JP3350883B2 - ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂の熱安定化方法 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂の熱安定化方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリカーボネート(P
C)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン
テレフタレート(PET)などのポリカーボネート樹脂やポ
リエステル樹脂、あるいはこれらのブレンド、あるいは
これらの1つ、又は複数の樹脂に他の熱可塑性樹脂がブ
レンドされたような熱可塑性樹脂は各種成形行程におい
て加熱、溶融されるときに熱分解を起こし分子量が低下
し、かつ、機械的性質が低下するがこの時の熱分解を防
ぐ樹脂の熱安定化方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】樹脂材料、特にPC、PB
T、PETのようなポリカーボネート樹脂やポリエステル樹
脂は熱溶融における分子量低下が激しく、このため各成
形行程で与えられる熱や混練時のせん断応力によって分
子量が著しく低下していた。従って、製品のリサイクル
はもちろんのこと、成形時に発生するスプルー、ランナ
ーのリサイクルは困難であった。本発明は尿素化合物を
微量添加し、さらにフタル酸を併せて微量添加するする
ことによって前述した樹脂材料の分子量低下を抑制し、
リサイクル可能な材料とすることができるポリカーボネ
ート樹脂やポリエステル樹脂の熱安定化方法を提供する
ことを目的とする。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは高分子材料
における分子内再重合について触媒と結合剤の影響につ
いて鋭意研究を続けた結果、微量のフタル酸が重合物が
熱分解を受けた部分と再結合し、この場合、微量の尿素
化合物が塩基性触媒として働き熱可塑性樹脂の加熱、溶
融時の分子量低下を抑制することができることを見出し
本発明を完成するに至った。次に本発明を更に詳細に説
明する。
【0004】本発明で用いられる尿素化合物は大別して
尿素とその前駆体であるカルバミン酸アンモニウムとが
ある。化学式を下に示した。(1)はカルバミン酸メチル
であり、(2)はカルバミン酸アンモニウム、(3)は尿素で
ある。もちろんこれらの化学構造において本発明で有効
に使用しうるような塩基性を損なわない程度のわずかな
分子構造の違いであれば、たとえば側鎖に化学修飾など
がある場合、例えば(1)のようなカルバミン酸メチルの
ようなものであっても本発明の尿素化合物に含まれる。
【0005】本発明においては、これらの尿素化合物を
複数混合して用いることはもちろんかまわない。
【0006】現在、こうした尿素化合物は、塩基として
各種化学薬品の誘導原料、合成樹脂の原料として用いら
れ、更には優良な肥料として、また火薬の原料としても
多量に用いられている。尿素化合物は、水やアルコール
などの溶媒によく溶けるため高濃度の溶液として用いる
こともできる。
【0007】
【化1】
【0008】本発明で用いられるフタル酸はベンゼン環
に結合するカルボキシル基の位置により、オルソ位、メ
タ位、パラ位の3種のフタル酸が存在し、そのいずれで
あっても用いることができるが、反応のし易さから、好
ましくはオルソ位またはパラ位のフタル酸が用いられ
る。また、オルソ位のフタル酸は脱水反応によって、無
水フタル酸となり、この化合物も本発明において好まし
く用いることができる。フタル酸は2種以上を併用する
こともできる。
【0009】本発明のフタル酸および尿素化合物が添加
される対象とされるポリカーボネート樹脂やポリエステ
ル樹脂は特に限定されないが、ビスフェノールAポリカ
ーボネート樹脂(PC)、あるいは熱可塑性ポリエステル、
中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレ
ンテレフタレート(PBT)などが好都合である。更に2種類
以上のポリカーボネート樹脂あるいは2種類以上のポリ
エステル樹脂のブレンド樹脂やポリカーボネート樹脂と
ポリエステル樹脂のブレンド樹脂、これらのポリカーボ
ネート樹脂あるいはポリエステル樹脂の1つ、又は複数
の組み合わせと他の樹脂とのブレンド樹脂、例えば、PC
/ABS、PBT/ABS、PC/PBT、PC/PET、PC/ポリスチレン、及
びPC/PBT/ポリスチレン、などのブレンド樹脂が好まし
く用いられる。
【0010】本発明の尿素化合物とフタル酸の添加方法
としては、特に限定されないが液状または粉末状の尿素
化合物とフタル酸を直接樹脂に加えても良いし、あるい
は対象となる樹脂にあらかじめ混合したり、溶剤等に尿
素化合物とフタル酸を溶解し、これを樹脂に加えても良
い。
【0011】樹脂のポリマー分子が熱や剪断応力などに
よつて切断された場合、切断箇所は当然ラジカル分子と
なる。本発明者らは、特許第3046962〜4号等に
よって、熱安定剤としてのタンニンが、生成したラジカ
ルをトラップし熱安定化効果が高いことを先に開示した
が、本発明はこのラジカル分子の反応性が高いことに着
目し、ここにPCの主鎖であるビスフェノールやPBT、PET
の主鎖と類似化合物であるフタル酸を反応させ、切断さ
れたポリマー分子を再結合させることにより樹脂の分子
量低下を抑制せんとするもので、このとき尿素化合物
は、再結合反応の塩基性触媒として働くものと考えられ
る。こうした理論の整合性を確認することは、非常に困
難な作業を余儀なくされるが、もちろん本発明がこの理
論によって左右されるものではない。
【0012】本発明のフタル酸をおよび尿素化合物の添
加量はフタル酸は、樹脂全量に対し、20〜1800ppmが好
ましく、更に好ましくは100〜800ppmが好ましい。触媒
である尿素化合物塩は2〜180ppmを添加すれば良く、こ
れはフタル酸の添加量と比例する。おおむねフタル酸の
1/10程度が好ましい。フタル酸が少なければその効果が
得にくく、多すぎると、過剰のフタル酸が樹脂のポリマ
ー分子の間に存在し、機械的強度等の低下を招く。この
ときの反応触媒として、フタル酸の1/10程度の尿素化合
物が存在すればよい。尿素化合物は、触媒であるから多
すぎても、一定以上の効果はなく、少なければ、触媒の
働きをしない。
【0013】このようにして得られた尿素化合物とフタ
ル酸を添加されたポリカーボネート樹脂またはポリエス
テル樹脂は分子量低下が抑制され、リサイクル等が可能
となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
【0015】
【実施例】以下実施例及び比較例により、本発明を更に
詳しく説明する。
【0016】実施例1 PC樹脂(帝人化成(株)製 パンライトL-1250 Mn=2470
0、Mw=60800、Mw/Mn=2.46)を59.00gを計量し、更に尿素
(ナカライテスク(株)製 試薬1級)を1.77mg、テレ
フタル酸11.8mgをそれぞれ加え、これをプラストメータ
ー(東洋精機製作所(株)製 ラボプラストミル 50C150
型)に投入し、温度280℃、回転速度32rpm.、にて混練
した。この場合PCに対する尿素の添加量は30ppm、テレ
フタル酸は、200ppmに相当する。この間10分ごとに約0.
05g程度を分子量測定試料として採取した。
【0017】ここで得た試料をゲルパーミエーションク
ロマトグラフィー〔以下GPCと訳す日立製作所(株)製
L7000タイプ)を用い、試料濃度約0.05wt%THF溶液、キ
ャリア溶媒THF(テトラヒドロフラン)、圧力10kg/cm2
流量0.5ml/min、検出器RI〕を用いて数平均分子量を測
定した。結果を表−1に記す。
【0018】比較例1 テレフタル酸を添加しなかった以外は実施例1と全く同
様に行い、結果を表−1に併せて記載した。また、無添
加のPCのみの場合も同様に行った。結果を表−1に併せ
て記載した。
【0019】比較例2 テレフタル酸の添加量を変えた以外は、実施例1と全く
同様に行った。このとき尿素の添加量は30ppmに統一し
た。このときのテレフタル酸の添加量と結果を表−1に
併せて記載した。
【0020】
【表1】
【0021】実施例2 実施例1の尿素をカルバミン酸アンモニウム(ナカライ
テスク(株)製、試薬1級)に変えた以外は全く同様に
行った。結果を表−1に併せて記載した。
【0022】比較例3 尿素を用い、その添加量を変えた以外は、実施例1と全
く同様に行った。このときテレフタル酸の添加量は200p
pmに統一した。このときの尿素の添加量と結果を表−1
に併せて記載した。
【0023】実施例3 PBT樹脂(ポリプラスチック(株)製 ジュラネックス320
0)、PET((株)クラレ製 クラペットKS750RC)、PC/ABS/
アロイ(宇部サイコン(株)製 ウベロイCX104)、PBT/AB
S/アロイ(ダイセル化学工業(株)製 ノバロイB、B150
0)のそれぞれに尿素を30ppm、テレフタル酸を200ppmに
なるように実施例1で用いた尿素とテレフタル酸を加
え、これを各10kgずつ用意した。これを射出成形機(東
芝機械(株)製 IS-170型)のホッパーに全量投入し、ノ
ズル温度280℃、射出圧995kgf/cm2、保圧595kgf/cm2
射出時間1.61sec、保圧時間21.4secの条件で240mm×200
mm×2.4mmの板を成形した。これを粉砕機(日水加工
(株)製 FNSK-15D)を用いて粉砕した。粉砕した樹脂の
中から約50gをMI測定用試料として取り出し、残りを全
て同条件にて射出成形を4回行った。ここで得られた粉
砕した試料の溶融流れ(MI値)をメルトインデクサー(東
洋精機製作所(株)製 C-50型)を用いてMI値を求めた。
本来樹脂の劣化を分子量で評価すべきであるが、ここに
挙げた各樹脂は分子量測定用の溶媒に溶けないため、分
子量を直接測定することができない。一方、MI値と分子
量は相関関係があるため、ここではMI値による評価を行
った。もちろんMI値の低い方が分子量が大きく、MI値の
増加は分子量の低下を表す。結果を表−2に記す。
【0024】比較例4 実施例3の中で尿素とテレフタル酸を加えないで、それ
以外は全く実施例3と同様に行った。結果を表−2に併
せて記載する。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】以上の実施例及び比較例に示されたよう
に尿素またはカルバミン酸アンモニウムを触媒として添
加しながら同時に調整した添加量のフタル酸を添加した
ポリカーボネート樹脂、あるいはポリエステル樹脂は、
分子量低下が抑制されている。従って本発明の尿素化合
物およびフタル酸を用いることによって該樹脂の熱安定
化を達成することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 67/00 - 67/02 C08L 69/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリカーボネート樹脂またはポリエステ
    ル樹脂に対してフタル酸を20〜1800ppmおよび尿素化合
    物を2〜180ppm添加することを特徴とするポリカーボネ
    ート樹脂またはポリエステル樹脂の熱安定化方法。
  2. 【請求項2】 尿素化合物が、尿素または尿素前駆体で
    あるカルバミン酸アンモニウムであることを特徴とする
    請求項1記載の熱安定化方法。
  3. 【請求項3】 フタル酸がオルトフタル酸、無水フタル
    酸、またはテレフタル酸であることを特徴とする請求項
    1記載の熱安定化方法。
  4. 【請求項4】 ポリカーボネート樹脂またはポリエステ
    ル樹脂がこれらと他の熱可塑性樹脂との混合物である
    か、または2種類以上のポリカーボネート樹脂の混合
    物、または2種類以上のポリエステル樹脂の混合物、ま
    たはポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との混合
    物であることを特徴とする請求項1記載の熱安定化方
    法。
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