JP3305476B2 - ポリアミド樹脂組成物およびグラフト共重合体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物およびグラフト共重合体

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JP3305476B2
JP3305476B2 JP01885694A JP1885694A JP3305476B2 JP 3305476 B2 JP3305476 B2 JP 3305476B2 JP 01885694 A JP01885694 A JP 01885694A JP 1885694 A JP1885694 A JP 1885694A JP 3305476 B2 JP3305476 B2 JP 3305476B2
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昭 柳ケ瀬
章 中田
厚典 小白井
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Graft Or Block Polymers (AREA)
  • Macromonomer-Based Addition Polymer (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強度、剛性などの機械
的性質を保持しつつ耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性
を改善し、かつ優れた成形品の表面外観を有するポリア
ミド樹脂組成物およびグラフト共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より熱可塑性ポリアミド樹脂の耐衝
撃性を改善する方法として数多くの提案がなされている
が、本発明者らが、先に提案した熱可塑性ポリアミド樹
脂にポリオルガノシロキサン系複合ゴムに少なくともエ
ポキシ基含有ビニル単量体を含む1種以上のビニル系単
量体をグラフト重合させてなるポリオルガノシロキサン
系グラフト共重合体を配合する方法(特開平5−981
15号公報)は、低温下でも高い耐衝撃強度の改善効果
が得られる優れた方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法において、グリシジルメタクリレートがグラフト重
合の最終段にグラフトされたポリオルガノシロキサン系
グラフト共重合体を用いると、熱可塑性ポリアミド樹脂
との溶融混練時に微少のゲルが生じ、得られる成形品の
表面外観を低下させるという問題点を有している。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
ような状況に鑑み、熱可塑性ポリアミド樹脂の耐衝撃性
を広い温度で改善し、かつ成形品の表面外観も良好なポ
リアミド樹脂組成物を得るべく鋭意検討した結果、熱可
塑性ポリアミド樹脂に、特定のグラフト構造を有するポ
リオルガノシロキサン系グラフト共重合体を配合するこ
とにより、上記の問題点が解決できることを見い出し本
発明に到達した。すなわち、本発明は、(A)熱可塑性
ポリアミド樹脂60〜99重量部、および(B)ポリオ
ルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレ
ートゴムとからなるポリオルガノシロキサン系複合ゴム
に少なくともエポキシ基含有ビニル系単量体を含むビニ
ル系単量体をグラフト重合させた後、最終段にエポキシ
基を含有しないビニル系単量体をグラフト重合させてな
るポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体40〜1
重量部を必須成分として含んで成る、ポリアミド樹脂組
成物にある。また、本発明は、(B)ポリオルガノシロ
キサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムと
からなるポリオルガノシロキサン系複合ゴムに少なくと
もエポキシ基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体
をグラフト重合させた後、最終段にエポキシ基を含有し
ないビニル系単量体をグラフト重合させてなるポリオル
ガノシロキサン系グラフト共重合体にある。
【0005】本発明における(A)熱可塑性ポリアミド
樹脂とは、脂肪族、芳香族または脂環族のジカルボン酸
とジアミンとから得られるポリアミド、アミノカルボン
酸や環状のラクタム類から得られるポリアミド等が挙げ
られる。好ましい具体例としては、ナイロン6、ナイロ
ン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン46、
ナイロンMXD6、ナイロン610、ナイロン6/66
共重合体等が挙げられる。特に、ナイロン6、ナイロン
66が好ましく用いられる。
【0006】次に本発明における(B)ポリオルガノシ
ロキサン系グラフト共重合体とは、ポリオルガノシロキ
サンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとか
らなる複合ゴムに、少なくともエポキシ基含有ビニル系
単量体を含有するビニル系単量体をグラフト重合させた
後、グラフト重合の最終段においてエポキシ基を含有し
ないビニル系単量体をグラフト重合させてなるものであ
るが、ここで用いるポリオルガノシロキサンゴムは、オ
ルガノシロキサンとポリオルガノシロキサンゴム用架橋
剤およびポリオルガノシロキサンゴム用グラフト交叉剤
とを重合することにより微小粒子として得られるものを
用いることができる。
【0007】ポリオルガノシロキサンゴムの調製に用い
るオルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の環
状体が挙げられ、3〜6員環のものが好ましく用いられ
る。このようなオルガノシロキサンの具体例として、ヘ
キサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロ
テトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサ
ン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチル
トリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテト
ラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシ
クロテトラシロキサン等が挙げられ、これらは単独で用
いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0008】ポリオルガノシロキサン用架橋剤とは、低
級アルコキシ基を3または4個を有するシラン化合物、
すなわちトリアルコキシアルキルシラン、トリアルコキ
シフェニルシランあるいはテトラアルコキシシランであ
り、その具体例として、トリメトキシメチルシラン、ト
リエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テ
トラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラ
ブトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではテトラア
ルコキシシランが好ましく、さらにはテトラエトキシシ
ランが特に好ましい。
【0009】ポリオルガノシロキサンゴム用グラフト交
叉剤とは、ポリオルガノシロキサンゴムを調製する際に
は反応せず、その後に複合ゴム調製のためのポリオルガ
ノシロキサンゴム存在下でのポリ(メタ)アクリレート
ゴムの重合、あるいはグラフト重合の際に反応する官能
基を有するシロキサンであり、その具体例として、下記
式(I)〜 (IV) で表わされる単位を形成し得る化合物
を挙げることができる。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】式(I)の単位を形成し得るものとして
は、メタクリロイルオキシアルキルモノ、ジまたはトリ
アルコキシシランが好ましく、この具体例としては、β
−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラ
ン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチ
ルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキ
シメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルト
リメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピル
ジエトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプ
ロピルエトキシジエチルシラン、δ−メタクリロイルオ
キシブチルジエトキシメチルシラン等を挙げることがで
き、これらの中でも、γ−メタクリロイルオキシプロピ
ルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシ
プロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0015】式(II)の単位を形成し得るものの例として
は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキ
シシラン等を挙げることができ、式(III) の単位を形成
し得るものの例としては、4−ビニルフェニルジメトキ
シメチルシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラ
ン等を挙げることができ、式(IV)の単位を形成し得るも
のの例としては、γ−メルカプトプロピルジメトキシメ
チルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−メルカプトプロピルジエトキシエチルシラン等
を挙げることができる。
【0016】これらの式で示される化合物の中で式
(I)の単位を形成し得る(メタ)アクリロイルオキシ
(アルキル)シランは、グラフト重合時のグラフト効率
が高いために有効なグラフト鎖を形成し、耐衝撃性に優
れたものを得ることができるので、本発明においては好
ましく使用される。
【0017】ポリオルガノシロキサンゴム中の環状オル
ガノシロキサンに由来する成分の量は60重量%以上、
好ましくは70重量%以上であり、ポリオルガノシロキ
サンゴム用架橋剤の量は0.1〜30重量%であり、ま
たポリオルガノシロキサンゴム用グラフト交叉剤の量は
0〜10重量%である。
【0018】ポリオルガノシロキサンゴムは、例えば米
国特許第2891920号明細書、同第3294725
号明細書等に記載された方法を用いてラテックスとして
得ることができるが、オルガノシロキサンとポリオルガ
ノシロキサンゴム用架橋剤および所望によりポリオルガ
ノシロキサンゴム用グラフト交叉剤との混合液を、アル
キルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸等のスル
ホン酸系乳化剤の存在下で、例えばホモジナイザー等を
用いて水と剪断混合する方法で製造することが好まし
い。スルホン酸系乳化剤としては、アルキルベンゼンス
ルホン酸がオルガノシロキサンの乳化剤として作用する
と同時に重合開始剤としても作用するので好ましく用い
られる。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、
アルキルスルホン酸金属塩等を併用するとグラフト重合
を行う際にポリマーの乳化状態を安定に維持するのに効
果があるので好ましい。
【0019】重合の停止は、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加す
ることにより行うことができる。
【0020】ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキ
ル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムは、上
述のポリオルガノシロキサンゴムラテックスに、アルキ
ル(メタ)アクリレート、ポリアルキル(メタ)アクリ
レートゴム用架橋剤およびポリアルキル(メタ)アクリ
レートゴム用グラフト交叉剤を添加してポリオルガノシ
ロキサンゴムにこれらの成分を含浸させてから重合させ
ることにより得られる。
【0021】複合ゴムの調製に用いられるアルキル(メ
タ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1〜
8の直鎖または分岐鎖アクリレートおよびアルキル基の
炭素数が6〜12のアルキルメタクリレートを示すこと
ができる。これらの具体例としては、メチルアクリレー
ト、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、
イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、
イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレー
ト、2−メチルブチルアクリレート、3−メチルブチル
アクリレート、3−ペンチルアクリレート、ヘキシルア
クリレート、ヘプチルアクリレート、2−ヘプチルアク
リレート、オクチルアクリレート、2−オクチルアクリ
レート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルメ
タクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタク
リレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシ
ルメタクリレート等が挙げられ、これらの中ではn−ブ
チルアクリレートが好ましい。
【0022】ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用
架橋剤としては、重合性不飽和結合を2つ以上有する
(メタ)アクリレートが用いられ、その具体例として
は、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレン
グリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコ
ールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジ
メタクリレート等が挙げられる。
【0023】ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用
グラフト交叉剤は、ポリアルキル(メタ)アクリレート
ゴム重合時に重合して該ゴム中に組み込まれるが少なく
とも一部の重合性不飽和基は重合せずに残存し、その後
のグラフト重合時にその残った不飽和基が反応してグラ
フト結合できる重合性不飽和結合を2つ以上有するモノ
マーであり、このようなグラフト交叉剤の具体例として
は、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、
トリアリルイソシアヌレート等を挙げることができる。
アリルメタクリレートは、ポリアルキル(メタ)アクリ
レートゴム重合時に、その一部が2つの重合性不飽和基
の両方が反応して架橋構造を形成し、かつ残りは不飽和
基の一方のみが反応し、他方の不飽和結合はポリアルキ
ル(メタ)アクリレートゴム重合後も残存して、その後
のグラフト重合時にこの残った不飽和結合が反応してグ
ラフト結合を形成するので、架橋剤としてもグラフト交
叉剤としても働く作用を有する。
【0024】これらのポリアルキル(メタ)アクリレー
トゴム用架橋剤およびポリアルキル(メタ)アクリレー
トゴム用グラフト交叉剤は、各々単一成分のものを用い
てもよく、2種以上の成分の併用であってもよい。アリ
ルメタクリレートを用いる場合は、これのみで架橋剤と
グラフト交叉剤を兼ねさせてもよい。
【0025】ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用
架橋剤およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用
グラフト交叉剤の使用量は、各々ポリアルキル(メタ)
アクリレートゴム成分中0.1〜10重量%である。ア
リルメタクリレートのみで架橋剤とグラフト交叉剤を兼
ねさせた場合は、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴ
ム成分中0.2〜20重量%用いればよい。
【0026】複合ゴムの調製は、オルガノシロキサンを
乳化重合させた後に水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、炭酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を添加して中
和したポリオルガノシロキサンゴムラテックス中に、上
述のアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキル(メ
タ)アクリレートゴム用架橋剤およびポリアルキル(メ
タ)アクリレートゴム用グラフト交叉剤を添加し、これ
らをポリオルガノシロキサンゴム粒子中に含浸させた
後、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合を行え
ばよい。こうすることにより、ポリオルガノシロキサン
ゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとが実質
上分離できない程度に相互に絡み合った複合ゴムが得ら
れる。この複合ゴムとしては、トルエンで90℃で4時
間抽出して測定したときのゲル含量が80%以上のもの
であることが好ましい。
【0027】複合ゴムとしては、ポリオルガノシロキサ
ンゴム成分の主骨格がジメチルシロキサンの繰り返し単
位を有し、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分
の主骨格がn−ブチルアクリレートに由来する繰り返し
単位を有するものであるものが好ましい。
【0028】複合ゴム中のポリオルガノシロキサンゴム
成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分の比
率は、前者が1〜99重量%、後者が99〜1重量%で
あるものが好ましい。ポリオルガノシロキサンゴム成分
の割合が99重量%を超えると組成物からの成形品の表
面外観が悪化し、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴ
ム成分の割合が99重量%を超えると耐衝撃性、特に低
温における耐衝撃性の発現が不十分となる傾向にある。
【0029】本発明における(B)ポリオルガノシロキ
サン系グラフト共重合体は、ポリオルガノシロキサンゴ
ムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる
複合ゴムに、少なくともエポキシ基含有ビニル系単量体
を含有するビニル系単量体をグラフト重合させた後に、
エポキシ基を含有しないビニル系単量体を最終段として
グラフト重合させてなるものである。ここでいう少なく
ともエポキシ基含有ビニル系単量体を含有するビニル系
単量体とは、エポキシ基含有ビニル系単量体のみからな
るものでもよく、またエポキシ基含有ビニル系単量体と
共重合可能な他のビニル単量体とエポキシ基含有ビニル
系単量体との混合物であってもよいことを意味する。
【0030】エポキシ基含有ビニル系単量体としては、
グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、
ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテ
ル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシ
ジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アク
リレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネー
ト等を挙げることができ、これらの中でもグリシジルメ
タクリレートの使用がより好ましい。
【0031】エポキシ基含有ビニル系単量体と共重合可
能な他のビニル系単量体の例としては、メチルメタクリ
レート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタク
リル酸エステル;メチルアクリレート、エチルアクリレ
ート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;ス
チレン、ハロゲン置換スチレン、α−メチルスチレン、
ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合
物;アクリル酸、メタクリル酸等の炭素−炭素の不飽和
二重結合を有する有機酸等が挙げられ、これらの1種以
上がエポキシ基含有ビニル系単量体と組み合わせて用い
られる。これらのビニル系単量体のうち、スチレン、メ
チルメタクリレートおよびブチルアクリレートが好まし
く用いられる。
【0032】グラフト重合の最終段でグラフト重合させ
るエポキシ基を含有しないビニル系単量体としては、メ
チルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレー
ト等のメタクリル酸エステル;メチルアクリレート、エ
チルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸
エステル;スチレン、ハロゲン置換スチレン、α−メチ
ルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合
物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン
化ビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸等の炭素−
炭素の不飽和二重結合を有する有機酸等を挙げることが
でき、これらは1種で、または2種以上の混合物として
用いられる。
【0033】エポキシ基含有ビニル系単量体に由来する
成分を有するポリオルガノシロキサン系グラフト共重合
体と熱可塑性ポリアミド樹脂を溶融混合、好ましくは押
出成形機等を用いて溶融混練すると、グラフト共重合体
中のエポキシ基と熱可塑性ポリアミド樹脂の末端官能基
とが反応して両者が結合したものが一部生成し、これが
熱可塑性ポリアミド樹脂とポリオルガノシロキサン系グ
ラフト共重合体の相溶化剤として働き両者の相溶性が向
上する。その結果、本発明の組成物は高い衝撃強度を発
現することになる。しかしながら、エポキシ基がグラフ
ト共重合体の最外層に存在するとエポキシ基同士の反応
によるマイクロゲルが生成し、成形品の表面外観を悪化
させる。本発明は、ポリオルガノシロキサン系グラフト
共重合体の最外層をエポキシ基を含有しない成分とし、
エポキシ基同士の好ましくない反応を避け、相溶化剤と
して働くポリマーの生成効率を向上させたものである。
【0034】エポキシ基含有ビニル系単量体の量は、ポ
リオルガノシロキサン系グラフト共重合体全量の1〜3
0重量%であることが好ましく、2〜20重量%である
ことがより好ましい。グラフト共重合体中に占める割合
が1重量%未満では衝撃強度の発現が不十分となり、ま
た30重量%を超えて用いてもこれ以上の効果は発揮さ
れない。
【0035】最終段でグラフトされるエポキシ基を含有
しないビニル系単量体の量は、ポリオルガノシロキサン
系グラフト共重合体全量に対して1〜10重量%である
ことが好ましい。1重量%未満ではエポキシ基同士の反
応を避けるには不十分であり、一方10重量%を超える
量用いると、エポキシ基とポリアミド樹脂の末端官能基
との反応が阻害される。
【0036】複合ゴム上にグラフトされる全グラフトモ
ノマー量は、ポリオルガノシロキサン系グラフト共重合
体全量に対して2〜50重量%であることが好ましい。
【0037】また、本発明におけるポリオルガノシロキ
サン系グラフト共重合体としては、その平均粒子径が
0.08〜0.5μmの範囲にあることが好ましく、平
均粒子径が0.08μmより小さくなると十分な衝撃強
度の向上を図るのが困難になり、一方0.5μmより大
きくなると得られる樹脂組成物の表面外観が悪化するお
それがある。
【0038】なお、ポリオルガノシロキサン系グラフト
共重合体の平均粒子径の測定は、準弾性光散乱法(測定
装置、MALVERN SYSTEM 4600、測定
温度25℃、散乱角90°)を用い、ラテックスを水で
希釈したものを試料液として測定できる。
【0039】グラフト重合においては、グラフト共重合
体の枝にあたる成分(ここではエポキシ基含有ビニル系
単量体を含む2種以上のモノマーに由来する成分)が幹
成分(ここではポリオルガノシロキサンゴムとポリアル
キル(メタ)アクリレートとの複合ゴム)にグラフトせ
ずに枝成分だけで重合して得られる、所謂フリーポリマ
ーも副生し、グラフト共重合体とフリーポリマーの混合
物として得られるが、本発明においてはこの両者を合わ
せてグラフト共重合体という。
【0040】本発明における(A)熱可塑性ポリアミド
樹脂と(B)ポリオルガノシロキサン系グラフト共重合
体との配合割合は、得られる組成物の衝撃強度の点から
熱可塑性ポリアミド樹脂60〜99重量部に対してポリ
オルガノシロキサン系グラフト共重合体が40〜1重量
部(両者の合計100重量部)とする必要があり、好ま
しくは20〜3重量部である。ポリオルガノシロキサン
系グラフト共重合体の使用量が1重量部未満では、熱可
塑性ポリアミド樹脂の耐衝撃性の改善効果が乏しく、ま
た40重量部を超えると組成物からの成形物の強度、剛
性、耐熱性が損なわれる傾向にあるので好ましくない。
【0041】本発明の組成物においては、組成物の耐熱
性、機械的強度等をより向上させるために、さらに充填
剤を含有させることができる。このような充填剤として
は、繊維状、粒子状、粉体状等種々の形状のものを用い
ることができる。
【0042】充填剤の具体例としては、例えばガラス繊
維、炭素繊維、チタン酸カリウム、アスベスト、炭化珪
素、セラミック繊維、金属繊維、窒化珪素、アラミド繊
維、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモ
ン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化
鉄、二硫化モリブデン、マイカ、タルク、カオリン、パ
イロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライ
ト、ウオラストナイト、その他のクレー、フェライト、
黒鉛、石膏、ガラスビーズ、ガラスバルーン、石英等を
挙げることができる。
【0043】充填剤を用いる場合には、樹脂成分100
重量部に対して充填剤を10〜300重量部とすること
が好ましい。10重量部未満では耐熱性、機械的強度等
の向上効果が小さく、300重量部を超えると組成物の
溶融流動性が悪くなる傾向があり、成形品の外観が損な
われる傾向にあるので好ましくない。
【0044】本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、
さらに可塑剤、難燃剤、滑剤、顔料等を配合し得る。
【0045】本発明の組成物は、少なくとも熱可塑性ポ
リアミド樹脂とポリオルガノシロキサン系グラフト共重
合体とを溶融混合して得ることができ、その調製方法に
ついては特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン
系グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウム、硫酸
マグネシウム等の金属塩水溶液中に投入して塩析・凝固
して分離回収し、乾燥して得たポリオルガノシロキサン
系グラフト共重合体乾燥粉と熱可塑性ポリアミド樹脂お
よび必要に応じて充填剤を添加して押出機内で溶融混練
し、ペレット化するのが好ましい。こうして得られるペ
レットは、幅広い温度で成形可能であり、通常の射出成
形機を用いて成形することができる。
【0046】
【実施例】以下実施例および比較例により本発明を具体
例で説明するが、例中の部は重量部を示す。なお、実施
例および比較例における物性の測定は、絶乾条件におい
て下記の方法により測定した。
【0047】(1)平均粒子径:準弾性光散乱法(MA
LVERN SYSTEM 4600、測定温度25
℃、散乱角90°)によりラテックスを水で希釈したも
のを試料液として測定した。
【0048】(2)押出時の安定性: ストランドの切れ無し(1時間)〇 ストランドの切れ有り(1時間)×
【0049】(3)アイゾット衝撃強度:ASTM D
256の方法(1/8”、ノッチ付き)
【0050】(4)表面外観: 目視により判定した。 表面ブツ無し〇 表面ブツ有り×
【0051】参考例1 ポリオルガノシロキサン系グラ
フト共重合体(S−1)の製造 テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシ
プロピルジメトキシメチルシラン0.5部およびオクタ
メチルシクロテトラシロキサン97.5部を混合し、シ
ロキサン混合物100部を得た。
【0052】ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムお
よびドデシルベンゼンスルホン酸を、それぞれ0.67
部溶解した蒸留水200部を上記混合シロキサン100
部に加え、ホモミキサーを用いて10,000rpmで
予備撹拌した後、ホモジナイザーにより200kg/c
2 の圧力で乳化して、オルガノシロキサンラテックス
を得た。このラテックスをコンデンサーおよび撹拌機を
備えたセパラブルフラスコに仕込み、これを撹拌混合し
ながら80℃で5時間加熱した後20℃で放置し、48
時間後に水酸化ナトリウム水溶液でこのラテックスのp
Hを7.2に中和することにより、重合を完結させポリ
オルガノシロキサンゴムラテックス−1(以下、このラ
テックスをPDMS−1と称する。)を得た。ポリオル
ガノシロキサンゴムへの転化率は89.1%であり、ポ
リオルガノシロキサンゴムの平均粒子径は0.19μm
であった。
【0053】このPDMS−1を140部採取し、撹拌
機を備えたセパラブルフラスコに入れ、蒸留水700部
を加え、窒素置換した後これを50℃に昇温し、n−ブ
チルアクリレート313.6部、アリルメタクリレート
6.4部およびtert−ブチルヒドロペルオキシド
1.2部の混合液を添加した。次いでこれに硫酸第一鉄
0.008部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩
0.024部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシ
レート1.2部および蒸留水40部の混合液を加えてラ
ジカル重合させ、内温70℃で2時間保持して複合ゴム
ラテックス(以下、このラテックスを複合ゴムラテック
ス−1と称する。)を得た。
【0054】この複合ゴムラテックス−1を285部採
取し、これにグリシジルメタクリレート10部とter
t−ブチルヒドロキシペルオキシド0.024部の混合
液を30分かけて滴下し、内温60℃で1時間保持した
後、メチルメタクリレート5部とtert−ブチルヒド
ロキシペルオキシド0.012部の混合液を30分かけ
て滴下し、内温60℃で2時間保持することにより複合
ゴムへのグラフト重合を行った。グリシジルメタクリレ
ートおよびメチルメタクリレートの重合率は98.5%
であり、グラフト重合体の平均粒子径は0.24μmで
あった。このラテックスを5%濃度の塩化カルシウム水
溶液中、ラテックスと水溶液の比率が1:2となるよう
に40℃で添加し、その後90℃まで昇温し凝固した。
これを冷却した後、固形分を濾過分離し、80℃で一晩
乾燥し粉末状のポリオルガノシロキサン系グラフト共重
合体(以下、S−1という。)を得た。
【0055】参考例2 S−1の製造過程における最終段のグラフトモノマーを
メチルメタクリレート5部の代わりにグリシジルメタク
リレート5部に換える以外は、参考例1と同様の操作お
よび条件でポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体
(以下、S−2という。)の乾粉を得た。グリシジルメ
タクリレートの重合率は98.2%であり、ラテックス
の平均粒子径は0.24μmであった。
【0056】実施例1、比較例1 熱可塑性ポリアミド樹脂としてナイロン6(宇部興産
(株)製、UBEナイロン1013NW8)を用い、参
考例1,2で得たポリオルガノシロキサン系グラフト共
重合体S−1、S−2を表1に示す割合で配合し、二軸
押出機(東芝機械(株)製、TEM−35B)を用いて
シリンダー温度260℃で溶融混合し、ペレット化し
た。この際、ストランドの切れる頻度で押出時の安定性
を評価した。
【0057】得られたペレットを乾燥後、射出成型機
(住友重機械工業(株)製 プロマット射出成形機)を
用いシリンダー温度260℃、金型温度80℃で試験片
を成形し、耐衝撃性の評価、外観の評価を実施した。結
果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】以上述べた如き構成からなる本発明のポ
リアミド樹脂組成物は、耐衝撃性、特に低温における衝
撃強度に優れており、かつ押出安定性、成形品外観も良
好であるので、成形材料としてより広い用途に極めて有
用に使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−78572(JP,A) 特開 平5−78542(JP,A) 特開 平4−348117(JP,A) 特開 平5−25228(JP,A) 特開 平2−191614(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 77/00 - 77/12 C08F 285/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)熱可塑性ポリアミド樹脂60〜9
    9重量部、および(B)ポリオルガノシロキサンゴムと
    ポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるポリ
    オルガノシロキサン系複合ゴムに少なくともエポキシ基
    含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体をグラフト重
    合させた後、最終段にエポキシ基を含有しないビニル系
    単量体をグラフト重合させてなるポリオルガノシロキサ
    ン系グラフト共重合体40〜1重量部を必須成分として
    含んで成る、ポリアミド樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 (B)ポリオルガノシロキサンゴムとポ
    リアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるポリオ
    ルガノシロキサン系複合ゴムに少なくともエポキシ基含
    有ビニル系単量体を含むビニル系単量体をグラフト重合
    させた後、最終段にエポキシ基を含有しないビニル系単
    量体をグラフト重合させてなるポリオルガノシロキサン
    系グラフト共重合体。
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