JP3363051B2 - ビニルフェノール系重合体の金属除去法 - Google Patents
ビニルフェノール系重合体の金属除去法Info
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Description
重合体、すなわちビニルフェノール類の単独重合体、ビ
ニルフェノール類と他のコモノマーとの共重合体、ある
いはそれらの改質体ないし誘導体等を溶液状態で特定の
フィルターを通過させることにより、含有されているナ
トリウム、鉄、カルシウム等の金属を除去する方法に関
する。
ジスト、IC封止材、プリント配線基板などのエレクト
ロニクスの分野において多く用いられているが、近年益
々精密化するデバイス等の素材として使用するために
は、素材中の金属不純物の含有量を極めて少量に留める
必要がある。特に、256メガビット以上のLSIの微
細加工のためのフォトレジスト材としては、金属含有量
をppb単位の極微量に低減することが必要とされてい
る。
ては種々の方法が知られている。例えば、アセトキシフ
ェニルメチルカルビノールの脱水、ヒドロキシ桂皮酸の
脱炭酸分解、エチルフェノールの脱水素等の各種方法に
よって得られるビニルフェノールモノマーを、カチオン
あるいはラジカル開始剤の存在下で単独重合あるいは他
のコモノマーと共重合する方法等が工業的な方法として
知られている。
チル、トリメチルシリル、t−ブチル、t−ブトキシカ
ルボニル基などで保護したモノマーを合成し、カチオ
ン、アニオン、あるいはラジカル開始剤の存在下で重合
したのち、保護基を脱離して重合体を得る方法も知られ
ている。この方法では、保護基の種類と開始剤の種類の
選択によって、いわゆるリビング重合による単分散重合
体の製造も可能である(特開平3−277608号公
報)。
を水素化処理して光透過性の優れた改質体とする方法
(特開平1−103604号公報)、あるいはビニルフ
ェノール系重合体の水酸基の反応による各種エーテルお
よびエステル誘導体の製造法(特開昭63−31230
7号公報、繊維高分子材料研究所報告128巻、65頁
(1981年))ならびにビニルフェノール系重合体の
各種核置換体(特開昭51−83691号公報)の製造
法が知られている。
は改質して得られたビニルフェノール系重合体は、その
ままでは出発原料や副資材に含まれる金属、あるいは製
造工程中の製造装置材質に由来する金属や装置および環
境の汚れに由来する金属、例えばナトリウム、鉄、カル
シウム等の混入は避け難いものである。
体の金属不純物を除去する方法として、(イ)ビニルフ
ェノール系重合体を、溶媒に溶解して溶液状態にて強酸
性カチオン交換樹脂と接触させる方法(特開平5−14
8308号公報)、(ロ)ビニルフェノール系重合体
を、溶媒に溶解して溶液状態にて特定の水素化工程に付
し、続いて該水素化工程の生成溶液を強酸性カチオン交
換樹脂と接触させる金属除去工程に付す方法(特開平5
−148309号公報)、(ハ)ビニルフェノール系重
合体を、有機溶剤中に溶解して溶液状態にて酸性の化合
物を含む水溶液と接触させ、その後さらにイオン交換水
と接触させる方法(特開平6−192318号公報)、
および(ニ)ビニルフェノール系重合体を、溶媒に溶解
して溶液状態にてカチオン電荷調節剤によってゼータ電
位を生じるフィルターに通過させる方法(特開平8−1
65313号公報)が提案されている。
な強酸性カチオン交換樹脂と接触させる方法では、実用
規模の場合、一般に長さ数十cm以上の充填カラムを用
いねばならず、金属除去の程度を高くするためにはビニ
ルフェノール系重合体溶液の流通速度をあまり速くする
ことができず、生産性が良好でないこと、カラム内での
滞留時間が長いこともあって、溶媒の種類によっては溶
媒が一部分解して酸を生じ、それが混入し、得られるビ
ニルフェノール系重合体がフォトレジスト材としては好
ましくないものとなる場合があること、等の問題があっ
た。
含む水溶液と接触させる方法では、メタノールやアセト
ンのような低沸点の水溶性溶媒を用いると、一般にはビ
ニルフェノール系重合体を良く溶解するにもかかわら
ず、(ハ)の場合、重合体が析出してしまい、また高沸
点で水溶液と層分離しやすい溶媒の場合でも、ビニルフ
ェノール系重合体溶液と水溶液がエマルションを形成し
て分離が困難になる場合があるため溶媒が限定されるこ
と、また水洗後に溶液から水を除くために減圧蒸留が必
要があり、工程が複雑になること等の問題点があった。
ィルターによる金属除去法は、単に濾過という簡単な操
作でかなり高度な金属除去が可能であり、しかも高流量
での処理が行える生産性の高い魅力的な方法であるが、
捕捉できる金属の総量が比較的小さく、金属除去能力の
寿命が短いためフィルターの交換頻度が高く、経済性に
おいてなお十分満足できるものではなかった。
のような従来のビニルフェノール系重合体の金属除去法
の問題点を解決し、簡単な装置と操作によって効率的か
つ経済的にビニルフェノール系重合体に含まれる金属を
除去し、その含有量を非常に少量に低減し得る方法を提
供することにある。
達成すべく研究した結果、ビニルフェノール系重合体を
溶媒に溶解して溶液とし、特定の種類のフィルターを通
過させることによって、上記目的を容易に達成できるこ
とを見いだして本発明を完成させた。
体及び/又はキレート形成体を含むフィルター又はイオ
ン交換体及び/又はキレート形成体を含み厚さが50m
m以下の充填床と(ii)カチオン電荷調整剤によって
ゼータ電位を生じるフィルターを用い、ビニルフェノー
ル系重合体の有機溶媒溶液を、まず、(i)イオン交換
体及び/又はキレート形成体を含むフィルター又はイオ
ン交換体及び/又はキレート形成体を厚さが50mm以
下の充填床に通し、ついで(ii)カチオン電荷調整剤
によってゼータ電位を生じるフィルターに通すことを特
徴とするビニルフェノール系重合体の金属除去法に存す
る。
る。本発明の方法を適用するビニルフェノール系重合体
としては、次のものが挙げられる。 (a) p−ビニルフェノール、m−ビニルフェノールある
いはo−ビニルフェノール等のビニルフェノール類の単
独重合体、もしくはこれらの共重合体。 (b) 上記(a)のビニルフェノール類と他のコモノマー、
例えばスチレン、アクリル酸あるいはそのエステル類、
メタクリル酸あるいはそのエステル類、無水マレイン
酸、マレイン酸あるいはそのエステル類、マレイミド類
等との共重合体。 (c) 上記(a)あるいは(b)の重合体のフェノール性水酸基
の酢酸、安息香酸等のエステル類、あるいは該重合体の
フェノール性水酸基のメチル、t−ブチル、t−ブトキ
シカルボニル、トリメチルシリル、アリル等による置換
エーテル類。 (d) 上記(a)あるいは(b)の重合体の芳香核のアルキル化
体、ハロゲン化体、メチロール化体等の核置換体。 (e) 上記(a)あるいは(b)の重合体を水素化処理して得ら
れる水素処理改質体。 (f) 上記(a)あるいは(b)の重合体の加熱溶融による改質
体、あるいは該重合体とノボラック型フェノール樹脂と
の加熱溶融による改質体。
フェノール系重合体あるいはその改質体(以下、単にビ
ニルフェノール系重合体と呼称する)を溶媒に溶解して
溶液状態で、(i)イオン交換体及び/又はキレート形
成体を含むフィルター又はイオン交換体及び/又はキレ
ート形成体を含み厚さが50mm以下の充填床と(i
i)カチオン電荷調節剤によってゼータ電位を生じるフ
ィルター(以下、これらの特殊な機能を有するフィルタ
ーを単に機能フィルターと略称する)に通過させる。こ
の際、ビニルフェノール系重合体を溶解する溶媒として
は、ビニルフェノール系重合体を溶解し得る溶媒であれ
ばいかなるものでも良い。その例を示せば、ビニルフェ
ノール系重合体の種類および処理条件にもよるが、一般
的にメタノール、エタノール、イソプロパノール等のア
ルコール類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレン
グリコールエチルエーテル、エチレングリコールエチル
エーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエー
テル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピ
レングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアル
キレングリコールエーテルないしエステル類等が挙げら
れる。そして、これらの溶媒の内、好ましい例はメタノ
ール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフ
ラン、ジオキサン及びアセトンである。尚、上記(e)
の水素処理改質体については、水素化処理後の生成溶液
から触媒を除去しただけの溶液が、そのまま好適に用い
られ得る。
の基材、即ち濾材は、一般に繊維成分と粒子成分等から
なる。繊維成分としては、木綿、パルプ、酢酸セルロー
ス、ポリエステル繊維等が一般に用いられ、粒子成分と
してはケイソウ土、パーライト、活性炭、ゼオライト等
が一般に用いられる。
「カチオン電荷調節剤によってゼータ電位を生じる」と
は、フィルター材料に含まれるカチオン電荷調節剤によ
ってフィルターにカチオン電荷が付与され、通過する液
体中の不純物等濾過過程で荷電している物質との間でゼ
ータ電位を生じることを意味する。
−17486号公報に記載されているようなポリアミド
ポリアミンエピクロロヒドリンカチオン樹脂、特公昭3
6−20045号公報に記載されているようなN、N´
−ジエタノールピペラジン、メラミン、ホルマリンおよ
びグリセリンフタル酸エステルを反応させた樹脂、米国
特許第4007113号公報に記載されているようなメ
ラミン−ホルムアルデヒドカチオン樹脂、米国特許第2
802820号公報に記載されているようなジシアンジ
アミド、モノエタノールアミンおよびホルムアルデヒド
の反応物、米国特許第2839506号公報に記載され
ているようなアミノトリアジン樹脂等が一般に用いら
れ、中でも特にポリアミドポリアミンエピクロロヒドリ
ンカチオン樹脂が安定したカチオン電荷を与え、好まし
く用いられる。
ィルターは、通常厚さ10mm程度以下の比較的薄いも
のであるので流通抵抗はそれほど問題にならない。
ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂をカチオ
ン電荷調節剤とし、セルロース繊維を繊維成分とし、ケ
イソウ土やパーライトを粒子成分とするフィルターの製
造法が記載されている。
いられる、あるいは機能フィルターの一構成成分である
イオン交換体及び/又はキレート形成体は、スチレン系
重合体、アクリル系重合体、ビニルアルコール系重合
体、ポリエステル、セルロース等の重合体に、イオン交
換機能ないしキレート形成機能を持つ官能基が導入され
たものである。そして、これらのイオン交換体またはキ
レート形成体の形状は、特に限定されず、粒状、繊維状
あるいは多孔性のフィルム状ないし多孔性の膜状等いか
なる形状でも良い。尚、以下の説明においては、これら
の多孔性のフィルム状、多孔性の膜状を単にフィルム
状、膜状と略記する。粒状物の場合は、通常イオン交換
樹脂またはキレート樹脂と呼称され、繊維状物の場合
は、通常イオン交換繊維またはキレート繊維と呼称され
ている。
オン交換体、弱酸性カチオン交換体、強塩基性アニオン
交換体、あるいは弱塩基性アニオン交換体からなる粒
状、繊維状あるいはフィルム状ないし膜状の物が用いら
れる。ここで、強酸性カチオン交換体としては、例えば
ジビニルベンゼンで架橋したスチレン重合体をスルホン
化したものが挙げられ、弱酸性カチオン交換体として
は、例えばジビニルベンゼンで架橋したアクリル酸ある
いはメタクリル酸の共重合体が例示される。また、強塩
基性アニオン交換体としては、例えばジビニルベンゼン
で架橋したスチレン重合体をアミノメチル化した後、4
級化したものが挙げられ、弱塩基性アニオン交換体とし
ては、例えばジビニルベンゼンで架橋したスチレン重合
体をアミノメチル化したもの、あるいはジビニルベンゼ
ンで架橋したアミノメチル基を有するアクリルアミド重
合体等が示される。
ビニルベンゼンで架橋したスチレン重合体にイミノジ酢
酸構造を有する基が導入された樹脂、あるいはジビニル
ベンゼンで架橋したスチレン重合体にポリエチレンイミ
ン構造を有する基が導入された樹脂等の粒状、繊維状あ
るいはフィルム状ないし膜状の物が挙げられる。これら
種々のイオン交換体あるいはキレート形成体は1種類の
みでなく、2種類以上が同一フィルターに含まれていて
も良い。
状の場合、細孔を持たない、いわゆるゲル型と、細孔を
持つ、いわゆるポーラス型がある。本発明方法では、い
ずれの型も有効であるが、表面積が大きく、多くの活性
点が作用するポーラス型の方が好ましい。また、粒状の
場合、できるだけ微細な粉末状であるのが表面積が大き
いため好ましい。従って、その粒径は200μm以下、
好ましくは0.1〜50μmである。
維状の場合、繊維の直径は0.05〜100μm、好ま
しくは0.1〜50μmであり、長さは0.1〜10m
m、好ましくは0.5〜10mmである。
カチオン電荷調節剤、イオン交換体あるいはキレート形
成体の添加、配合の仕方によって、各種機能のフィルタ
ーとすることができる。その場合、フィルター製造過程
で、他の濾材構成成分に対し、カチオン電荷調節剤の
みを添加して得られるフィルター、イオン交換体及び
/又はキレート形成体を添加して得られるフィルター、
または上記のとの両成分を添加して得られるフィ
ルター、等が最も一般的なものとして得られる。その
際、添加されるカチオン電荷調節剤のフィルター中にお
ける含有量の範囲は0.5〜10重量%であり、好まし
くは1〜5重量%である。また、イオン交換体及び/又
はキレート形成体のフィルター中における含有量の範囲
は1〜50重量%であり、好ましくは5〜30重量%で
ある。含有量がこの範囲より少ないと効果が低く、多す
ぎると、その種類と形状にもよるがフィルターの機械的
強度が不十分となるのみならず、経済的でもない。た
だ、イオン交換体またはキレート形成体が繊維状の場合
は、粒状の場合と異なり、本発明で用いる機能フィルタ
ーの基材の一つである繊維成分として働くため、比較的
多量に用いてもフィルターの機械的強度を損なわない利
点がある。
換体及び/又はキレート形成体の重量比は、一般に1:
0.1〜100、好ましくは1:1〜30である。
よってゼータ電位を生じるフィルターと共にイオン交換
体及び/又はキレート形成体を含むフィルターとを併用
する場合のイオン交換体及び/又はキレート形成体を含
むフィルターとしては特に通常のフィルターの形状に限
られるものではなく、充填床の厚さが薄く、厚さが50
mm以下であれば充填床でも良い。濾過効果はいずれに
せよカチオン電荷調節剤によってゼータ電位を生じるフ
ィルターで得られるので、イオン交換体及び/又はキレ
ート形成体をフィルターの形で使用するのは取り扱いの
便宜上のものである。とは言うもののフィルター状にす
ることによって取り扱いが楽になり、かつそれで十分な
効果が得られるのであるから、実用上はいわゆるフィル
ター状の物を用いるのが好ましい。充填床の形で用いる
場合には、フィルター状に比べて厚さが厚いので流通抵
抗と望ましい流通速度とを考えると、フィルター状で用
いる場合に比べて粒子径は大きい方が良く、約2mm以
下、好ましくは1〜500μmである。本発明方法にあ
っては、イオン交換体及び/又はキレート形成体を含む
フィルターとそれらの充填床とは実質的に同一の機能を
有するので、以下の説明においては両者を特に区別して
記載しない。
体の金属含有量を低減せしめることにあり、これらの機
能フィルターによってビニルフェノール系重合体の溶液
を濾過する場合、溶液中の除去対象とする物質の粒子
径、いわゆる濾過精度は、それほど問題ではない。濾過
精度は濾材の種類とその組成および調製法によって異な
る。本発明方法で用いるカチオン電荷調節剤によってゼ
ータ電位を生じるフィルターの濾過精度は、通常0.0
5〜5.0μmで十分であり、殊に0.1〜1.0μm
が適当である。ゼータ電位を生じるフィルターでは、生
じる電位差によって液中に存在している荷電した粒子が
フィルターに吸着されるので、フィルターの目に比べて
微細な不純物もフィルターによって捕捉される。微量金
属のある部分は、ミクロゲル等微粒子の状態で存在して
いるので、ゼータ電位を生じるフィルターによって捕捉
され、そしてイオン交換体、キレート形成体は主として
液中のフリーのイオンを捕集するので、本発明の方法に
よって存在形態の異なる種々の金属を幅広く除去するこ
とができる。
しては、市販されているものを広く用いることができ、
例えばイオン交換樹脂あるいはキレート樹脂を含み、か
つゼータ電位を生じるフィルターとしては、キュノ社の
ゼータプラスSHシリーズ(商品名)、またイオン交換
樹脂あるいはキレート樹脂を含まず、ゼータ電位を生じ
るフィルターとしては、同社のゼータプラスLAシリー
ズが好ましく用いられる。
ノール系重合体の溶液を濾過する場合の態様には、
(1)重合体溶液を、イオン交換体及び/又はキレート
形成体を含み、かつカチオン電荷調節剤を含むことによ
ってゼータ電位を生じるフィルターを通す方法、(2)
イオン交換樹脂及び/又はキレート樹脂を含むフィルタ
ーと、カチオン電荷調節剤を含むことによってゼータ電
位を生じるフィルターの2種のフィルターを順次通す方
法がある。そして、後者の場合の2種のフィルターの使
用順序は、まずイオン交換体及び/又はキレート形成体
を含むフィルターを通し、次いでカチオン電荷調節剤を
含むことによってゼータ電位を生じるフィルターを通す
方法が、より有効であることが判った。また、(1)の
方法と(2)の方法を比べた場合、装置の保守管理の点
では(1)の方が有利である。
ィルターに通過させるにあたっては、フィルターからの
溶出物の混入を防ぐために、あらかじめ純水あるいはメ
タノール、アセトン等の溶媒でフィルターを洗浄してお
くのが望ましい。
ェノール系重合体溶液中の重合体の濃度は、あまりに高
濃度では溶液の粘度が高くなってフィルターを通過させ
る際に高い圧力を要するので好ましくない。また、あま
りに低濃度では、低い圧力で操作できる利点はあるもの
の、ビニルフェノール系重合体の単位時間当たりの処理
量が減るので好ましくなく、また場合によっては必要と
なるその後の濃縮あるいは溶媒の除去に余分の手間ある
いは経費がかかり好ましくない。従って、溶液中の重合
体濃度は、通常10〜40重量%の範囲が適当である。
速は、高い方が生産性の観点から好ましいが、あまりに
高流速ではフィルターを通過させる際に高い圧力が必要
となり、また金属の除去率が低下する。従って、通常
0.05〜5kg/m2・minの範囲が適当である。
ルターに通過させる温度は、温度を高くすれば溶液の粘
度が低下し、処理速度を上げることができると共に、吸
着速度が速くなる利点がある。しかし、あまりに高温で
はフィルターの劣化、溶媒の分解及びビニルフェノール
系重合体の変質の恐れがあり好ましくない。一方、温度
が低すぎると重合体溶液の粘度が高くなり、濾過が困難
となる。一般に、5〜80℃、好ましくは室温〜50℃
の範囲が適当である。
重合体溶液を機能フィルターに通過させるにあたり、あ
らかじめイオン交換体、キレート形成体、あるいはカチ
オン電荷調節剤を含まない通常のフィルターで前処理を
行えば、通常のフィルターで不純物粒子、特に比較的大
きな粒子を捕捉できるために、機能フィルターの目詰ま
りを防ぎ、機能フィルターにビニルフェノール系重合体
溶液を通過させる際に要する圧力の経時上昇を低減し、
同時にフィルターの金属捕捉能力の劣化を抑えてフィル
ターの寿命を延長することができる。この前処理のため
の通常のフィルターとしては、主として表面濾過作用を
利用する濾面濾過型、及び主として濾材内部の毛細管を
利用する濾材濾過型のいずれでも良く、またその材質が
例えばセルロース、綿、ポリプロピレン、ポリテトラフ
ロロエチレン等のもので、金属などの溶出の無いものが
適当である。この前処理のための通常のフィルターの濾
過精度は、特に限定はされないが通常0.1〜10μ
m、好ましくは0.5〜5μm程度が適当である。
率を低減したビニルフェノール系重合体は、溶液状態の
ままで必要に応じて濃度を調節して各種用途に供しても
良いし、あるいは溶液を純水に投入して重合体を沈澱さ
せ、ついで濾過、乾燥する方法、もしくは溶液を減圧加
熱処理して溶媒を除去、乾燥する方法によって精製品と
しても良い。
らに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定
されるものではない。尚、以下の実施例および比較例に
おいて割合および百分率は重量基準である。
0)を乳酸エチルに溶解して25%の溶液とした。一
方、カチオン電荷調節剤を含むことによりゼータ電位を
生じ、かつ粉末状の強酸性カチオン交換樹脂を含むフィ
ルター(パルプ30%、ケイソウ土/パーライト48
%、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂2
%、ジビニルベンゼンで架橋したポリスチレンのスルホ
ン化物20%からなり、径90mm、厚さ3mmのディ
スク状)を純水200ml、メタノール200ml、次
いで乳酸エチル100mlで洗浄した。このフィルター
に、上記ポリp−ビニルフェノール溶液を0.45kg
/m2・min の流速で通過させた。溶液中の金属分をフ
レームレス原子吸光分析計で測定してところ、フィルタ
ー処理前の金属量はナトリウムが220ppb、鉄が2
60ppb、カリウムが110ppb、カルシウムが6
0ppbであり、溶液を通過させ始めてから7時間後の
処理液中の金属量は、ナトリウムが15ppb、鉄が2
0ppb、カリウムが18ppb、カルシウムが20p
pbであった。
るが、強酸性カチオン交換樹脂は含まないフィルター
(パルプ30%、ケイソウ土/パーライト68%、ポリ
アミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂2%からな
り、径90mm、厚さ3mmのディスク状)を純水20
0ml、メタノール200ml、ついで乳酸エチル10
0mlで洗浄したのち、実施例1と同じポリp−ビニル
フェノールの乳酸エチル溶液を、実施例1と同一条件で
通過させた。7時間後の処理液中の金属量は、ナトリウ
ムが120ppb、鉄が160ppb、カリウムが80
ppb、カルシウムが55ppbであり、実施例1に比
べいずれの金属量についても大幅な上昇が見られた。
溶液の処理時間と処理液中のナトリウムと鉄の量との関
係を図1に示す。図において、Iは比較例1の鉄量を、I
Iは比較例1のナトリウム量を、IIIは実施例1の鉄量
を、そしてIVは実施例1のナトリウム量を示す。
量の上昇度は、実施例の方がはるかに少なく、優れてい
る。
0)を9:1のイソプロパノール/メタノール混合溶媒
に溶解し、25%の溶液とした。この溶液をオートクレ
ーブを用い、ニッケルを触媒として、温度210℃、圧
力70kg/cm2で2時間水素化処理した。処理後の
溶液を1μmの濾紙を用いて濾過することによりニッケ
ル触媒を除去した。この溶液をそのまま実施例1と同様
のフィルターに0.40kg/m2・min の流速で通過
させた。フィルター処理前の溶液中の金属量は、ナトリ
ウムが400ppb、鉄が180ppb、カルシウムが
120ppb、アルミニウムが20ppb、マグネシウ
ムが8ppbであり、処理開始後5時間目の処理液中の
金属量は、ナトリウムが18ppb、鉄が20ppb、
カルシウムが24ppb、アルミニウムが6ppb以
下、マグネシウムが3ppbであった。
ン交換樹脂は含まないフィルターを純水、メタノール及
び乳酸エチルで洗浄した後、実施例2と同じポリp−ビ
ニルフェノールの水素処理改質体溶液を、実施例2と同
一条件で通過させた。1時間後の処理液中の金属量は、
ナトリウムが14ppb、鉄が12ppb、カルシウム
が4ppb、アルミニウムが5ppb、マグネシウムが
3ppbであり、5時間後の処理液中の金属量は、ナト
リウムが270ppb、鉄が84ppb、カルシウムが
100ppb、アルミニウムが17ppb、マグネシウ
ムが6ppbであった。即ち、5時間後にはフィルター
による金属除去能力が低下し、処理液中の金属量はあま
り低減されなかった。
(組成比55/45、重量平均分子量8,200)をプ
ロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶
解し、25%の溶液とした。一方、ゼータ電位を生じ、
かつ弱酸性カチオン交換樹脂を含むフィルター(パルプ
30%、ケイソウ土/パーライト38%、ジビニルベン
ゼン架橋スチレン−アクリル酸共重合体30%、ポリア
ミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂2%からなり、
径90mm、厚さ3mmのディスク状)を純水200m
l、メタノール200ml、次いでプロピレングルコー
ルモノエチルエーテルアセテート100mlで洗浄した
後、上記p−ビニルフェノール−メタクリル酸メチル共
重合体溶液を0.45kg/m2・min の流速で通過さ
せた。フィルター処理前の溶液中の金属量は、ナトリウ
ムが1160ppb、鉄が880ppb、カルシウムが
180ppbであり、5時間後の処理液中の金属量は、
ナトリウムが25ppb、鉄が100ppb、カルシウ
ムが14ppbであった。
脂は含まないフィルターを純水、メタノール、次いでプ
ロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートで洗
浄した後、実施例3と同じp−ビニルフェノール−メタ
クリル酸メチル共重合体のプロピレングリコールモノエ
チルエーテルアセテート溶液を、実施例3と同一条件で
通過させた。1時間後の処理液中の金属量は、ナトリウ
ムが30ppb、鉄が550ppb、カルシウムが20
ppbであり、5時間後の処理液中の金属量は、ナトリ
ウムが540ppb、鉄が750ppb、カルシウムが
150ppbであった。
0)をイソプロパノールに溶解し、25%溶液とした。
ゼータ電位を生じ、かつキレート樹脂を含むフィルター
(パルプ30%、ケイソウ土/パーライト28%、イミ
ノジ酢酸の構造を有する基で置換されたジビニルベンゼ
ン架橋スチレン重合体40%、ポリアミドポリアミンエ
ピクロロヒドリン樹脂2%からなり、径90mm、厚さ
3mmのディスク状)を純水200ml、メタノール2
00ml、次いでイソプロパノール100mlで洗浄し
た後、上記m−ビニルフェノール溶液を0.50kg/
m2・min の流速で通過させた。フィルター処理前の溶
液中の金属量は、ナトリウムが240ppb、鉄が25
0ppb、カルシウムが110ppbであり、4時間後
の処理液中の金属量は、ナトリウムが10ppb、鉄が
12ppb、カルシウムが15ppbであった。
れた臭素化ポリp−ビニルフェノール(重量平均分子量
6,700)をジエチレングリコールジメチルエーテル
に溶解し、25%溶液とした。実施例1と同様のフィル
ターに上記溶液を0.50kg/m2・min の流速で通
過させた。フィルター処理前の溶液中の金属量は、ナト
リウムが98ppb、鉄が170ppb、カルシウムが
75ppbであり、5時間後の処理液中の金属量は、ナ
トリウムが20ppb、鉄が25ppb、カルシウムが
14ppbであった。
(組成比60/40、重量平均分子量8,500)をメ
タノールに溶解し、25%溶液とした。この溶液を強酸
性イオン交換樹脂を含むが、ゼータ電位を生じないフィ
ルター(パルプ30%、ケイソウ土/パーライト50
%、ジビニルベンゼンで架橋したポリスチレンのスルホ
ン化物20%からなり、径90mm、厚さ3mmのディ
スク状)に通した後、比較例1と同様のゼータ電位を生
じるが、イオン交換樹脂を含まないフィルターに0.5
0kg/m2・min の流速で通過させた。処理前の溶液
中の金属量は、ナトリウムが250ppb、鉄が200
ppb、カルシウムが160ppbであり、処理開始後
5時間目の処理液中の金属量は、ナトリウムが21pp
b、鉄が25ppb、カルシウムが30ppbであっ
た。
ールに溶解し、25%溶液とした。この溶液を比較例1
と同様のゼータ電位を生じるが、イオン交換樹脂を含ま
ないフィルターに通した後、引き続き実施例6で用いた
強酸性イオン交換樹脂を含むが、ゼータ電位を生じない
フィルターに0.50kg/m2・minの流速で通過させ
た。処理前の溶液中の金属量は、ナトリウムが250p
pb、鉄が200ppb、カルシウムが160ppbで
あり、処理開始後5時間目の処理液中の金属量は、ナト
リウムが25ppb、鉄が30ppb、カルシウムが3
6ppbであった。
0)をメタノールに溶解して25%の溶液とした。一
方、カチオン電荷調節材を含むことによりゼータ電位を
生じ、かつ繊維状の強酸性カチオン交換体を含むフィル
ター(パルプ20%、ケイソウ土/パーライト38%、
ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂2%、ジ
ビニルベンゼンで架橋したポリスチレンのスルホン化物
で直径40μmの繊維40%からなり、径90mm、厚
さ3mmのディスク状)を純水200ml、次いでメタ
ノール200mlで洗浄した。このフィルターに、上記
ポリp−ビニルフェノール溶液を0.90kg/m2・m
in の流速で通過させた。フィルター処理前の溶液中の
金属量は、ナトリウムが250ppb、鉄が190pp
b、カルシウムが70ppbであり、溶液を通過させ始
めてから4時間後の処理液中の金属量は、ナトリウムが
10ppb、鉄が15ppb、カルシウムが17ppb
であった。
ノール系重合体ないしその改質体の溶液から、単なる濾
過という簡単な操作で、ナトリウム、カリウム、カルシ
ウム、マグネシウム、鉄などのアルカリ金属、アルカリ
土類金属、遷移金属にわたる多種類の金属を高度に除去
することができる。
ィルターを使用した場合とは異なり、金属除去能力の寿
命が長く、より効率的、経済的な除去が可能である。
ビニルフェノール系重合体は、フォトレジストなどのエ
レクトロニクス分野に好適に使用できる。
理時間と処理液中のナトリウムと鉄の量との関係を示す
図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 (i)イオン交換体及び/又はキレート
形成体を含むフィルター又はイオン交換体及び/又はキ
レート形成体を含み厚さが50mm以下の充填床と(i
i)カチオン電荷調節剤によってゼータ電位を生じるフ
ィルターを用い、ビニルフェノール系重合体の有機溶媒
溶液を、まず(i)イオン交換体及び/又はキレート形
成体を含むフィルター又はイオン交換体及び/又はキレ
ート形成体を含み厚さが50mm以下の充填床に通し、
ついで(ii)カチオン電荷調節剤によってゼータ電位
を生じるフィルターに通すことを特徴とするビニルフェ
ノール系重合体の金属除去法。 - 【請求項2】 (i)がイオン交換体及び/又はキレー
ト形成体を含むフィルターである請求項1に記載の金属
除去法。 - 【請求項3】 (ii)に規定されているゼータ電位を
生じるフィルターを通過するビニルフェノール系重合体
の有機溶媒溶液の速度が0.05〜5kg/m2・mi
nである請求項1又は2に記載の金属除去法。 - 【請求項4】 フィルターを通過させるビニルフェノー
ル系重合体の有機溶媒溶液の濃度が10〜40重量%で
あり、温度が5〜80℃である請求項3に記載の金属除
去法。
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