まし
い。前記イオン性分子としては、陰イオン解離性基を有
するアニオン性分子であっても、陽イオン解離性基を有
するカチオン性分子であってもよい。
【0033】いずれのイオン性分子を電着材料として選
択するかは、イオン性分子が有するpHの変化に対応し
た溶解度の変化特性を目安にすることができる。本発明
に用いられる電着材料は、溶液のpH変化に依存して、
急激に溶解度が変化する性質を有するものが好ましい。
例えば、溶液の±2.0のpH変化に対応して、より好
ましくは、±1.0のpH変化に対応して状態変化(溶
存状態→沈殿、又は沈殿→溶存状態)するものが好まし
い。このような溶解度特性を有するイオン性分子を電着
材料として用いれば、より迅速に電着膜を作製でき、ま
た強い凝集力により耐水性に優れた電着膜を作製するこ
とができる。さらに、電着材料として用いるイオン性分
子は、pHの変化に対応する状態変化(溶存状態→析出
の変化と析出→溶存状態の変化)にヒステリシスを示す
ものが好ましい。即ち、pHの減少又は増加に対応する
析出状態への変化は急峻であり、かつpHの増加又は減
少に対応する溶存状態への変化は緩慢であると、着色膜
の安定性が向上するので好ましい。
【0034】前記イオン性分子としては、例えば、陰イ
オン性解離基であるカルボキシル基等を有するアニオン
性高分子化合物;陽イオン性解離基であるアミノ基、イ
ミノ基等を有するカチオン性高分子化合物等が挙げられ
る。本発明においては、電着材料として用いるイオン性
分子としては、カルボキシ基を有する化合物が好まし
く、該カルボシキ基を有する化合物が疎水ドメインと親
水ドメインとを有する重合体であることが好ましい。上
記重合体のうち、イオン性解離基を有する親水性モノマ
ー(親水ドメイン)と疎水性モノマー(疎水ドメイン)
との共重合体が好ましく、中でも、ブロック共重合体、
ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はブロック共
重合体とグラフト共重合体若しくはランダム共重合体と
の混合物がより好ましい。さらに、基板として、光透過
性の導電膜と接合する能動素子を備えた基板を用い、該
能動素子を駆動する際の駆動電圧を利用して着色膜を形
成する場合には、色材の分散性を向上させうる観点か
ら、ブロック共重合体、又はブロック共重合体とグラフ
ト共重合体との混合物が最も好ましい。
【0035】前記ブロック共重合体としては、色材の分
散性が良好である点で、疎水性モノマーをA、親水性モ
ノマーをBとして表した場合、疎水性モノマーAよりな
るブロック部分と、親水性モノマーBよりなるブロック
部分とがAAA−BBBで表されるジブロック共重合
体、BBB−AAA−BBBで表されるトリブロック共
重合体が特に好ましい。また、グラフト共重合体として
は、AAAAAAで表されるポリマー主鎖に、BBBB
BBで表される複数の側鎖が結合したグラフト共重合体
が特に好ましい。
【0036】これは、色材としては主に顔料を用いる
が、Aよりなる疎水性ブロック部が、疎水性を示す顔料
表面に対する吸着基として作用すると同時に、顔料表面
において高分子鎖が適当に絡み合い、適当な厚みを持つ
高分子で覆われることにより、隣接する顔料同士の凝集
を防止することができるためと考えられる。この時、B
よりなる親水性ブロック部は溶媒である水と親和して、
水系電解液中での顔料の分散安定性を補助するように作
用する。従って、水不溶性の顔料は、互いに凝集するこ
となく、安定に分散された状態で保持される。
【0037】親水ドメインである、陰イオン性解離基を
有する親水性モノマーとしては、例えば、メタクリル
酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アク
リルアミド、無水マレイン酸、無水トリメリト酸、無水
フタル酸、ヘミメリット酸、コハク酸、アジピン酸、プ
ロピオル酸、プロピオン酸、フマル酸、イタコン酸、ク
ロトン酸等のカルボキシル基を有するモノマー、及びこ
れらの誘導体が挙げられる。中でも、メタクリル酸、ア
クリル酸及びこれらの誘導体が、これらをモノマーとす
るイオン性高分子は、pHの変化により状態変化が急峻
であるとともに、水系液体への親水性も高い点で好まし
い。
【0038】陽イオン性解離基を有するモノマーとして
は、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4
級アミン、オキサゾリン、アルキルアミン、アルキルイ
ミン、ポリアミン、ポリイミン等のアミノ基又はイミノ
基を有するモノマー等が挙げられる。また、陽イオン性
解離基を有するカチオン性高分子は、高分子にアミノ
基、イミノ基等の陽イオン性解離基を導入したものであ
ってもよい。親水性モノマーは、その分子構造中に30
〜75重量%の割合でイオン解離性基を含有するものが
好ましい。また、親水性モノマーは、2種類以上を組合
わせて用いてもよい。
【0039】疎水性モノマー(疎水ドメイン)として
は、アルキル基、フェニル基、置換フェニル基等の芳香
族基、複素環基、置換若しくは未置換の長鎖炭化水素基
等を有する高分子材料が好ましく、アルキル基を含む芳
香族基を有する高分子材料がより好ましく、スチレン構
造又は置換スチレン構造を疎水ドメインとして有する高
分子材料が最も好ましい。例えば、エチレン、ブタジエ
ン等のオレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、α
−エチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸
エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、アク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、
メタクリル酸ラウリル等、及びこれらの誘導体、フェニ
レン誘導体、ナフタレン誘導体等が挙げられる。中で
も、スチレン、α−メチルスチレン及びこれらの誘導体
は、疎水化効率が高く電着析出効率が良好である点、ま
た親水性モノマーとの共重合の際の制御性が高い点で好
ましい。尚、疎水性モノマーは、2種類以上を組合わせ
て用いてもよい。
【0040】上記のうち、イオン性解離基を有する親水
性モノマー(親水ドメイン)と疎水性モノマー(疎水ド
メイン)との共重合体としては、スチレン−アクリル酸
−アクリル酸エステル共重合体が特に好ましい。
【0041】前記イオン性高分子としては、電解液の液
安定性の観点からは、適度な親水性を有している必要が
あり、一方、電着膜の膜強度及び耐水性の観点からは、
適度な疎水性を有している必要がある。電着材料として
用いるイオン性高分子に要求される疎水性と親水性のバ
ランスは、例えば、以下のようなモノマー単位の疎水ド
メインの数と、親水ドメインの数とで表すことができ
る。即ち、イオン性高分子が、疎水性モノマーと親水性
モノマーとの共重合体である場合、モノマー単位の疎水
ドメインの数と親水ドメインの数との総和に対する疎水
ドメインの数としては、低電位で強固な高分子膜を形成
しうる点で、30〜85%が好ましく、60〜80%が
より好ましい。特に、スチレン構造又は置換スチレン構
造を持つ疎水ドメインと、アクリル酸等やそれらの誘導
体などの親水性ドメインと、からなる共重合体の場合に
は、前記疎水ドメインの数としては、55〜85%が好
ましい。前記疎水ドメインの数の割合が、30%未満で
あると、着膜された膜の再溶解現象を生じ易く電着膜の
耐水性や膜強度が不十分となることがあり、85%を超
えると、イオン性高分子の水系溶媒に対する親和性が低
下して適量を溶解できなかったり、沈殿を生じたり、或
いは、電解液の粘度が高くなりすぎて、均一な電着膜を
形成できないことがある。一方、疎水ドメインの数が前
記範囲にあると、水系溶媒との親和性も高く、電解液の
液性が安定化するとともに、電着効率も高いので好まし
い。
【0042】一方、前記親水基としては、該親水基の数
の50%以上が、pHの変化により水溶性から非水溶
性、或いは、この逆に可逆的に変化しうる親水基である
ことが好ましい。前記親水基の数が、50%未満である
と、水に対する溶解度が低すぎて水に溶けなくなること
がある。
【0043】イオン性高分子の疎水性と親水性のバラン
スは、アニオン性高分子を用いる場合は、酸価によって
示すこともできる。アニオン性高分子の酸価は、電着特
性が良好となる点で、60〜200が好ましく、70〜
130が特に好ましい。前記アニオン性高分子の酸価
が、60未満であると、水系溶媒への親和性が低くな
り、アニオン性高分子が沈殿したり、電解液の粘度が高
くなりすぎて、均一な電着膜が形成できないことがあ
り、200を超えると、形成された電着膜の耐水性が低
下したり、電着効率が低下することがある。
【0044】前記イオン性分子の分子量としては、電着
膜の膜特性等の観点から、数平均分子量が6.0×10
3〜2.5×104が好ましく、9.0×103〜2.0
×104がより好ましい。前記数平均分子量が、6.0
×103未満であると、膜が不均一となり、耐水性が低
下する結果、電着膜中にクラックが発生したり、電着膜
が粉末化して、堅牢性の高い電着膜が得られないことが
あり、2.5×104を超えると、水系溶媒との親和性
が低下し、沈殿が生じたり、電解液の粘度が高すぎて電
着膜が不均一となることがある。
【0045】また、前記イオン性高分子は、ガラス転移
点が100℃以下であり、流動開始点が180℃以下で
あり、分解点が150℃以上、好ましくは220℃以上
であると、基板上に形成されたイオン性高分子からなる
電着膜の膜性が良好になり、その後に施す着膜等による
劣化を招き難くなる点で好ましい。
【0046】(色材)後述するように、着色電着膜を形
成する場合には、水系電解液に色材を含有させる。前記
色材としては、染料や顔料等の色材が挙げられが、耐光
性や、均一厚の膜を安定に形成しうる点から顔料が好ま
しい。前記顔料としては、汎用の公知の顔料を挙げるこ
とができ、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キ
ナクリドン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔
料等が挙げられる。前記顔料の数平均粒子径としては、
0.2〜200nmが好ましく、40〜60nmがより
好ましい。該数平均粒子径が、0.2nm未満である
と、製造時のコストが高くなると共に、安定した品質が
得られないことがあり、200nmを超えると、色相に
ズレが生じやすく、また濁りも生ずることがある。
【0047】電着材料がイオン性の色材を含有してなる
場合、該イオン性の色材としては、トリフェニルメタン
フタリド系、フェノサジン系、フェノチアジン系、フル
オレセイン系、インドリルフタリド系、スピロピラン
系、アザフタリド系、ジフェニルメタン系、クロメノピ
ラゾール系、ロイコオーラミン系、アゾメチン系、ロー
ダミンラクタル系、ナフトラクタム系、トリアゼン系、
トリアゾールアゾ系、チアゾールアゾ系、アゾ系、オキ
サジン系、チアジン系、ベンズチアゾールアゾ系、キノ
ンイミン系の染料、及びカルボキシル基、アミノ基、又
はイミノ基を有する親水性染料等が挙げられる。
【0048】但し、均一厚の膜を安定に形成しうる点か
ら、顔料を用いることが特に好ましい。前記顔料として
は、汎用の公知の顔料を挙げることができ、例えば、ア
ゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリ
レン系顔料、アントラキノン系顔料等が挙げられる。
【0049】前記アンモニウム化合物及びその塩は、電
解液中における電着材料の濃度を高めることができるだ
けでなく、それ自体が色材の分散剤としても機能し、電
解液中における顔料の分散性を向上できる。従って、濃
度均一性により優れた着色膜(カラーフィルタ膜)を形
成することができる。
【0050】(導電材料)導電性の高分子膜を形成する
ことも可能であり、その導電性をより向上させるために
は、水系電解液中に導電材料を含有させることが好まし
い。具体的には、導電性の材料を含有する導電性の電着
材料や、導電性の着色材を用いることができる。前記導
電性の材料としては、光透過性の導電材料、光透過性の
導電性高分子化合物、塩、導電性の着色材等を挙げるこ
とができる。
【0051】前記光透過性の導電材料としては、IT
O、SnO2等の透明導電性材料、及びその混合物が挙
げられる。前記導電性の着色材としては、導電性の着色
材としては、前記イオン性の色材のほか、カーボンブラ
ック等が挙げられる。
【0052】前記塩としては、電着特性に影響を与えな
い塩、例えば、NaCl、KCl、NH4Cl等の無機
塩、テトラエチルアンモニウムクロライドやテトラエチ
ルアンモニウムパークロレート等の有機塩等が挙げられ
る。塩の種類は様々な組合わせがあるが、カチオンとし
ては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、第4
級アンモニウム塩が挙げられ、アニオンとしては、ハロ
ゲンイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオ
ン、スルホン酸イオン、BF4-、PF4-等が挙げられ
る。中でも、導電性を付与する点で、それ自身が酸化還
元を受け難いイオンが好ましく、さらに水に対する溶解
度の点で、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、
スルホン酸イオンのアンモニウム塩や第4級アンモニウ
ム塩がより好ましい。一方、薄膜トランジスタ(TF
T)に悪影響を与えないという本発明の効果を損なわな
い観点からは、アルカリ金属は避けた方がよい。
【0053】水系電解液は、水系溶媒中に前記電着材料
を溶解又は分散させて用いるが、水系溶媒とは、水を主
成分とし、所望により本発明の効果を損なわない範囲で
アルコール等の水と親和性のある他の溶剤や、種々の塩
及び添加剤等を添加した溶媒をいう。水系電解液中にお
ける、前記水系溶媒の含有量(成分重量比)としては、
水系電解液の全重量に対し、65〜96重量%が好まし
い。
【0054】(基板)基板としては、導電性の材料であ
れば使用でき、後述する基板と同様のもののほか、光透
過性である必要がない場合には、例えば、金属板、導電
性を有する不透明プラスチック材等、目的に応じて適宜
選択できる。
【0055】−第二の工程− 前記第二の工程においては、基対上に少なくとも導電膜
を有する基板に、水素イオン濃度の変化により電気化学
的に電着材料を析出させて電着膜を形成する。本工程
は、電着技術を用いた膜形成技術によるものであり、水
溶性分子のうち、酸化状態、中性状態、還元状態で各々
水への溶解度が大きく変化しうる分子に注目し、水溶性
分子を電気化学的に直接酸化還元するか、又は水溶性分
子が溶解された水溶液のpHを適宜変化させることによ
り、前記状態間の移動を可能とする原理を利用するもの
である。
【0056】即ち、高分子膜を形成しようとする基板に
電圧を印加し、電解液中の水の電気分解による、基板の
表面付近に生ずる液のpH変化により生じさせるが、そ
の方法としては、例えば、基板に直接通電する方法、基
板上に光半導体薄膜を形成し、該膜に対し光照射してそ
の光照射部にのみ生ずる光起電力を利用する方法、等が
挙げられる。形成された電着膜は、逆電圧を印加する
か、或いは、pH10〜12の水溶液に浸すことによ
り、水溶液中に再溶出させることができる。
【0057】ここで、色材を含有する電着材料を含む水
系電解液を用いることにより、所望の画像パターンの着
色された高分子膜を形成することができる。これを、赤
色、緑色、青色のそれぞれの水系電解液を用いて繰り返
し行うことにより、複数色の高分子膜を形成することも
できる。従って、従来の電着法のように、予めパターニ
ングされた透明導電膜が不要であり、フォトリソグラフ
ィ工程を経ることなく、簡易で低コストな方法で任意の
画像パターンを高解像度に形成することができる。ま
た、前記電解液中に導電材料を含有させると、基板上に
導電性を持つ電着材料が析出され、導電性の高分子膜を
形成することもできる。
【0058】本発明の高分子膜の形成方法としては、ア
ンモニウム化合物及びその塩の少なくとも一方を含有す
る水系電解液を用い、該水系電解液に高分子膜を形成し
ようとする基板を接触させ、光電着法又は電着法によ
り、電気化学的に電着材料を析出させて高分子膜を形成
する方法であればよい。中でも、好ましい態様として、
例えば、以下の第一の態様又は第二の態様に示す形成方
法が挙げられる。
【0059】−第一の態様− 本態様においては、前記第一の工程として、光透過性の
基体上に、少なくとも光透過性の導電膜と光起電力機能
を有する光透過性の光半導体薄膜とをこの順に積層した
基板の前記光半導体薄膜を、色材を含有する電着材料と
共にアンモニウム化合物及びその塩の少なくとも一方を
含む電解液に接触させる工程(以下、「接触工程」とい
うことがある。)を設け、さらに前記第二の工程とし
て、前記基板の前記光半導体薄膜を電解液中で光照射
し、前記光半導体薄膜の光照射部に選択的に光起電力を
発生させ、電気化学的に前記電着材料を析出させて着色
電着膜を形成する工程(以下、「着色電着膜形成工程」
ということがある。)を設け、必要に応じて、ブラック
マトリックス形成工程、硬膜工程等を有してなる。
【0060】[接触工程]前記接触工程は、光透過性の
基体上に、光透過性の導電膜及び光起電力機能を有する
光透過性の光半導体薄膜をこの順に積層した基板の、少
なくとも前記光半導体薄膜を、上述の色材を含有する電
着材料を含む電解液に接触させる工程である。
【0061】前記基板の光半導体薄膜を電解液に接触さ
せる際の、電解液に対する位置関係としては、任意の位
置関係を適宜選択でき、例えば、基板全体を電解液中に
浸漬して配置してもよいし、基板の一部、例えば、着色
電着膜を形成する光半導体薄膜のみが接触するように配
置してもよい。本態様では、電解液中に色材を含むた
め、少なくとも着色電着膜を形成しようとする部分が電
解液に接触するように配置し、着色電着膜を形成しよう
とする部分の裏側の表面(光半導体薄膜の設けられてい
ない側の基体表面)は、電着液外に存在している態様が
好ましい。
【0062】導電膜及び光半導体薄膜を形成した基板上
に光照射して画像パターンを形成する場合、一般に、フ
ォトマスクと、前記基板の光半導体薄膜表面とを密着さ
せて、フォトマスク上から公知の光源により平行光を照
射してもよい。しかし、上記のように電着液中には色材
等の、光を吸収しうる成分が含有されているため、フォ
トマスクを密着した面を電解液に接触して光照射しても
所望の画像パターンを得ることはできない。従って、着
色電着膜を形成しようとする光半導体薄膜の設けられて
いない側の基体表面(裏面)にフォトマスクを配置し、
照射光が電解液を通過しないように裏面のフォトマスク
上から光照射する態様が好ましい。
【0063】ここで、着色電着膜を形成しようとする光
半導体薄膜に光を入射させる場合、入射光は、基板の厚
み方向へ基体及び導電膜を通過して進むため、電解液と
接する光半導体薄膜の表面に到達するまでに、光が拡散
したり、回折の影響を受けて解像度が低下してしまうこ
とがある。従って、ブラックマトリックスや着色電着膜
を形成しようとする光半導体薄膜(露光面)の設けられ
ていない側の基板表面から、少なくとも、第二の結像光
学部材若しくはミラー反射光学部材と、少なくとも導電
膜および光半導体薄膜をこの順に積層した基板をパター
ニングするためのフォトマスクと、第一の結像光学部材
と、光源とをこの順に配置してなる露光装置を用いて、
光源から第一の結像光学部材を経てフォトマスクに結像
し、フォトマスクを介して出てきた画像パターン状の光
をさらに第二の結像光学部材を通して前記露光面に光を
結像させる態様がより好ましい。
【0064】[着色電着膜形成工程]前記着色電着膜形
成工程は、基板の前記光半導体薄膜を所望の電解液に接
触させた状態で光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部
に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に前記電着
材料を析出させて着色電着膜を形成する工程である。本
態様における着色電着膜形成工程は、既述の通り、電着
技術を用いた膜形成技術によるものであり、水溶性分子
の酸化、中性及び還元状態の状態間の移動を可能とする
原理を利用したものである。
【0065】ところが、着色電着膜の形成には、ある一
定のしきい値以上の電圧を印加する必要があり、単に電
流が流れても必ずしも電着膜が形成されるわけではな
い。従って、バイアス電圧を印加しておくことにより、
仮に外部から入力される電圧レベルが小さい場合でも着
色電着膜を形成することができ、用いる入力電圧レベル
を制御することにより所望の着色電着膜を形成すること
ができる。ここで、着色電着膜を形成しようとする基板
に半導体材料を利用し、電極として用いれば、入力信号
に光を用い、さらにこの光の照射を制御することにより
所望の位置に着色電着膜を形成することができ、任意の
画像パターンを形成することができる。
【0066】即ち、具体的には、前述のように、液性変
化により溶解度が大きく変化する顔料や染料等を含有す
る電着材料を溶解、分散した溶液(以下、「電解液」と
いうことがある。)を入れた電解液槽を用意し、該槽内
の電解液に電極として有機又は無機の半導体材料を接触
又は浸した状態で、光を所望の画像パターンに対応する
ように前記半導体材料上に照射することにより、電解液
中の電着材料を半導体材料上に析出させ、所望の画像パ
ターンのカラーフィルタ層を有する単色のカラーフィル
タを形成することができる。これを、赤色、緑色、青色
のそれぞれの電解液を用いて繰り返し行うことにより、
多色のカラーフィルタを形成できる。従って、既述の通
り、フォトリソグラフィ工程を経ることなく、簡易かつ
低コストに任意の画像パターンを平滑かつ高解像度に形
成することができる。また、前記電解液中の電着材料と
して、導電性の電着材料を用いれば、導電性のカラーフ
ィルタ膜よりなる導電性カラーフィルタを形成すること
もできる。
【0067】光照射前の水系電解液のpH値は、陽極電
着の場合には、用いる電着材料の状態変化が生じるpH
値から+2.5以内、陰極電着の場合には、用いる電着
材料の状態変化が生じるpH値から−2.5以内の範囲
に設定することが好ましく、かつpH8.5以下である
ことが好ましい。即ち、電解液に用いる水系溶媒に対し
て電着材料が十分な溶解性を示すと同時に、その電解液
のpH変化により溶解若しくは分散状態から上澄みを生
じて沈殿を生ずる変化がpH3.0の範囲以内であるこ
とが好ましい。さらには、1.5以内であることがより
好ましい。
【0068】水系電解液のpH値をこのような範囲に設
定しておけば、着色電着膜が形成される前に電着材料の
水系溶媒への溶解が飽和状態となる。その結果、一旦着
色電着膜を形成してしまえば、膜形成後に水系電解液中
に再溶解し難く安定的に、かつ透光性の高い着色電着膜
を形成することができる。一方、着色電着膜の形成時
に、電着材料が未飽和状態、即ち、電解液のpH値が上
記範囲にない場合には、着膜速度の低下を招いたり、或
いは、一旦着色電着膜が形成されても、電流等の供与を
中止した途端に膜の再溶解を生ずることがある。尚、電
解液のpH値を調整するには、電着特性に影響を与えな
い酸性又はアルカリ性物質を添加し、バイアス電圧を5
V以下まで下げて着色膜を形成することが好ましく、2
V以下まで下げて着色膜を形成することがより好まし
い。
【0069】また、エッジ部がシャープで、高鮮鋭なブ
ラックマトリックス及び着色電着膜を形成しうる観点か
ら、電着時に用いる電解液の温度を一定の温度に保持
し、一定の電着速度でブラックマトリックス及び着色電
着膜を形成することが好ましい。
【0070】電解液中には、電着速度を速める目的で、
電着材料以外に電着特性に影響を与えないイオン解離性
の塩を添加してもよく、塩の添加により溶液の導電率が
増加する。水系液体中の導電率と、電着速度(換言すれ
ば、電着量)とは相関し、導電率が高くなればなるほど
一定時間に付着する電着膜の膜厚が厚くなり、導電率が
約100mS/cm2(10Ω・cmに相当する。)に
なると飽和に達する。従って、電解液中に着色電着膜の
形成に影響しないイオン、例えば、Na+、NH4 +、C
-、PO4 -、SO4 -等を加えれば、電着速度をコント
ロールすることができる。中でも、加える塩としては、
塩化アンモニウムが好ましい。上記塩を添加して電解液
中の体積固有抵抗率を調整する場合、該体積固有抵抗率
としては、100〜105[Ω・cm]が好ましい。
【0071】次に、電解液の基板近傍で生じるpH変
化、及びこれに伴う着色電着膜の形成機構について説明
する。一般的に、水溶液中に白金電極を浸し電流又は電
圧を供与すると、アノード近傍の水溶液中のOH-イオ
ンは消費されてO2になり、水素イオンが増えてpHが
低下する。これは、アノード近傍でホール(p)とOH
-イオンとが結び付く以下の反応が起こるためである。 2OH-+2p+ → 1/2(O2)+H2O 但し、この反応が起こるには、基板の電位が一定値(し
きい値電位)を超える必要がある。しきい値電位を超え
て始めて反応が進行し、水溶液中のpHが変化する(ア
ノード近傍ではpHが低下し、カソード近傍ではpHが
増加する)。本発明において着色電着膜を形成する場
合、光照射により光半導体に光起電力を起こさせ、光照
射部のみをしきい値電位を超える電位とし、基板の光照
射部近傍の電解液のみに前記の反応を進行させるもので
ある。反応が進行した結果、光照射部近傍の電解液のp
Hは変化し、これに対応して電着材料の溶解度が変化
し、光照射部のみに着色電着膜が形成される。
【0072】このように、光起電力を利用して電気化学
反応を引き起こす試みは、今までに種々検討されてき
た。例えば、A.Fujishima,K.Hond
a,Nature vol.238,p37,(197
2)には、n型光半導体のTiO 2に光を照射して、生
じた光起電力により水の電気分解を行った例が報告され
ている。 また、 光起電力を利用した画像形成の例として
は、H.Yoneyama,et al,J.Elec
trochem.Soc.,p2414(1985)
に、Si基板上に光を照射して、生じた光起電力により
ピロールを電解重合し、 ドーピング・ 脱ドーピングで画
像形成を行った例が報告されている。 また、 我々も導電
性高分子のドーピング・ 脱ドーピングに色素を用い、 光
で画像形成する方法を特許出願中である。 しかし、光起
電力を利用して、導電性高分子により画像形成を行う場
合は、使用できる発色材料に限界がある。その結果、多
彩色の画像形成を行うのは困難であった。
【0073】導電性高分子が存在しない系であっても、
着色電着膜を形成することは可能であるが、着色電着膜
形成に必要な電圧は、 導電性高分子がある場合に比較し
て大きくなる。 例えば、 前記特開平5−119209号
公報「カラーフィルタ製造方法及びカラーフィルタ製造
用の電着基板」、及び特開平5−157905号公報
「カラーフィルタ製造方法」では、 光半導体薄膜に光照
射を行い、該光照射部に発現した光導電性を利用して着
色電着膜を形成する技術が開示されているが、印加電圧
は、20Vから80Vであり、電着物質は高分子の酸化
還元反応を利用している。 一方、 光半導体薄膜の光起電
力は1V未満(例えば、Siで0.6V程度)であり、
画像を形成するには光起電力だけでは不十分である。 あ
らかじめ電流又は電圧の供与により電位を嵩上げしてお
くことも考えられるが、一定の電圧(用いる光半導体の
バンドギャップに対応する電圧)を超えて電圧を印加す
ると(例えば、Siで5Vを越える電圧)、半導体と電
着液間のショトキーバリヤーが壊れてしまい、画像形成
ができなくなる。本発明では、電着に高分子等の酸化還
元反応を利用せず、前記のように、電着液中のpH変化
に対応した電着材料の溶解度変化を利用して着色電着膜
を形成しているので、ショットキーバリヤーを破壊しな
い範囲で、電着することが可能である。
【0074】本発明において、あらかじめ基板(基板中
の光透過性導電膜)に電圧を印加しておいてもよい。こ
こで、電気化学分野で一般に用いられる三極式配置の構
成の場合には、陽極と陰極若しくは参照電極の間の電位
差が4V以下、好ましくは2V以下となるように、バイ
アス電圧をかけて着色電着膜、又は後述のブラックマト
リックスを形成することが好ましい。このときに印加す
るバイアス電圧は、光半導体薄膜が発現する光起電力に
より基板に生じる電位を補い、基板の電位がしきい値電
位に達するようにその大きさを設定する。また、印加す
るバイアス電圧は、ショトキーバリアーを超えない大き
さに設定する。あらかじめ基板に印加する電圧が大きす
ぎると、ショトキーバリアーが壊れ、光照射されていな
い領域にも電流が流れ、光半導体基板の全領域に電着膜
が形成され、着色電着膜の形成位置を制御できなくなる
からである。例えば、TiO2の光起電力は、約0.6
Vであるので、2.0Vで電着する電着材料であれば、
1.5Vのバイアス電圧を印加しつつ光照射すると、基
板(光半導体膜)の光照射部の電位は0.6V+1.5
V=2.1Vとなり、電着に必要なしきい値電位を越
え、光照射部のみに着色電着膜が形成される。一方、こ
の基板に2.5V以上のバイアス電圧を印加すると、シ
ョトキーバリアーが壊れてしまう。
【0075】次に、光半導体と電着材料の組合わせにつ
いて説明する。本発明では、光起電力の形成に、光半導
体と接触した界面に生じるショトキーバリヤーや、pn
接合あるいはpin接合の障壁を利用している。図1に
n型光半導体と電着液との界面に生じるショトキーバリ
ヤーを、図2にpin接合のエネルギーバンドを模式的
に示す。例えば、n型光半導体を用いた場合、n型光半
導体側を負にした場合には、電流の流れる順方向である
ので電流は流れるが、逆に、n型光半導体側を正にした
場合は、n型光半導体と電解液とのショトキー接合がバ
リヤーを形成して、電流は流れない。ところが、n型光
半導体側を正にして電流が流れない状態でも、光を照射
するとn型光半導体薄膜からエレクトロン・ホールペア
が発生し、ホールが溶液側に移動して電流が流れる。こ
の場合、n型光半導体を正電位にするのであるから電着
する材料はアニオン性分子でなければならない。従っ
て、n型光半導体とアニオン性分子の組合せとなり、逆
にp型光半導体ではカチオンが電着されることになる。
特に、n型光半導体を用いた場合はカルボキシル基を有
するアニオン性分子、p型半導体を用いた場合はアミノ
基、又はイミノ基を有するカチオン性分子を含有する着
色電着材料を用いるのが好ましい。
【0076】導電性膜に電流又は電圧を供与するには、
導電性膜の側縁等に電流又は電圧が供与されるための通
電路を設ければよい。電流又は電圧の供給には、ポテン
ショスタット等が使用可能である。
【0077】各色の着色電着膜形成工程、又は後述のブ
ラックマトリックス形成工程の後、基板に付着してい
る、各工程で用いた電解液を除去する目的で、基板を液
体洗浄してもよい。用いる洗浄液としては、透明で安全
性の高い不活性な液体が好ましい。また、着色電着膜の
固形化が促進されるような洗浄液を用いると、着色電着
膜の膜強度が向上するのでさらに好ましい。そのような
洗浄液としては、電解液の析出開始pH値よりも含有さ
れる電着材料が析出し易いpHに調製されている水系液
体が好ましい。このようなpH調製液で着色電着膜が形
成された基板を洗浄すると、基板に付着している前工程
に使用した電解液等を除去できるとともに、着色電着膜
の膜強度を向上させることができる。このような洗浄に
より、例えば、カルボキシルキ等の陰イオン性解離基を
有する電着材料を用いた場合は、洗浄液のpH値が電着
材料の析出開始のpH値よりも低く、アミノ基等の陽イ
オン性解離基を有する電着材料の場合は、洗浄液のpH
値が電着材料の析出開始のpH値よりも高くすることに
より、電着膜の堅牢性が向上し、結果として解像度の高
いカラーフィルターを作製できる。
【0078】[硬膜工程]本発明の高分子膜の形成方法
においては、形成した膜の膜強度や耐溶剤性を向上させ
る観点から、前記着色電着膜形成工程や後述のブラック
マトリックス形成工程を経た後、形成した高分子膜を光
照射、加熱等する硬膜工程を設けてもよい。この場合、
水系電着液中にラジカル発生剤や酸発生剤を含有させる
こともでき、中でも、膜中で均一にラジカル若しくは酸
を発生しうる点で、熱反応性ものが好ましい。
【0079】この硬膜工程は、各色の着色電着膜を形成
した後に逐次設けてもよいし、RGB3色の着色電着膜
を形成した後に設けてもよいし、さらにブラックマトリ
ックスを設けた後に一括して設けてもよい。但し、各膜
の膜性を十分に向上させる観点からは、各色の着色電着
膜を形成した後に、逐次前記硬膜工程を設けることが好
ましい。また、光電着法により、ブラックマトリックス
を先に設ける場合には、ブラックマトリックスのみを形
成した後に設けてもよい。
【0080】膜を加熱する際の加熱方法としては、オー
ブン、真空加熱器等の所望の温度に調整した中に入れて
加熱する方法、加熱ガスを表面に吹き付ける方法等が挙
げられる。加熱温度としては、50〜250℃が好まし
く、90〜200℃がより好ましい。
【0081】−基板− 本態様で使用可能な基板としては、図3に示す断面構造
を基板の全体に又は一部に有するものであれば、特に制
限はなく、さらに電子回路材料を有していてもよい。即
ち、前記基板は、光透過性の基体31上に、少なくと
も、光透過性の導電膜32と、光起電力機能を有する光
半導体薄膜33とを順次積層したものであって、該積層
部分が基体31上の全体又は一部に形成され、該一部に
形成されている場合には、当該一部を除く基体31の他
の領域の表面に直接接触する状態で、或いは、導電膜3
2、又は導電膜32及び光半導体薄膜33を介した状態
で、電子回路材料が備えられいてもよい。具体的には、
例えば、図4−(a)〜(c)に示す態様に構成された
基板であってもよい。ここで、電子回路材料としては、
後述の第二の態様におけるものと同様のものが挙げられ
る。
【0082】(基体)前記基体としては、光透過性の種
々の材料を用いることができ、例えば、ガラス、プラス
チック等を好適に挙げられる。
【0083】(導電膜)導電膜は、導電性を有し、かつ
光透過性の材料であれば広く用いることができる。例え
ば、ITO(インジュウム−スズ酸化物)、二酸化スズ
等の金属酸化物等が挙げられる。また、導電性カーボン
材料、導電性セラミックス材料等を用いることもでき
る。導電性膜は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、
CVD法等従来公知の方法により支持体上に形成するこ
とができる。
【0084】(光半導体薄膜)光半導体薄膜は、光照射
により光起電力を生じるものであればいずれも使用する
ことができる。光半導体は光照射による効果を一定期間
保有する光履歴効果を有するが、本発明に用いられる光
半導体は、光履歴効果の弱いものが好ましい。但し、光
履歴効果が強いものであっても、光半導体薄膜を薄くす
れば、光履歴効果を小さくなる傾向があるので、使用す
ることができる。光半導体には、n型光半導体とp型光
半導体があるが、本発明ではいずれの光半導体も使用可
能である。さらに、n型光半導体薄膜とp型光半導体薄
膜とを積層したpn接合を有する光半導体薄膜、又はn
型光半導体薄膜と、i型光半導体薄膜と、n型光半導体
薄膜とを積層したpin接合を有する光半導体薄膜等、
積層構造の光半導体薄膜を用いると、高出力の光電流が
確実に得られ、画像のコントラストがより高くなるので
好ましい。
【0085】また、本発明に用いられる光半導体薄膜
は、無機光半導体からなるものであっても、有機光半導
体からなるものであってもよい。無機光半導体として
は、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化
ニッケル、酸化錫、酸化モリブデン、SiGaN、a−
C、BN、ZnSe、ダイヤモンド、GaAs系化合
物、CuS、Zn32、ポリシリコン等が挙げられる。
有機光半導体としては、フタロシアニン系顔料、ペリレ
ン系顔料、アゾ系顔料、ポリビニルカルバゾール、ポリ
アセチレン等が挙げられる。これらは、単独では高純度
又は単結晶系のものが望まれるが、これらの混合物から
なるものであってもよく、また、各々の材料からなる光
半導体薄膜を複数積層したものであってもよい。特に、
酸化チタンを含有する化合物光半導体薄膜が好ましい。
【0086】中でも、TiO2、ZnO等の金属酸化物
は、電着時の安定性に優れ、光照射効率も優れている。
また、TiO2は、ゾル−ゲル法、スパッタリング法、
電子ビーム蒸着法等種々の方法により製膜すると、良好
なn型光半導体薄膜が得られることが近年の研究で明ら
かになっている。光電流の変換効率を高めるには、還元
処理が有効であり、通常、水素ガス中で300℃程度で
加熱する。例えば、約300℃下で10分間、3%の水
素混合窒素ガスを用いて1分間に1Lの流量を流しなが
ら、加熱することにより達成できる。
【0087】光半導体薄膜は、従来公知のゾル−ゲル
法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンコー
ト法、グロー放電着膜法等により、導電性膜上に形成す
ることができる。前記光半導体薄膜の膜厚としては、特
に制約はないが、良好な特性が得られる点で、0.05
〜3.0μmが好ましい。前記膜厚が、0.05μm未
満であると、生じる光起電力が弱すぎてパターン形成に
問題を生ずることがり、3.0μmを超えると、光照射
によって生じた電荷が膜内にトラップされ、光履歴効果
が大きくなるためパターン形成性が悪化することがあ
る。
【0088】光半導体薄膜は、微結晶性又は多結晶性の
膜質を有しているのが、光起電力発生効率の点で好まし
い。さらに、光半導体のみからなるものが好ましく、樹
脂等の絶縁性材料を含有していないものが好ましい。光
半導体薄膜に樹脂等の絶縁性材料を混合すると、光起電
力の発生効率が低下し、光履歴効果が高くなる。尚、光
半導体薄膜の光照射下での体積抵抗値としては、10-2
〜108Ω・cmが好ましく、100〜106Ω・cmが
より好ましい。前記光半導体薄膜の体積抵抗値が、10
8Ω・cmを越えると、通電するのに高い電圧が必要と
なるため、光起電力の発生効率が著しく低下することが
ある。
【0089】本態様による着色電着膜(カラーフィルタ
膜)の形成方法について、その一例を図12により簡単
に説明する。電着槽1には、電着材料2及び黒色の顔料
3と共にアンモニウム化合物又はその塩が溶解、分散さ
れた水系電着液が満たされ、該電着槽中にはカウンター
電極6が配置され、図示されていない電源と接続されて
いる。電着槽1中には、基体上に導電膜と光半導体薄膜
とが順次積層され、かつ電子回路材料が備えられた、図
4−(a)と同様の断面構造を有する電着用基板4が浸
漬するように配置され、導電膜と接続されたワーキング
電極7を介して電源と接続されている。
【0090】電着槽1は光透過性に構成されており、該
電着槽の外部には、電着用基板4に対して図中の矢印で
示す方向に光照射しうる位置に光源が配置されている。
電着用基板4は、導電膜を介して負のバイアス電圧が印
加された状態で、光源よりフォトマスクを介して、又は
画像信号に従って制御されたレーザ光により、画像パタ
ーン状に光照射される。
【0091】電着用基板4としてp型半導体基板を用い
た場合、光半導体薄膜の光照射部にのみ負の光起電力が
生じ、この負の光起電力と負のバイアス電圧との総電位
が、電解液中の電着材料の電着が開始されるしきい値を
超えると、光照射部のみにブラックマトリックスがまず
形成される。一方、電着用基板35としてn型半導体基
板を用いた場合には、光半導体薄膜の光照射部では電解
液中の金属イオンの還元反応が抑制されるが、未照射部
では負のバイアス電圧により電解液の電着材料中の金属
イオンが還元されて未照射部のみにブラックマトリック
スが形成される。
【0092】電着用基板4上にブラックマトリックスを
形成した後、水系電着液を、電着材料2及びRGBのい
ずれかの顔料と共にアンモニウム化合物及びその塩の少
なくとも一方を含有する3種の電着液に順次代え、正の
バイアス電圧を印加し、各色に対応するフォトマスクを
介して、又は画像信号に従って制御されたレーザ光によ
り光照射することにより、電着用基板4上のブラックマ
トリックスの未形成部分の光照射部に、選択的に各色の
着色電着膜が形成され、所望のカラー画像パターンを有
するカラーフィルタを作製することができる。
【0093】上記より、顔料が良好に分散された水系電
解液を用いたことにより、着色濃度及び膜厚が極めて均
一で、パターン精度に優れた高解像度のカラーフィルタ
を低コストに作製することができる。
【0094】−第二の態様− 前記第二の態様においては、前記第一の工程として、光
透過性の基体上に、少なくとも光透過性の導電膜と該光
透過性の導電膜に接合された能動素子とを備える基板の
少なくとも前記光透過性の導電膜を、色材を含有する電
着材料と共にアンモニウム化合物及びその塩の少なくと
も一方を含む電解液に接触させる工程(接触工程)を設
け、さらに前記第二の工程として、前記基板の能動素子
を、電解液に前記光透過性の導電膜を接触させた状態で
駆動することにより、前記光透過性の導電膜に、電解液
が電気分解して水素イオン(プロトン)を発生しかつ実
質的に膜形成性を低下させる気泡の発生のない、又は発
生しにくい電圧を印加して、前記光透過性の導電膜上に
電着材料を析出させて着色電着膜を形成する工程(着色
電着膜形成工程)を設け、必要に応じて、ブラックマト
リックス形成工程、硬膜工程等を有してなる。
【0095】[接触工程]前記接触工程は、光透過性の
基体上に、光透過性の導電膜と該光透過性の導電膜に接
合された能動素子とを備える基板の少なくとも前記光透
過性の導電膜を、少なくとも色材を含有する電着材料を
含む電解液に接触させる工程である。ここで、能動素子
とは、光透過性の導電膜に隣接して配設され、かつ接合
されるソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、及び半
導体薄膜を備えたスイッチング素子をいい、例えば、薄
膜トランジスタ(TFT;以下、単に「TFT」という
ことがある。)等が挙げられる。上記のように、電解液
に光透過性の導電膜(以下、「透明導電膜」ということ
がある。)を接触させる場合、同一の基体上に設けられ
た薄膜トランジスタ(TFT)、及びクロム(Cr)や
アルミニウム(Al)よりなるソース電極、ドレイン電
極及びゲート電極は水と接触すると劣化し易く、TFT
駆動時にショートしやすいことから、予め着色電着膜を
形成しようとする透明導電膜のみを残して絶縁処理して
おくことが好ましい。この絶縁処理の方法については後
述する。
【0096】前記基板の透明導電膜を電解液に接触させ
る際の、電解液に対する位置関係としては、任意の位置
関係を適宜選択でき、例えば、基板全体を電解液中に浸
漬して配置してもよいし、基板の一部、例えば、着色電
着膜を形成する透明導電膜のみが接触するように配置し
てもよい。
【0097】絶縁処理の方法としては、適当な溶媒に紫
外線硬化樹脂を溶解した樹脂溶液を塗布し、透明導電膜
部分のみをマスクして紫外線ランプにより全面を照射し
て硬化させた後、溶剤により透明導電膜上の樹脂溶液を
溶解除去する方法、ネガ型フォトレジスト液をスピナー
等の塗布装置により表面被覆し、プリベークした後、透
明導電膜上を露光し、溶剤により分解、現像し、非露光
部分をホストベークで硬化させる方法等が挙げられる。
上記のようにして絶縁処理を施す場合、使用する絶縁材
料中に黒色の色材を含有させ、黒色の絶縁膜を形成する
ことによりブラックマトリックスとしてもよい。この場
合に使用可能な黒色の色材としては、カーボンブラッ
ク、フタロシアニン系顔料等の2色若しくは3色の混合
顔料等が挙げられる。但し、能動素子を配置した部分
は、光非透過性であるため、必ずしも上記のようなブラ
ックマトリックスを形成しなくてもよい。
【0098】[着色電着膜形成工程]本態様の着色電着
膜形成工程においては、着色膜を形成しようとする透明
導電膜に接合された 能動素子を駆動することにより、
同一の基体上に設けられた複数の透明導電膜のうち選択
された透明導電膜に、電解液が透明導電膜上で電気分解
してプロトンを発生し、かつ実質的に膜形成性を低下さ
せる気泡の発生のない、又は発生しにくい電圧を印加し
て、該透明導電膜上に電着材料を析出させて着色電着膜
を形成する。従って、フルカラーとする場合には、隣接
する3個の透明導電膜上にそれぞれ別個に、赤色
(R)、緑色(G)、青色(B)の着色膜を形成する必
要があり、具体的には、まず、隣接する3個の透明導電
膜を赤色顔料と水溶性重合体材料が分散されている赤色
用電解液と接触させた後、各透明導電膜と接続された駆
動用ICを制御して赤色画素に対応する薄膜トランジス
タ(TFT)のみを駆動させ、該TFTに対応する透明
導電膜上にのみ赤色膜を形成する。形成された赤色膜
は、水洗、必要に応じて乾燥、定着され、好ましくは水
に対して不溶化処理が施される。次いで、同様の工程を
青色用電解液、緑色用電解液を用いて、駆動用ICの制
御により駆動する能動素子を変えて同様の操作を繰り返
し、隣接する3つの透明導電膜上にRGBの各着色膜を
形成する。即ち、各色に対応する電解液を用いて、浸漬
工程及び電着工程をこの順に複数の異なる透明導電膜に
対して複数回繰り返し行うことによりフルカラーの着色
膜を形成できる。
【0099】着色膜を形成する際の印加電圧、即ち、三
極式配置とした場合における、陽極と陰極若しくは参照
電極との間の電位差としては、能動素子を駆動する際の
駆動電圧に近似する電圧、好ましくは同等の電圧がよ
く、能動素子の耐圧以下の電圧であればよい。具体的に
は、10V以下が好ましく、4V以下がより好ましい。
前記印加電圧が10Vを超えると、着色膜を形成しよう
とする透明導電膜上に、電気分解して生じた多量のプロ
トンの生成に伴って、酸素が気体として発生することに
なり、形成された着色膜がその部分で剥離等して、気泡
による凹凸や脱泡跡が形成されて表面平滑な着色膜を形
成できないことがある。前記参照電極は、電気化学分野
で一般に用いられる、電極を三極式配置してなる装置の
陽極、陰極を除く、もう一方の電極をいう。
【0100】透明導電膜に電圧印加した際の電流値とし
ては、0.3〜50mA/cm2が好ましく、0.3〜
10 mA/cm2がより好ましい。即ち、透明導電膜
1個(1画素)当りに換算すると、0.3〜30μAの
電流値である。電圧印加時の通電時間としては、印加電
流値の強さに比例するが、特に0.01秒〜1時間が好
ましく、0.1秒〜10分がより好ましい。
【0101】次に、電解液中の、疎水ドメインを有する
イオン性分子と、色材である顔料の分散状態、電解液の
基板近傍で生じるpH変化、及びこれに伴う着色電着膜
の形成機構について説明する。図5は、水中で分散して
いる顔料粒子の様子を模式的に示す図である。図6は、
光透過性の導電膜を正極とし、図示しない対向電極との
間に電圧を印加した直後の液性を示す図である。図7
は、イオン性分子のカルボキシル基が疎水化し、光透過
性の導電膜上に着色膜が成膜された状態を示す図であ
る。
【0102】図5に示す通り、ヒゲ状に表された、疎水
ドメインと親水ドメインとを備えたイオン性分子(電着
材料)は、顔料粒子の表面に配向して顔料粒子の電解液
における分散を補助しており、電解液中に単独で存在す
るイオン性分子は、光透過性の導電膜上に着色膜を形成
する際に着色膜のマトリックス形成物質として作用す
る。図5は、光透過性の導電膜に電圧印加されていない
状態を表しており、この状態ではイオン性分子の親水性
基(例えば、カルボキシル基)は、=R−COO-とし
て溶液中でイオン解離した状態をとっている。
【0103】図6に示すように、光透過性の導電膜を正
極とし、図示しない対向電極との間に電圧が印加される
と、前記導電膜に正電荷が付与され、導電膜近傍に存在
する水が電気分解反応を起こし、次式で表される反応が
生起する。 H2O → 2H+ + 1/2O2 + 2e- 上記反応により発生した水素イオンは、電圧が印加され
た導電膜近傍の水素イオン濃度を上昇させ、その上昇の
程度は電極近傍になるほど大きく、電極から離れるほど
小さくなり、それに応じてpHも変化する。つまり、導
電膜表面の近傍で電解液中の水素イオン濃度が急激に上
昇する領域、即ち、部分的若しくは特異的若しくは局部
的に高水素イオン濃度領域(低pH領域、酸性領域)を
生成する。このpH値の等しい領域を線で結ぶと、図6
に示すpH等価線で表わすことができる。導電膜付近で
生成した水素イオン(プロトン)は、イオン性分子の親
水性基である、例えば、イオン解離した=RCOO-
結合し、 =RCOO- + H+ → =RCOOH の反応により、カルボキシル基が疎水化し、イオン性分
子の持つ親水ドメインの割合が減少して、図7に示すよ
うに、光透過性の導電膜上に顔料が取りこまれた樹脂膜
(着色膜、着色電着膜)が成膜される。
【0104】ここで、透明電極付近で生成した水素イオ
ンは、電解液中のイオン性分子の解離陰イオンと次々に
結びつくため、この状態ではイオン性分子が透明電極上
に堆積する反応が優先的に進行する。本発明の着色膜の
形成方法においては、透明電極表面に生じる水素イオン
濃度の局所的変化、即ち、局所的pH変化に基づく水素
イオン交換反応により顔料を取りこんだ樹脂膜が形成さ
れるものであり、従来報告されている一般的な電気泳動
に基づく電着とはその技術的思想が異なる。例えば、本
発明においては、光透過性の導電膜への印加電圧と、該
導電膜表面への相対着膜速度との関係は、図8に示す通
り、導電膜への印加電圧が1.4V付近になると水の電
気分解が生じ、それと同時に導電膜表面へのイオン性分
子の着膜が開始し、3Vに至るまでその着膜速度は、印
加電圧に比例して進行する。従来、一般に行われてきた
電気泳動法により電着する場合に、数10〜数100V
の印加電圧を要していたものと、この点で明確に区別で
きる。
【0105】前記相対着膜速度は、図8に示す通り、透
明電極付近の多量の水素イオン(プロトン)の発生に伴
って酸素ガスを生成する(酸素のバブリング現象)電圧
まで直線的に増加する。本発明においては、この電圧間
において成膜を行うため、着色膜を形成しようとする透
明導電膜上に酸素ガスが気泡として生ずることなく、成
膜時の気泡の発生による膜剥がれや凹凸がなく、均一厚
で表面平滑性に優れた着色膜を安定に形成することがで
きる。
【0106】次に、印加電圧と、成膜した相対付着量と
の関係を図9−(1)及び(2)に示す。図9−(1)は、ヒ
ステリシスの大きい電着材料の例であり、図9−(2)
は、ヒステリシスの小さい電着材料の例である。前記ヒ
ステリシスを示す電着材料では、印加電圧を徐々に向上
させ、印加電圧が一定の電圧(電気分解開始電位)を超
えると、急激にイオン性分子の析出量は増加し、その後
印加電圧が徐々に低下した場合でも、電着材料の相対付
着量が低下しない特性を有する。このようなヒステリシ
ス性は、イオン性分子を成膜した後の電解液中への再溶
解、即ち、形成した膜の保持性を確保して品質低下を防
止するのに重要であり、電着材料としては、pHの変化
に対応する状態変化(溶存状態→析出の変化と析出→溶
解状態の変化)にヒステリシスを示すものが好ましい。
即ち、pHの減少又は増加に対応する析出状態への変化
は急峻であり、かつpHの増加又は減少に対応する溶存
状態への変化は緩慢であると、着色電着膜の安定性が向
上するので好ましい。透明電極近傍に生ずる局所的なp
H低下は、具体的には、電極近傍ではpH値にして約1
〜2、水素イオン濃度に換算して1012〜1014モル程
度の水素イオン濃度の変化(水素イオン濃度の増加、p
H値の減少)に相当するものと推定される。
【0107】電解液中には、電着速度を速める目的で、
電着特性に影響を与えないイオン解離性の塩を添加して
もよく、塩の添加により溶液の導電率が増加する。水系
液体中の導電率と、電着速度(換言すれば、電着量)と
は相関し、導電率が高くなればなるほど一定時間に付着
する電着膜の膜厚が厚くなり、導電率が約100mS/
cm2(10Ω・cmに相当する。)になると飽和に達
する。従って、電解液中に着色電着膜の形成に影響しな
いイオン、例えば、Na+イオン、Cl-イオン等を加え
れば、電着速度をコントロールすることができる。上記
塩を添加して電解液中の体積固有抵抗率を調整する場
合、該体積固有抵抗率としては、100〜105[Ω・c
m]が好ましい。
【0108】各色の着色電着膜形成工程、又は後述のブ
ラックマトリックス形成工程の後、基板に付着してい
る、各工程で用いた電解液を除去する目的で、基板を液
体洗浄してもよい。用いる洗浄液としては、前記第一の
態様で使用可能なものと同様のものを使用できる。
【0109】[硬膜工程]本態様における硬膜工程とし
ては、前記第一の態様における硬膜工程と同様の処理を
設けることできる。該硬膜工程により、形成した膜の膜
強度及び耐溶剤性を向上させることができる。
【0110】<基板>光透過性の基体上に、光透過性の
導電膜と該光透過性の導電膜に接合された電子回路材料
とを備える基板としては、電子回路材料(TFT等)を
駆動して該駆動電圧により直接着色膜を形成しうる基板
であって、例えば、以下のように構成された駆動素子基
板であってもよい。ここで、電子回路材料とは、ゲート
電極、ソース電極、ドレイン電極等の各電極、絶縁膜、
半導体等の材料が適宜組合されてなり、同一基体上の導
電膜と接合してスイッチング機能を担う能動素子等をい
い、液晶材料を組合わせた場合には、液晶の表示を制御
する。例えば、薄膜トランジスタ(以下、単に「TF
T」ということがある。)等が挙げられる。
【0111】即ち、前記駆動素子基板の構成態様として
は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)同一基
体上にソース電極、ドレイン電極及びゲート電極等を有
する能動素子を備え、該能動素子に隣接して後に光透過
性の導電膜が設けられ、前記ドレイン電極が該導電膜と
電気的に結合されてなる態様の基板や、(2)同一基体上
に、光透過性の導電膜と、該導電膜に隣接してソース電
極、ドレイン電極及びゲート電極等を有する能動素子と
が2次元的にマトリックス状に配設され、前記ソース電
極が第一共通電極と電気的に結合され、前記ゲート電極
が第二共通電極に結合されてなる態様の基板等であって
もよく、具体的には、電子回路材料が図10に示す態様
で配置されてなる基板であってもよい。図10では、同
一のガラス基体上にゲート電極15と、該ゲート電極1
5上に絶縁膜を介して半導体16とが積層され、ドレイ
ン電極17が該半導体16と接合されている。また、ド
レイン電極17は、後に基体上に設けられる光透過性の
導電膜とも接合され、さらに前記半導体16を介して電
極18’でソース電極18と接続されてなる。
【0112】前記ソース電極及びドレイン電極は、一般
にアルミニウム、モリブデン、銅、タンタル等よりな
り、ゲート電極は、一般にクロム、銅、アルミニウム、
モリブデン、タンタル等よりなる。
【0113】以下、本態様による着色電着膜(カラーフ
ィルタ膜)の形成方法について、その一例を図11及び
図14により簡単に説明する。まず、能動素子としての
薄膜トランジスタ(TFT)と光透過性の導電膜とを有
する前記駆動素子を準備する。即ち、ガラス等の基体2
0上に、ゲート電極15、ITO(Indium−Ti
n−Oxide)の光透過性の導電膜19が形成され、
さらに図示されていない絶縁膜を介して半導体薄膜16
が積層される。これらは、基体20上に各材料を、蒸
着、塗布、レジスト膜形成、エッチング等の薄膜形成プ
ロセスで代表されるホトリソエッチングプロセスにより
形成できる。また、同様の方法により、ソース電極1
8’、ドレイン電極17が、半導体薄膜16上に形成さ
れる。この時、各表示画素に対応するドレイン電極17
は、これに対応して隣接する導電膜3と電気的に接続さ
れるように形成される。このようにして、導電膜及び薄
膜トランジスタ(TFT)を有する基板13を作製する
ことができる。
【0114】次に、上記ガラス基体上に設けた導電膜1
9上には、以下のようにして着色電着膜(カラーフィル
タ膜)を形成できる。マトリックス状に配列された個々
のTFT及び導電膜19が設けられた基体20を、導電
膜19が残るように電気的にマスクする。これは、電着
工程において、基体20を電解液に接触若しくは浸漬
し、ゲート側のワーキング電極7(図11中のゲート電
極15)及びソース側のカウンタ電極14(図11中の
ソース電極18)に通電した際に、各表示画素に対応す
るTFTがショートしたり、各TFTを構成する各電極
や半導体薄膜が、水との接触により酸化されるのを防止
するためである。尚、この場合においても、各表示画素
における各TFTが接続されたカウンタ電極14、ワー
キング電極7も、水との接触が絶縁されて基体20の端
部にまで延び、基体20の端部において、好ましくは基
体と一体化されたTFT駆動用のICに接続される。駆
動用ICは、基体1上に一体的に薄膜形成プロセスで形
成された薄膜ICであってもよい。この場合、薄膜IC
は基体外の電源に接続される。また、前記駆動用IC
は、前記基体の端部に別個に実装されるか、又は基体外
に設けられた、前記カウンタ電極14、ワーキング電極
7に接続された駆動用ICチップであってもよい。
【0115】次いで、図14と同様の構造を有する装置
を準備した。電着槽1には、各色相に対応する、電着材
料2及びRGBのいずれかの顔料3と共にアンモニウム
化合物及びその塩の少なくとも一方を含有する水系電解
液が満たされる。電着用基板として、上記より作製し
た、導電膜及び薄膜トランジスタ(TFT)を有する基
板13を電解液中に浸漬するように装着した。但し、本
態様においては、光源を設ける必要はない。
【0116】この状態で、所定の順序で基体20上の薄
膜トランジスタ(TFT)を選択的に制御しながら駆動
させることにより、電解液中で露出している複数の導電
膜に選択的に電圧印加し、電着液中に別個に配置された
対向電極との間で通電する。通電された導電膜上には、
均一厚で、気泡の混入がなく(Non−Bubbl
e)、気泡による凹凸や脱泡跡のない表面平滑性に優れ
た着色膜が形成され、各色に対応する電解液を用いて選
択的に電圧印加して通電を繰り返すことにより、TFT
及び導電膜を備えた基板上に直接フルカラーのフィルタ
膜を形成することができる。
【0117】上記より、TFTの動作特性に悪影響を及
ぼすことなく、導電膜とTFTとを備えた基板の該TF
Tを駆動し該駆動時の駆動電圧を利用して導電膜上に直
接高解像度かつ均一厚で、気泡による凹凸や脱泡跡のな
い表面平滑性に優れた着色膜を安定に形成することがで
きる。
【0118】−ブラックマトリックス形成工程− 本発明においては、ブラックマトリックスを形成する工
程を設けることもできる。ブラックマトリックス形成工
程では、上述の着色膜形成工程と同様のプロセスによ
り、黒色の色材を含有する水系電解液を用いて光照射
し、該光照射部に選択的に黒色の着色膜、即ち、ブラッ
クマトリックスを形成してもよい。水系電解液として、
金属を含有する電着材料を含む水系電解液を用いて金属
メッキ薄膜を形成する工程であってもよい。また、フォ
トリソグラフィを用いることもできる。ブラックマトリ
ックス形成工程は、前記着色膜形成工程の前に設けても
よく、着色膜形成工程を経た後に設けてもよい。
【0119】ブラックマトリックス層の機能としては、
遮光性と光反射防止性の両方の特性を必要とされる。ま
た、薄膜で得られなければ、ブラックマトリックス層の
微細パターン化は難しくなる。即ち、光の透光性が高
く、かつ入射光を反射せずに吸収しうる、といった2つ
の機能を持つ薄膜を形成することにより、高い特性を示
す。上記のように、金属薄膜の持つ高い遮光能力と、黒
色顔料分散樹脂系薄膜の持つ高い光吸収性と、さらに薄
膜化とを満足しうるブラックマトリックス層を形成する
には、金属薄膜と黒色顔料分散樹脂系薄膜とを複合(積
層)した層構造のブラックマトリックス層を形成するこ
ともできる。
【0120】また、基板に形成された着色膜上に、ブラ
ックカーボン粉末等の黒色の色材を含む紫外線硬化樹脂
の溶液を塗布したり、或いは、着色膜を形成した基板を
前記溶液に接触させて、紫外線照射して黒色の色材を含
む樹脂薄膜を形成させることにより、ブラックマトリッ
クスを形成してもよい。
【0121】上記のように、黒色の色材を含有する水系
電解液を用いた方法の場合、前記黒色の色材としては、
公知の黒色の色材を適宜使用できるが、後述するように
ブラックマトリックスを形成した後に着色膜を重なり部
分を有するように形成させることができる観点からは、
導電性の黒色の色材が好ましく、中でも、カーボンブラ
ックが特に好ましい。その他、電着材料に含有される高
分子材料については、着色膜形成工程に用いる材料と同
様である。
【0122】金属メッキ薄膜を形成する場合において
は、水系電解液として金属を含む電着材料を含有する水
系電解液を用い、前記着色膜形成工程、及び黒色の色材
を含有する水系電解液を用いたブラックマトリックス形
成工程と同様のプロセスにより金属メッキ薄膜よりなる
ブラックマトリックスを形成できる。金属メッキ薄膜が
着膜した上層では、金属膜の抵抗が低いために、発生電
流の拡散が生じ、不要に電着膜が積層され難い傾向があ
り、ブラックマトリックスを薄層化できる点で好まし
い。
【0123】金属メッキ薄膜を、着色膜形成工程前に設
ける場合には、金属メッキ薄膜が着色膜形成工程に用い
る水系電解液に対して、耐性を持つことが好ましい。従
って、金属メッキ薄膜として、高い堅牢性を有する金属
を含む水系電解液を用いることが好ましく、該金属とし
ては、例えば、Ni,Cr,Cu,Au,Ag,Mo,
Sn,Zn,Co,Ti,Ta,Pb,Rr等が挙げら
れ、これらより選択される金属イオン1種又は複数種を
含有する水系電解液を用いることが好ましい。中でも、
Ni,Cr,Cu,Au,Ag,Mo,Sn,Zn,C
oより選択される金属イオンは、薄膜形成能及びメッキ
液安定性等の点で特に好ましい。
【0124】前記黒色の色材を含む紫外線硬化樹脂の溶
液を用いてブラックマトリックスを形成する場合には、
溶媒に紫外線硬化樹脂を溶解した溶液中に、黒色の色材
を分散させ、これを着色膜を形成した側の基板上の表面
全体に付着させ、ブラックマトリックスを形成する領域
のみに紫外線を照射して硬化させ、その後、溶媒で溶解
させて未硬化領域に存在する前記溶液を除去する。
【0125】基板上に着色膜及びブラックマトリックス
を設ける場合、該着色膜とブラックマトリックスとの隙
間を無くす目的で、フォトマスクを介してブラックマト
リックス又は単色若しくは複数色の着色膜を形成した
後、該ブラックマトリックス又は着色膜と互いに重なり
を有するように、単色若しくは複数色の着色膜又はブラ
ックマトリックスを形成することが好ましい。即ち、ブ
ラックマトリックスを形成した後に着色膜を形成する場
合、ブラックマトリックスと重なる領域ができるように
ブラックマトリックスの領域まで光照射することによ
り、光照射されたブラックマトリックス上にも着色膜を
形成する。逆に、着色膜を形成した後にブラックマトリ
ックスを形成する場合においても同様である。
【0126】上記のようにして、基板上に形成した着色
膜及びブラックマトリックス上には、保護層を設けるこ
とが好ましい。また、前記保護層表面には、ラビング処
理等の公知の方法により配向処理を施すこともできる。
【0127】前記第一及び第二の工程(各色の着色膜形
成工程)又は後述のブラックマトリックス形成工程の
後、基板に付着している、各工程で用いた電解液を除去
する目的で、基板を液体洗浄してもよい。用いる洗浄液
としては、透明で安全性の高い不活性な液体が好まし
い。しかし、着膜後すぐに行うため、形成された膜自体
は強度が弱いことから洗浄除去と同時に固化が促進され
るような洗浄液体が有効である。高分子膜の固化が促進
されるような洗浄液を用いると、高分子膜の膜強度が向
上するのでさらに好ましい。
【0128】上記のような洗浄液としては、電解液の析
出開始pH値より、含有される電着材料が析出し易いp
Hに調製されている水系液体が好ましい。このようなp
H調製液で高分子膜(電着膜)が形成された基板を洗浄
すると、基板に付着している前工程に使用した電解液等
を除去できるとともに、高分子膜の膜強度を向上させる
ことができる。このような洗浄により、例えば、カルボ
キシルキ等の陰イオン性解離基を有する電着材料を用い
た場合は、洗浄液のpH値が電着材料の析出開始のpH
値よりも低く、アミノ基等の陽イオン性解離基を有する
電着材料の場合は、洗浄液のpH値が電着材料の析出開
始のpH値よりも高くすることにより、高分子膜の堅牢
性が向上させることができる。
【0129】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、
実施例中の「%」は、全て「重量%」を表す。 (実施例1)電着材料として、スチレン−アクリル酸−
アクリル酸エステル共重合体(分子量10,000;以
下、「SAAE」と略記する。)を、電着材料を溶解す
るための水系溶媒(溶解材)として、テトラエチルアン
モニウムヒドロキシド10%水溶液500g(アンモニ
ウム化合物塩含有溶媒、pH14.45以下、東京化成
(株)製;以下、「TEAOH」と略記する。)を準備
した。
【0130】前記TEAOH500g中に、SAAE5
0g入れ、約20分間攪拌すると、すべて溶解した。さ
らに、SAAE50gを、SAAEが溶解されているT
EAOHに入れ、30分間攪拌し全て溶解させた。再び
SAAE50gを、SAAEが溶けているTEAOHに
入れ、40分間攪拌し溶解した。その後、添加するSA
AEの添加量を30gに減らし、該30gのSAAEを
さらに入れ約10分間shakingし、その後約1時
間攪拌してほぼ全てを溶解させ、SAAEの固形分約3
0%の樹脂溶液を調製した。その後、さらに20gのS
AAEを前記溶液中に加え、約10分shaking
し、その後約3時間攪拌して固形分約35%の樹脂溶液
を調製できた。この時のpHは7.8となった。
【0131】次いで、得られた固形分約35%の樹脂溶
液に水を添加して、固形分10%の樹脂溶液となるまで
希釈した。この固形分10%の樹脂溶液25mlに、導
電性を付与すると共にpHを酸性側に調整するために、
1mol/Lの塩化アンモニウム水溶液7mlを加え、
pH7.75の水系電解液を得ることができた。該水系
電解液の導電率は、50.3mSであった。上記のよう
に、多量の電着材料を溶解することができ、かつpH値
の低い水系電解液を調製することができた。
【0132】(実施例2)実施例1で用いたアンモニウ
ム化合物塩含有溶媒に代えて、テトラメチルアンモニウ
ムヒドロキシド10%水溶液(pH16.0程度以下、
東京化成(株)製;以下、「TMAOH」と略記す
る。)を用いたこと以外、ほぼ実施例1と同様にしてS
AAE樹脂を溶解させ、pH7.6の固形分30%の水
系電解液を調製することができた。上記のように、pH
値の低い水系電解液を得ることができた。
【0133】(比較例1)実施例1で用いたアンモニウ
ム化合物塩含有溶媒に代えて、KOH水溶液を用いたこ
と以外、ほぼ実施例1と同様にしてSAAE樹脂を溶解
させ、pHは7.9の固形分30%の樹脂溶液を調製し
た。上記のように、pH値の低い水系電解液とすること
はできなかった。
【0134】(実施例3)図12と同様の構成になるよ
うに、実施例1で得た水系電解液が満たされた電着槽を
準備し、該電着槽中にカウンター電極6と、ワーキング
電極7として、ITO薄膜(導電膜)が形成された電着
用基板4とを浸漬し、さらにリファレンス電極5を別の
溶液槽に設置した。前記電着用基板4は、ITO薄膜と
接続されたワーキング電極7を介して電源と接続されて
いる。前記水系電着液は電着材料2と顔料(もしくは分
散樹脂を含んだ顔料)3などで構成されている。本実施
例では、光源は配置されていない。カウンタ電極6とワ
ーキング電極7間に2.2Vの電圧を印加すると、約3
0秒後に0.5μmの高分子膜(電着膜)を形成でき
た。高分子膜が形成された後に電圧の印加を止めても、
高分子膜の再溶解は認められず、膜表面がより平滑で強
固な高分子膜を形成することができた。
【0135】(実施例4)実施例3と同様に構成された
装置(図12)に対し、電着槽1を光透過性に構成し、
該電着槽1外部にさらに電着用基板4に対して図中の矢
印で示す方向に光照射しうる位置に光源が配置した。実
施例3で用いた電着用基板4に代えて、基体上にITO
膜及びTiO2膜がこの順に積層された基板を用い、か
つカウンタ電極6とワーキング電極7間に2.0Vのバ
イアス電圧を印加しながら、該基板に矢印方向に光照射
したこと以外、実施例3と同様に操作すると、0.5μ
mの高分子膜を形成できた。高分子膜が形成された後に
電圧の印加を止めても、高分子膜の再溶解は認められ
ず、より低い電圧の印加により、膜表面がより平滑で強
固な高分子膜を形成することができた。
【0136】(実施例5)電着用基板と同一面積の白金
板よりなるカウンタ電極を備えた、図13と同様に構成
された装置を準備し、カウンタ電極10とワーキング電
極4間の電界が等しくなるように電圧印加したこと以
外、実施例3と同様にして操作した。すると、0.5μ
mの高分子膜を形成することができた。高分子膜が形成
された後に電圧の印加を止めても、高分子膜の再溶解は
認められず、膜表面がより平滑で強固な高分子膜を形成
することができた。
【0137】(実施例6)能動素子としての薄膜トラン
ジスタ(TFT)素子と光透過性の導電膜とを有する前
記駆動素子基板を準備した。即ち、図14に示すよう
に、ホトリソグラフィ法により、ガラス等の基体20上
に、ゲート電極15とITO膜19を形成した後、さら
に図示されていない絶縁膜を介して半導体薄膜16が積
層した。また、同様の方法で、半導体薄膜16上に、ソ
ース電極18’と、導電膜3と電気的に接続されるよう
にドレイン電極17とを形成し、導電膜及びTFT素子
を有する電着用基板13を作製した。
【0138】実施例5で用いた図12と同様の装置を準
備し、電着用基板4に代えて上記より得た電着用基板1
3を水系電解液中に浸漬するようにして配置した。前記
基板13のソース側にカウンタ電極14、ゲート側にワ
ーキング電極7を接続し、20Vの電圧を約10〜30
分印加すると、基板13の画素電極である導電膜3上
に、高分子膜を形成することができた。上記のように、
水系電解液中にTFT素子が備えられた基板を浸漬して
膜形成を行った場合でも、前記TFT素子の動作特性を
損なうことなく、高解像度でパターン精度に優れた高分
子膜を安定に形成することができた。また、高分子膜が
形成された後に電圧の印加を止めても、高分子膜の再溶
解は認められず、膜表面がより平滑で強固な高分子膜を
形成することができた。
【0139】
【発明の効果】本発明によれば、TFT素子等の電子回
路材料の動作特性への悪影響を考慮することなく、電子
回路材料を備えた基板上に直接、高解像度でパターン精
度に優れた高分子膜を安定に形成することができる。顔
料等の色材を含む場合には、電子回路材料を備えた基板
上に、直接高解像度でパターン精度に優れたカラーフィ
ルタ膜を安定に形成することができる。また、本発明に
よれば、水系電解液中における顔料分散性をより向上さ
せることができ、かつ形成された高分子膜の再溶解現象
を効果的に防止し、濃度均一性に優れ、より平滑で強固
な高分子膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ショトキー接合を有する光半導体のエネルギ
ーバンドを示す図である。
【図2】 pin接合を有する光半導体のエネルギーバ
ンドを示す図である。
【図3】 光透過性n型半導体の構造を示す概略断面図
である。
【図4】 電子回路材料を備えた基板の構成例を示す図
である。
【図5】 水中で分散している顔料粒子の様子を模式的
に示す図である。
【図6】 光透過性の導電膜を正極とし、図示しない対
向電極との間に電圧を印加した直後の液性を示す図であ
る。
【図7】 イオン性分子のカルボキシル基が疎水化し、
光透過性の導電膜上に着色膜が成膜された状態を示す図
である。
【図8】 電着時の印加電圧と着膜速度との関係を示す
図である。
【図9】 電着時の印加電圧に対する着色膜の形成特性
を示す図である。
【図10】 電子回路材料の構成の一例を示す図であ
る。
【図11】 電子回路材料の具体的な一態様を示す平面
構成図である。
【図12】 本発明の高分子膜の形成方法の一例を示す
図である。
【図13】 本発明の高分子膜の形成方法の一例を示す
図である。
【図14】 電子回路材料を備えた基板を用いた、本発
明の高分子膜の形成方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 電着層 2 電着材料 3 色材(顔料) 4 基板(光照射する場合、TiO2/ITO積
層基板) 5 リファレンス電極 6,10 カウンタ電極 7 ワーキング電極 13 電子回路材料を備えた基板 14 ソース電極 31 光半導体薄膜 32 導電膜 33 基体 34 電子回路材料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 敬司 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 圷 英一 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 Fターム(参考) 2H048 BA62 BB02 BB43 BB47 2H091 FA02Y FB12 FC06 FD04 FD24 GA13 LA15

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性を有する基板を、電着材料を含む
    水系電解液に接触させる第一の工程と、前記基板に、水
    素イオン濃度の変化により電気化学的に電着材料を析出
    させて電着膜を形成する第二の工程と、を含む高分子膜
    の形成方法であって、 前記水系電解液が、アンモニウム化合物及びその塩の少
    なくとも一方を含むことを特徴とする高分子膜の形成方
    法。
  2. 【請求項2】 アンモニウム化合物が、アンモニウム又
    は有機アンモニウム化合物である請求項1に記載の高分
    子膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 有機アンモニウム化合物が、テトラアル
    キルアンモニウム化合物である請求項2に記載の高分子
    膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 テトラアルキルアンモニウム化合物の塩
    が、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドである請
    求項3に記載の高分子膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 テトラアルキルアンモニウム化合物又は
    その塩のアルキル基が、メチル基又はエチル基である請
    求項3又は4に記載の高分子膜の形成方法。
  6. 【請求項6】 水系電解液がさらに色材を含有し、第二
    の工程において着色電着膜を形成する請求項1から5の
    いずれかに記載の高分子膜の形成方法。
  7. 【請求項7】 第一の工程が、光透過性の基体上に、少
    なくとも光透過性の導電膜と光起電力機能を有する光透
    過性の光半導体薄膜とをこの順に積層した基板の前記光
    半導体薄膜を、色材を含有する電着材料を含む水系電解
    液に接触させる工程であり、第二の工程が、前記基板を
    水系電解液中で光照射し、前記光半導体薄膜の光照射部
    に選択的に光起電力を発生させ、電気化学的に前記電着
    材料を析出させて着色電着膜を形成する工程である請求
    項6に記載の高分子膜の形成方法。
  8. 【請求項8】 基板が、さらに電子回路材料を有する請
    求項7に記載の高分子膜の形成方法。
  9. 【請求項9】 第一の工程が、光透過性の基体上に、少
    なくとも光透過性の導電膜と該光透過性の導電膜に接合
    された電子回路材料とを備える基板の少なくとも前記光
    透過性の導電膜を、色材を含有する電着材料を含む水系
    電解液に接触させる工程であり、第二の工程が、前記基
    板の電子回路材料を、水系電解液に前記光透過性の導電
    膜を接触させた状態で駆動することにより、前記光透過
    性の導電膜に、水系電解液が電気分解して水素イオンを
    発生しかつ実質的に膜形成性を低下させる気泡の発生の
    ない電圧を印加して、前記光透過性の導電膜上に電着材
    料を析出させ着色電着膜を形成する工程である請求項6
    に記載の高分子膜の形成方法。
  10. 【請求項10】 光半導体薄膜が、酸化チタン系化合物
    を主成分として含んでなる請求項7又は8に記載の高分
    子膜の形成方法。
  11. 【請求項11】 色材が顔料であって、該顔料の数平均
    粒子径が0.2〜200nmである請求項6から10の
    いずれかに記載の高分子膜の形成方法。
  12. 【請求項12】 電着材料が、カルボキシル基を有する
    化合物を含む請求項1から11のいずれかに記載の高分
    子膜の形成方法。
  13. 【請求項13】 カルボキシル基を有する化合物が、疎
    水ドメインと親水ドメインを有する重合体であって、疎
    水ドメインの数が疎水ドメインと親水ドメインの総数の
    30〜85%である請求項12に記載の高分子膜の形成
    方法。
  14. 【請求項14】 重合体が、スチレン構造又は置換スチ
    レン構造を持つ疎水ドメインと、親水ドメインとの共重
    合体であって、かつ疎水ドメインの数が疎水ドメインと
    親水ドメインの総数の55〜85%である請求項13に
    記載の高分子膜の形成方法。
  15. 【請求項15】 重合体が、スチレン−アクリル酸−ア
    クリル酸エステル共重合体である請求項13又は14に
    記載の高分子膜の形成方法。
  16. 【請求項16】 重合体の酸価が、60〜200である
    請求項13から15のいずれかに記載の高分子膜の形成
    方法。
  17. 【請求項17】 重合体の親水ドメインの数の50%以
    上が、pHの変化により水溶性から非水溶性、或いは、
    この逆に可逆的に変化しうる請求項13から16のいず
    れかに記載の高分子膜の形成方法。
  18. 【請求項18】 重合体の数平均分子量が、6000〜
    25000である請求項13から17のいずれかに記載
    の高分子膜の形成方法。
  19. 【請求項19】 水系電解液のpHが、電着材料が析出
    開始するpH値の±2.5の範囲にあり、かつ8.5以
    下である請求項1から18のいずれかに記載の高分子膜
    の形成方法。
  20. 【請求項20】 水系電解液のpH調整剤として、塩化
    アンモニウムを用いる請求項1から19のいずれかに記
    載の高分子膜の形成方法。
  21. 【請求項21】 水系電解液が、導電材料を含有する請
    求項1から20のいずれかに記載の高分子膜の形成方
    法。
  22. 【請求項22】 水系電解液中の水系溶媒の含有量が、
    水系電解液の全重量の65〜96重量%である請求項1
    から21のいずれかに記載の高分子膜の形成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110923775A (zh) * 2019-12-19 2020-03-27 沈阳理工大学 一种采用肥皂水溶液在铝基体表面沉积超疏水膜的方法

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